JP2936358B2 - インクジェット印刷ヘッドの駆動方法 - Google Patents

インクジェット印刷ヘッドの駆動方法

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JP2936358B2
JP2936358B2 JP3200063A JP20006391A JP2936358B2 JP 2936358 B2 JP2936358 B2 JP 2936358B2 JP 3200063 A JP3200063 A JP 3200063A JP 20006391 A JP20006391 A JP 20006391A JP 2936358 B2 JP2936358 B2 JP 2936358B2
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット印刷ヘ
ッドの駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット・プリンタ、特に、イン
ク滴形成のために音響駆動器を使用する印刷ヘッドを有
するDOD(ドット・オン・デマンド)型インクジェッ
ト・プリンタは、当業者には周知である。この型のイン
クジェット印刷ヘッドの原理は、インク室内に圧力波を
発生させ、この圧力波によりインク圧力室からノズル・
オリフィス即ちインク滴噴出オリフィス出口を通ってイ
ンク滴を連続的に噴出させることである。この型のイン
クジェット印刷ヘッドには、様々な音響駆動器が使用さ
れる。例えば、駆動器は、薄い隔壁に接着された圧電セ
ラミック材料で形成されたトランスデューサ(変換器)
から成る。印加電圧に応答して、圧電セラミックが変形
し、隔壁がインクをインク圧力室に移動させる。このイ
ンクの移動により、圧力波が生じ、1個又は複数個のノ
ズルを通るインクの流れが生じる。
【0003】圧電セラミック駆動器は、円形、多角形、
円筒形、環状円筒形等のいずれの適当な形状でもよい。
更に、圧電セラミック駆動器は、ベンディング・モー
ド、シアー・モード、ロンギチュディナル・モードの様
な種々の偏向モードで動作する。インクに圧力波を発生
させる他の音響駆動器には、加熱気泡源駆動器(いわゆ
るバブル又は感熱インクジェット印刷ヘッド)及び電磁
ソレノイド駆動器がある。一般に、インクジェット印刷
ヘッドは、複数のノズルを密集したアレイ状に配置でき
る形状にすることが望ましい。ここで、各ノズルは、関
連する1つの音響駆動器により駆動される。
【0004】ホーキンズによる米国特許第4,523,2
00号明細書には、不要周囲(サテライト)インク滴及
びオリフィスの目詰まりがなく高速のインク滴を発生
し、インクジェット印刷ヘッド動作を安定させる方法が
記載されている。この方法では、電子機械トランスデュ
ーサはインク室に結合され、合成波形で駆動される。こ
の合成波形は、ある場合は反対極性であり、且つ時間遅
延で分離されることがある独立した連続する第1及び第
2パルスを含む。第1電気パルスは、パルス幅が第2パ
ルスのパルス幅よりも十分に大きい噴出用パルスであ
る。第1パルスに対し反対極性である場合の第2パルス
は、後方エッジが指数関数的に減衰する。第1パルスを
供給すると、インクジェット印刷ヘッドのインク室は急
速に収縮し、関連するオリフィスからインク滴の噴出が
始まる。第2パルスを供給すると、インク室は急速に膨
張し、オリフィスからのインク滴の噴出が速く停止す
る。しかし、この明細書には、インク滴の噴出前のイン
クのメニスカス(毛管内の液体表面の凹凸)の位置の調
節については記載しておらず、高速のインク滴繰り返し
速度で一様に印刷する必要がある場合には問題がある。
【0005】ムラカミその他による米国特許第4,56
3,689号明細書には、印刷媒体上に大きさの異なる
インク滴を供給するようにインクジェット印刷ヘッドを
動作させる方法が記載されている。この方法では、先行
パルスが主パルスの前に、電子機械トランスデューサに
供給される。先行パルスは、ノズル内でインクを振動さ
せるために、圧電トランスデューサに供給される電圧パ
ルスである。この電圧パルスのエネルギーは、インク滴
を噴出するのに必要なしきい値レベルよりも低い。先行
パルスは、ノズル内のインクのメニスカスの位置を制御
することにより、インク滴の大きさを制御する。ムラカ
ミその他の特許明細書の図4及び図8では、先行及び主
パルスは同極性であるが、図9及び図11では、これら
のパルスは反対極性となっている。先行パルスの開始か
ら主パルスの開始までの通常の遅延時間は、約500μ
sである。したがって、この方法では、インク滴の噴出
は、比較的に低繰り返し速度に制限される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】インクジェット印刷ヘ
ッドを動作させる上述の従来の方法では、高印刷速度で
均一した高品質印刷を行うことが困難である。インクジ
ェット印刷ヘッドに関連する他の潜在的問題は、整流拡
散(Rectified Diffusion)の結果、印刷品質が低下す
ることである。整流拡散とは、周囲の圧力よりも低い圧
力で、インクジェット印刷ヘッドのインク圧力室内のイ
ンクに圧力波即ち圧力パルスを繰り返して供給すること
による、インク内に溶解した気泡の成長を意味する。こ
の場合、インクジェット印刷ヘッドを連続して動作させ
ることにより、「オンセット(onset)期間」と呼ばれる
特定の期間後に、印刷品質の低下が起きる。オンセット
期間は、インク滴繰り返し速度により決まるほか、イン
クジェット印刷ヘッドの連続動作の開始をする前の、イ
ンク内に溶解した気泡の量、インクの粘性、インクの濃
度、インク内の空気の拡散率、インク内に溶解した気泡
の半径により決まる。そこで、オンセット期間を延長す
るか、又は除去するインクジェット印刷ヘッドの駆動方
法が必要である。また、オンセット期間を延長したり、
除去すると共に、高印刷速度で高品質印刷を得る方法が
必要とされる。
【0007】したがって、本発明の目的は、高印刷速度
で高品質印刷を行うインクジェット印刷ヘッドの駆動方
法の提供にある。
【0008】本発明の他の目的は、整流拡散による印刷
品質の低下が殆ど又は全くなく、無制限又は延長した期
間、連続に印刷可能なDOD型インクジェット印刷ヘ
ッドの駆動方法の提供にある。
【0009】本発明の他の目的は、高インク滴繰り返し
速度に至る広範囲のインク滴繰り返し速度で印刷を行う
DOD型インクジェット印刷ヘッドの駆動方法の提供に
ある。
【0010】本発明の他の目的は、インクジェット印刷
ヘッドの動作を制御することにより生じるインク滴が、
略均一な移動時間で印刷媒体に到達するインクジェット
印刷ヘッドの駆動方法の提供にある。
【0011】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は、イン
ク源に結合されたインク圧力室及びインク滴噴出オリフ
ィス出口を備えたインク滴噴出オリフィスを有するDO
D型インクジェット印刷ヘッドの駆動方法である。イン
クジェット印刷ヘッドのオリフィスは、インク圧力室に
結合される。音響駆動器は、インク圧力室の容積を膨張
及び収縮させて、オリフィス出口からインク滴を噴出さ
せるように動作する。音響駆動器は、圧力波をインク圧
力室内のインクに供給し、インクがオリフィス及びオリ
フィス出口を通って、外に出るようにする。音響駆動器
は、電圧信号パルスにより駆動される圧電セラミック材
料を含む。
【0012】本発明によれば、「補充パルス成分」と呼
ぶ第1電圧パルスを供給すると、音響駆動器は、インク
圧力室の膨張によりインク圧力室の容積を増加させ、イ
ンク源からインク圧力室にインクを補充する。インク圧
力室の膨張の間、インクは、オリフィス内でオリフィス
出口からインク圧力室に向かって引き戻される。補充パ
ルス成分が供給されなくなると、次に待機期間状態が設
定され、この期間に、インク圧力室は元の容積に戻り、
オリフィス内のインクはインク圧力室からオリフィス出
口に向かって進む。相対的に反対極性の「噴出パルス成
分」と呼ぶ第2電圧パルスを供給すると、音響駆動器
は、インク圧力室の収縮によりインク圧力室の容積を減
少させ、インク滴を噴出させる。この様に、これらの電
圧パルスを音響駆動器に供給することによる、一連のイ
ンク圧力室の膨張、待機期間及びインク圧力室の収縮
で、インク滴の噴出が行われる。
【0013】本発明の第1の特徴によれば、これらの工
程は、高速印刷を行うために高繰り返し速度で行われ
る。補充パルス成分、待機期間状態及び噴出パルス成分
は、駆動信号を形成する。補充パルス成分及び噴出パル
ス成分は、矩形波又は台形波である。
【0014】本発明の第1の特徴の駆動信号は、待機期
間状態中に保たれるゼロ振幅基準電圧を中心として変化
する補充パルス成分及び噴出パルス成分を有する2極性
電気パルスを含む。ただし、基準電圧がゼロ電圧振幅で
ある必要がないことは、当業者には明かである。この駆
動信号は、待機期間状態中に保たれた正又は負基準電圧
振幅を中心として変化する相対的に反対極性のパルス成
分を含む。駆動信号は、インクジェット印刷ヘッドの基
本音響共振周波数で高エネルギー成分が存在しないよう
に、周知の方法でインクジェット印刷ヘッドの特性に対
して同調される。通常、インクジェット印刷ヘッドの基
本共振周波数に影響する最も重要な要因は、インク・メ
ニスカスの共振周波数である。インクジェット印刷ヘッ
ドの基本音響共振周波数に影響する1つの重要な要因
は、インクジェット印刷ヘッドのインク圧力室の出口か
らオリフィス出口までの通路の長さである。この通路
は、本発明では「オリフィス・チャンネル」と呼ぶ。
【0015】本発明の第1の特徴では、駆動信号は、好
適には待機期間状態の持続時間と、立ち上がり及び立ち
下がり時間を含む第1即ち補充パルス成分の持続時間を
調整することにより、インクジェット印刷ヘッドの特性
に同調される。補充パルス成分の立ち上がり及び立ち下
がり時間とは、夫々0Vから補充パルス成分の電圧振幅
への変化及び補充パルス成分の電圧振幅から0Vへの変
化である。標準スペクトラム・アナライザを使用して、
種々の周波数で駆動信号のエネルギー量を決めてもよ
い。同調調整後では、インクジェット印刷ヘッドの基本
音響共振周波数で、駆動信号のエネルギー量は最小にな
る。
【0016】本発明の第2の特徴では、上述の駆動信号
のパルス成分に変更を加えて、整流拡散により生じる印
刷品質の低下を軽減する。インクジェット印刷ヘッドの
印刷圧力室内のインクに供給され、且つ周囲圧力より低
い圧力は、整流拡散を誘発する圧力の大きさのしきい値
よりも低い。これを実現するためには、まず、上述した
本発明の第1の特徴に従い高品質印刷及び高速度印刷を
行う駆動信号を発生することが必要である。発生した駆
動信号のパルス成分は、整流拡散により生じる印刷品質
の低下を軽減するために変更が加えられる。元の駆動信
号から新しく駆動信号を得るには、補充パルスの電圧振
幅及び立ち上がり、立ち下がり時間を含む期間と、噴出
パルス成分が夫々減少及び増加される。この方法は、上
述の第1の特徴に従う高品質印刷及び高速度印刷を行う
ための駆動信号から始まるが、インクジェット印刷ヘッ
ド内のインクに供給される周囲圧より低い圧力が、整流
拡散を誘発する圧力の大きさのしきい値よりも低くなる
ように、駆動信号は変更される。
【0017】本発明の第1の特徴に従った元の駆動信号
が高品質印刷及び高速度印刷を行う場合、整流拡散によ
り生じる印刷品質の低下を減少させるようにインクジェ
ット印刷ヘッドの動作を制御するには、補充パルスの成
分の電圧振幅を、50%だけ減少させ、噴出パルス成分
の電圧振幅を、補充パルス成分の新しく設定された電圧
振幅との関係で減少させる。結果的に得られる好適な駆
動信号では、補充パルス成分の電圧振幅は、噴出パルス
成分の電圧振幅の1.15倍よりも大きく、1.3倍より
小さい。更に、補充パルス成分及び噴出パルス成分の相
対極性は、反対極性であり、圧力トランスデューサの極
性により決まる。
【0018】本発明の第1の特徴に従い発生された元の
駆動信号に関し、補充パルス成分と、立ち上がり及び立
ち下がり時間を除く噴出パルス成分の持続時間とは、増
加される。更に、補充パルス成分及び噴出パルス成分の
各々の立ち上がり及び立ち下がり時間は、延長される。
各パルス成分の立ち上がり及び立ち下がり時間とは、夫
々、パルス成分の0Vから電圧振幅への変化時間及び電
圧振幅から0Vへの変化時間である。結果的に得られた
駆動信号の好適な形式では、補充及び噴出パルス成分の
各々の立ち上がり及び立ち下がり時間は、2倍になる。
【0019】電圧振幅と、立ち上がり及び立ち下がり時
間を除く持続時間と、各パルスの立ち上がり及び立ち下
がり時間の調整は、駆動信号の周波数スペクトルが、イ
ンクジェット印刷ヘッドの基本音響共振周波数でエネル
ギーが最小になるように行われる。
【0020】
【実施例】図4は、本発明のインクジェット印刷ヘッド
の駆動方法を適用するインクジェット印刷ヘッドの一例
を示す。DOD型インクジェット印刷ヘッド9は、イン
ク源11に結合された内部インク圧力室(この図では図
示せず)を有する。インクジェット印刷ヘッド9は、各
々が14a、14b及び14cで示される1つ又は複数
のインク滴噴出オリフィス出口(以下、単にオリフィス
出口)14を含む。このオリフィス出口14は、インク
滴噴出オリフィス(以下、単にオリフィス)を介してイ
ンク圧力室に結合されている。インク滴を形成する間
に、インクはオリフィス出口14を通過する。インク滴
は、オリフィス出口14から、このオリフィス出口に対
し離間された印刷媒体13への行路方向に進行する。通
常のインクジェット・プリンタは、各々が1つ又は複数
の夫々のオリフィス及びオリフィス出口に結合された複
数のインク圧力室を含む。
【0021】音響駆動器36は、圧力波即ちパルスを発
生するために使用される。このパルスは、インク圧力室
内にあるインクに供給されて、インクがオリフィス及び
それに関連するオリフィス出口14を通過して外に出る
ようにする。音響駆動器36は、信号源37からの信号
に応答して動作し、インクに圧力波を供給する。
【0022】本発明は、インク滴の形成のために圧電セ
ラミック駆動器を使用した場合に、特に適用性があり、
有効である。この種の音響駆動器を使用したインクジェ
ット印刷ヘッドの好適な一実施例は、1989年11月
にジョイ・ロイ及びジョン・ムーアによる、「ドロップ
オンデマンド型インクジェット印刷ヘッド」という名称
米国特許出願第07/430,213号に詳細に記載
されている。例えば、他の形状の圧電セラミック駆動器
(例えば、円形、多角形、円筒形、環状円筒形)と同様
に、電磁ソレノイド駆動器を使用してもよい。更に、ベ
ンディング・モード、シアー・モード、ロンギチュディ
ナル・モードの様な種々のモードで、圧電セラミック駆
動器を偏向して使用してもよい。
【0023】図5に示す上記の特許出願第07/43
0,213号の明細書の記載に従ったインクジェット・
ヘッド9では、本体10は、インクをインクジェット印
刷ヘッドに供給するために通過するインク入口12を有
する。更に、本体10は、オリフィス出口即ち噴出口1
4と共に、インク入口12から噴射口14へのインク流
動路28を有する。通常、この型のインクジェット印刷
ヘッドは、印刷媒体上にインク滴を印刷するために、印
刷媒体の直前に配置され、互いに近接して離間された複
数の噴射口14から成るアレイを含む。
【0024】図4に示すインク供給源11からインク入
口12に入るインクは、インク供給多岐管(マニホル
ド)16を通過する。通常のカラー・インクジェット印
刷ヘッドは、夫々黒、シアン、マゼンタ及び黄インクが
供給される少なくとも4つの多岐管を有し、黒及び3色
減色印刷に使用される。ただし、プリンタが黒インクの
みで印刷を行うか、又はフルレンジの色ではない印刷を
行うかにより、インク供給多岐管の数は異なる。インク
供給多岐管16から、インクはインク入口通路18及び
インク入口20を通ってインク圧力室22に流れ込む。
インクは、インク圧力室出口24を通ってインク圧力室
22を離れ、インク通路26を通ってインク滴が噴出さ
れる噴出口14に流れる。矢印28は、インクの流れる
経路を示す。
【0025】インク圧力室22は、可撓性隔壁34の一
側面と境を接する。この場合、エポキシである隔壁34
に固定された圧電セラミック・ディスク36である圧力
トランスデューサは、インク圧力室22上に貼ってあ
る。従来の方法では、圧電セラミック・ディスク36
は、図5には図示しないが、図4に図示した符号37で
示す電子回路駆動器が電気的に接続される金属膜層38
を有する。他の型の圧力トランスデューサを使用するこ
ともできるが、図示するトランスデューサはベンディン
グ・モードで動作する。即ち、圧電セラミック・ディス
ク36に電圧が供給されたとき、ディスクはその容積を
変える。しかし、ディスク36は隔壁34にしっかりと
固定して取り付けられているので、湾曲が生じる。この
湾曲は、インク圧力室22内のインクを移動させ、イン
ク通路26を通って噴出口14に向かうインクの流れを
生じさせる。インク滴の噴出後のインク圧力室22のイ
ンクの補充は、圧力トランスデューサ36の逆方向の湾
曲により増大される。
【0026】上述したインク流動路28の他に、付加的
インク出口即ち浄化通路42が、インクジェット印刷ヘ
ッド9の本体10に形成される。浄化通路42は、噴出
口14近傍の内側の箇所でインク通路26に結合され
る。浄化通路42は、インク通路26から、浄化出口通
路46により浄化出口48に接続された出口即ち浄化多
岐管44へ通じる。浄化多岐管44は、通常、同様の浄
化通路42により、複数の噴出口14に関連する同様の
インク通路26に接続される。浄化動作の間、イは、矢
印50で示す方向に、浄化通路42、浄化多岐管44及
び浄化出口通路46を介して浄化出口48に流れる。
【0027】図5のインクジェット印刷ヘッドの製造を
容易にするために、本体10は好適には複数の積層され
たステンレス鋼板の様な板即ちシートで形成される。こ
れらのシートは、重ね合わせた関係で積み上げられる。
図5に示すインクジェット印刷ヘッドの形式では、これ
らのシートは、隔壁を形成すると共にインク入口12及
び浄化出口48を限定する隔壁板60と、インク圧力室
22、インク供給多岐管の一部及び浄化通路42の一部
を限定するインク圧力板62と、インク圧力室22の一
側面と境を接し、インク圧力室の入口20及び出口24
を限定し、インク供給多岐管16の一部を限定し、更に
浄化通路46の一部を限定する第1の分離板64と、通
路26の一部、入口チャンネル18及び浄化通路の一部
46の一部を限定するインク入口板66と、通路26及
び46の夫々一部を限定する第2の分離板68と、通路
26の主要部分即ちオフセット部分及び浄化多岐管44
の一部を限定するオフセット・チャンネル板70と、通
路26及び浄化多岐管44の夫々一部を限定する第3の
分離板72と、浄化チャンネル42及び浄化多岐管の一
部を限定する出口板74と、アレイの噴出口14を限定
する噴出口板76と、噴出口板を補強し、噴出口板をひ
っかいたり、又は他の損傷を与える可能性を最小にする
補強板78とを含む。様々なインク流出路、多岐管及び
圧力室を限定するために、図示する他に、更に板を使用
してもよい。例えば、インク圧力室を限定するために
に示す一枚の板ではなく複数の板を使用してもよい。
更に、全ての場合に、金属の個々の板又は層を使用する
ことが必要ではない。
【0028】図5のインクジェット印刷ヘッドの構成要
素の寸法例を、次の表1に示す。
【0029】
【表1】 図5のインクジェット印刷ヘッドの寸法及び共振特性 構成要素 断面 長さ 共振周波数 インク供給通路18 0.203mm×0.254mm 6.81mm 60-70kHz 隔壁板60 直径2.79mm 0.102mm 160-180kHz 圧力室22 直径2.79mm 0.457mm 分離板64 1.02mm×0.914mm 0.559mm オフセット通路71 0.508mm×0.914mm 2.95mm 65-85kHz 浄化通路42 0.102mm×0.254mm 8.89mm 50-55kHz オリフィス出口14 50-70μm 60-76μm 13-18kHz
【0030】適当な機械的留め具を使用することを含む
他の適当な手段で、インクジェット印刷ヘッドを形成す
る種々の層を配列し、結合してもよい。ただし、アンダ
ーソンその他による米国特許第4,883,219号明細
書には、「拡散結合及びろう付けによるインクジェット
印刷ヘッドの製造」と題し、金属層の結合の方法が記載
されている。
【0031】図1は、音響駆動器を使用するインクジェ
ットを駆動するために有効な本発明の駆動信号の第1実
施例を示す。この特定の駆動信号は、補充パルス成分1
02及び噴出パルス成分104を含む2極性電気パルス
100である。パルス成分102及び104は、電圧振
幅が異なることもある互いに反対の極性の電圧である。
これらの電気パルス即ちパルス成分102及び104
は、106で示す待機期間状態により分離される。この
待機期間106の持続時間は、図1において「B」で示
される。パルス成分102及び104の相対極性は、図
1に示す例と反対であってもよく、それは圧電セラミッ
ク駆動器36(図4)の極性により決まる。図1は駆動
信号の代表的形状を示しているが、電圧振幅、持続時
間、又は立ち上がり時間及び立ち下がり時間等の信号即
ちパルス成分の種々の属性については代表的値を示して
いない。更に、図1に示す駆動信号のパルス成分は、台
形波又は矩形波であるが、実際の動作では、これらのパ
ルス成分は、指数関数的に変化する立ち上がりエッジ及
び立ち下がりエッジを有する。
【0032】駆動信号の好適な実施例は、待機期間の1
06の間に維持されるゼロ電圧振幅を中心として変化す
る補充パルス成分及び噴出パルス成分を有する2極性電
気信号を含む。駆動信号は、待機期間状態の間維持され
る正又は負の基準電圧振幅を中心として変化する互いに
反対極性のパルスを含んでもよい。
【0033】この駆動信号を使用するインクジェット印
刷ヘッドの動作において、補充パルス成分102が供給
されると、インク圧力室22は膨張し、インクの噴出の
ためにインク供給源11からインク圧力室22にインク
を引き込み、インクを補充する。補充パルス成分102
の終点で、電圧がゼロに向かって下降するときに、イン
ク圧力室22は収縮し始め、インク・オリフィス103
(図5)内の前方のインク・メニスカスをオリフィス出
口14に向かって移動させる。待機期間Bの間、インク
・メニスカスは、オリフィス出口14に向かい移動し続
ける。噴出パルス成分104を供給すると、インク圧力
室22は、インク滴を噴出させるために急速に収縮す
る。インク滴の噴出後、補充パルス成分102が供給さ
れると、インク・メニスカスは、オリフィス出口14か
らインク・オリフィス103内に再び引き戻される。立
ち上がり及び立ち下がり時間を含む補充パルス成分10
2の持続時間は、インク・メニスカスがインク滴の噴出
のためにオリフィス出口14近傍の位置に戻るのに必要
な時間よりも短い。
【0034】通常、立ち上がり及び立ち下がり時間を含
む補充パルス成分102の持続時間は、インク・メニス
カスの共振周波数に関連する時間周期の1/2より短
い。更に好適には、この持続期間は、インク・メニスカ
スの共振周波数に関連する時間周期の約1/5より短
い。インクジェット印刷ヘッドのオリフィス内のインク
・メニスカスの共振周波数は、インクジェット印刷ヘッ
ド内部のインク量及びオリフィスの寸法を含めて、イン
クの性質から容易に計算可能である。
【0035】待機期間Bの持続時間が増加するにつれ
て、インク・メニスカスは、噴出パルス成分104が供
給される時点で、オリフィス出口14に更に近づくよう
に移動する。通常、待機期間106の持続時間及び噴出
パルス成分104の立ち上がり及び立ち下がり時間を含
む持続時間は、インク・メニスカスの共振周波数に関連
する期間の1/2よりも短い。上述の駆動信号により高
品質印刷及び高速度印刷を行うようにインクジェット印
刷ヘッドの動作を制御するためには、インク・メニスカ
スの共振周波数に関連する期間は、特定のインクジェッ
ト印刷ヘッドの構造及び特定のインクにより決まり、約
50μ秒から約160μ秒の範囲である。
【0036】高品質印刷及び高速度印刷を行うようにイ
ンクジェット印刷ヘッドの動作を制御する駆動信号のパ
ルス成分102及び104は、図1に示す様に、通常、
反対極性の台形波である。ただし、矩形波パルス成分を
使用してもよい。従来の信号源37を使用して、この形
状のパルスを発生してもよい。他の形状のパルスを使用
してもよい。通常、適切な補充パルス成分102は、イ
ンク圧力室22を膨張させてインク圧力室の容積を増加
させ、インク供給源11からインク圧力室にインクを補
充し、一方、インク・オリフィス103内のインクをイ
ンク圧力室22に向かって、オリフィス出口14から離
れるように引き戻す。待機期間106は、略0ボルトが
音響駆動器に供給される期間である。待機期間では、イ
ンク圧力室22が収縮により元の容積に戻り、インク・
オリフィス103内のインク・メニスカスが、オリフィ
ス内でインク圧力室22から離れ、オリフィス出口14
に向かって進む。噴出パルス成分104は、待機期間1
06の後に、インク圧力室22を急速に収縮させ、イン
ク圧力室の容積を減少させ、インク滴を噴出させる形状
となっている。
【0037】図1に示す形状のパルスから成る駆動信号
は、繰り返し供給されてインク滴を噴出させる。各イン
ク滴を噴出させるために、1つ又は複数のパルスは供給
してもよいが、好適な実施例では、少なくとも1つのこ
の様な合成信号を使用して、各インク滴を形成する。更
に、待機期間106の持続時間は、インク滴を噴出する
ためにインク圧力室22を収縮させる前の各待機期間
に、インク・オリフィス103内のインク・メニスカス
が、オリフィス内の略同じ位置に進むように設定され
る。噴出パルス成分104に応答して圧力パルスが到来
する時点で、インク・メニスカスには、インク・オリフ
ィス103内でオリフィス出口14に向かう前方向の速
度が残っていることが望ましい。この状態で、インクジ
ェット印刷ヘッドの外に進む液体列は、適当に1つのイ
ンク滴に合体し、不要周囲(サテライト)インク滴の形
成が最小限になる。インク・メニスカスは、オリフィス
出口14を越える位置には進んではならない。噴出パル
ス104が供給される前に、インクがオリフィス出口1
4を越えて突出すると、オリフィス出口の周囲の表面が
濡れる。この濡れは、インク滴に非対称の偏向及び不均
一のインク滴を生じさせ、異なるインク滴が形成され
て、噴出される。圧力パルスの前に、略同じ位置にイン
ク・メニスカスを位置させることにより、広範囲のイン
ク滴噴出速度での、印刷媒体へのインク滴飛翔時間の均
一性が高められる。
【0038】高印刷品質及び高印刷速度を実現するため
の異なるパルス成分の持続時間の具体例では、補充パル
ス成分102のA部分は5μ秒であり、その立ち上がり
時間及び立ち下がり時間は夫々1μ秒及び3μ秒であ
り、待機期間Bは15μ秒であり、噴出パルス成分10
4のC部分は5μ秒であり、その立ち上がり時間及び立
ち下がり時間は補充パルス成分102と同じである。上
述した様に、図1は駆動信号の形状を示しているが、そ
の種々の属性の個々の値は示していない。高品質印刷及
び高速度印刷を実現するためには、流体システムを出来
るだけ速く初期状態を戻すために、これらの持続時間を
短縮することが効果的であり、これにより速い印刷速度
が可能になる。しかし、このことは、上記の持続時間を
短縮することにより整流拡散が起き、印刷品質が低下す
る問題を無視している。駆動信号に関して、インク滴繰
り返し速度を増加させる他の方法は、噴出パルス成分の
後方エッジから補充パルス成分の前方エッジまでの期間
を減少させることである。この方法は、立ち上がり及び
立ち下がり時間を含むパルス成分の持続時間に影響を与
えないという利点がある。
【0039】図6は、図5に示す型のインクジェット印
刷ヘッドを、上述の具体例の持続期間を含む駆動信号で
駆動したときに噴出されるインク列の形状の変化をモデ
ル化した図である。図6a、図6b及び図6cは、待機
期間の106を変化させたことによる効果を示す。図6
aでは、待機期間Bの持続時間は18μ秒でり、インク
120の主容積は、長い先細りの尾部122に接続され
た球状頭部を形成し、この糸状体の尾部及びオリフィス
出口14間の位置で、インクの分離が起きる。インク滴
が分離された後、尾部122は頭部120への合体を開
始し、印刷媒体に到達するときまで、球状インク滴を形
成しない。しかし、印刷媒体に対するインク列の速度が
比較的に速いために、印刷媒体上に生じるスポット(斑
点)は、球体に近くなる。
【0040】図6bでは、待機期間Bの持続時間は8μ
秒で、インク滴分離点124はインク120の主容積に
隣接し、インク滴がきれいに形成される。この場合、イ
ンク滴の尾部122は、オリフィス出口14に対して順
次遮断が起き、主インク滴に比較して低い速度で移動す
る不要周囲インク滴が形成される。したがって、主イン
ク滴120及び不要周囲インク滴112は、印刷媒体上
に2個の別個のスポットを形成する。
【0041】図6cでは、待機期間102は0μ秒であ
り、インク滴分離点124は、主インク滴容積120の
近傍で起きる。しかし、残りのインク糸状体122に
は、糸状体が分離し、不要周囲インク滴を形成する可能
性のある位置である126及び128で示す弱点があ
る。
【0042】図6は、図1に示す駆動信号を使用した、
図5のインクジェット印刷ヘッドの動作の理論的モデル
の結果を表している。図6の各々では、インク・オリフ
ィス103の中心線上の形成されたインク滴の上半分の
みを示す。
【0043】パルス成分102の様な補充パルスのみ、
又はパルス成分104の様な噴出パルスのみであって
も、満足な印刷性能を得られない。実際には、補充パル
ス成分102のみを使用すると、インク滴噴出速度を、
例えば、約3.5m/s以下に制限する傾向がある。更
に、インク滴の速度を増加させる目的で、補充パルス1
02の振幅及び持続時間を増加させると、メニスカスを
インク・オリフィス103の上流端に引き戻し、気泡の
吸い込みが生じる。高インク滴噴出速度で動作するよう
にインクジェット・プリンタの機能を高めるには、6m
/s以上の高インク滴速度が必要である。
【0044】図7は、補充パルス及び待機期間成分なし
で、噴出パルス成分104のみを使用すると、インク滴
噴出速度の変化に従ってインク速度が律動的振動変化す
ることを示している。この律動的振動の周波数は、イン
ク室22及びインク・オリフィス出口14間のインク流
動路を形成するチャンネル部分内の残響共振の周波数と
同じになるように、表1の情報から変更される。図9に
示す様に、噴出パルス成分のみの駆動信号は、残響から
エネルギーをゆっくりと除去する周波数スペクトルを有
する駆動パルスを使用することにより、速度即ち飛翔時
間変化を平滑化する。しかし、この場合、インク量/滴
は、噴出速度の増加と共に減少する。言い替えれば、イ
ンク圧力室は、全てのインク滴噴出速度で、インク噴出
間に適切にインクを補充をしない。他の欠点は、インク
の補充に関係なく噴出されるインク毎に、同量のエネル
ギーが圧電素子に供給されるので、小さいインク滴が速
い速度で進行する傾向があるということである。図9に
示す様に、通常、インク滴速度は、図7の顕著な律動的
なインク滴速度振動はないが、インク滴噴出速度が増加
するにつれて増加する(インク滴飛翔速度の減少に対
応)。
【0045】噴出パルスのみの駆動信号の欠点は、始め
にインク室22を補充するための補充パルス成分104
を作用させることにより、解消することができる。更
に、インクジェット印刷ヘッドが、図5のオフセット・
チャンネル71を有するように設計されれば、このチャ
ンネルにもインクが補充される。インク室は、インク供
給溜まりからのインク入口18及び20を大きくするこ
とにより、能動的補充パルス成分104を使用すること
なく、インクが十分に補充される。しかし、その場合、
インク滴をインク噴出オリフィス14から放出させるよ
うに、隔壁が内側に移動すると、インク室22内に設定
された圧力パルスは、オリフィス26に通じる導管及び
インク入り口18、20にも流れる。インク入口に進行
する圧力波の一部は、インク滴の形成には使用されない
エネルギーとなる。補充パルス成分を使用すると、イン
ク滴の形成に使用されないエネルギーの損失を減少させ
るために、入口を小さくすることができ、インクジェッ
トがアレイの一部であれば、インク貯水部即ち多岐管1
6で生じる圧力パルス障害からインク室22及び通路2
6を分離する。この分離は、入口開口20が大きくされ
るほど、段々に減少する。したがって、インク入口の大
きさ、補充パルス成分102の強さ、及び噴出パルス成
分104の間で調和が取られる。強い補充パルス成分1
02は、インクを、入口開口20を介して圧力室22に
引き込む。補充パルス成分が強すぎると、オリフィス出
口を介して気泡を吸い込む。同様に、噴出パルス成分1
04が強すぎると、補充パルス成分がインク入口20を
介して引き込むことができるインク滴より多いインクを
噴出する。これらのパラメータの好適な関係は、表1に
示され、上述のパルス成分の持続時間の例で述べられて
いる。
【0046】駆動信号に補充パルスを含ませることによ
り、インク・オリフィス出口14の周囲の外部表面から
インクを引き戻すことができることに留意されたい。こ
の作用により、インク出口の周囲の表面をインクで濡ら
し、オリフィス出口でインクの進行をずらしたり、遮断
する虞がなくなる。
【0047】また、待機期間Bの持続時間は、オリフィ
ス103内の引っ込んだメニスカスがオリフィス出口1
4に到達するための時間と、噴出パルス成分104によ
り発生し正の圧力パルスが到来するときのインクの速度
との合成関数である。引っ込んだメニスカスは、パルス
成分からの圧力パルスが供給される直前に低速度でオリ
フィス出口14に到達することが望ましい。
【0048】図8は、図5に示すインクジェット印刷ヘ
ッドを図1の駆動信号で駆動した場合のインク滴飛翔時
間対インク滴噴出繰り返し速度を示すグラフ図である。
図9は、図5に示すインクジェット印刷ヘッドを図1の
駆動信号の噴出パルス成分のみで駆動した場合のインク
滴飛翔時間対インク滴噴出繰り返し速度を示すグラフ図
である。この図8では、インク飛翔時間は10,000
滴/秒のインク滴を噴出するインク滴噴出繰り返し速度
に至る全範囲にわたり略一定している。図8の例では、
印刷媒体は、インクジェット印刷ヘッドのオリフィス出
口14から1mmだけ離間されており、6m/秒を超え
るインク滴速度が得られる。図8に示す様に、1,00
0滴/秒から10,000滴/秒の範囲のインク滴噴出
繰り返し速度で、30μ秒の最大偏差が観察された。更
に、8,500滴/秒以下では、この偏差は更に小さく
なる。この様に、補充パルス成分102、待機期間10
6及び噴出パルス成分104を有する駆動信号を適切に
選択することにより、広範囲のインク滴噴出繰り返し速
度で、略一定のインク滴飛翔時間を得ることができる。
インク飛翔時間が略一定であると、高品質印刷が得られ
る。
【0049】更に、インク滴の速度は、比較的に速く、
均一な大きさのインク滴が使用できる。駆動信号の補充
パルス成分は、噴出されたインク滴を所望の軌道からず
らす原因となるオリフィス出口14の周囲面の濡れを減
少させるので、インク滴の軌道は、全インク滴噴出繰り
返し速度でオリフィス・フェースプレートに対して略直
角になる。更に、この駆動信号は、インク・オリフィス
103の導管内の高温溶解インクの様な高粘性インク
が、図5に示すインクジェット印刷ヘッドのオフセット
・チャンネル71内で残響する圧力パルスの内部空洞音
響吸収体として働くようにするので、不要周囲インクの
形成を最小限にできる。また、図1に示す種類の比較的
簡単な駆動信号は、従来の市販されたデジタル電子駆動
信号源により発生できる。
【0050】高品質印刷及び高速度印刷を行うための駆
動パルス成分102、104及び106の好適な関係
は、実験的に決められる。しかし、これらの好適な関係
は、高品質印刷及び高速度印刷を行うことはできるが、
整流拡散による印刷品質の低下の潜在的問題を解決して
いない。図5に示す様なインクジェット印刷ヘッドで
は、待機期間106を少なくとも約8μ秒、好適にはそ
れ以上にすることにより、均一且つ一貫したインク滴を
形成することができる。待機期間を短くした場合は、不
要周囲インク滴が形成される可能性が増加する。膨張パ
ルス成分即ち補充パルス成分102の立ち上がり及び立
ち下がり時間を含む持続時間は、約16〜20μ秒であ
る。補充パルスの持続時間が増加するほど、オリフィス
出口14に気泡を吸い込む可能性が増加する。高品質印
刷及び高速度印刷を行うために、立ち上がり及び立ち下
がり時間を含む補充パルス成分の持続時間は、インク滴
の形成の間、噴出されるインクを元の位置に戻すのに必
要な時間以上に長くするべきではない。補充パルス成分
の持続時間が短くなるほど、達成可能なインク繰り返し
速度が増加する。しかし、上述した様に、これは、補充
パルス成分の持続時間が短くなると、整流拡散の結果、
印刷品質が低下するという問題を抱えている。通常、高
品質印刷及び高速度印刷を行うための補充パルス成分1
02の立ち上がり及び立ち下がり時間を含む持続時間
は、通常7μ秒以下である。高品質印刷及び高速度印刷
を行うための噴出パルス成分104の立ち上がり及び立
ち下がり時間を含む持続時間は、通常、長くて16〜2
0μ秒であり、短くて約6μ秒である。
【0051】高品質印刷及び高速度印刷を行うためにイ
ンクジェット印刷ヘッドの動作を制御するこれらの駆動
信号パラメータの範囲では、図5に示す種類のインクジ
ェット印刷ヘッドは、10,000滴/秒までのインク
滴噴出繰り返し速度で動作した。インク滴速度の不均一
性は、連続的及び間欠的インク滴噴出状態で、15%よ
り低いことが観察された。その結果、インク滴位置の誤
差は、最大繰り返し速度8kHzで印刷する11.81
滴/mmで、1ピクセルの1/3より大幅に小さい。更
に、170pl(ピコ・リットル)/滴±15plの測
定インク滴量が観察され、高温溶解インクを使用すると
き、11.81滴/mmのアドレス可能性で印刷するの
に適している。更に、この状態では、殆ど又は全く不要
周囲インク滴が発生しない。
【0052】図1に示す様に、第1パルス成分即ち補充
パルス102は、電圧振幅に到達し、補充パルスの終点
までのこの振幅を保持する。更に、第2パルス成分即ち
噴出パルス成分104は負の電圧振幅に到達し、噴出パ
ルスの終点までこの振幅を保持する。この振幅値は変更
することができるが、高品質印刷及び高速度印刷を行う
ためには、図示する様に、これらの駆動パルス成分は台
形で、各々の電圧振幅への立ち上がり時間から立ち下が
り時間までの時間は異なる。高品質印刷及び高速度印刷
を行うための駆動信号では、2つのパルス成分102及
び104の立ち上がり時間は、約1μ秒から約4μ秒で
あり、電圧振幅を約2μ秒から約7μ秒維持し、続く待
機期間106を約8μ秒より長くする。高品質印刷及び
高速度印刷を行うための他の駆動信号では、第1パルス
即ち補充パルスの立ち上がり時間は約2μ秒であり、電
圧振幅を約3μ秒から約7秒維持し、その立ち下がり時
間は約2μ秒から約4秒であり、待機期間106は約1
5μ秒から約22秒である。更に、この場合、噴出パル
ス成分104は、極性が反対である他は、補充パルス成
分102と同様である。
【0053】高速度印刷で高品質印刷を行うためには、
これらの持続時間は、インクジェット印刷ヘッドの設計
及びインクの違いにより、異なることに留意されたい。
噴出パルス成分104の供給により生じる各圧力波の発
生時に、インク・メニスカスは前方に進行しており、共
通位置にあることが望ましい。駆動信号のパラメータ
は、この状態を得るために変更できる。
【0054】インクジェット印刷ヘッドの基本音響共振
周波数で最小のエネルギー量を供給するように、駆動信
号の形状を決める、最適の印刷品質及び印刷繰り返し速
度が得られることが分かった。インクジェット印刷ヘッ
ドの基本音響共振周波数は、周知の方法で求められる。
インクジェット印刷ヘッドの基本共振周波数は、インク
・メニスカスの共振周波数に相当する。図5に示すオフ
セット・チャンネル71を有するインクジェット印刷ヘ
ッドを使用するとき、通常、基本共振音響周波数は、オ
リフィス・チャンネル内の液体インクを介する定在波共
振周波数に相当する。インクジェット印刷ヘッドの基本
音響共振周波数で最低エネルギー量である駆動信号を使
用することにより、この基本音響共振周波数での残響は
最小になる。残響が起きると、インクジェット印刷ヘッ
ドから印刷媒体へのインク滴の飛翔時間の均一性が妨害
される。
【0055】通常、高品質印刷及び高速度印刷を行うた
めの駆動信号の調整を補助するために、フーリエ変換又
はスペクトル分析を完全な駆動信号に関して行う。完全
な駆動信号とは、1個のインク滴を形成するために使用
する完全なパルスの組をいう。図2に示す種類の駆動信
号の場合、完全な信号は、補充パルス成分102、待機
期間106及び噴出パルス成分104を含む。従来のス
ペクトラム・アナライザを使用して、異なる周波数で駆
動信号のエネルギー量を決めてもよい。このエネルギー
量は、高さ即ちピークから谷即ち底部まで、周波数と共
に変化する。ある周波数での駆動信号の最低エネルギー
量部分は、他の周波数のピーク・エネルギー量より十分
に低い。例えば、最低エネルギー量は、他の周波数の駆
動信号の最大エネルギー量より少なくとも約20dB小
さい。
【0056】駆動信号は、インクジェット印刷ヘッドの
基本音響共振周波数に略等しくなるように、この最小エ
ネルギー量の周波数をずらして調整される。この方法で
調整された駆動信号を使用すると、駆動信号のエネルギ
ーは、基本音響共振周波数で最小になる。その結果、イ
ンク滴を形成する際のインクジェット印刷ヘッドの共振
周波数の影響は最小になる。特定の方法に限定されない
が、高品質印刷及び高速度印刷を行うために駆動信号を
調整する好適な方法は、第1パルス即ち補充パルス成分
102の立ち上がり及び立ち下がり時間を含む持続時
間、及び待機期間106を調整する。これらのパルス成
分は、インクジェット印刷ヘッドの基本音響共振周波数
に略等しい周波数で、駆動信号のエネルギー量が最小に
なるまで調整される。
【0057】長時間にわたりインクジェット印刷ヘッド
を連続して動作させると、整流拡散により印刷の品質が
低下する。これは、特に、インク滴繰り返し速度が高い
場合に起こる。整流拡散は、インクジェット印刷ヘッド
のインク圧力室内のインクに対して、周囲圧力よりも低
い圧力で、圧力パルスを繰り返し供給することにより生
じるインクに溶解した気泡の成長を意味する。インクジ
ェット印刷ヘッドを大気中で動作させるとき、周囲の圧
力は大気圧である。気泡の成長は、上述の様に、インク
ジェット印刷ヘッドのインク圧力室内のインクに大気圧
より低い圧力を供給したことにより起こる。上述の第1
実施例は、急速なインク滴繰り返し速度でインクジェッ
ト印刷ヘッドを動作させた場合の一例を示している。本
発明の第2実施例は、整流拡散による印刷品質低下を軽
減することを目的としている。好適な実施例では、高印
刷速度で、均一な高品質印刷が得られる。
【0058】印刷品質の低下のオンセット(開始)に要
する期間は、「オンセット期間」呼ばれ、インク滴繰り
返し速度、インクジェット印刷ヘッドの連続的動作を開
始する前の、インクに溶解した気体の量、インクの粘
性、インクの濃度、インク内の気体の拡散率及びインク
に溶解した気泡の半径により決まる。圧力が周囲の圧力
より低いために、圧力パルスの大きさが、インク滴繰り
返し速度のしきい値より高いインク滴繰り返し速度で、
圧力パルスの大きさがしきい値を超えると、気泡成長が
起きる。溶解した気体に対する飽和レベルより低い量の
気体が溶解したインクでは、8kHzのインク滴繰り返
し速度でインクジェット印刷ヘッドを10分間連続して
動作させると、インク滴噴出の欠陥及び関連する印刷品
質の低下が起こる。溶解した気体が飽和したインクで
は、同じインク滴繰り返し速度で動作させて、印刷品質
の低下が起こるまでに、わずかに30秒であった。
【0059】第2実施例では、周囲の圧力よりも低い圧
力状態で、気泡成長を誘発する圧力しきい値よりも低い
圧力をインクに供給する駆動信号で、インクジェット印
刷ヘッドの動作を制御して、DOD型インクジェット印
刷ヘッドの気泡成長を抑制する。第2実施例では、第1
実施例の高繰り返し速度で高品質印刷を行うための駆動
信号に変更を加え、結果的に得られた駆動信号は、広範
囲のインク滴噴出繰り返し速度で、均一な高品質印刷を
行う。
【0060】得られた駆動信号は、インクジェット印刷
ヘッドのインク圧力室内のインクに周囲圧力よりも低
く、整流拡散を誘発する圧力しきい値よりも低い圧力を
供給して、高繰り返し速度で高品質印刷を行う。第2実
施例の他の形式では、第1実施例の高繰り返し速度での
高品質印刷を行うことなく、整流拡散により生じる印刷
品質の低下を軽減する。例えば、本発明は、2極性駆動
信号に制限されないが、好適な第2実施例を実現するた
めに、上述の方法によりインクジェット印刷ヘッドの動
作を制御する駆動信号を得て、この駆動信号に変更を加
え、インクジェット印刷ヘッドのインク圧力室内のイン
クに、周囲の圧力より低い圧力で、低い圧力を加える駆
動信号を得る。好適な実施例では、補充パルス成分及び
噴出パルス成分の両方に変更を加えるが、他の実施例で
は、これらのパルス成分の一方のみに変更を加えてもよ
い。変更された駆動パルスでは、補充パルス成分及び噴
出パルス成分は、立ち上がり及び立ち下がり時間を除き
各電圧振幅で、更に長い持続時間を有する。更に、変更
された駆動信号の補充パルス成分及び噴出パルス成分の
立ち上がり及び立ち下がり時間は、延長されている。こ
れにより、インクジェット印刷ヘッドの音響駆動器に供
給される電圧振幅の急速な変化により、インク圧力室内
に周囲圧力より低い大きな圧力パルスが起きるのを防止
する。好適な実施例では、パルス成分の立ち上がり及び
立ち下がり時間は共に延長されるが、これらの少なくと
も一方を延長すれば、整流拡散による印刷品質の低下を
軽減することができる。補充パルス成分及び噴出パルス
成分の各電圧の大きさも減じられている。更に、補充パ
ルス成分の電圧の大きさは、噴出パルス成分の電圧の大
きさに対して減じ、変更された駆動信号を得る。
【0061】噴出パルス成分の電圧振幅に比較して、補
充パルス成分の電圧振幅を減少させることにより、イン
クジェット印刷ヘッドのインク圧力室内のインクに供給
される周囲圧力より低く圧力の大きさは減少させる。し
かし、インクジェット印刷ヘッドを高インク滴繰り返し
速度で動作させる場合、この様な電圧振幅の減少は、イ
ンクジェット印刷ヘッドの動作を長くすることに関し、
他の問題を生じさせる。
【0062】高インク滴繰り返し速度では、インクジェ
ット印刷ヘッドは、高インク流動速度で動作する。この
動作の間、補充パルスは、インクジェット印刷ヘッドの
入口チャンネルに主に存在する流動抵抗に打ち勝つこと
により、インク圧力室に適切な補充を行うこと等の種々
の働きをする。補充パルス成分は、この働きを低い繰り
返し速度で行うが、インク流動抵抗は、関連する高イン
ク流動速度による高インク滴繰り返し速度で更に著しく
なる。これらの流動抵抗は、数個のインクジェット印刷
ヘッドが共通の導管を介してインクに配給されたインク
ジェット印刷ヘッド・アレイ内で強くなる。導管を共有
する全部のインクジェット印刷ヘッドが、高インク滴繰
り返し速度で同時に動作するのであれば、関連する流動
抵抗は重要である。この様な状態では、長い動作の後、
インクジェット印刷ヘッド・アレイでは、時間と共にイ
ンクの流れが減少し、インク圧力室は適切なインクの補
充を行うことができない。結局、1個又は複数個のイン
クジェット印刷ヘッドは、同時にインクの噴出を停止
し、「スタベーション(不足)」と呼ばれる状態にな
る。
【0063】スタベーションを防止し、インク圧力室に
適切な補充を行う1つの方法は、噴出パルス成分の電圧
振幅に対する補充パルス成分の電圧振幅を増加させるこ
とである。この様に、(1)補充パルス成分の相対電圧
振輻を低くして、インク圧力室内のインクに供給される
周囲圧力より低い圧力の大きさを低くすることにより、
整流拡散を減少させること、及び(2)スタベーション
を防止するために補充パルス成分の相対電圧振幅を増加
させることは、トレードオフの関係即ち同時に両方を満
させることができない関係にある。これらの相対電圧
振幅に関するインクジェット印刷ヘッドの好適な動作範
囲は、噴出パルス成分の電圧に対する補充パルス成分の
電圧の比として、数値で表される。この比を「アスペク
ト比」という。高インク滴繰り返し速度でインクジェッ
ト印刷ヘッドを長く動作させることができる本発明の好
適な実施例でのアスペクト比は、1.15〜1.3であ
る。他の実施例では、1.0〜1.4のアスペクト比
で、長い動作が可能になる。
【0064】上述した変更された駆動信号によるインク
ジェット印刷ヘッドの動作は、高い印刷速度で高品質印
刷を行うと共に、整流拡散による印刷品質の低下を軽減
する。例えば、図2に示す駆動信号は、図5に示す種類
のインクジェット印刷ヘッドを10kHzで動作させ
て、高品質印刷を行う。図3に示す駆動信号は、図5に
示す種類のインクジェット印刷ヘッドを8kHzで動作
させて整流拡散による印刷品質の低下を軽減し、高品質
印刷を行う。
【0065】図2は、特定のインクジェット印刷ヘッド
の音響駆動器用の図1に示す種類の駆動信号を示す。図
2は、補充パルス成分及び噴出パルス成分の各電圧振幅
の持続時間と、待機期間の持続時間と、補充パルス成分
及び噴出パルス成分の各電圧振幅を示している。更に、
パルス成分の立ち上がり及び立ち下がり時間も示されて
いる。
【0066】図3は、同様のインクジェット印刷ヘッド
の音響駆動器用の本発明による変更された駆動信号を示
す。図2の駆動信号と同様に、図3の変更された駆動信
号は、順次続く補充パルス成分、待機期間及び噴出パル
ス成分から成る。図3では、補充パルス成分の電圧振幅
は、噴出パルス成分の電圧振幅の1.4倍である。図3
の補充パルス成分の電圧振幅は、図2のこのパルス成分
の電圧振幅の約50%である。更に、図3の変更された
駆動信号の補充パルス成分及び噴出パルス成分の電圧振
幅での持続時間は、図2の駆動信号のものより長い。更
に、図3の変更された駆動信号の補充パルス成分及び噴
出パルス成分の立ち上がり及び立ち下がり時間は、図2
の対応する立ち上がり及び立ち下がり時間の約2倍であ
る。
【0067】上述した様に、補充パルス成分及び待機期
間の持続時間は、図2の駆動信号の周波数スペクトルが
インクジェット印刷ヘッドの基本音響共振周波数で最小
エネルギーになるように選択される。この場合、この周
波数は、オフセット・チャンネル内の液体インクを介す
る定在波共振周波数である。同じ調整が、図3の変更さ
れた駆動信号に行われる。図10は、図2の駆動信号及
び図3の変更された駆動信号の周波数スペクトルを比較
するためのグラフ図である。グラフ図より、2つの駆動
信号は共に、周波数略85kHzでエネルギー量が最小
になる。この周波数は、特定のインクジェット印刷ヘッ
ド及び使用する特定のインクに対する定在波周波数であ
る。気体飽和インク及び8kHzのインク滴繰り返し速
度の図3の変更された駆動信号を使用したインクジェッ
ト印刷ヘッドでは、1時間10分間インクジェット印刷
ヘッドを連続的に動作させても印刷品質の低下は起きな
い。これに対して、図2に示す信号では、同じインクジ
ェット印刷ヘッドを30秒間連続して動作させると、印
刷品質が低下する。
【0068】インクジェット印刷ヘッドの理論的モデル
で、図5に示す種類のDOD型インクジェット印刷ヘッ
ドインク圧力室内の圧力を調べる。この理論的モデルで
は、圧縮液体は、周囲の圧力よりも低い大気より低い液
体圧力に対抗できると仮定する。大気即ち周囲の圧力よ
り低い圧力を、「負の圧力」と呼ぶ。図11は、この理
論的モデルに基づく図2の駆動信号に関するインク圧力
室内の圧力を示すグラフ図である。図12は、図3の変
更された駆動信号に関し同一のモデルに基づくインク圧
力室内の圧力を示すグラフ図である。なお、図11及び
図12において、圧力の単位PSIGは、「Pound
s per Square InchGauge(1平
方インチ当たりのポンドの規格)」を表す。図11及び
図12に示すこれらの理論的モデルの結果は、補充パル
ス成分により生じるインク圧力室内の周囲圧より低い圧
力の発生を示す。この圧力は、両方の駆動信号の噴出パ
ルス成分が終了する直後に起こる。大気又は周囲の圧力
以下の圧力は、整流拡散に関係する。大気又は周囲の圧
力以上でインク圧力室内で起きる圧力は、インク内に溶
解した気泡を圧縮又は収縮させることはないので、整流
拡散を生じさせない。理論的なモデルによれば、図9に
示す変更された駆動信号の補充パルス成分は、インク圧
力室内のインクに周囲圧より低い圧力を供給する。この
圧力は、図2の駆動信号の補充パルス成分により供給さ
れる周囲圧より低い圧力の半分以下である。
【0069】整流拡散の理論的モデルにより、液体中に
存在する1つの気泡の気泡成長を調べる。この理論的モ
デルでは、圧力パルスを継続的に液体に供給する。図1
3は、8kHzのインク滴繰り返し速度の図2の駆動信
号及び図3の変更した駆動信号に関する理論的結果を示
す。なお、図13は、気泡の半径μM(ミクロン)と、
液体内に溶解する気体のしきい値濃度の比(C∞/
0 TH との関係を示す。縦軸の単位において、C 0 は、
周囲大気圧力における液体内に溶解する気体の飽和濃度
であり、C∞は、気泡からかなり離れた位置、例えば、
半径0.5μMの気泡から10μM以上離れた位置にお
ける液体内に溶解する気体の濃度であり、これらの濃度
の比をしきい値濃度比(C∞/C 0 TH として表す。こ
の図13から、インクに溶解する気体の飽和濃度が、
定の半径の気泡の整流拡散による気泡成長のオンセット
に関し、上述の2つのインクの濃度の比として得られ
る。このモデルでは、インクの気体飽和濃度の7%より
高い溶解気体濃度のインクに関し、8kHzのインク滴
繰り返し速度で供給される図2の駆動信号は、半径1μ
mの気泡に気泡成長を生じさせる。図3の変更された駆
動信号では、半径1μmの気泡の気泡成長のオンセット
に対する濃度のしきい値は、インクの飽和濃度の140
%である。なお、飽和濃度7%及び140%は、198
4年9月に出版された雑誌「ウルトラソニクス(Ultras
onics)」の「アコウスティク・カビテーション・シリ
ーズ(Acoustic Cavitation series)」の第5部で、第
215ページ〜第223ページに掲載されたエル・エイ
・クラム(L.A.Crum)著「整流拡散(Rectified Diffus
ion)」という論文に記載された理論的モデルに関連し
た計算式から導出されたものである。
【0070】図3の変更された駆動信号は、インクジェ
ット印刷ヘッドのインク圧力室内のインクに供給される
周囲圧より低く圧力を減少させ、それにより、インク内
に溶解する気泡の成長を抑制し、それに関連する印刷品
質の低下を抑制する。ただし、変更された駆動信号の特
定の例では、インクジェット印刷ヘッドのオリフィス出
口を濡らすことがある。オリフィス出口を濡らすことに
関連するインクジェット印刷ヘッドの性能の問題は、上
述した通りである。経験的には、このオリフィスの濡れ
は、補充パルス成分の電圧振幅が、噴出パルス成分の電
圧振幅の0.7倍よりも小さいときに生じる。
【0071】本発明は、多様なインクを使用するインク
ジェット印刷ヘッドに適用可能である。室温で固体状の
相変化インクの他に、室温で液体状のインクも使用でき
る。好適な相変化インクの一例は、1989年12月2
6日に発行された「相変化インクキャリア成分及びそれ
により生成される相変化インク」と名称の米国特許第
4,889,560号に開示されている。
【0072】
【発明の効果】インク圧力室を膨張させてインク供給源
からのインクをインク圧力室に補充すると共に、インク
滴噴出オリフィス内でインク滴噴口からインク圧力室に
向かってインクを引き戻す補充パルス成分及び、インク
圧力室を収縮させてインク噴出口からインクを噴出させ
る噴出パルス成分間の待機期間に、インク滴噴出オリフ
ィス内のインクがインク噴出口に向かって進み、略同一
の位置に到達するようにすることにより、広範囲のイン
ク滴噴出繰り返し速度で、インク媒体へのインク滴飛翔
時間を均一に保ち、高品質印刷を行うことができる。と
ころで、上述の如く、インク圧力室内のインクに繰り返
し供給する圧力が大気圧よりも低い際に上記インク圧力
室内の上記インクに溶解した気泡が成長して(整流拡
散)、印刷品質を低下させる。また、上述の如く、高イ
ンク滴繰り返し速度では、インクの噴出を停止する状態
(スタベーション)になる。そこで、本発明では、補充
パルス成分の電圧振幅を噴射パルス成分の電圧振幅の
1.0〜1.4倍として、スタベーションを防止しなが
ら、整流拡散による印刷品質の低下を防いでいる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のインクジェット印刷ヘッドの駆動方
法に使用する駆動信号の第1実施例を示す波形図。
【図2】 本発明の駆動方法に使用する駆動信号の第2
実施例を示す波形図。
【図3】 本発明の駆動方法に使用する駆動信号の他の
第2実施例を示す波形図。
【図4】 インクジェット印刷ヘッド及び印刷媒体を示
す簡略図。
【図5】 本発明の駆動方法を適用可能なインクジェッ
ト印刷ヘッドを一例を示す断面図。
【図6】 インクジェット印刷ヘッドから噴出されたイ
ンク列の形状を示す説明図。
【図7】 噴出パルス成分のみでインクジェット印刷ヘ
ッドを駆動した場合のインク滴速度対インク滴噴出繰り
返し速度を示すグラフ図。
【図8】 図1の駆動信号で駆動した場合のインク滴の
飛翔時間対インク滴噴出繰り返し速度を示すグラフ図。
【図9】 噴出パルス成分のみでインクジェット印刷ヘ
ッドを駆動した場合のインク滴の飛翔時間対インク滴噴
出繰り返し速度を示すグラフ図。
【図10】 図2及び図3の駆動信号の周波数スペクト
ルを示すグラフ図。
【図11】 図5に示すインクジェット印刷ヘッドの理
論的モデルにおいて、図2の駆動信号によりインク室内
のインクに供給される圧力を示すグラフ図。
【図12】 図5に示すインクジェット印刷ヘッドの理
論的モデルにおいて、図3の駆動信号によりインク室内
のインクに供給される圧力を示すグラフ図。
【図13】 整流拡散の理論的モデルを示すグラフ図。
【符号の説明】
11 インク供給源 14 インク噴射口 22 インク圧力室 103 インク滴噴出オリフィス 36 駆動手段
フロントページの続き (72)発明者 ジョイ・ロイ アメリカ合衆国オレゴン州97224 タイ ガード サウスウエスト スカーレッ ト・プレイス 14468 (72)発明者 スーザン・キャロル・スコーニング アメリカ合衆国オレゴン州97210 ポー トランド ノースウエスト アービン グ・ストリート 2247 (72)発明者 ジェフリー・ジェイ・アンダーソン アメリカ合衆国ワシントン州98607 カ マス サウスイースト サーティーフォ ース・ウェイ 16509 (72)発明者 ジェイムス・ディー・ビューラー アメリカ合衆国オレゴン州97030 グレ シャム ノースウエスト ノーマン 2427 (72)発明者 ロナルド・エル・アダムス アメリカ合衆国オレゴン州97229 ポー トランド ノースウエスト バウワー・ ウッズ・ドライブ 2745 (56)参考文献 特開 昭62−25059(JP,A) 特開 昭64−11840(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インク供給源に結合されたインク入り口
    及びオリフィスに結合されたインク出口を有するインク
    圧力室と、電気信号に応答して上記インク圧力室の容積
    を制御して上記オリフィスからインク滴を噴射する駆動
    器とを具え、上記駆動器により上記インク圧力室内のインクに繰り返
    し供給する圧力が大気圧よりも低い際に上記インク圧力
    室内の上記インクに溶解した気泡が成長して印刷品質を
    低下させるのを防ぐインクジェット印刷ヘッドの駆動方
    法であって、 上記インク供給源から上記インクを上記インク圧力室に
    補充する補充パルス成分と、該補充パルス成分後の待機
    期間と、及び該待機期間後に生じ上記補充パルス成分と
    逆極性で上記インク滴を噴射する噴射パルス成分とから
    成る2極性電気信号を上記駆動器に供給し、 上記補充パルス成分の電圧振幅を上記噴射パルス成分の
    電圧振幅の1.0〜1.4倍とする ことを特徴とするイ
    ンクジェット印刷ヘッドの駆動方法。
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