JP2992938B2 - 繊維強化複合材からなる成形用型 - Google Patents

繊維強化複合材からなる成形用型

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、プラスチックの成形に用いられる繊維強化
複合材(FRP)製の成形用型に関するものである。更に
詳しくは、金属被覆炭素繊維を強化材とした繊維強化樹
脂複合材製の成形用型に関するものである。
〔背景技術及び従来技術〕
従来、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のプラスチック
を成形するには、金属製の金型が多く用いられてきた。
この金型は、型の寸法精度が高く耐久性に優れている反
面、重量が大きく取扱が困難であり、また、金型の製造
に高度の技術を要するため、高価であった。更に、樹脂
成形物との熱膨張率が違うために、成形物の精度を、所
定の物に仕上げるには、高度の技術を必要とした。
最近は、この金型に代わる型として、FRP製の成形用
型が採用されるようになった。
この成形用型は、木型や石膏型の母型に成形中間素材
(例えばプリプレグ)をレイアップし、樹脂を硬化する
ことによって製造されている。
このFRP製の成形用型の強化材繊維としては、ガラス
繊維、炭素繊維等が使われており、特に、炭素繊維織物
を使用した成形用型は特開昭60−222210号公報にて提案
されている。
この提案の成形用型は、強化材繊維として炭素繊維を
用いているため、剛性、耐久性に優れ、また、組織が織
物であるため母型に対するドレープ性に優れている。
更に、炭素繊維を強化材繊維とした場合、寸法安定性
が良く成形用型としての品質にも優れている。
このFRP製の成形用型は、通常次のようにして製造さ
れる。即ち、木型又は石膏型の母型に離型材を塗布した
後、ゲルコート層を形成させ、次いで、成形素材(強化
材繊維及び樹脂組成物)をレイアップし、更に、離型ク
ロス、ブリーダークロスを載せ、真空バック成形を行
う。
このような成形においては、母型成形の容易性から母
型の材質として石膏が多く使われるが、石膏は100℃以
上の温度での使用が困難であるため、これより低温で硬
化する樹脂組成物が使われる。
通常、成形用型には、熱膨張率が低く、寸法精度が高
いことが要求されるが、前記提案されている、炭素繊維
を強化材とした成形用型は、熱膨張率が低く、寸法精度
が高い。
〔発明が解決しようとする問題点〕
通常の型による成形においては、レイアップ・加熱成
形・脱型の間に加熱・冷却が繰り返されるため、成形用
型としては熱伝導性が高いことが要求される。熱伝導率
を高くすることにより、成形用型の使用サイクルを短縮
し生産効率を高めることができる。
しかし、炭素繊維を強化材とした成形用型は、金属製
金型に比較して、熱伝導性が低いという問題点を有して
いる。
本発明は、FRP製成形用型の熱伝導性を高めんとする
ものである。
〔発明の構成及び作用〕
本発明は下記の通りである。
(1)金属被覆炭素繊維を強化材とした繊維強化樹脂複
合材からなる成形用型。
(2)強化材が金属被覆炭素繊維織物を含むものである
請求項(1)の成形用型。
(3)強化材が金属被覆炭素繊維チョップドストランド
を含むものである請求項(1)の成形用型。
(4)強化材が金属被覆炭素繊維ミルドファイバーを含
むものである請求項(1)の成形用型。
(5)成形用型の表面層における強化材が金属被覆炭素
繊維不織布である請求項(1)の成形用型。
本発明の成形用型は、炭素繊維の持つ、軽量性、寸法
安定性、耐熱性、耐熱膨脹性、剛性、強度に加えて、高
い熱伝導性を有する。
成形用型の製造において強化材である金属被覆炭素繊
維は、プリプレグで使用するのが好適である。
本発明において金属被覆炭素繊維とは、炭素繊維の外
層に銀、銅、ニッケル、これらの合金などからなる金属
層を有する繊維である。
この金属被覆炭素繊維における金属層の厚さは、炭素
繊維の太さによって変わるが、炭素繊維の直径5〜10μ
mの場合には0.1〜1.0μmである。
このような金属被覆炭素繊維は、市場において容易に
入手することができる。金属被覆炭素繊維の熱伝導性
は、金属層の厚さによって、指数関数的に高くなるか
ら、金属層の厚さを増加させることによって、目的に応
じ必要な高い熱伝導性の成形用型とすることができる。
ここで金属被覆炭素繊維の基材となる炭素繊維は、ポ
リアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素
繊維等であり、特に制限はされない。炭素繊維として
は、高強度タイプ炭素繊維よりも、いわゆる、黒鉛繊維
と称される高弾性タイプ炭素繊維の方が熱伝導性が高
く、好ましい場合がある。
この金属被覆炭素繊維はイオンプレーティング、電気
メッキ、無電解メッキにより得ることができ、これらの
製造法は特公昭59−1780号、同59−44381号、同45−315
46号、特開昭48−47437号、同58−47437号、同58−1695
32号、同59−100732号、同60−119269号等の各公報、及
び、USP4,048,042、GB1,215002などの特許明細書にて既
に広く知られている。
強化材である金属被覆炭素繊維の形態は、長繊維から
なる織物、短繊維の不織布、一方向配列体、チョップド
ストランド、ミルドファイバーなど、何れも適用できる
が、強度の点からは織物が好適であり、ドレープ性の点
からは短繊維のマット(不織布)が適している。従っ
て、この両者を組合せてレイアップするのがよい。レイ
アップに際して不織布が成形用型の表面層になるように
積層するのが、表面平滑性の点から好ましい。
金属被覆炭素繊維のマット(不織布)は、特開昭60−
88198号公報、同61−225398号公報等によって知られて
いる。
織物組織は、朱子織、平織又は一方向性織物が用いら
れる。織物に用いられる金属被覆炭素繊維の長繊維束の
構成本数は、成形物の表面平滑性のためには少ない方が
よく、強度、生産性の点からは多い方がよい。このた
め、母型に積層の際、最内層(成形用型の表面)に構成
本数の少ない織物を配し、外層に構成本数の多い織物を
配するのがよい。
金属被覆炭素繊維の長繊維束の構成本数に関しては、
100〜24000フィラメントのものが多く使用される。特
に、1000〜12000フィラメントのものが主として用いら
れ、成形用型の表面には、前記の通り、例えば100フィ
ラメントのような構成本数の繊維束からなる織物、又は
不織布を配するのが好ましい。
本発明の成形用型の製造に際しては、金属被覆炭素繊
維を強化材とした金属被覆炭素繊維プリプレグを経て製
造することが好ましい。
ここで金属被覆炭素繊維プリプレグとは、金属被覆炭
素繊維の織物、不織布に熱硬化性樹脂を含浸させたもの
である。
強化材の形態がチョップドストランド、ミルドファイ
バーである場合は、スタンピング成形、注型成形によっ
て成形することができる。
特に、成形用型の表面には、金属被覆炭素繊維プリプ
レグのみでなく、炭素繊維不織布プリプレグをも配した
ハイブリット構造とすることもできる。
このような場合、表面の平滑性の高い成形用型とする
ことができ、しかも、成形用型の殆んどが金属被覆炭素
繊維プリプレグにて構成されているため、成形用型の熱
的性質に金属被覆炭素繊維の特性を生かすことができ
る。
プリプレグのマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹
脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミ
ド樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂
などが用いられるが、特にエポキシ樹脂、ポリイミド樹
脂、ビスマレイミド樹脂又はこれらの混合物が好適に用
いられる。
エポキシ樹脂の場合、樹脂成分としては、フェノール
・ノボラック系エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック
系エポキシ樹脂、テトラグリシジールアミン、トリグリ
シジールアミン等の多官能エポキシ樹脂などが挙げら
れ、硬化剤成分としては、アミド系硬化剤、イミダゾー
ル系硬化剤、酸無水物系硬化剤などが挙げられる。硬化
剤とともに硬化促進剤が使用される。
ポリイミド樹脂プリプレグの製造は、特開昭57−6102
7号公報等によって、また、ビスマレイミド樹脂プリプ
レグの製造は、特開昭59−210931号公報等によって知ら
れている。
好ましくは、エポキシ樹脂とポリイミド樹脂、ビスマ
レイミド樹脂等との組み合わせで使用する。金属被覆炭
素繊維プリプレグの製造には、溶剤法、ホットメルト法
の何れも採用できる。
プリプレグにおける樹脂含有量は、20〜50重量%が適
当である。プリプレグの樹脂含有量が50重量%を超える
と、成形用型の耐久性が低下し、20重量%に満たない
と、強度が低くなる。成形用型の表面に当たるプリプレ
グには、樹脂リッチのプリプレグを配するのがよい。
また、エポキシ樹脂と金属粉体の併用も好ましく、こ
の場合金属粉体の平均粒径は、40μm程度又はそれ以下
が好ましい。
このプリプレグを用いた成形用型の成形には、既知の
方法が採用される。例えば、石膏マスター等の母型の表
面をエポキシ樹脂等でコーテイングして表面仕上をし、
更に、離型剤を塗布し、次いで、ゲルコート剤を塗布す
る。ゲルコート剤は、数回繰り返し塗布するのがよい。
ゲルコート剤が塗布された母型表面に、金属被覆炭素
繊維プリプレグを積層する。積層は、成形用型の表面層
から順に積層する。積層する量は、目的とする成形用型
の用途に応じ所望の剛性・強度になるよう調整される。
更に、必要により積層間に加熱・冷却用の配管をしレイ
アップを完了する。
金属被覆炭素繊維を強化材とした場合、炭素繊維を強
化材にした場合に比較し、剛性が高く、この結果、積層
厚さを薄くすることができる。このため、加熱・冷却用
の配管は必ずしも必要としない。加熱には、通電による
炭素繊維の抵抗加熱を利用することができる。
積層後、真空バック成形をする。成形条件は、マトリ
ックス樹脂の種類、成形方法によって定まるが、エポキ
シ樹脂をマトリックスとし真空バック成形をする場合、
5トール(Torr)以上の真空下、80〜120℃の温度でプ
レキュアーを行い、常温にまで冷却して後、常圧に戻
す。更に、130〜230℃でアフターキュアーを行い、成形
を完了する。
〔発明の効果〕
本発明によると、金属被覆炭素繊維を強化材としたこ
とにより、炭素繊維を強化材とした場合に比較して、成
形用型の熱伝導率が4〜10倍も高く、このため、この成
形用型を用いての成形サイクルを短縮することができ、
成形時の生産効率を高めることができるとともに、型の
均一な加熱が可能なため、均一な硬化反応を行うことが
できる。
更に、金属被覆炭素繊維は、炭素繊維に比較して、剛
性が高く、成形用型の肉厚を薄くすることができるた
め、加熱・冷却を速やかに行うことができ、加えて、成
形サイクルを短縮することができる。
しかも、金属被覆炭素繊維は、芯成分が炭素繊維であ
るため、耐熱性、寸法安定性、強度、剛性を有する。ま
た、金属被覆炭素繊維を用いた成形用型の重量増加は、
炭素繊維を用いた場合の1.1〜1.8倍程度にとどまる。
〔実施例〕
実施例1 下記組成A〜Cからなるエポキシ樹脂組成物を35重量
%含浸した、ニッケル被覆炭素繊維平織物プリプレグを
準備した。
A:テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(チバ・
ガイギー社製MY720) 80重量部 B:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 20重量部 C:3弗化硼素系硬化剤 5重量部 このプリプレグを、10枚積層して平板の成形物を成形
した。
比較のために、ニッケル被覆していない炭素繊維で同
様の成形物を成形した。
両者の成形物について、熱膨張率、熱伝導率を測定し
た結果、熱膨脹率は、両者同等であったが、熱伝導率
は、ニッケル被覆炭素繊維からの成形物が、ニッケル被
覆していない炭素繊維の成形物に比較して約9倍であっ
た。
実施例2 下記組成A及びBからなるエポキシ樹脂に、ニッケル
被覆炭素繊維ミルドファイバー(平均繊維長160μm)
を15重量%混合した成形材料を準備した。
A:トリグリシジルパラアミノフェノール型エポキシ樹脂 100重量部 B:脂環式アミン系硬化剤 35重量部 この成形材料を注型して、10mm厚さの平板を作製し
た。
比較のために、ニッケル被覆していない炭素繊維で同
様の平板を作製した。
両者の平板について、熱膨張率、熱伝導率を測定した
結果、熱膨張率は、両者同等であったが、熱伝導率は、
ニッケル被覆炭素繊維からの成形物(平板)が、ニッケ
ル被覆していない炭素繊維の成形物(平板)に比較して
約3倍であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B29C 33/00 - 33/76

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属被覆炭素繊維を強化材とした繊維強化
    樹脂複合材からなる成形用型。
  2. 【請求項2】強化材が金属被覆炭素繊維織物を含むもの
    である請求項(1)の成形用型。
  3. 【請求項3】強化材が金属被覆炭素繊維チョップドスト
    ランドを含むものである請求項(1)の成形用型。
  4. 【請求項4】強化材が金属被覆炭素繊維ミルドファイバ
    ーを含むものである請求項(1)の成形用型。
  5. 【請求項5】成形用型の表面層における強化材が金属被
    覆炭素繊維不織布である請求項(1)の成形用型。
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