JP2943493B2 - 熱転写記録方法および熱転写シート - Google Patents

熱転写記録方法および熱転写シート

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JP2943493B2 JP4070737A JP7073792A JP2943493B2 JP 2943493 B2 JP2943493 B2 JP 2943493B2 JP 4070737 A JP4070737 A JP 4070737A JP 7073792 A JP7073792 A JP 7073792A JP 2943493 B2 JP2943493 B2 JP 2943493B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は染着層のないパルプ紙な
どの受像体を使用しても、染料によるフルカラー画像を
容易に得ることができる熱転写記録方法および熱転写シ
ートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、昇華性染料を含有したインク層を
有するインクシートと、このインクシートの裏面からの
熱印字により熱拡散する染料を受容する染着層を有する
受像体とを用いる昇華型熱転写記録方式は、優れた中間
調記録が可能で、フルカラー画像記録を提供するものと
して注目されている。この昇華型熱転写記録方式は、例
えば、画像電子学会誌 Vol.12,No.1,pp.
18〜23,1983などで既に公知である。
【0003】図6に従来の一実施例における昇華型熱転
写記録装置の概略構成図を示す。図6において、100
は薄い耐熱性フィルムなどからなるシート状基体、10
1は染料とバインダ材からなるインク層、102はシー
ト状基体100の表面にインク層101を形成したイン
クシート、103はプラスチックフィルムなどからなる
基体、104はインク層101に含まれる染料に対して
染着性を示す染着層、105は基体103上に染着層1
04を形成した受像体、106は発熱体107を有する
サーマルヘッド、108はサーマルヘッド106との間
にインクシート102と記録紙105を圧接するプラテ
ンである。
【0004】以上のように構成された熱転写記録装置に
ついて、以下にその動作について説明する。インクシー
ト102のインク層101と、受像体105の染着層1
04とをサーマルヘッド106とプラテン108との間
に圧接して記録信号源(図示せず)からの信号に応じて
サーマルヘッド106の発熱体107を発熱させ、イン
ク加熱部109を生じさせる。このとき、加熱量に応じ
てインク層101から染着層104内へ染料が拡散す
る。この後、プラテン108の回転Uにより受像体10
5を矢印V方向へ、インクシート102を矢印W方向へ
各々送り、インクシート102を受像体105から剥離
し、転写した染料により染着層104に単色の転写イン
ク像110を得る。これを、3原色、イエロ、マゼン
タ、シアンの各インク層について重ね記録を繰り返すこ
とにより、フルカラー画像を得る。
【0005】このインクシート102は、例えば厚さが
9μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)フ
ィルムなどのシート状基体100の表面に、バインダ材
としてスチレンアクリロニトリル共重合樹脂10重量
部、昇華分散染料6重量部からなるインク層101をソ
ルベントコーティング法で形成した。また、受像体10
5は、例えばプラスチックフィルムや上質紙からなる基
体103表面にポリエステルなどからなる染着層104
を形成した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記のよ
うなインクシートの構成では、染着層への染料の熱拡散
を利用するために、一般的に筆記用紙として使用するパ
ルプ紙など、平滑な染着層のない受像体に対しては記録
することができないという問題点を有していた。
【0007】本発明は上記問題点に鑑み、染着層の無い
受像体にも、染料の拡散量を利用した高画質な階調画像
を得る熱転写記録方法および本記録方法に用いる熱転写
シートを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに本発明の熱転写記録方法は、耐熱性のシート状基体
の上に染料を含んだ複数のインク層と、前記インク層上
に更に加熱により粘度が低下する軟化転写材に染料に染
着性の熱可塑性樹脂からなる染着性粒子を分散配置した
転写染着層を少なくとも配置した第1複合層とを面順次
に形成した熱転写シートを用い、まず前記第1複合層を
受像体に押圧しながら、第1複合層に含まれる染料に対
する画像信号に応じて選択的に加熱して前記転写染着層
の少なくとも一部を前記受像体に転写した後、この転写
された前記染着層に前記インク層を押圧、加熱して重ね
記録を繰り返すことによりフルカラー記録像を得る。
【0009】
【作用】本発明は上記した熱転写記録方法により、まず
1色目の記録により、加熱量に応じて転写染着層が下層
にあるインク層内の染料により染着される。同時に、加
熱により軟化した転写染着層が受像体へ転写され、1色
目の染料により染着された転写染着層により、単色の階
調画像を受像体表面に得る。次に、既に受像体に転写さ
れている転写染着層に2色目のインク層を圧接すると同
時に、選択的な加熱により2色の重ね記録像を得る。更
に、3色目のインク層を用いて、2色目と同様に重ね記
録を繰り返すことにより、染着層のない受像体にも、染
料の拡散を利用した高画質なフルカラー画像を得ること
ができる。
【0010】更に、本発明では、1色目の加熱時に、記
録される1画像面積分の転写染着層が受像体へ転写する
ように加熱される。したがって、画像信号により第1色
目の信号が無いときには、染着が殆どされずに転写染着
層が転写するように、加熱制御される。特に、第1色目
がイエロ色である場合は、イエロ色に対する視感度が低
いので、少々のイエロ色の染着があっても認識すること
が困難であり、良好な記録像を得ることができる。
【0011】
【実施例】以下に本発明の熱転写記録方法、熱転写シー
トおよび熱転写記録装置について、図面を参照しながら
説明する。
【0012】図1は本発明の第1の実施例における熱転
写シートの部分断面構成図を示すものである。図1にお
いて、1は熱転写シート、2は記録時の加熱に耐えられ
る耐熱性のシート状基体、3Yはイエロ染料とバインダ
材からなるイエロインク層、3Mはマゼンタ染料とバイ
ンダ材からなるマゼンタインク層、4は熱軟化性である
と共に染着性である転写染着層、5はイエロインク層3
Y表面を覆うように形成した転写染着層4の2層からな
る第1複合層である。なお、本熱転写シート1は、第1
複合層(イエロインク層を含む)、マゼンタインク層3
M、シアンインク層(図示せず)を耐熱性シート状基体
2上に面順次に配置したものである。
【0013】以上のように構成された熱転写シート1を
使用した本発明による熱転写記録方法について、図2を
用いて記録手順を説明する。
【0014】まず(a)で示すように、受像体10に熱
転写シート1の転写染着層4表面を圧接する。このと
き、信号源12からの信号に応じてシート状基体2側か
ら加熱手段であるサーマルヘッド11で加熱し、イエロ
インク層3Y内にあるイエロ染料が転写染着層4へ熱拡
散する。更に加熱により軟化した転写染着層4が受像体
10と接触している部位で粘着し、受像体10への転写
力が生じる。この後、受像体10から熱転写シート1を
剥離する(b)と、加熱量に応じてイエロ染着された転
写染着層4が粘着力により転写してイエロ記録像13を
得る。
【0015】更に(c)で示すように、この転写した転
写染着層4にマゼンタインク層3Mを圧接しながらサー
マルヘッド11で選択的に加熱し、その後に熱転写シー
ト1を剥離することにより、転写染着層4にマゼンタ染
料による染着を行ない、イエロ・マゼンタ重ね記録像1
4を得る。この後、マゼンタ記録時と同じようにシアン
インク層(図示せず)を圧接・加熱した後、シートを剥
離することにより、最終的に3原色によるフルカラー記
録像を得る。
【0016】以上のように本実施例によれば、各色の染
料を含んだインク層3と、そのインク層上に熱軟化性で
あり染着性の転写染着層4を形成した第1複合層5とを
面順次に形成した熱転写シート1を使用することによ
り、染着層のない受像体10にも、染着による良好な階
調性を有する画像記録ができる。
【0017】この際、画像信号においてイエロ信号がな
い(マゼンタとシアンのみの混色)場合は、比加熱状態
にはせず、イエロ染料により濃く染着されず、転写染着
層4が軟化転写する温度範囲内になるようにサーマルヘ
ッド11により加熱する。
【0018】もし、イエロ染料が融点を有する場合は、
融点以上で染料の熱拡散が強くなるので、少なくとも転
写染着層4の転写が染料の融点以下で生じるように、転
写染着層4の構成材料を選択する。
【0019】本実施例では受像体10に画像面積の大き
さで転写染着層4をベタ転写するので、パルプ紙など表
面の凹凸が大きくて転写染着層4が十分に接触しない場
合でも、部分的に転写染着層4が粘着することにより全
面転写することができる。
【0020】受像体10は、合成紙、アート紙、コート
紙、上質紙、バライタ紙、セルロース繊維紙、プラスチ
ックフィルム等が単独でまたはそれらの積層体で、好適
に使用される。しかし、転写染着層4に水溶性材料を用
いた場合は、表面が親油性のプラスチックフィルムなど
は親水性処理、例えばポリビニルアルコールによる薄膜
を形成したものなどを用いることが望ましい。
【0021】シート状基体2は、例えばポリエチレンテ
レフタレート、ポリイミドなどの耐熱性樹脂フィルム、
またはコンデンサ紙などを使用することができる。な
お、インク層3が形成されない表面、つまりサーマルヘ
ッド11が圧接される表面にシリコーン、またはシリコ
ーンオイルを分散させた樹脂、UV硬化樹脂などからな
る耐熱性皮膜を形成したものを用いることもできる。
【0022】転写染着層4は、熱軟化性であると共に、
インク層3に含まれる染料に対して染着性を示す樹脂で
あればよく、特に限定されるものではない。つまり、こ
の染着性の熱可塑性樹脂は、例えばポリエステル、塩化
ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、アク
リル樹脂、エチレン酢ビ共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、
シリコン樹脂、ブチラール樹脂等の単体または混合体で
構成される。また、印加エネルギーが低い場合での受像
体10への粒子の接着性を考慮するとなるべく軟化し易
い樹脂を用いることが良く、例えばガラス転移点が10
0℃以下のものを使用することが望まれる。
【0023】転写染着層4は、前述の熱可塑性樹脂だけ
で構成することもできるが、更に、前述の染着性の熱可
塑性樹脂に、加熱時での軟化特性を助長するために融点
を有する材料を混合することもできる。この融点を有す
る材料には、例えば、室温で固形のパラフィン、マイク
ロクリスタリンワックス、カルナバワックス、キャンデ
リラワックス、カスターワックス、ライスワックス、モ
ンタンワックス、モンタン酸ワックス、酸化ワックス、
モンタンエステルワックス、モンタン部分けん化エステ
ルワックス、フィッシャートロプシュワックス、ミツロ
ウ、セレシン、サゾールワックス、セレシンワックス、
ホホバ油、12ヒドロキシステアリン酸、12ヒドロキ
システアリン酸の誘導体、脂肪酸アミド、ポリエチレン
ワックス、グリセリン脂肪酸エステル、グリコール脂肪
酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエ
チレン脂肪酸エステルなどのワックス類、またはヒドロ
キシプロピルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポ
リビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カ
ルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル
セルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウ
ム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アラビ
アゴム、コラーゲン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ
アクリルアミド、水溶性アクリル樹脂、水溶性アルキッ
ド樹脂、水溶性ポリエステル、ポリスチレンスルホン酸
ナトリウム、ポリビニルアルコール、でんぷん、寒天、
にかわ、カラギーナン、ゼラチンなどの水溶性材料、こ
れらの単体または混合を使用する。
【0024】転写染着層4は、熱可塑性樹脂と前述のワ
ックス類または水溶性材料などで構成することもできる
が、更に軟化特性を調整するために、ポリオキシエチレ
ンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノステアレー
ト、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテルな
どの各種界面活性剤を、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ
シクロヘキシル、流動パラフィンなどの可塑剤を、炭酸
カルシウム、タルクなどの微粒子などを適宜混入するこ
ともできる。
【0025】インク層3は、加熱により熱拡散する染料
とバインダ材からなり、この染料として、例えば水溶性
染料、油性染料、分散性染料、昇華性染料など各種染料
を使用できる。
【0026】インク層3のバインダ材は、染料の保持力
が強く、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂な
どの熱硬化性樹脂、または前述の熱可塑性樹脂などの単
体または混合体で構成することができる。特に、転写染
着層4が軟化した温度でも急激な低粘度化を生じないよ
うな高耐熱性の樹脂が好ましい。なお、バインダ材はこ
れらの樹脂類以外に、パラフィンなどのワックス、ポリ
オキシエチレンアルキルエーテルなどの各種界面活性
剤、シリカなどの各種粉体などを含むことができる。
【0027】また、転写染着層4が転写し易いように、
少なくとも室温時にインク層3と融着しないことが望ま
れる。したがって、転写染着層4と、インク層3を構成
するバインダ材とがお互いに非相溶な材料に選ぶことが
推奨される。
【0028】また、イエロインク層3Yと転写染着層4
の間に転写染着層4が剥離し易いように、例えばシリコ
ン樹脂、弗素樹脂を含んだ剥離層を形成することもでき
る。
【0029】転写染着層4に前述のワックス類を混合す
る場合、酸価が20以下のものが好ましい。以下にその
理由を述べる。まず、酸価が大きくなるほど低分子量の
遊離脂肪酸が多くなり、室温でも低分子の遊離脂肪酸が
移動し易くなる。したがって、転写した後でも遊離脂肪
酸が移動し易く、それに伴ってワックス内に分散されて
いた染料が凝集し始め、記録濃度と色の彩度が低下して
しまうのである。この現象は、ワックスの酸価が20を
超えると顕著であり、記録した画像の保存性が極端に低
くなる。したがって、酸価が20以下のワックスの使用
が特に好ましい。また、長期間の保存を考慮すると、酸
価はなるべく小さい方が良く、好ましくは、15程度以
下に抑えることが推奨される。例えば、カスターワック
スは、酸価が2以下であり、色目も白く特に推奨され
る。
【0030】転写染着層4内に前述の融点を有する材料
を使用した場合、この融点よりも染着性の熱可塑性樹脂
の転移点をかなり低く選ぶと、転写染着層4の低粘度化
が始まる以前の低い印加エネルギーで、例えば室温で、
インク層3から染料が拡散し、転写染着層4が染着され
る。つまり、転写以前にかなり染着された状態になり、
加熱制御できる最も低濃度な記録濃度が高くなり、良好
な画質の階調記録画像を得ることが困難となる。
【0031】したがって、転写染着層4に含まれる染着
性の熱可塑性樹脂の転移点を、融点を有する材料の融点
と同程度以上に選ぶことが好ましい。更に紙面濃度から
滑らかに濃度が立ち上がるには、印加エネルギーが低い
ときには染着されずに転写する領域があることが好まし
く、これを達成するために熱可塑性樹脂の転移点を、特
に転移点の中でも最も低温度であるガラス転移点を融点
を有する材料の融点よりも10℃以上高くすることが推
奨される。
【0032】また、加熱時に融点を有する材料が溶融し
て液状になると、この溶融物が溶媒として挙動して染料
の溶解を助長する。したがって、加熱に対する染料の拡
散力が小さくても、この溶解現象により転写染着層4内
に染料を十分に含浸させることができ、転写染着層4内
の染着性の熱可塑性樹脂性を十分に染着できる。
【0033】転写染着層4の厚さは、0.5μm以上、
50μm以下にすることが望ましい。0.5μm未満で
あると、染料の保持量が少なくなり、十分な濃度の記録
像を得ることができない。また、厚さが厚くなるほど転
写染着層4を軟化させるために多くの熱エネルギーを必
要として記録感度が落ちる。特に、50μmを超える
と、余りに多くの熱エネルギーを必要とするために、耐
熱性のシート基材2として安価なポリエチレンテレフタ
レートでは軟化し始め、シートの搬送時の引っ張り力で
破断してしまう。
【0034】したがって、安価な熱転写シート1として
ポリエチレンテレフタレートをシート状基体として使用
できるように、層厚は50μm以下とすることが好まし
い。更に、転写した転写染着層4が厚すぎると、受像体
10が部分的に厚くなり不自然となるので、30μm以
下が推奨される。
【0035】熱転写シート1は、例えば、まず、バイン
ダ材を溶解した溶液に、染料を溶解または分散させたも
のをソルベントコーティング法でシート状基体2上に塗
布、乾燥した後、インク層3および染料に対する溶解性
の低い、好ましくは溶解性の全くない溶媒に転写染着層
4を構成する樹脂などを溶解または分散した液体をイン
ク層3上に塗布乾燥して転写染着層4を形成することに
より得られる。
【0036】なお、この転写染着層4を乾燥するとき
に、若干、染料がインク層3から転写層3に移行するこ
とがある。この染料の移行による濃度が、転写染着層4
が転写し始めた時の初期濃度であり、この濃度から高濃
度までを連続階調記録できる。したがって、より低濃度
から記録を行なうために、なるべく転写層の乾燥におい
て大きな加熱は避けることが好ましい。たとえば、転写
層の乾燥では室温のままで風乾したり、真空乾燥するこ
とにより、染料の拡散を極力抑えることができる。
【0037】このインク層3または転写染着層4の形成
時に使用する溶媒として、例えば、水や、アルコール、
オクタン、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤を単体
でまたは混合して使用できる。但し、転写染着層4の形
成時にインク層3の染料が拡散しないように、インク層
3を犯さない溶媒で転写層を形成する必要がある。例え
ば、インク層3が親油性である樹脂で形成される場合、
転写染着層4を形成するときに使用する溶媒としては、
水が最も好ましい。したがって、水に不溶な構成材料を
含む場合は、サスペンション状の塗液を使用することが
好ましい。
【0038】第1複合層5を加熱する際に、少なくとも
1画像面積に相当する転写染着層4を転写するように加
熱する。本実施例では、画像記録における加熱量の制御
には画像信号をパルス幅変調して発熱体に通電する時間
を制御する。したがって、まず画像記録以前に第1複合
層5のみを加熱記録し、イエロ染着記録の記録特性と、
転写染着層4の転写感度とを確認し、染着が少なく、転
写染着層4が安定して転写するパルス幅P1を確認す
る。そして、画像信号にイエロ信号がない(イエロ成分
がない)場合は、パルス幅P1を印加するように加熱制
御することにより、少なくとも1画像面積に相当する転
写染着層4を転写できる。
【0039】本実施例では、イエロインク層3Y上に転
写染着層4を形成したが、マゼンタ、またはシアン色の
記録を第1色目にする場合は、マゼンタインク層3M、
またはシアンインク層上に転写染着層4を形成した熱転
写シート1を使用する。しかし、前述したように画像信
号がない部分では2色目以降のための染着層を形成する
ことを考慮して、染着ができるだけ低いパルス幅P1
で、転写染着層4が転写するように加熱しなければなら
ない。したがって、染着しても最も判別しにくいイエロ
を第一複合層5の色目とすることが最も好ましい。
【0040】つまり、写真などで撮影する自然画像では
イエロ信号が存在する画像がほとんどであり、特別にパ
ルス幅P1を印加せずに、画像記録することもできる。
したがって、高画質な記録像を要求しない場合は、前述
したような転写染着層4が安定して転写するパルス幅P
1を印可しないように加熱制御することもできる。
【0041】また、イエロ記録の場合のみ転写染着層4
をも転写する熱量を必要とするために、マゼンタ、シア
ンの重ね記録以上にサーマルヘッド11からの加熱量を
若干大きめに制御することもできる。
【0042】図3に本発明の第2の実施例における熱転
写シートの第1複合層部での断面構成図を示すものであ
り、転写染着層が形成されないインク層の構成は図1と
同一である。
【0043】図3において、20は染着性の樹脂材料か
らなる染着性粒子、21は加熱軟化性の軟化転写材であ
り、軟化転写材21内に染着性粒子20を分散配置して
転写染着層4が構成される。
【0044】本実施例では、転写染着層4が第1色目
(イエロ)記録のときに、染着性粒子20が熱拡散して
きたイエロ染料により染着されると共に、軟化転写材2
1が軟化して受像体10への転写力が生じ、軟化転写材
21と共に染着性粒子20が受像体10へと転写され
る。この転写された転写染着層4に、熱転写記録による
マゼンタ、シアンの染着記録が行なわれ、第1の実施例
と同様にパルプ紙などの普通紙に容易にフルカラー画像
を得ることができる。
【0045】また、第1の実施例では、1画像面積分の
転写染着層4を転写する場合に、染着性の樹脂材料を加
熱のみにより切断することが要求された。したがって、
熱軟化性が低い樹脂を用いると、転写時に転写染着層4
が切れず、転写染着層4の転写不良や1画像枠周囲の不
自然なひだ状の剥離などを生じ、定着性が若干低下する
と共に画質の低いものになることがある。
【0046】しかし、本実施例では、染着する染着性粒
子20が軟化転写性を有する軟化転写材21に分散され
た状態なので、染着性と熱軟化性を別個に最適化するこ
とが容易になる。したがって、加熱時には軟化転写材2
1のところで転写染着層4が切れ易くなり、転写染着層
4の転写不良や、ひだ状の剥離などが生じ難く、1画像
面積分がきちんと転写されるので、定着性も良い、良好
な画質の記録像を得る。
【0047】染着性粒子20としては、例えば前述の染
着性の熱可塑性樹脂から構成することができる。また、
軟化転写材21は、例えば前述の融点を有する材料など
から構成することができる。
【0048】染着性粒子20の形状は、球形が最も好ま
しいが、多角形状、鱗片状など各種の形状で使用するこ
とができる。
【0049】染着性粒子20に使用する樹脂材料は、染
料の色を濁らさないように、着色度合の小さいもの、例
えば淡黄色、白色などを使用し、特に無色透明なものが
最も好ましい。
【0050】軟化転写材21はインク層3との接触面積
が染着性粒子20と比較してかなり大きいので、融着に
対する影響も大きい。したがって、軟化転写材21をイ
ンク層3のバインダ材と非相溶に選ぶことが特に望まれ
る。そこで、インク層3のバインダ材と軟化転写材21
との相溶性を明らかに異ならせるために、各材料の親液
性を異なるように選択することが好ましい。
【0051】つまり、バインダ材が親油性であれば軟化
転写材21を親水性に、バインダ材が親水性であれば軟
化転写材21を親油性に選ぶ。例えば、インク層3を構
成するバインダ材として分子量の大きな親油性の樹脂類
を使用することが多いので、軟化転写材21として親水
性の水溶性材料の使用が好ましい。
【0052】染着性粒子20のメジアン径は50μm以
下が好ましい。メジアン径とは、粒子の大きさを測る1
つの尺度であり、粒子の大きな粒径φから重量を積算
し、粒子総重量が50%となるときの粒径である。本発
明では、加熱に応じてインク層3から染料が拡散し、染
着性粒子20を染着する。染料の保持性は、ワックス類
などの軟化転写材21よりも、分子量の大きい染着性粒
子20の方が良好であり、長期保存時での記録濃度は粒
子の染着度合に対応する。
【0053】ところが、メジアン径が50μmを越える
と、例えば記録密度10ドット/mmでは1画素100
μm×100μm内に数個しか存在せず、1画素が数個
の着色点に分かれて見え、画質が大きく低下する。ま
た、粒子が大きくなるほど、最も温度が上昇する発熱部
中央に粒子の中心が配置された場合と粒子の端が配置さ
れた場合で、粒子の染着度合が大きく異なり、濃度むら
になり易い。したがって、メジアン径は50μm以下が
好ましい。
【0054】また、染着性粒子5の最大粒径が大きいほ
ど、前述と同様に画質の低下の要因となるため、最大粒
径もなるべく小さいことが好ましい。したがって、高画
質な記録をするために染着性粒子20の粒径φは最大粒
子径も50μm以下が好ましい。この場合、粒子の粒度
分布が存在するために、粒子のメジアン径は30μm程
度以下になる。
【0055】染着性粒子20の粒径φが軟化転写材21
のみからなる層厚さh1よりも大きすぎると、粒子を十
分に保持できず、更に受像体10に押圧した状態では粒
子がスペーサとして挙動し、軟化転写材21の十分な転
写も困難となる。したがって、粒子の半分が軟化転写材
に埋まっているように、染着性粒子20のメジアン径が
軟化転写材6の厚さh1の倍以下になるように選択する
ことが好ましい。
【0056】本実施例では、軟化転写材21のみからな
る層以上の大きさの粒径を染着性粒子20が有する場合
を示しているが、逆に染着性粒子20の粒径が小さく、
大きな凹凸表面にはならない転写染着層4と構成するこ
ともできる。
【0057】染着性粒子20の転写染着層4に占める体
積は、総体積に対して80%以下にするのが好ましい。
80%を越えて粒子を混入すると、軟化転写材21の保
持が不十分になり、シートの保存が困難となるからであ
る。特に、粒子の十分な保持力を得るために、60%以
下に抑えることが推奨される。
【0058】軟化転写材21は、隣接する加熱部と非加
熱部の境界において軟化転写材21の転写と非転写を明
確に区別するように、加熱により大きく粘度が低下す
る、つまり前述の融点を有する材料を使用することが好
ましい。また、シートは巻かれた状態で保存されること
が多いので、室温でシートの裏面に軟化転写材21が粘
着しないように、少なくとも融点または軟化点が50℃
以上のものが好ましい。
【0059】特に、水溶性材料を軟化転写材21として
使用する場合は、50〜70℃で軟化する平均分子量が
2000〜40万程度のポリエチレンオキサイドが好ま
しい。なお、分子量が2万以下のものは、ポリエチレン
グリコールと一般的に呼ばれることが多い。なお、以下
に示す実験例で、2万以下の低分子量の物はポリエチレ
ングリコールと呼ぶ。
【0060】また、染料による染着は、染着性粒子20
を構成する熱可塑性樹脂の転移点以上で活発になる(な
お、この転移点とはガラス転移点、融点または軟化点の
ことである)。なぜならば、転移点の中でもガラス転移
点を超えた温度領域では、樹脂を構成する分子のミクロ
ブラウン運動が少なくとも生じ、分子間への染料の拡散
が容易になるからである(融点または軟化点を超えると
分子のマクロブラウン運動も生じるので染料拡散が更に
容易になる)。
【0061】また、重ね記録時に転写した転写染着層4
にインク層が粘着しないように、インク層表面に耐熱性
の滑性層を形成することもできる。この滑性層は、例え
ば、シリコン樹脂、弗素樹脂などから構成することがで
きる。
【0062】図4に本発明の第3の実施例における熱転
写シートの第1複合層部での断面構成図を示すものであ
り、マゼンタ、シアンのインク層の構成は図1と同一で
ある。
【0063】図4において、30は室温での染料拡散が
小さい染料拡散防止材料からなる染料拡散防止層であ
る。つまり、第1複合層5は、イエロインク層3Y、染
料拡散防止層30、転写染着層4の積層からなる。
【0064】以上のように構成された熱転写シート1を
用いて図2に示した記録手順を行なうと、第2の実施例
で示したように、1画像面積分の転写染着層4の良好な
転写が得られ、普通紙に高画質なフルカラー記録像を得
ることができる。
【0065】また、インク層3と転写染着層4の間に染
料拡散防止材料からなる染料拡散防止層30が形成され
ているので、室温程度のシートの長期保存後も殆ど転写
染着層4内に染料が拡散できず、記録以前に染着性粒子
20が染料により染着されることが避けられ、良好なフ
ルカラー記録像を得ることができる。また、転写染着層
4が転写するとき、染料拡散防止層30をも転写しても
よい。
【0066】染料拡散防止層30を構成する染料拡散防
止材料は、少なくとも室温における染料の拡散を妨げる
ために、室温において染料との相溶性および染着性が低
いものを用いる。例えば、記録像に十分な耐水性を持た
せ、インク層に均一に溶解または分散するために染料と
しては親油性のものがよく選択されるので、染料拡散防
止材料としては前述したような水溶性材料の単体または
混合を使用することができる。
【0067】また、染料との相溶性および染着性が低い
ものとして、極性の低い樹脂材料を用いることもでき
る。この極性の低い樹脂材料としては、例えば誘電率が
5程度以下であるエポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリイ
ミド、アクリル樹脂、ナイロン、弗素樹脂、ポリスチレ
ン、ポリエチレン、ポリカーボネイト、ポリサルフォン
などを使用できる。
【0068】更に染料拡散防止材料は、転移点が室温以
上であることが望まれる。なぜならば、樹脂内での染料
の熱拡散は、樹脂の転移点以上で活発になるので、室温
で十分な染料拡散を防止するには室温で染料拡散防止材
料が転移点以下の状態になければならないからである。
なお、この転移点とはガラス転移点、融点または軟化点
のことである。好ましくは、転移点が50℃以上の前述
の水溶性材料または極性の低い樹脂材料を選ぶことが推
奨される。水溶性材料の中でもポリビニルアルコール
は、成膜性、ガラス転移点が70℃以上、誘電率も5以
下という点で染料拡散防止材料として特に推奨される。
【0069】染料拡散防止材料として前述した以外に、
染料拡散防止層7の形成に必要な均一成膜性を改良する
ために各種界面活性剤などを添加することももちろんで
きる。
【0070】また、紙面濃度から滑らかに濃度が立ち上
がるには、印加エネルギーが低いときには染着されてい
ない粒子を転写する領域があることが好ましい。そこ
で、軟化転写材21の融点または軟化点を、染料拡散防
止材料の転移点と同程度もしくはより低くすることが望
まれる。
【0071】更に、熱転写シート1は巻かれた状態で保
存されることが多いので、室温でシート同士が粘着しな
いように、軟化転写材21は少なくとも融点または軟化
点が室温以上のものが好ましい。即ち、軟化転写材21
の融点または軟化点は、染料拡散防止材料の転移点と同
程度もしくはより低く、室温以上のものが好ましい。特
に50℃以上のものが推奨される。
【0072】染料拡散防止層30の厚さは、0.1μm
以上が望ましい。0.1μm未満であると、防止層の形
成時に染料拡散防止層30に孔が生じる場合もあり、染
料拡散を十分に妨げることができないからである。更に
好ましくは、1μm以上が良い。但し、染料拡散防止層
30が厚すぎると、サーマルヘッドからの熱量が奪わ
れ、低エネルギーで転写染着層4を転写できなくなる。
従って、染料拡散防止層30は20μm以下、更に好ま
しくは15μm以下にすることが推奨される。
【0073】図5に本発明の第4の実施例における熱転
写シートの第1複合層部での断面構成図を示すものであ
り、多色のインク層の構成は図1と同一である。
【0074】図5において、40は白色隠蔽粒子41を
分散した白色隠蔽層である。つまり、第1複合層5は、
イエロインク層3Y、転写染着層4、白色隠蔽層40の
積層からなる。
【0075】以上のように構成された熱転写シート1を
用いて図2に示した記録手順を行なうと、第2の実施例
で示したように、普通紙に高画質なフルカラー記録像を
得ることができる。
【0076】また、第2の実施例では、受像体10上に
ほぼ透明な転写染着層4を転写するので、再現しようと
する画像信号に対して、使用する受像体10の色により
画像の色再現が大きく異なってしまい、画質を下げる要
因となる。
【0077】ところが、本実施例では、白色隠蔽層40
が受像体10の表面に1画像面積分記録されるので、受
像体10の色に左右されず、常に白色な表面上に画像を
記録することができ、良好な色再現を有する記録像を得
ることができる。
【0078】白色隠蔽粒子41としては、白色または半
透明の粒子であればよく、例えば、シリカ、炭酸カルシ
ウムなどの無機粒子、ベンゾグアミン樹脂、アクリル樹
脂などからなる樹脂粒子などを使用することができる。
【0079】白色隠蔽層40は、一般の熱可塑性樹脂を
バインダとし、このバインダに前述の白色隠蔽粒子41
を分散させている。受像体10への転写性を考慮して、
バインダに前述のワックス類などを添加することもでき
る。また、このバインダは、熱軟化性が考慮され、染着
性が乏しくても良い。
【0080】白色隠蔽層40の厚さは、0.5μm以
上、20μm以下に抑えられる。なぜならば、0.5μ
m以下では良好な白色性と、受像体10の色の遮断性が
不良だからである。また、20μmを超えると、白色隠
蔽層40が十分に軟化して転写力が生じる以前に、転写
染着層4が大きく染着されるので、低濃度からの記録が
困難になるからである。したがって、白色隠蔽粒子41
のメジアン径も20μmを超えないように選ばれる。
【0081】本実施例では、白色隠蔽粒子41を含んだ
白色隠蔽層4を転写染着層4の上に形成しているが、転
写染着層4内に白色隠蔽粒子41を含ませた構成とする
こともできる。この場合、白色の粒子が表面に存在する
ために、染着能力が低くなり、若干、記録濃度が低くな
る。しかし、転写された転写染着層4の白色度が上がる
ので、淡い色調のフルカラー画像を記録することができ
る。
【0082】下記に各実施例に従って試作した熱転写シ
ートの実験例を示す。なお、記録は、記録密度6ドット
/mmのサーマルヘッド11により、ベック平滑度が約
30sの上質紙(紙面濃度0.09)に押圧しながらパ
ルス幅制御信号により加熱記録(最大9J/cm2)し
た。副走査記録速度は33.3ms/ライン、副走査線
密度は6ライン/mm、最大印加パルス幅は16.7m
sであった。また、記録濃度の測定にはマクベス濃度計
RD914を使用した。
【0083】サーマルヘッド11が当たる表面にUV樹
脂による耐熱性滑性層が1μm形成された厚さ7μmの
ポリエチレンテレフタレートからなるシート状基体2上
に、アクリロニトリルスチレン樹脂(電気化学工業
(株)製、熱変形温度88〜95℃)20部と各色の染
料10部ををトルエン/2−ブタノン(混合比が1/
1)溶剤の70部に溶解したものを塗布、乾燥して厚さ
が約5μmのインク層を形成した。各染料とは、ジシア
ノスチリル系のイエロ染料(三菱化成(株)製、融点1
26℃)、イミダゾールアゾ系のマゼンタ染料(三菱化
成(株)製、融点115℃)、インドアニリン系のシア
ン染料(三菱化成(株)製、融点128℃)を使用し
た。この3原色のインク層が形成されただけの熱転写シ
ートを用いた記録では、光学的反射濃度で各色の最高濃
度で0.3程度のうっすらとした記録像を上質紙に得る
だけであった。
【0084】(実験例1)更に、別のポリエチレンテレ
フタレートからなるシートに、厚さ10μm程度のシリ
コンゴム層を形成し、この表面にポリビニルブチラール
(積水化学工業(株)製、ガラス転移点55℃)と脂肪
族系炭化水素樹脂(荒川化学工業(株)製、軟化点70
℃)を重量比1:1で混合した、厚さ18μmの層をソ
ルベントコーティング法で形成した。なお、シリコーン
ゴム層は、シリコーンゴムの30%溶液(東レシリコー
ン・ダウコーニング(株)製、商品名SD7328)1
00部と、硬化用触媒(東レシリコーン・ダウコーニン
グ(株)製、商品名SRX212AC)0.9部の混合
液を塗布し、130℃1分間の条件で加熱硬化させた。
【0085】この層を前述の試作したイエロインク層3
Y上に圧接することにより、容易にインク層上に転写し
て転写染着層4とし、第1の実施例で述べた構成の熱転
写シート1を試作した。このシートを用いて、まずイエ
ロのみの記録をしたところ、転写染着層4が全面で転写
するパルス幅は、3.5msであった。したがって、画
像にイエロ信号がない場合は、印加パルス幅を3.5m
sにした。そして、図2による記録手順で記録したとこ
ろ、最大濃度がイエロで1.70、マゼンタで1.8
2、シアンで1.85のフルカラー画像を得た。但し、
画像の淵付近では、所々で転写染着層4が余分に転写さ
れていた。
【0086】(実験例2)前述のイエロインク層3Y上
に、アクリロニトリルスチレン樹脂と室温で非相溶な軟
化転写材21として固形のポリエチレングリコール(融
点が56〜62℃、第一工業製薬(株)製、平均分子量
2万)20部と、染着性粒子20としてポリビニルブチ
ラール(積水化学工業(株)、ガラス転移点55℃)か
らなる粒子(メジアン径10μm)20部と、水80部
と、界面活性剤0.2部からなる溶液を塗布し、室温放
置で乾燥して軟化転写材21の層厚h1が約7μmの凹
凸表面を有する粒子転写層6を形成し、本発明による第
2の熱転写シート1とした。
【0087】この熱転写シート1を用いると、転写染着
層4が全面で転写するパルス幅は、3.0msであっ
た。そこで、画像にイエロ信号がない場合は、印加パル
ス幅を3.0msにした。記録では1画像面積分に相当
するポリエチレングリコールと粒子のほとんどが転写さ
れ、最低濃度0.10、最大濃度1.75のイエロ単色
による連続階調画像を得ることができ、マゼンタ、シア
ンの熱転写記録を繰り返すことにより、最大濃度が、マ
ゼンタで1.75、シアンで1.80のフルカラー画像
を得た。しかも、画像の淵付近でも転写染着層4の不安
定な転写がなく、良好な記録像を得た。
【0088】(実験例3)前述のイエロインク層3Y上
にアクリロニトリルスチレン樹脂と室温で非相溶なヒド
ロキシエチルセルロース(第一工業製薬(株)製、HE
CダイセルSP400)の5%水溶液を塗布乾燥して
1.5μmの染料拡散防止層30を形成した。その上に
更に、軟化転写材21として固形のポリエチレングリコ
ール(第一工業製薬(株)製、PEG#20000、平
均分子量2万、融点が56〜62℃)20部と、染着性
粒子20としてポリビニルブチラール(積水化学工業
(株)、エスレックBL−S、ガラス転移点55℃)か
らなる粒子(メジアン径10μm)20部と、水80部
と、界面活性剤0.2部からなる分散溶液を塗布、室温
放置で乾燥して厚さが約20μmの転写染着層4を形成
し、本発明の第3の実施例による熱転写シート1とし
た。
【0089】この熱転写シート1を室温(25℃)で2
週間放置した後に記録したとき、転写染着層4が全面で
転写するパルス幅は、3.0msであった。したがっ
て、画像にイエロ信号がない場合は、印加パルス幅を
3.0msにした。そして、最低濃度がイエロで0.0
9、マゼンタで0.10、シアンで0.09、最大濃度
がイエロで1.60、マゼンタで1.78、シアンで
1.81の良好なフルカラー画像を得た。しかも、画像
の淵付近でも転写染着層4の不安定な転写がなく、良好
な記録像を得た。このとき、染料拡散防止層30は受像
体10へ転写していた。
【0090】また、この染料拡散防止層30が無い場合
は、かぶりが大きく、最低濃度がイエロで0.15、マ
ゼンタで0.20、シアンで0.16となり、若干、画
質が低下した。つまり、ヒドロキシエチルセルロースで
作成した染料拡散防止層30により、室温での熱転写シ
ートの保存において、染料が不必要に転写染着層4側へ
転写することを防止し、良好なフルカラー特性を得るこ
とができた。
【0091】本実験例において、ヒドロキシエチルセル
ロースの代わりに、メチルセルロース(信越化学工業
(株)製、メトローズSM4000)、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製、メトロ
ーズ60SH4000)、ゼラチン(新田ゼラチン
(株)製)を用いても、同様の結果を得た。
【0092】(実験例4)試作したイエロインク層3Y
の上に、アクリロニトリルスチレン樹脂と室温で非相溶
なポリビニルアルコール(クラレ(株)製、クラレポバ
ールPVA220)の5%水溶液を塗布乾燥して約1μ
mの染料拡散防止層7を形成した。その上に更に、軟化
転写材21としてカスターワックス(融点が約85℃、
小倉合成工業(株)製)27部と、水70部と、陰イオ
ン界面活性剤(融点80〜90℃)3部からなる分散液
を作成した後、更に染着性粒子4としてポリビニルブチ
ラール(積水化学工業(株)、ガラス転移点55℃)か
らなる粒子(メジアン径5μm)20部を分散させた溶
液を塗布、室温放置で乾燥して軟化転写材21の層厚が
約15μmの転写染着層4を形成し、本発明の第3の実
施例における別組成の熱転写シート1とした。なお、こ
の転写染着層4も加熱後はほぼ透明になる。
【0093】この熱転写シート1を室温(25℃)で2
週間放置た後に記録したとき、転写染着層4が全面で転
写するパルス幅は、3.25msであった。したがっ
て、画像にイエロ信号がない場合は、印加パルス幅を
3.25msにした。最低濃度がイエロで0.10、マ
ゼンタで0.10、シアンで0.10、最大濃度がイエ
ロで1.60、マゼンタで1.78、シアンで1.81
の良好なフルカラー画像を得た。しかも、画像の淵付近
でも転写染着層4の不安定な転写がなく、良好な記録像
を得た。
【0094】更に、染料拡散防止材料として低分子量ポ
リスチレン(エクソン化学(株)製、ピコラスチックA
75、融点75℃)を使用しても同様の結果を得た。
【0095】(実験例5)実験例4で試作した熱転写シ
ート1の転写染着層4上に、更にポリビニルアルコール
(クラレ(株)製、クラレポバールPVA110)50
部、炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、商品名
MC−1、一次粒子径0.15μm)10部からなる厚
さ10μmの白色隠蔽層40を積層し、第5の実施例に
更に染料拡散防止層30を形成した熱転写シート1とし
た。
【0096】この熱転写シート1を室温(25℃)で2
週間放置しても、前述の記録仕様に従って記録したと
き、転写染着層4が全面で転写するパルス幅は、4.5
msであった。したがって、画像にイエロ信号がない場
合は、印加パルス幅を4.5msにした。若干、記録感
度が低下したが、紙面がより白色に近くなり、最低濃度
が各色で0.07、最大濃度がイエロで1.55、マゼ
ンタで1.60、シアンで1.72の良好なフルカラー
画像を得た。しかも、白色隠蔽層40により、色再現が
良好な高画質な記録像を得ることができた。
【0097】(実験例6)試作したイエロインク層3Y
上に、炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、商品
名MC−1、一次粒子径0.15μm)20部、軟化転
写材21としてカスターワックス(融点が約85℃、小
倉合成工業(株)製)50部と、陰イオン界面活性剤
(融点80〜90℃)5部、更に染着性粒子4としてポ
リビニルブチラール(積水化学工業(株)、ガラス転移
点55℃)からなる粒子(メジアン径5μm)20部を
分散させた溶液を塗布、室温放置で乾燥して白色隠蔽粒
子41を含んだ厚さ18μm程度の転写染着層4を形成
し、本発明の他の実施例による熱転写シート1とした。
【0098】この熱転写シート1を用いて前述の記録仕
様に従って記録したとき、転写染着層4が全面で転写す
るパルス幅は、3.5msであった。したがって、画像
にイエロ信号がない場合は、印加パルス幅を3.5ms
にした。そして、転写染着層4の白色度が受像体10よ
りも高くなり、画像記録部の紙面濃度は0.06となっ
た。記録特性は、最低濃度がイエロで0.06、マゼン
タで0.06、シアンで0.06、最大濃度がイエロで
1.35、マゼンタで1.56、シアンで1.69の淡
いフルカラー画像を得ることができた。
【0099】なお、本実施例では、転写染着層のがイン
ク層よりも、インク層の上に形成した転写染着層の面積
の方が大きい場合に示しているが、1画像面積以上であ
れば、インク層上には同程度またはより小さい面積の転
写染着層を形成することもできる。
【0100】なお、本実施例ではイエロ、マゼンタ、シ
アンの3原色の染料を用いた3種類のインク層を形成し
た熱転写シートで説明したが、更に黒のインク層を加え
た構成とすることももちろんできる。
【0101】更に、本実施例ではフルカラー記録につい
てのみ説明したが、任意の2色以上の重ね記録につい
て、例えばマゼンタ、イエロのみからなる多階調画像の
作成でも同様に実施できる。
【0102】また、各熱転写シートを使用して画像記録
した後、記録像を全面加熱して染着性粒子の密着を上
げ、画像の定着性を更に高めることもできる。
【0103】また、インク層と転写染着層の間に転写染
着層が剥離し易いように、例えばシリコン樹脂、弗素樹
脂を含んだ剥離層を形成することもできる。
【0104】また、加熱手段として、サーマルヘッドを
用いて説明したが、レーザ光発振機を用いて記録するこ
ともできる。
【0105】また、普通紙のみならず、従来の染着層を
有した受像体にも同様に記録することも、もちろんでき
る。
【0106】なお、本発明は、各実施例で述べられた構
成のみならず、例えば、図1の熱転写シートの転写染着
層上に更に白色隠蔽層を形成したものなど、各部を組み
合わせた構成とすることもできる。
【0107】
【発明の効果】以上のように、本発明は、耐熱性のシー
ト状基体の上に染料を含んだ複数のインク層と、前記イ
ンク層上に更に加熱により粘度が低下する軟化転写材に
染料に染着性の熱可塑性樹脂からなる染着性粒子を分散
配置した転写染着層を少なくとも配置した第1複合層と
を面順次に形成した熱転写シートを用い、まず前記第1
複合層を受像体に押圧しながら第1複合層に含まれる染
料に対する画像信号に応じて選択的に加熱して前記転写
染着層の少なくとも一部を前記受像体に転写した後、こ
の転写された前記染着層に前記インク層を押圧、加熱し
て重ね記録することによりパルプ紙などの普通紙上に染
着による良好なフルカラー記録像を得ることができる。
なお、本発明の転写染着層は、染着する染着性粒子が軟
化転写性を有する軟化転写材に分散配置して構成される
ので、染着性と熱軟化性を別個に最適化することが容易
になる。したがって、加熱時には軟化転写材のところで
転写染着層が切れ易くなり、転写染着層の転写不良や、
ひだ状の剥離などが生じ難く、1画像面積分がきちんと
転写されるので、定着性も良い、良好な画質の記録像を
得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例における熱転写シートの
部分断面構成図
【図2】第1の実施例で示した熱転写シートを用いた熱
転写記録の動作説明図
【図3】本発明の第2の実施例における熱転写シートの
部分断面構成図
【図4】本発明の第3の実施例における熱転写シートの
部分断面構成図
【図5】本発明の第4の実施例における熱転写シートの
部分断面構成図
【図6】従来の熱転写シートの部分断面構成図
【符号の説明】
1 熱転写シート 2 シート状基体 3Y イエロインク層 3M マゼンタインク層 4 転写染着層 5 第1複合層 10 受像体 11 サーマルヘッド 12 信号源 13 イエロ記録像 14 イエロ・マゼンタ重ね記録像 20 染着性粒子 21 軟化転写材 30 染料拡散防止層 40 白色隠蔽層 41 白色隠蔽粒子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B41J 2/32 - 2/325 B41J 31/00 B41J 35/16 B41M 5/40

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】耐熱性のシート状基体の上に染料を含んだ
    複数のインク層と、前記インク層上に更に加熱により粘
    度が低下する軟化転写材に染料に染着性の熱可塑性樹脂
    からなる染着性粒子を分散配置した転写染着層を少なく
    とも配置した第1複合層とを面順次に形成した熱転写シ
    ートを用い、まず前記第1複合層を受像体に押圧しなが
    ら選択的に加熱して前記転写染着層の少なくとも一部を
    前記受像体に転写した後、この転写された前記転写染着
    層に前記インク層を押圧、加熱して重ね記録することに
    より記録像を得ることを特徴とする熱転写記録方法。
  2. 【請求項2】耐熱性のシート状基体の上に染料を含んだ
    複数のインク層と、前記インク層上に更に加熱により粘
    度が低下する軟化転写材に染料に染着性の熱可塑性樹脂
    からなる染着性粒子を分散配置した転写染着層を少なく
    とも配置した第1複合層とを面順次に形成したことを特
    徴とする熱転写シート。
  3. 【請求項3】耐熱性のシート状基体の上に染料を含んだ
    複数のインク層と、前記インク層上に更に加熱により粘
    度が低下する軟化転写材に染料に染着性の熱可塑性樹脂
    からなる染着性粒子と白色隠蔽粒子とを分散配置した転
    写染着層を少なくとも配置した第1複合層とを面順次に
    形成したことを特徴とする熱転写シート。
  4. 【請求項4】耐熱性のシート状基体の上に染料を含んだ
    複数のインク層と、前記インク層上に更に加熱により粘
    度が低下する軟化転写材に染料に染着性の熱可塑性樹脂
    からなる染着性粒子を分散配置して形成した転写染着層
    と、白色隠蔽粒子を含んだ白色隠蔽層を少なくとも順次
    積層した第1複合層とを面順次に形成したことを特徴と
    する熱転写シート。
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