JP2951836B2 - 水処理設備の運転方法 - Google Patents

水処理設備の運転方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水処理設備において汚泥
を一時的に溜込み、放線菌スカムの抑制を図る水処理設
備の運転方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】放線菌スカムは、1969年ミルウォー
キー(米国)の下水処理場で発生し、わが国においても
1979年横須賀市の下町下水処理場での例が報告され
て以来、しばしば発生するようになった。その問題点
は、各下水処理場でケースバイケースであり、定説がな
く未解明な部分が多い。しかし、その発生原因としては 1.汚泥流出に伴う放流水質の悪化。 2.悪臭の発生。 3.汚泥の沈降性低下と汚泥の処理・処分工程への悪影
響。 等が挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】スカムを形成する放線
菌は数種類が報告されており、このうち代表的なNoc
ardiaやRhodococcusについては、増殖
速度と環境諸因子の関係が研究されている。総じて特徴
を列挙すると、 1.好気性菌 2.至適PH=7〜8 3.至適温度=25℃附近 4.通常活性汚泥より増殖速度が遅い 5.増殖速度は静置培養より振盪培養の方が速い 等がある。従って放線菌スカムを抑制するためには、設
備の運転により上記諸条件の範囲外の環境雰囲気にすれ
ばよく、最終沈澱池の汚泥溜込みと曝気機の間欠運転の
組み合せが有効であることがわかった。
【0004】本発明は殺菌剤を添加したり、目的のため
に新たにスカム除去装置や殺菌装置等を追加するもので
はなく、現有の設備の運転方法で解決を図るようにして
放線菌スカムの抑制を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するためになしたもので、下水等の汚水を処理する曝気
槽と、汚泥と処理水を分離する最終沈澱池とより成る水
処理設備において、曝気装置を間欠運転し、かつ返送汚
泥ポンプを所要日数間停止して最終沈澱池へ汚泥を溜込
むか、あるいは最終沈澱池での汚泥滞留時間を12時間
以上24時間未満として、最終沈澱池に汚泥を一時的に
溜込み、この後曝気槽へ返送するパターンを繰り返し行
い、これにより放線菌スカムの抑制を図ることを要旨と
する。
【0006】
【作用】下水等の汚水を処理する曝気槽と、汚泥と処理
水を分離する最終沈澱池とより水処理設備を構成し、曝
気槽内の曝気装置を間欠運転し、かつ返送汚泥ポンプを
所要日数間停止して最終沈澱池へ汚泥を溜込むか、ある
いは最終沈澱池での汚泥滞留時間を12時間以上24時
間未満として、最終沈澱池に汚泥を一時的に溜込み、こ
の後曝気槽へ返送するパターンを繰り返し、これにより
放線菌を含めた汚泥を嫌気条件下に一時的に保って放線
菌スカムの抑制を行う。
【0007】
【実施例】以下本発明水処理設備の運転方法を図示の実
施例にもとづいて説明する。 実施例1 放線菌を含めた汚泥を嫌気条件下にするためには、 1.曝気装置を停止して曝気槽を嫌気状態とする。 2.汚泥を最終沈澱池に溜込んで嫌気時間を長くする。 の2つの方法が考えられるが、どちらの方法が有効かラ
ボ実験により確認した。
【0008】図1は汚泥濃度1000mg/lと800
0mg/lの2種の混合液を無曝気状態で放置したとき
のPHの変化を示したものである。汚泥濃度1000m
g/lはPH6.4で、経時的変化が小さいのに対し
て、汚泥濃度8000mg/lでは最初の一日でPHは
5.8まで低下し、以後横ばいであった。放線菌の至適
PHが7〜8であることを考えると、汚泥濃度8000
mg/lの方が至適PH範囲から外れているということ
で、最終沈澱池に汚泥を溜込むことにより汚泥濃度を高
めた方が嫌気条件プラス低PHの影響で放線菌の増殖を
抑制することができる。
【0009】図2は放線菌と汚泥の混合液を各PH、溶
存酸素濃度(DO)の条件で所定の期間放置したときの
放線菌濃度を示したものである。
【0010】PH5.8あるいはDOゼロの単独条件下
では、放線菌濃度は若干増加するのに対してPH5.8
プラスDO=ゼロの条件では、両因子が相乗的に効果を
発揮し放線菌濃度が減少することがわかった。
【0011】実施例2 実施施設のプレハブ式オキシデーションディッチにおい
て放線菌スカムを抑制した例を開示する。施設の運転方
法は表1の通りであり、返送汚泥ポンプは1週間を1サ
イクルとして最初の4日間は運転を停止して汚泥を最終
沈澱池に溜込んで嫌気と低PH条件として放線菌の増殖
を抑制し、5日目には汚泥を全量最終沈澱池から払出し
て一部は返送汚泥として曝気槽に戻し、残りは余剰汚泥
として汚泥濃縮槽に移送した。5日目から7日目まで
は、2時間に1回、10分間の通常運転を行った。
【0012】
【表1】
【0013】この運転により放線菌の増殖は実施例1の
如く著しく減退するが、このとき余剰汚泥量すなわち系
外への汚泥引き抜き量を多くして、放線菌の水理学的滞
留時間を30日から7日に短縮することで、曝気槽内の
放線菌をより効果的に減じることができた。また曝気槽
の運転は1時間間隔でON−OFFしたが、これは放線
菌の増殖速度が振盪培養より静置培養の方が遅いこと、
常に曝気槽内を曝気撹拌すると高濃度汚泥が曝気槽から
最終沈澱池に流出して曝気槽内の汚泥が急激に低下して
しまう2つの観点から実施したものである。
【0014】運転結果を図3に示したが、従来曝気機を
1時間ON、1時間嫌気撹拌、汚泥滞留時間30日、返
送汚泥ポンプを2時間間隔で10分間運転した場合、1
ml当りの放線菌数が100万個であったのに対して、
表1の運転を行うことにより10万個前半のオーダーま
で菌数を低下させることができた。
【0015】一般に1ml当り10万個になると曝気槽
で発泡し、100万個レベルでスカム化が激しく、障害
が発生するとされているが、本結果は発泡をも抑制でき
るものであり、十分な効果が実証された。
【0016】実施例3 本発明は最終沈澱池での汚泥滞留時間を長くして、好気
性菌である放線菌を酸素欠乏状態にして、その増殖抑制
を図り、曝気槽での発泡、最終沈澱池でのスカム化を抑
えるものである。
【0017】図5は返送汚泥ポンプの運転チャートを示
したものである。1日のタイムサイクルの中で返送汚泥
ポンプを連続して18時間50分停止し、最終沈澱池へ
汚泥を溜込んだものであり、最終沈澱池では微生物呼吸
により酸素が消費される反面、曝気による酸素供給が行
われないので短時間で無酸素状態となり、好気性菌であ
る放線菌の活性を低下させることが可能である。また無
酸素時間が長い場合は、酸発酵が進み放線菌の至適PH
範囲外のPH6以下になることがしばしばであり、無酸
素状態と相乗的に作用して増殖速度が低下する。
【0018】一般に放線菌による発泡スカム化は試水1
ml中に放線菌が10万個存在すれば発泡し、100万
個でスカム障害が発生するといわれている。
【0019】図2には放線菌が100万個レベル存在す
るA処理場において上記タイムチャートにて返送汚泥ポ
ンプを運転したときの放線菌濃度を示したものであり、
その濃度は非常にゆるやかに減少し、約1.5カ月後に
は10万個/mlに達し、曝気槽での発泡は沈下した。
このように本発明は放線菌の増殖抑制に効果的であるこ
とを確認したが、その効果はいたってゆるやかであるた
め日常の運転方法として組み込むことが好ましいが、あ
る一定期間だけの応急対策として組み込むことも可能で
ある。
【0020】本発明は曝気装置の間欠運転と組み合せを
行っていないが、その主旨は曝気装置を連続運転する場
合、絶えず汚泥濃度の高い混合液が最終沈澱池に流下
し、曝気槽中の汚泥量が減少してやがては汚水の処理が
できなくなるが、1日以内の返送汚泥ポンプの停止時間
では上記のような問題がないため、特に曝気装置と関係
した運転が必要ではなく単独運転が行える。
【0021】一方、溜込み後の汚泥の返送は6時間の間
に徐々に返送するものとした。これは溜込んだ汚泥を短
時間に全量曝気槽に戻すと、汚水の流入に返送汚泥が加
わり瞬時的に最終沈澱池での固液分離能力(水面積負
荷)がオーバーし、汚泥が処理水中に混入して水質を悪
化させるためである。
【0022】最後に本実施例では最終沈澱池への汚泥の
溜込み方法として返送汚泥ポンプの運転時間について説
明してきたが、連続運転でも返送汚泥ポンプの回転数制
御やバルブ制御により汚泥を少量ずつ曝気槽へ戻し、最
終沈澱池での汚泥滞留時間を12〜24時間とすれば上
記と同様の効果が得られる。
【0023】
【発明の効果】本発明水処理設備の運転方法は、下水等
の汚水を処理する曝気槽と、汚泥と処理水を分離する最
終沈澱池とより成る水処理設備において、曝気装置を間
欠運転し、かつ返送汚泥ポンプを予め定めた日数間停止
して最終沈澱池へ汚泥を溜込むようにしているので、放
線菌を含めた汚泥を嫌気条件下に所要日数保つことがで
き放線菌スカムの抑制が行える利点がある。あるいは前
記水処理設備において、最終沈澱池での汚泥滞留時間を
12時間以上24時間未満として、最終沈澱池に汚泥を
一時的に溜込み、この後曝気槽へ返送するパターンを繰
り返し行うため、放線菌スカムの抑制が行える利点があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】無曝気条件下での混合液中PHの経時変化を示
すグラフ図である。
【図2】PH、DOが放線菌の増殖に及ぼす影響を示し
たグラフ図である。
【図3】発泡量、放線菌濃度の経時変化を示すグラフ図
である。
【図4】返送汚泥ポンプの運転フローチャートである。
【図5】放線菌濃度の経時変化を示すグラフ図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下水等の汚水を処理する曝気槽と、汚泥
    と処理水を分離する最終沈澱池とより成る水処理設備に
    おいて、曝気装置を間欠運転し、かつ返送汚泥ポンプを
    予め定めた日数間停止して最終沈澱池へ汚泥を溜込むこ
    とを特徴とした水処理設備の運転方法。
  2. 【請求項2】 下水等の汚水を処理する曝気槽と、汚泥
    と処理水を分離する最終沈澱池とより成る水処理設備に
    おいて、最終沈澱池での汚泥滞留時間を12時間以上2
    4時間未満として、最終沈澱池に汚泥を一時的に溜込
    み、この後曝気槽へ返送するパターンを繰り返し行うこ
    とを特徴とする水処理設備の運転方法。
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