JP2948462B2 - 磁気光学メモリー素子 - Google Patents

磁気光学メモリー素子

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JP2948462B2
JP2948462B2 JP30445293A JP30445293A JP2948462B2 JP 2948462 B2 JP2948462 B2 JP 2948462B2 JP 30445293 A JP30445293 A JP 30445293A JP 30445293 A JP30445293 A JP 30445293A JP 2948462 B2 JP2948462 B2 JP 2948462B2
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magneto
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淳策 中嶋
善照 村上
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光磁気記録装置に用い
られる光磁気ディスク、光磁気テープ、光磁気カード等
の磁気光学メモリー素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、磁気光学メモリー素子としての
光磁気ディスクは、書き換え可能な光ディスクとして研
究開発が進められており、その一部は既に、コンピュー
ター用の外部メモリーとして実用化されている。
【0003】上記のような光磁気ディスクでは、記録媒
体として垂直磁化膜を用い、光を利用して記録再生を行
うため、面内磁化膜を用いたフロッピーディスクあるい
はハードディスクに比べて、大記録容量を実現できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、光磁気
ディスクの記録密度は、光磁気ディスク上の光ビームス
ポットの大きさに制約を受ける。つまり、記録ビットの
大きさ、および、記録ビットの間隔が、光ビームスポッ
トの大きさに比べて小さくなると、光ビームスポット内
に複数の記録ビットが入る。このため、各記録ビットを
分離して再生することができなくなる。
【0005】したがって、光磁気ディスクの記録密度を
さらに大きくすることは困難であるという問題点を有し
ている。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の磁気光学
メモリー素子は、上記課題を解決するために、室温で面
内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇に
伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み出
し層と、読み出し層上に形成され、情報を光磁気記録す
る記録層とを備え、上記読み出し層は、フェリ磁性体の
希土類遷移金属非晶質合金からなり、その組成は、室温
で希土類金属副格子磁化が遷移金属副格子磁化より大き
く、且つ、補償温度が125℃以上、キュリー温度が2
00℃以上になるように設定されるとともに、上記記録
層は、フェリ磁性体の希土類遷移金属非晶質合金からな
り、その組成は、室温で希土類金属副格子磁化が遷移金
属副格子磁化より大きく、且つ、補償温度が室温以上と
なるように設定され、上記記録層のキュリー温度[Tc(re
cord)]と上記読み出し層の補償温度[Tcomp(readout)]と
、Tc(record)−Tcomp(readout)=X℃としたとき、上
記Xが、−80≦X<−40,−40<X≦80となる
ように調整されていることを特徴としている。
【0007】また、請求項2記載の磁気光学メモリー素
子は、上記課題を解決するために、室温で面内磁気異方
性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁
気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み出し層と、読
み出し層上に形成され、情報を光磁気記録する記録層と
を備え、上記読み出し層は、フェリ磁性体の希土類遷移
金属非晶質合金からなり、その組成は、室温で希土類金
属副格子磁化が遷移金属副格子磁化より大きく、且つ、
補償温度が125℃以上、キュリー温度が200℃以上
になるように設定されるとともに、上記記録層は、フェ
リ磁性体の希土類遷移金属非晶質合金からなり、その組
成は、室温で希土類金属と遷移金属の磁気モーメントが
釣り合うように、もしくは遷移金属副格子磁化が希土類
金属副格子磁化より大きくなるように設定され、上記記
録層のキュリー温度[Tc(record)]と上記読み出し層の補
償温度[Tcomp(readout)]と、Tc(record)−Tcomp(read
out)=X℃としたとき、上記Xが、−80≦X<−7
5,−75<X<−40,−40<X<−30,−30
<X<−20,−20<X<−15,−15<X<2
5,25<X<40,40<X<45,45<X<7
5,75<X≦80となるように調整されていることを
特徴としている。
【0008】
【作用】請求項1の構成によれば、再生動作時に、読み
出し層に光ビームを照射すると、照射部位の温度分布
は、ほぼガウス分布になるので、光ビームスポットの径
より小さい中心近傍領域の温度が周囲の領域の温度より
上昇する。
【0009】この温度上昇に伴って、温度上昇部位の磁
化は、面内磁化から垂直磁化に移行する。この時、読み
出し層及び記録層の2層間の交換結合力により、記録層
の磁化の向きに読み出し層の磁化の向きが従う。
【0010】このことから、温度上昇部位が面内磁化か
ら垂直磁化に移行すると、温度上昇部位のみが極カー効
果を示すようになり、該部位からの反射光に基づいて情
報が再生される。
【0011】そして、光ビームが移動して次の記録ビッ
トを再生するときは、先の再生部位の温度は低下し、垂
直磁化から面内磁化に移行するため、極カー効果を示さ
なくなる。このことは、記録層に記録された磁化が読み
出し層の面内磁化によりマスクされて読み出されないと
いうことを意味している。すなわち、隣接記録ビットか
らの信号混入がなくなる。これにより、隣接トラックか
らのクロストークを減少させることができるので、再生
時の雑音が減少し、分解能が向上し、再生信号の品質を
向上させることができる。
【0012】以上のように、所定温度以上に昇温された
光ビームスポットの径より小さい中心近傍領域のみを再
生に関与させるので、従来より小さい記録ビットの再生
を行うことが可能になり、記録密度が著しく向上する。
【0013】また、読み出し層と記録層について、試行
錯誤した結果、上記読み出し層は、フェリ磁性体の希土
類遷移金属非晶質合金からなり、その組成は、室温で希
土類金属副格子磁化が遷移金属副格子磁化より大きく、
且つ、補償温度が125℃以上、キュリー温度が200
℃以上となるように設定され、また、上記記録層は、フ
ェリ磁性体の希土類遷移金属非晶質合金からなり、その
組成は、室温で希土類金属副格子磁化が遷移金属副格子
磁化より大きく、且つ、補償温度が室温以上となるよう
に設定されていることで、面内磁化から垂直磁化へ、磁
化方向が急峻に移行することが分かった。これによっ
て、再生時に雑音が少なく、より高密度記録が可能な磁
気光学メモリー素子を実現できる。
【0014】さらに、上記の読み出し層と記録層とが上
記の条件であり、且つ、上記記録層のキュリー温度[Tc
(record)]と上記読み出し層の補償温度[Tcomp(readou
t)]と、Tc(record)−Tcomp(readout)=X℃としたと
き、上記Xが、−80≦X<−40,−40<X≦80
となるように調整されていることで、小さな外部磁界に
より記録することができることが分かった。これによっ
て、記録に係る電力を小さくすることができるので、装
置の省電力化を図ることができる。
【0015】また、請求項2の構成によれば、請求項1
の作用に加え、さらに読み出し層と記録層について、試
行錯誤した結果、上記読み出し層は、フェリ磁性体の希
土類遷移金属非晶質合金からなり、その組成は、室温で
希土類金属副格子磁化が遷移金属副格子磁化より大き
く、且つ、補償温度が125℃以上、キュリー温度が2
00℃以上になるように設定されるとともに、上記記録
層は、フェリ磁性体の希土類遷移金属非晶質合金からな
り、その組成は、室温で希土類金属と遷移金属の磁気モ
ーメントが釣り合うように、もしくは遷移金属副格子磁
化が希土類金属副格子磁化より大きくなるように設定さ
れていることで、面内磁化から垂直磁化へ、磁化方向が
急峻に移行することが分かった。これにより、再生時に
雑音が少なく、より高密度記録が可能な磁気光学メモリ
ー素子を実現できる。
【0016】また、上記の読み出し層と記録層とが上記
の条件であり、且つ、上記記録層のキュリー温度[Tc(re
cord)]と上記読み出し層の補償温度[Tcomp(readout)]と
、Tc(record)−Tcomp(readout)=X℃としたとき、上
記Xが、−80≦X<−75,−75<X<−40,−
40<X<−30,−30<X<−20,−20<X<
−15,−15<X<25,25<X<40,40<X
<45,45<X<75,75<X≦80となるように
調整されていることで、小さな外部磁界により記録する
ことができることが分かった。これによって、記録に係
る電力を小さくすることができるので、装置の省電力化
を図ることができる。
【0017】
【実施例】本発明の一実施例について図1ないし図15
に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0018】本実施例の光磁気ディスク(磁気光学メモ
リー素子)は、図1に示すように、基板1、透明誘電体
層2、読み出し層3、記録層4、保護層5、オーバーコ
ート層6がこの順に積層された構成を有している。
【0019】上記の読み出し層3として使用される希土
類遷移金属合金では、図2の磁気状態図に示すように、
垂直磁化を示す組成範囲(図中、Aで示す)が非常に狭
い。これは、希土類金属と遷移金属の磁気モーメントが
つりあう補償組成の近辺でしか垂直磁化が現れないから
である。
【0020】上記の希土類遷移金属合金の組成は、室温
で希土類金属副格子磁化が大きくなるようにし、室温で
面内磁化を示すようにしておく(図中Pの組成)。した
がって、光ビーム7を照射することにより、照射部位の
温度が上昇すると、遷移金属の磁気モーメントが相対的
に大きくなって、希土類金属の磁気モーメントとつりあ
うようになり、垂直磁化を示すようになる。
【0021】図3ないし図6は、上記読み出し層3のヒ
ステリシス特性の一例を示しており、横軸は、読み出し
層3の膜面に垂直方向に印加される外部磁界(Hex )で
あり、縦軸は、膜面に垂直な方向から光を入射させた場
合の極カー回転角(θk )である。
【0022】図3は、図2の磁気状態図における組成P
の読み出し層3の、室温から温度T1 までの間のヒステ
リシス特性を示しており、図4ないし図6は、それぞ
れ、温度T1 から温度T2 までのヒステリシス特性、温
度T2 から温度T3 までのヒステリシス特性、及び温度
3 からキュリー温度Tc までのヒステリシス特性を示
している。
【0023】温度T1 から温度T3 の温度範囲では、外
部磁界に対して極カー回転角の立ち上がりが急峻なヒス
テリシス特性を示すが、それ以外の温度範囲では外部磁
界がないときの極カー回転角はほとんど0である。
【0024】上記の特性を備えた希土類遷移金属を読み
出し層3に使用することで、光磁気ディスクの記録密度
を高くできる。すなわち、光ビーム7の大きさよりも小
さな記録ビットの再生が可能になる。これについて、以
下に説明する。
【0025】再生動作時、光ビーム7(図1)が基板1
側から集光レンズ8を介して読み出し層3に照射され
る。光ビーム7が照射された読み出し層3の部位は、そ
の中心部近傍の温度が最も上昇し、周辺の部位の温度よ
りも高くなる。これは、光ビーム7が、集光レンズ8に
より回折限界まで絞り込まれているため、その光強度分
布がガウス分布になり、光磁気ディスク上の照射部位の
温度分布もほぼガウス分布になるからである。
【0026】中心近傍の温度がT1 以上に達し、周辺部
位の温度がT1 以下になるように光ビーム7の強度が設
定されている場合、T1 以上の温度を有する領域のみが
再生に関与する。
【0027】つまり、T1 以上の温度を有する領域の磁
化は、面内磁化から垂直磁化に移行する(極カー回転角
のヒステリシス特性は図3から図4もしくは図5に移行
する)。この時、読み出し層3及び記録層4の2層間の
交換結合力により、記録層4の磁化の向きが読み出し層
3に転写される。一方、光ビーム7の中心近傍に対応し
た領域以外の、周辺部位では温度がT1 以下であるた
め、面内磁化の状態(図3)が保持される。この結果、
膜面に垂直方向から照射された光ビーム7に対しては、
極カー効果を示さない。
【0028】このようにして、温度上昇部位が面内磁化
から垂直磁化に移行すると、光ビーム7の中心近傍のみ
が極カー効果を示すようになり、該部位からの反射光に
基づいて、記録層4に記録された情報が再生される。
【0029】そして、光ビーム7が移動して(実際には
光磁気ディスクが回転して)、次の記録ビットを再生す
る時は、先の再生部位の温度はT1 以下に下がり、垂直
磁化から面内磁化に移行する。これに伴い、この温度が
低下した部位は極カー効果を示さなくなる。従って、該
温度の低下した部位からは情報が再生されなくなり、雑
音の原因である隣接記録ビットからの信号混入がなくな
る。
【0030】以上のように、本実施例の光磁気ディスク
を用いると、光ビーム7の径よりも小さい記録ビットの
再生を確実に行うことが可能になる。しかも、隣接する
記録ビットの影響を受けないため、記録密度を著しく高
めることが可能になる。
【0031】また、本実施例の光磁気ディスクは、再生
用の外部磁界を必要としない。このため、本実施例の光
磁気ディスクを採用した光磁気再生装置は小型になる。
【0032】次に、上記光磁気ディスクの具体例を示
す。図1に示すように、基板1、透明誘電体層2、読み
出し層3、記録層4、保護層5、オーバーコート層6が
この順に積層された構成を有した光磁気ディスクを作製
した。
【0033】基板1は、直径86mm、内径15mm、厚さ1.2m
m の円盤状のガラスからなっている。基板1の片側の表
面には、図示していないが、光ビーム案内用の凹凸状の
ガイドトラックが、ピッチが1.6 μm 、グルーブ(凹
部)の幅が0.8 μm 、ランド(凸部)の幅が0.8 μm で
形成されている。
【0034】この基板1のガイドトラックが形成されて
いる側の面に、透明誘電体層2として、A1Nが膜厚80
nmで形成されている。
【0035】この透明誘電体層2上に、読み出し層3と
して、希土類遷移金属合金薄膜であるGdFeCoが、
膜厚50nmで形成されている。このGdFeCoの組成
は、Gd0.25(Fe0.84Co0.160.75であり、これに
よって、室温では希土類金属副格子磁化が遷移金属副格
子磁化よりも優勢となっており、また、その補償温度は
180 ℃、キュリー温度は約280 ℃である。
【0036】この読み出し層3上に、記録層4として、
希土類遷移金属合金薄膜であるDyFeCoが、膜厚50
nmで形成されている。このDyFeCoの組成は、Dy
0.22(Fe0.85Co0.150.78であり、これによって、
室温では遷移金属副格子磁化が希土類金属副格子磁化よ
りも優勢となっており、また、その補償温度は室温以
下、キュリー温度は約220 ℃である。
【0037】上記の読み出し層3と記録層4の組み合わ
せにより、読み出し層3の磁化の方向は、室温ではほぼ
面内(つまり、読み出し層3の層方向)にあり、100 ℃
〜125 ℃程度の温度で面内方向から垂直方向に移行す
る。
【0038】また、記録層4上には、保護層5として、
A1Nが厚さ20nmで形成されている。そして、保護層5
上には、オーバーコート層6として、ポリウレタンアク
リレート系の紫外線硬化型樹脂が、膜厚5 μm で形成さ
れている。
【0039】上記の光磁気ディスクを用いて行った、動
作確認結果について説明する。
【0040】まず、静的特性の確認結果について、説明
する。上記の読み出し層3と記録層4の組み合わせによ
り、読み出し層3の磁化の方向は、室温ではほぼ面内に
あり、100 ℃〜125 ℃程度の温度で磁化は面内方向から
垂直方向に向くようになる。
【0041】図7及び図8は、実際に極カー回転角のヒ
ステリシス特性を、温度を変えて測定した結果を示すグ
ラフである。図7は、室温(25℃)でのヒステリシス特
性であり、外部磁界(Hex )が0のときの極カー回転角
は、ほとんど0となっている。これは、磁化が膜面に垂
直な方向にほとんど向かず、面内方向に向いていること
を示している。図8は、120 ℃でのヒステリシス特性で
ある。外部磁界が0のときでも、0.5deg程度の極カー回
転角があり、垂直磁化に移行していることがわかる。
【0042】次に、光ピックアップを用いて測定された
動的特性の確認結果について、説明する。尚、測定に使
用した光ピックアップの半導体レーザーの波長は780nm
であり、対物レンズの開口数(N.A.)は0.55であ
る。
【0043】まず、上記の光磁気ディスクの半径26.5mm
の位置のランド部に、回転数1800rpm (線速5m/sec)の
下で、0.765 μm の長さの単一周波数記録ビットを予め
記録した。記録は、記録層4の磁化の方向を一方向に揃
えた後(消去状態)、記録用外部磁界の方向を消去方向
とは逆方向に固定して、0.765 μm の長さに相当する記
録周波数(この場合は、約3.3MHz)でレーザー光を変調
することで行った。この時の記録レーザーパワーは、8
mW程度であった。
【0044】この記録ビット列を、再生レーザーパワー
を変えて再生し、再生信号波形の振幅を調べた結果を図
9に示す。横軸は再生レーザーパワーを示しており、0.
5mWから3mW の範囲で測定した。縦軸は再生信号振幅を
示しており、再生レーザーパワーが0.5mW の時の振幅で
規格化して示している。
【0045】図中、Xと記した曲線が本実施例の光磁気
ディスクでの結果であり、Yと記した曲線が、比較のた
めに作製し測定を行った従来の光磁気ディスクの結果で
ある。
【0046】なお、従来の光磁気ディスクは、上記と同
じガラスの基板1上に、A1Nを80nm、DyFeCoを
20nm、A1Nを25nm、A1Niを30nm、この順に積層
し、A1Ni上に上記と同じオーバーコート層を設けた
構成になっている。
【0047】この従来の光磁気ディスクの構成は、希土
類遷移金属合金であるDyFeCo磁性層が1層だけあ
り、その両側を透明誘電体層であるA1Nでサンドイッ
チし、片面に反射膜であるA1Niを設けた構造であ
る。この構造は、反射膜構造と呼ばれ、既に市販がなさ
れている3.5 インチサイズ単板仕様の光磁気ディスクの
代表的な構成である。また、周知の如く、従来の光磁気
ディスクにおけるDyFeCoからなる磁性層は、室温
から高温まで垂直磁化を示す。
【0048】図9において、破線で示されている直線
は、0点(原点)と0.5mW での振幅規格値を結んだ直線
であり、次式で示される光磁気信号の再生信号振幅と再
生レーザーパワーとの関係を表す直線である。
【0049】 再生信号振幅 ∝ 媒体反射光量 × 極カー回転角 この式で、媒体反射光量は、再生レーザーパワーに比例
して増加するものであるから、再生レーザーパワーで置
き換えることができる。
【0050】従来の光磁気ディスクの測定結果曲線
(Y)が、この直線より下にあるのは次の理由による。
すなわち、再生レーザーパワーを上げると媒体反射光量
はそれにつれて増加するが、一方で記録媒体の温度が上
昇する。磁性体の磁化は、一般に、温度が上がるにつれ
減少し、キュリー温度で0になる性質を有している。し
たがって、従来の光磁気ディスクにおいては、温度が上
昇するにつれ極カー回転角が小さくなるため、図中の直
線には乗らず、下側になる。
【0051】一方、本実施例の光磁気ディスクの測定結
果曲線(X)は、再生レーザーパワーが上がるにつれ、
急激に信号振幅が上昇し、2 〜2.25mW程度で振幅が最大
になる。また、3mW での振幅以外、全て上記直線より上
側にあり、再生レーザーパワーの増加分以上に振幅が増
加することが分かる。この結果は、温度が低い時には極
カー回転角がほとんど0であり、温度上昇に伴い急激に
面内磁化から垂直磁化に移行するという、本実施例の読
み出し層3の特性を反映しており、その動作を裏付ける
ものである。
【0052】次に、記録ビットをより小さくしていった
場合の再生信号品質を調べた結果について、以下に説明
する。尚、より小さな記録ビットの再生を可能にするこ
とで、記録密度を向上させることができる。
【0053】図10は、記録ビット長に対する再生信号
品質(C/N)を測定した結果を示すグラフである。光
磁気ディスクの線速は先の実験と同じく5m/secにしてお
いて、記録周波数を変えて記録を行い、そのC/N(図
のX)を測定した。光ピックアップ及び記録方法は、先
の実験と同じである。なお、再生レーザーパワーは 2.2
5mW とした。比較のため、先の実験と同じく従来の光磁
気ディスクについてもC/N(図のY)を測定した。こ
のときの再生レーザーパワーは1mW とした。
【0054】記録ビット長さが0.6 μm 以上の長い記録
ビットにおいては、両者のC/Nにほとんど差はない
が、0.6 μm 以下になると、従来の光磁気ディスクでは
急激にC/Nが低下した。これは、記録ビット長さが短
くなるにつれ、光ビーム7の照射径の中に存在する記録
ビットの数(面積)が増え、ひとつひとつの記録ビット
を識別できなくなるからである。
【0055】光ピックアップの光学的分解能を表す一つ
の指標として、カットオフ空間周波数があり、これは、
光源であるレーザーの波長と対物レンズの開口数により
定まる。本実験に用いた光ピックアップにおけるレーザ
ーの波長と対物レンズの開口数(それぞれ780nm 、0.55)
を用いて、カットオフ周波数を求め、これを記録ビット
長さに換算すると、 780nm/(2*0.55)/2 = 0.355μm になる。言い換えると、本実験に用いた光ピックアップ
の光学的分解能の限界は、記録ピット長さで0.355
μm である。上記の従来の光磁気ディスクの結果はこ
のことを反映して、0.35μm でのC/Nがほぼ0になっ
た。
【0056】一方、本実施例の光磁気ディスクでは、記
録ビット長さが短くなるにつれてC/Nは減少するもの
の、光学的分解能である0.355 μm よりも短い記録ビッ
トにおいても30dB近いC/Nが得られた。
【0057】以上の結果から、本実施例の光磁気ディス
クを用いることで、光学的解析限界より小さな記録ビッ
トの再生が可能であることが確認された。これにより、
従来の光磁気ディスクに比べて、記録ビット密度を大き
く向上させることが可能である。
【0058】次に、上記実験で確かめられた効果に加え
て、もうひとつの重要な効果であるクロストーク量につ
いて調べた結果について、図11を参照しながら説明す
る。
【0059】光磁気ディスクにおいては、一般に、ラン
ド仕様であれば、ランドの幅をできるだけ広くとり、グ
ルーブを狭くしたガイドトラックを形成して、ランド部
のみを記録、再生に用いる。したがって、ランド仕様の
光磁気ディスクでのクロストークとは、任意のランドを
再生している場合に、両隣のランドに書かれた記録ビッ
トからの漏れのことである。グルーブ仕様の光磁気ディ
スクでのクロストークとは、任意のグルーブを再生して
いる場合に、両隣のグルーブに書かれた記録ビットから
の漏れのことである。
【0060】例えば、IS10089規格(ISOの5.
25”書き換え型光ディスクについて定めた規格)におい
ては、1.6 μm ピッチのガイドトラックにおいて、最短
記録ビット(0.765 μm )に対するクロストーク量は−
26dB以下であるように定められている。
【0061】本実施例では、このIS10089規格に
定められたクロストーク測定法に基づき、0.765 μm の
記録ビットに対するクロストーク量を測定した。ただ
し、本実施例の光磁気ディスクの効果を確かめるため、
トラックピッチ1.6 μm 、ランド幅とグルーブ幅が同じ
0.8 μm である前述のガラスの基板1において、ランド
部を再生したときの両隣接グルーブからのクロストーク
量を測定した。
【0062】図11の縦軸はクロストーク量であり、横
軸は再生レーザーパワーである。図中のXは本実施例の
光磁気ディスクの測定結果であり、図中のYは上記比較
用の従来の光磁気ディスクの測定結果である。
【0063】従来の光磁気ディスクでは、クロストーク
量が−15dB程度と大きいが、本実施例の光磁気ディスク
では、−30dB程度と小さく、ISO規格の−26dBをクリ
アする値が得られた。
【0064】このような結果が得られた理由について、
図12を用いて説明する。
【0065】図12は、光磁気ディスクを真上から見た
ものである。真ん中のランド部と両隣のグルーブ部に
は、円形(点線)で示された記録ビットが記録されてい
る。図中の大きい円(実線)が光ビームスポットであ
り、光ビーム7がランドに照射されるようにサーボがか
かった状態を示している。
【0066】ランドの幅は0.8 μm 、光ビームスポット
の直径は1.73μm (=エアリーディスク径=1.22×780n
m /0.55)、記録ビットの直径は説明の便宜上、0.355
μmとしている。
【0067】同図において、光ビームスポット内には7
個の記録ビットが入っている。従来の光磁気ディスクの
場合、それぞれが垂直磁化を示し(例えば、記録ビット
は紙面に垂直上向きの磁化を示し、記録ビット以外の部
分は紙面に垂直下向きの磁化を示す)、それぞれが極カ
ー効果を示すので、光ビームスポット内の情報を分離で
きない。このため、C/Nが0.35μm の記録ビット長で
ほぼ0になり、隣接トラックからのクロストークも大き
い。
【0068】一方、本実施例の光磁気ディスクの場合、
光ビームを照射すると照射部位の温度分布は、ほぼガウ
ス分布となるため、光ビームスポットの中心近傍の、周
囲よりも温度が高い領域では、読み出し層3は垂直磁化
になるが、それ以外の領域では、面内磁化に保たれる。
このため、光ビームスポットの中心に位置する記録ビッ
トの情報だけを再生できる。したがって、0.35μm の記
録ビット長でも約30dBのC/Nが得られ、両隣接トラッ
クからのクロストークも非常に小さくなる。
【0069】以上のように、本実施例の読み出し層3を
備えた光磁気ディスクを用いると、従来の光磁気ディス
クと比較して、記録密度を2倍以上にすることが可能に
なる。
【0070】ここで、上記の構成の光磁気ディスクにお
ける代表的な動特性を下記の表1に示す。尚、記録層4
に補償温度が室温以下となるように調整されたDyFe
Co膜を用いた光磁気ディスク(No.1)と、記録層
4に補償温度が室温よりも高くなるように調整されたD
yFeCo膜を用いた光磁気ディスク(No.2)とに
ついて測定を行った。
【0071】
【表1】
【0072】但し、上記のC/Nは、0.6 μm 長のビッ
トを記録再生した時の信号品質を示すものである。
【0073】以上のことから、記録層4の補償温度は、
室温以下の場合と室温よりも高い場合とでほぼ同じ動特
性の値を示すことが分かる。これによって、記録層4の
キュリー温度が同じであれば、補償温度に関係なく動特
性をほぼ同じにすることができることが分かる。
【0074】次いで、読み出し層3のGdFeCoの組
成を変えて、キュリー温度を変化させたときの信号品質
を調べた結果について、以下に説明する。
【0075】図1と同様な光磁気ディスクを作製した。
この光磁気ディスクの記録層4として、希土類遷移金属
合金薄膜であるDyFeCoが、膜厚50nmで形成されて
いる。このDyFeCoの組成は、Dy0.22(Fe0.85
Co0.150.78であり、室温では遷移金属副格子磁化が
希土類金属副格子磁化よりも優勢となっており、また、
その補償温度は室温以下、キュリー温度は約220 ℃であ
る。
【0076】また、上記光磁気ディスクの読み出し層3
として、希土類遷移金属合金薄膜であるGdFeCo
が、膜厚50nmで形成されおり、このGdFeCoの組成
を変えることによって、読み出し層3の補償温度を150
℃で一定とし、キュリー温度を170 ℃から380 ℃まで変
化させた。
【0077】図13は、上記の条件下で、記録ビット長
が0.6 μm で記録再生したときのC/Nの値と読み出し
層3のキュリー温度との関係を調べた結果である。
【0078】また、上記の光磁気ディスクの記録層4と
して、希土類遷移金属合金薄膜であるDyFeCoが、
膜厚50nmで形成され、このDyFeCoの組成は、Dy
0.25(Fe0.83Co0.170.75であり、これによって、
室温では希土類金属副格子磁化が遷移金属副格子磁化よ
りも優勢となっており、また、その補償温度は100 ℃、
キュリー温度は約210 ℃である。
【0079】また、上記光磁気ディスクの読み出し層3
として、希土類遷移金属合金薄膜であるGdFeCo
が、膜厚50nmで形成され、このGdFeCoの組成を変
えることによって、読み出し層3の補償温度を150 ℃で
一定とし、キュリー温度を170℃から380 ℃まで変化さ
せた。
【0080】上記の条件下においても、図13と同様の
結果を得た。
【0081】以上のことから、一般にディジタル記録を
行うにはC/Nが45dB以上の信号品質が必要とされてお
り、この条件を満たすには、読み出し層3のキュリー温
度は200 ℃以上必要であることが分かる。
【0082】次いで、読み出し層3のGdFeCoの組
成を変えて、補償温度を変化させたときの信号品質を調
べた結果について、以下に説明する。
【0083】図1と同様の光磁気ディスクを作製した。
この光磁気ディスクの記録層4として、希土類遷移金属
合金薄膜であるDyFeCoが、膜厚50nmで形成されて
いる。このDyFeCoの組成は、Dy0.22(Fe0.85
Co0.150.78であり、これによって、室温では遷移金
属副格子磁化が希土類金属副格子磁化よりも優勢となっ
ており、また、その補償温度は室温以下、キュリー温度
は約220 ℃である。
【0084】また、上記光磁気ディスクの読み出し層3
として、希土類遷移金属合金薄膜であるGdFeCo
が、膜厚50nmで形成され、このGdFeCoの組成を変
えることによって、読み出し層3のキュリー温度を280
℃で一定とし、補償温度を50℃から230 ℃まで変化させ
た。
【0085】図14は、上記の条件下で、記録ビット長
が0.765 μm で記録再生したときのクロストークを測定
し、その値と読み出し層3の補償温度との関係を調べた
結果である。
【0086】また、上記光磁気ディスクの記録層4とし
て、希土類遷移金属合金薄膜であるDyFeCoが、膜
厚50nmで形成されている。このDyFeCoの組成は、
Dy0.25(Fe0.83Co0.170.75であり、これによっ
て、室温では希土類金属副格子磁化が遷移金属副格子磁
化よりも優勢となっており、また、その補償温度は100
℃、キュリー温度は約210 ℃である。
【0087】また、上記光磁気ディスクの読み出し層3
として、希土類遷移金属合金薄膜であるGdFeCo
が、膜厚50nmで形成され、このGdFeCoの組成を変
えることによって、読み出し層3のキュリー温度を280
℃で一定とし、補償温度を50℃から230 ℃まで変化させ
た。
【0088】上記の条件下で同様にクロストークを測定
したところ図14と同様の結果を得た。
【0089】以上のことから、ISO 規格で定められたク
ロストークの値である−26dBをクリアする値を得るに
は、読み出し層3の補償温度が125 ℃以上必要であるこ
とが分かる。
【0090】次いで、読み出し層3のGdFeCoの組
成を変えて、補償温度を変化させるとともに、記録層4
のDyFeCoの組成を変えて、キュリー温度を変化さ
せたときの記録時に必要な外部磁界の変化を調べた結果
について、以下に説明する。
【0091】図1と同様の光磁気ディスクを作製した。
この光磁気ディスクの読み出し層3として、希土類遷移
金属合金薄膜であるGdFeCoが、膜厚50nmで形成さ
れ、このGdFeCoの組成を、室温で希土類金属副格
子磁化が遷移金属副格子磁化よりも優勢となるように
し、且つ、キュリー温度を270 ℃で一定とし、補償温度
が約125 ℃から240 ℃まで変化するように調整した。
【0092】また、上記光磁気ディスクの記録層4とし
て、希土類遷移金属合金薄膜であるDyFeCoが、膜
厚50nmで形成され、このDyFeCoの組成を、室温で
は希土類金属副格子磁化が遷移金属副格子磁化よりも優
勢となるようにし、キュリー温度が170 ℃から400 ℃ま
で変化するように調整した。
【0093】図15は、上記の条件下で、記録ビット長
が0.6 μm で記録する際に必要な外部磁界の値と、記録
層4のキュリー温度 Tc(record) と読み出し層3の補償
温度Tcomp(readout) との差との関係を調べた結果であ
る。
【0094】次に、図1と同様の光磁気ディスクを作製
した。この光磁気ディスクの読み出し層3として、希土
類遷移金属合金薄膜であるGdFeCoが、膜厚50nmで
形成され、このGdFeCoの組成を、室温で希土類金
属副格子磁化が遷移金属副格子磁化よりも優勢となるよ
うにし、且つ、キュリー温度を270 ℃で一定とし、補償
温度が約125 ℃から240 ℃まで変化するように調整し
た。
【0095】また、上記光磁気ディスクの記録層4とし
て、希土類遷移金属合金薄膜であるDyFeCoが、膜
厚50nmで形成され、このDyFeCoの組成を、室温で
は希土類金属副格子磁化が遷移金属副格子磁化よりも優
勢となるようにし、且つ、補償温度は100 ℃とし、キュ
リー温度が170 ℃から400 ℃まで変化するように調整し
た。
【0096】上記の条件下で同様に記録時に必要な外部
磁界(Oe)の値と、記録層4のキュリー温度 Tc(reco
rd) と読み出し層3の補償温度 Tcomp(readout) との差
との関係を調べたところ図15と同様の結果を得た。
【0097】したがって、読み出し層3の補償温度と記
録層4のキュリー温度との差、即ちTc(record)−Tcomp
(readout)=X℃としたとき、このXが、−80≦X<
−75,−75<X<−40,−40<X<−30,−
30<X<−20,−20<X<−15,−15<X<
25,25<X<40,40<X<45,45<X<7
5,75<X≦80となるように調整されていること
で、記録に必要な外部磁界は小さい値で済むが、上記X
の絶対値が80よりも大きくなると、必要な外部磁界は
急激に大きな値となる。このため、より小さな外部磁界
で記録するには、読み出し層3の補償温度と記録層4の
キュリー温度との差が出来るだけ小さくなるように各層
の組成を調整し、それぞれを積層することが必要である
ことが分かる。
【0098】以上のことから、上記の光磁気ディスクで
は、読み出し層3として、フェリ磁性体の希土類遷移金
属非晶質合金であるGdFeCoからなり、その組成
は、室温で希土類金属副格子磁化が遷移金属副格子磁化
より大きく、且つ、補償温度が125℃以上、キュリー
温度が200℃以上になるように設定されるとともに、
上記記録層4として、フェリ磁性体の希土類遷移金属非
晶質合金であるDyFeCoからなり、上記記録層4の
キュリー温度[Tc(record)]と上記読み出し層3の補償温
度[Tcomp(readout)]と、 Tc(record)−Tcomp(readout)=X℃としたとき、 上記Xが、−80≦X<−40,−40<X≦80 とな
るように調整されている。
【0099】これによって、上記構成の光磁気ディスク
では、再生動作時、光ビームによる記録媒体の温度分布
を利用して、その中心近傍である、所定温度以上の温度
を有する領域のみを再生に関与させているので、従来よ
り小さな記録ビットの再生を行うことができ、これによ
って、記録密度を著しく向上させることができる。
【0100】また、温度上昇しない部位、あるいは温度
の低下した部位は面内磁化を示すので、極カー効果を示
さなくなり、記録層4に記録された磁化は読み出し層の
面内磁化によりマスクされて読み出されることがなくな
る。これによって、再生時に生じる雑音の原因である隣
接ビットからの信号が混入するのを回避することができ
るので、記録ビット間隔を狭めることができることに加
えて、隣接トラックからのクロストークを低減すること
ができ、再生信号の品質を向上させることができる。
【0101】さらに、読み出し層3の補償温度と記録層
4のキュリー温度との差の絶対値が80℃以下となるよう
に、読み出し層3と記録層4との組成を調整すること
で、より小さな外部磁界により記録することができる。
これによって、記録に係る電力を小さくすることができ
るので、装置の省電力化を図ることができる。
【0102】尚、上記の読み出し層3のGdFeCoの
組成は、本実施例で採用された値に限定されるものでは
ない。本発明の主旨に沿えば、読み出し層3としては、
室温でほぼ面内磁化を有し、室温以上で面内磁化から垂
直磁化に移行するような組成であれば良い。
【0103】また、希土類遷移金属合金では、希土類金
属と遷移金属との比率を変えることによって、希土類金
属と遷移金属の磁化が釣り合う補償温度が変わる。ま
た、GdFeCoは、この補償温度付近で垂直磁化を示
す材料系であることから、GdとFeCoの比率を変え
て補償温度を変えることによって、面内磁化から垂直磁
化に移行する温度を変えることができる。
【0104】また、記録層4の組成においても本実施例
で採用された値に限定されるものではなく、例えば、T
bFeCo、GdTbFe、GdTbFeCo、GdD
yFeCo等を使用しても良い。
【0105】
【発明の効果】請求項1の発明の磁気光学メモリー素子
は、以上のように、室温で面内磁気異方性が優位な面内
磁化を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位
な垂直磁化に移行する読み出し層と、読み出し層上に形
成され、情報を光磁気記録する記録層とを備え、上記読
み出し層は、フェリ磁性体の希土類遷移金属非晶質合金
からなり、その組成は、室温で希土類金属副格子磁化が
遷移金属副格子磁化より大きく、且つ、補償温度が12
5℃以上、キュリー温度が200℃以上になるように設
定されるとともに、上記記録層は、フェリ磁性体の希土
類遷移金属非晶質合金からなり、その組成は、室温で希
土類金属副格子磁化が遷移金属副格子磁化より大きく、
且つ、補償温度が室温以上となるように設定され、上記
記録層のキュリー温度[Tc(record)]と上記読み出し層の
補償温度[Tcomp(readout)]と、Tc(record)−Tcomp(re
adout)=X℃としたとき、上記Xが、−80≦X<−4
0,−40<X≦80となるように調整されている構成
である。
【0106】これにより、面内磁化から垂直磁化へ、磁
化方向が急峻に移行させることができるので、再生時に
雑音が少なく、より高密度記録が可能な磁気光学メモリ
ー素子を実現できる。また、小さな外部磁界により記録
することができるので、記録に係る電力を小さくするこ
とができ、この結果、装置の省電力化を図ることができ
るという効果を奏する。
【0107】また、請求項2の発明の磁気光学メモリー
素子は、以上のように、室温で面内磁気異方性が優位な
面内磁化を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が
優位な垂直磁化に移行する読み出し層と、読み出し層上
に形成され、情報を光磁気記録する記録層とを備え、上
記読み出し層は、フェリ磁性体の希土類遷移金属非晶質
合金からなり、その組成は、室温で希土類金属副格子磁
化が遷移金属副格子磁化より大きく、且つ、補償温度が
125℃以上、キュリー温度が200℃以上になるよう
に設定されるとともに、上記記録層は、フェリ磁性体の
希土類遷移金属非晶質合金からなり、その組成は、室温
で希土類金属と遷移金属の磁気モーメントが釣り合うよ
うに、もしくは遷移金属副格子磁化が希土類金属副格子
磁化より大きくなるように設定され、上記記録層のキュ
リー温度[Tc(record)]と上記読み出し層の補償温度[Tco
mp(readout)]と、Tc(record)−Tcomp(readout)=X℃
としたとき、上記Xが、−80≦X<−75,−75<
X<−40,−40<X<−30,−30<X<−2
0,−20<X<−15,−15<X<25,25<X
<40,40<X<45,45<X<75,75<X≦
80となるように調整されている構成である。
【0108】これにより、面内磁化から垂直磁化へ、磁
化方向が非常に急峻に移行するので、再生時に雑音が少
なく、より高密度記録が可能な磁気光学メモリー素子を
実現できる。また、小さな外部磁界により記録すること
ができるので、記録に係る電力を小さくすることがで
き、この結果、装置の省電力化を図ることができるとい
う効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すものであり、光磁気デ
ィスクの概略構成図である。
【図2】図1の光磁気ディスクの読み出し層の磁気特性
を示す磁気状態の説明図である。
【図3】図2の室温から温度T1において、読み出し層に
印加される外部印加磁界と極カー回転角との関係を示す
説明図である。
【図4】図2の温度T1から温度T2において、読み出し層
に印加される外部印加磁界と極カー回転角との関係を示
す説明図である。
【図5】図2の温度T2から温度T3において、読み出し層
に印加される外部印加磁界と極カー回転角との関係を示
す説明図である。
【図6】図2の温度T3からキュリー温度Tcにおいて、読
み出し層に印加される外部印加磁界と極カー回転角との
関係を示す説明図である。
【図7】図1の光磁気ディスクの読み出し層の室温での
極カー回転角の外部印加磁界依存性を実測した結果を示
すグラフである。
【図8】図1の光磁気ディスクの読み出し層の120℃
での極カー回転角の外部印加磁界依存性を実測した結果
を示すグラフである。
【図9】図1の光磁気ディスクの再生信号振幅を再生レ
ーザパワーに対してプロットしたグラフである。
【図10】図1の光磁気ディスクの再生信号品質(C/
N)を記録ビット長さに対してプロットしたグラフであ
る。
【図11】図1の光磁気ディスクのクロストークを再生
時のレーザーパワーに対してプロットしたグラフであ
る。
【図12】図1の光磁気ディスクの効果を示すための説
明図である。
【図13】本発明にかかる光磁気ディスクの読み出し層
のキュリー温度とC/Nの値との関係を示すグラフであ
る。
【図14】本発明にかかる光磁気ディスクの読み出し層
の補償温度とクロストーク量との関係を示すグラフであ
る。
【図15】本発明にかかる光磁気ディスクの読み出し層
の補償温度と記録層のキュリー温度との差と外部磁界の
値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板 2 透明誘電体層 3 読み出し層 4 記録層 5 保護膜 6 オーバーコート層 7 光ビーム 8 集光レンズ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 太田 賢司 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−124500(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 11/10 506

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を
    示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直
    磁化に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成さ
    れ、情報を光磁気記録する記録層とを備え、 上記読み出し層は、フェリ磁性体の希土類遷移金属非晶
    質合金からなり、その組成は、室温で希土類金属副格子
    磁化が遷移金属副格子磁化より大きく、且つ、補償温度
    が125℃以上、キュリー温度が200℃以上になるよ
    うに設定されるとともに、上記記録層は、フェリ磁性体
    の希土類遷移金属非晶質合金からなり、その組成は、室
    温で希土類金属副格子磁化が遷移金属副格子磁化より大
    きく、且つ、補償温度が室温以上となるように設定さ
    れ、 上記記録層のキュリー温度[Tc(record)]と上記読み出し
    層の補償温度[Tcomp(readout)]と、 Tc(record)−Tcomp(readout)=X℃としたとき、 上記Xが、−80≦X<−40,−40<X≦80 となるように調整されていることを特徴とする磁気光学
    メモリー素子。
  2. 【請求項2】室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を
    示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直
    磁化に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成さ
    れ、情報を光磁気記録する記録層とを備え、 上記読み出し層は、フェリ磁性体の希土類遷移金属非晶
    質合金からなり、その組成は、室温で希土類金属副格子
    磁化が遷移金属副格子磁化より大きく、且つ、補償温度
    が125℃以上、キュリー温度が200℃以上になるよ
    うに設定されるとともに、上記記録層は、フェリ磁性体
    の希土類遷移金属非晶質合金からなり、その組成は、室
    温で希土類金属と遷移金属の磁気モーメントが釣り合う
    ように、もしくは遷移金属副格子磁化が希土類金属副格
    子磁化より大きくなるように設定され、 上記記録層のキュリー温度[Tc(record)]と上記読み出し
    層の補償温度[Tcomp(readout)]と、 Tc(record)−Tcomp(readout)=X℃としたとき、 上記Xが、−80≦X<−75,−75<X<−40,
    −40<X<−30,−30<X<−20,−20<X
    <−15,−15<X<25,25<X<40,40<
    X<45,45<X<75,75<X≦80 となるように調整されていることを特徴とする磁気光学
    メモリー素子。
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