JP2995520B2 - 連鋳鋳片の内質改善方法 - Google Patents

連鋳鋳片の内質改善方法

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JP2995520B2 JP4306274A JP30627492A JP2995520B2 JP 2995520 B2 JP2995520 B2 JP 2995520B2 JP 4306274 A JP4306274 A JP 4306274A JP 30627492 A JP30627492 A JP 30627492A JP 2995520 B2 JP2995520 B2 JP 2995520B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼の連続鋳造において
中心偏析、センターポロシティー等の内質欠陥の生成を
防止して、熱間及び冷間加工性の優れた鉄鋼素材の製造
を可能とする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】連鋳鋳片の偏析を改善する方法として
は、従来より凝固組織を微細化し偏析の分散を図る低温
鋳造法、低速鋳造法や、鋳型内や2次冷却帯等での電磁
攪拌技術が開発され、中心偏析の改善に寄与してきた
が、これら単独またはこれらを組合せただけでは偏析が
激しい鋼種や偏析許容レベルが厳しい偏析厳格材ではそ
の効果は十分と言えない。
【0003】一方、特公昭59−16862号公報、特
公昭59−39225号公報、特公昭62−34460
号公報、特公平2−56982号公報等には凝固末期に
鋳片をロールで圧下し、凝固収縮に基づく濃化溶鋼の流
動を抑えて中心偏析を改善する凝固末期軽圧下の方法が
開示されている。これらの凝固末期軽圧下では中心偏析
の大幅な改善は可能であるが、内部割れや逆V偏析が発
生したりして却って偏析が悪化したりするため圧下量が
制限され、センターポロシティーの圧着は十分とは言え
ない。さらに、軽圧下では理想的な圧下条件が実現され
て中心偏析が無い鋳片が製造できる可能性はあるが、実
際にその条件を安定して実現するのは極めて困難で、成
品までに極めて厳しい加工を受け僅かな偏析も問題とさ
れる場合には軽圧下では対応できないし、素材の断面中
心部に負偏析させたときのように素材中心部の延性を高
め、熱間や冷間加工性を大幅に改善するまでには到らな
い。
【0004】また、特開昭61−132247号公報、
特開昭63−183765号公報、あるいは「鉄と鋼」
第60年第875〜884頁には凝固末期の鋳片をロー
ルあるいは金型で大圧下して中心偏析を改善する方法が
開示されている。しかしながら、これらの方法で大圧下
して中心偏析を改善したり濃化溶鋼を絞り出し中心部に
負偏析を生成させようとする場合、圧下条件によっては
内部割れが生成したり、濃化溶鋼の絞り出しが不完全な
場合は濃化溶鋼が捕捉され顕著な偏析が生成したりして
逆に鋳片内質を劣化させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一般に鋼材はC当量が
低いほど強度は低下し、延性は上昇するため、内部割れ
の発生や濃化溶鋼の捕捉を防止しつつ素材中心部を負偏
析にできれば、熱間及び冷間加工性が極めて優れた素材
の製造が可能となる。本発明は、矩形鋳片を製造する連
続鋳造において、センターポロシティーを圧着すると共
に内部割れの発生や濃化溶鋼の捕捉を防止しつつ、鋳片
中心部に負偏析を生成させて熱間及び冷間加工性の優れ
た鉄鋼素材を製造する手段を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は以下の通
りである。
【0007】 矩形断面鋳片を製造する連続鋳造にお
いて、該鋳片の偏平比を1.1以上にすると共に、2次
冷却帯以降に鋳片幅中央部該当位置に高さHが鋳片厚み
の5%以上である突起部を有し、しかもその突起部の径
が500mm以上で、且つ、突起部の幅Wが圧下位置に
おける鋳片の横断面内の固相率0.7で定義される未凝
固幅wより大きく、鋳片幅の80%以下であるロールを
1対配し、連続鋳造方向で中心部固相率が0.6〜0.
となる位置における連鋳ストランドに該ロール対で鋳
片厚み方向に鋳片幅中央部における圧下率で10〜50
%の圧下を加えることを特徴とする連鋳鋳片の内質改善
方法。
【0008】 連鋳ストランド内の溶鋼に電磁気力を
作用させ、ストランド内の溶鋼を攪拌することを組合せ
た前記の連鋳鋳片の内質改善方法。
【0009】
【作用】連鋳鋳片の中心偏析は、凝固収縮に基づく溶鋼
の流動に起因して樹間の濃化溶鋼が中心部へ集積するこ
とにより形成される。また、センターポロシティーは、
鋳片中心部で凝固が進行して固液共存相における給湯性
が失われると凝固収縮による体積が補われないために生
成する。
【0010】従来から行われている凝固末期軽圧下で
は、凝固収縮量に見合う程度の圧下を付加することで濃
化溶鋼の流動を防止しているが、2次冷却帯以降に圧下
装置を設け、ロール等で凝固収縮量をかなり上回るよう
な変形を未凝固部に加えると、濃化溶鋼は絞り出されて
メニスカス側(上流側)へ向かう溶鋼流動が誘起され、
その流れによって樹間の濃化溶鋼も吸出されるため負偏
析が形成される。このように鋳片中心部に負偏析を形成
するには軽圧下に比べかなり大きな圧下量が必要とな
り、圧下ロールの形状や圧下される鋳片の形状等の圧下
条件が鋳片内質に極めて大きな影響を与える。それらの
圧下条件が不適切であると、濃化溶鋼が完全に絞り出さ
れず捕捉されたり、顕著な内部割れが発生したりする。
そこで、濃化溶鋼の捕捉、内部割れの発生を防止して負
偏析を得る方法について実機試験あるいは3次元の剛塑
性解析及びプラスチシンを用いた模型実験を用いて種々
検討を加え、本発明が有効なことを見出した。
【0011】一般に、湾曲型連鋳機や水平連鋳機では生
成した等軸晶は沈降して鋳片下面側へ沈降するため、未
凝固部の断面形状は鋳片幅方向に偏平な形状となる。こ
のような断面形状の未凝固部を圧下する場合、鋳片の幅
方向に圧下するより厚み方向に圧下する方が表面の変形
が内部に浸透するため、濃化溶鋼をより確実に絞り出せ
る。また、鋳片の偏平比(鋳片幅/厚みの比)が大きい
ほど未凝固幅が増大し、未凝固部の断面形状は偏平化
し、鋳片厚み方向に加えられた変形はより内部に浸透し
易い。
【0012】鋳片厚み方向に圧下する場合、偏平比1.
1未満では未凝固部の断面形状が半円状となり、特に未
凝固厚みが大きいときは凝固界面を圧着しにくく、場合
によっては未凝固部の端部に濃化溶鋼が捕捉される形で
残留するが、偏平比1.1以上にするとその圧着の困難
さはかなり緩和される。
【0013】さらに、濃化溶鋼を確実に絞り出すには、
圧下による凝固殻の先進を抑えて効率的に凝固界面を圧
着する必要がある。圧下ロール形状が不適正で凝固殻の
先進が大きいと、絞り出しによって溶質が濃化した未凝
固部がロールバイト内に引き込まれ捕捉されてしまうた
めである。
【0014】鋳片表面での変形を効率的に内部に浸透さ
せて凝固界面を圧着するには、特公昭48−41132
号公報、特公昭50−3750号公報、特開昭61−1
32247号公報に記載のように未凝固部が残留する鋳
片幅中央部該当位置に突起部を設けたロールで圧下する
方法が有効であるが、特公昭50−3750号公報に記
載のように突起部の高さを開口部の高さの10〜25
%、ローラの直径を開口高さの3.5〜5倍にするだけ
では不十分で、突起部の幅、圧下率(圧下量)や圧下す
るタイミング(圧下位置での中心部固相率)、さらに上
述した鋳片形状(未凝固部の形状)を適正に設定するこ
とも必要不可欠である。
【0015】本発明者が検討した結果では、濃化溶鋼を
確実に絞り出すためには、図1に示すように、突起部の
高さHは鋳片厚みの5%以上にする必要がある。これ
は、突起部の高さHが5%未満で必要な圧下量を鋳片1
に付加しようとするとロールバイトのかなり入り側から
突起部以外のロール部でも鋳片1を圧下することにな
り、その場合、圧下による凝固シェルの先進で未凝固部
2もロールバイト内奥の方に引き込まれ、濃化溶鋼の確
実な絞り出しが不可能となるためである。
【0016】また、突起部の幅Wは以下に述べる理由か
ら圧下位置における鋳片の固相率0.7で定義される未
凝固幅wより大きく、鋳片幅の80%以下にする必要が
ある。突起部の幅Wが圧下位置における鋳片の横断面内
固相率0.7で定義される未凝固幅wより小さいと鋳
片幅中央部のみ優先的に凝固界面が圧着され、濃化溶鋼
が未凝固部の端部に残留しやすく、また、鋳片の幅拡が
りや鋳片横断面内の曲げ変形等で延性が低い凝固界面が
鋳片幅方向に引張られることに起因して内部割れも発生
し易い。一方、突起部の幅Wを鋳片幅の80%以上にす
ると凝固殻の先進に引っ張られる形で未凝固部がロール
バイト内に侵入するため、濃化溶鋼を捕捉するような形
で凝固界面が圧着され、濃化溶鋼の完全な絞り出しが困
難となる。よって、これを防止するには突起部の幅Wを
鋳片幅の80%以下として凝固殻の先進を抑制しなけれ
ばならない。
【0017】圧下により内部割れを出さずに濃化溶鋼を
絞り出し、鋳片中心部に負偏析をつくるには、圧下する
タイミングも重要である。本発明では、図3に示すよう
に、連続鋳造方向で、中心部固相率(鋳片断面中心部に
おける固相の重量分率)が0.6〜0.8となる位置A
における連鋳ストランドに圧下を加えることとした。
心部固相率が未凝固部の溶鋼が流動できる溶鋼流動限界
固相率である0.8を越えると、物理的に濃化溶鋼は絞
り出せず、溶質を負偏析させることができない。逆に中
心部固相率が0.6以下では、未凝固部が広いことに起
因して凝固界面が引張り変形を受けやすく、内部割れが
発生し易いため、圧下されるストランドの中心部固相率
を0.6以上に制御しなければならない。
【0018】未凝固部を有する連鋳ストランドをロール
で大圧下する場合に発生する内部割れには、ロールバイ
ト入り側における凝固シェルが圧下ロールによりストラ
ンド縦断面内で曲げ変形を受け、凝固界面が引張られて
発生する内部割れがある。この種の内部割れを防止する
には、中心部固相率を高め未凝固厚を小さくすると共
に、圧下ロールの突起部における径を500mm以上と
大きくして凝固シェルの曲げ変形を抑えることが必要で
ある。
【0019】さらに、本発明では圧下により濃化溶鋼を
絞り出し負偏析させるために、鋳片厚み方向に鋳片幅中
央部における圧下率で10〜50%の圧下を加える。こ
こで言う圧下率は数1で定義され、鋳片厚は鋳片幅中央
部の値である。
【0020】
【数1】(圧下率%)={(圧下前鋳片厚)−(圧下後
鋳片厚)}×100/(圧下前鋳片厚)
【0021】圧下率で10%以下では未凝固部の濃化溶
鋼の絞り出しが不十分となり、逆V偏析や濃化溶鋼が鋳
片断面中心部に残留するため、却って偏析レベルは悪化
してしまう。また、突起部を有するロールで50%以上
の圧下を加えると分塊や成品圧延までの形状修復が著し
く困難となり、鋳片やビレット等の半製品でかなりの手
入れが必要となったり、成品の表面性状を損なったり、
場合によっては屑化する事態を招く。
【0022】更に、突起部の高さHを鋳片厚みの5%以
上にして、鋳片幅中央部における圧下率が10〜50%
の範囲であれば、図2に示すように、突起部以外のロー
ル部分が鋳片に接触するような大きい圧下率で鋳片を圧
下しても構わない。この場合も、未凝固部2が残留する
鋳片幅中央部は突起部によってより上流側から圧下され
始め、また、突起部以外の部分が接触するまではかなり
圧下による鋳片の先進が抑制されるため未凝固部2への
圧下の浸透性はそれなりに確保され、未凝固部2の圧着
性や濃化溶鋼の絞り出し性はあまり損われない。
【0023】また、凝固組織は柱状晶組織より等軸晶組
織の方が圧下による内部割れが発生し難いので、連鋳ス
トランド内の溶鋼に電磁気力を作用させ、ストランド内
の溶鋼を攪拌して凝固組織の等軸晶化を促進するのがよ
り好ましい。
【0024】
【実施例】湾曲型連鋳機を用いて表1、表2に示す条件
でS45C鋳片を製造すると共に、その鋳片を圧延して
得た40φ成品で平行部5φのJIS4号タイプの引張
り試験片を採取して、成品中心部の延性を絞りで評価し
た。比較のため本発明による鋳片とほぼ同等の鋳造条件
で鋳造し、圧下を加えなかった鋳片についても同様な調
査を行った。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】表2に鋳片中心部のC偏析度について5φ
ドリルで調査した結果、鋳片横断面のサルーファープリ
ントで内部割れ個数を測定した結果、X線でのセンター
ポロシティー観察結果、および成品での引張り試験で成
品中心部の延性を評価した結果を示す。表2から明らか
なように、本発明による材料では内部割れを発生させず
にセンターポロシティーを圧着すると共に、材料の中心
部を負偏析させることで成品中心部の延性は顕著に改善
されていた。
【0028】
【発明の効果】本発明により、鋼の連続鋳造において中
心偏析、センターポロシティー等の内質欠陥の生成を防
止して、熱間及び冷間加工性の優れた鉄鋼素材の製造が
可能となる。鋼材中心部の延性不足で生成していた冷間
押出しや引抜き時のシェブロクラックやカッピー断線、
中心偏析に起因する熱間鍛造時の割れ等の発生が防止で
き、従来以上に厳しい熱間、冷間加工が可能となる。更
に、鋳片段階での中心偏析やセンターポロシティーと言
った内質欠陥が消失することで均熱拡散処理の省略や、
より少ない圧延比で十分な機械的特性を有する鋼材の製
造が可能となり、分塊工程の省略への道が開かれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により、ロールの突起部のみで圧下を加
える状況を示す図である。
【図2】本発明により、ロールの突起部以外部を含むロ
ール全体で圧下を加える状況を示す図である。
【図3】 凝固途中の鋳片縦断面を模式的に示す図であ
る。
【符号の説明】
1 鋳片 2 未凝固部 3 固相率0.7の界面 4 圧下ロール W 突起部の幅 L 突起部の径 H 突起部の高さ w 未凝固幅A 圧下を加える位置 a 固相率0.6の界面 b 固相率0.8の界面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 関 和典 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株 式会社 技術開発本部内 (72)発明者 富田 實 北海道室蘭市仲町12 新日本製鐵株式会 社 室蘭製鐵所内 (72)発明者 保坂 守男 北海道室蘭市仲町12 新日本製鐵株式会 社 室蘭製鐵所内 (56)参考文献 特開 平5−69099(JP,A) 特開 昭61−132247(JP,A) 実開 平1−100661(JP,U) 特公 平2−56982(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B22D 11/128 350 B21J 1/02 B22D 11/10 350 B22D 11/20

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 矩形断面鋳片を製造する連続鋳造におい
    て、該鋳片の偏平比を1.1以上にすると共に、2次冷
    却帯以降に鋳片幅中央部該当位置に高さHが鋳片厚みの
    5%以上である突起部を有し、しかもその突起部の径が
    500mm以上で、且つ、突起部の幅Wが圧下位置にお
    ける鋳片の横断面内の固相率0.7で定義される未凝固
    幅wより大きく、鋳片幅の80%以下であるロールを1
    対配し、連続鋳造方向で中心部固相率が0.6〜0.8
    となる位置における連鋳ストランドに該ロール対で鋳片
    厚み方向に鋳片幅中央部における圧下率で10〜50%
    の圧下を加えることを特徴とする連鋳鋳片の内質改善方
    法。
  2. 【請求項2】 連鋳ストランド内の溶鋼に電磁気力を作
    用させ、ストランド内の溶鋼を攪拌することを組合せた
    請求項1記載の連鋳鋳片の内質改善方法。
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