JP2988631B2 - ホスホマイシンナトリウムの凍結乾燥製剤およびその製造法 - Google Patents

ホスホマイシンナトリウムの凍結乾燥製剤およびその製造法

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JP2988631B2 JP1179398A JP17939889A JP2988631B2 JP 2988631 B2 JP2988631 B2 JP 2988631B2 JP 1179398 A JP1179398 A JP 1179398A JP 17939889 A JP17939889 A JP 17939889A JP 2988631 B2 JP2988631 B2 JP 2988631B2
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Description

【発明の詳細な説明】 利用分野 本発明は、有用な抗生物質として知られるホスホマイ
シンナトリウムの新規な凍結乾燥法を提供する。
従来技術 ホスホマイシンナトリウム(以下、FOSという)はス
トレプトマイセス・フラジアエ(Streptomyces fradia
e)の産生する抗生物質として古くから知られ、繁用さ
れている。
FOSの発酵生産法は特公昭45−9828号に、化学合成法
は特公昭46−43206号に開示されている。
一般的には、注射用製剤の製法としては、結晶性粉末
を注射用バイアルに充填する粉末充填法、あるいは凍結
乾燥により原薬結晶の水溶液を容器内で乾燥する方法が
知られている。粉末充填法では医薬品の晶析、乾燥、粉
砕等のいずれの工程においても数ミクロンから数十ミク
ロンの異物が混入するという欠点があるので、注射剤の
製造には異物混入を防止できる凍結乾燥方法が好まれ
る。
発明が解決する課題 しかし、FOSは水との親和性が極めて強く、その共晶
点は−40℃以下となる。通常の凍結乾燥装置で得られる
温度では、FOS水溶液は凍結せず、一次乾燥時に試料は
直ちに融解し、乾燥不可能となる。このような理由か
ら、FOSの結晶性凍結乾燥製剤は、現在のところ達成さ
れていない。現在市販されているのは、FOS原薬結晶を
粉末充填法によってバイアルに充填した製剤のみであ
る。
本発明者らは以上の点に鑑み、安定で長期保存が可能
なFOS結晶性凍結乾燥製剤の簡易な製造法の開発を志し
た。
課題を解決する手段 研究の結果、本発明者らは、少なくともt−ブタノー
ル以下(t−Bという)を含有する水性溶媒にFOSを溶
解したのち、凍結乾燥操作を行なえば、容易に目的のFO
S結晶性凍結乾燥製剤が得られることを見出して本発明
を完成した。該溶液を、内壁が撥水処理された注射用バ
イアルに分注して、凍結乾燥操作を行なえば、製剤中に
残存するt−B量を著しく減少させることができるので
好ましい。
工業的に凍結乾燥法を実施する場合、試料温度を最も
乾燥効率の良い温度、すなわち乾燥工程中に試料が融解
せず乾燥可能な温度範囲内の上限に保持する必要があ
る。試料の凍結が維持され、乾燥可能である上限温度は
共晶点と呼ばれ、該試料溶液に固有の温度である。
共晶点の測定は、抵抗が最大の変化を示す温度を共晶
点とする電気抵抗法によるのが通常であり、この方法で
測定したFOS水溶液の共晶点は、−40℃を遥かに下回
る。
しかし本発明の方法によれば、共晶点よりもはるかに
高い温度において、FOSの凍結乾燥が可能である。従っ
て、本発明の凍結乾燥は、通常の凍結乾燥装置ならびに
その操作によって行なうことができる。すなわち、予備
凍結の温度は工業的に用いられる凍結乾燥機の冷凍機で
得られる温度でよい。例えば、一段圧縮冷凍機でフレオ
ンR−22を用いて得られる−40℃の温度で充分に目的を
達成することができ、液体窒素等が必要な極低温や、特
別な設備を必要としないので経済的である。
本発明において、水性t−Bとは、t−Bを含有する
水性媒質を意味する。ここで、水性媒質とは蒸留水を意
味するが、この蒸留水は保存剤等の添加剤や極少量の親
水性有機溶媒等を含有していても良い。
親水性有機溶媒としては非毒性のものが好ましく、具
体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソ
プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アセ
トン等が例示できるが、所望ならば、これらを0.01〜0.
5%宛適宜添加しても良い。
本発明方法を以下に詳しく説明するが、以下に示す各
添加量は、薬液に対する重量比(w/w%)で表わした。
(1) 蒸留水にt−Bを約1〜約10%、更に好ましく
は約3〜約5%溶解し、水性t−Bを調製する。
(2) (1)で調整した溶液にFOSを約5〜約20%、
更に好ましくは約7〜約12%になるよう溶解して、pHを
約6〜9に調整後、無菌ろ過して薬液とする。
FOS水溶液は弱アルカリ性を示すので、クエン酸など
の有機酸やその他公知の緩衝剤などにより、注射剤とし
て好適なpH7付近に調整することが推奨される。然し乍
ら、pH調整を全く実施しなくとも、本発明は達成され
る。
(3) (2)で調整した薬液をバイアル等の容器に分
注し、棚温約−30〜約−45℃、好ましくは約−35〜約−
40℃にて、約1〜約10時間、好ましくは約3〜約5時間
冷却する(凍結工程)。
(4) 約−45〜約+30℃、好ましくは約−40〜約0℃
の範囲内に棚温を保ち、真空度を約0.05〜約2mbar、好
ましくは約0.1〜約0.2mbarにして、約24〜約120時間乾
燥させる(一次乾燥工程)。
尚、一次乾燥工程中、前記範囲内で温度を自由に変化
させても良い。
(5) 次いで、約30〜約60℃、好ましくは約45〜約60
℃に棚温を上げ、真空度を約0.01〜約2mbar、好ましく
は約0.05〜約0.8mbarにして、約1〜約10時間乾燥させ
る(二次乾燥工程)。
以上の工程を経て、本発明FOS結晶性凍結乾燥製剤は
得られる。
FOSを蒸留水に溶かした後にt−Bを加えてもよい
が、あらかじめ蒸留水にt−Bを加えておくと、FOSを
瞬時に溶解させることができ、調製作業が容易になる。
t−Bは1〜10%、更に好ましくは3〜5%の濃度に
なるように使用する。前記下限以下では、一次乾燥中に
試料が発泡して乾燥不能となり、また上限以上では、適
量のt−Bが水溶液から分離し、好ましくない。いずれ
にしても、残留有機溶媒などの問題を考慮すれば前記上
限以下で使用するのが好ましい。
前記凍結工程において、t−Bを含有しないFOS水溶
液では無色半透明な固液体になるが、本発明の溶液では
凍結の過程で針状氷晶の成長がみられる。この針状氷晶
の形成が著しいほど、共晶点より高い温度で一次乾燥を
行なうことが可能となる。
分注に用いる容器は、本発明方法を行なう条件下で変
質・変形等しない限り、全て用いることが可能である。
通常、ガラス製のバイアル瓶が使用されるが、この時、
容器内壁をシリコン処理等で予め撥水加工しておくと、
凍結乾燥粉末の残留水分・t−B残留量を極めて低くす
ることができるので、好適である。このようにシリコン
処理した注射用バイアルは市販されているので、それを
使用すればよい。
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体
的に説明するが、これらは何等、本発明を限定するもの
ではない。
実施例 1 FOS28.6gを蒸留水134g、t−B5gで溶解し、クエン酸
にてpHを7.5に調整して0.22μメンブランフィルターで
ろ過した。このろ液を無菌的にトレイに分注して(液厚
11mm)凍結乾燥庫内の棚上に置き、−40℃で3時間凍結
させた。次に、品温が−40〜−20℃を維持するよう真空
度、棚温を調整して一次乾燥を81時間行なった。さら
に、棚温60℃、真空度0.1〜0.08mbarに維持しつつ、二
次乾燥を3時間行なった。
得られた乾燥粉末の含水量は3%以下、含t−B量は
0.03%以下であった。
(X線回拆図) 実施例2で得られた結晶粉末のX線回折図を第1図に
示す。図からこの粉末は結晶化度の高い、優れた結晶性
であることが明らかである。
実施例 2 FOS26.4gを蒸留水200g、t−B10gで溶解し、クエン酸
にてpHを7.5に調整して0.22μメンブランフィルターで
ろ過した。この液を滅菌済みのシリコン処理バイアルに
1バイアルあたり1g力価量を分注して凍結乾燥庫内の棚
上に置き、棚温−40℃で4時間冷却した。一次乾燥は品
温が−45〜−20℃を維持するよう真空度、棚温を調整し
て28時間行ない、二次乾燥は棚温60℃、真空度0.1mbar
で6時間行なった。
個々のバイアル中に含まれる水分は1.0%以下で、含
t−B量は0.03%以下であった。
実施例 3 FOS26.4gを蒸留水186g、t−B22.8gで溶解した後に、
メタノールを2g加えて、さらにクエン酸にてpHを7.5に
調整して0.22μメンブランフィルターでろ過した。この
液を滅菌済のシリコン処理バイアルに1バイアルあたり
2g力価量分注して、凍結乾燥庫内の棚上に置き、実施例
1と同じ条件で凍結乾燥した。
含水量1.0%以下、含t−B量および含メタノール量
はともに0.03%以下であった。
実施例 4および5 メタノールに代えてエタノール(実施例4)またはア
セトン(実施例5)を用いた以外は、実施例3と全く同
様にして、凍結乾燥製剤を得た。
いずれの製剤においても、含水量1.0%以下、含t−
B量、含エタノール量、含アセトン量はともに0.03%以
下であった。
実施例 6 FOS26.4gを蒸留水186g、t−B22.8gで溶解し、クエン
酸にてpHを7.5に調整して、0.22μメンブランフィルタ
ーでろ過した。この液を滅菌済バイアルに1バイアルあ
たり2g力価量分注して、実施例3と同じ条件で凍結乾燥
した。
個々のバイアルに含まれる水分は3%以下で、含t−
B量は0.2%以下であった。
比較例 1 ホスホマイシンナトリウム13.2gを蒸留水93gで溶か
し、クエン酸にてpHを7.5に調整した。この液を実施例
3と同じ条件で凍結乾燥したところ、一次乾燥開始とと
もに発泡融解した。
比較例 2 ホスホマイシンナトリウム13.2gを蒸留水100gで溶か
し、クエン酸にてpHを7.5に調整して0.22μメンブラン
フィルターでろ過した。この液を滅菌済バイアルに1バ
イアルあたり1g力価量分注して液体窒素に10分間浸漬し
て急速凍結させた。この凍結物をあらかじめ−40℃に設
定した凍結乾燥庫の棚上に置き、すばやく真空度を0.08
mbarにして乾燥を開始した。
この結果直ちに発泡融解し、乾燥できなかった。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例1で得られた結晶性凍結乾燥粉末のX線
回折図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−67294(JP,A) 特開 昭51−54989(JP,A) 特開 昭58−26821(JP,A) 英国公開1239989(GB,A) Int.J.Pharm.,43(3) (1988)pp.191−199 Manuf.Chem.Aeroso l News 49(11)(1978)pp. 43.44.47.48 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61K 31/665 A61K 9/08 CA ONLINE

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内壁が撥水処理された注射用バイアル製剤
    であることを特徴とするホスホマイシンナトリウムの結
    晶性凍結乾燥製剤。
  2. 【請求項2】ホスホマイシンナトリウムを水性t−ブタ
    ノールに溶解した溶液を内壁が撥水処理された注射用バ
    イアルに分注して凍結乾燥することを特徴とする、ホス
    ホマイシンナトリウム結晶性凍結乾燥製剤の製剤法。
  3. 【請求項3】ホスホマイシンナトリウムを水性t−ブタ
    ノールに溶解した溶液を凍結乾燥することを特徴とする
    ホスホマイシンナトリウムの注射用結晶性凍結乾燥製剤
    の製剤法。
  4. 【請求項4】凍結を約−35〜約−40℃にて行う、請求項
    3記載の製造法。
  5. 【請求項5】凍結を約−40℃にて行う、請求項3記載の
    製造法。
  6. 【請求項6】該溶液中のt−ブタノールの濃度が約1〜
    約10%である、請求項3記載の製造法。
  7. 【請求項7】該溶液中のt−ブタノールの濃度が約1〜
    約10%であり、該溶液の凍結を約−35〜約−40℃にて行
    う、請求項3記載の製造法。
  8. 【請求項8】該溶液中のt−ブタノールの濃度が約1〜
    約10%であり、該溶液の凍結を約−40℃にて行う、請求
    項3記載の製造法。
  9. 【請求項9】請求項3記載の製造法により得られる、ホ
    スホマイシンナトリウムの注射用結晶性凍結乾燥製剤。
  10. 【請求項10】請求項4〜8のいずれかに記載の製造法
    により得られる、ホスホマイシンナトリウムの注射用結
    晶性凍結乾燥製剤。
  11. 【請求項11】残留t−ブタノールの濃度が0.2%以下
    である、請求項9又は10記載の凍結乾燥製剤。
  12. 【請求項12】残留t−ブタノールの濃度が0.03%以下
    である、請求項9又は10記載の凍結乾燥製剤。
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