JP2990002B2 - 巻線用絶縁電線の製造方法 - Google Patents

巻線用絶縁電線の製造方法

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JP2990002B2 JP5263432A JP26343293A JP2990002B2 JP 2990002 B2 JP2990002 B2 JP 2990002B2 JP 5263432 A JP5263432 A JP 5263432A JP 26343293 A JP26343293 A JP 26343293A JP 2990002 B2 JP2990002 B2 JP 2990002B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子機器内の配線材やト
ランス等に利用される、複数の絶縁層が押出被覆により
被覆されている巻線用絶縁電線の製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】変圧器の構造はIEC規格(Internatio
nal Electrotechnical CommunicationStandard) Pub.9
50, 65, 335, 601 等によって規定されている。すなわ
ち、これらの規格では、巻線において導体を被覆するエ
ナメル皮膜は絶縁層と認定しないこと、一次巻線と二次
巻線の間に少なくとも3層の絶縁層が形成されているか
または厚み0.4mm以上の絶縁層が設けられているこ
と、一次巻線と二次巻線の縁面距離は、印加電圧によっ
ても異なるが、5mm以上であること、また一次側と二
次側に3000Vを印加したときに1分以上耐えるこ
と、等が規定されている。そのため現在、図2に示すよ
うな断面構造が採用されている。すなわち、フェライト
コア11に鍔付きのボビン12が嵌め込まれ、ボビン1
2の両端側に縁面距離を確保するための絶縁バリヤ13
が配置された状態でエナメル被覆された一次巻線14が
巻回されたのち、この一次巻線14の上に、絶縁テープ
層15を少なくとも3層巻回し、更にこの絶縁テープ層
15の上に縁面距離を確保するための絶縁バリヤ13を
配置したのち、同じくエナメル被覆された二次巻線16
が巻回された構造である。しかし、この変圧器は全体を
小型化することができない、絶縁テープ層15の巻回作
業が必要である、等の不満があった。
【0003】そこで近年、前記断面構造の変圧器に代わ
り、図3に示すような絶縁バリヤ13や絶縁テープ層1
5を含まない構造の変圧器が登場しはじめている。この
図3に示された変圧器は、導体の外周に少なくとも3層
の絶縁層が形成されているものを一次巻線14、二次巻
線16のいずれか一方もしくは両方に用いることにより
IEC規格を満たすようにしたものである。このような
巻線としては、本発明者等が先に特願平4−29015
9号、特願平4−290160号、特願平4−2901
61号および特願平4−290162号で提案したも
の、すなわち絶縁層の3層がともに特定材料からなる押
出被覆層で被覆された絶縁電線がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
複数の絶縁層が押出被覆されている絶縁電線を製造する
には、1層ずつ別のラインで押出被覆を行うと生産性が
劣るので、生産性を上げるために、図4のように例えば
押出機71、72、73をタンデムに配置し、1つのラ
インで連続して押出被覆する試みがなされている。しか
しながら、連続して複数の押出被覆工程を行うと、各層
が被覆されるたびに、導体1に張力がかかり、完成品の
導体径が極度に細って規格外れとなったり、導体1の可
撓性が損なわれたり、更に張力がかかったときには、断
線してしまうという問題があった。
【0005】一方、1層の絶縁層を押出被覆する押出機
の直前に導体の送込機を設けて、その導体にたるみを持
たせて押出機に供給することにより、導体に作用する張
力を減少させ、導体の伸びや細りを防止するようにした
ものが提案されている(実開昭50−16479号公報
参照)しかしながら、この押出被覆工程では、最初の
絶縁層を押出被覆する押出機の手前側に導体の送込機を
設けるだけであるから、押出機の供給側に作用する導体
の張力は無くすことができるが、押出機中で生じた摩擦
抵抗による導体の張力までは無くすことができず、この
技術を複数の押出機をタンデムに配置して導体に絶縁層
を押出被覆する場合に適用しようとすると、複数の押出
機間の導体に、前記前の押出機内で生じた摩擦抵抗によ
る張力が作用し、これが後の押出被覆工程の押出機内で
生じた摩擦抵抗による張力に加算されることになって、
後の押出機より導出される導体に許容値を超える大きな
張力が作用することがあり、製造される絶縁電線の導体
の細りや断線を防止できないことがあったこれを防止
するために、前記送込機を複数押出機間に配置して導体
に送り込みを加えることも考えられるが、後の押出被覆
工程の押出機に導体が弛んだ状態で供給されるため、導
体に曲がり、捩れや振動が生じ易く、この導体が後の押
出被覆工程の押出機に供給され、製品となる絶縁電線の
絶縁層に偏肉が生じたり、絶縁層の表面に押出マーク
(周期的な微小凹凸部)が生じ、絶縁電線の品質が悪く
なる恐れがあった
【0006】本発明は、上記の問題点を解決するために
なされたもので、製造される絶縁電線の導体が細った
り、可撓性を損なうことなく、また絶縁層に偏肉や押出
マークが生じることなく、1つのラインで連続して複数
の押出被覆工程を行うことができ、品質および生産性の
向上が図れる巻線用絶縁電線の製造方法を提供すること
を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の課題解決手段
は、複数の押出機をタンデムに配置して、導体に絶縁層
を押出被覆する複数の押出被覆工程を有する巻線用絶縁
電線の製造方法において、少なくとも一対の押出被覆工
程における両押出機間にキャプスタンを配置して、これ
により後の押出被覆工程の押出機に導体を導入するとき
の張力が零よりも大きい状態を維持しながら減少するよ
うに、後の押出被覆工程の押出機に前記導体を送り込む
力を加えることを特徴とする巻線用絶縁電線の製造方法
にある。
【0008】
【作用】本発明の絶縁電線の製造方法によると、少なく
とも一対の押出被覆工程における両押出機間にキャプス
タンを配置して、これにより後の押出被覆工程の押出機
に導体を導入するときの張力が零よりも大きい状態を維
持しながら減少するように、後の押出被覆工程の押出機
に前記導体を送り込む力を加えるので、製造される絶縁
電線の導体が細ったり、可撓性を損なうことがなく、ま
た押出機の押出ヘッド内に設けられたダイス、ニップル
内の中心に導体を通すことができ、絶縁層の偏肉や押出
マークを確実に防止でき、1つのラインで連続して複数
の押出被覆工程を行うことができ、絶縁電線の品質およ
び生産性の向上を図ることができる。更に本発明では、
少なくとも一対の両押出機間に前記キャプスタンを配置
して後の押出機に前記導体を送り込むようにしたので、
張力制御機構が簡単となり、また両押出機間の長さも短
くすることができ、設備建設コストを低減することがで
きる。なお、後の押出被覆工程の押出機に導体を導入す
るときの張力は、導体の材質、外径等によって異なる
が、零より大きく、12kg/mm2 以下まで減少する
ことが好ましい。
【0009】
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細
説明する。 (実施例1) 図1に示す工程図に従い直径が0.410mmの裸軟銅
線からなる導体1に変性ポリエステルを1層目、2層目
に、ナイロンを3層目にそれぞれ0.033mmの皮膜
厚で押出被覆して絶縁電線を製造する。まず、サプライ
2から導体1を供給し、この導体1を予熱炉3に通す。
この予熱炉3は導体1と樹脂との密着力を向上させるた
めのものである。ついで予熱炉3を通った導体1を、
ンデムに配置された第1の押出機71、第2の押出機7
2および第3の押出機73のうち、先ず第1の押出機7
1の押出ヘッドに導入し、ここで該押出機71から送り
出される変性ポリエステルにより導体1を被覆する。つ
いで第1の押出機71により被覆された導体1をキャプ
スタン4にかける。このキャプスタン4は導体1をかけ
る部分に図5、図6に示すような円錐台状に形成された
テーパー部6を有し、前記テーパー部6には導体1をか
ける溝5が複数彫られている。このテーパー部6の溝5
に導体1をかけるときに、所望の張力になる溝5を選択
して次の第2の押出機72の押出ヘッドに導入するとき
の導体1の張力4kg/mm2 まで減少するように調
整する。これにより導体の張力が零よりも大きい状態に
維持される。このように溝5の適当なところに導体1を
かけることにより、キャプスタン4の周長を変えて、導
体1の送り出し量を調節することで、導体1に余分な張
力がかかるのを防止することができる。なお、この溝5
に導体1をかけることにより導体1とキャプスタン4と
の接触面積が増し、導体1が送り出し中にスリップする
のを防ぐことができるので、この点でも導体1に余分な
張力がかかるのを防止することができる。ついで前記キ
ャプスタン4により張力を調整した導体1を第2の押出
機72の押出ヘッドに送り込み、ここで該押出機72か
ら供給される変性ポリエステルにより被覆する。ついで
第2の押出機72により被覆された導体1を前記したも
のと同様のキャプスタン4に通す。このとき前記した場
合と同様、テーパー部6に彫られた溝5を選択して次の
第3の押出機73の押出ヘッドに導入するときの導体1
の張力も同様に4kg/mm2 になるように調整する。
ついで前記キャプスタン4により張力を調整した導体1
を第3の押出機73の押出ヘッドに送り込み、ここで該
押出機73から供給されるナイロンにより被覆する。こ
のようにして連続した1つのタンデム押出ラインで3層
押出被覆した導体1を図1に示すように先の工程で使用
しているキャプスタン4を利用して、導体1をある程度
緊張させて巻取機10に巻き取り絶縁電線とする。この
ようにして製造された絶縁電線の導体径および可撓性を
測定したところ、導体径が0.408mm、可撓性が1
倍径巻付け可能である等良好な値を示した。
【0011】(実施例2) 裸軟銅線の直径が1.011mmである以外は実施例1
と同様にして絶縁電線を製造し、実施例1と同様の測定
を行ったところ、導体径が1.005mm、可撓性が1
倍径巻付け可能である等良好な値を示した。
【0012】(実施例3) 実施例1のキャプスタン4に代えて図7に示すような、
通常のキャプスタン4と、該キャプスタン4に導体1を
押し付けるためのピンチロール9を組み合わせたものを
用いて実施例1と同様にして絶縁電線を製造した。本実
施例は、導体1がキャプスタン4上でスリップして余分
な張力がかかるのをピンチロール9で抑えながら送り込
むことにより、後の押出被覆工程の押出機72、73の
押出ヘッドに前記導体1を導入するときの張力を減少さ
せることができる。本実施例により製造された絶縁電線
の導体径および可撓性を測定したところ、導体径が0.
408mm、可撓性が1倍径巻付け可能である等良好な
値を示した。
【0013】(実施例4) 実施例1、2で用いたキャプスタン4に、図8、図9に
示すような該キャプスタン4と導体1の接触面積を調節
するためのガイドロール8を組み合わせたものを用いる
以外は実施例1、2と同様にして絶縁電線を製造した。
本実施例では実施例1の作用効果に加え、ガイドロール
8の位置を図8や図9のように調整してキャプスタン4
と導体1との接触面積を変えることにより、キャプスタ
ン4上で導体1がスリップするのを抑えることができる
ので、スリップにより余分な張力がかかるのを防ぐこと
ができる。本実施例により製造された絶縁電線の導体径
および可撓性を測定したところ導体径が0.400m
m、可撓性が1倍径巻付け可能である等良好な値を示し
た。
【0014】(比較例1) 図4に示す工程図に従い、実施例1、、4と同様の裸
軟銅線を用いて実施例1、3、4と同じ構造の絶縁電線
を製造する際に、いずれの押出被覆工程間においても、
後の押出被覆工程の押出機に導体を送り込む力を加えず
に連続して押出被覆した。このようにして製造した絶縁
電線の導体径および可撓性を実施例と同様にして測定し
たところ、導体径が0.385mm、可撓性が4倍径巻
付け不可である等好ましくない値を示した。
【0015】(比較例2) 実施例2と同様の裸軟銅線を用い、比較例1と同様の方
法で絶縁電線を製造し、実施例と同様の測定を行った。
その結果、導体径が0.979mm、可撓性が4倍径巻
付け不可である等好ましくない値を示した。
【0016】なお、前記本発明の実施例ではいずれも、
全押出被覆工程における各押出機間に、すなわち、第1
の押出機71と第2の押出機72の間、また第2の押出
機72と第3の押出機73との間にキャプスタンを配置
して、これにより後の押出被覆工程の押出機72、73
に導体を導入するときの張力が零よりも大きい状態を維
持しながら減少するように、押出機72、73に前記導
体を送り込む力を加えるようにしたが、少なくとも一対
の押出被覆工程間における両押出機、例えば、第1の押
出機71と第2の押出機72との間、または第2の押出
機72と第3の押出機73との間にキャプスタンを配置
して、これにより後の押出被覆工程の押出機72または
押出機73に導体を導入するときの張力が零よりも大き
い状態を維持しながら減少するように、後の押出被覆工
程の押出機に前記導体を送り込む力を加えるようにして
もよい。要は導体に許容以上の張力が作用する可能性の
大きい一対の押出被覆工程における両押出機間にキャプ
スタンを配置して、これにより後の押出被覆工程の押出
機に導体を送り込む力を加えるようにすれば良い。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように本発明の巻線用絶縁
電線の製造方法によれば、複数の押出機をタンデムに配
置して、導体に絶縁層を押出被覆する複数の押出被覆工
程を有する巻線用絶縁電線の製造方法において、少なく
とも一対の押出被覆工程における両押出機間にキャプス
タンを配置して、これにより後の押出被覆工程の押出機
に導体を導入するときの張力が零よりも大きい状態を維
持しながら減少するように、後の押出被覆工程の押出機
に前記導体を送り込む力を加えるようにしたので、製造
される絶縁電線の導体が細ったり、可撓性を損なうこと
がなく、また絶縁層の偏肉や押出マークを確実に防止で
き、1つのラインで連続して複数の押出被覆工程を行う
ことが可能となり、巻線用絶縁電線の品質および生産性
の向上を図ることができる。また、本発明では、少なく
とも一対の押出被覆工程における両押出機間に前記キャ
プスタンを配置して後の押出機に前記導体を送り込むよ
うにしたので、張力制御機構が簡単となり、また両押出
機間の長さも短くすることができ、設備建設コストを低
減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の製造方法の工程図。
【図2】図2は、変圧器の構造を示す断面図。
【図3】図3は、変圧器の構造を示す断面図。
【図4】図4は、従来の製造方法の工程図。
【図5】図5は、テーパー部を有するキャプスタンの正
面図。
【図6】図6は、テーパー部を有するキャプスタンの側
面図。
【図7】図7は、キャプスタンとピンチロールの組み合
わせ状態を示す概略図。
【図8】図8は、キャプスタンとガイドロールの組み合
わせ状態を示す概略図。
【図9】図9は、キャプスタンとガイドロールの組み合
わせ状態を示す概略図。
【符号の説明】
1 導体 2 サプライ 3 予熱炉 4 キャプスタン 5 溝 6 テーパー部 71 (第1の)押出機 72 (第2の)押出機 73 (第3の)押出機 8 ガイドロール 9 ピンチロール 10 巻取機 11 フェライトコア 12 ボビン 13 絶縁バリヤ 14 一次巻線 15 絶縁テープ層 16 二次巻線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−304621(JP,A) 特開 昭55−46284(JP,A) 特開 昭62−291814(JP,A) 実開 昭50−16479(JP,U) 実開 平3−110721(JP,U)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の押出機をタンデムに配置して、導
    体に絶縁層を押出被覆する複数の押出被覆工程を有する
    巻線用絶縁電線の製造方法において、少なくとも一対の
    押出被覆工程における両押出機間にキャプスタンを配置
    して、これにより後の押出被覆工程の押出機に導体を導
    入するときの張力が零よりも大きい状態を維持しながら
    減少するように、後の押出被覆工程の押出機に前記導体
    を送り込む力を加えることを特徴とする巻線用絶縁電線
    の製造方法。
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