JP2946487B1 - 高圧放電灯の電極構造およびその製造方法 - Google Patents
高圧放電灯の電極構造およびその製造方法Info
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Abstract
小限に抑え、また、放電灯の点灯動作を安定した状態で
長時間使用でき、陰極の形成処理作業が簡単で、かつ、
電源装置の制御部分も簡素化でき、そして、炭素を処理
する部分も放電灯の寿命に悪影響を及ぼすことがなく、
さらに、陽極側の構成にも浸炭処理を施すことでさらに
安定した点灯動作で長時間の使用が可能な放電灯の電極
構造を提供することを課題とする。 【解決手段】バルブ2中央の膨出する発光管部2a内に
対向して陽極3と陰極6が設置され、高入力を維持して
使用する放電灯において、前記陰極は、高融点金属に電
子放射性物質をドーピングして形成されると共に、放電
側に向かって傾斜面を有するテーパー部6aを備え、前
記テーパー部の先端側に非処理部6Bおよび傾斜面に浸
炭処理を施して浸炭部6cを形成した高圧放電灯1の電
極構造とした。
Description
て使用する高圧放電灯の電極およびその製造方法に係
り、特に、設計が容易で安定して長時間の点灯に耐える
高圧放電灯の電極構造およびその製造方法に関する。
る際には、紫外線を照射する高入力の放電灯が光源とし
て使用されている。この放電灯は、半導体ウエハや液晶
パネル等の露光面積の大型化および、露光パターンの微
細化に対応するため、低入力と高入力とを交互に繰り返
して、高入力時に露光を行うフラッシュ点灯方式を採用
することで対応することが知られている。
細化に対応できるように、大電流を使用すると共に、放
電灯内に封入される水銀封入量を少なくして紫外線出力
中の水銀輝線の半値幅の狭いi線を効率的に放射させる
ようにした構成のショートアーク型水銀放電灯が提案さ
れている。
電灯の構成では、以下のような問題点が存在していた。
すなわち、フラッシュ点灯方式または大電流を使用する
放電灯では、放電時に陰極が受けるダメージが大きく、
陰極の消耗が激しく、その消耗により放電灯の管壁が黒
化する問題点が起こった。さらに、その陰極の消耗によ
る変形により電極間の距離が変わることで、アーク放電
位置が変わってしまい放電灯として使用できなくなっ
た。
び陽極間に放電するアーク強度が大きく変化することに
より露光不良を起こしたり、そのアークの不安定な状態
を制御することが困難であった。さらに、フラッシュ点
灯方式では、アークを安定するように制御する電源装置
は複雑で高価となった。
どの多孔質膜を先端に向かうにしたがって徐々に薄くな
るように被覆して陰極の消耗を抑える方法もドイツ特許
出願第3723271.1号明細書より知られている
が、陰極に処理する作業が特定の部位の作業であり、ま
た被覆物の吸着ガスを放出する工程等を含むために手間
がかかり処理作業が複雑であった。その上、最初の放電
開始の時に、炭化物を被覆した陰極の被覆物の部分から
異常放電する現象も観察され、異常放電が発生すると炭
化物の被覆物が直ちに溶融飛散して放電灯の内側ガラス
面などに付着する不都合が発生した。
布して、陰極に炭化処理部を形成することが特開平4−
137349号公報より知られているが、カーボン粉末
の分散液を陰極表面に塗布した状態で炭化処理を行い陰
極として使用しているため、陰極表面にカーボンが形成
されてしまい、放電灯の点灯時にこのカーボンが飛散し
て悪影響を及ぼした。また陰極の表面に形成されるカー
ボンに不純物(例えば、カリウムや炭素表面の酸化物
等)が存在すると、その不純物が放電灯の寿命を短縮す
ることになった。
案されたもので、大電流で使用しても陰極の消耗および
破損を最小限に抑え、また、放電灯の点灯動作を安定し
た状態で長時間使用でき、陰極の形成処理作業が簡単
で、かつ、電源装置の制御部分も簡素化でき、そして、
炭素を処理する部分も放電灯の寿命に悪影響を及ぼすこ
とがなく、さらに、陽極側の構成にも浸炭処理を施すこ
とでさらに安定した点灯動作で長時間の使用が可能な放
電灯の電極構造を提供することを目的とする。
め、この発明は、中央が膨出する発光管部を有するバル
ブと、前記発光管部内に対向して設置された陽極および
陰極とからなり、高入力を維持して使用する放電灯の電
極の構造において、前記陰極は高融点金属に電子放射性
物質をドーピングして形成されると共に、放電側に向か
って傾斜面を有するテーパー部を備え、前記テーパー部
の傾斜面には、浸炭処理を施して浸炭部を形成し、前記
浸炭部に連続してそのテーパー部の先端に非処理部を形
成し、前記浸炭部は、電極の金属表面に表面脱炭処理す
ることで形成した脱炭部を介して金属表面から内部に入
り込んだ位置に形成した高圧放電灯の電極構造として構
成した。
ルブと、前記発光管部内に対向して設置された陽極およ
び陰極とからなり、高入力を維持して使用する放電灯の
電極の構造において、前記陰極は高融点金属に電子放射
性物質をドーピングして形成されると共に、放電側に向
かって傾斜面を有するテーパー部を備え、前記テーパー
部の傾斜面には、浸炭処理を施して浸炭部を形成し、前
記浸炭部に連続してそのテーパー部の先端に非処理部を
形成し、前記浸炭部は、電極の金属表面から一定深さま
で形成した脱炭部を介して形成した高圧放電灯の電極構
造として構成した。
続する円柱部とから構成され、前記テーパー部から円柱
部の所定位置まで浸炭処理を施して浸炭部を形成する構
成としても良い。
を備え、前記非処理部から連続する位置に浸炭処理を施
した浸炭部を形成する構成にすると都合が良い。
て形成することや、また、電極がタングステンで形成さ
れている場合に、浸炭部をタングステンカーバイド(W
2 C)で形成する構成にすると都合が良い。
る発光管部を有するバルブと、この発光管部内に対向し
て設置された陽極および陰極とからなり、高入力を維持
して使用する放電灯の電極の製造方法において、放電灯
の陰極あるいは陰極および陽極に焼結媒質に黒鉛を混入
した塗布媒体を塗布する処理部を形成すると共に、前記
処理部に連続する電極の先端に非処理部を形成して前記
処理部を乾燥させる第1工程と、真空中で前記塗布媒体
に対応してその塗布媒体の不純物を除去するための適正
温度で加熱して不純物を塗布媒体から除去する第2工程
と、前記塗布媒体に対応して焼結できる焼結温度で、か
つ不活性ガス中で加熱する第3工程と、前記電極に焼結
した塗布媒体を陰極あるいは陰極および陽極の両方の電
極の金属表面から剥離して除去する第4工程と、前記塗
布媒体が剥離除去された電極を真空中で、形成される浸
炭部の所望深さに対応する浸炭処理温度で加熱する第5
工程とから構成した。
剥離除去された電極を真空中で、形成される浸炭部の所
望深さに対応する浸炭処理温度で加熱することで、電極
の金属表面から一定深さまで炭素を取り除く脱炭処理を
行い、かつ、その脱炭処理により形成された脱炭部を介
して浸炭部を形成する構成としても良い。
図面に基づいて説明する。図1(a)は、高圧放電灯の
全体の構成を示す正面図、(b)は、高圧放電灯の電極
部分を拡大して一部断面にした正面図、図2は、他の形
態を示す高圧放電灯の電極部分を拡大した正面図、図3
は、他の形態を示す高圧放電灯の陰極の構成を示す原理
図、図4(a)(b)は、他の形態を示す高圧放電灯の
全体の構成を示す正面図および、電極部分を拡大して一
部断面にした正面図、図5は、他の形態を示す陰極の構
成を示す原理図、図6は、放電灯の変動率を説明するグ
ラフ図である。
型の高圧放電灯1は、バルブ2と、このバルブ2内に対
向して配置された陽極3および陰極6と、前記バルブ2
の両端側に設けた口金8、9などから構成されている。
本発明の電極構造において適用可能な高圧放電灯は一般
に、1000W〜7000Wの消費電力を使用する高圧
放電灯であり、この実施態様においては約1750Wの
消費電力の高圧放電灯を例示した。
料、例えば石英ガラスで形成されその中央部が膨出する
ように形成された発光管部2aと、この発光管部2aの
両側に円管状に延びる封止管部2b,2bとから構成さ
れている。そして、前記バルブ2内には、所定量の水銀
が封入されると共に、常温で所定気圧の不活性ガスが封
入されている。また、前記バルブ2の発光管部2a内に
は、前記陽極3および陰極6が所定距離離間した状態で
対向して配置されている。
高融点金属、代表的にはタングステンで形成され、放電
側に向かって先細になっている円錐状に形成されたテー
パー部6aと、このテーパー部6aに連続する円柱部6
bと、前記テーパー部6aの先端を非処理部6Bとし、
この非処理部6Bに連続する部分に後述の通りに浸炭処
理を施して形成した浸炭部6cとから構成されている。
そして、前記円柱部6bには、支持部7を介して金属箔
5が接続されている。前記金属箔5は、代表的にはモリ
ブデン箔である。
して、例えば二酸化トリウムなどがあらかじめドーピン
グされている。また、前記陰極6の浸炭部6cは、その
テーパー部6aの直径の大きさに係わりなく、陰極表面
から陰極内部に、ほぼ一定の濃度分布で一定の厚みで形
成され、また、その浸炭部6cの深さが、陰極表面から
数ミクロンから数10ミクロンの範囲で陰極内部に向か
って形成されている。なお、前記浸炭部6cは、陰極6
がタングステンであれば、タングステンカーバイド(W
2 C)として構成される。
される電力量によりその非処理部6Bの形成長さが異な
り、電極間に発生するアーク放電による温度上昇が激し
い部分を示している。
の金属表面または金属内部に対して炭素量を増加させる
処理であって、従来技術に記載された電極の表面に単に
炭化物層被覆を設ける炭化処理と区別される。また、こ
れら陰極内部の浸炭部は、その形成される陰極表面から
の深さ、寸法については、陰極表面の不純物の付着防止
できる深さ、寸法であれば特に限定されるものではな
い。
されるものではないが、例えば、つぎのような方法が挙
げられる。 第1工程(塗布媒体の塗布及び乾燥工程) アルカリ系水硝子や、セラミックなどの焼結媒質中に黒
鉛を混入した塗布媒体を、テーパー部6aの非処理部6
Bを除く部分(処理部)に塗布した後、自然乾燥させ
る。焼結媒質として水溶液中に重量比で約10%の珪酸
カリウムが混在する水硝子を使用するのが好ましいが、
セラミック等の無機質を焼結媒質として使用してもよ
い。また、珪酸カリウムは、後述の焼結処理の際に焼結
された固形物を剥離・除去するのに効果的である。
の塗布媒体の不純物が除去できる適正温度、(例えば前
記の約10重量%の珪酸カリウムを含む水硝子を使用す
る場合には脱ガス処理として800℃前後の温度)で1
5分程度真空中、例えば5×10-5Torrの減圧下で
加熱する。本発明における加熱条件、例えば加熱温度、
加熱時間、真空度は、水硝子中の珪酸カリウムが含まれ
る場合にはその濃度、使用される焼結媒質およびその濃
度等に依存するものであり、これらの塗布媒体に適正な
条件を用いて予備加熱処理を行い不純物を除去する。一
般には、600℃〜1000℃の温度で5〜30分間予
備加熱処理することが好ましい。
ば1500〜1700℃の温度で、不活性ガス、例えば
アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)中で15〜60分
焼結処理を行う。上記の約10重量%の珪酸カリウムを
含む水硝子からなる塗布媒体の場合には約1600℃で
約30分程度加熱を行うことが好ましい。なお、この焼
結処理においても、焼結温度および焼結時間等の焼結条
件は、使用する塗布媒体に依存し、その塗布媒体に適す
る焼結温度および焼結時間で焼結処理を行う。
た塗布媒体の被膜が完全に焼結して固形物となる。この
固形物を例えば、ピンセット等を用いて陰極6から完全
に剥離・除去する。この操作の際に陰極6の内部に炭素
がわずかに浸炭する。
で加熱する。一般にこの浸炭処理は1800〜2300
℃の温度で15〜60分、1×10-4Torr以下減圧
条件下で行う。例えば前記の約1900℃で真空中で、
例えば5×10 -5Torrの減圧下で30分程度の浸炭
処理を行うのが好ましい。この浸炭処理により、炭素が
確実に陰極6の内部に拡散して浸炭して、均等な濃度分
布の浸炭部6cを形成し、または、陰極6の表面から内
部に約数ミクロン入った位置に浸炭部6cを形成すると
共に、表面の塗布媒体である水硝子を完全に除去するこ
とができる。
び時間により浸炭部6cの濃度分布の厚みおよび深さを
制御できるため、その浸炭部6cは所望の濃度を所望の
深さに対してほぼ一定に制御でき、安定した浸炭処理が
容易に行うことが可能となる。
する陰極6を使用して高圧放電灯1を1000W以上の
大電流、一般には1000Wないし7000Wの大電流
で使用すると放電により高温状態になった陰極6の内部
で生成したトリウム原子が、粒界に沿った拡散により表
面に単原子層を形成し、この単原子層が電気2重層を形
成して、陰極表面の不純物による高圧放電灯の寿命低下
をまねくことなく、陰極6表面の仕事関数を低下させる
ことができる。そして、浸炭部6cの位置では二酸化ト
リウムの還元が促進されると共に、トリウムの蒸発が抑
制される。
ー部6aの位置に設けた浸炭部6cと、円柱部6bの位
置に連続して形成した浸炭部6dを備える構成とすると
都合が良い。このように円柱部6bに浸炭部6dを備え
ることで、安定度が向上すると共に、消耗の損失を最小
限に抑えて点灯を行うことができる。
6cは、先端側に向かうに従ってその炭素の濃度分布状
態が粗になるように構成しても良い。そのため、浸炭部
6cは、非処理部6Bとの境界部分が陰極内部で渾然一
体となるため、強度的にも優れ、電気抵抗や熱伝導率の
値も向上するためさらに安定した使用を可能とするもの
である。
するためには、濃度の異なる黒鉛を混入した焼結媒質で
あるアルカリ系水硝子を塗布媒体として陰極6の先端を
除いた部分に塗布して、後は上記した方法により焼結作
業を繰り返し行うことで形成することができる。なお、
浸炭部6cの炭素の濃度分布を変える形態は、その浸炭
部6cが深さ方向に向かうにしたがって徐々に炭素の濃
度分布を粗になるように構成することや、金属表面側か
ら炭素の濃度分布が粗、密、粗となるように構成して構
わない。
て図4を参照して説明する。高圧放電灯10は、消費電
力が5キロワットのショートアーク型の水銀蒸気放電灯
を示すもので、この高圧放電灯10は、石英ガラスなど
の紫外線透過部材で形成され、かつ中央部に膨出する発
光管部12を形成すると共に、この発光管部12の両端
に封止管部16,16を一体に形成したバルブ17と、
前記発光管部12内に対向配置した陽極13および陰極
11等によって構成されている。
8,18が設けてあって、この口金18,18と各電極
11,13の間は板厚が0.02mm程度の金属箔1
5、15としてモリブデン箔によって接続されている。
なお、バルブ17の内部には、水銀と、不活性ガスとし
て作用するキセノンガスまたはアルゴンガスが封入され
ている。
て、図4(b)に示すように先端部の平坦な端面19の
中心部に球面状の凹部20が設けられている。前記凹部
20は例えば、直径は10mm、凹部の深さ2mmに形
成されている。また、陽極13と陰極11間の距離は4
mmに構成されている。
浸炭処理された浸炭部13aを形成し、その浸炭部13
aの濃度分布が均等に形成されている。さらに、前記浸
炭部13aから連続する陽極13の先端側を非処理部1
3Bとしている。また、前記陰極11は、そのテーパー
部11aの非処理部11Bから連続する部分に浸炭部1
1cを形成している。前記浸炭部11c、13aの形成
方法は、図1と同様である。
の形成位置は、電極の金属表面から内部側に連続して形
成する構成としているが、図5で示すように、浸炭部を
設ける位置は、金属表面から内側に入り込んだ位置に形
成する構成としても良い。すなわち、図5で示すよう
に、テーパー部26aの金属表面26Aから内側に距離
D入り込んだ位置に、浸炭部26cを形成し、陰極26
の先端に非処理部26Bを形成している。前記浸炭部2
6cは、浸炭処理を施して陰極26のテーパー部26a
の傾斜面に沿って形成され、金属表面26Aから内側に
距離D(例えば、3μm程度)入り込んだ内部位置に形
成するように構成されている。したがって、電極の金属
表面26Aの位置には浸炭部26cは露出していない状
態となっている。
前記した浸炭処理工程の加熱時間を所定時間より長く
し、かつ高温で処理することで形成することができるも
のであり(例えば、約2000℃で60分間)、他の条
件は変わらない。なお、図5では、陰極26のテーパー
部26aの位置に浸炭部26cを形成した例で示した
が、円柱部26b側で金属表面から内側に入り込んだ位
置に浸炭部(図示せず)が形成されることや、陰極およ
び陽極の両方の位置で金属表面から入り込んだ位置に浸
炭部(図示せず)を形成する構成としても構わない。
は、前記浸炭部26cが、その電極の金属表面から一定
深さまで表面脱炭処理により形成された脱炭部26eを
介して形成され、かつ、電極の材質がタングステンであ
る場合に、タングステンカーバイド(W2 C)の浸炭部
26cを形成する構成としても良い。前記脱炭部26e
は、図5で示すように、電極の金属表面から距離D(好
ましくは2μm〜5μmの範囲)の間に形成される。前
記脱炭部26eは、タングステン(W)から炭素(C)
を除去した表面脱炭処理により形成される構成としてい
る。そして、前記表面脱炭処理は、前記した浸炭処理工
程の加熱時間を所定時間より長くすることと、高温で処
理することで、浸炭部26であるタングステンカーバイ
ド(W2C)を構成する炭素(C)の存在位置が電極の
金属表面から内部に距離D入り込んだ位置に浸透し、距
離Dの範囲内では炭素(C)が存在しない状態となるこ
とで行うことが可能となる。なお、浸炭部26の濃度分
布は、均等、不均等どちらに形成しても構わない。
される電力量によりその非処理部26Bの形成長さが異
なり、電極間で発生するアーク放電に伴う電極の温度上
昇が著しい部分を示している(ちなみに、この場合は約
4mmである)。
が、本発明は実施例に限定されるものではない。
テン98重量%と二酸化トリウム2重量%から成る円柱
の先端部を円錐状に切削加工して陰極を作製した。この
陰極の先端から約3mm、塗布寸法約8mmの部分に約
10重量%の珪酸カリウムを含有するカーボン粉末の水
分散液を塗布し、風乾した。風乾後、塗布部分を5×1
0-5Torrの真空度で800℃で15分間予備加熱処
理を行い、カーボン粉末の水分散液の真空脱ガスを行
い、Arガス雰囲気下で約1600℃で30分間の焼結
処理を行った。この操作により陰極に被覆した被覆物が
焼結固化した。この固形物をピンセットにより完全に剥
離除去した。この際に炭素が陰極のトリウム−タングス
テン表面からわずかに浸炭しているのが観察される。さ
らに、5×10-5Torrの真空度で約1900℃で約
30分程度、浸炭処理を行って陰極表面から内部へ約3
ミクロンの位置から炭素を確実に浸炭処理させて浸炭部
を形成させた実施例1の陰極を作製した。
のまま比較例1の陰極として使用した。上記の未処理の
陰極にドイツ特許出願第3723271.1号に記載の
通りの処理を行い比較例2の陰極とした。上記の未処理
の電極に特開平4−137349号公報に記載の通りの
処理を行い比較例3の陰極とした。
については、純タングステンの陽極を使用した。また、
実施例2では上記の純タングステンの陽極に実施例1の
陰極と同様に浸炭処理を行った陽極を使用した。
製した実施例1及び2及び比較例1〜3の陰極及び陽極
を図1に示す高圧放電灯内に対向して配置し、以下の通
りに動作状態を調査した。放電灯に1750Wの略一定
の電力を連続して入力して、使用寿命、図6に示す通り
下記式(1)で定義される平均アーク強度の変動率、ま
た、初期の紫外線照度を100%としたときの水平照度
維持率や、あるいは紫外線配光積算値の紫外線照度維持
率等について調査した。この際の電流は約70Aであっ
た。結果を表1に示す。
ついては、その基準などを以下に説明する。すなわち、
高圧放電灯から照射される光は、アーク強度の強弱に比
例し、またこの光は常にある程度のゆらぎが含まれてい
る。このゆらぎの具合は図6に示す通り変化、変動して
いる。このアーク強度の平均値を「平均アーク強度」と
して、平均アーク強度の変動率を次式に従って求めた。 平均アーク強度の変動率=b/a×100[%] (1) ただし、aは平均アーク強度を示し、bはアーク強度の
最大変動幅を示す。この平均アーク強度の変動率は、数
値が少ないほど放電灯が安定して動作していることを示
す指標である。
維持率および紫外線配光積算値の紫外線照度維持率につ
いて以下に説明する。一般にランプは、その使用時間が
長くなるに従って暗くなるが、この暗くなる程度または
具合を定量化する方法として初期の紫外線照度に対する
水平照度維持率および紫外線配光積算値の紫外線照度維
持率が用いられている。
は、ランプ単体の照度の劣化を示す指標であり、水平方
向の照度が未使用のランプと比較してどの程度維持して
いるかを計測した照度の維持率を意味し、数値が100
%に近いほど良好である。
だけでなく全方位に放射されている。この全方位に放射
される照度の維持率を配光積算値の照度維持率といい、
配光積算値の照度維持率は、例えば、楕円回転体形反射
鏡の第1 焦点上へ高圧放電灯の発光点を配置した場合す
べての放射された光を集めることができ(集光または配
光積算という)、この第2焦点上へ集光された照度維持
率を意味する。この実施例においては紫外線の波長を計
測し紫外線配光積算値の紫外線照度維持率を示した。こ
れは、数値が100%に近いほど良好であることを意味
している。
炭処理を施した陰極を使用した高圧放電灯は、未処理の
陰極や従来技術に記載された方法で処理された陰極を使
用した場合と比較して使用寿命が格段に優れていること
がわかった。また本発明による処理を行った電極は、未
処理の陰極や従来技術により処理された陰極と比較して
水平照度維持率が格段に高く、使用寿命期間中には安定
した照度で点灯することが可能であることがわかる。特
に、陰極と陽極との両方に本発明による浸炭処理をした
場合その効果が際立っている。
トのショートアーク型放電灯の電極を示す。直径12m
m、長さ100mmのタングステン98重量%と二酸化
トリウム2重量%から成る円柱の先端部を円錐状に切削
加工した陰極を使用する以外は実施例1〜2および比較
例1〜3と同様にして陰極を処理した。また、陽極とし
て凹部の直径10mm、凹部の深さ2mmの純タングス
テンを使用し、実施例3および比較例4〜6は未処理の
まま使用し、実施例4においては、実施例2と同様に浸
炭処理を行ったものを使用した。
及び比較例4〜6の陰極及び陽極を図4に示す高圧放電
灯内に4mmの距離で対向して配置し、約40mg/c
cの水銀を封入し、放電電流を100Aとして、実施例
1〜2および比較例1〜3と同様にして動作状態を調査
したところ、実施例1〜2および比較例1〜3と同様な
結果が得られた。ただし、陰極のみ本発明による浸炭処
理をおこなった場合(実施例3)、陰極と陽極との両方
に本発明による浸炭処理をおこなった場合(実施例
4)、未処理の場合(比較例4)、上記ドイツ特許出願
に記載による方法による処理を行った場合(比較例
5)、上記日本特許公報に記載による方法による処理を
行った場合(比較例6)の使用寿命は、各々750時間
(実施例3)、1,000時間(実施例4)、250時
間(比較例4)、400時間(比較例5)、400時間
(比較例6)であった。
50ワットのショートアーク型放電灯の電極を示す。直
径12mm、長さ100mmのタングステン98重量%
と二酸化トリウム2重量%から成る円柱の先端部を円錐
状に切削加工した陰極を使用し、図5で示すように、電
極の金属表面から深さ方向に距離D(3μm)の脱炭部
26eを介してタングステンカーバイド(W2 C)の浸
炭部26cを形成した。そして、前記浸炭部26cの形
成方法は、前記した浸炭処理工程の加熱時間を所定時間
より長くし、かつ高温で処理することで形成することが
できるものであり(例えば、約2000℃で60分
間)、他の条件は実施例1〜2と同様にして処理した。
また、比較例としては、それぞれのショートアーク型放
電灯を表1で示す、比較例1〜3と同様にして処理し
た。
よび比較例7〜9の陰極及び陽極を図1(a)に示す構
成として、高圧放電灯内に4mmの距離で対向して配置
し、約40mg/ccの水銀を封入し、放電電流を10
0Aとして、実施例1〜2および比較例1〜3と同様に
して動作状態を調査したところ、本発明による浸炭処理
を施した陰極を使用した高圧放電灯は、未処理の陰極や
従来技術に記載された方法で処理された陰極を使用した
場合と比較して使用寿命が格段に優れていることがわか
った。また本発明による処理を行った電極は、未処理の
陰極や従来技術により処理された陰極と比較して水平照
度維持率および紫外線照度維持率が格段に高く、使用寿
命期間中には安定した照度で点灯することが可能である
ことがわかる。特に、陰極と陽極との両方に本発明によ
る浸炭処理をした場合その効果が際立っている。さら
に、陰極または陰極および陽極の構成(図面では陰極の
み示す)が、その電極の金属表面から脱炭部26eを介
して内部に入り込んだ位置にタングステンカーバイド
(W2 C)の浸炭部26cを形成する構成とすること
で、電極材料としての金属表面の不純物の残留防止を確
実にするという利点があるなど、表2で示す結果が得ら
れた。
による浸炭および表面脱炭処理を施した陰極を使用した
高圧放電灯は、使用寿命が格段に優れており、また使用
寿命中には安定した照度で点灯することが可能であるこ
とがわかる。特に、陰極と陽極との両方に本発明による
浸炭および表面脱炭処理をした場合その効果が際立って
いることが分かる。
効果を発揮する。高圧放電灯の陰極の先端に非処理部
と、この非処理部から連続する位置に、脱炭部を介して
浸炭処理を施したことにより、大電流を維持してその放
電灯を点灯させると、陰極の消耗や破損を最小限に防止
できると共に、安定した変動率(アーク安定度)で長時
間にわたり使用することが可能となる。
極のテーパー部および円柱部に設けることでさらに安定
した変動率で長時間にわたり使用することが可能とな
る。そして、陽極側にも浸炭処理を施すことで、大電流
の動作においても安定した変動率で長時間使用すること
がさらに有効となる。
浸炭部は、電極の金属表面から連続あるいは距離を開け
て形成される濃度分布を一定あるいは変えてほぼ一定の
厚みおよび深さで形成することが簡単にできるため、浸
炭処理の制御および調整作業が容易に行うことが可能で
ある。さらに、浸炭部の濃度分布を変えた場合は、非処
理部との境界線が渾然一体となるため、強度的にも優
れ、電気抵抗や熱伝導率の値も向上するため安定した使
用を可能とする。
る浸炭部は、その電極の金属表面から内部に入り込んだ
位置に形成する構成とすることで、電極材料としての金
属表面の不純物の残留防止を確実にするという利点があ
る。そして、電極に形成された浸炭部であるタングステ
ンカーバイド(W2 C)は、脱炭部を介してその電極の
金属表面から内部に入り込んだ位置に形成されること
で、放電灯内面の黒化を最小限で抑制できると共に、長
時間の安定した点灯状態を実現することが可能となる。
部を形成する場合、塗布溶媒を使用し、一旦焼結させた
後に、その焼結した塗布溶媒を完全に剥離・除去して浸
炭処理あるいは、浸炭処理ならびに表面脱炭処理を行う
ことで、電極表面の不純物による電極の消耗や破損を最
小限に抑え、かつ、変動率を少なくした安定した状態で
長時間使用することができる高圧放電灯の製造を可能と
する。
を示す放電灯の正面図および電極を拡大して一部断面に
した正面図である。
大して一部断面にした正面図である。
示す原理図である。
示す放電灯の正面図および電極を拡大して一部断面にし
た正面図である。
示す原理図である。
フ図である。
Claims (8)
- 【請求項1】中央が膨出する発光管部を有するバルブ
と、前記発光管部内に対向して設置された陽極および陰
極とからなり、高入力を維持して使用する放電灯の電極
の構造において、 前記陰極は高融点金属に電子放射性物質をドーピングし
て形成されると共に、放電側に向かって傾斜面を有する
テーパー部を備え、前記テーパー部の傾斜面には、浸炭
処理を施して浸炭部を形成し、前記浸炭部に連続してそ
のテーパー部の先端に非処理部を形成し、前記浸炭部は、電極の金属表面に表面脱炭処理すること
で形成した脱炭部を介して金属表面から内部に入り込ん
だ位置に形成し たことを特徴とする高圧放電灯の電極構
造。 - 【請求項2】 中央が膨出する発光管部を有するバルブ
と、前記発光管部内に対向して設置された陽極および陰
極とからなり、高入力を維持して使用する放電灯の電極
の構造において、 前記陰極は高融点金属に電子放射性物質をドーピングし
て形成されると共に、放電側に向かって傾斜面を有する
テーパー部を備え、前記テーパー部の傾斜面には、浸炭
処理を施して浸炭部を形成し、前記浸炭部に連続してそ
のテーパー部の先端に非処理部を形成し、 前記浸炭部は、電極の金属表面から一定深さまで形成し
た脱炭部を介して形成したことを特徴とする高圧放電灯
の電極構造。 - 【請求項3】 前記陰極は、前記テーパー部に連続する円
柱部とから構成され、前記テーパー部から円柱部の所定
位置まで浸炭処理を施して浸炭部を形成した請求項1ま
たは2に記載の高圧放電灯の電極構造。 - 【請求項4】 前記陽極は、その先端に非処理部を備え、
前記非処理部から連続する位置に浸炭処理を施した浸炭
部を形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいず
れか 一項に記載の高圧放電灯の電極構造。 - 【請求項5】 前記浸炭部は、その濃度分布を変えて形成
した請求項1ないし4のいずれか一項に記載の高圧放電
灯の電極構造。 - 【請求項6】 前記浸炭部は、電極がタングステンである
場合において、タングステンカーバイド(W2 C)であ
る請求項1ないし5のいずれか一項に記載の高圧放電灯
の電極構造。 - 【請求項7】 中央が膨出する発光管部を有するバルブ
と、この発光管部内に対向して設置された陽極および陰
極とからなり、高入力を維持して使用する放電灯の電極
の製造方法において、 放電灯の陰極あるいは陰極および陽極に、焼結媒質に黒
鉛を混入した塗布媒体を塗布する処理部を形成すると共
に、前記処理部に連続する電極の先端に非処理部を形成
して前記処理部を乾燥させる第1工程と、 真空中で前記塗布媒体に対応してその塗布媒体の不純物
を除去するための適正温度で加熱して不純物を塗布媒体
から除去する第2工程と、 前記塗布媒体に対応して焼結できる焼結温度で、かつ不
活性ガス中で加熱する第3工程と、 前記電極に焼結した塗布媒体を陰極あるいは陰極および
陽極の両方の電極の金属表面から剥離して除去する第4
工程と、 前記塗布媒体が剥離除去された電極を真空中で、形成さ
れる浸炭部の所望深さに対応する浸炭処理温度で加熱す
る第5工程とからなることを特徴とする高圧放電灯の電
極製造方法。 - 【請求項8】 前記第5工程は、前記塗布媒体が剥離除去
された電極を真空中で、形成される浸炭部の所望深さに
対応する浸炭処理温度で加熱することで、電極の金属表
面から一定深さまで炭素を取り除く表面脱炭処理を行
い、かつ、その表面脱炭処理により形成された脱炭部を
介して浸炭部を形成することを特徴とする請求項7に記
載の高圧放電灯の電極製造方法。
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