JP3001876B1 - ワイヤソ―による希土類合金の切断方法および希土類合金板の製造方法 - Google Patents

ワイヤソ―による希土類合金の切断方法および希土類合金板の製造方法

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Abstract

【要約】 【課題】希土類合金をワイヤソーで切断加工するに際し
て、ワイヤ切れを防止し、スラリ交換の回数を著しく減
じることによって、長時間の連続運転を可能する。 【解決手段】複数のインゴット20を接着剤22にて相
互に固着し、ブロック24a〜24cとして組み立てた
状態でワークプレート26に固定する。2本のスラリ供
給パイプ29をワークプレート28の上部に配置し、ブ
ロック24a〜24cの隙間からスラリを供給する。ス
リット状ノズル29aを介して新鮮な砥粒を含むスラリ
が下方向に噴射される。スラリの25℃における粘度を
92から175[ミリパスカル秒]の範囲内に設定する
一方、スラリ中の合金スラッジをマグネットセパレータ
によって除去する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ワイヤソーによる
希土類合金の切断方法、希土類合金板の製造方法および
希土類合金磁石の製造方法、ならびに当該希土類合金磁
石を備えたボイスコイルモータに関する。
【0002】
【従来の技術】シリコンのインゴットから多数のウェハ
を切り出すためにワイヤソーを用いてインゴットを切断
する技術が開発され、例えば特開平6−8234号公報
に開示されている。このような技術によれば、走行する
マルチワイヤに対して研削砥粒を含むスラリを供給しな
がらインゴットの切削・切断加工を実行し、一定の厚さ
のウェハを多数枚同時に切り出すことが可能になる。
【0003】一方、希土類合金のインゴットを切断する
方法としては、従来から、例えば回転するダイシングブ
レードを用いてインゴットをスライスする技術が知られ
ている。しかし、ダイシングブレードで切断する方法に
よれば、切断刃の厚さはワイヤ径に比べて大きいため、
どうしても削り代が多くなり、資源の有効利用がはかれ
ない。
【0004】希土類合金は、例えば磁石材料として好適
に用いられている。磁石の用途は多様化し、各種の電子
機器にも広く使用されているため、ワイヤソーによって
希土類合金のインゴットから少ない削り代にて所定厚さ
のウェハを多数枚同時に作成することができれば、希土
類磁石の製造コストが大幅に低減される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実用的
なワイヤソー技術を用いて希土類合金を切断したとの報
告は未だに無い。発明者らの実験によれば、ワイヤソー
による切断加工処理を希土類合金のインゴットに対して
実行しようとすると、ワイヤソー加工によって発生した
微粉・研削くず(きりこ若しくはスラッジ)のためにス
ラリ循環パイプが極めて短時間で詰まってしまう結果、
ワイヤ上にスラリが供給されなくなり、ワイヤ切れが生
じてしまうということがわかった。この問題を回避する
ためにスラリ全体を数時間ごとに完全に交換すると、ス
ラリ交換の都度ワイヤソーによる加工を中断しなければ
ならなくなるため、量産には適さず、実用化が不可能に
なる。また、スラッジは切削溝内にもたまりやすく、そ
のせいで切削抵抗が著しく増加し、ワイヤ切れがいっそ
う生じやすくなることもわかった。更に、切断加工処理
中、スラッジはローラの溝にもたまりやすく、ワイヤが
巻き付けられているローラからワイヤが脱溝するなど現
象が頻発し、切断精度が著しく低下するという問題のあ
ることもわかった。これらの問題は、何れも、従来のワ
イヤソー技術によってシリコンやガラスのインゴットを
切断する際には現れなかったものである。
【0006】本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもの
であり、その主な目的は、ワイヤ切れを防止し、スラリ
交換の回数を著しく減じることによって、長時間の連続
運転を可能にした、ワイヤソーによる希土類合金の切断
方法および希土類合金板の製造方法を提供することにあ
る。
【0007】また、本発明の他の目的は、上記希土類合
金の切断方法を用いた希土類合金磁石の製造方法、なら
びに当該希土類合金磁石を備えたボイスコイルモータを
提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明による希土類合金
の切断方法は、砥粒を含むスラリをワイヤ上に供給する
工程と、前記ワイヤを希土類合金に押し当てながら前記
ワイヤを走行させ、それによって前記ワイヤと前記希土
類合金との間に挟まれた前記砥粒で前記希土類合金を加
工する工程と、を包含する希土類合金の切断方法であっ
て、前記スラリは、前記砥粒を分散させたオイルを主成
分として有しており、前記スラリの25℃における粘度
が92から175[ミリパスカル秒]の範囲内にある。
【0009】前記希土類合金の加工工程によって生じた
前記希土類合金のスラッジを前記スラリ内から磁力によ
って分離することが好ましい。スラッジを回収する領域
において0.3テスラ以上の磁力を示すマグネットセパ
レータを用いることが好ましい前記ワイヤの走行速度を
毎分420から760メートルの範囲内に設定すること
が好ましい。
【0010】外周にリング状の複数の溝が所定のピッチ
で形成され、回転可能に支持された複数のローラと、前
記ローラを回転させながら、前記ローラの前記溝に巻き
付けた前記ワイヤを走行させる駆動手段とを備えたワイ
ヤソー装置を用いることが好ましい。
【0011】前記ローラの外周表面がエステル系ウレタ
ンゴムによって覆われていることが好ましい。
【0012】前記ローラの前記溝の深さは0.3ミリメ
ートル以上に設定されていることが好ましい。
【0013】走行する前記ワイヤに対して、上方から下
方に向かって前記希土類合金を降下させながら前記希土
類合金を切断することが好ましい。
【0014】前記希土類合金を複数のブロックに分割し
た状態で保持し、前記スラリの供給の少なくとも一部を
前記複数のブロックの間隙を介して行うことが好まし
い。
【0015】本発明による他の希土類合金の切断方法
は、砥粒を含むスラリをワイヤ上に供給する工程と、前
記ワイヤを希土類合金に押し当てながら前記ワイヤを走
行させ、それによって前記ワイヤと前記希土類合金との
間に挟まれた前記砥粒で前記希土類合金を加工する工程
と、を包含する希土類合金の切断方法であって、前記ス
ラリは、前記砥粒を分散させたオイルを主成分として含
有しており、前記希土類合金の加工工程によって生じた
前記希土類合金のスラッジを前記スラリ内から磁力によ
って分離する。本発明による更に他の希土類合金の切断
方法は、砥粒を含むスラリをワイヤ上に供給する工程
と、前記ワイヤを希土類合金に押し当てながら前記ワイ
ヤを走行させ、それによって前記ワイヤと前記希土類合
金との間に挟まれた前記砥粒で前記希土類合金を加工す
る工程と、を包含する希土類合金の切断方法であって、
前記スラリは、前記砥粒を分散させたオイルを主成分と
して含有しており、外周にリング状の複数の溝が所定の
ピッチで形成され、回転可能に支持された複数のローラ
と、前記ローラを回転させながら前記ローラの前記溝に
巻き付けた前記ワイヤを走行させる駆動手段とを備えた
ワイヤソー装置を用い、前記希土類合金を複数のブロッ
クに分割した状態で保持し、前記スラリの供給の少なく
とも一部を前記複数のブロックの間隙を介して行う。
【0016】本発明による更に他の希土類合金の切断方
法は、砥粒を含むスラリをワイヤ上に供給する工程と、
前記ワイヤを希土類合金に押し当てながら前記ワイヤを
走行させ、それによって前記ワイヤと前記希土類合金と
の間に挟まれた前記砥粒で前記希土類合金を加工する工
程と、を包含する希土類合金の切断方法であって、前記
スラリは、前記砥粒を分散させたオイルを主成分として
含有しており、外周にリング状の複数の溝が所定のピッ
チで形成され、回転可能に支持された複数のローラと、
前記ローラを回転させながら、前記ローラの前記溝に巻
き付けた前記ワイヤを走行させる駆動手段とを備えたワ
イヤソー装置を用い、前記ローラの前記溝の深さを0.
3ミリメートル以上に設定する。
【0017】本発明による希土類合金板の製造方法は、
希土類合金のインゴットを作製する工程と、上記希土類
合金の切断方法を用いて、前記希土類合金のインゴット
から複数の希土類合金板を分離する工程とを包含する。
【0018】本発明による希土類合金磁石の製造方法希
土類磁石合金粉末から焼結体を作製する工程と、前記希
土類合金の切断方法を用いて前記焼結体から複数の希土
類合金磁石を分離する工程とを包含する。
【0019】本発明のボイスコイルモータは、前記希土
類合金磁石を備えていることを特徴とする。
【0020】前記希土類合金磁石の厚さは0.5〜3.
0mmの範囲にあることが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】本願発明者は、ワイヤソーによっ
て希土類合金を切断加工すると、加工に際して油性スラ
リ中に生じる希土類合金のスラッジがスラリ内で速やか
に沈殿し、短時間で凝集してしまうことを見いだし、こ
のことがワイヤソーによる希土類合金の切断の実用化を
阻む大きな要因になっていると考えた。凝集したスラッ
ジがワイヤソー装置内のスラリ循環パイプ内でスラリの
循環を阻害すると、それによってスラリ循環パイプが詰
まるため、スラリ交換を頻繁に行わない限り長時間の連
続運転を実施することが不可能になる。
【0022】スラッジの沈殿・凝集は、希土類合金を構
成する希土類元素の原子量が大きく、スラッジの比重が
スラリ中のオイルの比重よりも大きいために生じると考
えられる。スラリに用いるオイルとしては、オイルより
も比重の大きな砥粒を分散させる目的から高い粘度(2
5℃で90ミリパスカル秒前後)を持つものが選択され
ている。砥粒として通常使用されるSiC、ダイヤモン
ド、およびアルミナ(Al23)等の比重は約3〜4の
範囲にあり、一方、ワイヤソーによってシリコンや石英
ガラスを切断した場合に生じるスラッジの比重も3〜4
程度である。このため、ワイヤソー技術を用いてシリコ
ンや石英ガラスのインゴットを切断した場合は、スラッ
ジは砥粒と同様にスラリ中に均一に分散しやすく、スラ
ッジの沈殿・凝集はほとんど生じないため、そのことに
起因する大きな問題は今まで特に発生していなかったも
のと考えられる。
【0023】スラリの粘度を向上させれば、希土類合金
のスラッジをオイル中に均一に分散させやすくなるた
め、上記のスラッジ凝集問題は解決されるように思われ
る。しかしながら、発明者の実験によると、スラリの粘
度を高くしても、ワイヤが切断してしまうなどの問題が
生じた。これは、シリコンなどに比較して希土類合金の
切削抵抗が著しく高いことに原因があると考えられる。
そこで、本願発明者はあえてスラリの粘度を従来よりも
低下させることによって、スラッジの洗浄性または排出
効率を向上させ、それによって切削抵抗を低減するとと
もに、分散しにくく磁石に引きつけられるという希土類
合金スラッジの性質に着目し、スラッジを磁力でスラリ
から分離・除去することにした。そうすることによっ
て、循環パイプ内での詰まりを防止するとともに、スラ
リの頻繁な交換をほとんど不要とし、連続運転時間を従
来技術に比較して著しく改善することを可能にした。
【0024】なお、磁力によって合金スラッジを吸引す
る際、スラッジはオイルの粘度によって強い抵抗を受け
るが、本発明では粘性の低いオイルを使用するとともに
強い磁力をもつ磁石を利用するため、スラッジの分離を
充分実用的に実行できる。
【0025】(実施形態)以下、本発明による希土類合
金板の製造方法の実施形態を説明する。本実施形態で
は、希土類合金としてネオジム(Nd)、鉄(Fe)お
よびボロン(B)を主成分とする三元系の化合物Nd−
Fe−B、またはNd−Fe−BのNdの一部をDy
(ジスプロシウム)で置換し、Feの一部をCo(コバ
ルト)で置換したものを用いる。Nd−Fe−Bは、最
大エネルギー積が320kJ/m3を超える強力なネオ
ジム磁石材料として知られている。
【0026】図1のフローチャートを参照しながら、N
d−Fe−Bのインゴットを作成する方法を簡単に説明
する。なお、磁石材料としての希土類合金を作製する方
法は、例えば米国特許第4,770,723号明細書に
詳細に開示されている。
【0027】まず、図1のステップS1で原料を所定の
成分比に正確に秤量した後、ステップS2で真空または
アルゴンガス雰囲気の高周波溶解炉にて原料を溶解す
る。溶解した原料を水冷の鋳型に鋳込み、所定の組成の
原料合金を形成する。ステップS3で原料合金を粉砕
し、平均粒径3〜4μm程度の微粉末を作製する。ステ
ップS4で微粉末を金型に入れ、磁界中でプレス成形す
る。このとき必要に応じて微分末を粘結剤と混合してか
らプレス成形を行う。次に、ステップS5で約1000
〜1200℃程度の焼結工程を行えばネオジム磁石素材
を作製することができる。この後、ステップS6で磁石
保磁力を向上させるために約600℃での時効処理を
実行し、希土類合金インゴットの作製を完了する。イン
ゴットのサイズは、例えば30mm×50mm×60m
mである。
【0028】ステップS7では希土類合金インゴットの
切断加工を行い、インゴットから切断した複数の薄板
(基板またはウェハと称される場合がある)を形成す
る。ステップS8以降の説明を行う前に、以下において
希土類合金のインゴットを本発明によるワイヤソー技術
によって切断加工する方法を詳細に説明する。
【0029】図2(a)および(b)を参照する。ま
ず、上述の方法で作製した複数のインゴット20を例え
ばエポキシ樹脂からなる接着剤22にて相互に固着し、
複数のブロック24a〜24cとして組み立てた状態で
鉄製のワークプレート26に固定する。ワークプレート
26と各ブロック24a〜24cとの間の固着もまた接
着剤22によって達成される。より詳細には、ワークプ
レート26と各ブロック24a〜24cとの間には、ダ
ミーとして機能する炭素製ベースプレート28が配置さ
れ、この炭素製ベースプレート28も接着剤22を介し
てワークプレート26および各ブロック24a〜24c
に固着されている。炭素製ベースプレート28は、ブロ
ック24a〜24cの切断加工が終了した後、ワークプ
レート26の下降動作が停止するまでワイヤソーによる
切断加工を受け、ワークプレート26を保護するという
ダミーとしての役割を担っている。
【0030】本実施形態では、図2(a)の矢印Aで示
される方向(以下「ワイヤ走行方向」と称する)に沿っ
て計測した各ブロック24a〜24cのサイズが100
mm程度になるように各ブロックの大きさを設計してい
る。本実施形態では、ひとつのインゴット20について
ワイヤ走行方向に沿って計測したサイズが約50mmで
あるため、2つのインゴット20をワイヤ走行方向に沿
って配列したものを重ね合わせることによって、上記ブ
ロック24a〜24cの各々を構成するようにしてい
る。
【0031】ワークプレート26に固定された複数のイ
ンゴット20を全体として「ワーク」と称するが、この
ワークを複数のブロックに分割することによって、次の
ような利点が生まれる。
【0032】一塊りのワークについて、ワイヤ走行方向
サイズがスラリの引き込み量を越えて大きくなりすぎる
と、ワークの切断加工部分のうちスラリ供給が不十分に
なる領域が発生し、このことによってワイヤ切断の生じ
るおそれがある。しかし、本実施形態のワークは適当な
サイズのブロック24a〜24cに分割されているた
め、ブロック24a〜24cの隙間にスラリを供給する
ことが可能になり、スラリ供給不足の問題を解消でき
る。ブロック24a〜24cの隙間にスラリを供給する
ため、本実施形態では、2本のスラリ供給パイプ29を
ワークプレート28の上部に配置しており、スリット状
ノズル29aを介してスラリ供給パイプ29内から新鮮
な砥粒を含むスラリを下方向に噴射するようにしてい
る。スラリ供給パイプ29は、後述するスラリ供給タン
クからスラッジを含まない新鮮なスラリまたはスラッジ
の除去されたスラリを受け取る。スラリ供給パイプ29
は、例えば二重管式の構造を持ち、下方のスリット29
aの幅は長手方向に変化し、均一なスラリ供給を実現す
るように設計されている。スラリ供給パイプ29として
使用可能なスラリ供給手段の構造は、例えば特開平7−
195358号公報に開示されている。
【0033】本実施形態では上述のようにワークを複数
のブロックに分割しているが、各ブロック24a〜24
cの各々についてのワイヤ走行方向サイズをどの程度の
大きさに設定すべきかは、スラリの粘度やワイヤ走行速
度によっても変化する。また、各インゴット20の大き
さによって、ひとつのブロックを構成するインゴット2
0の数や配置も変化する。これらを考慮して、適宜最適
なサイズのブロックにワークを分割すればよい。
【0034】次に、図3(a)および図3(b)を参照
しながら、本実施形態で好適に使用されるワイヤソー装
置の主要部30を説明する。このワイヤソー装置には、
一本のワイヤ32が何重にも巻き付けられる3つのメイ
ンローラ34a〜34cが備えつけられている。このう
ち、二つのメインローラ34aおよび34bは、ワイヤ
ソー装置によって回動自在に支持されているが、モータ
などの駆動手段には直接的に接続されておらず、従動ロ
ーラとして機能する。これに対して、メインローラ34
cは不図示の駆動源例えばモータに接続されており、こ
の駆動源によって所望の回転力を受け、設定速度で回転
することができる。メインローラ34cはワイヤ32を
介して二つのメインローラ34aおよび34bに回転力
を伝達するため、駆動ローラとして機能する。
【0035】ワイヤ32は、メインローラ34a〜34
cの回転に応じて数キログラム重の張力を受けながら案
内され、所定速度で一定方向(図3(b)の矢印A、B
およびC)に沿って走行しながら不図示のリールから他
の不図示のリールに巻きとられていく。なお、本実施形
態のメインローラ34a〜34cの外径は約170mm
で、軸方向の長さは約360mmである。
【0036】メインローラ34a〜34cの外周表面に
は、後述するように複数の溝が等間隔で形成されてお
り、一本のワイヤ32が多数の溝内にはめ込まれるよう
にして各ローラに巻き付けられる。ワイヤ32の配列ピ
ッチ(ワイヤ列の間隔)は、この溝のピッチによって規
定される。本実施形態では、このピッチを約2.0mm
に設定している。このピッチは切断加工によって切り出
すべき薄板の厚さに応じて設定されるため、適宜適切な
ピッチを持った多溝ローラ34a〜34cを選択して使
用することになる。ワイヤ32は、例えば硬鋼線(ピア
ノ線)から形成され、その太さは0.06〜0.25m
m程度のものが使用される。
【0037】切断加工処理に際して、ワークは走行する
ワイヤ32のうちメインローラ34aとメインローラ3
4bとの間に張り渡された部分に押しあてられる。本実
施形態では、スラリを少なくとも3カ所からワイヤ32
上に供給することができ、そのうち2カ所からのスラリ
供給は、ワークプレート26の上部に配置したパイプ2
9およびスリット状ノズル29aを用いブロックの隙間
を利用して行う。残り一カ所からのスラリ供給は、図3
(b)においてワークの左側からノズル36を用いて行
う。スラリの供給は、これらのノズル29aおよび36
に加えて、他のノズルを用い、例えば図3(b)におい
てワークの右側の位置から付加的に行ってもよい。
【0038】本実施形態では、用いるスラリの25℃に
おける粘度が92から175[ミリパスカル秒(mPa
・sec)]の範囲内になるようにスラリの成分を調整
している。具体的には、パレス化学株式会社のPS−L
−30のオイルを使用している。このオイルは、主成分
として精製鉱油(92.0%)を含むほか、無機増粘剤
(3.0%)、非イオン系界面活性剤(2.2%)、防
錆剤(0.4%)および分散剤(2.5%)を含有して
いる。
【0039】このように粘度の低いオイルを使用してい
るため、希土類合金のインゴットに形成されつつある切
削溝内で生じたスラッジは、速やかに切削溝の外部へ流
れだし(高い排出効率)、切削加工領域から排除され
る。このため、切削溝内にたまったスラッジがワイヤの
走行を強く妨げることもなく、切削抵抗増加によるワイ
ヤ切れ問題を解決できる。また、粘性の低いスラリを使
用しているため、走行するワイヤによってメインローラ
にまで運ばれるスラッジの量も低減され、メインローラ
上の溝内にスラッジがたまるという現象も抑制できる。
更に、スラリの粘度低下によって循環パイプやノズル穴
での詰まりも生じにくくなる。これらの結果、ワイヤ切
れが防止され、また、ワーク切断終了後にワークからワ
イヤを簡単にはずすことができるという利点もある。な
お、スラリの粘度を低下させれば、走行するワイヤから
もスラリが滴下しやすくなるが、前述のようにワークを
複数のブロックに分割することによって、充分な量のス
ラリをワイヤおよびワークの切断面へ供給しているため
特に問題はない。
【0040】図3(b)を参照する。ワークプレート2
6はワークの切断加工処理に際し、不図示の駆動装置に
よって所定の速度で下方向へ矢印Dに沿って動かされ、
ワークプレート26に固定されたワークを、水平横方向
に走行するワイヤ32に押しつける。ワークとワイヤ3
2との間に充分な量のスラリを供給することによって、
スラリ中の研磨剤をワークとワイヤ32との間に輸送
し、それによってワークを切削することができる。ワー
クプレート26の降下速度を速くすると、切断効率は向
上するが、切削抵抗が上昇するためワイヤ32の波打ち
現象が発生し、ワーク切断面の平面度が悪くなるおそれ
がある。ワーク切断面の平面度劣化は、あとの工程での
研磨作業に要する時間を増大させたり、不良品の発生確
率を増加させる。従って、ワークの降下速度、つまりワ
ークの切断速度を適切な範囲内に設定する必要が生じ
る。この点については、図9を参照しながら後に詳しく
説明する。
【0041】ワークの降下によって、一定ピッチで配列
されたワイヤ32がマルチワイヤソーとしてワークを研
削し、それに伴って多数の加工溝(切削溝)をワークに
同時形成しながらその溝深さを増大させ、切断加工を進
行させることになる。加工溝が各インゴットを完全に横
切ったときに、そのインゴットの切断加工が達成され、
ワイヤ列のピッチおよびワイヤの太さによって決まる厚
さの多数のウェハが同時に切り出される。全てのインゴ
ット20の切断が完了した後、前述の駆動装置によって
ワークプレート26は矢印Dに沿って上昇させられる。
その後、各ブロックがワークプレート26から分離され
るとともに、切断されたウェハが各ブロックから分離さ
れることになる。
【0042】本実施形態では、ワイヤ32の上方からワ
ークを降下させながら切断加工を実行するため、切断加
工を受けたインゴット20は接着剤によってなおもワー
クプレート26に結合した状態のまま、ワークプレート
26ともに下降してゆく。このように切断加工を受けた
インゴット20はワイヤの下方に位置するため、ワーク
の切断加工済み部分がワーク本体から分離・脱落したと
しても、その脱落部分がワイヤ32と再度接触するおそ
れはない。そのため、切断加工済みの合金板は高い品質
状態で次の工程に回されることになる。
【0043】次に、図4を参照しながら、ワイヤソー装
置40のスラリ循環システムの概略構成を説明する。図
4に模式的に示すように、装置40内にはワイヤソー装
置の主要部にスラリを供給するとともに、加工により形
成されたスラッジを含む使用済みスラリを回収するため
のスラリ循環システムが設けられている。
【0044】この装置40の場合、ワークの切断加工に
際して、スラリ供給タンク42から第1の循環パイプ4
4を介してワークプレート26上のスラリ供給パイプ2
9および図3(b)のノズル36にスラリが供給され
る。切断加工のために用いられたスラリは、加工部分お
よびその周辺から滴下し、下方に位置する回収ドレイン
37によって受け取られるようになっている。スラリは
回収ドレイン37から第2の循環パイプ46を介して回
収タンク48に運ばれ、そこで、後述するマグネットセ
パレータ50によるスラッジ分離処理を受ける。このス
ラッジ分離処理によって切断加工前の状態に近い状態に
戻ったスラリは、第3の循環パイプ49を介してスラリ
供給タンク42に送られる。
【0045】このように本実施形態では、スラリの供給
および回収を循環的に実行しながら、スラッジの分離除
去(フィルタリング)を効率的に実行するため、スラッ
ジ交換作業の周期間隔が著しく延び、切断加工処理を長
時間にわたって連続的に続けることが可能になる。な
お、全てのスラッジを完全に分離除去することは困難で
あるため、ワイヤ32に供給されるスラリ中のスラッジ
含有量が漸次増加し、それによってスラリの粘度も増加
してゆく。スラリ粘度を所望の範囲内に維持するには、
適当な時間間隔で新しいスラリを補給することが好まし
い。この場合、定期的にスラリ粘度を実測し、スラリ粘
度が設定範囲内から外れる場合に随時新しいスラリを装
置内(例えば、スラリ供給タンク42)に補給するよう
にしてもよい。このようなスラリの部分的な補給は、切
断加工処理を中断することなく行える点でスラリの全面
的交換と大きく異なっている。
【0046】次に、図5を参照しながらマグネットセパ
レータ50を説明する。このマグネットセパレータ50
は、スラッジを含む使用済みスラリ(ダーティ液)52
を貯えた分離漕54から、磁力を用いてスラッジを分離
することができる。分離漕54には開口部54aが設け
られ、この開口部54aは図4の回収タンク48の内部
に連結されている。マグネットセパレータ50は、内側
に強力な磁石が配置されたドラム56と、ドラム56の
外周面の一部に密着しながら回転する絞りローラ57と
を備えている。ドラム56は固定軸を中心に回転可能に
支持されながら、分離漕54内でスラリ52に部分的に
接触するように配置されている。絞りローラ57は、耐
油性ゴムなどから形成されており、ドラム56の外周面
に対してバネの付勢力によって圧接される。ドラム56
が不図示のモータによって矢印の方向に回転すると、そ
の回転が絞りローラ57に摩擦力を与え、絞りローラ5
7を回転駆動させる。
【0047】回転するドラム56の外周面には、スラリ
52中に浮遊するスラッジがドラム56内の磁石によっ
て吸着する。ドラム56の外周面に吸着したスラッジは
ドラム56の回転に伴ってスラリ52内から取り除か
れ、ドラム56と絞りローラ57との間を通過する。ス
ラッジは、やがてスクレイパ58によってドラム56の
表面から掻き取られ、スラッジボックス59内に集めら
れる。このようなマグネットセパレータ50として使用
可能なスラッジ除去手段の構造は、例えば実公昭63−
23962号公報に開示されている。のちに説明する発
明者の実験によると、オイル中の希土類合金をドラム5
6の表面に引き寄せるには、スラリ52内におけるドラ
ム56の外周面(スラッジ回収面)での磁力を0.3テ
スラ以上にすることが好ましい。スラリの粘度を低減し
たことは、マグネットセパレータ50による希土類合金
スラッジの回収を容易にするという利点をも生む。スラ
リ52中に形成された磁界中を移動するスラッジの受け
る粘性抵抗が低減されるため、多くのスラッジを効率よ
く回収することが可能になるからである。
【0048】このようなセパレータを用いて効率的にス
ラッジを除去すれば、スラリの粘度を低く維持すること
ができ、ワーク切断面でワイヤの受ける切断負荷を長期
間にわたって充分に小さいレベルに保つことができる。
【0049】次に、図6(a)および図6(b)を参照
しながら、メインローラ34a〜34cの構成を説明す
る。図6(a)は、メインローラ34a〜34cの軸方
向断面を示し、図6(b)は、メインローラ34a〜3
4cの外周部に設けられた円筒状のスリーブ62の一部
分を拡大した軸方向断面図である。
【0050】本実施形態では、ウレタンゴムから形成し
たスリーブ62を採用している。スリーブ62の外周に
は、図6(b)に示すように、所定のピッチで形成した
リング状の溝64を設けている。溝64にはワイヤ62
がはめ込まれ、所定のピッチのワイヤ列が形成される。
スリーブ62は円柱状のホルダ60の外周面に固着し、
ホルダ60と一体的に回転することができる。ホルダ6
0の両端面には凹部が設けられ、ワイヤソー装置に設け
た凸部によって回転可能に支持される。前記図3(a)
および図3(b)では、メインローラ34a〜34cの
多数の溝64に一本のワイヤ62(32)が巻き付けら
れた状態を示している。
【0051】本実施形態で使用するメインローラ34a
〜34cの特徴は、スリーブ62の材質と、スリーブ6
2に設けた溝64の深さとにある。本実施形態に使用す
るスリーブ62は、エステル系のウレタンゴムから形成
している。従来のシリコンインゴットをワイヤソーで切
断する装置の場合、溝の加工精度を高くしやすいエーテ
ル系のウレタンゴムが使用されている。本願発明者の実
験によると、エーテル系のウレタンゴムからなるスリー
ブは、本実施形態で使用するような鉱油を主成分とする
スラリオイルに対して著しく膨潤しやすく、ローラの耐
摩耗性を低下させてしまう。そのため、約10時間の連
続運転で使用不能となり、到底実用には耐えない。本実
施形態で好適に使用され得るオイルの場合、相対的に低
い濃度の界面活性剤や分散剤が使用されているため、シ
リコンインゴットのワイヤソー切断に使用されるスラリ
に対して膨潤の問題が生じないエーテル系のウレタンゴ
ムについても、膨潤の問題が生じやすくなるものと考え
られる。高硬度のエステル系ウレタンゴムは比較的に高
価ではあるが、本実施形態のオイルを使用することによ
って長時間の連続運転を可能ならしめるためには、その
使用が望ましい。エステル系ウレタンゴムを用いてメイ
ンローラを作製した場合、ローラ表面が高い硬度を示す
ため、膨潤の問題もほとんどなく、約700時間に及び
連続運転が可能とあった。
【0052】本実施形態のメインローラ34a〜34c
には、0.3mm以上の深さを有する溝64を形成して
いる。従来のシリコンインゴットを切断加工する場合に
は、溝深さがせいぜい0.2mm程度に設定されていた
が、そのような浅い溝を持つメインローラを採用して希
土類合金のような粘り性のあるインゴットを加工しよう
とすると、ワイヤのたわみが多く発生するため、しばし
ば脱溝が発生し、隣接ワイヤ間の相互接触によってワイ
ヤが断線してしまう。これに対して、溝深さを0.3m
m以上にすると、このような問題は解決される。
【0053】次に、図7から図11を参照しながら、ワ
イヤ速度、スラリ粘度、およびワーク切断速度などの詳
細を説明する。
【0054】図7は、ワイヤ(直径0.18mmφ)の
たわみ量とワイヤ速度(ワイヤ巻き取り速度または走行
速度)との関係を示している。ワークの降下速度は、1
5〜25mm/時間(mm/hr)の範囲内でほぼ一定
に維持して実験を行った。なお、ワークの降下速度が1
5〜30mm/時間の範囲内では、図7の結果と同様の
結果が得られている。
【0055】ワイヤによるワーク切断がスムーズに進行
しない場合、ワイヤのたわみ量は増大する。このため、
ワイヤのたわみ量が大きいということは、ワークの切削
抵抗が大きく、ワーク切断の効率が悪いことを意味し、
逆にワイヤのたわみ量が小さいということは、ワーク切
断の効率が良いことを意味している。図7から、ワイヤ
速度が420〜760m/分の範囲内にあるとき、たわ
み量が8mm以下に抑えられる一方、ワイヤ速度が42
0〜760m/分の範囲の外側にあるとき、急激にたわ
み量が増大することがわかる。ワイヤ速度を上昇させる
と、切断刃先量(砥粒がワイヤにのって希土類合金を切
断・研削する量)はある程度上昇するが、ワイヤ速度を
上昇させ過ぎると、ワイヤ上に充分な量のスラリが乗ら
なくなるため、切断刃先量が実質的に低下してしまう。
なお、ワイヤ速度が500〜670m/分の範囲内にあ
るとき、たわみ量は最小レベルに落ち着いている。この
ことから、ワイヤ速度は420〜760m/分の範囲内
に設定されることが好ましく、500〜670m/分の
範囲内にあることが更に好ましい。
【0056】図8は、ワイヤのたわみ量とスラリ粘度と
の関係を示している。図8からわかるように、25℃に
おけるスラリ粘度が92から175[ミリパスカル秒]
の範囲内にあるとき、たわみ量が14mm以下となり、
切断効率が良い。特に、25℃におけるスラリ粘度が1
10から150[ミリパスカル秒]の範囲内にあると
き、たわみ量が8mm以下となるため、切断効率は更に
好ましいレベルに達する。スラリ粘度が高い場合、希土
類合金スラッジがワークの切削溝内にたまりやすくなる
ため、切削抵抗が増加し、切断効率が低下する。その結
果、ワイヤのたわみ量が上昇してしまうことになる。こ
れらのことから、25℃におけるスラリ粘度は92から
175[ミリパスカル秒]の範囲内に設定することが好
ましく、110〜150[ミリパスカル秒]の範囲内に
することが更に好ましい。
【0057】図9は、ワークの切断速度とワーク切断面
の平面度との関係を示している。切断速度は、ワークま
たはワークプレートの降下速度に相当する。図9からわ
かるようにワークの切断速度が増加すると、それに伴っ
てワーク切断面の平面度が劣化してゆく。平面度が0.
030mmを超えると、あとの研磨工程に要する時間を
考慮した場合の全体としての作業効率が低下する。その
ため、平面度は0.030mm以下になることが好まし
く、ワーク切断速度も加工面の平面度が0.030mm
以下になるように調整されることが好ましい。そのため
には、本実施形態の場合、ワーク切断速度を29mm/
時間以下に設定することが好ましいことがわかる。
【0058】図10は、ワイヤの断線回数とメインロー
ラの溝深さとの関係を示している。溝深さが0.3mm
以上になると断線回数は急激に減少している。メインロ
ーラの溝深さが0.5mm以上になると、断線の可能性
は著しく低減される。溝深さが0.6mm以上の場合、
断線はほとんど生じなくなる。このため、溝深さは0.
3mm以上であることが実用上必要であり、0.5mm
以上であることが好ましい。更に好ましい溝深さは0.
6mm以上である。なお、図示されていないが、溝深さ
が0.3mmよりも浅い場合、断線回数は15回/月よ
り多くなる。
【0059】図11は、スラリの比重がワイヤソー加工
時間に応じてどのように変化するかを示すグラフであ
る。スラリ中における希土類合金のスラッジ濃度が上昇
すると、スラリの比重は増加する。このことに着目し
て、スラッジ濃度が装置運転時間によってどのように増
加して行くかを検討した。図11には、マグネットセパ
レータを用いない場合(未処理)、磁力がドラム表面で
0.1テスラとなるマグネットセパレータを用いた場
合、および磁力が0.3テスラとなるマグネットセパレ
ータを用いた場合についてのデータが示されている。こ
の図からわかるように、磁力がドラム表面で0.3テス
ラの場合は、スラリの比重が実質的に一定レベル(約
1.5)に維持される。このことは、スラッジの回収分
離が充分に達成されていることと、その結果、スラリの
全面交換を実行しなくても長期間の連続運転が可能にな
ることを意味している。なお、磁力が0.1テスラ以下
の場合は、マグネットセパレータを用いなかった場合と
同様に、加工時間が約4時間のときワイヤ断線が発生し
た。
【0060】再び、図1を参照する。上記方法を用いて
切断加工した希土類合金板のそれぞれに対して研磨によ
る仕上げ加工を行い、寸法と形状を整えた後、長期的な
信頼性を向上させるため、ステップS8で合金板に表面
処理を施す。ステップS9で着磁工程を実行した後、検
査工程を経てネオジム永久磁石が完成する。
【0061】以上説明してきたように、上記希土類合金
板の製造方法によれば、以下に示すような数多くの有利
な効果が得られる。
【0062】1.ワーク切断面からのスラリの排出効率
が向上するため、ワイヤの受ける切削抵抗が低減され、
長時間の連続切断作業が可能になる。
【0063】2.メインローラからのワイヤの脱溝を防
止することによってワイヤの断線を予防するとともに、
ワーク切断面の平面度を向上させることが可能になる。
このため、製品の製造歩留まりが改善される。
【0064】3.希土類合金に対するワイヤソー切断の
効率が最適化される。
【0065】4.充分な量のスラリをワーク切断面に対
して適切に供給するとともに、切断面から効率よく除去
できる。
【0066】5.スラリ中のスラッジを効率的に除去で
きるため、スラリの交換を頻繁に実施しなくとも、ワー
ク切断面で受けるワイヤの切断負荷を低減し、それによ
って切断速度を向上させることが可能になる。
【0067】6.ワークの崩れが生じても、ワイヤとの
接触によって製品の品質が劣化することが防止される。
【0068】なお、希土類合金板の製造方法について本
発明の実施形態を説明してきたが、本発明はこれに限定
されるものではない。例えば、板状以外の加工形状をも
つ希土類合金製品・部品を作製するために、本発明の切
断方法を好適に用いることができる。
【0069】また、被加工対象して、Nd−Fe−Bの
希土類合金磁石材料を用いた実施形態を説明したが、切
削抵抗が大きく、スラッジが凝集しやすいという性質は
希土類合金に共通するため、本発明は他の希土類合金を
被加工物として用いても上記実施形態について述べた効
果と同様の効果を得ることができる。
【0070】上述の方法を用いて作製した希土類合金磁
石は、外周刃を用いて希土類合金インゴットを切断する
場合に比較して切断代が少なく、薄型の磁石(例えば、
厚さ0.5〜3.0mm)を製造するのに適している。
近年、ボイスコイルモータに使用される希土類磁石は益
々薄くなってきているため、本発明の方法を用いて製造
した上記の薄い希土類合金磁石をボイスコイルモータに
取り付ければ、高い性能を持つ小型ボイスコイルモータ
を提供することができる。
【0071】
【発明の効果】本発明によれば、希土類合金に対してワ
イヤソーによる切断加工を実行しようとする場合におい
ても、ワイヤ切れが防止され、必要なスラリ交換の回数
も著しく低減される結果、長時間の連続運転が可能にな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】Nd−Fe−B永久磁石の作製手順を示すフロ
ーチャートである。
【図2】(a)はワークプレートに固定されたインゴッ
トブロックを示す正面図であり、(b)はその側面図で
ある。
【図3】(a)は本発明の実施形態で好適に使用される
ワイヤソー装置の主要部を示す斜視図であり、(b)は
その正面図である。
【図4】前記ワイヤソー装置のスラリ循環システムを示
す概略構成図である。
【図5】前記ワイヤソー装置に備えつけられたマグネッ
トセパレータ装置を示す斜視図である。
【図6】(a)はメインローラの軸方向断面であり、
(b)はメインローラの外周部に設けられた円筒状スリ
ーブの一部分を拡大した軸方向断面図である。
【図7】ワイヤのたわみ量とワイヤ速度との関係を示す
グラフである。
【図8】ワイヤのたわみ量とスラリ粘度との関係を示す
グラフである。
【図9】ワークの切断速度とワーク切断面の平面度との
関係を示すグラフである。
【図10】ワイヤの断線回数とメインローラの溝深さと
の関係を示すグラフである。
【図11】スラリの比重がワイヤソー加工時間に応じて
どのように変化するかを示すグラフである。
【符号の説明】
20 希土類合金のインゴット 22 接着剤 24a〜24c インゴットのブロック(ワークブロ
ック) 26 ワークプレート 28 炭素製ベースプレート 29 スラリ供給パイプ 29a スリット状ノズル 30 ワイヤソー装置の主要部 32 ワイヤ 34a〜34c メインローラ(多溝ローラ) 36 ノズル 37 スラリの回収ドレイン 40 ワイヤソー装置 42 スラリ供給タンク 44 スラリの第1の循環パイプ 46 スラリの第2の循環パイプ 48 スラリの回収タンク 49 スラリの第2の循環パイプ 50 マグネットセパレータ 52 スラッジを含む使用済みスラリ(ダーティ液) 54 分離漕 54a 分離漕に設けられた開口部 56 ドラム 57 絞りローラ 58 スクレイパ 59 スラッジボックス 62 メインローラのスリーブ 64 スリーブの表面に形成されたリング状の溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−131858(JP,A) 特開 平8−243920(JP,A) 特開 平9−168971(JP,A) 特開 平10−296719(JP,A) 特開 平10−324889(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B24B 27/06 B28D 5/04

Claims (16)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 砥粒を含むスラリをワイヤ上に供給する
    工程と、前記ワイヤを希土類合金に押し当てながら前記
    ワイヤを走行させ、それによって前記ワイヤと前記希土
    類合金との間に挟まれた前記砥粒で前記希土類合金を加
    工する工程と、を包含する希土類合金の切断方法であっ
    て、 前記スラリは、前記砥粒を分散させたオイルを主成分と
    して有しており、前記スラリの25℃における粘度が9
    2から175[ミリパスカル秒]の範囲内にあることを
    特徴とする希土類合金の切断方法。
  2. 【請求項2】 前記希土類合金の加工工程によって生じ
    た前記希土類合金のスラッジを前記スラリ内から磁力に
    よって分離することを特徴とする請求項1に記載の希土
    類合金の切断方法。
  3. 【請求項3】 スラッジを回収する領域において0.3
    テスラ以上の磁力を示すマグネットセパレータを用いる
    ことを特徴とする請求項2に記載の希土類合金の切断方
    法。
  4. 【請求項4】 前記ワイヤの走行速度を毎分420から
    760メートルの範囲内に設定することを特徴とする請
    求項1に記載の希土類合金の切断方法。
  5. 【請求項5】 外周にリング状の複数の溝が所定のピッ
    チで形成され、回転可能に支持された複数のローラと、 前記ローラを回転させながら前記ローラの前記溝に巻き
    付けた前記ワイヤを走行させる駆動手段と、 を備えたワイヤソー装置を用いることを特徴とする請求
    項1から4の何れかに記載の希土類合金の切断方法。
  6. 【請求項6】 前記ローラの外周表面がエステル系ウレ
    タンゴムによって覆われていることを特徴とする請求項
    5に記載の希土類合金の切断方法。
  7. 【請求項7】 前記ローラの前記溝の深さを0.3ミリ
    メートル以上に設定することを特徴とする請求項5に記
    載の希土類合金の切断方法。
  8. 【請求項8】 走行する前記ワイヤに対して、上方から
    下方に向かって前記希土類合金を降下させながら前記希
    土類合金を切断することを特徴とする請求項5に記載の
    希土類合金の切断方法。
  9. 【請求項9】 前記希土類合金を複数のブロックに分割
    した状態で保持し、前記スラリの供給の少なくとも一部
    を前記複数のブロックの間隙を介して行うことを特徴と
    する請求項8に記載の希土類合金の切断方法。
  10. 【請求項10】 砥粒を含むスラリをワイヤ上に供給す
    る工程と、前記ワイヤを希土類合金に押し当てながら前
    記ワイヤを走行させ、それによって前記ワイヤと前記希
    土類合金との間に挟まれた前記砥粒で前記希土類合金を
    加工する工程と、を包含する希土類合金の切断方法であ
    って、 前記スラリは、前記砥粒を分散させたオイルを主成分と
    して含有しており、 前記希土類合金の加工工程によって生じた前記希土類合
    金のスラッジを前記スラリ内から磁力によって分離する
    ことを特徴とする希土類合金の切断方法。
  11. 【請求項11】 砥粒を含むスラリをワイヤ上に供給す
    る工程と、前記ワイヤを希土類合金に押し当てながら前
    記ワイヤを走行させ、それによって前記ワイヤと前記希
    土類合金との間に挟まれた前記砥粒で前記希土類合金を
    加工する工程と、を包含する希土類合金の切断方法であ
    って、 前記スラリは、前記砥粒を分散させたオイルを主成分と
    して含有しており、 外周にリング状の複数の溝が所定のピッチで形成され、
    回転可能に支持された複数のローラと、前記ローラを回
    転させながら前記ローラの前記溝に巻き付けた前記ワイ
    ヤを走行させる駆動手段とを備えたワイヤソー装置を用
    い、 前記希土類合金を複数のブロックに分割した状態で保持
    し、前記スラリの供給の少なくとも一部を前記複数のブ
    ロックの間隙を介して行うことを特徴とする希土類合金
    の切断方法。
  12. 【請求項12】 砥粒を含むスラリをワイヤ上に供給す
    る工程と、前記ワイヤを希土類合金に押し当てながら前
    記ワイヤを走行させ、それによって前記ワイヤと前記希
    土類合金との間に挟まれた前記砥粒で前記希土類合金を
    加工する工程と、を包含する希土類合金の切断方法であ
    って、 前記スラリは、前記砥粒を分散させたオイルを主成分と
    して含有しており、 外周にリング状の複数の溝が所定のピッチで形成され、
    回転可能に支持された複数のローラと、前記ローラを回
    転させながら、前記ローラの前記溝に巻き付けた前記ワ
    イヤを走行させる駆動手段とを備えたワイヤソー装置を
    用い、 前記ローラの前記溝の深さを0.3ミリメートル以上に
    設定することを特徴とする希土類合金の切断方法。
  13. 【請求項13】 希土類合金のインゴットを作製する工
    程と、 請求項1から12の何れかに記載の希土類合金の切断方
    法を用いて前記希土類合金のインゴットから複数の希土
    類合金板を分離する工程と、を包含することを特徴とす
    る希土類合金板の製造方法。
  14. 【請求項14】 希土類磁石合金粉末から焼結体を作製
    する工程と、 請求項1から12の何れかに記載の希土類合金の切断方
    法を用いて前記焼結体から複数の希土類合金磁石を分離
    する工程と、を包含することを特徴とする希土類合金磁
    石の製造方法。
  15. 【請求項15】 請求項14に記載の希土類合金磁石の
    製造方法によって作製された希土類合金磁石を備えてい
    ることを特徴とするボイスコイルモータ。
  16. 【請求項16】 前記希土類合金磁石の厚さが0.5〜
    3.0mmの範囲にあることを特徴とする請求項15に
    記載のボイスコイルモータ。
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