JP2958163B2 - 内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関の吸気バルブ
あるいは排気バルブの開閉時期を運転状態に応じて可変
制御するバルブタイミング制御装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来のバルブタイミング制御装置として
は、種々提供されており、その一例として本出願人が先
に出願した特願平２−４０８７６４号に記載されたもの
がある。

【０００３】これは、図３〜図５に示すように構成さ
れ、吸気バルブを開閉作動させるカムシャフト１の一端
部１ａにスリーブ２がボルト３により軸方向から固着さ
れていると共に、該スリーブ２の外周にクランク軸から
回転力が伝達されるタイミングスプロケット４が支承さ
れている。

【０００４】前記スリーブ２は、肉厚筒状のスリーブ本
体２ａと、該スリーブ本体２ａの先端側に有する薄肉筒
状の小径部２ｂと、後端側に有する大径フランジ部２ｃ
とからなり、小径部２ｂの外周にはタイミングスプロケ
ット４のフロントカバー５と一緒にボルト３により共締
めされたアーム６が固着されている。このアーム６は、
図４に示すように固定端から延出した扇状の各延出部
７，８の摺動面たる両側端面７ａ，７ｂ、８ａ，８ｂが
互いに反対方向へ傾斜状に形成されている。

【０００５】前記タイミングスプロケット４は、筒状本
体４ａの後端側外周面にタイミングチェーンが巻装され
る歯車４ｂを有すると共に、前端側内周面に略台形状の
突起部９，１０が対向配置されている。

【０００６】また、スリーブ２とタイミングスプロケッ
ト４との間には、円環状のピストン１１がカムシャフト
１軸方向へ進退動自在に介装されていると共に、該ピス
トン１１の前面に４つのスライダー１２，１３，１４，
１５が周方向の等間隔位置に設けられている。この各ス
ライダー１２〜１５は、図４及び図５に示すように夫々
が略矩形片状を呈し、内部軸方向に貫通したピン１６…
を介してピストン１１の前端部に回転自在に支持されて
いると共に、夫々の延出部７，８の各側端面７ａ〜８ｂ
に当接する傾斜面たる一側面１２ａ，１３ａ，１４ａ，
１５ａが各側端面７ａ〜８ｂと同一傾斜角度に形成され
ている一方、各円弧状の他側面１２ｂ，１３ｂ，１４
ｂ，１５ｂが突起部９，１０の凹状両側面９ａ，９ｂ、
１０ａ，１０ｂに摺接している。また、対向する一対の
スライダー１２，１４は、各ピン１６，１６の外周に巻
装されたコイルスプリング１７，１８のばね力で一側面
１２ａ，１４ａが側端面７ａ，８ａに常時当接して隙間
つまりバックラッシの発生が防止されている。

【０００７】前記ピストン１１を進退動させる駆動機構
は、該ピストン１１をアーム６方向に付勢する圧縮スプ
リング１９と、フロントカバー５とピストン１１前面と
の間に形成された油圧室２０に油圧を供給して圧縮スプ
リング１９のばね力に抗してピストン１１を後退動させ
る油圧回路２１とを備えている。この油圧回路２１は、
一部がカムシャフト１及びスリーブ２の各ボルト挿通孔
とボルト３の軸部との間に形成されて、上流端が電磁切
換弁２２介してオイルポンプ２３と連通する主通路２４
と、アーム６の内部に亘って形成されて、前記主通路２
４の下流端と油圧室２０とを連通する油通路２５とから
主として構成されている。前記電磁切換弁２２は、機関
運転状態を検出するコントロールユニット２６から出力
される制御信号に基づいて切換駆動するようになってい
る。尚、図中２７はオイルポンプ２３の吐出圧を一定に
調整する圧力調整弁である。

【０００８】そして、例えば機関低負荷時には、コント
ロールユニット２６からの制御信号により電磁切換弁２
２が制御されて、油圧室２０には作動油の供給が遮断さ
れる。したがって、ピストン１１は、圧縮スプリング１
９のばね力により前方へ進出して、各スライダー１２，
１４の一側面１２ａ，１４ａがアーム６の対向側端面７
ａ，８ａを押圧しつつ該アーム６をタイミングスプロケ
ット４の回転方向と逆方向に回動させる。これにより、
カムシャフト１が、タイミングスプロケット４に対して
一方向に相対回動して吸気バルブの閉時期を遅れ側に制
御する。

【０００９】一方、高負荷域に移行した場合は、電磁切
換弁２２を介してオイルポンプ２３から圧送された作動
油が主通路２４及び油通路２５を通って油圧室２０に供
給され、該油圧室２０内の圧力上昇に伴いピストン１１
が後退動する。したがって、別異のスライダー１３，１
５の一側面１３ａ，１５ａが今度はアーム６の異なる対
向側端面７ｂ，８ｂを押圧して該アーム６をタイミング
スプロケット４の回転方向に回動させる。これにより、
カムシャフト１が、タイミングスプロケット４に対して
他方向に相対回動して吸気バルブの閉時期を進み側に制
御するようになっている。

【００１０】ところで、前記バルブタイミング制御装置
にあっては、タイミングスプロケット４から伝達された
回転力によりカムシャフト１が回転して、駆動カムによ
り吸気バルブを開閉作動している際に、該カムシャフト
１にはバルブスプリングのばね反力等に起因して正負の
回転トルク変動が発生している。

【００１１】そして、前記機関低負荷時あるいは高負荷
時において、ピストン１１が圧縮スプリング１９のばね
力あるいは油圧室２０内の高油圧により前後に進退移動
する際に、前記カムシャフト１の正負の回転トルク変動
がアーム６の側端面７ａ，７ｂ、８ａ，８ｂと各スライ
ダー１２〜１５の一側面１２ａ〜１５ａを介してピスト
ン１１に押圧分力として伝達されて、該ピストン１１の
進退移動をアシストしている。つまり、カムシャフト１
の回転方向とは逆方向の負の変動トルクが、圧縮スプリ
ング１９のばね力を押圧分力としてアシストしてピスト
ン１１の進出方向の移動速度を上昇させる一方、正の変
動トルクが油圧室２０内の油圧をアシストしてピストン
１１の後退方向の移動速度を上昇させている。

【００１２】

【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、前記バルブ
タイミング制御装置は、各スライダー１２〜１５の一側
面１２ａ〜１５ａの傾斜角度θが全て均一になっている
ため、カムシャフト１の正及び負の変動トルクが同一で
あればピストン１１の進退移動のアシスト力も同一にな
るが、機関の仕様により変動トルクが正と負では大きく
異なっている場合は、そのアシスト力も大きく相違して
しまう。

【００１３】この結果、ピストン１１の進出方向と後退
方向の移動速度に大きな差が発生して、カムシャフト１
とタイミングスプロケット４との正逆相対回動位相変換
の応答性にバラつきが生じる虞がある。

【００１４】

【課題を解決するための手段】本発明は、前記従来のバ
ルブタイミング制御装置の問題点に鑑みて案出されたも
の機関により駆動される回転体とカムシャフトとの間に
介装された位相変換手段に設けられて、互いに反対方向
へ傾斜した少なくとも一対の傾斜面と、前記カムシャフ
トの端部に設けられて、前記各傾斜面と対接する摺動面
とを備え、前記位相変換手段のカムシャフト軸方向の移
動に伴い各傾斜面から摺動面に伝達された回転方向の押
圧力により前記回転体とカムシャフトとの相対回動位相
を変換するバルブタイミング制御装置において、前記カ
ムシャフトに発生する正の回転トルク変動と負の回転ト
ルク変動を、前記摺動面を介して前記各傾斜面に伝達す
ると共に、前記正の回転変動トルクと負の回転トルク変
動のうち相対的に小さい方の回転トルク変動が伝達され
る一方の傾斜面の立ち上がり傾斜角度を、他方の傾斜面
の立ち上がり傾斜角度よりも大きく設定したことを特徴
とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。

【００１５】

【作用】したがって、例えば、カムシャフトの回転方向
と同方向の正の回転トルク変動が反対回転方向の負の回
転トルク変動よりも小さい場合は、この正の回転トルク
変動を受ける一方の傾斜面の立ち上がり傾斜角度を大き
く設定したため、位相変換手段に対するカムシャフトの
正の回転トルク変動による押圧分力、つまりアシスト力
が、負の回転トルク変動によって他方の傾斜面に対する
押圧分力であるアシスト力よりも大きくなって、正の回
転トルクよりも大きな負の回転トルク変動によるアシス
ト力と略同一になる。このため、位相変換手段の例えば
後退方向の移動性が向上して進出方向の移動速度と略等
しくなり、カムシャフトと回転体との正逆相対回動位相
変換の応答性が全体的に向上する。

【００１６】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図１及び図２に基
づいて詳述する。尚、前記先願と共通の構成個所には同
一の符号を付して重複説明を省略する。

【００１７】本実施例では、機関の仕様によりカムシャ
フト１に発生する負の回転トルク変動、つまりタイミン
グスプロケット４の回転方向と反対方向に作用するトル
ク変動よりもタイミングスプロケット４の回転方向と同
方向に作用する正の回転トルク変動の方が小さい場合に
ついて説明する。即ち、図中６はスリーブ２の前端側に
ボルト３により固定されたアーム、１１はスリーブ２と
タイミングスプロケット４との間に進退自在に介装され
たピストンであって、前記アーム６は、各延出部７，８
の摺動面たる両側端面７ａ，７ｂ、８ａ，８ｂが互いに
反対方向へ傾斜状に形成されている。そして、前記正の
回転トルク変動を後述する各側面１３ａ，１５ａに伝達
する一方側の側端面７ｂ，８ｂの立ち上がり傾斜角度θ
１が他方側の側端面７ａ，８ａの立ち上がり傾斜角度θ
２よりも所定量だけ大きく設定されている。

【００１８】前記ピストン１１は、全面に４つのスライ
ダー１２〜１５が設けられている。このスライダーは、
図１中上下に配置された一対のスライダー１２，１４が
コイルスプリング１７，１８のばね力で側端面７ａ，８
ａ側に常時付勢されて回転と軸方向への移動が自在にな
っていると共に、左右に配置された一対のスライダー１
３，１５が単にピン１６，１６によってピストン１１に
回動自在に支持されている。更に、前記スライダー１
２，１４は、各側面１２ａ，１４ａがアーム６の各側端
面７ａ，８ａを介してカムシャフト１の負の回転トルク
変動を受け、他方のスライダー１３，１５は、各側面１
３ａ，１５ａがアーム６の他の各側端面７ｂ，８ｂを介
してカムシャフト１の正の回転トルク変動を受けるよう
になっている。

【００１９】そして、他方のスライダー１３，１５の各
側面１３ａ，１５ａは、その立ち上がり傾斜角度θ３が
一方のスライダー１２，１４の各側面１２ａ，１４ａの
立ち上がり傾斜角度θ４よりも所定量だけ大きく設定さ
れて、前記一方側の側端面７ｂ，８ｂの立ち上がり傾斜
角度θ１と同一になっている。

【００２０】したがって、この実施例によれば、機関低
負荷時において、油圧室２０内への油圧が遮断されて、
ピストン１１が圧縮スプリング１９のばね力により進出
移動する。この際、カムシャフト１の負の変動トルクが
アーム６の各側端面７ａ，８ａを介してスライダー１
２，１４の各側面１２ａ，１４ａに伝達されて、該スラ
イダー１２，１４のアーム６に対する押圧力が助長され
る。したがって、該アーム６の回動つまりカムシャフト
１のタイミングスプロケット４に対する一方の相対回動
変換速度が上昇する。

【００２１】一方、機関高負荷時には、油圧室２０内に
油圧が供給されてピストン１１が油圧室２０内の高油圧
により後退移動する。この際、カムシャフト１の正の変
動トルクがアーム６の各側端面７ｂ，８ｂを介してスラ
イダー１３，１５の各側面１３ａ，１５ａに伝達され
て、該スライダー１３，１５のアーム６に対する押圧力
（アシスト分力）が助成される。即ち、各側端面７ｂ，
８ｂ及びスライダー１３，１５の各側面１３ａ，１５ａ
の立ち上がり傾斜角度θ３が、各側端面７ａ，８ａ及び
スライダー１３，１５の一方の各側面１３ｂ，１５ｂの
立ち上がり傾斜角度θ４大きく設定されているため、正
の回転トルク変動によるアーム６から各スライダー１
３，１５に対する伝達アシスト力が大きくなる。したが
って、アーム６に対する押圧力が、前記大きな負の回転
トルク変動による場合と略同一の力で助成され、カムシ
ャフト１のタイミングスプロケット４に対する他方の相
対回動変換速度が上昇する。

【００２２】この結果、カムシャフト１とタイミングス
プロケット４との正逆いずれの相対回動位相変換の応答
性つまりバルブタイミング制御応答性が向上する。

【００２３】尚、前記各スライダー１３，１５の各側面
１３ａ，１５ａの傾斜角度θ３は、正の変動トルクの大
きさに応じて適宜変更することが可能である。

【００２４】本発明は、前記実施例に限定されることな
く、機関の仕様によって、正よりも負の回転トルク変動
の方が小さい場合は、スライダー１２，１４の各側面１
２ａ，１４ａの傾斜角度を大きく設定するもことも可能
であり、その角度もトルク変動の大きさに応じて適宜変
更することが可能である。また、斯かるバルブタイミン
グ制御装置を排気バルブ側のみあるいは排気，吸気バル
ブ側の両方に適用することもできる。また、位相変換手
段として、筒状歯車等を用いたものにも適用できる。

【００２５】

【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、カムシャフトから位相変換手段に伝達される正
負の回転トルク変動中、小さい方の傾斜面の立ち上がり
傾斜角度を大きく設定したため、小さい回転トルク変動
側の前記傾斜面に対するアシスト押圧分力が大きくな
り、大きな回転トルク変動側のアシスト押圧力と略等し
くなる。したがって、カムシャフトと回転体との正逆の
相対回動位相変換速度が均一となり、該位相変換速度が
全体的に上昇する。この結果、バルブタイミングの制御
応答性が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す図３のＡ矢視図。

【図２】図１のＢ−Ｂ線断面図。

【図３】先願に係るバルブタイミング制御装置の縦断面
図。

【図４】先願の装置を示す図３のＡ矢視図。

【図５】図４のＣ−Ｃ線断面図。

【符号の説明】

１…カムシャフト、４…タイミングスプロケット（回転
体）、６…アーム、７ａ，７ｂ、８ａ，８ｂ…側端面
（摺動面）、１２〜１５…スライダー（位相変換手
段）、１２ａ〜１５ａ…側面（傾斜面）、１９…圧縮ス
プリング、２４…油圧回路（駆動手段）。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 機関により駆動される回転体とカムシャ
   フトとの間に介装された位相変換手段に設けられて、互
   いに反対方向へ傾斜した少なくとも一対の傾斜面と、前
   記カムシャフトの端部に設けられて、前記各傾斜面と対
   接する摺動面とを備え、前記位相変換手段のカムシャフ
   ト軸方向の移動に伴い各傾斜面から摺動面に伝達された
   回転方向の押圧力により前記回転体とカムシャフトとの
   相対回動位相を変換するバルブタイミング制御装置にお
   いて、 前記カムシャフトに発生する正の回転トルク変動と負の
   回転トルク変動を、前記摺動面を介して前記各傾斜面に
   伝達すると共に、前記正の回転変動トルクと負の回転ト
   ルク変動のうち相対的に小さい方の回転トルク変動が伝
   達される一方の傾斜面の立ち上がり傾斜角度を、他方の
   傾斜面の立ち上がり傾斜角度よりも大きく設定したこと
   を特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。