JP2964008B2 - 電解コンデンサ - Google Patents

電解コンデンサ

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Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】
この発明は、安全性を向上させた乾式電解コンデンサ
に関する。
【従来の技術】
アルミニウムなどの表面に絶縁性酸化皮膜が形成され
得る、いわゆる弁金属を陽極に用い、多孔質セパレータ
を介して集電用の陰極を配置するとともに、前記多孔質
セパレータに電解液を保持させた乾式電解コンデンサ
(以下単に電解コンデンサという)は、単位体積あたり
の静電容量値が大きく、大容量のコンデンサが得られる
ことから、各種の電子機器の電源部の平滑回路などに数
多く用いられている。 電解コンデンサは、陽極の弁金属表面を陽極酸化処理
等によって酸化して、絶縁性の酸化物薄膜を形成し、こ
れを誘電体層として用いている。 そして多孔質セパレータによって保持された導電性を
有する電解液は、真の陰極として誘電体層に接触すると
ともに、集電のための陰極にも電気的に接触してコンデ
ンサ素子を形成している。 ところで電解コンデンサは、電解液の蒸散防止や吸湿
等を防ぐためにコンデンサ素子を外装容器内に密閉して
用いられる。また電解コンデンサの誘電体層は前記した
ように極めて薄い皮膜のため、製造時ならびに使用時に
おいて熱、水分、機械的衝撃などによって皮膜が劣化損
傷を受ける。 電解液は、陰極としての機能のみでなくこのような劣
化損傷を受けた部位の誘電体層を電解酸化して修復させ
る機能を併せ持っている。電解酸化反応は微量の水分の
存在下で酸化反応が進行し、この時水素ガスが発生す
る。このためにコンデンサ素子を収納している密閉容器
内の圧力は高くなる。 またこの修復反応とは別に、電解コンデンサは有極性
であることから、使用時に極性を間違えて接続したり、
交流電圧を印加したり、さらには誘電体酸化皮膜の絶縁
耐圧を越える電圧が印加されるなどの異常な使用状態に
置かれると、誘電体皮膜が破壊され急激に電流が増加
し、発熱とガス発生が起こり、電解コンデンサを短時間
で破壊させる。 このときの内部圧力の上昇によって、密閉容器が爆発
的に破損するのを防ぐために、電解コンデンサは、密閉
容器の一部に脆弱部分を設け、この部分が内部圧力によ
って開放されて内部の高圧ガスを外部に放散させる防爆
装置が備えられている。
【発明が解決しようとする課題】
電解コンデンサの防爆装置は、上述したように、急激
な内部圧力の上昇に対して密閉容器の爆発的な破壊を防
止できるが、防爆装置が動作すると加熱された内部の電
解液や素子材料の一部が外部に飛散し火災を発生させた
り、飛散した電解液が回路基板に付着して短絡などの二
次的な事故を発生する原因となる。また防爆装置の動作
の際、光、炎、音などを発生させて機器の使用者を驚か
せるなどの不都合がある。 そこでこの発明は、異常時の安全動作を改良して、電
解コンデンサの異常時に短絡、火災その他外部へ波及す
る事故が起きる前に速やかに動作して、外部への影響や
二次的な事故を誘因することのない安全装置を備えた電
解コンデンサを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
この発明の電解コンデンサは、表面に誘電体酸化皮膜
を有する陽極と、この陽極に対峙して配置された陰極
と、これら陽極、陰極間に電解質を保持して配置された
多孔質セパレータとからなる素子を有する電解コンデン
サについてなされたもので、電解コンデンサの素子の電
極間に配置された多孔質セパレータに、熱可塑性樹脂粉
末を混抄したものを用いたことを特徴としている。 またこの発明の電解コンデンサは、多孔質セパレータ
に混抄する熱可塑性樹脂粉末が、セパレータ原料に対
し、10重量%ないし50重量%の範囲にあることも特徴と
している。 電解コンデンサのセパレータは、陽極および陰極電極
の間に介在し、電解液を保持し、かつ電解液のイオン電
導を維持するために、多孔質の薄膜状をなしており、素
材は、紙、繊維、合成樹脂フィルムなどからなるが、大
半のセパレータは電解液保持の特性、供給体制、経済的
観点等からマニラ麻繊維あるいはクラフト繊維を主たる
原料とした紙が用いられている。 この発明において用いるセパレータには、粉末あるい
は微粒状に加工された熱可塑性樹脂がセパレータ繊維に
混抄される。混抄はセパレータの抄紙工程においてパル
プに混合することにより行える。 混抄に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、
ポリプロピレンなどが例示できる。 また熱可塑性樹脂の粉末状への加工は、熱可塑性樹脂
ブロックを粉砕して行うもの、溶融状態の熱可塑性樹脂
を霧状に拡散固化させるなどの手段で得ることができ
る。 好ましい粉末粒径は、電解コンデンサに用いられる多
孔質セパレータの厚さが最大でも数十μm程度であるこ
とから、粒径は1μmないし50μm程度であり、より好
ましくは5μmないし30μmである。 またセパレータ原料への熱可塑性樹脂粉末の混合量
は、混合量が少ないと後述するように、電解コンデンサ
の発熱時にセパレータ内で熱可塑性樹脂が溶解拡散し
て、セパレータの抵抗値を上昇させるのが充分でなく、
逆に混合量が多いと、通常の使用状態でもセパレータの
抵抗値が高く、損失値などの電解コンデンサの電気特性
が悪化すること、セパレータの抄紙が困難になるなどの
理由から、好ましい混合範囲はセパレータ原料に対して
10重量%ないし50重量%である。
【作用】
この発明によれば、電解コンデンサが極性の逆接続、
過電圧印加、酸化皮膜の損傷等の原因によって、多量の
電流がコンデンサ素子内部に流れ、コンデンサ素子が発
熱することによって、セパレータ内部に混抄された熱可
塑性樹脂粉末が軟化溶解して、繊維表面あるいは繊維間
の隙間を毛細現象によって拡散してゆく。そしてさらに
近傍の他の熱可塑性樹脂が溶解したものと結合しなが
ら、セパレータ内の電解液の通路を閉塞、遮断して行
き、電極部と電解液との電気的接続を遮断あるいは抵抗
値を上げることで、異常電流を制限する。この結果発熱
が抑制されることになる。
【実 施 例】
以下実施例に基づいてこの発明を説明する。第1図は
この発明の電解コンデンサの素子を示す部分分解図であ
る。 図に示すように、表面に誘電体酸化皮膜層が形勢され
帯状に切断された陽極箔2と、同様に帯状に切断された
陰極箔3とを、電極箔2、3の間にこれら電極箔2、3
より若干の広幅の帯状のセパレータ4を介して巻回し
て、円筒状のコンデンサ素子1を形成する。陽極箔2お
よび陰極箔3には、所定の位置に外部との電気的接続を
得るためのリード5が各々接続されている。 セパレータ4は、マニラ麻繊維あるいはクラフト繊維
を漉いた抄紙からなり、抄紙時に熱可塑性樹脂粉末が混
抄されている。 このコンデンサ素子1は、以降の工程は常法によって
電解液が含浸され、図示はしないが筒状の金属ケースに
収納し、ケース開口部を封口部材で密閉して電解コンデ
ンサが完成する。なおコンデンサ素子1に取りつけられ
たリード5は、通常封口部材を貫通して外部に導出さ
せ、外部回路と電気的接続がなされるようになってい
る。 この発明の電解コンデンサは、上記のようなセパレー
タを用いる以外は、従前の材料、製造方法を用いて製造
することができる。 次にこの発明で用いるセパレータを使用して電解コン
デンサを作成し、その特性を調べた結果を示す。 まず、マニラ麻繊維に、平均粒径が10μmのポリエチ
レン粉末を添加量0から最大60重量%の範囲で混合量を
変えて混抄し、厚さ40μmのセパレータを作成した。 これらセパレータを用いて、定格電圧50V、定格静電
容量10000μF、外径寸法30φ×45の電解コンデンサ
を作成した。 この電解コンデンサについて、セパレータの抵抗値の
影響が大きい損失値(Tanδ)を測定した。 また発熱による影響を調べるために、電解コンデンサ
に過電圧を印加し、温度上昇を調べた。印加電圧は、定
格電圧の1.5倍(75V)の直流電圧を連続印加し、温度上
昇の測定は、巻回構造をしたコンデンサ素子中心部に測
温用のプローブを埋設して、印加後60秒および120秒後
のの温度を調べた。この結果を以下の表に示す。 この実験結果からわかるように、まずセパレータへの
熱可塑性樹脂の混合量と、損失との関係を考えると、絶
縁物である熱可塑性樹脂粉末がセパレータ内に増えるに
従い、セパレータの抵抗値が大きくなるとともに、セパ
レータへ部への電解液の保持量も減少するので、電解コ
ンデンサの損失値(Tanδ)が増加した。 次に、異常時の発熱防止の観点からは、熱可塑性樹脂
粉末の混合量が多いほど、発熱に伴いセパレータの抵抗
値を上げるので、発熱の度合いが小さい。特に比較例2
および3の熱可塑性樹脂粉末を全く含まないか、1重量
%程度のものは、発熱の度合いが高く、内圧上昇が激し
いために外装ケースに設けられた防爆弁が開弁動作して
しまった。 以上の実験結果から、電解コンデンサの電気特性を維
持しつつ、安全性を向上させるためには、セパレータ原
料に混合する熱可塑性粉末の混合量は、実施例1ないし
5の範囲である、10重量%ないし50重量%の範囲が好ま
しいことがわかった。
【発明の効果】
以上述べたように、この発明の電解コンデンサは、許
容電圧を越える電圧が印加されたり、誤使用やコンデン
サ素子の劣化によって、電流が急激に増加して発熱によ
る不都合が起きると、セパレータ部分の抵抗値が増大し
て電流を制限をする。 このため発熱や内部圧力の上昇が防止できるので、電
解コンデンサが発煙や発火に至る前に事故を防止でき、
電解コンデンサの安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】 第1図はこの発明の電解コンデンサの素子構造を表した
部分分解図である。 1……コンデンサ素子、2……陽極箔 3……陰極箔、4……セパレータ 5……リード

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面に誘電体酸化皮膜を有する陽極と、こ
    の陽極に対峙して配置された陰極と、これら陽極、陰極
    間に電解質を保持して配置された多孔質セパレータとか
    らなる素子を有する電解コンデンサにおいて、 前記電極間に配置された多孔質セパレータが、熱可塑性
    樹脂粉末をセパレータ原料に対して10重量%ないし50重
    量%の範囲で混抄したものからなり、コンデンサ素子の
    異常発熱によって前記熱可塑性樹脂粉末が軟化溶解し
    て、セパレータの繊維表面または繊維間の隙間に拡散さ
    れることを特徴とする電解コンデンサ。
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