JP2994798B2 - 密閉式角型蓄電池とその製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、密閉角型ニッケルカ
ドミウム蓄電池等の密閉式角型蓄電池とその製造方法に
関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、電池を用いるポータブル機器の発
展はめざましく、ビデオカメラ、携帯電話、ラップトッ
プコンピュータ等の商品化が積極的に展開されている。
これ等の機器の駆動電源として使用される電池は、高容
量かつ小型軽量化への要求が年々高まっている。これら
の要求に対応するために、電池を小型化して、省スペー
スとすることを目的として、外装缶の形状を、従来の円
筒形から角型とした小型電池が多く利用されるようにな
っている。

【０００３】このような小型角型電池は、普通は次のよ
うにして製造される。角型の有底外装缶に極板群を挿入
する。極板群は、陽極板と、セパレータと、陰極板とを
積層して製造する。陰極板は外装缶に接続し、陽極板
は、蓋体に絶縁ガスケットを介して設けられた陽極端子
に接続する。その後、外装缶に電解液を注入し、蓋体の
周縁部を外装缶の開口端周縁部にレーザー溶接して密閉
する。

【０００４】このようにして製造される電池は、容量当
りの重量を軽くし、さらに可能な限り容積を小さくする
ことが要求される。円筒型の電池を軽量化するための技
術として、外装缶の一部を薄くする技術が、特開昭５７
−９６４５５号公報に記載されている。この公報に記載
される電池は、金属製外装缶の円筒胴部を、底面よりも
薄くして軽量化している。しかしながら、この構造は、
外装缶が円筒状の電池にしか利用できない。それは、円
筒形が耐圧に対して理想的な形状で、著しく強靱なこと
が理由である。対耐圧強度に優れた円筒状の胴部は、薄
くしても充分な強度を有するので、この部分を薄くして
軽くすることができる。しかしながら、角型電池は、各
面が平面で圧力変形を受け易いので、この技術を利用で
きない。

【０００５】角型電池の平面をプレス加工した電池も開
発されている。例えば、特開昭６２−１２６５６６号公
報には、外装缶の幅広面をプレス加工して凹部を設けた
角型電池が記載されている。この電池は、凹部が補強リ
ブとなって、幅広面の変形を少なくできる特長がある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この構
造の電池は、凹部によって内部に収納する極板群の容積
に制約を受ける欠点がある。とくに、凹部の隅部に隙間
なく極板群を充填できないので、容量が少なくなる。近
年の電池は、高容量化のニーズから、電池内部の有効体
積を極力極板群体積として利用することが要求されてい
る。

【０００７】さらにまた、この構造の角型電池は、外装
缶の変形を少なくできる特長はあるが、電池内圧力が上
昇して、一旦変形した後は、圧力が低下してもとの形状
に復元する作用が少ない欠点がある。このため、電池内
圧力が上昇して、外装缶が変形した後は、内圧が低下し
ても電池性能が低下する欠点がある。それは、外装缶が
変形すると、電極間隔が設計値よりも広くなることが理
由である。

【０００８】この発明は、角型電池が有するこれ等の欠
点を解決することを目的に開発されたもので、この発明
の重要な目的は、内圧に対する変形量を少なくできると
共に、内圧が正常に低下したときの復元性に優れた密閉
式角型蓄電池とその製造方法を提供するにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】この発明の密閉式角型蓄
電池は、前述の目的を達成するために、下記の構成を備
えている。密閉式角型蓄電池は、陽極板とセパレータと
陰極板を積層してなる極板群１を、密閉された外装缶２
に内蔵したもので、積層された極板群１の極板と平行な
面である外装缶の幅広面２Ａを、中央部を周縁部に対し
て電池の内部方向に湾曲している。

【００１０】さらに、この発明の密閉式角型蓄電池の製
造方法は、下記のとの工程で蓄電池を製造する。

【００１１】 陽極板とセパレータと陰極板を積層し
てなる極板群１を、有底の角型外装缶２内に、極板群１
を構成する極板と外装缶の幅広面２Ａとが平行となるよ
うに挿入する工程

【００１２】 外装缶の幅広面２Ａを、中央部が周縁
部に対し電池内部方向に湾曲するように圧縮する工程

【００１３】ただし、この発明は、との工程の順番
を特定しない。の工程の後にの工程を経て電池を製
造する、すなわち、極板群１を挿入した外装缶の幅広面
２Ａを中央凹にプレスすることも、あるいは、の工程
の後にの工程を経て電池を製造する、すなわち、幅広
面２Ａを中央凹にプレスした外装缶２に極板群１を挿入
することも可能である。

【００１４】

【作用】電池は、過充電すること等により電池内部の圧
力が上昇する。内圧が高くなると、角型である外装缶２
の各面に均一な圧力が加わる。このとき、最大の面積を
持つ幅広面２Ａが最も変形し易い。この発明の密閉式角
型蓄電池は、外装缶２の最大面積をもつ幅広面２Ａと、
極板群１に積層する極板とを平行になるように配して電
池を組み立てているとともに、幅広面２Ａを、周縁部に
対して中央部が電池内部方向に向かって湾曲させた形状
をしている。この形状の外装缶２は、断面形状がアーチ
状となり、内部圧力が上昇して変形するときには幅広面
２Ａが収縮する必要がある。この状態で変形する幅広面
２Ａは、従来の平面状に比較すると、耐圧強度を向上さ
せて変形量を少なくできる。とくに、幅広面２Ａの中央
凹の変形量を極めて少なく、たとえば、０．１ｍｍとし
ても、耐内圧強度を向上できる特長がある。

【００１５】さらにまた、この発明の電池は、外装缶の
幅広面２Ａを極板と平行に配設している。この構造の電
池は、セパレータを圧縮できる範囲で中央を凹に湾曲す
ることによって、耐圧強度を強くできる。このため、極
板を脱落させることなく、また、極板群１の容量を減少
することなく、耐圧強度を強くして外装缶２を薄くでき
る。

【００１６】さらに、この発明の密閉式角型蓄電池は、
幅広面をプレス加工して一部に凹部を成形した従来の電
池に比較して、内圧が低下したときの残留変形量を少な
くでき、圧力変形に対する復元性が高い特長も実現す
る。

【００１７】

【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて説
明する。但し、以下に示す実施例は、この発明の技術思
想を具体化する技術を例示すものであって、この発明を
下記の構造や製造方法に特定するものでない。この発明
は、特許請求の範囲に於て、種々の変更を加えることが
できる。

【００１８】更に、この明細書は、特許請求の範囲を理
解し易いように、実施例に示される部材に対応する番号
を、「特許請求の範囲」、および「課題を解決する為の
手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許
請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定する
ものでは決してない。

【００１９】下記の工程で密閉式角型蓄電池を製造す
る。 ［実施例１］ ニッケルメッキを施した鋼板を絞り加
工によって所定寸法の有底角型外装缶２を製造する。
３枚の陽極板と、４枚の陰極板と、それらを隔離する
６枚のセパレータを積層して極板群１を製作する。セパ
レータには、１枚当りの圧縮可能な寸法が０．０５ｍｍ
である不織布を使用する。 積層した極板群１を、外
装缶２に挿入する。このとき、極板群１の極板が外装缶
の幅広面２Ａと平行となるように挿入する。 陽極端
子を持つ蓋体を、外装缶２の開口端に装着し、その周辺
をレーザー溶接して密閉角型のニッケルカドミウム蓄電
池とする。 次いで、上記外装缶の幅広面２Ａの中央
部分を、図１と図２とに示す構造のポンチで圧縮する。
この加工によって、幅広面２Ａは、中央部の厚さを周縁
部に比較して、０．２ｍｍ薄く圧縮した。

【００２０】［実施例２］ ニッケルメッキを施した
鋼板を、絞り加工によって所定寸法の有底角型外装缶２
を製造する。 外装缶の幅広面２Ａの中央部分を、図
３と図４とに示す装置を使用して圧縮する。この加工に
よって、幅広面２Ａは、中央部の厚さを周縁部に比較し
て、０．２ｍｍ薄く圧縮した。この工程で、中央部分が
凹に湾曲して外装缶２を製造する。 ３枚の陽極板
と、４枚の陰極板と、それらを隔離する６枚のセパレー
タを積層して極板群とする。セパレータには、１枚当り
の圧縮可能な寸法が０．０５ｍｍである不織布を使用す
る。極板群を外装缶２に挿入する。 陽極端子を持
つ蓋体を、外装缶２の開口端に装着し、その周辺をレー
ザー溶接して密閉角型ニッケルカドミウム蓄電池とす
る。

【００２１】以上の実施例１および実施例２によって、
外装缶の幅広面２Ａの中央部分を凹に湾曲した密閉式角
型蓄電池が製造される。

【００２２】［比較例１］比較例１として、上記のよう
な圧縮による湾曲面を持たない外装缶、すなわち、幅広
面が平面状である密閉角型ニッケルカドミウム蓄電池を
試作する。

【００２３】［比較例２］比較例２として、幅広面を湾
曲させるのに代わって、図５と図６とに示す金型を使用
して、幅広面２Ａの一部を絞り加工して同一深さの溝を
形成した電池を製造する。

【００２４】実施例１および２と、比較例１および２の
密閉角型ニッケルカドミウム蓄電池を下記の状態で試験
して、外装缶２の変形量を測定した。 製造された電
池の蓋体に高圧ボンベを接続する。 外装缶に供給す
るガス圧を次第に上昇させる。 各圧力に対する幅広
面２Ａの変形量、すなわち、幅広面２Ａの中央部分の厚
さの変化を測定する。 ガスの供給を停止して、外装
缶２の内圧を大気圧として、幅広面２Ａの中央部分の残
留変形量を測定して、圧力変形の復元性を測定した。

【００２５】測定結果を、図７に示している。この図の
測定結果からわかるように、この発明の密閉式角型蓄電
池は、内圧がどの範囲にあっても、幅広面が平面である
比較例１の従来電池よりも外装缶の変化量が少ない。ま
た、溝付き外装缶のある比較例２の電池に比較すると、
外装缶の圧力変形の復元性に優れている。外装缶の圧力
変形の復元性は、１０気圧で加圧した後、圧抜きして残
留変形を測定したものである。

【００２６】図７に示す試験は、内部圧力による変形量
を測定したものであるが、電池は、同一の変形量であっ
ても、外装缶からのはみ出しが寸法上最も不具合であ
る。この発明の電池は、変形して大きく膨れる部分を薄
く加工しているので、同一の変形に対するはみ出し量を
最も少なくでき、この点においても最も有効である。

【００２７】

【発明の効果】この発明の密閉式角型蓄電池は、幅広面
が平面状である従来品に比較すると、内圧上昇時におけ
る変形量を少なくできる。いいかえると、外装缶を薄く
軽量化することができ、高容量化と、軽量化という電池
に対する市場ニーズに対応できる特長がある。

【００２８】さらにまた、この発明の密閉式角型蓄電池
は、内圧が低くなったときの復元性に優れる特長も備え
ている。このため、過充電によって内圧が一時的に上昇
し、その後に低下すると、外装缶の変形が元の形状に復
元する。すなわち、内圧が低下すると、一旦膨れた外装
缶が設計値に復元する性質がある。このため、過充電に
よって電極間隔が変化して性能が低下するのを少なくで
きる特長もある。

【００２９】さらにまた、この発明の密閉式角型蓄電池
は、内圧で膨張する幅広面を、予め凹に湾曲させている
ので、変形量に対する外周からのはみ出し量を少なくで
きる特長も実現する。

【００３０】さらにまた、この発明の密閉式角型蓄電池
は、極板が幅広面と平行となるように極板群を外装缶に
挿入してる。この構造の電池は、セパレータの中央部分
を薄く圧縮することによって、外装缶の中央部分を薄く
加工できる。さらに好都合なことに、外装缶の中央部を
凹に加工する深さは、例えば０．１ｍｍと極めて小さく
して、外装缶の変形を少なくできる。このため、極板を
圧縮することなく、セパレータの一部を圧縮して、優れ
た特長を実現できる。したがって、極板群の容量を少な
くすることなく、また、極板剥がれ等を解消して外装缶
の変形を少なくできる特長がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の製造工程を示す断面図

【図２】図１のＡＡ線断面図

【図３】この発明の製造工程を示す断面図

【図４】図３のＢＢ線断面図

【図５】従来の電池の製造工程を示す断面図

【図６】図５のＣＣ線断面図

【図７】外装缶の変形量と復元量とを示すグラフ

【符号の説明】

１……極板群 ２……外
装缶 ２Ａ……幅広面

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−244549（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−245851（ＪＰ，Ａ) 特開 昭64−71056（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−77261（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−147249（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−106864（ＪＰ，Ａ) 実開 昭63−69464（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) H01M 2/02

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 陽極板とセパレータと陰極板を積層して
   なる極板群(1)が、密閉された外装缶(2)に内蔵されてい
   る密閉式角型蓄電池において、 積層された極板群(1)の極板と平行な面である外装缶の
   幅広面(2A)が、中央部を周縁部に対して電池の内部方向
   に湾曲していることを特徴とする密閉式角型蓄電池。
2. 【請求項２】 陽極板とセパレータと陰極板を積層して
   なる極板群(1)を、有底の角型外装缶内に、極板群(1)を
   構成する極板と外装缶の幅広面(2A)とが平行となるよう
   に挿入する工程と、外装缶の幅広面(2A)を、中央部が周
   縁部に対し電池内部方向に湾曲するように圧縮する工程
   とを持つことを特徴とする密閉式角型蓄電池の製造方
   法。