JP2929109B2 - 光学薄膜及びその製造方法 - Google Patents
光学薄膜及びその製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、高屈折率、高透過率を有する光学薄膜及
びその製造方法に関する。
びその製造方法に関する。
[従来の技術及び発明が解決しようとする課題] 高屈折率、高透過率を有する材料としては、ZnS薄膜
が知られている。
が知られている。
ZnS薄膜は、従来、蒸着法やスパッタリング法で作製
されており、波長633nmの光に対するこの薄膜の屈折率
は、2.35という高い値であることが報告されている。
されており、波長633nmの光に対するこの薄膜の屈折率
は、2.35という高い値であることが報告されている。
しかしながら、従来のZnS薄膜を反射防止膜、広帯域
ミラー、ウェイブガイド、マイクロレンズ等、高透過率
を前提としつつ、極めて高い屈折率が要求される用途に
適用する場合には、その光学特性が十分とはいえず、膜
厚を大きくするか、又は積層数を多くしなければなら
ず、製造コストが高くついてしまうという欠点がある。
ミラー、ウェイブガイド、マイクロレンズ等、高透過率
を前提としつつ、極めて高い屈折率が要求される用途に
適用する場合には、その光学特性が十分とはいえず、膜
厚を大きくするか、又は積層数を多くしなければなら
ず、製造コストが高くついてしまうという欠点がある。
この発明は、このような実情に鑑みてなされたもので
あって、高屈折率及び高透過率であり、製造コストが低
い光学薄膜及びその製造方法を提供することを目的とす
る。
あって、高屈折率及び高透過率であり、製造コストが低
い光学薄膜及びその製造方法を提供することを目的とす
る。
[課題を解決するための手段] この発明に係る光学薄膜は、構成元素がZn、S、O、
Nであり、前記Oは30原子%以下であり、前記Nは10原
子%以下であることを特徴とする。
Nであり、前記Oは30原子%以下であり、前記Nは10原
子%以下であることを特徴とする。
この薄層は多結晶体を含んでいてもよいし、アモルフ
ァス材料で構成されていてもよい。
ァス材料で構成されていてもよい。
また、この発明に係る一の光学薄膜の製造方法は、ア
ルゴンガスと窒素ガスとの混合雰囲気中の窒素量を制御
し、この雰囲気中でZn、S及びOを含むターゲットをス
パッタリングする工程と具備していることを特徴とす
る。
ルゴンガスと窒素ガスとの混合雰囲気中の窒素量を制御
し、この雰囲気中でZn、S及びOを含むターゲットをス
パッタリングする工程と具備していることを特徴とす
る。
この発明に係る他の光学薄膜の製造方法は、アルゴン
ガスと窒素ガスとの混合雰囲気中の窒素量を制御し、こ
の雰囲気中でZn、S及びOを含むターゲットをスパッタ
リングする工程と、この工程により形成された薄膜をア
ニール処理する工程とを具備していることを特徴とす
る。
ガスと窒素ガスとの混合雰囲気中の窒素量を制御し、こ
の雰囲気中でZn、S及びOを含むターゲットをスパッタ
リングする工程と、この工程により形成された薄膜をア
ニール処理する工程とを具備していることを特徴とす
る。
[作用] 構成元素がZn、S、O、Nであり、Oは30原子%以下
であり、Nは10原子%以下である光学薄膜は、従来のZn
S薄膜よりも大きな屈折率を有し、組成を選択すること
により、高透過率材料で最も大きい屈折率を有するダイ
ヤモンドよりも屈折率を大きくすることができる。ま
た、透過率もZnS薄膜より大きくすることができ、特に
短波長側の透過率を大きくすることができる。従って、
膜厚を大きくしたり、積層数を増加させずに所望の光学
特性を有する薄膜を得ることができ、製造コストを低く
することができる。また、この薄膜はアルゴンガスと窒
素ガスとの混合雰囲気中でスパッタリングすることによ
り、困難性を伴うことなく製造することができる。更
に、このようにして製造された薄膜をアニール処理する
ことにより、透過率を一層向上させることができ、特に
短波長側の透過率を向上させることができる。
であり、Nは10原子%以下である光学薄膜は、従来のZn
S薄膜よりも大きな屈折率を有し、組成を選択すること
により、高透過率材料で最も大きい屈折率を有するダイ
ヤモンドよりも屈折率を大きくすることができる。ま
た、透過率もZnS薄膜より大きくすることができ、特に
短波長側の透過率を大きくすることができる。従って、
膜厚を大きくしたり、積層数を増加させずに所望の光学
特性を有する薄膜を得ることができ、製造コストを低く
することができる。また、この薄膜はアルゴンガスと窒
素ガスとの混合雰囲気中でスパッタリングすることによ
り、困難性を伴うことなく製造することができる。更
に、このようにして製造された薄膜をアニール処理する
ことにより、透過率を一層向上させることができ、特に
短波長側の透過率を向上させることができる。
[実施例] 以下、この発明について具体的に説明する。
この発明における光学薄膜は、Zn、S、O及びNで構
成されている。このような薄膜は、ZnS薄膜よりも高透
過率及び高屈折率を示し得る。屈折率に関しては、組成
を選択することにより、照射光の波長633nmにおいて高
透過率材料で最も大きい屈折率を有するダイヤモンドよ
りも大きくすることができる。透過率に関しては、特に
照射光が可視光領域から紫外領域にかけての短波長側の
場合に大きくすることができる。なお、ZnSを基本組成
とし、Oを10原子%以下、Nを10原子%以下含有する組
成のものは、特に、屈折率が高い。また、Oを10乃至30
原子%、Nを10原子%以下含有する組成のものは特に透
過率が高い。
成されている。このような薄膜は、ZnS薄膜よりも高透
過率及び高屈折率を示し得る。屈折率に関しては、組成
を選択することにより、照射光の波長633nmにおいて高
透過率材料で最も大きい屈折率を有するダイヤモンドよ
りも大きくすることができる。透過率に関しては、特に
照射光が可視光領域から紫外領域にかけての短波長側の
場合に大きくすることができる。なお、ZnSを基本組成
とし、Oを10原子%以下、Nを10原子%以下含有する組
成のものは、特に、屈折率が高い。また、Oを10乃至30
原子%、Nを10原子%以下含有する組成のものは特に透
過率が高い。
このため、この光学薄膜は、高透過率、高屈折率が要
求される部材、例えば、前述の反射防止膜、広域ミラ
ー、ウェイブガイド、マイクロレンズ、更には、光熱磁
気記録の媒体のカー回転角を増大させるためのエンハン
ス膜への適用が期待される。
求される部材、例えば、前述の反射防止膜、広域ミラ
ー、ウェイブガイド、マイクロレンズ、更には、光熱磁
気記録の媒体のカー回転角を増大させるためのエンハン
ス膜への適用が期待される。
この光学薄膜の屈折率はその組成、例えばN含有量に
大きく依存し、組成を調節することにより、広範囲に亘
って変化させることができる。
大きく依存し、組成を調節することにより、広範囲に亘
って変化させることができる。
更に、この光学薄膜の組成、特にNの含有量及びZnと
Sとの比率を調節することによって、薄膜の状態を多結
晶体とアモルファスとの間で変化させることができる。
薄膜が多結晶体の場合には、特に屈折率を大きくするこ
とができる。また、薄膜がアモルファスの場合には、特
に透過率を大きくすることができる。この場合の透過率
の増大効果は特に短波長側で顕著である。
Sとの比率を調節することによって、薄膜の状態を多結
晶体とアモルファスとの間で変化させることができる。
薄膜が多結晶体の場合には、特に屈折率を大きくするこ
とができる。また、薄膜がアモルファスの場合には、特
に透過率を大きくすることができる。この場合の透過率
の増大効果は特に短波長側で顕著である。
更にまた、この光学薄膜のNの含有量等を調節するこ
とによって吸収端の波長位置を変化させることもでき
る。
とによって吸収端の波長位置を変化させることもでき
る。
次に、このような光学薄膜の製造方法について説明す
る。第1図はこの発明に係る光学薄膜を製造するための
装置の例を示す概略構成図であり、対向ターゲットスパ
ッタリング装置を示している。第1図において、チャン
バー10内に、ZnS焼結体で構成された一体のターゲット1
2が配設されている。なお、ZnS焼結体ターゲットとして
は若干酸素(O)が含まれているものを使用する。
る。第1図はこの発明に係る光学薄膜を製造するための
装置の例を示す概略構成図であり、対向ターゲットスパ
ッタリング装置を示している。第1図において、チャン
バー10内に、ZnS焼結体で構成された一体のターゲット1
2が配設されている。なお、ZnS焼結体ターゲットとして
は若干酸素(O)が含まれているものを使用する。
ターゲット12の上方には、基板11が図示しない回転支
持部材によって回転可能に支持されている。各ターゲッ
トの裏面側外緑部には、全周に亘ってマグネット14が設
けられており、ターゲット間に磁場Hが存在している。
各ターゲットには交流電源16が接続されており、この電
源16からターゲット12に電力が投入されれようになって
いる。なお、各ターゲット12の外緑部は円筒状のターゲ
ットカバー15で覆われている。
持部材によって回転可能に支持されている。各ターゲッ
トの裏面側外緑部には、全周に亘ってマグネット14が設
けられており、ターゲット間に磁場Hが存在している。
各ターゲットには交流電源16が接続されており、この電
源16からターゲット12に電力が投入されれようになって
いる。なお、各ターゲット12の外緑部は円筒状のターゲ
ットカバー15で覆われている。
チャンバー10には、ガス導入口17及びガス排出口18が
形成されている。ガス導入口17には、Arガス供給源及び
N2ガス供給源(いずれも図示せず)が接続されており、
これらガス供給源からチャンバー10内にArガスとN2ガス
との混合ガスが供給されるようになっている。また、ガ
ス排出口18には真空ポンプ(図示せず)が接続されてお
り、これを作動させることによりチャンバー10内を所定
のガス圧に調節するようになっている。
形成されている。ガス導入口17には、Arガス供給源及び
N2ガス供給源(いずれも図示せず)が接続されており、
これらガス供給源からチャンバー10内にArガスとN2ガス
との混合ガスが供給されるようになっている。また、ガ
ス排出口18には真空ポンプ(図示せず)が接続されてお
り、これを作動させることによりチャンバー10内を所定
のガス圧に調節するようになっている。
このような装置においては、チャンバー10内にArガス
とN2ガスとの混合ガスを導入して、チャンバー10内をこ
れらの混合ガス雰囲気の所定の減圧状態に保持しつつ、
各ターゲット12に電力を投入して、リアクティブスパッ
タリングを実施する。この際に、マグネット14によりタ
ーゲット面に対し垂直に磁場を印加しているので、この
磁場によりAr+の発生率が高まり、スパッタリング速度
を上昇させることができる。
とN2ガスとの混合ガスを導入して、チャンバー10内をこ
れらの混合ガス雰囲気の所定の減圧状態に保持しつつ、
各ターゲット12に電力を投入して、リアクティブスパッ
タリングを実施する。この際に、マグネット14によりタ
ーゲット面に対し垂直に磁場を印加しているので、この
磁場によりAr+の発生率が高まり、スパッタリング速度
を上昇させることができる。
このスパッタリングの際には、ターゲット12から叩き
出されたスパッタ粒子がプラズマから離隔したガラス基
板11に堆積され薄膜が形成され、チャンバー内のNが薄
膜中に取り込まれる。また、ZnSターゲット中には若干
のOが存在しているので、薄膜中に若干のOが含まれ
る。これにより、基板上にZn,S,O,Nからなる薄膜が形成
される。この際に、基板11は磁場によりプラズマフリー
の状態であるから、基板は室温付近に保持される。ま
た、対向ターゲットであるから薄膜組成を制御しやす
い。
出されたスパッタ粒子がプラズマから離隔したガラス基
板11に堆積され薄膜が形成され、チャンバー内のNが薄
膜中に取り込まれる。また、ZnSターゲット中には若干
のOが存在しているので、薄膜中に若干のOが含まれ
る。これにより、基板上にZn,S,O,Nからなる薄膜が形成
される。この際に、基板11は磁場によりプラズマフリー
の状態であるから、基板は室温付近に保持される。ま
た、対向ターゲットであるから薄膜組成を制御しやす
い。
なお、このようにして製造されたZn,S,O,Nからなる光
学薄膜は、照射光の波長が500nm以上では前述のように
高透過率を有しており、従来のZnS薄膜よりも優れた光
学特性を有するものではあるが、後述する第4図に示す
ように、500nm付近から透過率が減少し、250nmでは透過
率が約50%となり、短波長側での光学特性が未だ充分と
はいえない。例えば、この薄膜を可視光領域全域で用い
られる光学部品に適用した場合には、波長500〜400nmの
透過率が低く、膜自体が着色するため、その応用範囲が
狭くなる。また、波長350〜200nmの紫外領域で用いられ
る場合、透過率が更に小さくなり、効率が悪くなってし
まう。
学薄膜は、照射光の波長が500nm以上では前述のように
高透過率を有しており、従来のZnS薄膜よりも優れた光
学特性を有するものではあるが、後述する第4図に示す
ように、500nm付近から透過率が減少し、250nmでは透過
率が約50%となり、短波長側での光学特性が未だ充分と
はいえない。例えば、この薄膜を可視光領域全域で用い
られる光学部品に適用した場合には、波長500〜400nmの
透過率が低く、膜自体が着色するため、その応用範囲が
狭くなる。また、波長350〜200nmの紫外領域で用いられ
る場合、透過率が更に小さくなり、効率が悪くなってし
まう。
このような不都合を回避するため、この発明では前述
のようにしてスパッタリング成膜した光学薄膜に更にア
ニール処理を施す。これにより、照射光の波長を問わず
透過率が一層上昇し、特に短波長側の透過率を著しく増
加させることができ、可視光領域での透過率は熱処理前
のものに比べて一様となる。従って可視光領域及び紫外
領域での適用に好都合なるものとなる。
のようにしてスパッタリング成膜した光学薄膜に更にア
ニール処理を施す。これにより、照射光の波長を問わず
透過率が一層上昇し、特に短波長側の透過率を著しく増
加させることができ、可視光領域での透過率は熱処理前
のものに比べて一様となる。従って可視光領域及び紫外
領域での適用に好都合なるものとなる。
なお、アニール処理は、大気中で行うことができ、温
度も150℃程度と低い温度でよい。
度も150℃程度と低い温度でよい。
次に、この発明に基づいて実際に試験した結果につい
て説明する。
て説明する。
第1図に示した対向ターゲットスパッタリング装置を
用い、ターゲットとしてZnS焼結体(若干のOを含む)
を用いてスパッタリングを行い、薄膜サンプルの作製を
行った。この際に、チャンバー内に供給する混合ガスの
うち、Arガスの量を27cc/分に固定し、N2ガスの流量を
夫々0.3cc/分、1.0cc/分、3.0cc/分、8.0cc/分、20.0cc
/分にした5種類のサンプルを作製した(N2ガス流量の
順に実施例1〜5とする)。なお、比較のため、Arガス
のみでN2ガスを導入せずにスパッタリングして作製した
サンプルも準備した(比較例1とする)。また、スパッ
タリング中のチャンバー内ガス圧は、1.1〜1.5×10-3To
rrとした。スパッタリング中、基板はプラズマから隔て
られているため、基板温度は室温から数度上昇した程度
であった。
用い、ターゲットとしてZnS焼結体(若干のOを含む)
を用いてスパッタリングを行い、薄膜サンプルの作製を
行った。この際に、チャンバー内に供給する混合ガスの
うち、Arガスの量を27cc/分に固定し、N2ガスの流量を
夫々0.3cc/分、1.0cc/分、3.0cc/分、8.0cc/分、20.0cc
/分にした5種類のサンプルを作製した(N2ガス流量の
順に実施例1〜5とする)。なお、比較のため、Arガス
のみでN2ガスを導入せずにスパッタリングして作製した
サンプルも準備した(比較例1とする)。また、スパッ
タリング中のチャンバー内ガス圧は、1.1〜1.5×10-3To
rrとした。スパッタリング中、基板はプラズマから隔て
られているため、基板温度は室温から数度上昇した程度
であった。
なお、以下に示す元素分析、X線回折、屈折率測定に
は、基板が石英ガラスで、膜の堆積速度を3.5乃至4.5nm
/分とし、膜厚を260乃至430nmにしたサンプルを用い、
透過率の測定には、基板がパイレックス無アルカリガラ
スで、膜の堆積速度を0.4nm/分以下とし、膜厚を18乃至
40nmにしたサンプルを用いた。
は、基板が石英ガラスで、膜の堆積速度を3.5乃至4.5nm
/分とし、膜厚を260乃至430nmにしたサンプルを用い、
透過率の測定には、基板がパイレックス無アルカリガラ
スで、膜の堆積速度を0.4nm/分以下とし、膜厚を18乃至
40nmにしたサンプルを用いた。
これらサンプルのうち実施例1、3、5および比較例
1をエスカ(ESCA;Electrum Spectroscopy for Chemica
l Analysis)によって組成分析した結果、第1表のよう
な結果が得られた。なお、参考のため、ZnS標準試料の
分析値も記載した。
1をエスカ(ESCA;Electrum Spectroscopy for Chemica
l Analysis)によって組成分析した結果、第1表のよう
な結果が得られた。なお、参考のため、ZnS標準試料の
分析値も記載した。
第1表中、trとあるのは、エスカにより検出されなか
ったことを示す。この表に示すように、N2ガス流量が多
いほど薄膜中のN量が増加し、かつZnに対するSの組成
比(S/Zn)が減少しており、N2ガス流量が20cc/分にお
いて、N含有量が9.4原子%、S/Znが0.66となった。ま
た、いずれの薄膜も7乃至8原子%のOが含まれてい
る。なお、ZnSの標準試料にも不純物としてOが含まれ
ていることが確認された。
ったことを示す。この表に示すように、N2ガス流量が多
いほど薄膜中のN量が増加し、かつZnに対するSの組成
比(S/Zn)が減少しており、N2ガス流量が20cc/分にお
いて、N含有量が9.4原子%、S/Znが0.66となった。ま
た、いずれの薄膜も7乃至8原子%のOが含まれてい
る。なお、ZnSの標準試料にも不純物としてOが含まれ
ていることが確認された。
第2図(a)乃至(f)は、上述のようにN2ガス流量
を変化させて薄膜を形成した各サンプルのX線回折パタ
ーンを示す図である。なお、回折角20゜付近の大きなピ
ークは基板に基づくものである。N2ガス流量が0〜0.3c
c/分の(a),(b)では、回折角27゜付近に六方晶の
回折ピークが確認され、また、夫々回折角29゜、47.5
゜、56.5゜の付近に、六方晶又は立方晶の回折ピークが
確認された。従って、薄膜には六方晶又は六方晶と立方
晶との混晶からなる多結晶体が存在していることがわか
る。また、N2ガス流量が1.0cc/分の(c)においても回
折角47.5゜付近に大きな回折ピークが確認され、薄膜に
多結晶体が存在していることがわかる。このピークは立
方晶の(220)面又は六方晶の(110)面と考えられる結
晶面が優先配向していることを示すもの推測される。
を変化させて薄膜を形成した各サンプルのX線回折パタ
ーンを示す図である。なお、回折角20゜付近の大きなピ
ークは基板に基づくものである。N2ガス流量が0〜0.3c
c/分の(a),(b)では、回折角27゜付近に六方晶の
回折ピークが確認され、また、夫々回折角29゜、47.5
゜、56.5゜の付近に、六方晶又は立方晶の回折ピークが
確認された。従って、薄膜には六方晶又は六方晶と立方
晶との混晶からなる多結晶体が存在していることがわか
る。また、N2ガス流量が1.0cc/分の(c)においても回
折角47.5゜付近に大きな回折ピークが確認され、薄膜に
多結晶体が存在していることがわかる。このピークは立
方晶の(220)面又は六方晶の(110)面と考えられる結
晶面が優先配向していることを示すもの推測される。
これに対し、N2ガス流量が3.0〜20.0cc/分の(d)乃
至(f)では、基板に基づく回折ピーク以外は回折ピー
クが確認されず、薄膜がアモルファス状態であることが
わかる。すなわち、スパッタリングの際のN2ガス流量に
より、薄膜が結晶とアモルファスとの間で変化し得るこ
とが確認された。これらX線回折パターンと上記薄膜組
成とから、N含有量が多く、かつS/Znが小さければアモ
ルファス化する傾向にあることが確認された。
至(f)では、基板に基づく回折ピーク以外は回折ピー
クが確認されず、薄膜がアモルファス状態であることが
わかる。すなわち、スパッタリングの際のN2ガス流量に
より、薄膜が結晶とアモルファスとの間で変化し得るこ
とが確認された。これらX線回折パターンと上記薄膜組
成とから、N含有量が多く、かつS/Znが小さければアモ
ルファス化する傾向にあることが確認された。
第3図は、薄膜形成時のN2ガス流量と薄膜の照射光の
波長633nmの際の屈折率との関係を示す図である。この
図に示すように、いずれのサンプルにおいても比較的屈
折率が高く、N2ガス流量が0.3cc/分及び1.0cc/分のサン
プルは、従来の高透過率材料で屈折率が最大のダイヤモ
ンドの屈折率n=2.41(λ=633nm)よりも大きい屈折
率を示すことが確認された。特に、N2ガス流量0.3cc/分
において、2.55という極めて大きな屈折率が得られた。
波長633nmの際の屈折率との関係を示す図である。この
図に示すように、いずれのサンプルにおいても比較的屈
折率が高く、N2ガス流量が0.3cc/分及び1.0cc/分のサン
プルは、従来の高透過率材料で屈折率が最大のダイヤモ
ンドの屈折率n=2.41(λ=633nm)よりも大きい屈折
率を示すことが確認された。特に、N2ガス流量0.3cc/分
において、2.55という極めて大きな屈折率が得られた。
第4図は、照射光の波長と透過率との関係を、薄膜形
成時のN2ガス流量毎に示す図である。この図に示すよう
に、いずれのサンプルも可視光領域の波長である500nm
付近から短波長になるにつれて透過率が低下する傾向に
あるが、N2ガス流量が多いサンプルほど、透過率が高
く、かつ吸収端が短波長側ヘシフトし、高透過率を示す
波長領域が短波長側に拡大していることが認められた。
すなわち、N2ガス流量が増加するに従って、透過率、特
に短波長側の透過率が高くなることが確認された。
成時のN2ガス流量毎に示す図である。この図に示すよう
に、いずれのサンプルも可視光領域の波長である500nm
付近から短波長になるにつれて透過率が低下する傾向に
あるが、N2ガス流量が多いサンプルほど、透過率が高
く、かつ吸収端が短波長側ヘシフトし、高透過率を示す
波長領域が短波長側に拡大していることが認められた。
すなわち、N2ガス流量が増加するに従って、透過率、特
に短波長側の透過率が高くなることが確認された。
次に、スパッタリングにより作製した薄膜にアニール
処理を施した結果について説明する。アニールは乾燥大
気雰囲気中150℃の条件で最長440時間行った。そして、
このアニール処理を施したサンプルの透過率を測定し
た。
処理を施した結果について説明する。アニールは乾燥大
気雰囲気中150℃の条件で最長440時間行った。そして、
このアニール処理を施したサンプルの透過率を測定し
た。
その結果、N2ガスを供給しない比較例のサンプルはア
ニール処理をしてもほとんど透過率の変化は確認されな
かった。また、N2ガスを供給した実施例のサンプルで
も、N2ガス流量が1cc/分までのサンプルについては、透
過率の向上がわずかであった。
ニール処理をしてもほとんど透過率の変化は確認されな
かった。また、N2ガスを供給した実施例のサンプルで
も、N2ガス流量が1cc/分までのサンプルについては、透
過率の向上がわずかであった。
N2ガス流量が3cc/分のサンプルについては、第5図に
示すように、照射光波長470乃至250nmの短波長側ではっ
きりとした透過率の向上がみられた。また、N2ガス流量
が8cc/分のサンプルについては、第6図に示すように、
同様の短波長側で、更に著しい透過率の向上が確認さ
れ、その効果は130時間アーニールのものよりも、440時
間アニールのもののほうが大きいことが認められた。更
に、N2ガス流量が20cc/分のサンプルについては、第7
図に示すように、一層透過率が向上し、特に440時間ア
ニールのものは波長300nm程度の紫外領域においても90
%以上という高い透過率が得られた。なお、図示してい
ないが、アニールによる透過率の変化は、アニール時間
300時間までは大きいが、れ以降440時間までは少なく、
約300時間で飽和することが認められた。
示すように、照射光波長470乃至250nmの短波長側ではっ
きりとした透過率の向上がみられた。また、N2ガス流量
が8cc/分のサンプルについては、第6図に示すように、
同様の短波長側で、更に著しい透過率の向上が確認さ
れ、その効果は130時間アーニールのものよりも、440時
間アニールのもののほうが大きいことが認められた。更
に、N2ガス流量が20cc/分のサンプルについては、第7
図に示すように、一層透過率が向上し、特に440時間ア
ニールのものは波長300nm程度の紫外領域においても90
%以上という高い透過率が得られた。なお、図示してい
ないが、アニールによる透過率の変化は、アニール時間
300時間までは大きいが、れ以降440時間までは少なく、
約300時間で飽和することが認められた。
第8図は、各N2ガス流量のサンプルにおける照射光波
長によるアニールの効果を示す図である。なお、縦軸の
ΔTは、440時間アニール後のサンプルの透過率から、
未アニール処理のサンプルの透過率を引いた値を示す。
長によるアニールの効果を示す図である。なお、縦軸の
ΔTは、440時間アニール後のサンプルの透過率から、
未アニール処理のサンプルの透過率を引いた値を示す。
この図に示すように、N2ガス流量が3cc/分以上のサン
プルはアニールによる透過率向上が認められ、特に波長
350乃至200nmという短波長の紫外領域で透過率向上の効
果が大きく、かつその透過率が向上する量はN2流量が大
になるほど大きいことが確認された。
プルはアニールによる透過率向上が認められ、特に波長
350乃至200nmという短波長の紫外領域で透過率向上の効
果が大きく、かつその透過率が向上する量はN2流量が大
になるほど大きいことが確認された。
なお、サンプルをオージェにより組成分析した結果、
N2ガス流量が0ccのサンプル(比較例)ではアニールに
よる組成変化は認められなかったが、N2ガス流量が0.3c
c/分以上のサンプルでは、アニールによりOの含有量が
アニール前の10原子%程度から20原子%程度まで上昇し
ていた。
N2ガス流量が0ccのサンプル(比較例)ではアニールに
よる組成変化は認められなかったが、N2ガス流量が0.3c
c/分以上のサンプルでは、アニールによりOの含有量が
アニール前の10原子%程度から20原子%程度まで上昇し
ていた。
[発明の効果] この発明によれば、従来のZnS薄膜よりも高屈折率を
有し、しかも高透過率の光学薄膜を提供することができ
る。従って、膜厚を大きくしたり、積層数を増加させず
に所望の光学特性を有する薄膜を得ることができ、製造
コストを低くすることができる。また、積層数が少なく
てよいことから応力歪みを減らすことができ、寿命を延
長させることができる。また、この薄膜はアルゴンガス
と窒素ガスとの混合雰囲気中でスパッタリングすること
により、困難性を伴うことなく製造することができる。
更に、このようにして製造された薄膜をアニール処理す
ることにより、透過率を一層向上させることができ、特
に短波長側の透過率を向上させることができる。
有し、しかも高透過率の光学薄膜を提供することができ
る。従って、膜厚を大きくしたり、積層数を増加させず
に所望の光学特性を有する薄膜を得ることができ、製造
コストを低くすることができる。また、積層数が少なく
てよいことから応力歪みを減らすことができ、寿命を延
長させることができる。また、この薄膜はアルゴンガス
と窒素ガスとの混合雰囲気中でスパッタリングすること
により、困難性を伴うことなく製造することができる。
更に、このようにして製造された薄膜をアニール処理す
ることにより、透過率を一層向上させることができ、特
に短波長側の透過率を向上させることができる。
このため、透過率、高屈折率が要求される部材、例え
ば、前述の反射防止膜、広帯域ミラー、ウェイブガイ
ド、マイクロレンズ、更には、光熱磁気記録媒体のカー
回転角を増大させるためのエンハンス膜への適用が期待
される。
ば、前述の反射防止膜、広帯域ミラー、ウェイブガイ
ド、マイクロレンズ、更には、光熱磁気記録媒体のカー
回転角を増大させるためのエンハンス膜への適用が期待
される。
例えば、広帯域ミラーの有効波長領域を拡大すること
ができ、余分なリップルを減少させることができる。ま
た、膜厚方向に不均一な屈折率を持つ高出力レーザー用
反射膜に利用できる。
ができ、余分なリップルを減少させることができる。ま
た、膜厚方向に不均一な屈折率を持つ高出力レーザー用
反射膜に利用できる。
第1図はこの発明に係る光学薄膜を製造するためのスパ
ッタリング装置を示す概略図、第2図はスパッタリング
の際に供給するN2ガス流量を種々変化させた際の薄膜サ
ンプルのX線回折図、第3図はスパッタリッグの際に供
給するN2ガス流量と屈折率との関係を示す図、第4図は
スパッタリングの際に供給するN2ガス流量種々変化させ
た際の照射光波長と薄膜の透過率との関係を示す図、第
5図乃至第7図はスパッタリングの際のN2ガス流量を特
定の値にした場合のアニールの透過率に及ぼす影響を示
す図、第8図は照射光波長による透過率変化を示す図で
ある。 10;チャンバ、11;基板,12;ターゲット、14;マグネッ
ト、16;電源。
ッタリング装置を示す概略図、第2図はスパッタリング
の際に供給するN2ガス流量を種々変化させた際の薄膜サ
ンプルのX線回折図、第3図はスパッタリッグの際に供
給するN2ガス流量と屈折率との関係を示す図、第4図は
スパッタリングの際に供給するN2ガス流量種々変化させ
た際の照射光波長と薄膜の透過率との関係を示す図、第
5図乃至第7図はスパッタリングの際のN2ガス流量を特
定の値にした場合のアニールの透過率に及ぼす影響を示
す図、第8図は照射光波長による透過率変化を示す図で
ある。 10;チャンバ、11;基板,12;ターゲット、14;マグネッ
ト、16;電源。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01G 9/00 G02B 1/00 G11B 11/10 CA(STN) REGISTRY(STN)
Claims (5)
- 【請求項1】構成元素がZn、S、O、Nであり、前記O
は30原子%以下であり、前記Nは10原子%以下であるこ
とを特徴とする光学薄膜。 - 【請求項2】多結晶体を含んでいることを特徴とする請
求項1に記載の光学薄膜。 - 【請求項3】アモルファス材料で構成されていることを
特徴とする請求項1に記載の光学薄膜。 - 【請求項4】アルゴンガスと窒素ガスとの混合雰囲気中
の窒素量を制御し、この雰囲気中でZn、S及びOを含む
ターゲットをスパッタリングする工程とを具備している
ことを特徴とする光学薄膜の製造方法。 - 【請求項5】アルゴンガスと窒素ガスとの混合雰囲気中
の窒素量を制御し、この雰囲気中でZn、S及びOを含む
ターゲットをスパッタリングする工程と、この工程によ
り形成された薄膜をアニール処理する工程とを具備して
いることを特徴とする光学薄膜の製造方法。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27573489A JP2929109B2 (ja) | 1989-10-23 | 1989-10-23 | 光学薄膜及びその製造方法 |
US08/296,872 US5635310A (en) | 1989-10-20 | 1994-08-26 | ZnS dielectric thin film and magnetic recording medium |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27573489A JP2929109B2 (ja) | 1989-10-23 | 1989-10-23 | 光学薄膜及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH03137017A JPH03137017A (ja) | 1991-06-11 |
JP2929109B2 true JP2929109B2 (ja) | 1999-08-03 |
Family
ID=17559645
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27573489A Expired - Lifetime JP2929109B2 (ja) | 1989-10-20 | 1989-10-23 | 光学薄膜及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2929109B2 (ja) |
-
1989
- 1989-10-23 JP JP27573489A patent/JP2929109B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH03137017A (ja) | 1991-06-11 |
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