JP2995021B2 - 歯付プーリ群及び歯付プーリ並びにそれを用いた動力伝達装置 - Google Patents

歯付プーリ群及び歯付プーリ並びにそれを用いた動力伝達装置

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JP2995021B2
JP2995021B2 JP9227879A JP22787997A JP2995021B2 JP 2995021 B2 JP2995021 B2 JP 2995021B2 JP 9227879 A JP9227879 A JP 9227879A JP 22787997 A JP22787997 A JP 22787997A JP 2995021 B2 JP2995021 B2 JP 2995021B2
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圭一郎 松尾
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般産業機械、プ
リンタ等の精密機械、自動車エンジンのカムシャフト駆
動等において動力を伝達するために圧縮係合タイプの歯
付ベルトとの組合せで用いられる歯付プーリ群及び歯付
プーリ並びにそれを用いた動力伝達装置に関し、特に歯
付プーリの歯溝形状の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、この種の歯付プーリでは、図5
に示すように、各々、周方向に相隣る歯部a,a間の各
歯溝bは、プーリ軸心と直交する断面形状において溝中
心線Lcに対し対称な形状に形成されていて、その溝中
心線Lcの両側に凹状円弧形に形成された1対の圧力面
c,cと、これら両圧力面c,c間に形成された溝底面
dとを有しており、各圧力面cは、対応する歯部aの歯
先面により形成されるプーリランド部eに接続してい
る。
【0003】そして、図6に示すように、上記各歯溝b
の溝深さHp(溝中心線Lc上におけるプーリピッチラ
インLpとの交点と溝底面dとの交点との間の寸法)
は、この歯付プーリAに組み合わされる歯付ベルトB
(同図の仮想線)のベルト歯fの歯高さHb(ベルトピ
ッチラインLbとベルト歯fの歯先面gとの間のベルト
厚さ方向の寸法)よりも小さく(Hp<Hb)設定され
ており、このことで、プーリAの歯溝bに係合する各ベ
ルト歯fを、その溝底面dによりベルト厚さ方向に圧縮
させるようになっている。この圧縮力Fは、凸状円弧形
をなすベルト歯圧力面hをさらに膨出変形させてプーリ
Aの圧力面cとの間のバックラッシを埋めるように同図
の矢印F1,F1の向きに作用し、さらには、ベルトピ
ッチラインLbを押し上げるように同図の矢印F2の向
きに作用してベルトピッチラインLbの形状を円弧に近
付ける。
【0004】ところで、上記各圧力面cを形成する円弧
の曲率中心Qは、溝中心線Lcに対し該圧力面cとは反
対の側に配置されていて、歯付ベルトBのベルト歯圧力
面hを形成する円弧の曲率中心位置がベルトピッチライ
ンLb上に設定されていることから、従来では、プーリ
ピッチラインLpの上に配置される
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の歯付プーリAでは、歯溝数が異なるとプーリピッチ
ラインLpの曲率が変化することから、その曲率変化に
伴って各圧力面cの曲率中心Qが溝底面dに対し半径方
向に変位することになり、このために、各歯溝bの周方
向の寸法が変化し、その結果、圧力面cとベルト歯圧力
面hとの間のバックラッシが不均一になって性能に差異
が生じるようになったり、さらにはプーリランド部eの
周方向長さが不均一になってベルトランド部iとの間で
不具合が発生し易くなるという難点がある。
【0006】特に、上記歯溝数の少ない歯付プーリAの
ときには、図7に実線で示すように、同図に仮想線で示
歯溝数の多い歯付プーリAのときよりもプーリピッチ
ラインLpの曲率が小さくなり、それに応じて各圧力面
cの曲率中心Qがプーリ中心に向かって変位することに
なるために、各歯溝bの周方向寸法は歯溝数の多い場合
よりも大きくなる。その結果、上記バックラッシが大き
くなり、このために、歯付ベルトBとの係合時にベルト
歯fにベルトピッチラインLbを押し上げるだけの圧縮
力を加えることが困難になり、その上、歯付ベルトBが
該ベルトBに加わっている張力の方向にずれて不安定な
挙動を起こし易くなることから、歯付プーリAの回転方
向における位置決め精度がわるくなる。
【0007】また、上記歯溝数が少なくて各歯溝bの周
方向寸法の大きい歯付プーリAに変更するときには、各
プーリランド部eの周方向長さが短くなることから、ベ
ルトランド部iとの間の接触面積が減少して両者間の面
圧が増大することになり、そのために、ベルトランド部
iの摩耗を促進させてベルト摩耗という故障が引き起こ
され易くすることになる。さらに、歯付ベルトBとの噛
合時にプーリランド部eとベルトランド部iとの間で叩
き音が発生することは知られているが、上記面圧の増大
によりそのような叩き音が大きくなって騒音を増大させ
ることにもなる。
【0008】尚、以上のような不具合に対処するため
に、従来の歯付プーリAでは、プーリピッチラインLp
の曲率に応じて圧力面cの曲率中心Qやその曲率半径R
を変更することでベルト歯圧力面hとの間のバックラッ
シの量が一定になるように調整することがある。ところ
が、この場合には、歯溝数が多いときと少ないときとで
歯溝形状が大きく変化することになり、その結果、使用
するプーリAの歯溝数によって範囲分けをする必要が生
じるために煩雑かつ不経済である。
【0009】本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもの
であり、その主な目的は、歯溝数の互いに異なる複数の
歯付プーリからなっていて、圧縮係合タイプの歯付ベル
トと組み合わせて用いられる歯付プーリ群において、各
圧力面の曲率中心位置を見直すことで、プーリピッチラ
インの曲率変化に拘らず、ベルト歯との間のバックラッ
シの大きさ及びプーリランド部の周方向長さを共に一定
化できるようにし、もって、圧力面の曲率中心位置やそ
の曲率半径を変更することなく、歯溝数に拘らず同じ性
能を発揮させることができるとともに、歯溝数に起因す
る不具合の発生を回避できるようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明では、各圧力面の曲率中心を、プーリピッ
チラインの曲率変化の影響を受けないように、対応する
溝中心線とプーリピッチラインとの交点における該プー
リピッチラインの接線上に配置するようにした。
【0011】具体的には、請求項1の発明では、歯溝数
の互いに異なる複数の歯付プーリからなり、各歯付プー
リは、複数の歯溝が歯溝数に拘らず一定の値に設定され
た間隔をおいて周方向に配置されてなっており、上記各
歯溝が、プーリ軸心と直交する断面形状において溝中心
線に対し対称な形状に形成されていて、その溝中心線の
両側に凹状円弧形に設けられた1対の圧力面と、それら
1対の圧力面間に設けられた溝底面とを有しており、上
記各圧力面を形成する円弧の曲率中心が上記溝中心線に
対し該圧力面とは反対の側に配置されているとともに、
該円弧の曲率半径が歯溝数に拘らず一定の値に設定され
歯付プーリ群を前提としている。
【0012】そして、上記各円弧の曲率中心は、上記溝
中心線上の上記溝底面からの距離が歯溝数に拘らず一定
の値に設定された位置において該溝中心線と直交する直
線上に配置されているものとする。
【0013】上記の構成において、歯付プーリのプーリ
ピッチラインの曲率は、歯溝数の少ない歯付プーリのと
には歯溝数の多い歯付プーリのときよりも小さくな
る。その際に、各圧力面を形成する円弧の曲率中心は、
対応する歯溝中心線上の溝底面からの距離が歯溝数に拘
らず一定である所定位置において該中心線と直交する方
向に延びる直線上にあるので、溝底面に対する上記曲率
中心の位置は、プーリピッチラインの曲率変化に拘らず
一定となる。これにより、プーリピッチラインの曲率変
化に拘らず、ベルト歯との間のバックラッシの大きさ及
びプーリランド部の周方向長さは共に略一定化され、よ
って、歯溝数の多少に拘らず同じ性能が発揮されるとと
もに、歯溝数の多少に起因する不具合の発生は回避され
ることとなる。
【0014】請求項2の発明では、上記請求項1の発明
において、各円弧の曲率中心が配置される直線の溝中心
線上における溝底面からの距離は、プーリピッチライン
の外周側に位置付けられるように設定されているものと
する。
【0015】上記の構成において、各圧力面を形成する
円弧の曲率中心がプーリピッチラインよりも外周側に位
置しているので、上記曲率中心がプーリピッチライン上
に位置している従来の場合よりも各歯溝の周方向の寸法
差は小さくなる。よって、ベルト歯の圧力面との間のバ
ックラッシは従来の場合よりも小さく、またプーリラン
ド部の周方向長さは従来の場合よりも大きくなる。
【0016】請求項3の発明では、上記請求項2の発明
において、各円弧の曲率中心が配置される直線は、溝中
心線とプーリピッチラインとの交点における該プーリピ
ッチラインの接線上されているものとする。
【0017】上記の構成において、溝中心線とプーリピ
ッチラインとの交点では、その溝中心線上の溝底面から
の距離は歯溝数に拘らず一定であり、また上記交点にお
けるプーリピッチラインの接線は、該プーリピッチライ
ンよりも外周側にある。よって、プーリピッチラインの
曲率変化に拘らず、ベルト歯との間のバックラッシの大
きさ及びプーリランド部の周方向長さは共に略一定化さ
れることになり、しかも、ベルト歯の圧力面との間のバ
ックラッシは従来の場合よりも小さく、またプーリラン
ド部の周方向長さは従来の場合よりも大きくなる。
【0018】請求項4の発明では、上記請求項3の発明
に係る歯付プーリに歯付ベルトが組み合わされてなる動
力伝達装置として、上記歯付ベルトは、複数のベルト歯
が相隣る該ベルト歯間にベルトランド部を介在させてベ
ルト長さ方向に等間隔に配置されてなるものであり、上
記各ベルト歯は、ベルト幅方向と直交する断面形状にお
いて歯中心線に対し対称な形状に形成されていて、その
歯中心線の両側に設けられた凸状円弧形をなす1対の圧
力面と、それら1対の圧力面間に設けられた歯先面とを
有しており、上記各圧力面を形成する円弧の曲率中心が
上記歯中心線に対し該圧力面とは反対の側でかつベルト
ピッチライン上に配置されているものとしたので、上記
請求項3の発明での作用が具体的にかつ適正に営まれる
動力伝達装置を得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を、図面
に基づいて説明する。
【0020】図1は、本発明の実施形態に係る歯付プー
リ群の各歯付プーリPの要部を示しており、この歯付プ
ーリ群は、図2に示すように、圧縮係合タイプの歯付ベ
ルトBと組み合わされて動力伝達装置を構成するために
使用される。
【0021】先ず、上記歯付ベルトBについて説明して
おくと、このベルトBは、図2に仮想線で示すように、
複数(同図には1つのみ示している)のベルト歯f,
f,…が相隣るベルト歯f,f間にフラットなベルトラ
ンド部iを介在させてベルト長さ方向に等間隔(例えば
8mm間隔)に配置されてなっており、それら各ベルト
歯fは、ベルト幅方向と直交する断面形状において歯中
心線(図2ではLcで示される溝中心線に一致してい
る)に対し対称な形状に形成されていて、その歯中心線
の両側に凸状円弧形に設けられた1対の圧力面h,h
と、その両圧力面h,h間に設けられたフラットな歯先
面gとを有する。そして、各圧力面hを形成する円弧の
曲率中心は、歯中心線の該圧力面hとは反対の側でかつ
ベルトピッチラインLbの上に配置されている。
【0022】次に、上記歯付プーリPの説明を行なう。
このプーリPは、周方向に所定間隔をおいて複数の歯部
1,1,…が設けられてなっており、各々、周方向に相
隣る歯部1,1間には、上記歯付ベルトBの各ベルト歯
hと係合する歯溝2,2,…が形成されている。これら
歯溝2,2,…は、その歯溝数に拘らず周方向に等間隔
(例えば8mm間隔)に配置されており、各歯溝2は、
プーリ軸心と直交する断面形状において溝中心線Lcに
対し対称な形状に形成されている。
【0023】上記各歯溝2は、溝中心線Lcの両側に凹
状円弧形に設けられた1対の圧力面5,5と、これら両
圧力面5,5間に設けられていて、上記歯付ベルトBの
ベルト歯fとの係合時に該ベルト歯fをその歯先面gに
圧接してベルト厚さ方向に圧縮する溝底面3と、これら
各圧力面5及び溝底面3を滑らかに接続する凹状円弧形
に形成された1対の歯元部4,4と、各圧力面5をプー
リランド部7に滑らかに接続させる凸状円弧形に形成さ
れた1対の歯先部6,6とを有する。また、各圧力面5
を形成する円弧の曲率中心Qは、溝中心線Lcに対し該
圧力面5とは反対の側に配置されており、各円弧の曲率
半径Rは歯溝数に拘らず一定の値(例えば、R=5.3
mm)とされている。
【0024】そして、本実施形態では、上記各圧力面5
を形成する円弧の曲率中心Qは、溝中心線Lc上の溝底
面3からの距離が歯溝数に拘らず一定の値に設定された
位置において該溝中心線Lcと直交する直線上でかつプ
ーリピッチラインLpの外周側に配置されている。
【0025】具体的には、上記溝底面3からの距離が一
定である位置は、溝中心線Lc上のプーリピッチライン
Lpとの交点とされており、上記の位置において溝中心
線Lcと直交する直線は、上記交点におけるプーリピッ
チラインLpの接線Lとされており、したがって、この
接線L上に上記曲率中心Qは配置されている。この場合
に、上記交点の溝底面3からの距離は、歯溝2の溝深さ
Hpである。また、曲率中心Qの上記交点からの寸法m
は、歯付ベルトBのベルト歯fの歯元幅寸法の半分と、
歯溝2におけるベルト歯fとの間のバックラッシ寸法の
半分とを合算した値(例えばm=2.6mm)に設定さ
れている。
【0026】ここで、上記のように構成された歯付プー
リPの作用について説明する。図2に示すように、歯付
プーリPに歯付ベルトBが噛み合うとき、歯溝2の溝深
さHpがベルト歯fの歯高さHbよりも小さい(Hp<
Hb)ことから、ベルト歯fは、圧縮されながらプーリ
Pの歯部1と噛み合うことになる。そして、ベルト歯f
の歯先面gに加わった圧縮力Fは、歯溝2の圧力面5と
の間のバックラッシを埋めるように矢印F1,F1の向
きに作用し、さらにベルトピッチラインLbを押し上げ
て円弧状のプーリピッチラインLpに近付けるように矢
印F2の向きに作用する。このとき、上記圧力面5の曲
率中心Qが従来の場合よりも外周側に位置しているの
で、その分だけ各歯溝2の周方向寸法が小さくなる結
果、各歯溝2の圧力面5とベルト歯fの圧力面hとの間
のバックラッシは小さくなり、それに応じて、ベルトピ
ッチラインLbを押し上げる力F2は増加する。よっ
て、ベルト歯高さHbが永久歪みで多少小さくなったと
しても、上述のような圧縮による作用は確保される。ま
た、上記バックラッシが小さいので噛合時の歯付プーリ
Pの挙動は安定化する。さらに、バックラッシが小さく
なった分だけプーリランド部7の周方向長さnが大きく
なるので、歯付ベルトBのベルトランド部iとの間の面
圧の増大は抑えられるようになり、そのような面圧の増
大に起因するベルト摩耗や騒音は回避される。
【0027】次に、上記歯付プーリPの歯溝数が少ない
ときの作用について説明する。歯付プーリPの歯溝数が
例えば30から18に少なくされるときには、図3に実
線で示すように、同図に仮想線で示す歯溝数の多い歯付
プーリPのときりもプーリピッチラインLpの曲率は
小さくなる。その際に、各歯溝2の圧力面5の曲率中心
Qが、溝中心線Lcとの交点におけるプーリピッチライ
ンLpの接線Lの上に位置しているので、円弧中心Qの
位置は溝底面3に対し一定である。よって、歯溝数に拘
らず各歯溝2の周方向寸法が略一定化されることになる
ので、プーリピッチラインLpの曲率変化に拘らず、歯
付ベルトBのベルト歯fとの間のバックラッシの大きさ
は従来の場合よりも小さい状態で、またプーリランド部
7の周方向長さnは従来の場合よりも大きい状態で共に
略一定化される。
【0028】したがって、本実施形態によれば、圧縮係
合タイプの歯付ベルトBと組み合わせて用いられる歯付
プーリ群の各歯付プーリPにおいて、各歯溝2の圧力面
5の曲率中心Qを、溝中心線Lcとの交点におけるプー
リピッチラインLpの接線Lの上に配置するようにした
ので、歯溝数に拘らずベルト歯fの圧力面hとの間のバ
ックラッシを従来の場合よりも小さい状態で略一定化す
ることができ、その結果、歯溝数が少ないときでも、永
久歪みで多少小さくなったベルト歯高さHbに対する圧
縮による作用を確保することができるとともに、噛合時
の挙動が安定化して正確な位置決め精度を得ることがで
きる。
【0029】また、上記歯溝数に拘らずプーリランド部
7の周方向長さnを従来の場合よりも大きい状態で略一
定化することができるので、歯付ベルトBのベルトラン
ド部iとの間の接触面積の減少に起因する面圧の増大を
抑えることができ、その結果、ベルト摩耗という故障を
起き難くすることができるとともに、ベルトランド部i
との間での叩き音による騒音の増大を抑えることもでき
る。
【0030】−具体例− ここで、上記実施形態に係る発明例としての歯付プーリ
における歯溝数によるプーリランド部の長さ(周方向長
さ)の変化について説明する。具体的には、歯溝数が3
0であるとき及び18であるときの各プーリランド部の
長さをそれぞれ測定した。また、比較のために、圧力面
の曲率中心がプーリピッチラインの上に配置されている
従来の歯付プーリを比較例とし、この比較例についても
歯溝数が30であるとき及び18であるときの各プーリ
ランド部の長さをそれぞれ測定した。尚、比較例におけ
る溝中心線との交点から曲率中心までの寸法mは、プー
リピッチラインに沿ってm=2.6mmであり、曲率半
径R及び歯溝ピッチtは、それぞれ発明例の場合と同様
にR=5.3mm及びt=8mmである。その結果を、
次の表1に併せて示す。
【0031】
【表1】
【0032】上記の表1において、歯溝数が30である
ときの発明例のプーリランド部の長さは、比較例の場合
よりも0.06mm(=1.24−1.18)だけ大き
い。そして、歯溝数が18であるときの発明例のプーリ
ランド部の長さは、比較例の場合よりも0.10mm
(=1.09−0.99)だけ大きい。また、歯溝数が
30から18に変化したときのプーリランド部の長さの
変化率は、発明例の場合には0.879(=1.09÷
1.24)であり、比較例の場合には0.839(=
0.99÷1.18)である。つまり、発明例の場合で
もプーリランド部の長さは歯溝数が少なくなるのに応じ
てやはり小さくはなるものの、比較例の場合ほどには小
さくならず、比較例の場合に比べて略一定化しているこ
とが判る。
【0033】また、図4に、歯溝数が18のときの発明
例(同図の実線)を、同じく歯溝数が18のときの比較
例(同図の仮想線)と併せて示す。この図4からも判る
ように、発明例の場合には歯溝の周方向寸法は比較例の
場合よりも小さく、したがって、比較例の場合よりもプ
ーリランド部の長さが大きい一方、ベルト歯との間のバ
ックラッシは小さくなることが判る。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明に
よれば、歯溝数の互いに異なる複数の歯付プーリからな
っており、各歯付プーリは、複数の歯溝が歯溝数に拘ら
一定の値に設定された間隔をおいて周方向に配置され
てなり、上記各歯溝が、プーリ軸心と直交する断面形状
において溝中心線に対し対称な形状に形成されていて、
該溝中心線の両側に凹状円弧形に設けられた1対の圧力
面と、該1対の圧力面間に設けられた溝底面とを有して
おり、上記各圧力面を形成する円弧の曲率中心が溝中心
線に対し該圧力面とは反対の側に配置されているととも
に、該円弧の曲率半径が歯溝数に拘らず一定の値に設定
される歯付プーリ群において、上記各円弧の曲率中心
を、溝中心線上の溝底面からの距離が歯溝数に拘らず
定の値に設定された位置において該溝中心線と直交する
直線上に配置するようにしたので、プーリピッチライン
の曲率変化に拘らず各歯溝の周方向寸法を略一定化して
ベルト歯との間のバックラッシの大きさ及びプーリラン
ド部の周方向長さを共に略一定化することができ、よっ
て、歯溝数の多少に拘らず同じ性能を発揮させることが
できるとともに、歯溝数の多少に起因する不具合の発生
を回避することができる。
【0035】請求項2の発明によれば、上記各円弧の曲
率中心が配置される直線の溝中心線上における溝底面か
らの距離を、上記曲率中心がプーリピッチラインの外周
側に位置付けられるように設定することとしたので、曲
率中心がプーリピッチライン上に配置される従来の場合
よりも各歯溝の周方向寸法を小さくできる結果、ベルト
歯の圧力面との間のバックラッシを従来の場合よりも小
さくして該ベルト歯に対する圧縮作用を確保することが
できるとともに噛合時の挙動を安定化させて正確な位置
決め精度を得ることができる一方、プーリランド部の周
方向長さを従来の場合よりも大きくして歯付ベルトのベ
ルトランド部との間の面圧の増大を抑えることができ、
そのような面圧の増大に起因するベルト摩耗や騒音の発
生を回避することができる。
【0036】請求項3の発明によれば、上記各円弧の曲
率中心が配置される直線を、溝中心線とプーリピッチラ
インとの交点における該プーリピッチラインの接線
るようにしたので、上記請求項1及び2の各発明による
効果を共に具体的にかつ適正に得ることができる。
【0037】請求項4の発明によれば、上記歯付プーリ
に歯付ベルトが組み合わされてなる動力伝達装置とし
て、上記歯付ベルトを、複数のベルト歯が相隣る該ベル
ト歯間にベルトランド部を介在させてベルト長さ方向に
等間隔に配置されてなり、上記各ベルト歯が、ベルト幅
方向と直交する断面形状において歯中心線に対し対称な
形状に形成されていて、該歯中心線の両側に凸状円弧形
設けられた1対の圧力面と、該1対の圧力面間に設け
られた歯先面とを有しており、上記各圧力面を形成する
円弧の曲率中心が歯中心線に対し該圧力面とは反対の側
でかつベルトピッチライン上に配置されているものとし
たので、上記請求項3の発明による効果が具体的にかつ
適正に発揮される動力伝達装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る歯付プーリ群の各歯付
プーリの歯溝形状を示す縦断面図である。
【図2】歯付プーリの歯溝に歯付ベルトのベルト歯が係
合する状態を示す縦断面図である。
【図3】歯溝数の少ない歯付プーリのときの歯溝形状を
歯溝数の多い歯付プーリのときと対比して示す縦断面図
である。
【図4】歯溝数の少ないときの発明例の歯付プーリの歯
溝形状を歯溝数の少ないときの比較例の歯付プーリの歯
溝形状と対比して示す縦断面図である。
【図5】従来の歯付プーリの歯溝形状を示す図1相当図
である。
【図6】従来の歯付プーリの歯溝に歯付ベルトのベルト
歯が係合する状態を示す図2相当図である。
【図7】歯溝数の少ないときの従来の歯付プーリの歯溝
形状を歯溝数の多いときと対比して示す図3相当図であ
る。
【符号の説明】
P 歯付プーリ 2 歯溝 3 溝底面 4 歯元部 5 圧力面 6 歯先部 7 プーリランド部 Lc 溝中心線 Lp プーリピッチライン L 接線(直線) Q 円弧中心 R 円弧半径 B 歯付ベルト f ベルト歯 g 歯先面 h 圧力面 i ベルトランド部 Lb ベルトピッチライン
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16H 7/02 F16G 1/28 F16H 55/08 F16H 55/38

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 歯溝数の互いに異なる複数の歯付プーリ
    からなり、各歯付プーリは、複数の歯溝が歯溝数に拘わ
    らず一定の値に設定された間隔をおいて周方向に配置さ
    れてなり、上記各歯溝は、プーリ軸心と直交する断面形
    状において溝中心線に対し対称な形状に形成されてい
    て、該溝中心線の両側に設けられた凹状円弧形をなす
    対の圧力面と、該1対の圧力面間に設けられていて、歯
    付ベルトのベルト歯が上記歯溝に係合したときに該ベル
    ト歯を上記1対の圧力面に向かって膨出変形するように
    ベルト厚さ方向に圧縮する溝底面とを有し、上記各圧力
    面を形成する円弧の曲率中心が上記溝中心線に対し該圧
    力面とは反対の側に配置されているとともに、該円弧の
    曲率半径が歯溝数に拘わらず一定の値に設定される歯付
    プーリ群において、 上記各円弧の曲率中心は、上記溝中心線上の上記溝底面
    からの距離が歯溝数に拘わらず一定の値に設定された
    置において該溝中心線と直交する直線上に配置されてい
    ることを特徴とする歯付プーリ群
  2. 【請求項2】 請求項1記載の歯付プーリ群の歯付プー
    リであって、 各円弧の曲率中心が配置される直線の溝中心線上におけ
    る溝底面からの距離は、上記曲率中心がプーリピッチラ
    インの外周側に位置付けられるように設定されているこ
    とを特注とする歯付プーリ。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の歯付プーリにおいて、 各円弧の曲率中心が配置される直線は、溝中心線とプー
    リピッチラインとの交点における該プーリピッチライン
    の接線されていることを特徴とする歯付プーリ。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の歯付プーリに歯付ベルト
    が組み合わされてなる動力伝達装置であって、 上記歯付ベルトは、複数のベルト歯が相隣る該ベルト歯
    間にベルトランド部を介在させてベルト長さ方向に等間
    隔に配置されてなり、上記各ベルト歯は、ベルト幅方向
    と直交する断面形状において歯中心線に対し対称な形状
    に形成されていて、歯付プーリの歯溝に上記ベルト歯が
    係合したときに該歯溝の1対の圧力面との間にバックラ
    ッシを形成するように上記歯中心線の両側に凸状円弧形
    に設けられた1対の圧力面と、歯付プーリの歯溝に上記
    ベルト歯が係合したときに該歯溝の溝底面によりベルト
    厚さ方向に圧縮されるように上記1対の圧力面間に設け
    られた歯先面とを有し、上記各圧力面を形成する円弧の
    曲率中心が上記歯中心線に対し該圧力面とは反対の側で
    かつベルトピッチライン上に配置されていることを特徴
    とする動力伝達装置。
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