JP2988919B1 - 疲労寿命予測を可能とした掘削用鋼管 - Google Patents

疲労寿命予測を可能とした掘削用鋼管

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  • Non-Disconnectible Joints And Screw-Threaded Joints (AREA)
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Abstract

【要約】 【課題】 X線による結晶回折強度測定理論と装置を用
いて、掘削用鋼管の疲労寿命を測定できるように、掘削
用鋼管外表面に工夫し、これら技術の適用を可能にする
疲労寿命予測を可能にした掘削用鋼管を提供すること。 【解決手段】 ネジ継手を持つツールジョイントを、鋼
管端のアプセット部に接合した掘削用鋼管において、内
アプセット増肉開始部に相当する鋼管外表面を含む位置
に、X線測定用の研磨部位を設け、掘削時に脱着可能に
装着される前記研磨部位を保護するプロテクターとより
なることを特徴とする疲労寿命予測を可能とする掘削用
鋼管。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、疲労破壊の予防
を可能とした坑井掘削用鋼管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】坑井掘削用鋼管継手の主要破損原因のひ
とつは、疲労破壊である、疲労破壊の発生は、鋼管の受
ける繰り返し応力及びその回数に依存している。従来
は、その疲労の程度を定量的に診断する技術はなく、定
期的に行う非破壊検査で初期疲労亀裂を発見しその鋼管
を廃棄するか、肉厚減少代を測定しその鋼管の健全性を
評価して使いすぎを未然に防ぐなどの方法で対処してい
た。しかし、近年では傾斜掘り、水平掘りなど掘削環境
が厳しくなり、かつ掘削コストの低減要求も厳しく、掘
削途中の機器の破損はランニングコストに大きく影響す
るため破損予防技術が待望されている。
【0003】疲労破壊は、作用した荷重の大きさと、使
用回数が分かればS−N線図から破壊が予測できるた
め、最近では鋼管に磁気記憶装置を取り付け使用回数を
記録する方法が考案されている。しかし、この方法では
きめの細かい鋼管の管理が必要であることと、作用した
荷重との関係が十分反映しにくいなどの欠点がある。つ
まり、疲労破損は大きな繰り返し荷重を受けた方が、小
さな荷重を受けた時より早く破損するので回数だけの記
録では不十分である。やはり、何とか直接疲労の程度を
測定する方法を採用するのが最良である。「材料」第3
7巻第420号、p136には、X線による疲労寿命予
測の研究を行い、疲労の程度がX線による結晶回折強度
分布から予測できることが提示されている。また、実公
平6−22240号公報により小型X線回折強度測定装
置が提案され、X線を用いた診断技術も進んでいる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、これらX
線による結晶回折強度測定理論と装置を用いて、掘削用
鋼管の疲労寿命を測定できるように、掘削用鋼管外表面
を工夫し、これら技術の適用を可能にする疲労寿命予測
を可能にした掘削用鋼管を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】掘削用鋼管の疲労破壊
は、図1に示す内アプセット部4に相当する位置に頻繁
に起こる。
【0006】図2は、5インチ外径の掘削用鋼管(ドリ
ルパイプ)両端部に曲げモーメントを作用させた時に生
ずる軸方向応力分布図を有限要素法解析で求めて示した
図である。図2から明らかなように、掘削用鋼管に発生
する最大応力は、19.5kg/mm2であって、内ア
プセットの終点および、その反対側の鋼管外表面に生
じ、この部位が最大応力発生箇所5となっており、疲労
破壊が頻発する事実を裏付けている。
【0007】本発明は、疲労が進行し易い所を狙ってX
線測定を行い、材料の結晶回折特性から残存疲労寿命を
推定しようとするものである。この趣旨からは、内アプ
セット部が、使用中の接触等による機械的損傷の影響も
少なく、最もふさわしい測定箇所であるが、X線装置の
大きさの問題から鋼管内面の測定は困難と思われる。
(但し鋼管の内径が充分に大きい場合、或は、X線装置
がコンパクトであって、鋼管の中にこのような装置や検
出端が入るのであれば、前述の鋼管内面の測定箇所の方
が好ましい。)従って、内アプセット部の反対側表面が
残されたX線測定箇所となる。ここで考慮すべき点は、
X線による疲労の進展観察が結晶単位の微細な塑性変形
に依存するため、使用中に疲労以外の機械的損傷、例え
ば打疵、ひっかき疵が加わるようであれば、疲労により
規則的に変化してきた塑性変形の状態がだいなしになる
ことである。つまり、外表面で疲労ダメージを正確に捕
えるためには、最初に測定表面を滑らかにし、そのため
の加工による残留応力が残らないようにしたうえで、使
用時には、測定箇所が接触による機械的損傷受けないよ
うにする工夫が必要である。
【0008】本発明では、上記測定箇所に電解研磨や化
学研磨等の研磨を施し、その表面を滑らかにかつ残留応
力のない状態に仕上げたうえで、プラスチック、金属、
又はそのコンポジットカバーにて研磨部保護を行ってX
線測定による疲労ダメージ推定を可能とする掘削用鋼管
とした。
【0009】本発明の要旨は、以下の通りである。
【0010】(1) ネジ継手を持つツールジョイント
を、鋼管端のアプセット部に接合した掘削用鋼管におい
て、掘削用鋼管の構造上最大応力が発生する部位を含む
鋼管表面の一部に、X線測定用の研磨部位を設けたこと
を特徴とする疲労寿命予測を可能とする掘削用鋼管。
【0011】(2) ネジ継手を持つツールジョイント
を、鋼管端のアプセット部に接合した掘削用鋼管におい
て、内アプセット増肉開始部に相当する鋼管外表面を含
む位置に、X線測定用の研磨部位を設け、掘削時に脱着
可能に装着される前記研磨部位を保護するプロテクター
とよりなることを特徴とする疲労寿命予測を可能とする
掘削用鋼管。
【0012】(3) 内面がプラスチック等合成樹脂で
ライニングされた円筒であり、かつその円筒が半割り可
能に結合されたプロテクターであることを特徴とする上
記(2)記載の疲労寿命予測を可能とする掘削用鋼管。
【0013】(4) 円筒の外径dと、ネジ継手部の最
大外径Dとがd≦Dであるプロテクターであることを特
徴とする上記(2)又は(3)記載の疲労寿命予測を可
能とする掘削用鋼管。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、掘削用鋼管の全体を示す
図である。図1に示すように、掘削用鋼管は、内アプセ
ット部4等の管端アプセット加工を行った掘削鋼管2に
ツールジョイントである鋼管継手部1(ネジ継手部)を
摩擦溶接等の圧接溶接部3により接合して造られる。な
お、接合方法としては、他の接合方法を適用することも
可能である。掘削用鋼管の最大応力が発生する部位を含
む鋼管表面の一部に、X線測定用の研磨部位を設けるた
めの電解研磨や化学研磨等の表面研磨加工は、この圧接
部の焼鈍過程を終えて行う。こうすれば残留応力も除去
されていてX線回折強度の初期値評価にとって望まし
い。完璧を目指すのであれば、焼鈍過程で内アプセット
近傍で長さ方向に沿って、そこからパイプ中心側へ20
cm程度を合わせて残留応力除去焼鈍にしておくとよ
い。焼鈍温度は、材料のAc1点以下で行う。
【0015】次に、X線測定用の研磨部位について説明
する。図3に示すように雄ネジ6側の鋼管外表面に、最
大応力発生箇所を含む部位となる内アプセット部9端か
ら鋼管長手方向の中心に向かって10cm程度、幅15
mm程度帯状に最終600♯までペーパ研磨を行い、そ
の後表面の残留応力除去を目的に電解研磨を行いX線測
定部7を形成する。雌ネジ側の加工は、保護カバー8が
掘削作業時の掘削鋼管固定用スリップの邪魔になるので
行わない。また、X線測定にはせいぜい10mmφの面
積で充分であるが、長さ方向に余裕を持って加工するの
は内アプセット加工の形状及び剛性の高い継手部形状の
相違により最大応力発生箇所にバラツキが生じるからで
ある。
【0016】次に、表面研磨部の保護カバー(プロテク
ター)について説明する。重要なポイントは少なくとも
3つある。
【0017】第1は、鋼管または坑壁との接触に耐える
丈夫な構造であること。第2は、頑丈すぎて装着部に不
要な応力集中を発生させたり、逆に測定部の応力集中を
抑制しない構造であること。第3は、装脱着が容易で、
錆びの原因となる泥水から測定部を守るため、ある程度
シール性が付与されていることなどである。
【0018】本発明での保護カバー(プロテクター)
は、図3に示すように、外径が装着時にネジ継手部外径
Dより小外径dの関係になるような半割円筒鋼管を用い
る。前述した最大応力が発生する部位は、鋼管の外径が
最小となる箇所と一致するので好都合であり、この部位
に装着する保護カバーの外径をそのように小外径とする
ことができる。すなわち、d≦Dとする。図4に本発明
での1実施例の保護カバーの斜視図を示す。図4に示す
ように、保護カバーは、半割円筒の鋼製ハウジング12
から構成され、その内側にはプラスチックライニング1
3が設けられていて、かつ、掘削鋼管とこのライニング
との間にグリース溜り11が設けられている。グリース
充填後に、この半割円筒の通しボルト穴10に4箇の通
しボルトを通して締結する構造になっている。
【0019】上記の研磨加工および保護カバーの装着
は、パイプ中心でも疲労ダメージ測定の目的は達する。
ただし、内アプセット部近傍の外表面が最も応力が高
く、また実際の疲労破壊の確率が高いので、掘削上の不
都合がない限り疲労寿命予測には当該箇所が最良であ
る。
【0020】図5は、掘削用鋼管(引張強さ130kg
/mm2)から切り出した疲労試験片の両振引張疲労試
験から得られたS−N曲線とX線測定に供したサンプル
の繰り返し数を示す図である。つまり、破壊繰り返し数
に対して0、10、30、50%の疲労ダメージを付与
させたものについてX線測定を行った。
【0021】図6は、得られたX線測定結果を示す図
で、寿命比(N/Nf)とX線回折強度比(疲労/未疲
労)の関係を示している。
【0022】図6より明らかなように疲労ダメージの進
展とともに、X線回折強度の低下が観察される。つま
り、この低下減少を追跡することで残存疲労寿命を予測
できることを示している。例えば、廃棄基準を強度比
0.75とすれば平滑試験片なら50%の寿命を消費し
たことになる。これは、低合金、焼き戻しマルテンサイ
ト鋼(引張強さ130kg/mm2)の試験結果である
が、一般に掘削用鋼管の材質はこの焼き戻しマルテンサ
イト鋼が用いられるので、強度が異なっても同様の結果
が得られることが予想される。現象としては、疲労の進
展とともに、副結晶組織の形成がなされ、それらの結晶
方位が異なるために回折強度の低下をもたらしたものと
考えられる。実際の利用方法としては、初期X線回折強
度と使用時のX線回折強度比が、特定の値になったとこ
ろで寿命がきたと判断し廃棄することになる。ただし、
この限定値を決定するには、掘削用鋼管の表面損傷状態
の診断も加味する必要がある。つまり、X線による残存
疲労寿命推定は、鋼管表面に機械的損傷がないことが前
提であるが、表面欠陥は疲労寿命の低下をもたらすこと
が推定されるので、運用面では、これらの減少代を加味
して廃棄のタイミングを設定する必要がある。そのため
には、表面損傷のある掘削鋼管の疲労試験を行い、健全
鋼管に対してどの程度疲労強度が低下するか把握してお
く必要がある。
【0023】X線測定面はグリースで保護し、使用時も
表面清浄を保つようにする。グリースは、坑底の高温に
さらされるのでできれば、250℃程度まで調度の低下
しない高温特性の優れたものを使うことが望ましい。
【0024】
【発明の効果】坑井掘削用鋼管の主要破損原因のひとつ
は、疲労破壊である。本発明によれば疲労破壊に結び付
く鋼管の疲労の程度を正確に診断できるので、掘削用鋼
管の疲労寿命予測が可能となった。その結果、掘削用鋼
管の疲労寿命がきたと予測した場合には、その鋼管を廃
棄し、新しい鋼管と交換することができるので、坑井掘
削中に生じる鋼管の疲労破壊のトラブルを未然に防止す
ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】掘削用鋼管全体図である。
【図2】5インチドリルパイプに曲げモーメントを加え
た時の軸方向応力分布図である。
【図3】X線測定を行う部位を示す図である。
【図4】X線測定保護カバーを示す図である。
【図5】掘削用鋼管材料の疲労S−N線図とX線測定時
期を示す図である。
【図6】掘削用鋼管の疲労寿命比とX線回折強度比の関
係を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼管継手部(ツールジョイント) 2 掘削鋼管 3 圧接溶接部 4 内アプセット部 5 最大応力発生箇所 6 雄ネジ 7 X線測定部 8 保護カバー 9 内アプセット部 10 通しボルト穴 11 グリース溜り 12 鋼性ハウジング 13 プラスチックライニング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16L 11/12 F16L 9/02 F16L 55/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ネジ継手を持つツールジョイントを、鋼
    管端のアプセット部に接合した掘削用鋼管において、掘
    削用鋼管の構造上最大応力が発生する部位を含む鋼管表
    面の一部に、X線測定用の研磨部位を設けたことを特徴
    とする疲労寿命予測を可能とする掘削用鋼管。
  2. 【請求項2】 ネジ継手を持つツールジョイントを、鋼
    管端のアプセット部に接合した掘削用鋼管において、内
    アプセット増肉開始部に相当する鋼管外表面を含む位置
    に、X線測定用の研磨部位を設け、掘削時に脱着可能に
    装着される前記研磨部位を保護するプロテクターとより
    なることを特徴とする疲労寿命予測を可能とする掘削用
    鋼管。
  3. 【請求項3】 内面がプラスチック等合成樹脂でライニ
    ングされた円筒であり、かつその円筒が半割り可能に結
    合されたプロテクターであることを特徴とする請求項2
    記載の疲労寿命予測を可能とする掘削用鋼管。
  4. 【請求項4】 円筒の外径dと、ネジ継手部の最大外径
    Dとがd≦Dであるプロテクターであることを特徴とす
    る請求項2又は3記載の疲労寿命予測を可能とする掘削
    用鋼管。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105067791A (zh) * 2015-08-06 2015-11-18 中国航空工业集团公司北京航空材料研究院 一种模拟高温合金超高周疲劳损伤的方法
CN109598079A (zh) * 2018-12-12 2019-04-09 中国北方发动机研究所(天津) 一种气缸盖分区疲劳寿命预估方法

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