JP2991859B2 - 立射出鋳造方法とその装置 - Google Patents

立射出鋳造方法とその装置

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JP2991859B2
JP2991859B2 JP4158591A JP15859192A JP2991859B2 JP 2991859 B2 JP2991859 B2 JP 2991859B2 JP 4158591 A JP4158591 A JP 4158591A JP 15859192 A JP15859192 A JP 15859192A JP 2991859 B2 JP2991859 B2 JP 2991859B2
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孝夫 中村
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は上下一対の射出シリンダ
を用いた立射出鋳造方法とその装置に関する。さらに詳
しくは、活性溶融金属の特に清浄部分だけを高速射出鋳
造する事ができる立射出鋳造方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】金属を溶解して鋳造する場合、品質の優
れた鋳造品を得るためには溶湯の最も不純物の少ない部
分を選択的に用いる事が重要である。この事は希土類元
素を含む合金やアモルファス合金など、活性な合金を溶
解・鋳造する場合は特に重要である。
【0003】従来の鋳込み方法は、図6に示すように射
出スリーブ(51)を傾倒させ、溶融金属(Y3)をラドル(53)
から注入し、然る後、射出スリーブ(51)を垂直に戻し、
一方側から移動金型(B1)を固定金型(B2)側に移動させ、
型閉した金型(B)の湯口に射出スリーブ(51)の先端を接
続し、最後に射出スリーブ(51)に直結した射出シリンダ
(54)を作動させ、プランジャ(55)を金型(B)方向に移動
させて溶湯(Y3)を金型(B)内に射出充填していた。
【0004】さて、一般的に射出シリンダ内の溶湯には
吸蔵ガスや酸化物又は不純物などが含まれている。これ
らは比重の関係で溶湯の表面に浮上しやすいという性質
を持っている。従って、溶湯上部にこれらのものが以下
の部分に比べて多くなる傾向にある。そして、前述のよ
うに溶湯をそのままの状態で金型に鋳込むと不純物を多
量に含む溶湯上部も鋳込まれる事になり、鋳造品内に不
純物の偏析が生じ、通常の金属は勿論、特に前述のよう
な活性金属ではその性質を損なう事になるという問題が
あった。
【0005】そこで、キャビティ(52)の先端の適所
にオーバーフロー(50)を設け、最も先に鋳込まれる
上部の溶湯(Y4)がキャビティ(52)を通り抜けて
前記オーバーフロー(50)に入り、キャビティ(5
2)には清浄な部分のみが鋳込まれるように工夫してい
た。
【0006】しかしながら、この場合金型形状が非常に
難しくなる事、鋳造品にオーバーフロー(50)が付着
しているから、鋳造後オーバーフロー(50)を取り除
く作業を行わねばならない事、オーバーフロー(50)
を設けているものの、キャビティ(52)とオーバーフ
ロー(50)を結ぶオーバーフロー孔(50a)の断面
積が細いので、上部の溶湯(Y4)がうまくオーバーフ
ロー(50)に流れ込むという訳には行かず、ある程度
又はかなりの部分(Y4)が清浄部分(Y5)に混入し
て鋳造品の品質を低下させるという問題もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる従来技
術に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、通常
の金属は勿論、アモルファス合金のような活性金属でも
極めて清浄な形で高速鋳造する事の出来る立射出鋳造方
法とその装置を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に示す立射出鋳
造方法は、『金属材料(K)を射出スリーブ(17)に
投入し、射出スリーブ(17)を取り囲む雰囲気を不活
性雰囲気に置換した後、前記不活性雰囲気を保持しつつ
加熱し、然る後、真空状態に保持された金型キャビィテ
ィ(13)に、図面黒塗り部で示される射出スリーブ
(17)の上部の溶湯(Y2)を該スリーブ(17)内
残しかつ射出スリーブ(17)内の底部の溶湯(Y
1)を該キャビティ(13)内に充填する状態に射出す
』事を特徴とする。金属材料(K)の加熱は不活性雰
囲気中で行われるため、例えばマグネシウムのように沸
点が低くて蒸発し易い金属又はその合金であったとして
も清浄状態を保ちつつ且つその蒸発を抑制しつつ加熱す
る事ができ、その結果表面の美しい鋳造品を鋳造出来、
しかもその鋳造は不純物の多い上部の溶湯(Y2)を
出スリーブ(17)内に残して真空状態に保持された金
属キャビティ(13)に不純物の少ない底部の溶湯(Y
1)を射出充填するものであるから、不純物の含有が極
めて少なくしかも鋳造品へのガスの巻き込みによる巣の
発生もない製品を得る事が出来る。
【0009】請求項2は、『金属材料(K)を射出スリ
ーブ(17)に投入し、射出スリーブ(17)を取り囲
む雰囲気を真空状態にした後、前記真空状態を保持しつ
つ加熱し、然る後、真空状態に保持された金型キャビテ
ィ(13)に、射出スリーブ(17)の上部の溶湯(Y
2)を該スリーブ(17)内に残しかつ射出スリーブ
(17)内の底部の溶湯(Y1)を該キャビティ(1
3)内に充填する状態に射出する』事を特徴とする。こ
の場合は、前記のように蒸発し易い金属を対象とするも
のでなく、蒸発し難い金属を対象とするもので、真空状
態を保持しつつ加熱する事で、溶湯(Y)内部の溶存ガ
スを十分に放出させる事が出来、しかも射出スリーブ
(17)の上部の溶湯(Y2)を該スリーブ(17)内
残して真空状態に保持された金型キャビティ(13)
に射出スリーブ(17)内の底部の溶湯(Y1)を射出
充填することで、不純物の含有が極めて少なくしかも鋳
造品の吸蔵ガスの非常に少ない製品を得る事が出来る。
【0010】請求項3は請求項1又は2の鋳造法を詳細
にしたもので、『請求項1又は2の立射出鋳造方法にお
いて、キャビティ(13)への射出充填時に射出スリー
ブ(17)内の溶湯(Y)を上下方向から上下のプラン
ジャ(14)(18)にて圧縮挟持しつつ上部プランジ
ャ(14)にて溶湯(Y)を下部プランジャ(18)と
共に底部方向に押し出し、真空状態に保持された金型キ
ャビティに、射出スリーブ(17)の上部の溶湯(Y
2)を該スリーブ(17)内に残しかつ射出スリーブ
(17)内の底部の溶湯(Y1)を該キャビティ(1
3)内に充填する状態に射出する』事を特徴とする。こ
れにより、溶湯(Y)は上下から圧縮されつつ射出充填
されるため、ガスの巻き込みもなく底部の清浄溶湯(Y
1)を高速射出充填出来る。
【0011】請求項4は請求項3の射出方法を規定した
もので、『上部プランジャ(14)を射出シリンダ(17)に挿
入するまでの速度より、挿入後の射出速度の方を速くす
る』事を特徴とする。
【0012】請求項5は前記各鋳造方法に付加されるも
ので、『溶融金属(Y)中に不活性ガス(F)を供給し
てバブリングを行わせる』事を特徴とする。これによ
り、溶湯(Y)中のガス含有率を大幅に低減できると同
時に溶湯(Y)中の不純物をバブルと共に浮上させる事
ができ、不純物の多い上部の溶湯(Y2)を除いて鋳造
する事により高品質の鋳造品を得ることができる。
【0013】請求項6は、前記鋳造方法を実施するため
の鋳造装置で、『キャビティ(13)並びにキャビティ
(13)を貫通するプランジャ摺動孔(13a)を有す
る鋳造用金型(A)と、プランジャ摺動孔(13a)に
合致して立設され、上下に配設された一対の射出シリン
ダ(2)(20)のロッド(2a)(20a)先端のプ
ランジャ(14)(18)がその内部を移動して保持さ
れた溶湯(Y)を金型(A)内に射出充填する射出スリ
ーブ(17)と、金型(A)の下方に配設され、溶湯鋳
込み時に溶湯(Y)を保持しつつそのプランジャ(1
8)がキャビティ(13)の注湯口(12)下面乃至下
面以下迄降下する下部シリンダ(20)と、金型(A)
の上方に配設され、非溶湯鋳込み時にはそのプランジャ
(14)が射出スリーブ(17)の上面開口から抜き出
されており、射出時に前記プランジャ(14)がその上
端開口部から射出スリーブ(17)に挿入されて溶湯
(Y)をキャビティ(13)に射出する上部射出シリン
ダ(2)と、射出スリーブ(17)の周囲を囲繞して射
出スリーブ(17)の周囲空間を真空状態乃至不活性雰
囲気に保つスリーブチャンバ(9)と、射出スリーブ
(17)内の金属材料(K)を加熱する加熱手段(H)
とで構成された』事を特徴とする。これにより、従来例
のようにオーバーフロー(50)というような特殊な形
状を金型に設ける事なく、純度の非常に高い部分の溶湯
Y1)のみを選択的に金型(A)に鋳込む事ができる
ものである。
【0014】請求項7は請求項6に付加される1態様
で、『下部シリンダ(20)のシリンダロッド(20a)の外周
に設置され、シリンダロッド(20a)と金型(A)のプランジ
ャ挿通孔(13a)との間の間隙を閉塞しつつスライドする
シールリング(20b)を有する』事を特徴とする。これに
よりプランジャ挿通孔(13a)とシリンダロッド(20a)との
間が気密的に保たれる事になり、両者の間隙を通って溶
湯(Y)へガスが流入するような事を防止する事ができ、
マグネシウムのように蒸発しやすい材料の加熱溶解にと
って有効である。
【0015】請求項8は請求項6に付加される他の態様
で、『下部シリンダ(20)のプランジャ(20a)と
射出スリーブ(17)との間にガス通過間隙(S)が形
成され、下部プランジャ(18)を介して溶湯(Y)側
とは逆側の空間部(13b)が不活性ガス(F)で満た
されている』事を特徴とする。これにより、ガス通過間
隙(S)を通って不活性ガス(F)が溶湯(Y)中に流
入してバブリングが行なわれ、不純物の浮上や溶湯
(Y)中のガスの放出がより行なわれ、溶湯の上部(Y
2)中のガス含有率を大幅に低減できると同時に溶湯
(Y)中の不純物をバブルと共に浮上させる事ができ、
上部の溶湯(Y2)より下の部分(Y1)の純度がより
高められ、この部分(Y1)を選択的に鋳造する事によ
り極めて性能の優れた鋳造品を得る事が出来る。
【0016】請求項9は、『原料(K)の供給時に射出ス
リーブ(17)が露出するようにスリーブチャンバ(9)を移
動させ、原料(K)の非供給時に射出スリーブ(17)を囲繞
するように移動させるチャンバ移動手段(10)をスリーブ
チャンバ(9)に設置した』事を特徴とする。これによ
り、材料供給を簡単に行う事ができると同時に溶解時の
真空保持乃至不活性雰囲気の保持を確実に行う事ができ
る。
【0017】
【実施例】以下、本発明を図示実施例に従って詳述す
る。図1は、本発明に使用するダブルシリンダ型立射出
鋳造装置(M)の1実施例で、固定プラテン(6)の下方に可
動プラテン(3)が昇降自在に配置されており、固定プラ
テン(6)に設置された複数本の型締シリンダ(1)のシリン
ダロッド(1a)に取着されており、これによって昇降され
るようになっている。(型閉機構は前記のものに限られ
ず、トグル機構その他公知のものを適用する事が出来
る。)
【0018】固定プラテン(6)の下面には固定金型(5)が
設置されており、この下方にて可動金型(4)が可動プラ
テン(3)に取着されて昇降するようになっている。前記
固定金型(5)と可動金型(4)のパーティング面にはキャビ
ティ(13)が形成されており、このキャビティ(13)を貫通
する形で垂直にプランジャ摺動孔(13a)が穿設されてい
る。(11)は可動金型(4)側に穿設された真空吸引口で、
可動金型(4)のプランジャ摺動孔(13a)に連通している。
【0019】可動プラテン(3)の下面には下部シリンダ
(20)が装着されており、下部シリンダ(20)のシリンダロ
ッド(20a)が前記プランジャ摺動孔(13a)に挿入されてお
り、先端の下部プランジャ(18)は後述の射出スリーブ(1
7)と前記プランジャ摺動孔(13a)との間をスライドする
ようになっている。
【0020】(17)はプランジャ摺動孔(13a)に合致して
立設された射出スリーブで、前記射出スリーブ(17)は、
プランジャ摺動孔(13a)に一致して凹設された摺動凹所
(5a)の底部に固定されたスリーブ固定部(15)と、スリー
ブ固定部(15)の上に装着された円筒部(17a)とで構成さ
れている。スリーブ固定部(15)の上端には嵌合突起が突
設されており、円筒部(17a)の下端に形成された嵌合凹
所に嵌め込まれており、両者(17a)(15)の内面は面一に
なっていて下部プランジャ(18)並びに上部プランジャ(1
4)が円滑に内面を摺動出来るようになっている。射出ス
リーブ(17)は本実施例ではセラミックス製である。
【0021】(21)は、上部スリーブチャンバ(9a)に設け
たビューポートで、例えば放射温度計を用いて溶湯(Y)
の温度を測定するようになっている。{下部シリンダ(2
0)のシリンダロッド(20a)内には下部プランジャ(18)の
ほぼ先端に達する熱電対(図示せず)が配設されており、
プランジャ(18)に接する溶湯(Y)の温度を測定出来るよ
うにしてもよい。}
【0022】(9)は、射出スリーブ(17)の周囲を囲繞す
るスリーブチャンバで、上下2つに分割されており、上
部スリーブチャンバ(9a)はチャンバ昇降シリンダ(10)の
シリンダロッド(10a)に装着されてチャンバ全体を昇降
するようになっており、更に、上部スリーブチャンバ(9
a)の上部開口は、上部射出シリンダ(2)のシリンダ本体
(2b)に一致して固定バー(1b)の下面に装着された固定チ
ャンバ(8)にスライド自在且つ気密的に装着されてお
り、下部スリーブチャンバ(9b)は上部スリーブチャンバ
(9a)の下端に装着されており、固定金型(5)に形成され
た摺動凹所(5a)にスライド自在且つ気密的に挿入されて
いる。(勿論、上下スリーブチャンバ(9a)(9b)を一体的
に形成してもよい。)上部スリーブチャンバ(9a)には真
空吸引・ガス置換口(7)が設置されている。前記真空吸
引・ガス置換口(7)並びに真空吸引口(11)には排気手段
(E)が装着されている。排気手段(E)は例えば排気ポンプ
のような公知手段である。又、真空吸引・ガス置換口
(7)からスリーブチャンバ(9)に供給される不活性ガスは
例えばアルゴンのような公知のものであり、不活性ガス
供給手段も例えばアルゴンガスボンベのような公知のも
のである。
【0023】(2)は上部射出シリンダで、型締シリンダ
(1)のシリンダ本体(1a){又は、固定プラテン(6)}に装着
された固定バー(1b)に固着されており、そのシリンダロ
ッド(2a)は固定チャンバ(8)からスリーブチャンバ(9)内
に挿入されている。(14)は上部プランジャで、金属の溶
解時には射出スリーブ(17)から抜き出されており、射出
充填時に射出スリーブ(17)中に挿入される。(2c)はシリ
ンダロッド(2a)の外周に形成された気密保持用のスライ
ドリングで、固定チャンバ(8)中を気密的にスライドす
る。
【0024】(H)は射出スリーブ(17)内に投入された金
属塊(K)を加熱溶解する加熱溶解手段(=誘導加熱用コイ
ル)で、勿論これに限られないが本実施例では誘導加熱
が使用される。尚、射出スリーブ(17)内の溶湯(Y)の保
温のための保温材などは省略してある。
【0025】本装置(M)で溶解される金属は特に指定さ
れる事はないが、活性合金、例えば、希土類元素を含む
合金やアモルファス合金の溶解・鋳造に最も好適であ
る。そして、以下に述べる溶解鋳造方法は蒸発し易い金
属(即ち、沸点の低い金属)、例えば、マグネシウム又は
マグネシウムを主体とする合金の鋳造に最適である。
【0026】次に、本装置の作用について説明する。 (材料投入=図5参照)チャンバ昇降シリンダ(10)を作動
させてスリーブチャンバ(9)を上昇させ、上部スリーブ
チャンバ(9a)を、固定チャンバ(8)の外周を気密状に摺
動させつつ上昇させると共に下部スリーブチャンバ(9b)
を摺動凹所(5a)から抜き出して射出スリーブ(17)を露出
させる。この状態で射出スリーブ(17)内に清浄な金属塊
(K)を自動乃至手動にて投入する。{ここでは金属塊(K)
を使用する事にするが、勿論これに限られず、溶湯を供
給しても良い。}金属塊(K)は所定の組成になるように予
め調整されている。この時、金属塊(K)の射出スリーブ
(17)への投入が可能なように上部射出シリンダ(2)のシ
リンダロッド(2a)は引き上げられており、上部プランジ
ャ(14)は射出スリーブ(17)から抜き出されている。
【0027】(スリーブチャンバ内のガス抜き)チャンバ
昇降シリンダ(10)を逆作動させて、上部スリーブチャン
バ(9a)を、固定チャンバ(8)の外周を気密状に摺動させ
つつ降下させると共に再度下部スリーブチャンバ(9b)を
摺動凹所(5a)に挿入し、射出スリーブ(17)内を気密状態
に保持する。ただし、チャンバ昇降シリンダ(10)下部ス
リーブチャンバ(9b)の内周内鍔(9c)が射出スリーブ(17)
の円筒部(17a)の上端に接しない中間位置で停止する。
又、この間、型締用シリンダ(1)を作動させて可動金型
(4)を上昇させ、固定金型(5)に押圧して型締めが完了し
ている。これにより、閉成状態の鋳造用金型(A)のキャ
ビティ(13)と、これに連通するプランジャ挿通孔(13a)
とが気密状態に保持される。そしてシリンダロッド(20
a)のシールリング(20b)はキャビティの上に位置してお
り、射出スリーブ(17)側の空間とキャビティ(13)側の空
間とを分割している。この時点で排気手段(E)によって
前記射出スリーブ(17)側の空間とキャビティ(13)側の空
間とを例えば1×10マイナス3乗Torrというような高真
空になるまで排気する。高真空を得る方法としては、例
えば、大容量を持ったタンク(図示せず)を予め所定の真
空度まで排気しておき、このタンクにスリーブチャンバ
(9)の排気・ガス置換口(7)とプランジャ挿通孔(13a)に
形成された真空吸引口(11)を接続する事により行う方法
や、直接真空ポンプ(図示せず)によって排気する方法な
ど公知手段によって所定の真空度迄排気される。
【0028】(金属溶解)前記両方の空間内が所定の真空
度に達すると次にスリーブチャンバ(9)に不活性ガスを
供給する。スリーブチャンバ(9)内が所定の気圧にて不
活性ガスで満たされると直ちに誘導加熱用コイル(H)に
よって射出スリーブ(17)内の金属塊(K)を誘導加熱し素
早く溶解する。金属(K)の温度は前述のようにビューポ
ート(21)から放射温度計を利用して測定され、目的温度
まで加熱・昇温・溶解される。
【0029】(射 出)溶融金属(K)が所定の温度に
達したところで、誘導加熱をオフにし、これと同時又は
これに続いてチャンバ昇降シリンダ(10)を再び降下
させ、下部スリーブチャンバ(9b)の内周内鍔(9
c)が射出スリーブ(17)の円筒部(17a)の上端
に押圧する位置で停止させ、円筒部(17a)を固定す
る。次ぎに、上部射出シリンダ(2)を作動させて上部
プランジャ(14)を0.2〜0.4m/secの低速
で降下させ、円筒部(17a)の開口端から少し入った
ところで上部プランジャ(14)の降下速度を高速(例
えば、1m/sec〜7m/sec)に切り換え、溶湯
(Y)を保持したまま下部シリンダ(20)の下部プラ
ンジャ(18)を押し下げる。これにより、上部プラン
ジャ(14)の円筒部(17a)への挿入を円滑に行わ
せる事ができる。下部プランジャ(18)の上面がキャ
ビティ(13)に一致した処又はそれ以下で停止する
が、下部プランジャ(18)の上面がキャビティ(1
3)に掛かったところで射出スリーブ(17)内の溶融
金属(Y)は底の部分から金型キャビティ(13)内に
高速射出により充填される。そして不純物を多く含む溶
湯(Y)の上部溶湯(Y2)は射出スリーブ(17)内
に残され、キャビティ(13)へは鋳込まれない。これ
により、清浄溶湯(Y1)のみが鋳込みに使用される事
になる。
【0030】(型開・押し出し)キャビティ(13)に射出・
充填された清浄溶融金属(Y)は、金型(A)に熱を奪われて
急冷されて凝固し、短いチル・タイムの後、型締シリン
ダ(1)が逆作動して可動プラテン(3)と共に可動金型(4)
が下降し、型開きが行なわれる。これにより、マグネシ
ウム又はマグネシウム合金のように沸点の低い金属でも
溶解・鋳造時にマグネシウム原子の蒸発を抑制する事が
できて、表面の美しい鋳造品を得る事ができた。凝固し
た鋳造品は可動金型(4)と共に固定金型(5)から離脱し、
可動金型(4)が下死点にて停止すると押出シリンダ(図示
せず)が作動してエジェクトピン(図示せず)を突き出
し、可動金型(4)から鋳造品を離脱させて装置外に鋳造
品を取り出す。鋳造品の取り出しが完了すると再度型締
シリンダ(1)が作動して可動金型(4)と共に可動プラテン
(3)が上昇し型閉を行う。そして以後、前記の動作を繰
り返して鋳造作業が行なわれる。
【0031】一方、上部射出シリンダ(2)の上部プラン
ジャ(14)も鋳造品の固定金型(5)からの離脱を確実に行
わせるために押し湯に付いて下死点まで下降し、然る
後、上昇して上死点に戻り待機し次の鋳造作業に備え
る。
【0032】以上は例えばマグネシウム又はマグネシウ
ム合金のように沸点の低い金属の鋳造に最適の方法であ
るが、本発明はそのような場合のみ適用されるものでは
なく、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金のよう
に沸点の高い金属の鋳造にも十分適用する事ができる。
この場合は、溶湯(Y)の清浄度を高めるために真空溶
解とバブリングとを併用するが好ましい。即ち、下部
ランジャ(18)と射出スリーブ(17)との間に溶融
金属(Y)は通過出来ないがガスの通流は可能であるよ
うなガス通過間隙(S)を形成し、不活性ガスをこの間
隙(S)から溶湯(Y)に供給し、溶湯(Y)のバブリ
ングを行いつつスリーブチャンバ(9)内を真空吸引す
る。これにより溶湯(Y)内の不純物や溶存ガスはバブ
ルと共に浮上し、不純物は溶湯(Y)の上部(Y2)に
スラグとして浮遊し、溶存ガスは放出される。この作業
により、溶湯(Y)の上部(Y2)を除く部分(Y1)
の純度は極めて高くなり、又、溶湯(Y)中の残存ガス
量をアルミニウム100グラム当たり、0.1cc程度
に低減させる事ができた。(従来法ではアルミニウム1
00グラム当たり3〜10ccが限度であった。)そし
て、この高純度層(Y1)を前述の方法で鋳込む事によ
り、極めて良好な性質を持ち、巣など発生しない高級鋳
造品を得る事ができた。
【0033】
【発明の効果】本発明の請求項1に示す立射出鋳造方法
によれば、不純物の含有量が極めて少なくしかも表面の
美しい鋳造品を鋳造出来るという利点がある。又、請求
項2によれば、低沸点金属でない通常の金属を対象とす
るもので、この方法によれば、真空状態を保持しつつ加
熱する事で、不純物の含有が極めて少なくしかも鋳造品
の吸蔵ガスの非常に少ない製品を得る事が出来る。請求
項3は請求項1又は2の鋳造法を更に詳細に述べたもの
で、これによれば溶湯は上下から圧縮されつつ射出充填
されるため、ガスの巻き込みもなく底部の清浄溶湯を高
速射出充填出来る。従って、アモルファス合金のように
急冷を要するものの鋳造に最適である。請求項4は請求
項3の射出方法を規定したものである。請求項5は溶湯
をバブリングするもので、溶湯中のガス含有率を大幅に
低減できると同時に溶湯中の不純物をバブルと共に浮上
させる事ができ、不純物の多い表面層の溶湯を除いて鋳
造する事により高品質の鋳造品を得る事ができる。請求
項6は前記鋳造方法を実施するための鋳造装置で、従来
例のようにオーバーフローというような特殊な形状を金
型に設ける事なく、純度の非常に高い部分の溶湯のみを
選択的に金型に鋳込む事ができる。請求項7は請求項6
に付加される1態様で、プランジャ挿通孔とシリンダロ
ッドとの間が気密的に保たれる事になり、両者の間隙を
通って溶湯へガスが流入するような事を防止する事がで
き、マグネシウムのように蒸発しやすい材料の加熱溶解
にとって有効である。請求項8は請求項6に付加される
他の態様で、ガス通過間隙を設ける事により不活性ガス
が溶湯中に流入してバブリングが行なわれ、不純物の浮
上や溶湯中のガスの放出が効果的に行なわれ、溶湯の表
面層より下の部分の純度をより高める事ができる。請求
項9は、チャンバ移動手段をスリーブチャンバに設置し
たもので、これにより、材料供給を簡単に行う事ができ
ると同時に溶解時の真空保持乃至不活性雰囲気の保持を
確実に行う事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明鋳造装置の1実施例の概略断面図
【図2】本発明鋳造装置の材料供給後、加熱時点の主要
部断面図
【図3】本発明鋳造装置の材料溶解時点の主要部断面図
【図4】本発明鋳造装置の鋳造完了時点の主要部断面図
【図5】本発明鋳造装置の鋳造品取り出し後、次の原料
投入時点の主要部断面図
【図6】従来の鋳造装置の概略断面図
【図7】他の従来の金型部分の概略断面図
【符号の説明】
(K)…金属材料 (17)…射出スリ
ーブ (Y)…溶湯 (Y1)…上部より
下の清浄溶湯 (Y2)…吸蔵ガスや酸化物などの不純物が多く含まれ
る上部の溶湯 (13)…金型キャビティ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B22D 43/00 B22D 43/00 A (72)発明者 河内 裕明 兵庫県明石市二見町福里字西之山523番 ノ1 東洋機械金属株式会社 内 (56)参考文献 特開 昭51−151223(JP,A) 特開 平5−318077(JP,A) 特開 平4−262846(JP,A) 特開 昭62−124061(JP,A) 特開 昭54−133430(JP,A) 実開 昭59−30364(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B22D 17/00,17/12,17/14 B22D 17/20,43/00

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属材料を射出スリーブに投入し、
    射出スリーブを取り囲む雰囲気を不活性雰囲気に置換し
    た後、前記不活性雰囲気を保持しつつ加熱し、然る後、
    真空状態に保持された金型キャビティに、射出スリーブ
    の上部の溶湯を該スリーブ内に残しかつ射出スリーブ内
    の底部の溶湯を該キャビティ内に充填する状態に射出す
    事を特徴とする立射出鋳造方法。
  2. 【請求項2】 金属材料を射出スリーブに投入し、
    射出スリーブを取り囲む雰囲気を真空状態にした後、前
    記真空状態を保持しつつ加熱し、然る後、真空状態に保
    持された金型キャビティに、射出スリーブの上部の溶湯
    該スリーブ内に残しかつ射出スリーブ内の底部の溶湯
    該キャビティ内に充填する状態に射出する事を特徴と
    する立射出鋳造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の立射出鋳造
    方法において、キャビティへの射出充填時に射出スリー
    ブ内の溶湯を上下方向から上下のプランジャにて圧縮挟
    持しつつ上部プランジャにて溶湯を下部プランジャと共
    に底部方向に押し出し、真空状態に保持された金型キャ
    ビティに、射出スリーブの上部の溶湯を該スリーブ内に
    残しかつ射出スリーブ内の底部の溶湯を該キャビティ内
    に充填する状態に射出する事を特徴とする請求項1又は
    2に記載の立射出鋳造方法。
  4. 【請求項4】 上部プランジャを射出シリンダに
    挿入するまでの速度より、挿入後の射出速度の方を速く
    する事を特徴とする請求項3に記載の立射出鋳造方法。
  5. 【請求項5】 溶融金属中に不活性ガスを供給し
    てバブリングを行わせる事を特徴とする請求項1乃至4
    のいずれかに記載の立射出鋳造方法。
  6. 【請求項6】 キャビティ並びにキャビティを貫
    通するプランジャ摺動孔を有する鋳造用金型と、プラン
    ジャ摺動孔に合致して立設され、上下に配設された一対
    の射出シリンダのロッド先端のプランジャがその内部を
    移動して保持された溶湯を金型内に射出充填する射出ス
    リーブと、金型の下方に配設され、溶湯鋳込み時に溶湯
    を保持しつつそのプランジャがキャビティの下面乃至下
    面以下迄降下する下部シリンダと、金型の上方に配設さ
    れ、非溶湯鋳込み時にはそのプランジャが射出スリーブ
    の上面開口から抜き出されており、射出時に前記プラン
    ジャがその上端開口部から射出スリーブに挿入されて溶
    湯をキャビティに射出する上部射出シリンダと、射出ス
    リーブの周囲を囲繞して射出スリーブの周囲空間を真空
    状態乃至不活性雰囲気に保つスリーブチャンバと、射出
    スリーブ内の金属材料を加熱する加熱手段とで構成され
    た事を特徴とする立射出鋳造装置。
  7. 【請求項7】 下部シリンダのシリンダロッドの
    外周に設置され、シリンダロッドと金型のプランジャ挿
    通孔との間の間隙を閉塞しつつスライドするシール部を
    有する事を特徴とする請求項6に記載の立射出鋳造装
    置。
  8. 【請求項8】 下部シリンダのプランジャと射出
    スリーブとの間にガス通過間隙が形成され、プランジャ
    を介して溶湯側とは逆側の空間部が不活性ガスで満たさ
    れている事を特徴とする請求項6に記載の立射出鋳造装
    置。
  9. 【請求項9】 原料の供給時に射出スリーブが露
    出するようにスリーブチャンバを移動させ、原料の非供
    給時には射出スリーブを囲繞するように移動させるチャ
    ンバ移動手段をスリーブチャンバに設置した事を特徴と
    する請求項6乃至8のいずれかに記載の立射出鋳造装
    置。
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