JP2982507B2 - 管状部材内面への溶射方法 - Google Patents

管状部材内面への溶射方法

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JP2982507B2 JP4223244A JP22324492A JP2982507B2 JP 2982507 B2 JP2982507 B2 JP 2982507B2 JP 4223244 A JP4223244 A JP 4223244A JP 22324492 A JP22324492 A JP 22324492A JP 2982507 B2 JP2982507 B2 JP 2982507B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、管状部材の内面に金属
を溶射する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、シリンダブロックのボア内面に
異種金属を溶射することは従来より知られている(特開
昭53−42148 号公報等参照)。溶射はアーク、プラズ
マ、ガス等の熱源のフレームにより溶融した溶射粒子を
高速( 100〜300 m/秒)で被溶射物表面に衝突させ、
そのまゝ凝固付着させる技術であるが、前記溶射粒子の
被溶射物表面への衝突に際して多くのはね返りが生じ
る。このはね返りの程度は、温度、粒径等の溶射粒子の
状態を始め、その飛行速度と分布位置、あるいは雰囲気
によって左右される。特に内面溶射においては、口径の
制約により溶射距離を充分大きくとれないことがあり
(一般的に100 mm以上必要)、この場合は、熱源のフレ
ーム中における粒子の停滞時間が短くなり、粒子の溶融
が不充分となってはね返る粒子の量も多くなる。
【0003】ところで、内面溶射の場合、上記はね返っ
た粒子は、そのまゝ被溶射物の内部に拡散してその内面
に付着し、表面粗さ、密着強度等、溶射品質を悪化させ
る原因となる。そこで、従来は被溶射物である管状部材
の内部に圧縮空気を吹き込み、空気流に乗せてはね返り
粒子を系外へ排出するようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記圧
縮空気を吹き込む対策によれば、実際上、空気流によっ
て除去されるはね返り粒子は微細なものに限定され、そ
の大部分が溶射皮膜中に残ってしまって溶射品質はそれ
ほど改善されないという問題があった。なお、圧縮空気
の圧力および流速を高めることにより粒子径の大きなは
ね返り粒子も除去することが可能となるが、この場合
は、溶射粒子の酸化が促進されるため、該粒子の濡れ性
が低下してはね返り粒子が益々増大し、その上、溶射品
質もさらに悪化することとなって、根本的な解決には至
らない。
【0005】本発明は、上記従来の問題を解決すること
を課題としてなされたもので、その目的とするところ
は、はね返り粒子を効率的に捕捉し、もって溶射品質の
改善に大きく寄与する管状部材内面への溶射方法を提供
することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、管状部材に、その内面形状に合ったスリ
ーブを挿入し、該スリーブの一端を溶射点付近に臨ませ
た状態を維持して、該スリーブを溶射ガンの移動方向へ
これと同期して移動させるように構成したことを特徴と
する。
【0007】本発明は、上記スリーブとして、管状部材
の内面との間にわずかの隙を形成する大きさのもの、ま
たは外周面に被削性に優れた材料からなるコーティング
層を設けたものを用いることができる。そして、前者の
スリーブを用いた場合は、これを前記隙を維持するよう
に管状部材に挿入するようにし、一方、後者のスリーブ
を用いた場合は、これを管状部材の内面に密接するよう
に該管状部材に挿入するようにする。
【0008】スリーブとして、管状部材の内面との間に
わずかの隙を形成する大きさのものを用いる場合は、該
隙はできるだけ小さいことが望ましいが、寸法、形状的
な精度を考慮すると、0.2 〜1.0 mm程度とするのが妥当
である。またこの場合は、該隙を一定に維持する都合
上、スリーブとして管状部材とあまり熱膨張係数の違わ
ない材料を選択するのが望ましい。また、スリーブとし
て、外周にコーティング層を設けたものを用いる場合
は、該コーティング層の材料としては、Al −Si−ポ
リエステル、Al −グラファイト、Ni −グラファイ
ト、Al ブロンズ−ポリエステル等を選択することがで
きる。
【0009】本発明において、スリーブの形態は任意で
あり、剛体構造としても、あるいはテレスコピック式ま
たはじゃ腹式に伸縮自在な構造としても良いものであ
る。またこのスリーブを溶射ガンと同期させる方法も任
意であり、例えばスリーブと溶射ガンとを機械的に連結
する方法、スリーブと溶射ガンとを各独立の駆動手段に
支持させて電気的な同期をとる方法等を採用することが
できる。さらに、本発明の方法を実行する溶射装置の型
式や加熱方式も任意であり、例えば型式としては汎用の
エクステンションガンを備えたものまたはこのエクステ
ンションガンを回転させるようにしたものを、加熱方式
としてはアーク、プラズマジェットまたはガス(HVOF)
をそれぞれ採用することができる。
【0010】
【作用】上記のように構成した管状部材内面への溶射方
法においては、管状部材内面からはね返った粒子は、そ
の大部分がスリーブ内に拡散して該スリーブの内面に付
着し、しかもこのスリーブは溶射ガンと同期して移動す
るので、全溶射領域ではね返り粒子を捕捉できるように
なる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面にもとづい
て説明する。
【0012】実施例1 図1に示すように、内燃機関用のシリンダライナ1を対
象として、このシリンダライナー1を回転支持手段(図
示略)に横置きに支持し、一方、前記シリンダライナ1
に対して進退動するマニプレータ2に支持させたプラズ
マ溶射装置3から、シリンダライナ1の一端に向けて溶
射ガン(エクステンションガン)4を延ばし、さらに、
別途用意したスリーブ5を前記溶射ガン4と反対側から
シリンダライナ1に挿入し、このスリーブ5を連結部材
6を介して前記マニプレータ4に連結している。連結部
材6はシリンダライナ1の軸と平行に配置したスライド
ガイド7を摺動自在に挿通しており、これによりスリー
ブ5とマニプレータ4とはシリンダライナ1の軸方向へ
同期して移動するようになっている。またスリーブ5
は、シリンダライナ1の内径よりわずか小さい外径を有
し、シリンダライナ1に同心に挿入されてシリンダライ
ナ1の内周面との間にわずかの隙を形成している。さら
にスリーブ5とマニプレータ2とは、溶射ガン4から発
射された溶射粒子8のシリンダライナ1の内面への衝突
点すなわち溶射点の付近にスリーブ5の一端が位置する
ように相対位置が決められている。なお、溶射ガン4の
ノズル向き(溶射方向)は、シリンダライナ1の軸線に
対してほヾ90度に設定されている。
【0013】上記の態様のもと、予めスリーブ5の一端
がシリンダライナ1の開口端付近に位置するように該ス
リーブ5を位置決めし、先ずシリンダライナ1を所定の
回転速度で回転させ、続いて、マニプレータ2を所定の
速度で前進させると共に、溶射装置3を作動して溶射ガ
ン4から溶射粒子8を発射する。すると、溶射粒子8
は、先ずシリンダライナ1の開口端付近の内面に衝突
し、この溶射点はシリンダライナ1の回転とマニプレー
タ2の移動に応じて、シリンダライナ1の円周方向と軸
方向とへ次第に移行し、シリンダライナ1の内面には溶
射皮膜が順次形成される。ところで、この溶射中、溶射
粒子の一部はシリンダライナ1の内面からはね返るが、
溶射点の近傍にスリーブ5の一端が常時臨んでいるの
で、このはね返った粒子のほとんどはスリーブ5内に拡
散し、該スリーブ5の内面に付着するようになる。
【0014】具体的には、シリンダライナ1として鋳鉄
製で内径80mm(肉厚2mm)のものを、スリーブ5として
鋼製で外径79.6mm(肉厚1.5mm )のものを、溶射材とし
て高炭素ステンレス鋼粉末(平均粒径70μm )をそれぞ
れ用い、また溶射条件として、Ar ガス:40リットル/
分,H2 ガス:7リットル/分,電流:450 A,電圧:
60V,粉末供給量:50g/min ,溶射ガン移動速度:50
0 mm/min ,シリンダライナ回転速度:500 rpm の各条
件を選択して、上記した要領で溶射を行い、シリンダラ
イナ1の内面に厚さ0.2 mmの溶射皮膜を形成し、これを
品質試験に供した。品質試験は、溶射始端側と終端側に
おける溶射皮膜について、その顕微鏡組織を観察すると
共に、皮膜中に占める酸化物量、皮膜の表面粗さおよび
皮膜の密着強さを測定し、併せて溶射材の歩留りを求め
る内容とした。試験結果は後に詳述する。
【0015】実施例2 図2に示すように、スリーブ5をブラケット9を介して
直接溶射ガン4に支持させ、上記実施例1と同様の条件
でシリンダライナ1の内面に溶射を行い、これを実施例
1と同様の品質試験に供した。本実施例においては、上
記した連結部材6やスライドガイド7が不要になるの
で、装置構成が簡単となるばかりか、被溶射物(シリン
ダライナ1)の周りにスペース余裕がない場合にも有効
に対処できる利点がある。
【0016】実施例3 スリーブ5として、外径78mm(肉厚1.5mm )のものを用
いる以外は実施例2と同一の態様でかつ同一条件を採用
し、実施例1と同様に溶射を行い、これを実施例1と同
様の品質試験に供した。
【0017】実施例4 図3および図4に示すように、内燃機関用のシリンダブ
ロック10を対象として、このシリンダブロック10を回転
テーブル11に縦置きに支持し、溶射ガン4を上方からシ
リンダブロック10のボア10a内に挿入可能とし、一方、
スリーブとしては、テレスコピック式に伸縮可能なフレ
キシブルスリーブ12を用い、これを実施例2と同様にブ
ラケット9を介して溶射ガン4に連結する。溶射に際し
ては、シリンダブロック10のスカート部10b内にスリー
ブ12の下端を受ける横桟13を配置し(図4)、回転テー
ブル11を所定の速度で回転させながら溶射ガン4を所定
の速度で下降させる。すると、溶射ガン4の下降に応じ
てスリーブ12が次第に縮小し、したがってシリンダブロ
ック10のボア10aの内面の前面に対して有効に溶射皮膜
を形成することができる。すなわち、スリーブ12の移動
に制限を受けるような場合でも、有効に内面溶射を実行
できるようになる。しかして、本実施例においても、上
記実施例1と同様の溶射条件でシリンダブロック10のボ
ア10aの内面に溶射を行い、これを実施例1と同様の品
質試験に供した。
【0018】実施例5 図5に示すように、シリンダブロック10のボア10aに挿
入するスリーブとして、剛体部16とじゃ腹式の伸縮部17
とから成るフレキシブルスリーブ15を用い、その剛体部
16をブラケット9を介して溶射ガン4に連結すると共
に、その伸縮部17をシリンダブロック10内の横桟13に着
座させ、他は実施例4と同様の態様でシリンダブロック
10のボア10aの内面に溶射を行い、これを実施例1と同
様の品質試験に供した。
【0019】実施例6 図6に示すように、溶射ガンとしてノズルの口向き(溶
射角度)を被溶射物であるシリンダライナ1の軸線に対
して45度に傾斜させたもの4´を用いると共に、スリ
ーブとしてスリーブ本体21の外周面にコーティング層22
を設けた複合スリーブ20を用い、スリーブ20は、実施例
2と同様にブラケット9を介して溶射ガン4´に支持さ
せ、かつシリンダライナ1の内面に密接するように該シ
リンダライナに挿入するようにした。また、溶射ガン4
´に対向する側のスリーブ20の開口を段付きの蓋体23に
より閉じ、かつスリーブ20の溶射点付近に臨む前側下面
と後端部付近の下面とにスリット24、25を設け、さら
に、スリーブ20の後端に集塵機等の吸引手段に結ぶダク
ト26を接続した。すなわち、スリーブ20内には前記吸引
手段の作動により、各スリット24、25からダクト26内に
向かう空気の流れが形成されるようになっている。
【0020】本実施例において溶射角度を45度とした
溶射ガン4´を用いたのは、溶射距離を延ばして溶射粒
子の溶融を促進することを意図してのことである。すな
わち、口径の小さい被溶射物(シリンダライナ1)を対
象とした場合は、溶射距離に制限を受けるため、熱源の
フレーム中における溶射粒子の停滞時間が短くなり、粒
子の溶融が不充分となってそのはね返りが多くなる。し
たがって、本実施例のように溶射角度45度とした場合
は、これを軸線と直角(90度)に設定した場合(実施
例1〜5)に比べて溶射距離を延ばすことができ、その
分、溶射粒子の溶融が促進されて歩留りが向上すること
になる。ただし、このようにノズルの口向きを傾斜させ
た場合は、溶射粒子を含むフレームに被溶射物の軸線方
向の速度(ベクトル)が存在するため、図7に示すよう
に、溶射粒子を含むフレームが被溶射物の内面に沿って
流れ、スリーブと被溶射物との間の隙に粒子が侵入し易
くなる。そこで、本実施例では、スリーブ本体21の外周
面にコーティング層22を設けた複合スリーブ20を用い、
その隙を埋めて溶射粒子の侵入を防止するようにしたの
である。しかして、前記コーティング層22は、こゝでは
溶射によって形成し、その溶射材としては被削性に優れ
た材料、例えばAl −Si −ポリエステル、Al −グラ
ファイト、Ni −グラファイト、Al ブロンズ−ポリエ
ステル等を選択している。
【0021】このように構成した本実施例6において
は、先ずシリンダライナ1を所定の回転速度で回転させ
ると共に、吸引手段を作動させてシリンダライナ1内を
吸気し、続いて溶射ガン4´から溶射粒子8を発射する
と、溶射粒子8は、シリンダライナ1の軸線に対して4
5度方向に流れてシリンダライナ1の内面に衝突する。
この時、シリンダライナ1の内面に沿って溶射粒子8が
流れようとするが、シリンダライナ1とスリーブ本体21
との間にはコーティング層22が介在しているので、溶射
粒子8は、スリーブ20の一方のスリット24からスリーブ
20内に入り、その多くはダクト26を通じて吸引手段へと
吸引される。一方、シリンダライナ1の回転とスリーブ
20の軸線方向への移動によりコーティング層22の表面が
部分的に研削され、研削くずが発生するが、この研削く
ずも前記スリット24からスリーブ20内に入り、吸引手段
へと排出される。したがって、溶射皮膜25中にコーティ
ング層22の素材としての溶射材(コーティング材)が該
溶射皮膜25中に巻込まれることはなくなる。また、溶射
方向を45度としたので、溶射粒子の溶融が促進され、
歩留りが向上する。近年開発の高速燃焼方式(HVOF)で
は、溶射粒子の飛行速度が非常に速く(プラズマ溶射の
3〜4倍: 400〜1000m/s)、溶射粒子のはね返りに
よる歩留まりの低下が問題になっているが、このような
場合に特に有効となる。
【0022】具体的には、シリンダライナ1として鋳鉄
製で内径80mm(肉厚2mm)のものを、スリーブ本体21と
して鋼製で外径78mm(肉厚1.5mm )のものを、コーティ
ング層22の溶射材としてNi −グラファイトを、溶射ガ
ン4´からの溶射材として高炭素ステンレス鋼粉末(平
均粒径70μm )をそれぞれ用い、実施例1と同一の溶射
条件を選択して、上記した要領で溶射を行い、シリンダ
ライナ1の内面に厚さ0.2 mmの溶射皮膜を形成し、これ
を実施例1と同様の品質試験に供した。なお、図8はコ
ーティング層22の顕微鏡組織を示したもので、図中、白
色部分はNi 相を、黒色部分はグラファイト相をそれぞ
れ表している。
【0023】実施例7 ダクト26を通じての吸気を省略した以外は、実施例6と
同一の態様でかつ同一の条件で溶射を行い、これを実施
例1と同様の品質試験に供した。
【0024】実施例8 実施例6の構成からコーティング層22を省略すると共
に、ダクト26を通じての吸気を省略し、実施例6と同一
の条件で溶射を行い、これを実施例1と同様の品質試験
に供した。
【0025】比較例1 実施例1と同様にシリンダシリンダライナ1を対象に、
スリーブ5を用いることなく、シリンダライナ1内に外
部から圧縮空気(4.5 kg/cm2 )を吹き込む従来の方法
により、実施例1と同様の溶射条件で溶射を行い、これ
を実施例1と同様の品質試験に供した。
【0026】比較例2 実施例3と同様にシリンダブロック10を対象に、スリー
ブ12を用いることなくシリンダブロック10内に外部から
圧縮空気(4.5 kg/cm2 )を吹き込み、実施例1と同様
の溶射条件で溶射を行い、これを実施例1と同様の品質
試験に供した。
【0027】試験結果 下表は、上記実施例1〜8および比較例1,2について
の品質試験結果を示したものである。同表に示す結果よ
り、溶射始端側の溶射品質は本実施例1〜8と比較例
1,2との間にほとんど差がないものの、溶射終端側で
は両者の間に大きな差が認められる。すなわち、溶射終
端側では、比較例1,2における溶射皮膜に占める酸化
物量すなわち酸化物面積率が著しく増大するばかりか、
表面粗さ、密着強度も大きく低下している。かゝる品質
の差は、溶射に伴うはね返り粒子の存在によりもたらさ
れたもので、本各実施例の場合は、はね返り粒子がスリ
ーブ5、12、15または20に捕捉される結果、溶射始端側
と終端側で溶射品質にほとんど差がなくなり、一方、比
較例1による場合は、このはね返り粒子が溶射終端側に
向かうにしたがってシリンダライナ1の内面に多く堆積
し、結果として前記したように溶射終端側で溶射品質が
著しく悪化したのである。
【0028】このことは、図9〜図11に示す組織の顕
微鏡観察結果からも明らかである。すなわち、図9およ
び図10は、実施例1で形成した溶射皮膜の溶射始端側
(図9)と溶射終端側(図10)における表層部の組織
を、図11は比較例1の溶射終端側における表層部の組
織を示したもので、実施例1の場合は溶射始端側、終端
側ともにはね返り粒子(酸化物層)の存在はほとんど認
められないのに対し、比較例1の場合は、溶射終端側で
大きな酸化物層Cが認められている。また、はね返り粒
子を確認するため、比較例1において途中で溶射を中止
し、シリンダライナ1の他端側の溶射を実施してない部
分を顕微鏡で観察した結果、図12に示すように酸化さ
れたはね返り粒子の積層C´が認められた。なお、図9
〜図11中、Aは溶射皮膜層を、Bは基地をそれぞれ表
している。
【0029】
【表】
【0030】また、上表における比較例1と比較例2と
の比較より、比較例2における溶射終端側の品質が比較
例1におけるそれに比して一層悪化しているが、これ
は、シリンダブロック10の場合、一端が閉鎖されている
ため圧縮空気の流通が不充分となり、はね返り粒子が巻
き込まる機会が増したためであると推量される。
【0031】また、上表における実施例1〜5と実施例
6〜8との比較より、溶射角度を45度と小さく設定
(実施例6〜8)した方が、溶射角度を90度に設定
(実施例1〜5)した場合よりも溶射材料の歩留りが増
大している。これは、溶射角度を45度に設定すること
により溶射距離が延び、溶射粒子の溶融が促進されたこ
とによるものである。
【0032】また、上表における実施例1〜3および8
と実施例6,7との比較より、表面にコーティング層22
を設けた複合スリーブ20を用いた実施例6,7の方が、
コーティング層を設けない実施例1〜3および8よりも
酸化物の面積率が低下しかつ表面粗さが向上している。
これは、コーティング層22の存在によりはね返り粒子の
捕捉がより確実になったことによるものである。
【0033】また、上表における実施例6と実施例7と
の比較より、吸引手段によりスリーブ内を吸気する実施
例6の方が吸気を省略した実施例7よりも密着強度が増
大している。これは、スリーブ内を吸気することによ
り、コーティング層22の研削くずが系外に排出され、結
果として溶射皮膜25(図6)中へのコーティング材の巻
込みが抑制されたためである。
【0034】さらに、上表における実施例2と実施例3
との比較より、シリンダライナ1とスリーブ5との間の
隙を1.0 mmに設定した実施例3の方が該隙を0.2 mmに設
定した実施例2より溶射品質が低下しており、当然のこ
ととして該隙はできるだけ小さく設定するのが望ましい
ことが分かる。
【0035】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
かゝる管状部材内面への溶射方法によれば、溶射ガンと
同期して移動するスリーブ内にはね返り粒子を捕捉し
て、管状部材内面へのはね返り粒子の付着を抑制できる
ので、溶射品質に優れた溶射皮膜を形成できる効果があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例で用いる溶射装置の構造を
模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施例で用いる溶射装置の構造を
模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の第4実施例で用いる溶射装置の構造を
模式的に示す断面図である。
【図4】図3の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の第5実施例で用いる溶射装置の構造を
模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の第6実施例で用いる溶射装置の構造を
模式的に示す断面図である。
【図7】第6実施例における溶射粒子の流れを示す模式
図である。
【図8】第6実施例におけるコーティング層の組織を示
す顕微鏡写真である。
【図9】第1実施例により形成した溶射皮膜の組織を示
す顕微鏡写真である。
【図10】第1実施例により形成した溶射皮膜の組織を
示す顕微鏡写真である。
【図11】従来の方法により形成した溶射皮膜の組織を
示す顕微鏡写真である。
【図12】従来の方法によるはね返り粒子の組織を示す
顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 シリンダライナ(管状部材) 4 溶射ガン 4´溶射ガン 5 スリーブ 10 シリンダブロック(管状部材) 12 テレスコピック式スリーブ 15 じゃ腹式スリーブ 20 複合スリーブ 22 コーティング層 24 スリット

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 管状部材に、その内面形状に合ったスリ
    ーブを挿入し、該スリーブの一端を溶射点付近に臨ませ
    た状態を維持して、該スリーブを溶射ガンの移動方向へ
    これと同期して移動させることを特徴とする管状部材内
    面への溶射方法。
  2. 【請求項2】 スリーブとして、管状部材の内面との間
    にわずかの隙を形成する大きさのものを用い、これを前
    記隙を維持するように管状部材に挿入することを特徴と
    する請求項1に記載の管状部材内面への溶射方法。
  3. 【請求項3】 スリーブとして、外周面に被削性に優れ
    た材料からなるコーティング層を設けたものを用い、こ
    れを管状部材の内面に密接するように該管状部材に挿入
    することを特徴とする請求項1に記載の管状部材内面へ
    の溶射方法。
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