JP2969008B2 - 中毒治療薬 - Google Patents

中毒治療薬

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JP2969008B2 JP3025525A JP2552591A JP2969008B2 JP 2969008 B2 JP2969008 B2 JP 2969008B2 JP 3025525 A JP3025525 A JP 3025525A JP 2552591 A JP2552591 A JP 2552591A JP 2969008 B2 JP2969008 B2 JP 2969008B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薬物による中毒の治療
薬に関する。ここで用いられる中毒という用語は、毒性
を有することが知られている物質を誤って或いは意図的
に摂取した場合ばかりではなく、例えば医薬品など、通
常毒物とは見做されない物質を過剰に誤って或いは意図
的に摂取したことにより生ずる結果をも指すものとす
る。
【0002】
【従来の技術】英国特許第2,154,469A号明細
書には、患者の腹腔内に、重合度(DP)が12よりも
大きいグルコースポリマーを少なくとも15重量%含む
グルコースポリマー混合体からなるデキストリンを浸透
圧剤として含む腹膜潅流剤を注入することにより腹膜潅
流を行うことからなる中毒の治療法が開示されている。
【0003】本発明者の研究によれば、或る種の中毒
は、デキストリンそのものを用いるよりも、或るデキス
トリン誘導体を用いることにより特に効果的に治療し得
ることが見出された。
【0004】本発明によれば、デキストリン中の水酸基
の少なくとも一部を、例えば硫酸基、硝酸基、燐酸基、
或いはそれらの混合体などからなる強い酸基により置換
してなるデキストリン誘導体からなる中毒の治療薬が提
供される。この治療薬は、通常薬剤として適するキャリ
ア或いは希釈剤を含むものであってよい。
【0005】本発明に用いられるデキストリン誘導体
は、塩基基を有する化合物をなす毒物による中毒に対し
て特に効果的である。このような毒物の1つとしては、
1,1−ジメチル−4−4−ジピリジニウムジクロリド
からなり、パラコート(paraquat)と呼ばれる
商品名で知られている除草剤がある。他の塩基性の毒物
としては、ジクワット(diquat)及びエチレンイ
ミンがある。
【0006】上記したような、それ自体毒物として取扱
われる物質に加えて、本発明に基づくデキストリン誘導
体は、薬剤として用いられるが、過剰に摂取した場合に
有害であるような物質による中毒に対しても有効であ
る。このような、塩基性の薬剤としては、アミトリプチ
リン(amitriptyline)、クロロプロマジン(chlorprom
azine)、デキストロプロポキシフェン(dextropropoxy
phene)、イミプラミン(imipramine)及びトリミプラ
ミン(trimipramine)がある。
【0007】このデキストリン誘導体は、個々の事情に
応じて、口から、消化器から、或いは膓管外摂取の方法
又は腹腔内面への導入により行うことができる。
【0008】デキストリン誘導体を腹腔内面に導入しよ
うとする場合には、デキストリン誘導体は、重合度(D
P)が12よりも大きいグルコースポリマーを少なくと
も15重量%、好ましくは少なくとも50重量%含むグ
ルコースポリマー混合体をなすデキストリンから得られ
る。好ましくは、デキストリン誘導体は、15,000
〜25,000の平均分子量(分子量の重量平均)を有
する。
【0009】本発明に於て特に好適なデキストリン誘導
体としては、1グルコース単位当り3個以下のの硫酸基
を有する硫酸デキストリンがある。本発明の好適実施例
によれば、この硫酸デキストリンは、1グルコース単位
当り0.5〜1.5個の硫酸基を有する。
【0010】本発明は、硫酸デキストリンを含む腹膜潅
流剤を用いてパラコート中毒を治療する薬剤について以
下に詳しく記載される。硫酸デキストリン自体は、例え
ば英国特許第871,590号及び米国特許第4,06
6,829号明細書等に記載された公知の化合物であ
る。
【0011】硫酸デキストリンはパラコートを吸収する
性質を有することが見出された。硫酸デキストリンが、
パラコート中毒を治療するために行われる腹膜潅流に用
いられた場合、硫酸デキストリンは、潅流液中の自由パ
ラコートの濃度を減少させる働きを有する。これによ
り、血中のパラコートと潅流液内の自由パラコートとの
間に大きな濃度勾配を維持する効果が得られる。血中か
らパラコートを除去する潅流液の有効性がこのようにし
て増大される。
【0012】好ましくは、潅流溶液は、約2リットルの
溶液中に於て、50〜250ミリモルの硫酸基を提供す
る。更に好ましくは、この溶液は、100〜200ミリ
モルの硫酸基を提供し、最も好ましくは、約180ミリ
モルの硫酸基を提供する。理論上は、100ミルモルの
硫酸基は、50ミリモルのパラコートを除去する能力を
有する。
【0013】硫酸デキストリンの製造過程は、澱粉を加
水分解してデキストリンを得る過程を含む。次に、この
デキストリンを、例えば三酸化硫黄(sulphur trioxid
e)、クロロスルホン酸或いはトリメチルアミン/三酸
化硫黄錯体(trimethylamine/sulphur trioxide comple
x )等の任意の適宜な硫酸化剤により硫酸化される。デ
キストリンの劣化を抑制するために、このような硫酸化
剤はピリジン等のルイス塩基と組合せて用いられる。
【0014】硫酸デキストリンは、ポリマー混合体中の
硫酸基濃度或いは硫黄分の濃度及びポリマー混合体の分
子重量分布により特徴付けることができる。本発明に基
づく腹膜潅流に用いられる硫酸デキストリンは、腹腔内
に於て沈殿しないことが重要である観点から、水溶性で
あるようにされる。この硫酸デキストリンは、例えば、
英国特許第2,132,914A号及び同2,154,
469号明細書に記載されているような、腹膜潅流に於
て浸透圧剤として用いられる水溶性のグルコースポリマ
ー混合体の硫酸化誘導体からなるものであって良く、容
易に実用化できる。
【0015】重度の腎臓病の治療に用いられる腹膜潅流
溶液は、通常人間の血清中に存在するような特性及び濃
度を有する電解質を含んでいる。また、これらの腹膜潅
流溶液は、腹膜を横切る浸透圧勾配を形成するための、
通常デクストローズ(二価糖)からなる浸透圧剤をも含
んでいる。このような圧力勾配下に於ては、水及び代謝
生成物(例えば、尿素及びクレアチニン)の流れが発生
する。
【0016】本発明に基づく治療薬は、腹膜潅流により
パラコート中毒を治療するために用いられる場合には、
従来腹膜潅流に於て用いられる溶液中に含まれるものと
同様の電解質を含むものであるのが好ましい。例えば、
この腹膜潅流溶液は、次のような濃度の電解質を含むも
のであってよい。 Na 115 〜 140 Cl 95 〜 145 Mg 0.6 〜 0.9 Ca 1.0 〜 5.0 乳酸 30 〜 40
【0017】ここで重要なことは、本発明に基づく薬剤
が、腹腔内に向けて腹膜を透過するような流れとしての
限外濾過を効率的かつ持続的に維持し得るような濃度を
以て浸透圧剤を含んでいることである。本発明に基づく
薬剤中の浸透圧剤は、通常硫酸デキストリン自体からな
るが、場合によっては、例えばデクストローズ或いはグ
ルコースポリマーの混合体等他の浸透圧剤を更に含むも
のであってよい。グルコースポリマーの混合体が用いら
れた場合には、これは2〜10の重合度(DP)を有す
るオリゴ糖の混合体或いは、12以上の重合度(DP)
を有するポリマーを少なくとも15重量%、好ましくは
50重量%以上を含む、英国特許第2,132,914
A号及び同2,154,469A号明細書に記載されて
いるような混合体であってよい。
【0018】硫酸デキストリンを製造するための或る方
法によれば、アセトン及び固体二酸化炭素の混合体によ
り冷却された400ミリリットルのピリジン中に100
ミリリットルのクロロスルホン酸を徐々に加えた。この
ようにして得られた溶液を60°Cに加熱し、50グラ
ムのデキストリンを添加した。このデキストリンは、英
国特許第2,154,469A号明細書の例2に記載さ
れた要領を以て調製されたグルコースポリマーの混合体
からなるものであった。これは、12以上のDPを有す
るポリマーを91.9%含み、2〜10のDPを有する
ポリマーを7.9%含み、HPLC(高圧液体クロマト
グラフィー)により求められた平均分子量は23,70
0であった。
【0019】2時間に亘って70°Cの反応温度下に置
かれた後、この混合体を冷却した。更に、3.0リット
ルの水を用いて希釈し、硫酸化物質を沈殿させるために
10.0リットルのエタノールを加えた。
【0020】このようにして得られた物質を1.5リッ
トルの水中に溶解し、水酸化ナトリウムにより中和し、
更に4.0リットルのエタノールを加えることにより再
び沈殿させた。更にこれを1.8リットルの水に再び溶
解し、「Viskene(商品名)」セロファンチュー
ブに移送し、48時間に亘って水に対して透析を行っ
た。得られた溶液のpHは7.5に調整され、真空下に
於て、500ミリリットルの容積を有するようになるま
で蒸発させられた。次に凍結乾燥により固形分が分離さ
れた。このようにして得られた物質の硫黄分は、1グル
コース単位当り0.4硫酸基に相当するものであった。
【0021】本発明に基づく硫酸デキストリンを製造す
るための更に別の好適実施例によれば、デキストリンを
トリメチルアミン/三酸化硫黄錯体と炭酸ナトリウムと
に対して、65°Cの温度下に於て、水中に於て1時間
に亘って反応させられた。生成物は透析により分離され
た。得られた物質のKBrディスクに於けるirスペク
トルによれば、硫酸基に起因する1240及び820cm
-1に於ける吸収率を示した。吸収の度合は、硫酸化剤の
量に応じて増大した。
【0022】トリメチルアミン/三酸化硫黄によるデキ
ストリンの硫酸化は、室温下に於て乾燥DMSO或いは
DMF中に於て行うこともでき、炭酸ナトリウムを加え
た後に、透析により生成物を分離する。得られる物質の
硫黄分は、水中に於て得られるものと略同等である。
【0023】以下に示す例1〜7は、硫酸化デキストリ
ンを調製するための方法を示す。これらの例のそれぞれ
に於て、澱粉状デキストリンは、英国特許第2,15
4,469A号明細書に記載されたデキストリンと同様
のものである。
【0024】例1 10ミリリットルの水中に1グラムの澱粉状デキストリ
ンを溶解して得られた溶液を65〜70°Cの温度に於
て撹拌する。0.5グラムのデカヒドレイト炭酸ナトリ
ウム(sodium carbonate decahydrate)とトリメチルア
ミン/三酸化硫黄錯体0.5グラムとの混合体を、継続
的に撹拌しながら30分に亘って3回に分けて添加し
た。更に30分経過した後、溶液は3日間に亘って流れ
る水道水に対して透析され、1日間に亘って蒸留水に対
して透析された。このようにして得られた溶液は凍結乾
燥され、2.9%の硫黄を含む0.55グラムの無色の
固体が得られた。
【0025】例2 例1と同様に1グラムの澱粉状デキストリンを用いた
が、1グラムのデカヒドレイト炭酸ナトリウム及び1グ
ラムのトリメチルアミン/三酸化硫黄錯体を用いて、
4.1%の硫黄を含む0.5グラムの生成物を得た。
【0026】例3 例1と同様に2グラムの澱粉状デキストリンを用いた
が、1グラムのデカヒドレイト炭酸ナトリウム及び2グ
ラムのトリメチルアミン/三酸化硫黄錯体を用いて、
5.3%の硫黄を含む0.6グラムの無色の生成物を得
た。
【0027】例4 70ミリリットルの蒸留水中に20グラムの澱粉状デキ
ストリンを溶解して得られた溶液を、65〜70°Cの
温度下に於て撹拌し、60グラムのデカヒドレイト炭酸
ナトリウム及び60グラムのトリメチルアミン/三酸化
硫黄錯体を1時間に亘って3回に分けて添加した。撹拌
は70°Cに於て5時間継続された。茶色の混合体は瀘
過され、固形分は各々25ミリリットルの水を用いて3
回に亘って洗浄され、更に乾燥され、26グラムの未反
応のトリメチルアミン/三酸化硫黄錯体を得た。この溶
液は、流れる水道水に対して3日間に亘って透析され、
更に1日に亘って蒸留水に対して透析された後、凍結乾
燥され、22グラムの生成物が得られた。
【0028】例5 75ミリリットルの蒸留水中に20グラムの澱粉状デキ
ストリンを溶解させた溶液を70°Cに於て撹拌し、3
0グラムのトリメチルアミン/三酸化硫黄錯体及び、2
0ミリリットルの水中に溶解された8.5グラムの水酸
化ナトリウムを、1時間に亘って徐々に添加し、トリエ
チルアミンガスを発生させた。茶色の溶液に3グラムの
炭を加え、セライトにより瀘過し、更に3日間に亘って
流れる水道水に対して透析し、1日間に亘って蒸留水に
対して透析を行った。このようにして得られた溶液を凍
結乾燥し、12%の硫黄分を含む18.8グラムの生成
物を得た。
【0029】例6 100ミリリットルの蒸留水中に40グラムの澱粉状デ
キストリンを溶解させた溶液を室温下に於て撹拌し、6
0グラムのトリメチルアミン/三酸化硫黄錯体及び、4
0ミリリットルの水中に溶解された16.8グラムの水
酸化ナトリウムを、6時間に亘って徐々に添加した。こ
の溶液は、3日間に亘って流れる水道水に対して透析さ
れ、1日間に亘って蒸留水に対して透析された。このよ
うにして得られた溶液を凍結乾燥し、66グラムの生成
物を得た。
【0030】例7 100ミリリットルの乾燥N,N−ジメチルホルムアミ
ド中に、10グラムの澱粉状デキストリンを溶解してな
る溶液を70°Cに於て撹拌し、10グラムのシクラミ
ン酸を加えた。4時間後に、75ミリリットルの水中に
溶解された33グラムの酢酸ナトリウムを加え、粘性を
有するスラリを得た後、それを撹拌しつつ750ミリリ
ットルのエタノールを加えた。この混合体は4°Cの温
度下に於て一晩置かれ、1時間に亘って18,000r
pmにより遠心分離された。得られた固体は、エタノー
ル中に懸濁され、再び遠心分離された。固形成分は、真
空中に於て、五酸化燐上に於て乾燥され、50グラムの
酢酸ナトリウムを含む220ミリリットルの水中に溶解
され、3日間に亘って流れる水道水に対して透析され、
更に1日間蒸留水に対して透析された。こうして得られ
た溶液を凍結乾燥し、無色の固体生成物を得た。
【0031】以下の例8〜11は、パラコート中毒の治
療のために1グルコース単位当り0.4〜1.02個の
硫酸基を含むデキストリン誘導体を用いた例を示す。
【0032】例8 5ミリリットルの、2種の硫酸デキストリンの2%溶液
及び0.01モルの燐酸緩衝液(pH7.4)中の置換
されないデキストリンを、Viskene透析チューブ
を適当な長さに結ぶことにより得られた透析バッグ内に
貯容した。この透析膜は、パラコートを含む小さな分子
に対して透過性を有するが、デキストリン及び硫酸デキ
ストリンはこの透析膜を透過することができない。これ
らの溶液が貯容されたバッグは、炭素14によりラベル
付けされた100ミリグラムのパラコートを含む200
ミリリットルの0.01モル燐酸緩衝液(pH7.4)
を貯容するビーカー内に置かれた。ビーカー内の溶液は
撹拌され、透析バッグ内のパラコートの蓄積量が21時
間に亘って測定された。図1に示された結果により、置
換されないデキストリンを貯容する透析バッグは、バッ
グの外側の溶液に対して、パラコートの濃度について単
なる平衡状態を実現するのみであるのに対して(表
1)、1グルコース単位当り0.4個の硫酸基を有する
硫酸デキストリン(NBSD9)を或いは1グルコース
単位当り1.02個の硫酸基を含む硫酸デキストリン
(NBSD8)を貯容するバッグは、存在する濃度勾配
に対して、透析溶液内のものに対して12及び17倍の
濃度にまでパラコートを蓄積することができることが理
解される(表1)。これらの結果により、パラコート
は、半透過性を有する透析バッグの透析膜を透過し、透
析バッグ内の硫酸デキストリンにより吸収されるが、デ
キストリンによっては吸収されないことが示される。置
換されないデキストリンは、英国特許第2,154,4
69A号明細書の例2に記載されたデキストリンからな
るものであった。NBSD9及びNBSD8と呼ばれた
硫酸デキストリンは、このデキストリンを硫酸化するこ
とにより得られたものである。
【0033】
【表1】
【0034】例9 例8の変形例として、100ミリグラムのパラコート
が、透析バッグ内の1ミリリットルの50%硫酸デキス
トリン溶液中に加えられ、例1に於て用いられた100
ミリリットルの緩衝液に対して透析された。この実験
は、硫酸デキストリンが、存在する濃度勾配に対抗し
て、バッグ内にパラコートを保持することを示すために
行われた。図2に示された結果によれば、50時間に亘
ってパラコートの5%のみがバッグから失われた。即
ち、95ミリグラムのパラコートは保持された。全体の
システムの容積が100ミリリットルであるとすると、
溶液中の自由パラコートの濃度は、0.05ミリグラム
/ミリリットル即ちバッグ内の全体の0.05%という
低い値となる。
【0035】例10 この例は、ラットの腹腔内に注入された硫酸デキストリ
ン溶液が血流中からパラコートを吸収することを示す。
ラットは、人間と異なり、腹腔内に注入されたてグルコ
ースポリマーを血流中に迅速に取込んでしまう点に於て
人間のための実験動物としては必ずしも理想的ではな
い。しかしながら、ラットに対して行われた研究によれ
ば、腹腔内の硫酸デキストリンは、濃度勾配に対抗して
血流中からパラコートを蓄積することができた。
【0036】炭素14によりラベル付けされたパラコー
ト(20ミリリットル/キログラムpqイオン)が、油
性の媒体を用いて皮下注射によりラットに投与された。
パラコートは、注射された部位から徐々に放出され、実
験中に定常的な血清中濃度が得られるようにした。パラ
コートを投与して2時間経過した後、10ミリリットル
の置換されないデキストリンの2%溶液或いは1グルコ
ース単位当り1.0個の硫酸基を有する硫酸デキストリ
ン(NBSD22)を腹腔内に注入した。3時間に亘っ
て得られた血液、血清及び腹腔液のサンプルから、放射
性のパラコートの分析を行った。この実験は、1グルー
プ当り3匹のラットを用いて2回に亘って行われた。表
2に集計された実験結果によれば、デキストリンではな
く、硫酸デキストリンが存在していれば、濃度の勾配に
抗してパラコートが腹腔内に蓄積されたことを示してい
る。硫酸デキストリンについての、潅流液に対する血清
の濃度比は、デキストリンの場合の2倍であった。これ
は、ラットが腹腔内から糖類ポリマーを急速に失う(1
時間に50〜60%)ために人間のモデルとして適して
いないにも拘らず得られた結果である。置換されないデ
キストリンは第8例のものと同一のもので、このデキス
トリンを硫酸化することによりNBSD22と呼ばれる
硫酸デキストリンが得られた。
【0037】
【表2】
【0038】例11 英国特許第2,154,469A号明細書の例2に記載
されたデキストリンを、従来形式の腹膜潅流に用いられ
る溶液として用いた。この溶液は5%のデキストリン
と、例8に於てNBSD8と呼ばれ、1グルコース単位
当り1.02個の硫酸基を有する硫酸デキストリンを
2.5%含むものであった。腸内に注入された2リット
ルのこの溶液は、3.5グラム以上のパラコートを吸収
することができた。この溶液は6時間毎に交換すること
ができる。
【0039】硫酸基の総数を増大させたり、或いは硫酸
デキストリンが1グルコース単位当りより多数の硫酸基
を有する場合には、硫酸デキストリンの量を減少させる
ことにより、硫酸基の総数を概ね一定に保つことができ
る。しかしながら、デキストリンと硫酸デキストリンと
の和として与えられる全体としてのデキストリン濃度は
約7.5%とするのが好ましく、これにより適正な透析
率が得られる。従って、硫酸デキストリンの量が変更さ
れた場合には、デキストリンの量も増大させるのが好ま
しい。
【0040】上記したように、パラコート中毒に対して
硫酸デキストリンを用いることは、腹膜潅流の方法に限
定されない。パラコート中毒を治療するための1つの知
られた方法は血液透析である。この治療法の効果を、透
析溶液内に硫酸デキストリンが含まれるようにすること
により改善することができる。その他の治療法として
は、通常フーラー土(Fuller's earth)と呼ばれるパラ
コートの吸収剤を閉口摂取するものがある。この吸収剤
は便秘の原因となる点に於て不利である。従って、これ
を部分的に或いは全面的に硫酸デキストリンの水溶液の
経口摂取と置換或いは併用することにより従来よりも良
好な結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】デキストリン及び硫酸デキストリンのパラコー
ト吸収能力の経時変化を示すグラフである。
【図2】硫酸デキストリンのパラコート吸収能力の経時
変化を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61K 31/725 ADQ

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中毒の治療薬であって、 デキストリン誘導体を含み、デキストリン中の水酸基の
    少なくとも一部が強い酸基により置換されてなることを
    特徴とする治療薬。
  2. 【請求項2】前記酸基が、硫酸基、硝酸基、または燐酸
    基からなることを特徴とする請求項1に記載の治療薬。
  3. 【請求項3】更に、薬学的に適当なキャリア或いは希釈
    剤を含むことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に
    記載の治療薬。
  4. 【請求項4】 前記デキストリン誘導体が、重合度(D
    P)が12よりも大きいグルコースポリマーを少なくと
    も15重量%含むグルコースポリマー混合体をなすデキ
    ストリンから得られることを特徴とする請求項4に記載
    の治療薬。
  5. 【請求項5】 前記グルコースポリマー混合体が、DP
    が12よりも大きいグルコースポリマーを少なくとも5
    0重量%含むことを特徴とする請求項4に記載の治療
    薬。
  6. 【請求項6】 前記デキストリン誘導体が硫酸デキスト
    リンからなることを特徴とする請求項1乃至請求項5の
    いずれかに記載の治療薬。
  7. 【請求項7】 前記硫酸デキストリンが、1グルコース
    単位当り3個以下の硫酸基を有することを特徴とする請
    求項6に記載の治療薬。
  8. 【請求項8】 前記硫酸デキストリンが1グルコース単
    位当り0.5〜1.5個の硫酸基を有することを特徴と
    する請求項7に記載の治療薬。
  9. 【請求項9】 前記デキストリン誘導体が、動物又は患
    者の腹腔内に注入されるべき腹膜潅流のための組成体を
    なすことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか
    に記載の治療薬。
  10. 【請求項10】 パラコート中毒のための治療薬をなす
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記
    載の治療薬。
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