JP2972886B1 - パラジウムの選択的抽出剤およびパラジウムの選択的抽出・回収方法 - Google Patents

パラジウムの選択的抽出剤およびパラジウムの選択的抽出・回収方法

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Abstract

【要約】 【課題】 パラジウムに加えて卑金属および/または他
の貴金属が共存する系であっても、当該系からパラジウ
ムを高い選択性をもって効率的に抽出し得、それ自体環
境的に悪影響をもたらさないパラジウムの選択的抽出剤
およびこの抽出剤を用いたパラジウムの抽出・回収方法
を提供することをである。 【解決手段】 金属イオンとして少なくともパラジウム
を含有する塩酸酸性水溶液に天然物質であるカフェイン
を抽出剤として含有する抽出有機溶媒を液−液接触さ
せ、前記パラジウムを該抽出有機溶媒中に抽出すること
を特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、天然物質であるカ
フェインを用いたパラジウムの選択的抽出剤、およびこ
の抽出剤を用いたパラジウムの選択的抽出・回収方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】パラジウムは、金、白金、ロジウム等の
他の貴金属と同様、工業的に触媒として利用され、この
他装飾品として我々の身の回りに存在している。パラジ
ウムはこれらの需要がありながら天然資源として採掘さ
れる量が少ないため、貴重な天然資源となっている。
【0003】このため、鉱石中に多量に含まれる鉄、
銅、ニッケル等の卑金属からのパラジウムの分離、さら
に例えば自動車の排気ガス処理用触媒として用いられた
パラジウムが他の同様の触媒として用いられた金、白
金、ロジウムなどの貴金属触媒と一緒に回収された場合
にこれら性質の似た他の貴金属からのパラジウムの分離
が不可欠である。そこで選択的にパラジウムを分離、回
収するためにさまざまなパラジウム抽出剤の開発が成さ
れている。
【0004】従来、パラジウムの抽出に用いられる溶媒
抽出剤としては、ジヘキシルスルフィド(SFI-6)
やLIX系のオキシム類などの工業的抽出剤が用いられ
ている。これらは卑金属から貴金属のみを回収するため
の選択性は高いが、抽出率が不十分であり、抽出速度も
遅い。さらに、有機相に抽出した後の逆抽出が困難であ
るなどの欠点がある。これら抽出剤を使用した場合、パ
ラジウムの抽出は平衡達成に長時間を要するため、白金
等の貴金属との分離をする際には、操業可能な時間内に
はほとんど抽出できないという難点がある。
【0005】一方、環境ホルモンにいわれるように、環
境保全にも配慮したパラジウム抽出剤の分子設計が必要
となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明
は、パラジウムに加えて卑金属および/または他の貴金
属が共存する系であっても、当該系からパラジウムを高
い選択性をもって効率的に抽出し得、それ自体環境的に
悪影響をもたらさないパラジウムの選択的抽出剤および
この抽出剤を用いたパラジウムの抽出・回収方法を提供
することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述のご
とき現状に鑑み、パラジウムの回収に用いられる抽出剤
として従来から知られている工業的抽出剤とは全く異な
る抽出剤として天然物質のカフェインに着目し、種々の
実験を行った結果、カフェインが従来の抽出剤に比べて
遥かに高い抽出率で、かつ高い抽出速度でパラジウムを
抽出できることを見出した。本発明者らは、さらに、カ
フェインを用いてパラジウムを抽出した場合には、抽出
されたパラジウムを含有する抽出溶媒から容易にパラジ
ウムを逆抽出でき、しかも逆抽出溶媒の調製によっては
逆抽出率を高くすることができることもまた明らかにし
たものである。
【0008】すなわち、本発明は、金属イオンとして少
なくともパラジウムを含有する塩酸酸性水溶液からパラ
ジウムを選択的に抽出するための、カフェインを有効成
分とするパラジウムの選択的抽出剤を提供する。
【0009】また、本発明は、金属イオンとして少なく
ともパラジウムを含有する塩酸酸性水溶液にカフェイン
をパラジウムの選択的抽出剤として含有する抽出溶媒を
液−液接触させ、前記パラジウムを当該抽出溶媒中に抽
出することを特徴とするパラジウムの選択的抽出方法を
提供する。
【0010】また、本発明は、金属イオンとして少なく
ともパラジウムを含有する塩酸酸性水溶液にカフェイン
をパラジウムの選択的抽出剤として含有する抽出溶媒を
液−液接触させ、前記パラジウムを当該抽出溶媒中に抽
出し、この抽出したパラジウムを含有する前記抽出溶媒
に水性の逆抽出溶媒を液−液接触させ、前記パラジウム
を当該逆抽出溶媒中に逆抽出することを特徴とするパラ
ジウムの回収方法を提供する。
【0011】本発明において、前記抽出溶媒はクロロホ
ルムに2−エチルヘキシルアルコールをクロロホルムの
重量に対して5ないし30重量%添加したものであるこ
とが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明のパラジウムの選択的抽出
剤はカフェインを有効成分とするものである。
【0013】ここで、カフェインは、下に構造を有する
分子式C10で表される分 子量194.1
4の白色結晶であり、クロロホルム、トルエンなどの有
機溶媒に 可溶である。水には難溶であり、熱水には可
溶となる。カフェインは、天然にはお茶、紅茶、コーヒ
ーに含まれ、医薬品として利用されているものであり、
環境的に安全である。
【0014】
【化1】 本発明によりパラジウムを抽出するためには、まず、パ
ラジウムを通常、銅、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛等
の少なくとも1種の卑金属および/または白金、金等の
少なくとも1種の他の貴金属とともに含有する水溶液を
本発明の抽出剤と接触させる。抽出対称であるパラジウ
ムを含有する水溶液は、例えば銅を含有する鉱石を銅鉱
石の湿式精錬により銅を回収した後の水溶液を、あるい
は、自動車に使われているハニカム型の廃触媒などを溶
解した水溶液を用いることができる。
【0015】これらの水溶液は、通常、塩酸酸性となっ
ている。このパラジウム含有水溶液に含まれる塩化物イ
オン濃度は、好ましくは1.0mol/dm3以下、さらに好
ましくは0.5mol/dm3以下である。塩化物イオン濃度が
1.0mol/dm3を超えると抽出されないパラジウムの塩化
物錯体が増加するからである。また、塩酸濃度として
は、好ましくは0.1mol/dm3ないし2.0mol/dm3であ
る。塩酸濃度が2.0mol/dm3を超えると抽出に関与す
る塩化物錯イオンの減少により抽出率が低下するからで
ある。さらに、pHは0ないし6の範囲にあればよい。
【0016】カフェインは、通常、有機溶媒(抽出溶
媒)に溶解させて使用する。抽出溶媒としては、カフェ
インを溶解し水に実質的に不溶の有機溶媒であり、クロ
ロホルム、トルエン、エーテル、ベンゼン等を例示する
ことができ、カフェインの有機溶媒への溶解性の高さ、
および有機溶媒の有機相から水相への溶解度の低さの観
点からクロロホルムまたはトルエンが好ましい。本発明
において、最も好ましくは、有機溶媒として特にクロロ
ホルムまたはトルエンと2−エチルヘキシルアルコール
との混合物を抽出溶媒として使用する。2−エチルヘキ
シルアルコールは、パラジウム抽出後の有機相に生ずる
沈殿の発生を防止する。2−エチルヘキシルアルコール
は、クロロホルムの重量に対して好ましくは5ないし3
0重量%、さらに好ましくは10重量%の割合で混合す
る。2−エチルヘキシルアルコールが30重量%を超え
ると有機相が水相へ溶解し抽出剤のロスが多くなり、5
重量%未満では有機相に沈殿が生ずるため好ましくな
い。
【0017】また、抽出剤として用いる有機溶媒相中の
カフェイン濃度は、好ましくは、例えばパラジウム濃度
が1mmol/dm3の場合、0.05mol/dm3ないし0.5mol
/dm3である。0.5mol/dm3を超えるとカフェインの溶
解性が悪くなるため好ましくないからである。また、
0.05mol/dm3未満であるとパラジウムを100%抽
出することが困難となる。
【0018】抽出剤としてカフェインを用いることによ
りパラジウムを高抽出率で抽出することができるため、
本発明によるパラジウムの選択的抽出はバッチ法により
行うことができる。ただし、バッチ法以外の連続抽出法
により行うことも可能である。パラジウムの選択的抽出
は、金属イオンとして少なくともパラジウムを含有する
上記塩酸酸性水溶液と上記有機溶媒をほぼ等量の割合
で、室温(5℃ないし35℃)において少なくとも好ま
しくは5時間、さらに好ましくは少なくとも24時間振
とうすることにより行う。なお、このときの温度が30
℃を超えると水相へのカフェインの溶解が生じ得るため
好ましくない。
【0019】このようにして抽出されたパラジウムをカ
フェインを含む抽出溶媒から逆抽出するためには抽出後
の有機相を水性の逆抽出溶媒と液−液接触させる。この
逆抽出においても抽出の場合と同様バッチ法により行う
ことができるが、バッチ法以外の連続抽出法等により行
うことも可能である。
【0020】水性の逆抽出溶媒としては、チオ尿素水溶
液、アンモニア水の他、塩酸、チオシアン酸アンモニウ
ム等を例示することができるが、逆抽出能力の高さの点
からチオ尿素水溶液が好ましい。さらに、本発明では、
最も好ましくは、チオ尿素水溶液と塩酸の混合水溶液を
逆抽出溶媒として使用することができる。塩酸を添加す
ることによりカフェインのアミノ基はプロトン化され、
パラジウムはより親和性の高い硫黄原子を持つ水相中の
チオ尿素に引き抜かれるためである。
【0021】逆抽出溶媒は好ましくはチオ尿素に塩化水
素をモル比で1/100(HCl/チオ尿素)ないし5
/1、さらに好ましくは1/1の割合で含有する。チオ
尿素に対する塩化水素のモル比が5/1を超えると逆抽
出率は低下し、1/100未満の場合も同様に逆抽出率
が低下するからである。バッチ法によるパラジウムの逆
抽出は、上記方法により抽出されたパラジウムを含有す
る抽出溶媒と上記逆抽出溶媒とをほぼ等量の割合で、室
温において好ましくは少なくとも1時間、さらに好まし
くは少なくとも5時間振とうすることにより、高抽出率
で逆抽出されたパラジウム含有水溶液を得ることができ
る。
【0022】
【実施例】以下、カフェインを用いたパラジウムの選択
的抽出剤およびこの抽出剤を用いたパラジウムの選択的
抽出・回収方法に関し、本発明の実施例を順次説明す
る。最初にカフェインによる金属イオンの選択性につい
て、実施例1として説明する。
【0023】実施例1.金属イオン選択性 抽出剤としてカフェインを用いた。金属イオンとして
は、貴金属間の選択的分離を想定してパラジウムと白金
を選び、卑金属として銅、ニッケル、コバルト、鉄を用
いた。また、環境汚染金属の回収の検討のために亜鉛、
カドミウム、水銀に金属を設定した。なお、本実施例で
用いた金属はすべて塩化物塩である。
【0024】実験はすべてバッチ法で行った。水相は各
金属イオンの初濃度を1mmol/dm3とし、塩酸とアンモニ
ア水および水酸化ナトリウムを用いてpHを変えて調製
した。また、塩化物濃度を一定とするために塩化リチウ
ムを1mol/dm3となるように加えた。有機相は抽出溶媒
としてクロロホルムに2-エチルヘキシルアルコールを
クロロホルムを基準として10重量%添加したものを用
い、カフェイン濃度を0.1mol/dm3に設定して調製し
た。その後各相を15mlずつ三角フラスコに取り、室温
で24時間振とうした。振とう後水相を分取し、各金属
濃度は原子吸光光度計により求めた。
【0025】各金属の抽出結果を横軸にpH、縦軸に各
金属の抽出百分率Eを表し図1に示した。ここで、抽出
百分率Eは次式より求めた。 E={(C0−Ce)/C0}×100[%] C0:金属の初濃度 Ce:金属の平衡濃度 図1より、パラジウム、白金、銅、ニッケル、コバル
ト、鉄、亜鉛、カドミウム、水銀の中ではパラジウム以
外は全く抽出されず、pH値が0.5ないし6.0の範囲
では抽出率も85%以上と高いことが明らかとなった。
この結果よりカフェインによる金属イオンの抽出はパラ
ジウムを選択的に抽出することがわかった。
【0026】次に、パラジウムの抽出に及ぼす塩化物イ
オン濃度の依存性について、実施例2として説明する。
【0027】実施例2.塩化物イオン濃度依存性 実験はすべてバッチ法により行った。水相はパラジウム
の初濃度を1mmol/dm3とし、塩酸と水酸化ナトリウムを
用いてpHを1.0になるように調製した。有機相は抽
出溶媒としてクロロホルムに2-エチルヘキシルアルコ
ールをクロロホルムを基準として10重量%添加したも
のを用い、カフェイン濃度を0.1mol/dm3に調製した。
その後各相を15mlずつ三角フラスコに取り、室温で2
4時間振とうした。振とう後水相を分取し、各金属濃度
は原子吸光光度計により求めた。パラジウムの抽出結果
を横軸に塩化物イオン濃度、縦軸にパラジウムの抽出百
分率Eを表し図2に示した。図2より、塩化物イオン濃
度が0.5mol/dm3以下ではパラジウムの抽出率は100
%であるが、これを超えると塩化物イオン濃度の増加に
伴い抽出率が減少することがわかった。
【0028】次に、カフェイン濃度の変化がパラジウム
の抽出率に及ぼす影響について、実施例3として説明す
る。
【0029】実施例3.カフェイン濃度依存性 実施例1よりカフェインはパラジウムのみを選択的に抽
出することから、パラジウムをいくつのカフェイン分子
で抽出しているかを検討するため、カフェイン濃度の変
化が及ぼす影響を考察した。
【0030】実験はすべてバッチ法で行った。水相はパ
ラジウムの初濃度を1mmol/dm3とし、塩酸と水酸化ナト
リウムを用いてpHを1.0になるよう調製した。有機
相は抽出溶媒としてクロロホルムに2-エチルヘキシル
アルコールをクロロホルムを基準として10重量%添加
したものを用い、カフェイン濃度を0.01mol/dm3から
0.2mol/dm3に変化させて調製した。その後各相を15
mlずつ三角フラスコに取り、室温で24時間振とうし
た。振とう後水相を分取し、各金属濃度は原子吸光高度
計により求めた。
【0031】パラジウムの抽出結果を、横軸にカフェイ
ン濃度、縦軸にパラジウムの抽出百分率Eを表し図3に
示した。図3より、抽出剤濃度が高くなるにつれ抽出率
は上昇し、カフェイン濃度が0.06mol/dm3以上にな
ると抽出百分率Eは100%となる。
【0032】次に、パラジウム以外の金属イオンが存在
する場合に、選択的にパラジウムだけを抽出できるかに
ついて、実施例4として説明する。
【0033】実施例4.混合溶液からのパラジウムの選
択的抽出 本実験では、工業的に分離の難しいとされる貴金属間で
の分離を想定して白金とパラジウムの分離を、また鉱石
中に存在する銅との分離を想定して銅とパラジウムの分
離を検討した。
【0034】実験はすべてバッチ法で行った。水相はパ
ラジウムの初濃度を1mmol/dm3とし、白金および銅の初
濃度を1mmol/dm3から25mmol/dm3に変化させ、二液を
混合したものを調製した。塩酸を用いてpHを1.5に
なるよう調整した。有機相は抽出溶媒としてクロロホル
ムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルムを基
準として10重量%添加したものを用い、カフェイン濃
度を0.1mol/dm3に調製した。その後各相を15mlずつ
三角フラスコに取り、室温で24時間振とうした。振と
う後水相を分取し各金属濃度は原子吸光光度計により求
めた。
【0035】パラジウムと白金の混合溶液からの抽出結
果を、横軸に相対濃度[Pt]/[Pd]を、縦軸にパ
ラジウムと白金の抽出百分率Eを表し図4に示した。図
4より、パラジウムの約25倍の白金が含まれる混合溶
液からも選択的にパラジウムを抽出することができ、し
かも抽出率は100%と極めて高いことが確認された。
【0036】同様にパラジウムと銅の混合溶液からの抽
出結果を、横軸に相対濃度[Cu]/[Pd]を、縦軸
にパラジウムと銅の抽出百分率Eを表し図5に示した。
図5より、パラジウムの約25倍の銅が含まれる混合溶
液からも、選択的にパラジウムを抽出することができ、
白金との場合と同様に抽出率は100%と極めて高いこ
とが確認された。
【0037】次に、パラジウム抽出における抽出平衡時
間について実施例5として説明する。
【0038】実施例5.抽出平衡時間 実験はすべてバッチ法で行った。水相はパラジウムの初
濃度を1mmol/dm3とし、塩酸を用いてpHを1.5にな
るように調製した。有機相は抽出溶媒としてクロロホル
ムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルムを基
準として10重量%添加したものを用い、カフェイン濃
度を0.1mol/dm3に調製した。その後各相を15mlづつ
三角フラスコに取り、室温で30分から15時間振とう
した。振とう後水相を分取し、各金属濃度は原子吸光光
度計により求めた。
【0039】各金属の抽出結果を、横軸に抽出時間を、
縦軸にパラジウムの抽出百分率Eを表し図6に示した。
図6より、パラジウムのカフェインによる抽出時間は約
4時間で完全に抽出されることが確認された。これに対
し従来のパラジウム抽出剤を用いた場合には、通常少な
くとも2日ないし3日は抽出に要する。これにより、カ
フェインを用いることで従来の抽出剤よりも短時間でパ
ラジウム抽出が可能であり、他の金属との分離が可能と
なることが明らかとなった。
【0040】次に工業的に重要とされる塩酸溶液からの
抽出を検討するため、パラジウム抽出に対する塩酸濃度
の依存性について実施例6として説明する。
【0041】実施例6.塩酸濃度依存性 実験はすべてバッチ法で行った。水相はパラジウムと
銅、白金、鉄の初濃度を各々1mmol/dm3として調製し
た。塩酸濃度は2N、1N、0.5N、0.1N、0.0
5N、0.01Nに設定した。有機相は抽出溶媒として
クロロホルムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロ
ホルムを基準として10重量%添加したものを用い、カ
フェイン濃度を0.1mol/dm3に調製した。その後各相を
15mlづつ三角フラスコに取り、室温で24時間振とう
した。振とう後水相を分取し、各金属濃度は原子吸光光
度計により求め、平衡塩酸濃度は電位差滴定装置により
求めた。各金属の抽出結果を、横軸に平衡塩酸濃度を、
縦軸に各金属の抽出百分率Eを表し図7に示した。図7
より、塩酸濃度が2.0mol/dm3を超えると塩酸濃度の
増加に伴い抽出率が減少することが示された。この減少
は抽出に関与する塩化物錯イオンの減少によるものと考
えられる。他の金属についてはここで用いた塩酸濃度の
領域ではほとんど抽出されないことが確認された。
【0042】次に、抽出溶媒である有機相中に抽出され
たパラジウムを逆抽出し、パラジウムを含む水溶液を得
ることによるパラジウムの回収方法について実施例7と
して説明する。
【0043】実施例7.パラジウムの逆抽出方法 実験はすべてバッチ法で行った。水相はパラジウムイオ
ンの初濃度を1mmol/dm3とし、塩酸を用いてpHを1.
5になるよう調製した。有機相は抽出溶媒としてクロロ
ホルムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルム
を基準として10重量%添加したものを用い、カフェイ
ン濃度を0.1mol/dm3に調製した。その後各相を15ml
づつ三角フラスコに取り、室温で24時間振とうした。
振とう後水相を分取し、各金属濃度は原子吸光光度計に
より求めた。次いで有機相10mlを取り出し、表1に示
す逆抽出溶媒を等量用いて6時間振とうさせた。振とう
後水相を分取し各金属濃度は原子吸光光度計により求め
た。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】 表1に示す結果から、逆抽出剤としてアンモニア水、チ
オ尿素水溶液、またはチオ尿素水溶液と塩酸の混合水溶
液を用いた場合にパラジウムを抽出することができ、チ
オ尿素水溶液と塩酸の混合水溶液の場合に特に高い逆抽
出率が得られることが明らかとなった。ここで、チオ尿
素水溶液と塩酸の混合水溶液は各濃度の水溶液を1:1
の体積割合で混合したものを用いた。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、パラジ
ウムの抽出剤として天然物質であるカフェインに着目し
たものであり、本発明により、パラジウムに加えて卑金
属および/または他の貴金属が共存する系であっても、
当該系からパラジウムを高い選択性をもって効率的に抽
出し得、それ自体環境的に悪影響をもたらさないパラジ
ウムの選択的抽出剤およびこの抽出剤を用いたパラジウ
ムの抽出・回収方法の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】各金属の抽出百分率に及ぼす水素イオン濃度依
存性を示すグラフ
【図2】パラジウムの抽出百分率に及ぼす塩化物イオン
濃度依存性を示すグラフ
【図3】各金属の抽出百分率に及ぼすカフェイン濃度依
存性を示すグラフ
【図4】白金とパラジウム混合溶液からのパラジウムの
選択的抽出を示すグラフ
【図5】銅とパラジウム混合溶液からのパラジウムの選
択的抽出を示すグラフ
【図6】カフェインによるパラジウム抽出における抽出
平衡時間を示すグラフ
【図7】各金属の抽出百分率に及ぼす塩酸濃度依存性を
示すグラフ

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属イオンとして少なくともパラジウム
    を含有する塩酸酸性水溶液からパラジウムを選択的に抽
    出するための、カフェインを有効成分とするパラジウム
    の選択的抽出剤。
  2. 【請求項2】 金属イオンとして少なくともパラジウム
    を含有する塩酸酸性水溶液にカフェインをパラジウムの
    選択的抽出剤として含有する抽出溶媒を液−液接触さ
    せ、前記パラジウムを当該抽出溶媒中に抽出することを
    特徴とするパラジウムの選択的抽出方法。
  3. 【請求項3】 金属イオンとして少なくともパラジウム
    を含有する塩酸酸性水溶液にカフェインをパラジウムの
    選択的抽出剤として含有する抽出溶媒を液−液接触さ
    せ、前記パラジウムを当該抽出溶媒中に抽出し、この抽
    出したパラジウムを含有する前記抽出溶媒に水性の逆抽
    出溶媒を液−液接触させ、前記パラジウムを当該逆抽出
    溶媒中に逆抽出することを特徴とするパラジウムの回収
    方法。
  4. 【請求項4】 前記抽出溶媒はクロロホルムに2−エチ
    ルヘキシルアルコールをクロロホルムの重量に対して5
    ないし30重量%添加したものであることを特徴とする
    請求項2又は3記載の方法。
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