JP2972027B2 - ステッピングモータ用負荷慣性モーメント測定装置 - Google Patents

ステッピングモータ用負荷慣性モーメント測定装置

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ステッピングモータ用
負荷慣性モーメント測定装置に関し、特にモータ実装状
態での測定を可能とするステッピングモータ用負荷慣性
モーメント測定装置に関する。 【0002】 【従来の技術】ステッピングモータは、所定のパルスに
よってデジタル的に高精度に回転位置(角度)や回転速
度を制御でき、また、この制御はマイコンで行うことが
できるため、今日きわめて広範囲な分野において機構駆
動源として使用されている。例えば、近年、急速な技術
発展に伴い、市場が拡大しているFDD,HDD,プリ
ンタ、電子タイプライタ、ファクシミリ、PPC複写
機、レコーダプロッター等のOA機器や産業用ロボット
等のFA機器においてその用途が急拡大している。これ
らステッピングモータ搭載機器の開発、製造、品質管理
上、モータ軸の慣性モーメントの測定及び管理は重要で
あるにも拘らず、その測定を高精度で行うことは従来非
常に困難であった。これは、慣性モーメントを測定する
際に必要となる負荷トルクの測定が困難であることに起
因する。例えば、モータ以降の機構部に平ギア減速機構
を用いる場合、モータ出力軸に取り付けたピニオンギア
と、このギアと噛み合う初段ギアとの噛合い状態を浅く
すると負荷トルクは100(gーcm)に、また深くす
ると(強く押し付けると)300(gーcm)になると
いうようにトルクが大きく変動してしまうからである。
また、その他の減速ギアの噛合いも初段から遠ざかるに
つれて影響は小さくなるものの変動要因となっている。
その他、機構部部品の真円度(偏心)や軸間距離精度、
メカ組立上の平行度等の組立精度、タイミングベルトや
ワイヤのテンション等によっても負荷トルクが大きく変
動してしまうという問題があるからである。 【0003】従来かかるステッピングモータの慣性モー
メントを測定するためには、モータに発生するトルクの
大きさ(負荷がモータに要求するトルクの大きさ)を測
定する必要がある。このトルクの測定方法としては、実
際に使用するモータと形状が等しく、コイル、マグネッ
ト等をもたないダミー・モータを被測定系(機構部)に
装着し、モータピニオンに設けられたモータ出力軸にコ
レットチャック等を介してトルクゲージを接続し、手動
等によりモータを回転して測定する方法がある。また、
実際に使用するステッピングモータと同仕様のモータで
反出力軸側にもトルク測定軸を出した両軸仕様として特
別に製作したモータを機構部に実装してトルクゲージの
コレットチャックをトルク測定軸に結合して測定する方
法もある。更に、モータ出力軸にプーリーを取り付け、
プーリーに巻かれた糸を引いてプーリー半径r(cm)
と、バネバカリの力F(g)から負荷トルクT(gーc
m)をT=F×rとして求める方法がある。更にまた、
直流モータの電流/トルク特性等を利用したトルク計を
用いたり、モータと負荷の間にトルクゲージ等を介在さ
せる方法もある。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上述のように、ステッ
ピングモータの慣性モーメントを測定するに必要なトル
クを測定する方法としては種々方法が従来使われている
が、どれも満足できるような精度の測定が困難である。
すなわち、ダミー・モータを用いる方法やプーリーとバ
ネバカリを用いる方法では、負荷に任意の回転数を与え
ることが困難であり、前者の方法ではトルクゲージの傾
きによるサイドロードの影響に起因する負荷トルクの増
加が避けられないし、後者の方法でもプーリーの安定取
り付けが難しく、同様にサイドロードの影響が避けられ
ない。 【0005】また、実際に使用するステッピングモータ
と同仕様モータを用いる方法では、モータのロータには
マグネットがあるため、マグネットの保持トルク(ディ
テントトルク)を含めて測定せざるを得ず、ロータを回
すとマグネット回転によりステータコイルに発電が起こ
り、この発電電流で発電制動(ブレーキトルク)が生じ
たり、トルクゲージの傾きがモータ軸受のサイドロード
となって実際より負荷トルクが増加したりするため、正
確な測定は不可能である。 【0006】更に、直流モータの電流/トルク特性等を
利用する方法では、測定を行う都度、モータを取り外す
必要がある。また、モータを取り付ける際のピニオンと
ギヤとの噛合わせ具合い等により、負荷トルクは微妙に
変化するため、現実には、組み上げられた実機におい
て、モータがどれほどのトルクを発生しているかを知る
ことはできない。 【0007】以上慣性モーメント測定に必要な負荷トル
クを得るための従来の負荷トルク測定方法では、モータ
と負荷が組み上げられた状態でモータから発生するトル
クを高精度で測定することは不可能であった。つまり、
量産に用いるモータ個々のモータピニオンと初段ギヤ噛
合いバラツキやモータタイミングプーリーとタイミング
ベルトのテンションで負荷トルクがどうなっているかを
知りたいのに、代替手段で実機実装と乖離した手段で負
荷トルクを類推するしか手段がなかった。したがって、
モータ発生トルクと負荷トルクとの差、トルクマージン
を知ることができず、量産においては電圧変動試験、温
度試験、エージング試験、印字試験等、市場への出荷ま
でに多大な費用と時間をかけて信頼性を確認して出荷し
ているのが実情である。例えば、機構部が動かないと
き、その原因は設計者のトルクマージン不足なのか、製
造現場の組立調整不良なのか等、トラブルが絶えず、原
因究明においてもモータが不良でトルクが低過ぎるか、
メカの不良部分等を時間をかけて調査しなければならな
かった。 【0008】上記の理由により、モータと負荷を組み上
げた状態での負荷トルクを測定することは困難であるた
め、負荷系の慣性モーメントを測定することが困難であ
る。例えば、量産を行う場合、個々の製品間の慣性モー
メントのばらつきを知ることが出来ない等の問題があ
る。 【0009】そこで、本発明の目的は、モータと負荷が
結合された状態における系の慣性モーメントを測定する
ステッピングモータ用負荷慣性モーメント測定装置を提
供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するた
め、本発明によるステッピングモータ用負荷慣性モーメ
ント測定装置は、ステッピングモータに与えられたトル
クと、このトルクが与えられたときの前記ステッピング
モータに流れる駆動電流の予め定めた特徴情報との関係
データを記憶するメモリ手段と、ステッピングモータに
実負荷が与えられたときの前記駆動電流を検出する検出
手段と、前記検出手段で得られた駆動電流の前記特徴情
報を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴抽出手段で抽出
された特徴情報と、前記メモリ手段に記憶されている前
記関係データとを照合し、前記実負荷を出力する照合判
断手段と、一定回転数を与えたとき前記照合判断手段に
より得られた負荷トルクと、時間的に回転数を変化させ
たとき得られた負荷トルクとを比較することにより慣性
モーメントを出力する手段と、を備えて構成される。 【0011】 【作用】本発明では、ステッピングモータを駆動すると
き、任意の相に流入する駆動電流の波形の特徴と、既知
のトルクを与えたときの駆動電流の波形の特徴とを比較
してトルクを測定する。そして、モータを一定周波数で
回転させたときの負荷トルクと、一定加速度で回転させ
たときの負荷トルクの差分から慣性モーメントが測定さ
れる。また、系全体の慣性モーメントから、モータのロ
ータ慣性モーメントを差し引くことにより、負荷慣性モ
ーメントを知ることができる。このとき、モータの駆動
電圧を、例えばモータが脱調しないように最適化する。
また、任意の相に流入する駆動電流の波形の、パルス印
加時刻に関する特定部分の電流の積分値を上記駆動電流
の特徴の量とすればより、高精度な測定が可能となる。
この積分区間は、例えば、ステッピングモータの任意の
相に電流が流れ始めてから、他の相に電流が流れ始める
までの区間とすることができる。更に、予め定めた一定
時間を越えない範囲で、駆動電流が正極性の部分のみを
時間に関し積分して得られる積分値を求め、上記駆動電
流波形の特徴量とすることもできる。 【0012】 【実施例】次に本発明によるステッピングモータ用負荷
慣性モーメント測定装置の実施例について詳細に説明す
る。本発明は、ステッピングモータのコイルに流れる電
流(駆動電流)が負荷トルクに対応した固有の波形、ピ
ーク値等、特有の特徴をもっていることに着目してお
り、この特徴に基づいて実負荷を測定するものである。
したがって、上述の如く、予め基準負荷トルク発生機か
ら発生される負荷トルクをステッピングモータに与えた
とき得られるコイル電流についての特徴を測定により得
て記憶しておき、前記において用いられたと同一の仕様
のモータが実機機構部を結合したときの任意の負荷状態
での駆動電流波形を測定し、得られたコイル電流特徴と
上記記憶された特徴とを比較することによって実負荷ト
ルクを測定する。このとき、モータを一定周波数で回転
させたときに得られた負荷トルクと、一定加速度で回転
させたときの負荷トルクの差分から慣性モーメントを測
定する。上記負荷トルクの高精度測定を可能とするため
に、ステッピングモータには脱調を起こさない程度の駆
動電圧が供給されている。また、コイルに流れる駆動電
流を所定区間だけ積分して駆動信号波形の特徴を顕著に
している。 【0013】ところで、ステッピングモータのコイル構
造には、モノファイラ巻(単巻)とバイファイラ巻(2
重巻)の2種があり、前者はバイボーラ駆動回路で、後
者はユニポーラ駆動回路で駆動される。また、駆動回路
のコイルに電流を流す部分のみを抜出した励磁回路の種
類としては、一定電圧でコイル励磁を行う定電圧方式
と、2種類の電圧でコイル励磁を行う2電圧方式と、一
定の励磁電流がコイルに流れるように制御する定電流チ
ョッピング方式とがあるが、いずれの方式においてもト
ルクの大きさにより電流波形の変化(特徴情報の変化)
が実験により確認されている。特に、定電圧励磁のユニ
ポーラ、バイポーラ駆動は電流波形の変化が顕著である
ことが確認された。 【0014】電流波形を測定する周波数としては、10
(PPS)等の低周波数から負荷時最高自起動周波数、
場合によっては周波数をスローアップさせた負荷時最高
連続応答周波数までが選定可能である。特に、共振、乱
調周波数領域を避けた安定な電流波形が得られる周波数
領域が望ましいことも判明した。量産しているモータ個
体のトルク特性にはバラツキがあるが、そのバラツキ
は、PM型ステッピングモータで±10%以下、HB型
ステッピングモータで±5%以下であるので本発明によ
る測定装置は充分に実用に供する。一実験によれば、量
産品のファクシミリの受信部機構の平歯車減速部におい
て、モータ出力軸のピニオンギアと初段ギヤの噛合いを
適正にした場合に負荷トルクは100〜130(gーc
m)あり、モータピニオンギヤを初段ギヤに寄せて組付
けたときは250〜300(gーcm)となった。この
ように、モータ個体間のトルク特性のバラツキ±5〜±
10%に比べ、機構部の組付け、調整によるバラツキは
±100%もあるのが実情である。 【0015】図1は本発明によるステッピングモータの
慣性モーメント測定装置の一実施例を示す基本構成図で
ある。ステッピングモータ1(本例では4相ユニポーラ
モータ)の各巻線(バイファイルコイル)ΦA ,ΦA-,
ΦB ,ΦB-の一端は、コネクタ5を介して印加されてい
る外部電源VMと接続され、他端はコネクタ6を介して
各巻線対応のスイッチングトランジスタQ1,Q3,Q
2,Q4が接続されている。スイッチングトランジスタ
Q1〜Q4を所定のタイミングで動作させることによっ
て各巻線へのパルス供給を制御し、励磁を切り換えてい
る。スイッチングトランジスタQ1〜Q4はステッピン
グモータを駆動する駆動回路7を構成している。 【0016】コントローラ9は、上記巻線へのパルス供
給タイミングの基準となるクロックを発生する発振回路
やステッピングモータの回転角度(位置)を定める位置
決め回路等を含み、時計方向回転用クロックCW、反時
計方向回転用クロックCCW、励磁モード信号等を発生
する。分配回路8は、クロックCLKと励磁モード信号
を受け、各巻線に2ー2相励磁におけるパルスを供給す
る。 【0017】さて、先ず、基準負荷トルク発生機3をカ
ップリング4を介してモータ仕様の確定している良品モ
ータであるマスターモータとしてのステッピングモータ
1の出力軸に結合して、トルクを変化させる。このと
き、モータ駆動電圧、モータ駆動周波数、励磁モード、
コイル励磁切換用スイッチングトランジスタ及び付帯す
るコイル逆起電力吸収回路(図示せず)を特定する。ト
ルク変化と対応してコイル電流も変化するのであるが、
コイル電流測定のため、各巻線のうち任意の巻線に挿入
した電流検出部10(本例では、巻線ΦB-に挿入されて
いる)を設け、コイル電流iB-を検出する。このコイ
ル電流iB-は、アンプ11で増幅され、スイッチ12
の端子S1を介して特徴抽出部13に供給される。 【0018】特徴抽出部13における特徴抽出は、例え
ば、トルク対電流波形の特徴を抽出するもので、特徴と
しては種々の情報(パラメータ)が用いられる。例え
ば、図2には、PM型モータを適切な電圧で駆動した場
合、負荷トルクTLをパラメータとして、0,100,
200,300(gーcm)と変化させたときのコイル
電流(駆動電流)iの変化が示されている。この変化
(電流波形)から、ステッピングモータの駆動回路は、
一般に知られているようにインダクタンスLと抵抗Rの
直列回路から成る等価回路で表すことは適切ではなく、
図4に示す如く、インダクタンスと抵抗の他に、投入電
力を2次側(ロータ)に渡すために等価的に生ずる逆起
電力を考慮すべきことが明らかである。 【0019】今、注目している相に適切な電圧が印加さ
れると(自相電流投入点)、該当相の電流は急速に立上
がり始める。特に、PM型モータを適切な駆動電圧で運
転した場合、やがて電流の上昇は緩慢になり、極大値i
PPに達した後、減少に転ずる。モータは2相励磁され
ているので、該当相に電圧が印加されている期間の半ば
で、他の相にも電圧が印加され始める(他相電流投入
点)。この時点において、該当相の電流波形には、図中
明示されていないが、わずかのくびれが生ずる。その後
は、負荷トルクの大きさにも依存するが、コイル電流は
しばらく減少を続け、極小値に至る。それ以後、電流は
急速に上昇し、最大(極大)値を示した時点で該当相へ
の電流は、駆動回路によって遮断される(自相電流遮断
点)。 【0020】図からも明らかなように、駆動電流の平均
値は、負荷トルクを変動させても、それほど変わらない
が、該当相に電流が流れ始めてから他相電流投入点まで
の間の電流変化は顕著である。例えば、同図における負
荷トルクと電流の極大値iPに着目し、データ補間処理
を行うと、図3に示すような関係が得られる。負荷トル
クTL=0(gーcm)のときはiP=25(mA)、T
L=300(gーcm)のときはiP=60(mA)程度
であり、この間は負荷トルクの増大に従って電流が滑ら
かに増大することが判明する。この極大値の発生するタ
イミングは略一定することから、例えば電流立上がりか
ら周期の30%の時間経過時の電流値を特徴情報として
用いることができる。尚、モータをCW方向に回転させ
た場合と、CCW方向に回転させた場合とで電流特徴量
ートルク特性に差がないことが確認された。 【0021】図1の特徴抽出部13は、上述のように、
アンプ11から出力される駆動電流の電流立上がり変化
区分内における上記極大値と負荷トルク間の対応関係を
トルク対電流データとして抽出する。尚、特徴抽出部1
3において抽出される特徴としては上記極大値に限ら
ず、負荷トルクとの関係で特徴的な情報を任意に選定し
て用いることができる。基準負荷トルク発生機3から発
生する負荷トルクは、例えば、モータの脱調するトルク
を100%とすると、無負荷トルクを0%とし、20
%,40%,60%,80%の5ポイントとすることが
できる。こうして抽出された特徴情報(本例ではトルク
対電流極大値情報)は、基準値としてROMやフロッピ
ーディスク等の基準値メモリ14に記憶される。 【0022】一方、実機機構部2をカップリング4によ
りステッピングモータ1に結合して実負荷を測定する場
合には、スイッチ12を切り替えて端子S2側に接続す
るとともに、マスターモータのモータ駆動条件と同一条
件に設定する。電流検出部10で検出される駆動電流
は、アンプ11で増幅された後、スイッチ12の端子S
2を介して特徴抽出部15に送出される。特徴抽出部1
5は、アンプ11からのコイル電流を受け、上記特徴情
報として当該電流の極大値iPを抽出して測定値メモリ
16に一時記憶せしめる。 【0023】照合判断部17は、コントローラ9からの
同期信号に応答して測定値メモリ16から読み出した極
大値iP情報と、基準値メモリ14に記憶されている図
3に示すようなトルク対電流関係データとを照合し、実
負荷トルクを判断して出力する。例えば、特徴抽出部1
5で得られる極大値iPが43mAであれば、図3の関
係から実負荷は150(gーcm)であると判断する。
このようにして得られた負荷トルクデータはディスプレ
イ18に表示され、またプリンタ19によって印字され
る。尚、特徴抽出部13と15は共通化することができ
る。また、較正に用いるモータと、実機に用いるモータ
とは同型ではあるが、別個体であることは勿論である。 【0024】以上の実施例は、電流波形の特徴抽出につ
いての構成であるが、電源インピーダンスが比較的高い
装置の場合には、電流の変化により電源電圧が変化する
ので、電流波形の代わりに電圧波形を用いることもでき
る。本発明は、上記ip−TL特性を利用して、トルクの
変動による、モータの駆動電流波形の特徴を抽出するこ
とを前提とする。 【0025】以上で説明した具体的な負荷トルク測定装
置においては、被測定ステッピングモータを定電圧駆動
した方が負荷トルクを能率よく測定できることが分かる
が、実際のモータ応用製品においては、定電流駆動方式
を用いる場合が多い。この様な場合においても、被測定
モータ応用製品に組み込まれた該モータを機構部から取
り外す事なく、本発明に係る測定装置に内蔵された駆動
回路から該モータに電流を供給することによって、該機
構部が必要とする負荷トルクを測定することが可能であ
る。 【0026】以上を前提としつつ本発明によるステッピ
ングモータ用負荷慣性モーメント測定装置の実施例に関
して説明する。周知の通り、負荷の持つ慣性モーメント
の影響は、負荷が一定の回転数で回転し続ける限り負荷
トルクを必要としない。然るに、回転数が変動すると、
その加速度に該慣性モーメントを乗じた分だけ、余分に
負荷トルクを必要とする(速度が低下する場合は、トル
クが過剰となる)。 【0027】図5は上記の考え方に従って負荷トルクを
測定する装置の動作を表している。時刻t1までは、負
荷は一定回転数で回転している。この時、負荷にはトル
クTQLが与えられている。時刻t1からは、周波数を一
定の加速度で増加させ始める。すると、負荷の慣性モー
メントに該加速度を乗じた分だけ大きな負荷トルクが加
算されたトルクTQ1を要するようになる。差分TQ1−T
Q0を前記加速度で割る事により、負荷が持つ慣性モーメ
ントを測定することが出来る。実際には、モータの出力
軸と負荷との間には、複雑なギヤ等が組み込まれている
ので時刻t1からの周波数変動の影響は直ちには慣性モ
ーメントの変動としては現れず、若干遅れてその影響が
現れる(伝達遅れ)場合が多い。逆に、この事を利用す
れば、負荷の伝達遅れを測定することも可能である。 【0028】続いて、被測定機器の慣性モーメントの測
定を行うための実施例について、図6を参照して説明す
る。測定のための基本原理は前述と同様であり、被測定
機構部を一定回転数で駆動した場合の所要トルクを、該
機構部を一定加速度で駆動したとき必要とするトルクか
ら減じたものが、該機構部の慣性モーメントを加速する
ために要するトルクであることを利用する。始めに、測
定周波数fを指定する(ステップS301)。被測定機
構部に装着された較正に用いたと同型のモータを、温度
TMをパラメータとして、所定の駆動電圧Eを与えた状
態で、周波数fで負荷トルクが安定するまで回転する
(測定待ち時間経過)(ステップS302〜S30
6)。回転が安定したら、負荷トルクTQ0を測定する
(ステップS307〜S309)。 【0029】次に、一定の割合で周波数を増大させて、
該モータの速度を上昇させる(ステップS310とS3
14を含むグループ)。これにより、被測定機構部の慣
性モーメントを加速するための負荷トルクが加算され
る。この際、該モータ自身の慣性モーメントを加速する
ためのトルクも加算されるが、該モータの慣性モーメン
トはあらかじめ分かっているので、必要に応じて、測定
結果からこれを減ずればよい。こうして上述処理と同様
に、回転が安定したら(測定待ち時間経過)その時点で
の駆動電流波形の特徴から該負荷トルクTQ1を測定する
(ステップS311〜S317)。回転数を増大させる
代わりに、減少させる場合は、上記負荷トルクは、その
分減少することは言うまでもない。また、上記、負荷ト
ルクの増分の測定中の周波数変化が、前記、回転数一定
時点における測定が意味を持つ範囲内で微少であるべき
ことはもち論である。上記二つの測定が完了したら、T
QJ=TQ1−TQ0として該慣性モーメントを加速するに必
要な、負荷トルクの増分を検出する(ステップS31
8、S319)。目的の慣性モーメントは、上記、負荷
トルクの増分TQJを測定時に、該機構部に与えた加速度
f’で割ることにより算出できる(ステップS32
0)。 【0030】次に駆動電流波形の特徴を顕著にし、慣性
モーメントの測定感度を向上させる本発明の他の実施例
に関して説明する。図7は、PM型ステッピングモータ
を一定周波数(200PPS)及び一定負荷トルク(3
00g−cm)で駆動した場合、駆動電圧を6V,7.
5V,10Vに変化させたときの、電流波形の変化を示
す。同図では、上記電圧を上記モータと同じL及びRの
値を有するL,R直列回路に印加したとき流れる電流を
破線で示す。 【0031】図8は、図7における駆動電流の、自相電
流投入点から他相電流投入点までの中間の時点における
L,R直列回路に流れる電流に対する、モータ駆動電流
の比ηを、駆動電圧Eの関数として示したものである。
もともとステッピングモータが効率の悪いモータである
ため、駆動電圧が高い、もしくは、周波数が低いときに
は、等価回路は、一般的に知られるようなLとCの直列
回路のように振舞う。このため、電流波形の特徴が現れ
にくい。これに対して、駆動電圧が低い、または、周波
数が高い場合は、モータの巻線に供給される電力のう
ち、無視できない量を機械的な仕事に消費せざるを得な
い。このため、電流波形はLとRの直列等価回路により
決定するものから変化し、図2に示されるような、特徴
ある波形となる。 【0032】このことから、モータに流入する駆動電流
は、モータと同じ時定数を有するL,R直列回路に流入
する電流より小さい。自相電流投入点から、他相電流投
入点までの間において、モータの駆動電流の大きさの、
L,R直列回路に流入する電流の大きさに対する比は、
相対的に駆動電圧が低い方が大きい。他相電流投入点を
過ぎると、駆動電圧が高い場合は、急速に駆動電流が増
大する。ことが判明する。 【0033】さらに、図9は、同じモータを周波数30
pps及び100pps、で負荷トルク0及び300g
−cmで駆動した場合の、自相電流投入点付近の電流波
形を比較したものを示す。図9から次のこと判明する。
負荷トルクの変動に基づく電流波形特徴の変化は、自相
電流投入点から一定時間経過するまでの間に顕著に現れ
る。このモータの場合、モータコイルの時定数の5〜1
0倍以内の時間に集中している。駆動周波数が低いとき
は、無負荷状態においても上記部分における電流は比較
的大きい。これは、低周波の場合には、モータのロータ
が完全に静止した状態で次のパルスが印加されるため、
ロータ及び負荷系(この場合は、測定系)の慣性モーメ
ントの加速に要するトルクが加算されるものと考えられ
る。 【0034】以上要するに、ステッピングモータの駆動
電流波形の負荷トルクによる変化を大きくする(電流波
形特徴を増加させる)には、モータを出来るだけ低い電
圧で駆動することが望ましいことがわかる。ただし、あ
まりに、駆動電圧を低下させ過ぎると、モータは脱調し
て停止してしまう。図10は、同じモータを無負荷で回
転させた場合、脱調を生ずる電圧(脱調限界電圧)を回
転周波数fの関数として求めたものである。当然のこと
ながら、周波数が高いほど、脱調眼界電圧は高くなって
いる。 【0035】図11は、HBタイプのモータ(日本パル
スモーター(株)製、PJ55−A1)を周波数700
pps,負荷トルク3Kg−cmで回転させたとき、駆
動電圧により、駆動電流波形がどの様に変化するかを示
したものである。電流波形に顕著な極大値を生ずること
はないが、PM型モータの場合と同様な傾向を示すこと
がわかる。 【0036】図12は、同じモータを同じ周波数におい
て、駆動電圧を一定とし、負荷トルクを0,1,2,3K
g−cmと変化させた場合の、駆動電流波形の変化を示
す。 【0037】図13は、前記モータに流入する駆動電流
が正の部分を、自相電流投入点から他相電流投入点まで
の間積分した値Qに対する負荷トルクTQとの関係を示
す。これから、前記した方法で求めた駆動電流波形の特
徴量により、HB型の場合について、該モータの負荷ト
ルクを正しく求めるられることがわかる。したがって、
効率よく負荷トルクを測定するためには、必要な測定周
波数に従って、駆動電圧を加減し、電流波形の特徴が顕
著になるようにする必要がある。図8の脱調限界電圧よ
り周波数が低いときは、それに応じて駆動電圧を低下さ
せる方がよいことが分かる。尚、図2を見れば、PM型
モータの場合も上述手段により駆動電流の特徴を求める
ことは明かである。 【0038】図14は、モータが脱調を生じた場合の駆
動電流波形を示す。同図では、隣接した複数の区間にお
ける電流波形を重ねて示している。これより、モータが
脱調を生ずると、電流波形は一定せず、交互に変動する
ことが分かる。この事実を利用すれば、該モータの脱調
状態を容易に判断できる。したがって、ステッピングモ
ータの負荷トルクの変化に基づく駆動電流波形の特徴を
顕著にするため、被測定モータの駆動電圧は、必要な負
荷トルク、必要な周波数において、該モータが脱調を起
こさない程度に低下させるとよい。具体的には、必要な
トルクと周波数(及び温度)において、脱調を起こす限
界電圧を求め、この電圧に、適当な係数を乗じたものを
駆動電圧とする。また、駆動電流波形の特徴量として
は、駆動電流の、自相電流投入点から他相電流投入点ま
での間で、かつ、自相電流投入点から一定時間内の区間
の電流の経過時間に関する積分値とすると良いことが分
かる。ただし、前記駆動電流が負の値をとる区間に関し
ては、自相電流が投入される以前に、コイルに蓄積され
た電流が放電されるので、電流特徴が顕著には現れな
い。従って、この部分は積分区間から外す。特に、HB
タイプのモータにおいては、次に示すように、駆動電流
が正の区間のみについて積分を実施する方がよいことが
分かる。 【0039】次に、ステッピングモータの温度特性を測
定する装置について説明する。図15は、スッテッピン
グモータの温度特性を示す一例を示す。日本パルスモー
ター(株)製のPF42−48105を用いて、公知の
駆動周波数ー出力トルク特性を、該モータの外被温度が
25゜Cの場合と48゜Cの場合について測定したもの
である。これより、測定時のモータの温度変化が大きい
時は温度特性に関する補正を行うことが望ましいことが
分かる。これを実現するためには、上述モータの駆動電
流波形の特徴量を、これまで述べてきたような、回転周
波数及び負荷トルクに関してのみならず、今一つ、温度
をパラメータとしても測定を行えばよい。この場合、該
特徴量を既知のトルクと温度において予め較正しておく
必要がある。このための具体的な実施例に関しては後述
する。 【0040】次に、本発明に係るステッピングモータ用
負荷トルク測定装置をマイクロコンピュータを応用した
システムとして実現した実施例について詳述する。図1
6は、上記システムの一実施例を示す。バスBUS上に
マイクロコンピュータ(CPU)113、ROM11
2、RAM111が通常のシステムの場合と同様に配置
されている。また、適切なインタフェースI/F117
を介してLCD/ソフトウエアスイッチ駆動部115を
制御し、LCD/ソフトウエアスイッチ部114を駆動
するとともに、インタフェースI/F118を介して、
キーボード116が接続され、マンマシンインタフェー
スを構成する。これにより、測定条件の入力及び本装置
側からの指示や、測定結果の表示を行う。更に、GP−
IBインタフェース部122またはRS232Cインタ
フェース123を介して、外部のコンピュータ(パソコ
ン)との間でデータの授受を行うことが出来る。また、
バスには、FDD121を制御するFDD制御部120
が接続され、外部インタフェース119が接続される。 【0041】バス上に配置された駆動パルス発生部10
6からはCPU113からの指示により、被測定モータ
100への駆動タイミングが発生される。ユニポーラ型
モータ用の駆動回路101またはバイポーラモータ用駆
動回路102を必要に応じて使い分ける。該駆動回路
は、電圧可変電源105から電源(0〜48V、8Am
ax)の供給を受け、図1に示す例と同様にトランジス
タQ1〜Q4等により構成することが出来る。該駆動回
路により、被測定モータ100が駆動される。駆動回路
には、図1の場合と同様に、抵抗等による電流/電圧検
出手段107が設けられる。検出された電流の瞬時値
は、A/D変換器により、適切なサンプリング間隔で、
デジタル値に変換された後、DMA制御部108の制御
により、RAM111に順次記憶される。該サンプリン
グは、バス上に配置されたトリガ発生部からの指示によ
りA/D変換を開始することにより実行される。さら
に、該トリガ発生部から発生するサンプリングのタイミ
ングを前記モータ駆動パルスのタイミングと同期させる
ために、該トリガ発生部は、前記パルス発生部から同期
パルスを受信する。 【0042】測定に先立ち、CPU113からの制御の
下、基準トルク設定機制御部109が制御され、駆動回
路104により基準トルク設定機103が駆動される。
本実施例においては、負荷トルクの変動に対して、電流
波形の特徴を顕著にするため、被測定モータの駆動電圧
を適切に設定する必要がある。このため、バス上に配置
された、電圧可変電源から、前記駆動回路への電源が供
給される。 【0043】次に、図16の実施例において、被測定モ
ータの負荷トルク−電流波形特徴を較正した後、実負荷
機構部に実装された、校正に用いたと同一仕様のモータ
に駆動回路101または102と接続し、負荷トルク測
定を行う実施例についてフローチャートを用いて説明す
る。 【0044】図17〜図21は、被測定モータに既知の
負荷トルクを与え、負荷トルクと電流波形の特徴量との
関係(基準値)を求める処理手順を示すフロ−チャート
である。最初に、図17に示すように、装置に測定条件
を与える。測定を行う最高周波数fH、最低周波数fL、
到達最高温度TH、駆動回路への最高印加電圧EH、測定
すべき最高負荷トルクTQH、最低トルクTQL及び測定の
際のこれらの増分Δf、ΔT0、ΔE、ΔTQを指定す
る。これらを受けて、本実施例の装置は、最初、周波数
を最低値fLに、負荷トルクを最高値TQHに、電源電圧
を最高値EHに設定して測定範囲を指定した後(ステッ
プS1)、基準値の測定を行い、設定が完了したら、基
準値の記憶を行う(ステップS2)。基準値の記憶は、
図18に示す手順により実行される。最初に、最適駆動
電圧の決定を行う(ステップS11)。この決定作業
は、図19に示すように、モータに与えるべき負荷トル
クTQを、必要な測定範囲内でモータが脱調を起こさな
いようにするため、最初に最大値TQHに設定する(ステ
ップS31)。次いで、測定周波数の目標値f0を被測
定最低値fLに設定する(ステップS32)。この状態
から各周波数における最適駆動電圧を決定するため、下
記の処理を行う。 【0045】まず、駆動電圧Eを、設定最高値EHに設
定して(ステップS33)、モータを目標の周波数まで
スロースタート法により回転数を上昇させて行く(ステ
ップS35〜ステップS37を含み、S40により判断
されるループ)。回転数を上昇させて行く過程で、駆動
電流波形をチェックし(ステップS38)、モータが脱
調していないことを確認する(ステップS39)。駆動
電圧をEHに設定した状態においても、脱調を生ずる場
合は、エラーとしてモータを停止させる。ステップS4
0において、所定の周波数f0に達したことが確認され
たら、駆動電圧の脱調限界を求めるため、駆動電流波形
を監視しながら、駆動電圧Eを次第に下げて行き(ステ
ップS41)、電流波形をチェックして(ステップS4
2)、脱調を判断して脱調限界を測定する(ステップS
43)。ここで、脱調が生じたら、その時の駆動電圧
が、脱調限界電圧である。 【0046】次に、モータの温度Tを、外被法または、
抵抗法で測定する(ステップS44)。そして、前記限
界電圧を、適当な係数αを用いて、(1+α)倍し最適
駆動電圧とする。そして、測定を行ったときのパラメー
タTQH,f,Tとともにファイルまたはメモリに記憶す
る(ステップS45)。続いて、目標周波数をΔf0だ
け上昇させた後(ステップS46)、上記の測定を繰り
返す。ステップS47において、必要な周波数範囲の測
定を完了し、f0がfHよりも大きくなったら、モータを
停止し(ステップS48)、最適駆動電圧の決定を終了
する。最適駆動電圧が決定したら、再び図18の処理に
戻り、モータに与える負荷トルクを変化させながら、基
準値の記憶を行う。 【0047】最初に、負荷トルクを最大値TQHにセット
する(ステップS12)。続いて、基準トルクTQを与
える(ステップS13)。既知の負荷トルクを与えるに
は、コーシン・ラシン(株)社製のパーマトルク等を利
用することが出来る。これは、ヒシテリシス磁性材料を
利用し、ダイヤルを回し目盛りを既定の値にセットする
ことにより、、回転軸に既知のトルクを与えるものであ
る。上記ダイヤルの設定は、手動にて行うことも可能で
あるが、ステッピングモータ等を用いて装置側から自動
的にダイヤルを回転してもよい。トルクを所望の値に設
定したら、周波数fを測定すべき範囲内の最低値、fL
に設定し(ステップS14)、電流波形の特徴の測定に
入る。所定のパラメータTQH,f,Tにおける最適駆動
電圧(駆動電圧)Eaにてモータを周波数fで駆動しな
がら、電流波形の特徴Qの抽出を行う(ステップS15
〜S17)。求められた特徴量QをトルクTQ,Ea、
f,Tをパラメータとして記憶する(ステップS1
8)。続いて、周波数をΔf0だけ上昇させた後(ステ
ップS19)、Δtだけ時間待ちを行い(ステップS2
0)、ステップS21において、周波数が所望の最高値
fHに達したことが確認されるまで、同一トルクについ
て、上記の測定を繰り返す。これにより低周波数から、
徐々に周波数を上昇させて行くことにより、モータをス
ローアップしたことになる。 【0048】同一トルクについて、所望の周波数範囲の
測定が完了したら、必要ならば、一旦モータを停止し
(ステップS22)、トルクの変更を行う。即ち、トル
クTQをΔTQだけ下げてから(ステップS23)、前記
の測定を繰り返す。ステップS24で、全範囲のトルク
についての測定が終わったと判断されれば、基準値の記
憶は完了する。 【0049】図17に戻り、必要があれば、温度特性の
測定と記憶を行う。すなわち、測定温度の目標値T0を
ΔT0だけ上げた後(ステップS3)、モータを静止状
態に保ったまま、コイルに通電し(ステップS4)、該
モータの温度を所要の値にまで高める。温度TMを測定
しながら(ステップS5)、通電を続け、ステップS6
において、該モータの温度が、前記目標値T 0に達した
ら(または越えたら)、ステップS7において、最高温
度THの測定が完了するまでの間、再び、基準値の記憶
を行う。 【0050】次に、上記電流波形の特徴抽出するための
実施例の説明を行う。本実施例の説明においては、図1
2及び図13に示すモータの電流波形の測定に関する実
施例を参照すると理解し易い。本例は、日本パルスモー
ター(株)製のHB型ステッピングモータPJ55−A
1について、周波数700ppsにおいて、負荷トルク
を各々、0、1、2、3Kg−cmとして測定したもの
である。図12において、自相電流投入点t0、他相電
流投入点t1、自相電流遮断点t2までの間について測定
を行う。本実施例では、該特徴量を電流波形をt0〜t1
までの区間であって、該駆動電流が正の間についてのみ
駆動電流を時間に関して積分する。ただし、駆動周波数
が低い場合、積分区間を、上記の論理に加え、t0から
予め定めた時間内に限定すべきことは前述した。 【0051】図13は、上記積分を行った結果を、横軸
に上記積分値(=電流波形特徴量)を、縦軸に負荷トル
クTQをとり、プロットしたものである。これより、前
記の論理により、HB型プテッピングモータの電流波形
特徴量・対・負荷トルク特性を求め得ることが分かる。 【0052】図20は、上記、電流波形特徴抽出を行う
ためのフローチャートを示す。前記積分は、t0から始
め、積分限界tcまでの区間について行う。始めに、tc
の決定を行うため、先ず、tcを、該モータの電気系の
時定数τに適当な係数kを乗じた値に限定する(ステッ
プS51)。さらに、tcが他相電流等入点t1を越えて
いる場合は、これをt1に限定する(ステップS52と
S53)。次に、駆動電流の積分を実施するに当たり、
積分を実施する時刻tをt0に初期化する(ステップS
54)。また、積分値Sの初期化も行い(ステップS5
5)、駆動電流i(t)を測定する(ステップS5
6)。時刻がが積分を行う時刻tに達したと判断される
とき、i(t)が正であるか否かを判断する(ステップ
S57)。ステップS57において、駆動電流i(t)
が正であれば積分値Sにこれを加える(ステップS5
8)。もし、i(t)が負であれば積分を行わない。時
刻tでの処理が完了したら、次に処理を行うべき時刻t
を所定の増分Δtだけ増加させ(ステップS59)、次
の時刻の処理を行う。ステップS60において、処理を
行う時刻tが、前記積分限界tcに達したと判断される
と、積分を終了する。上記の処理の結果求まった積分値
Sが、求めるべき電流波形特徴量Qとされる(ステップ
S61)。所望の範囲での被測定モータに関する基準値
の測定が終了したら、測定された特徴量の整理を行って
おくと、その後の負荷トルクの測定の際便利である。 【0053】図21に特徴量の整理の処理手順のフロー
チャートが示されている。最適駆動電圧Eaを周波数及
び温度の関数として測定し(ステップS71)、整理/
記憶する(ステップS72)。その後の測定において、
必要な値が簡単に得られる。例えば、任意の温度Tにお
ける最高駆動電圧Eaを周波数fの関数として、スプラ
イン補間、ベッセル補間等を適宜利用して表し、その係
数を求める。次に、このようにして求めた各係数を温度
Tに関して同様に補間し、その係数を求めることによ
り、EaをT及びfに関して整理することができる。結
果は、これらの関数を表す係数として整理される。次
に、電流波形特徴量の関数として、負荷トルクを求め、
整理し、記憶しておく(ステップS73とS74)。こ
の時、周波数及び温度にも従属するようにしておけば便
利である。上記により、負荷トルク測定を行うための準
備が整った。以後は、被測定モータを被試験実機に装着
した状態で測定を行うことが出来る。 【0054】以上の本発明によれば、同じ型のモータを
用いて大量生産される機器において著しい。最初に、代
表的なモータに関して、負荷トルク−電流波形特徴の関
係の較正を行っておくことにより、モータの製造誤差の
範囲内において、機器の負荷トルクを簡単に測定できる
ことである。したがって、該当機器の開発、品質評価、
量産試作における問題点の定量化、製造ラインにおける
検査、開発と製造の両部門間負荷トルクに関する定量的
な話合いが可能になる等、産業上の利用効果が極めて大
きい。 【0055】図22に負荷トルクを測定するための手順
を示す。初めに、測定周波数の最高fH、最低fL、変化
幅Δfを指定する(ステップS101)。周波数を最低
値fLに初期化した後(ステップS102)、温度を測
定し(ステップS103)、最適駆動電圧(駆動電圧)
を決定、印加する(ステップS104)。次にモータを
周波数fで回転させ(ステップS105)、駆動電流波
形の特徴を抽出し(ステップS106)、該負荷トルク
を測定し(ステップS107)、記憶する(ステップS
108)。続いて、周波数をΔfだけ上昇させ(ステッ
プS109)、再び上記手順により負荷トルクを測定す
る。上記処理を、fがfHより大きくなることがステッ
プS110で確認されるまで上記処理を繰り返すことに
より、上記を所定の範囲につき実機モータを被測定機器
に装着した状態での、負荷トルクの周波数特性を求める
ことが出来る。測定が完了したら、モータを停止させ
(ステップS111)、測定結果は、グラフ、表等にし
て適宜表示される(ステップS112)。 【0056】以上により負荷トルク測定に関する説明を
終わるが、これを用いた負荷の慣性モーメントを測定す
る手段は前述のとおりである。 【0057】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のステッピ
ングモータ用負荷慣性モーメント測定装置を用いれば、
ステッピングモータを装着した状態で、機構部の慣性モ
ーメントを測定できる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明によるステッピングモータ用負荷トルク
測定装置の一実施例を示す構成ブロック図である。 【図2】ステッピングモータに加わる負荷をパラメータ
とした巻線に流れる駆動電流の時間変化を示す図であ
る。 【図3】図2に基づいて得られる巻線に流れる駆動電流
の極大値iPと負荷トルクとの関係を示す図である。 【図4】ステッピングモータの駆動回路の等価回路図で
ある。 【図5】負荷トルクを測定する動作を説明するための図
である。 【図6】本発明の実施例による被測定機器の慣性モーメ
ントの測定を行う処理手順を示すフローチャートであ
る。 【図7】ステッピングモータの駆動電圧をパラメータと
したときの駆動電流の変化を示す図である。 【図8】図7における駆動電流の、自相電流投入点から
他相電流投入点までの中間の時点におけるL,R直列回
路に流れる電流に対するモータ駆動電流の比ηを、駆動
電圧Eの関数として示した図である。 【図9】同じモータを異なる周波数及び負荷トルクで駆
動した場合の自相電流投入点付近の電流波形を比較した
図である。 【図10】同じモータを無負荷で回転させた場合、脱調
を生ずる電圧(脱調限界電圧)を回転周波数fの関数と
して示した図である。 【図11】駆動電圧により、駆動電流波形がどの様に変
化するかを示した図である。 【図12】同じモータを同じ周波数において、駆動電圧
を一定とし、負荷トルクを変化させた場合の駆動電流波
形の変化を示す図である。 【図13】モータに流入する駆動電流が正の部分を、自
相電流投入点から他相電流投入点までの間積分した値Q
に対する負荷トルクTQとの関係を示す図である。 【図14】モータが脱調を生じた場合の駆動電流波形を
示す図である。 【図15】スッテッピングモータの温度特性の一例を示
す図である。 【図16】本発明の実施例を示すシステム構成図であ
る。 【図17】被測定モータに既知の負荷トルクを与え、負
荷トルクと電流波形の特徴量との関係(基準値)を求め
る処理手順を示すフロ−チャートである。 【図18】図17における基準値の記憶を行う処理手順
を示すフロ−チャートである。 【図19】図17における最適印加電圧を決定する処理
手順を示すフロ−チャートである。 【図20】図17における基準値の電流波形の特徴量を
求める処理手順を示すフロ−チャートである。 【図21】図17における特徴量を整理する処理手順を
示すフロ−チャートである。 【図22】本発明の実施例における負荷トルクを測定す
るための処理手順を示すフロ−チャートである。 【符号の説明】 1 ステッピングモータ 2 実機機構部 3
基準負荷トルク発生機 4 カップリング 5,6
コネクタ 7 駆動回路 8
分配回路 9 コントローラ 10
電流検出部 11 アンプ 12
スイッチ 13,15 特徴抽出部 14
基準値メモリ 16 測定値メモリ 17
照合判断部 18 ディスプレイ 19
プリンタ

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 ステッピングモータに与えられたトルクと、このトルク
    が与えられたときの前記ステッピングモータに流れる駆
    動電流の予め定めた特徴情報との関係データを記憶する
    メモリ手段と、 ステッピングモータに実負荷が与えられたときの前記駆
    動電流を検出する検出手段と、 前記検出手段で得られた駆動電流の前記特徴情報を抽出
    する特徴抽出手段と、 前記特徴抽出手段で抽出された特徴情報と、前記メモリ
    手段に記憶されている前記関係データとを照合し、前記
    実負荷を出力する照合判断手段と、 一定回転数を与えたとき前記照合判断手段により得られ
    た負荷トルクと、時間的に回転数を変化させたとき得ら
    れた負荷トルクとを比較することにより慣性モーメント
    を出力する手段と、を備えて成ることを特徴とするステ
    ッピングモータ用負荷慣性モーメント測定装置。
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