JP2944991B1

JP2944991B1 - カップ部を有する衣類

Info

Publication number: JP2944991B1
Application number: JP12830198A
Authority: JP
Inventors: 克子堀井
Original assignee: Wacoal Corp
Current assignee: Wacoal Corp
Priority date: 1998-04-21
Filing date: 1998-04-21
Publication date: 1999-09-06
Anticipated expiration: 2018-04-21
Also published as: JPH11302905A

Abstract

【要約】【解決手段】乳房の周辺部に沿う形状を有するワイヤ
ーであって、最下点が乳房の幅の１／２の位置より外側
縁側にある略涙滴形状であるワイヤー、および該ワイヤ
ーをカップ部周縁に配設してなるカップ部を有する衣
類。【効果】ワイヤーによるバストの補正機能を有しつ
つ、呼吸時のアンダーバスト部における体幹部前中心付
近の変動を妨げる加圧を軽減し、圧迫感が減少するた
め、楽に長時間着用できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ブラジャー等のカ
ップ部を有する衣類において用いられるワイヤー、特に
胸部への圧迫の少ないワイヤーに関する。

【０００２】

【従来の技術】ブラジャー等のカップ部を有する衣類に
は、バストの補正を目的として、乳房の周辺部に沿う略
Ｕ字状の形状を有するワイヤーを配設したものが多い。
従来のカップ部を有する衣類は、若年を対象としたもの
が多く、図２に示すように、ワイヤーの略Ｕ字状形状の
最下点が乳房の幅のほぼ１／２の位置またはその内縁部
側にあり、カップ部の下辺部がほぼ半円形状となってい
た（ｂ’／ａ’＝１〜１．５）。若年者の場合、呼吸時
のアンダーバスト部位においては、体幹は、脇部におい
て外側に膨らみ、２つの乳房間においては体幹の膨らみ
が少ない。従って、上記の様な形状のワイヤーであって
も、アンダーバスト部における呼吸時の胸部前面での圧
迫が苦痛であるなどの問題が生じない。

【０００３】一方、中高年者の場合、円背になったり、
肋骨の配置が変化する等の体型変化に伴って、呼吸運動
による体幹の変動が下部胸部から腹部にかけて大きくな
るため、呼吸時の体幹部変化がアンダーバスト部では前
中心が大きく、しかも、骨格の変化（円背や肋骨の起き
上がりなど）や脂肪の沈着により、ブラジャー等のカッ
プ部を有する衣類による胸部への圧迫が大きくなって、
特にアンダーバスト付近の締めつけ感が大きくなり、息
苦しくなる。しかし、従来のワイヤーでは中高年者の乳
房の形状にあっていないため補正効果が小さく、また、
前中心部が伸度の少ない素材の場合、固定された状態と
なり、呼吸時の衣類の伸縮は、伸縮性を有する素材から
なるバック部のみで行われるため、体幹部の変動と衣類
の形状変化が対応しない。さらに、中高年者はバージス
ラインの形状も若年時の半円形から、脇部方向へ流れた
涙滴形状へと変化するため、半円形のワイヤーでは乳房
形状にフィットしにくい。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解決し、バストの補正機能を有しつつ、呼吸時のアン
ダーバスト部における体幹部前中心付近の変動を妨げ
ず、圧迫感の軽減された構造を有するワイヤーおよびそ
れを用いたカップ部を有する衣類を提供することを目的
とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、乳房の周辺部
に沿う形状を有するワイヤーであって、最下点が乳房の
幅の１／２の位置より外側縁側にある略涙滴形状である
ワイヤー、および該ワイヤーをカップ部周縁に配設して
なるカップ部を有する衣類を提供する。

【０００６】本発明において、ワイヤーの「最下点」と
は、図１に示すように、ワイヤー両端部１０、１１を直
線Ｘ上にのるように置いた時、直線Ｘからの距離ｘが最
大となる部分を指す。

【０００７】本発明において、「略涙滴形状」とは、図
１に示されるような、半円形を斜め下方向へ若干引き伸
ばした様な形状を指す。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下に、図面を用いて本発明をさ
らに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるも
のではない。図１は、本発明の実施形態の一例であるワ
イヤーの形状を示す図である。図１に示されるように、
本発明のワイヤー１は、最下点Ａが乳房の幅の１／２の
位置Ｐより外側縁側にある略涙滴形状であること、即ち
乳房の最内側縁部分を体表面の上下方向に沿って通る直
線Ｑから略涙滴形状のワイヤー最下点Ａまでの距離ａ
と、乳房の最外側縁部分を体表面の上下方向に沿って通
る直線Ｒから略涙滴形状のワイヤー最下点Ａまでの距離
ｂとの比ｂ／ａが、１より小さいことを特徴とする。

【０００９】衣類の着用時には、ワイヤーは、てこの原
理により、内側縁端部と、外側縁端部のそれぞれが支点
となって、最下点Ａを作用点として乳房を保持し、補正
する。図３に図１のワイヤーと図２の従来のワイヤーと
の作用の比較を示す（（ａ）は図１のワイヤー、（ｂ）
は図２の従来のワイヤー）。本発明のワイヤーは、図３
（ａ）に示すように最下点Ａが乳房の幅の１／２の位置
より外側縁側にあるため、該ワイヤーを配設した衣類の
着用時にアンダーバスト部における体幹部前中心付近に
左右のワイヤー間の距離が広く、また、保持力の集中す
る最下点Ａ（アンダーバスト点）が体幹部前中心より遠
く、呼吸時に体幹部前中心付近の変動を妨げない。ま
た、最下点Ａが外側縁側によっているため、ワイヤーの
外側縁側は変形しにくく、内側縁側は変形しやすい。従
って、体幹部の変動につれて内側縁部が変形しやすく、
変動を妨げない上、矢印Ｔで示されるように乳房を保持
する力が、主に脇部方向から乳房中心部に向かって作用
するようになり、主としてカップ部の脇側からカップ部
を支え、アンダーバスト部前部が圧迫されにくい。さら
に、バストは図中矢印Ｓの方向に流れようとするが、乳
房も均一に乳房中心部に向かって押し上げられる（矢印
Ｔ方向）ので、乳房の造形力に優れ、着用感も良い。

【００１０】これに対し、従来のワイヤーは、図３
（ｂ）に示すように、ワイヤーを配設した衣類の着用時
にアンダーバスト部前部の左右のワイヤー間の距離が狭
い。また、矢印Ｔで示されるように、乳房を保持する力
が乳房下辺部方向から乳房中心部に向かって押しあげる
ように作用するようになり、主としてカップ部の下側全
体からカップ部を支える。さらに、バストは図中矢印Ｓ
の方向に流れようとするが、ワイヤーが乳房を持ちあげ
ようとする方向は、矢印Ｔ方向なので、もともと外側へ
広がった形状のバージスライン（図中点線で示される）
である中高年者の場合、特に乳房の造形力が弱くなる。

【００１１】本発明のワイヤーにおいて、上記距離ａ距
離ｂとの比ｂ／ａは、１より小さい範囲内であれば、所
望の効果が発現されるよう適宜設定すれよいが、好まし
くは約ｂ／ａ＝２／５〜４／５程度であるのがよい。図
８にｂ／ａ＝２／５〜４／５の範囲を示す。（ｂ₁／ａ₁
＝２／５、ｂ₂／ａ₂＝４／５）

【００１２】本発明のワイヤーを形成する素材として
は、スチール、Ｎｉ−Ｔｉ合金等の形状記憶合金、ステ
ンレス、アモルファス金属等の従来より使用されている
金属材料や、合成樹脂、繊維強化合成樹脂等が挙げられ
るが、特に限定はなく、本発明の作用を阻害しない範囲
で、衣類の用途、所望の補正力、デザイン等に応じて適
宜選択すれば良い。ワイヤーは、プラスチックチューブ
等で覆われていてもよく、素材が金属材料の場合には、
適宜樹脂コーティング等表面処理がされていてもよい。
さらにワイヤーの断面形状も、従来から使用されている
丸断面、板状断面、方形断面、楕円上断面等が挙げられ
る。

【００１３】本発明のワイヤーを、カップ部を有する衣
類のカップ部周縁に配設することにより、バストの補正
機能を有しつつ、呼吸時のアンダーバスト部における体
幹部前中心付近の変動を妨げず、圧迫感の軽減された衣
類を得ることができる。当然のことながら、上記カップ
部の下辺部形状は、配設する本発明のワイヤーと同一の
形状である。

【００１４】本発明のカップ部を有する衣類は、ワイヤ
ーの形状（カップ部下辺部形状）を上記特定の形状とす
る他は、その形状および構成は本発明の作用を阻害しな
い範囲で特に限定されないが、さらにアンダーバスト部
前部に、ワイヤー以外の部材によっても圧迫が加わらな
い構造とするのが好ましい。そのような構造として、例
えば図４〜７に示されるように（１）左右カップ部を連結する前中心布を、着用時に身
体の体表面の水平方向に平行な方向ヘ伸縮可能な素材で
形成する。（前中心布がカップ下布を兼ねる場合も含
む。）（図４、図６）（２）左右カップ部を連結する前中心布が左右カップの
上部のみを連結し、下部をアンダーフリー構造とする。
（図５）（３）左右カップ部を連結する前中心布が、下部に前中
心に向かう略三角形状の切れ込みを有し、前中心のアン
ダーバスト部付近が開放された形状とする。等があげら
れる。（図７）

【００１５】上述のような構造とすることにより、呼吸
時にアンダーバスト部において体幹部前中心付近が変動
しても、アンダーバスト部前中心部に部材が存在しな
い、あるいは体幹部の変動につれて伸縮する素材で構成
されているため、呼吸時の体幹部の変動を阻害しない。

【００１６】なお、若年者は、呼吸時、アンダーバスト
部では、脇部前方が膨らむ。一方、中高年者や体幹の太
い人は、呼吸時、アンダーバスト部において、脇部後方
と、前中心に大きな伸びがみられる。また左右の乳房間
においては、下部程、体表面の変化が大きい。従って、
カップ部が装着される体幹部前面では、特にアンダーバ
スト部の前中心部が身体の体表面の水平方向に平行な方
向ヘ伸びることが必要になる。そのため、上記（１）に
おいては、図６に示すように前中心布の伸度が、部位に
より異なり、下部ヘ下がる程大きくなるように形成する
のが好ましい。このような構造とすることにより、カッ
プ部の連結部の上部は伸度が小さいため、カップ部を有
する衣類をバスト部に安定的に保持し、また、カップ部
の連結部の下部は伸度が大きいため、前中心布が体幹部
前中心付近の変動を阻害しない。

【００１７】カップ部を連結する素材あるいは前中心布
として、伸縮可能な素材を用いる場合、例えばパワーネ
ット、ツーウェイパワーネット、ツーウェイトリコット
等のストレッチ素材またはそれらの素材に天然繊維を編
み込んだもの等があげられる。

【００１８】本発明のカップ部を有する衣類において、
上記ワイヤーの取り付け方法は、特に限定はなく、衣類
の身生地にくるんで縫製する、別布でカバーして縫着す
る等の従来使用される方法を用いることができる。

【００１９】本発明のカップ部を有する衣類を構成す
る、カップ部を連結する素材あるいは前中心布以外の布
地等の素材および製造方法は、本発明の作用を損なわな
い範囲のものであれば特に限定されず、通常一般の衣類
に用いられる素材および製造方法を使用することができ
る。

【００２０】本発明のカップ部を有する衣類として、上
述の構造を有するものであれば、特に限定されず、例え
ばブラジャー、水着、スポーツ用ブラジャー、レオタ
ード、トップス、ブラスリップ、ブラキャミソール、ボ
ディスーツ等が挙げられる。

【００２１】本発明のカップ部を有する衣類は、特に骨
格や体型の変化した中高年者用として好適であるが、若
年者でも胸部付近に脂肪の多い肥満者向け、あるいは乳
房が脇に流れやすいカップサイズの大きい人向けとして
も好適である。

【００２２】以下に、試験例および実施例を用いて本発
明の効果を詳細に説明する。試験例１図１、図２の形状の、同一太さの合成樹脂製ワイヤー
（いずれもアンダーバスト７５を想定）をそれぞれ本発
明の実施例１および比較例１として、最下点Ａ（女性が
着用時に着用状態から目視で最下点と確認できる部分）
を上面が平板状の台上に固定して支点とする。フォース
ゲージを用い、前記ワイヤーの両端点（内側縁側及び外
側縁側）をそれぞれ押さえ、０．５ｃｍ、１ｃｍ、１．
５ｃｍ外側への伸長時の応力をそれぞれ３回測定した。
その結果（３回測定の平均値）を表１に示す。

【００２３】

【表１】

【００２４】表１より、同一素材のワイヤーでありなが
ら、実施例と比較例では内側縁側と外側縁側の応力の大
きさの関係が逆転しており、実施例のワイヤーは内側縁
側がより変形しやすいことが分かる。また、全体的に、
実施例のワイヤーは、応力が比較例に比べて小さく、応
力のかかりにくく変形しやすい構造であることが分か
る。従って、実施例のワイヤーは、変形しやすいことに
よって、ソフトに乳房を保持し、また内側縁側に比べて
外側縁側が変形しにくいので、脇で乳房を保持し、バス
トが脇に流れるのを防止する効果もある。

【００２５】試験例２実施例１のワイヤーをカップ部周辺部に配設した図５の
形状のブラジャーを実施例２とし、従来のワイヤーをカ
ップ部周辺部に配設したブラジャーを比較例２として、
それぞれを６０歳代のバストサイズＢ７５の女性５人が
モニターとして２週間ずつ着用し、実施例のブラジャー
の比較例に対する着用感の比較を下記の基準に基づいて
判断した。呼吸のしやすさ ◎ 比較例と比べて非常に呼吸しやすい ○ 比較例と比べてやや呼吸しやすい □ どちらでもない △ 比較例と比べてやや呼吸しにくい × 比較例と比べて非常に呼吸しにくいワイヤーによる痛み ◎ 比較例と比べて非常に痛みが少ない ○ 比較例と比べてやや痛みが少ない □ どちらでもない △ 比較例と比べてやや痛みが多い × 比較例と比べて非常に痛みが多いワイヤーのバストへのフィット性 ◎ 比較例と比べて非常にフィットする ○ 比較例と比べてややフィットする □ どちらでもない △ 比較例と比べてややフィットしない × 比較例と比べて非常にフィットしない着用感 ◎ 比較例と比べて非常に楽 ○ 比較例と比べてやや楽 □ どちらでもない △ 比較例と比べてやや苦しい × 比較例と比べて非常に苦しい

【００２６】試験例２の結果を表２に示す。

【表２】

【００２７】表２の結果より、比較例に比べ、実施例の
ブラジャーは、特に胸部への圧迫感がなく、呼吸運動を
阻害しないことが分かる。

【００２８】

【発明の効果】本発明のワイヤーは、上述の構成を有す
るので、該ワイヤーを周辺部に配設したカップ部を有す
る衣類は、ワイヤーによるバストの補正機能を有しつ
つ、呼吸時のアンダーバスト部における体幹部前中心付
近の変動を妨げる加圧を軽減し、圧迫感が減少する。従
って、楽に長時間着用できる。

【００２９】また、乳房を保持する力が脇部方向から乳
房中心部に向かって作用するようになり、主としてカッ
プ部の脇側からカップ部を支えるため、アンダーバスト
部前部が圧迫されにくい。さらに、脇側へ流れようとす
る乳房を均一に乳房中心部に向かって押し上げるので、
特に外側へ広がった形状のバージスラインとなる中高年
者の場合、保持力が乳房の脇への流れ、下垂方向に直交
する形となり、バスト補正が効果的に行われる上、不必
要な力が加わらずフィット性等の着用感も良い。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態の一例であるワイヤーの形状
を示す正面図である。

【図２】従来のワイヤーの形状を示す正面図である。

【図３】図３（ａ）は本発明のワイヤーの作用を説明す
る図、図３（ｂ）は従来のワイヤーの作用を説明する図
である。

【図４】本発明のカップ部を有する衣類の実施形態の一
例であるブラジャーの構成を示す図である。

【図５】本発明のカップ部を有する衣類の実施形態の他
の例であるブラジャーの構成を示す図である。

【図６】本発明のカップ部を有する衣類の実施形態の他
の例であるブラジャーの構成を示す図である。

【図７】本発明のカップ部を有する衣類の実施形態の他
の例であるブラジャーの構成を示す図である。

【図８】本発明の実施形態のワイヤーの最下点の位置の
範囲を示す図である。

【符号の説明】

１ワイヤー２、２’、２’’ 内側縁部３、３’、３’’外側縁部４体幹部前中心５カップ部６ストラップ部７バック部８前中心布９連結部１０、１１ワイヤー端部Ｐ乳房の幅の１／２の位置Ｑ乳房の最内側縁部分を体表面の上下方向に沿う方向に
通る直線Ｒ乳房の最外側縁部分を体表面の上下方向に沿う方向に
通る直線Ｘワイヤー両端部をつなぐ直線ｘ直線Ｘからの距離Ａ、Ａ’、Ａ’’ 最下点

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】乳房の周辺部に沿う形状を有するワイヤ
ーをカップ部周縁に配設してなるカップ部を有する衣類
であって、前記ワイヤーの最下点が乳房の幅の１／２の
位置より外側縁側にある略涙滴形状であり、乳房の最内
側縁部分を体表面の上下方向に沿って通る直線から前記
略涙滴形状のワイヤー最下点までの距離ａと、乳房の最
外側縁部分を体表面の上下方向に沿って通る直線から前
記略涙滴形状のワイヤー最下点までの距離ｂとの比ｂ／
ａが、２／５〜４／５であることを特徴とするカップ部
を有する衣類。
【請求項２】２つのカップ部を、着用時に身体の体表
面の水平方向に平行な方向ヘ伸縮可能な前中心布で連結
してなることを特徴とする請求項１記載のカップ部を有
する衣類。
【請求項３】２つのカップ部を連結する伸縮可能な前
中心布の伸度が、部位により異なり、下部程大きくなる
ことを特徴とする請求項２記載のカップ部を有する衣
類。