JP2981177B2 - 高分子フィルム等シート材のコロナ放電処理用ロールおよびその製造方法 - Google Patents

高分子フィルム等シート材のコロナ放電処理用ロールおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子フィルム,
合成紙, アルミ箔などのシート材表面を活性化すること
により、このシート表面の印刷性および接着性を向上さ
せる際に用いられる高分子フィルム等シート材のコロナ
放電処理用ロールとそれの製造方法に関するものであ
る。本発明の技術は、物理蒸着処理装置におけるプラズ
マスパッタリング処理装置などにも同様の構成にして適
用が可能である。
【0002】
【従来の技術】今日、高分子製のフィルムやシートなど
は、軽量で機械的強度に優れるほか化学的にも安定して
いるため、各種の産業分野はもとより一般家庭において
も必需品の1つとして用いられている。しかし、塩化ビ
ニル, ポリエチレンなどの高分子フィルムは、印刷用イ
ンクの付着性が悪く、そのために従来は、このフィルム
等の表面をコロナ放電による活性処理を施して使用して
いる。
【0003】図1は、一般的なコロナ放電処理装置の概
要を示したものである。この装置は、電極1と、高分子
フィルム2を移送支持するための、表面を絶縁性皮膜3
にて被覆した誘電体ロール4と、そして電極1とロール
4に高周波・高電圧を印加するための電源5から構成さ
れている。なお、図中の6は、コロナ放電の様子を模式
的に示し、また、7はロールに付与したアース線であ
る。
【0004】上記装置による高分子フィルムの活性化処
理は、上記誘電体ロール4を回転させつつこのロール表
面に沿わせて高分子フィルム2を移送する間に、高圧電
極1からコロナ放電を放射すること、即ち、コロナ中に
発生した放電電子を高分子フィルムの表面に衝突させる
ことにより、フィルム表面を原子論的な規模で粗面化す
ることによって活性化する方法である。このような処理
によって該フィルム表面は活性化し、その結果として該
フィルム表面の印刷用インキの吸着力 (付着性) が向上
するとともに、同質または異質な高分子フィルム同士の
直接接着が容易となるのである。
【0005】ところで、上記装置に用いられるコロナ放
電用の電極1としては、アルミニウム合金, ステンレス
鋼などで製造されたものが多く、目的に応じて円筒, 棒
状,ときには小さなロール形状に作製されている。
【0006】一方、高分子フィルム2の支持側となる誘
電体ロール4は、その表面がコロナ放電処理に適した構
成, 例えば、絶縁性皮膜が施されるのが普通である。こ
のような目的に応えられる皮膜の特性としては、 高電圧に耐えること、 価格的に有利な材料もしくは皮膜であること、 コロナ放電によって発生するオゾンによく耐えるこ
と、 絶縁性に優れると同時に適度の誘電率を具えている
こと、などが求められる。
【0007】これらの要求を満足するものとしては、導
電性金属または導電性FRP材 (高分子複合材) 製ロー
ルの表面に、 シリコンゴム, ブタンゴムあるいはエポキシ樹脂な
どのゴムや高分子材料をライニングしたもの 絶縁性皮膜としてガラス層を被覆したもの、 特公昭61−4848号公報記載のように、溶射法によっ
て気孔率85〜95%の溶射皮膜を形成した後、皮膜の気孔
部に高分子材料を含浸させて絶縁性皮膜としたもの、 特開昭7−224371号公報記載のように、基材ロール
の表面に、Al2O3 もしくは Al2O3−TiO2溶射皮膜を施工
すると共に、この溶射皮膜の基材近傍の気孔率を5%以
下にする一方最表面層の気孔率を15%以上とした気孔分
布にすると共に、その気孔部内に絶縁性無機物を充填し
た傾斜機能材料を用いるものなどが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記各
従来技術は、次に示すような問題点があり、さらなる改
善が求められている。すなわち、のシリコンゴム, ブ
タジエンゴムなどの合成ゴム系のライニングは、天然ゴ
ム系のものに比較すると、寿命は長いがコロナ放電中に
発生するオゾンによって酸化されやすく、弾性の低下を
招くとともにゴム構成分子の結合力が低下して、ひび割
れが発生し、絶縁性が早期に消失する。
【0009】のガラス被覆そのものは、良好な絶縁性
を有するものの、ロールの運転, 停止による温度変動が
頻繁に繰り返されると、金属製基材との熱膨張係数の差
に起因する応力によってガラス被覆部に亀裂が発生し、
このために絶縁破壊が起こり使用できなくなる。
【0010】の特公昭61−4848号公報に記載のものは
上述したように、耐火絶縁性に優れたAl2O3 を溶射法に
よって気孔率:85〜95%に制御して形成した皮膜に対
し、さらに高分子物質をこの気孔部に充填したものであ
るが、この技術には、次のような問題点がある。 (a) この技術は、ロール基材に酸化物 (Al2O3)を直接溶
射しているため、両者間に大きな熱膨張係数差が存在
し、ロールの運転と停止作業の繰返しによって溶射皮膜
が早期に剥離する。 (b) 溶射皮膜の気孔率を大きくすると熱膨張係数の差に
起因する応力の集中は緩和されるが、その一方でロール
基材に対する溶射皮膜の接触面積が小さくなるため、皮
膜の密着強度が低下する。 (c) 溶射皮膜の気孔中に充填される高分子物質は、有機
物を主成分としているので、コロナ放電中に発生するオ
ゾンおよび窒素酸化物によってゴム系物質と同様に分子
間結合力が低下し、酸化による変質が起こって、初期の
性能が発揮できなくなる。
【0011】の特開平7−224371号公報は、上記の
溶射皮膜の欠点を解消するために開発された技術であ
る。しかし、この技術においても次に示すような問題点
が残されている。 (a) 基材に直接、Al2O3 や Al2O3−TiO2複合材料を用い
て溶射法によって皮膜を形成しているため、熱膨張差に
よって皮膜が剥離しやすい。 (b) ロール基材近傍の皮膜の気孔率を5%以下としてい
るため、皮膜の貫通気孔の存在による放電リークの危険
性は低下するものの、金属製ロール基材に酸化物系溶射
皮膜を直接形成しているため、熱膨張差に起因する剥離
が大きい。 (c) 溶射皮膜の気孔部に充填する絶縁物として、珪酸ナ
トリウムとAl2O3 混合物をアルコールによって希釈した
ものを用いているが、急激な加熱によって体積の減少と
小さな亀裂の発生が起こりやすいため、絶縁性が低下す
る。
【0012】本発明の目的は、フィルム等へのコロナ放
電処理に適した誘電体ロール用表面被覆構造 (皮膜) を
提案することにある。本発明の他の目的は、オゾンや高
電圧によく耐え、優れた絶縁性と適度の誘電率を有する
誘電体ロールの表面被覆用皮膜を提供することにある。
本発明の他の目的は、皮膜の強度が高く、かつ密着強度
が大きくて剥離しにくく、しかも絶縁特性が長期にわた
って劣化しない皮膜の構成材料と構造を提供することに
ある。本発明のさらに他の目的は、コロナ放電処理用ロ
ールの表面に密着強度が高くいつまでも絶縁性に優れた
皮膜を形成する有利なコロナ放電処理用ロールの製造方
法を提案することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の目的に適うコロナ
放電処理用ロールとして、本発明は、次のような点に着
目してこれを開発した。 (1) 金属製誘電体ロール基材の表面には、まずNi−Al,
Ni−CrあるいはCr−Feなどの金属 (以下、合金を含めて
一律に「金属」と言う) のアンダーコートを50〜200 μ
m厚に施工し、このアンダーコートの上に酸化物系セラ
ミックス溶射皮膜を形成することで、皮膜の密着性を向
上させる。 (2) 即ち、金属製アンダーコートの上には、Al2O3 , Al
2O3 −TiO2あるいはAl2O 3 −MgO などの酸化物系セラミ
ックスをプラズマ溶射法によって 250〜1000μm厚に施
工する。 (3) ロール基材表面に(1), (2)の処理によって形成され
た金属溶射層とセラミック溶射層とからなる複合溶射皮
膜皮膜は、通常、2 〜20%程度の気孔を有している。従
って、この複合溶射皮膜の封孔を目的として、その表面
に、ガラス形成成分であるB2O3やP2O5, Na2SiO3 などの
酸化物の他、SiO2, Al2O3 , MgO およびAlN などの無機
物質の微粉を混合した液状物質 (充填材) を塗布して、
該気孔中に浸入させ、その後、この皮膜を150 〜450 ℃
で 0.5〜5時間加熱する。この操作によって、B2O3やP2
O5などを主成分とするガラス質物質, いわゆるほう酸
系, りん酸系以上およびけい酸系のガラスを前記気孔中
に生成させることができ、良好な絶縁性, 気密性および
密着性を有する複合絶縁性皮膜にすることができる。 (4) なお、本発明では必要に応じ、上記充填材による封
孔処理に加え、さらなる充填封孔を目的として、無機質
もしくは有機質の珪素質化合物、例えばオルト珪酸ソー
ダ, メチルシリケート, エチルシリケートあるいは珪素
樹脂の如き珪素質化合物を用いて最終処理を施すことが
好ましい。
【0014】即ち、本発明は、導電性ロール基材の表面
に;アンダーコートとして形成した金属溶射層と、アン
ダーコートの表面に形成したトップコートとしての Al2
O3,Al2O3−TiO2および Al2O3−MgO の中から選ばれる1
種以上からなる酸化物系セラミックス溶射層とからな
り、かつそのトップコートのセラミック溶射層が、層内
気孔部中に、加熱処理によってほう酸系ガラス, りん酸
系ガラス, 珪酸系ガラスなどを生成するガラス形成物質
と、Al2O3 や MgO, SiO2, AlN などから選ばれる1種以
上の無機質微粉末との混合物からなる充填材を充填した
構造にかかる複合絶縁性皮膜を;設けたことを特徴とす
る高分子フィルム等シート材のコロナ放電処理用ロール
である。
【0015】本発明においては、複合絶縁性皮膜中の上
記トップコートセラミックス溶射層が、層内気孔部中
に、加熱処理によってほう酸系ガラス, りん酸系ガラ
ス, 珪酸系ガラスなどを生成するガラス形成物質と、Al
2O3 や MgO, SiO2, AlN などから選ばれる1種以上の無
機質微粉末との混合物からなる充填材を充填したあと
に、さらに無機質系もしくは有機質系の珪素質化合物か
らなる封孔材を塗布・含浸させた構造を有することを特
徴とする。
【0016】本発明においては、上記充填材として、加
熱後の最終化学式でB2O3, P2O5およびNa2SiO3 で表わさ
れるいずれか1種以上のガラス形成酸化物と、Al2O3 ,
SiO2, MgO およびAlN のいずれか1種以上の無機質微粉
末と、水やアルコール等の溶媒とからなる液状物質を用
いることを特徴とする。
【0017】本発明にかかる上記のロールは、導電性ロ
ール基材の表面に、アンダーコートとして金属溶射層を
形成し、そのアンダーコートの表面に Al2O3, Al2O3
TiO2および Al2O3−MgO の中から選ばれる1種以上の酸
化物系セラミックスを溶射してトップコート溶射層を形
成し、次いで前記トップコートのセラミック溶射層に対
し、その気孔部中に、加熱処理によってほう酸系ガラ
ス, りん酸系ガラス, 珪酸系ガラスなどを生成するB2O3
やP2O5, Na2SiO3 などのガラス形成酸化物の液状物質に
Al2O3 や MgO, SiO2, AlN などから選ばれる1種以上の
無機質微粉末を混合した液状充填材を塗布したのち 150
〜450 ℃で 0.5〜5時間の加熱を行って封孔処理するこ
とにより、複合絶縁性皮膜を形成することによって製造
することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明について、とくにコロナ放
電処理用誘電体ロール基材の表面に形成する複合絶縁性
皮膜とその製造方法の詳細について、各層の形成の手順
に従い説明する。
【0019】(1) アンダーコート金属溶射層の形成:こ
の層は、誘電体ロール基材の表面を、脱脂, 洗浄した
後、Al2O3 粒子を用いてブラスト処理してロール表面を
粗面化する。その後、この粗面化ロール表面にプラズマ
溶射法, フレーム溶射法, アーク溶射法などによって、
金属を50〜200μm厚に溶射することによって得られ
る。この目的のために用いる溶射用金属粉末としては、
Ni, Mo, Ni−Al (3〜25%) , Ni−Cr (15〜60%) , Fe
−Cr (5〜20%) などの材料が好適に用いられる。この
アンダーコートの役目は、ロール基材と良好な密着性を
確保するとともに、既に粗面化されたような状態にある
アンダーコート表面に形成される酸化物系セラミック溶
射皮膜との密着性をよくすることにある。
【0020】なお、このアンダーコートは、微粒子によ
る溶射皮膜特有の構造を有すると同時に、多少の気孔と
酸化物を含んでいるため、同組成の金属の熱膨張係数に
比較すると小さくなっている。つまり、このアンダーコ
ートは、後述するトップコートの酸化物系セラミック溶
射皮膜とロール基材の熱膨張係数の中間的な値を示すこ
ととなるため、ロールの運転による高温化, 運転停止に
よる冷却の繰り返しを受けてもトップコートが剥離する
のを防止する効果がある。かかるアンダーコートの厚さ
を50〜200 μmの範囲とした理由は、50μm以下では前
記アンダーコートの作用機構が十分でなく、また、200
μm以上厚くしても作用機構の効果に変化がなく、経済
的に不利となるからである。
【0021】(2) トップコートセラミックス溶射層の形
成:この層は、上記アンダーコート金属溶射層上に、Al
2O3, Al2O3−TiO2(0.5〜5%), Al2O3−MgO (20〜80
%) などの酸化物系セラミックスをプラズマ溶射法,フ
レーム溶射法などの方法によって、 250〜1000μm厚さ
に溶射することによって得られる。このトップコート
は、良好な絶縁性と適度な誘電率を有していると共に、
適度の気孔率を有するという特徴がある。この層の膜厚
が 250μmより薄いと絶縁性が十分でなく、また、1000
μm以上の厚膜にしてもコロナ放電特性に対して格別の
効果が認められないので、経済的な面も考慮し、1000μ
m以下の厚さにすることが好ましい。
【0022】なお、大気中で形成した酸化物系セラミッ
クスのトップコートセラミック溶射層中には、通常、2
〜20%程度の気孔が存在し、このままではコロナ放電処
理用ロールの皮膜として適当でない。そこで本発明で
は、気孔中に、以下に詳述するような絶縁性の充填材,
封孔材を充填することにより充填・封孔処理を行うの
で、トップコートの気孔率については特に規制の必要は
ない。
【0023】(3) 充填・封孔処理 上述したように、トップコートの酸化物系セラミックス
溶射層には2〜20%程度の気孔が存在する。このため、
このセラミック溶射層の気孔中に、次に示すような液状
にした充填材を含浸させ、その後これを 150〜450 ℃で
0.5〜5時間加熱して完全に固化させることでガラス物
質にする。また、本発明にかかる充填材は、たとえ含浸
時の加熱処理が不十分であっても、コロナ放電時にもそ
の温度によって固化の促進を図ることはできる。
【0024】本発明において用いる上記充填材として
は、下記のものが推奨される。 (X) B2O3, P2O5, Na2SiO3 (Y) Al2O3, SiO2, MgO, AlN (Z) 水, アルコール すなわち、本発明において用いられる封孔用充填材は、
その特性上、上記の(X), (Y), (Z) の3種類に分けられ
る。そのうち(X) は液状で提供される必須成分であり、
加熱によって溶射層の気孔部内に浸入し、その気孔内に
充填されると共に、所定の温度以上の加熱によってほう
酸系ガラス, りん酸系ガラス, 珪酸系ガラスなどを生成
するための主成分であり、通常、1種以上好ましくは2
種以上含むことが望ましい。なお、B2O3などの表示は、
加熱後の最終化学式を示したものであり、封孔用充填材
として用いる場合には、H3BO3, Na2B2O7などの化合物で
もよく、P2O5, H3PO 4 , Na2PO4をはじめ重合りん酸も使
用することができる。
【0025】(Y) は、充填材中の骨材成分に相当するも
のであり、(X) 成分に対し5 〜200wt%の割合によく混
合して用いる。この(Y) 成分は微粉にして用いるため、
溶射皮膜の小さな気孔中にも液状の(X) 成分に随併され
る形で深く浸入するうえ、(X) 成分が加熱によってガラ
ス状物質に変化しても変質することがなく、高い絶縁性
を発揮する。
【0026】(Z) は、充填材が溶射皮膜の気孔中に浸入
しやすいように粘度を調整するために用いられるもので
あり、これを多量に含ませると気孔中への浸入は容易と
なるが、加熱時に蒸発, 揮散する量が多くなるため、固
形残渣 (ガラス質成分と(Y)成分) 量が少なくなる。そ
のため、気孔中に封孔残渣物を充填するのに充填材を何
回も塗布, 浸漬をする作業を繰り返すさなければなら
ず、生産性の低下を招く欠点がある。通常、溶射皮膜の
気孔率と気孔の大きさによってこの(Z) 成分の含有量を
調整するが、(Z) 成分の割合いは全体の5〜40%が適当
である。しかし、水分量を80%にしても本発明の目的が
得られるので、この(Z) 成分量については特に規制しな
い。
【0027】上記の充填材を用いて封孔された溶射皮膜
の気孔部は、図2に示すような状態になっている。すな
わち、ロール基材21の上に金属溶射層であるアンダーコ
ート22が施され、さらにその上に酸化物系セラミックス
溶射層であるトップコート23が形成されている。そし
て、そのトップコート23の貫通気孔24中には上述した充
填材が充填封孔されている。気孔24の封孔のために用い
られる充填材は、加熱処理によって固化され、ガラス状
物質25と上記微粉末の骨材成分26とから構成されてい
る。そのガラス状物質は、溶射皮膜の気孔を完全に密封
してロールの運転停止中における水分の浸入を防止する
だけでなく絶縁性を付与するものである。また、骨材成
分は、ガラス質成分と一体となって充填材の絶縁性を維
持する役目を担っている。
【0028】かかるガラス質物質および骨材成分は無機
質であるため、コロナ放電中にオゾンに対しても強い抵
抗力をもっており、変質することはなく、とくにガラス
質成分はひび割れの発生に際しても加熱処理による融合
補修が容易である。
【0029】以上説明した本発明にかかる複合絶縁性皮
膜は、そのままコロナ放電ロールの表面皮膜として使用
可能であるが、ロールの外観状態の向上などのために、
さらにオルト珪酸ソーダや硼珪酸ソーダなどの無機質も
しくはメチルシリケートやエチルシリケート, 珪素樹脂
などの有機質系の封孔剤を追加しても一向に差し支えな
く、この処理によって本発明の効果は一層向上する。
【0030】
【実施例】 実施例1 直径350 mm, 長さ1000mmの鋼鉄製ロールの表面をRa 0.8
μmとなるように機械研磨した後、金属質のアンダーコ
ートと酸化物系セラミックス質のトップコートからなる
複合絶縁性皮膜を形成してから充填封孔処理を施し、こ
のロールをポリエチレンフィルムのコロナ放電処理に適
用した。ポリエチレンフィルムの送り速度は 200 m/mi
n, 周波数 9.8 kHz, 電圧 3.5〜4.0KV の条件である。 (1) 複合絶縁性皮膜 (a) アンダーコート:80Ni−20Crを100 μm厚にプラズ
マ溶射したもの トップコート: Al2O3 を550 μm厚にプラズマ溶射したもの、 Al2O3 −3%TiO2を 600μm厚にプラズマ溶射した
もの、 Al2O3 −50%MgO を 600μm厚にプラズマ溶射した
もの、 (b) トップコート封孔用充填材 B2O3(15%) +Na2SiO3(30%)+Al2O3 (30%) +水(30
%) P2O5(25%) +Na2SiO3(20%)+Al2O3 (15%) +MgO (1
5%) +水(25%) Na2SiO3(50%)+MgO (30%) +水(25%) +エチルアル
コール(10%) 上記の充填封孔処理は、トップコート溶射皮膜上に上記
各充填封孔剤を塗布した後、 150℃で3時間乾燥した。
なお、比較例として、コロナ放電用ロールとして従来か
ら使用されていたゴムライニングおよびガラスライニン
グを施したものを供試した。
【0031】表1は、以上の使用結果を要約したもので
ある。表1に示す結果から明らかなように、比較例のゴ
ムライニング (No.10)は、約1年の使用で絶縁が破壊さ
れて使用不能となり、ガラスライニング (No.11)は8カ
月目にガラスが局部的に破損した。これに対し、封孔処
理を施した複合絶縁性皮膜を形成したもの (No.1〜9)
は、2年間使用した後も健全な状態を示しており、さら
に長期間にわたる使用に耐えることがわかった。
【0032】
【表1】
【0033】実施例2 本実施例は、コロナ放電処理用ロールを、ポリエチレン
フィルムを活性化させ、同質のフィルムを接着して袋を
製造するラインに適用したものである。基本的に実施例
1と同じ条件で実施したが、処理電力については約2倍
のmax20W/m2/min 程度とし、また封孔用充填材として
は、実施例1のほう酸系とりん酸系を等量混合した
ものを用いた。その結果、実施例1と同様に、いずれの
複合絶縁性皮膜とも2カ年間の使用後も健全な状態を維
持していた。
【0034】実施例3 直径 400mm, 長さ1200mmの鋼鉄製ロールの表面をRa 0.8
μm となるように機械研磨した後、金属質アンダーコー
トと酸化物系セラミックス質トップコートからなる複合
絶縁性皮膜を形成した後、封孔処理を2回にわけて実施
し、このロールをポリエチレンフィルムのコロナ放電処
理に適用した。ポリエチレンフィルムの送り速度 210 m
/min. 周波数10.2 KHz, 電圧 3.5〜4.0KV の条件であ
る。
【0035】(1) 複合絶縁皮膜 (a) アンダーコート:80Ni−20Crを 120μm 圧力にプ
ラズマ溶射 (b) トップコート:Al2O3 −3%TiO2を 600μm 圧力
にプラズマ溶射 (c) トップコート用封孔充填材 B2O3(15%) +Na2SiO3(30%)+Al2O3(30%)+水(30%) トップコート溶射皮膜上に組成の封孔充填材を塗布し
た後、これを 150℃で3時間乾燥した。その後、さらに
下記封孔充填材を塗布し、220 ℃×2時間の加熱処理を
施した。 珪素樹脂を有機溶剤で溶解したもの エチルシリケートの有機溶剤を80℃で揮散させるこ
とにより晶析する微粉状のSiO2粉末を、の珪素樹脂中
に5wt%の割合いで分散したもの
【0036】なお、比較例は、実施例1同様、従来から
コロナ放電ロールとして使用されていたゴムライニング
およびガラスライニングを施したものである。これらの
比較例の使用結果は、さきに表1に示したように、ゴム
ライニングロールは約1年の使用で絶縁が破壊されて使
用不能となり、ガラスライニングロールは8カ月目にガ
ラスが局部的に破損した。これに対し、本発明の二段封
孔処理を施したもの、すなわち、 B2O3(15%) +Na2SiO3(30%)+Al2O3(30%)+水(30%) による封孔処理をした後、さらにその上にの珪素樹脂
またはの珪素樹脂にSiO2を分散した封孔材を追加した
ものは、2.5 年間使用した後も健全な状態を示してお
り、さらに長期間にわたる使用に耐えることがわかっ
た。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ト
ップコートの気孔中に封孔用充填材を充填した複合絶縁
性皮膜を形成したコロナ放電ロールを用いるので、長期
間にわたって安定した性能を発揮する。従って、高分子
フィルム, シート類のコロナ放電処理能力を向上させ、
保守管理費の低減、生産性向上による製造コストの低下
などとともに品質の向上に伴う印刷部の付加価値の向上
にも貢献することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コロナ放電処理用ロールの運転概要を示す説明
図。
【図2】溶射法によって形成された皮膜の気孔部に、本
発明の封孔剤が充填固化された状況を示す断面模式図。
【符号の説明】
1 電極 2 高分子フィルム 3 絶縁皮膜 4 誘電体ロール 5 高周波・高電圧用交流電源 6 コロナ放電 7 アース線 21 ロール基材 22 金属質アンダーコート 23 酸化物系セラミックスのトップコート 24 トップコートに存在する気孔 25 気孔中に充填固化された充填材成分中のガラス質 26 気孔中に充填固化された充填材成分中の微粉末酸化
物または窒化物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 重村 貞人 兵庫県明石市大久保町西島1111 レオパ レス21 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 4/10 C23C 4/12

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導電性ロール基材の表面に;アンダーコー
    トとして形成した金属溶射層と、アンダーコートの表面
    に形成したトップコートとしての Al2O3, Al2O3−TiO2
    および Al2O3−MgO の中から選ばれる1種以上からなる
    酸化物系セラミックス溶射層とからなり、かつそのトッ
    プコートのセラミック溶射層が、層内気孔部中に、加熱
    処理によってほう酸系ガラス, りん酸系ガラス, 珪酸系
    ガラスなどを生成するガラス形成物質と、Al2O3 や Mg
    O, SiO2, AlN などから選ばれる1種以上の無機質微粉
    末との混合物からなる充填材を充填した構造にかかる複
    合絶縁性皮膜を;設けたことを特徴とする高分子フィル
    ム等シート材のコロナ放電処理用ロール。
  2. 【請求項2】絶縁皮膜中の上記トップコートセラミック
    ス溶射層が、層内気孔部中に、加熱処理によってほう酸
    系ガラス, りん酸系ガラス, 珪酸系ガラスなどを生成す
    るガラス形成物質と、Al2O3 や MgO, SiO2, AlN などか
    ら選ばれる1種以上の無機質微粉末との混合物からなる
    充填材を充填したあとに、さらに無機質系もしくは有機
    質系の珪素質化合物からなる封孔材を塗布・含浸させた
    構造を有することを特徴とする請求項1に記載のロー
    ル。
  3. 【請求項3】上記充填材として、加熱後の最終化学式で
    B2O3, P2O5およびNa2SiO3 で表わされるいずれか1種以
    上のガラス形成酸化物と、Al2O3 , SiO2, MgO およびAl
    N のいずれか1種以上の無機質微粉末と、水やアルコー
    ル等の溶媒とからなる液状物質を用いることを特徴とす
    る請求項1または2に記載のロール。
  4. 【請求項4】導電性ロール基材の表面に、アンダーコー
    トとして金属溶射層を形成し、そのアンダーコートの表
    面に Al2O3, Al2O3−TiO2および Al2O3−MgO の中から
    選ばれる1種以上の酸化物系セラミックスを溶射してト
    ップコート溶射層を形成し、次いで前記トップコートの
    セラミック溶射層に対し、その気孔部中に、加熱処理に
    よってほう酸系ガラス, りん酸系ガラス, 珪酸系ガラス
    などを生成するB2O3やP2O5, Na2SiO3 などのガラス形成
    酸化物の液状物質にAl2O3 や MgO, SiO2, AlNなどから
    選ばれる1種以上の無機質微粉末を混合した液状充填材
    を塗布したのち150〜450 ℃で 0.5〜5時間の加熱を行
    って封孔処理することにより、複合絶縁性皮膜を形成す
    ることを特徴とする高分子フィルム等シート材のコロナ
    放電処理用ロールの製造方法。
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