JP2968011B2 - 発色性に優れた抗菌性布帛 - Google Patents

発色性に優れた抗菌性布帛

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は発色性に優れる抗菌性布帛に関する。更に詳
しくは、イオンプレーティング法及び/又はスパッタリ
ング法により形成した無色又は淡色の抗菌性薄膜を有す
る発色性に優れた抗菌性布帛に関する。
(従来技術及び発明が解決しようとする課題) 生活,文化水準の向上に伴い、保険・医療機関以外に
於ても抗菌性繊維及びその製造に大きな関心が払われる
様になった。
抗菌性付与の主な手段としては、 繊維や繊維製品表面に抗菌性物質を付着させる方
法。例えば第4級アンモニウム化合物,芳香族ハロゲン
化合物,サイアベンダゾール,銅イオンや銀イオン系化
合物等をスプレー,コーティング,パッド−ドライ等の
方法にて繊維や繊維製品表面に付着させる(例えば特開
昭57−51874号公報,特開昭56−12347号公報)。この方
法では耐久性や有効成分濃度の確保が困難である。
銀,銅,亜鉛,錫といった抗菌性金属及びその化合
物の微粒子,粉体及びそれらを酸化チタン等の無機系微
粒子にコーティングした物或はそれらのイオンをゼオラ
イト,モンモリナイト等の無機系結晶の一部に置き換え
たもの等をポリマー中又はポリマー溶液中にブレンドし
紡糸或は成型する方法(例えば特開昭54−147220号公
報,特開昭59−133235号公報,特開平1−242665号公
報,特開平1−242666号公報)。この方法もの方法と
同じく広く実施されているが、微粒子や粉体が凝集し易
くポリマーとのブレンドが均一に出来ず、又大量にブレ
ンドすると紡糸や成型時のトラブル及び繊維の繊度の不
均一,ペッシュ等品質問題がある。これまで金属,金属
化合物をポリマー中へブレンドし繊維化したものが使わ
れているが、その抗菌性は必ずしも良好ではない。この
原因は、ポリマー中へ抗菌性物質をブレンドする際,及
びポリマーチップを溶融紡糸或は溶融成型する場合、抗
菌性物質がポリマーに完全に包含され繊維の表面に抗菌
性を有する金属イオンの存在が極めて小さい為と思われ
る。
銅,銀等の抗菌性を有する金属細線の混紡,交織,
交編。この方法は一番古い方法であるが金属細線の太さ
が大きく又クリンプ,形態が通常の繊維と異なる為に良
好な混紡,交織,交編が出来ず又風合,染色性の低下や
未染色部分の発生等生産性,品質の点での問題が大き
い。上述した様に、抗菌性繊維については従来より多く
の提案がなされているが、生産性,品質,抗菌効果を全
て満足する繊維は未だ得られていない。特に、抗菌加工
として重要な事は次の点である。
(1) 効果が大きい。
(2) 耐久性が良好。
(3) 人体の生理機能に影響しない。
(4) 処理材料の物性,風合を損なわない。
(5) 加工性が容易である。
(6) 処理剤の識別が容易。
本発明者らは淡色好ましくは無色で且つ発色性及び耐
久性に優れた抗菌性布帛について鋭意検討の結果本発明
を完成するに到った。
本発明の目的は、抗菌性に優れ且つ発色性に優れた無
色ないし淡色の繊維布帛を提案するにある。
(課題を解決するための手段) 本発明は、布の少なくとも表面の一部にイオンプレー
ティング法及び/又はスパッタリング法により形成した
無色又は淡色の抗菌性を有する金属化合物の薄膜を、布
の重量当り少なくとも0.001重量%有する発色性に優れ
た抗菌性布帛である。
抗菌性は、例えばAATCC法により評価出来る。菌種と
しては通常黄色葡萄状球菌(Staphylococus aureus),
枯草菌(Bacillus subtills)等のグラム陽性菌、大腸
菌(Escherichia coli),緑膿菌(Psudomonas aerugin
osa),尿素分解菌(Proteus vulgaris),肺炎棹菌(K
lebsiella oneumoniae)等のグラム陰性菌及び指間はく
せん菌(Trichophyton interdigital),黒カビ菌(Asp
ergillus niger)等の真菌類を用いる。抗菌性が有ると
は後述する評価方法にて菌の増殖が無ければ抗菌性が有
ると言えるが好ましくは10%以上の菌死滅率、更に好ま
しくは20%以上の菌死滅率を有する事を言う。
本発明に使用する布帛としては、天然繊維,合成繊
維,化学繊維等いずれの繊維も使用可能で且つ布帛の形
態も、布,不織布,立毛布等いずれも可能である。
本発明に使用する抗菌性物質としては、無色,白色或
は淡色で、且つ抗菌性を有し常温で固体で、且つ加熱下
或は真空加熱下にてガス化するが使用するポリマーの融
点にて分解しない物質を用いる。具体的には抗菌性に優
れ白色又は淡色且つ安定した物として、沃化銀(Ag
I)、沃化銅(CuI)、臭化銅(CuBr)から選ばれる少な
くとも一種類の金属化合物を用いることが必要である。
特に水溶性に乏しく安定した物性を持つ臭化銅,沃化
銀,沃化銅は好ましい。これらの金属化合物は単独で用
いてもよいし、或はそれら同志で併用しても良いし、他
の金属や金属化合物との併用も可能である。
前記布帛の少なくとも表面の一部にイオンプレーティ
ング法及び/又はスパッタリング法により前記抗菌性を
有する金属化合物を薄膜状に付着させる。
イオンプレーティング或はスパッタリングは従来公知
の方法を用いて行なう事が出来る。例えば、特開昭61−
177239号公報,特公昭59−7350号公報その他に提案され
ている。
イオンプレーティングは物質を高真空下、例えば通常
10-4torr以下、好ましくは10-5torr以下にて加熱蒸発さ
せ、その気化した物質をイオン化させる。蒸発の方法と
しては、ニクロム線等を使用した抵抗加熱方式,電子の
運動エネルギーを利用した電子ビーム方式,電磁誘導加
熱を利用した誘導加熱方式等があるが、蒸発物質に対す
る適用範囲,及び蒸発速度の制御のしやすさ等より電子
ビーム方式が好ましい。
真空度を調節する為には外部よりガスを導入するが導
入ガスについては、蒸発物質,方法,目的に応じて選択
する必要がある。蒸発物質の変性を抑える為には蒸発物
質と反応しないガスを選択する必要があり、逆にガスと
反応させて蒸発物質と異なる物質の皮膜を作成する為に
は蒸発物質と反応し易いガスを選択する必要がある。
イオン化には直流を用いた直流イオン化法,高周波電
力を用いた高周波イオン化法、及びそれらの複合化した
方法がある。直流イオン化法は高周波イオン化法に比べ
て高真空下でのイオン化が可能であり、且つイオン化の
程度の変化も自由度も大きい。又、高周波イオン化法で
は低温プラズマを発生させてイオン化する為に、直流イ
オン化法程高真空に出来ず、膜質は幾分劣る。しかし、
処理の真空度が低い為に導入ガスも多く流す事が出来、
反応性のイオンプレーティングには適している。
イオン化の後は、サブストレート(第1図4参照)に
印加した電流電圧によりイオン化気体を加速させ、サブ
ストレートに置いた被処理物、ここでは布帛に打ち込み
皮膜を形成させる。気化した物質がイオン化され次いで
電位により加速される為に皮膜形成時の物質の運動エネ
ルギーが非常に大きく皮膜と被処理物との接着力が通常
の真空蒸着と比べて非常に大きい。又、イオン化した粒
子が被処理物に打ち込まれる為に被処理物表面におい
て、荷電粒子同志の電気的反発力により付着粒子同志の
マイグレーションが生じ被処理物上に比較的均一な皮膜
を形成する。
スパッタリングはイオンプレーティングと異なり皮膜
形成物を蒸発させるのではなく、物質表面から原子を叩
き出す方法である。真空度は通常、0.1torr以下、好ま
しくは0.5torr以下でありイオンプレーティング法に比
べて真空系が非常に簡単になる。薄膜形成用の物質はタ
ーゲット(第2図7参照)と呼ばれ板状に成型されてい
る。ターゲットから原子を叩き出すエネルギーとしては
通常低温プラズマが使用されるが電子,イオンが使われ
る場合もある。低温プラズマを発生させる方法により直
流スパッタリング,高周波スパッタリング,マグネトロ
ンスパッタリング等に区別される。成膜速度はイオンプ
レーティングに比べてかなり小さい。
イオンプレーティング,スパッタリング等に於ては基
板やターゲットは勿論だが反応容器も加熱するので水等
により冷却する必要がある。
抗菌性物質の薄膜形成は、繊維製造時から布帛の段階
までいずれでも可能であるが均一性,効率,コスト等の
点から布帛の段階、特に精練,染色,その他の処理が終
了した後、仕上げ加工の前段階が好ましい。
抗菌性物質の布への付着率としては少なくとも0.001
%〜1.0wt%、好ましくは0.005〜1.0wt%、更に好まし
くは0.01〜0.5wt%である。0.001wt%より少ない場合は
抗菌性が乏しい。又、1%より大きい場合は製造工程や
使用の途中での薄膜物質の脱落や風合の変化が生じる場
合がある。本発明で使用する抗菌性物質は布のどの部位
に付着させても全体としての抗菌性の発現はあるが、例
えば衣料用として使用する場合は内側表面のみに付着さ
せても良い。又カバン,靴の内張として使用する場合は
布の外側表面のみでよい。付着の形態としては全面に付
着しても勿論よいが、布の一部例えばストライプ状,点
状,格子状に付けて十分である。この場合好ましくは、
5cm間隔以内、更に好ましくは2cm間隔以内で付着させ
る。
抗菌性物質を付着させた布はこのままでも十分実用に
耐えるがより好ましくは摩擦堅牢度を上げ、直接皮膚に
接触させる事から避ける為にその上から仕上げ樹脂を付
着させても良い。この場合の樹脂としては例えばアクリ
ル系加工剤,シリコーン系加工剤,フッソ系加工剤,ウ
レタン系加工剤等であり、これらの樹脂加工はその目的
と効果,風合により適当な条件を行なえばよいが、なる
べく薄い方がよい。例えば好ましくは0.5重量%程度さ
らに好ましくは0.3重量%、特に好ましくは0.1重量%で
ある。
(実施例) 以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが
何等これに限定されるものではない。尚、実施例中の各
項目の評価は次の様に行なった。
1. 抗菌性物質の布への付着率 2. 抗菌性の評価 AATCC法のシェイクフラスコ法に準じて実施した。用
いた菌は大腸菌である。まず、冷蔵保存した大腸菌を一
定量白金サジにて取り、20mlのブイヨン水溶液に移し、
常温にて約1日培養増殖させ原菌液を調製する。この原
菌液を生理食塩水で10000倍に希釈した菌溶液をテスト
用に用いた。この菌液50mlを密栓可能な三角フラスコに
入れ、その中に評価する布帛1gを約1cm角に切り、よく
浸す。次いで、横−縦2方向に振盪する振盪機にて約1
時間振盪する。振盪後、この液1mlを生理食塩水で100倍
に希釈し希釈後の液0.1mlを15mlのブイヨン入り寒天培
地に接種する。これを37℃のフランキ中にて18時間培養
し、寒天上に発生した大腸菌のコロニーをカウントす
る。抗菌性は下記の式で示される菌死滅率(%)にて評
価した。尚、Coは試料布の入っていないブランクでのコ
ロニー数、Cは試料布の入っている物のコロニー数を表
す。
菌死滅率(%)=(Co−C)/Co×100 実施例1 75de/24filのポリエステルフィラメント使いのタフタ
(目付け50g/m2)を第1表に示すイオンプレーティング
装置に取り付けて該布帛上に沃化銀皮膜(AgI)を形成
させる。沃化銀皮膜の付着量は重量法で求める。結果は
第1表に示す。
試料No.11は、抗菌性ゼオライト(シナネンZeo−Ag,C
u)を繊維に1.5重量%練り込み紡糸して得られたポリエ
ステル繊維を本発明品と同じ条件にて編み上げたものを
用いた。
実施例2 70de/24filのナイロンタフタ(目付け64g/m2)を第1
図に示すイオンプレーティング装置に取り付けて布帛の
片面沃化銅(CuI)の単独皮膜、AgI/CuI,AgI/ZnO,AgI,S
nO2の混合物皮膜を形成した。結果を第2表に示す。
(発明の効果) 本発明により得られた抗菌性の布帛は、極微量の抗菌
性物質の使用にもかかわらず良好な抗菌性を示す。又、
無色或は淡色の抗菌性物質の使用量が少ないため、商品
の安全性も高く又処理した布帛の色も従来の銀,銅,鉛
等の金属や銀や銅等の金属を吸着させたゼオライトやそ
の他の無機物を使用した時の様な着色は生ぜず極めて品
位が高く商品価値も大きい。
【図面の簡単な説明】 第1図はイオンプレーティング装置の模式図、第2図は
スパッタリング装置の模式図を示す。1は処理容器外
形、2,3は試料布帛の送り出し,巻き取り軸、4は基板
(ターゲット)、5は試料の布帛、6はイオン化用の高
周波電源用コイル、7は蒸着物質、8はるつぼ、9は高
周波のマッチング装置、10は高周波電源、11は基板にマ
イナスのバイアスを印加する為の直流電源、12はアー
ス、13は真空ポンプにつながる排気口、14はアノード電
極、15はカソード電極を示す。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】布の少なくとも表面の一部にイオンプレー
    ティング法及び/又はスパッタリング法により金属化合
    物の薄膜を形成した無色又は淡色の抗菌性を有する布帛
    であって、該金属化合物が臭化銅、沃化銅、沃化銀から
    選ばれる少なくとも一種類の金属化合物であり、布の重
    量当り0.001〜1重量%の添加量であることを特徴とす
    る抗菌性布帛。
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