JP2926456B2 - 孔版印刷用エマルションインキの製造方法 - Google Patents

孔版印刷用エマルションインキの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、孔版印刷用エマルショ
ンインキの製造方法に関し、保存安定性、温度依存性に
優れた孔版印刷用エマルションインキが容易に得られる
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】孔版印刷方法は、周知のように孔版印刷
原紙を用い、この原紙の穿孔部を介して原紙の一方の側
より他方の側へインキを移動させることにより、紙など
の被印刷物面に印刷を行なうものである。近年、輪転孔
版印刷機にもマイクロコンピューター等による自動化が
進み、操作が簡単になってきており、これにともない、
様々な環境で印刷開始直後から、良好な印刷物を入手で
きることが要望されている。
【0003】従来、エマルションインキの水相には水を
増粘しないで使用することが多く、ホモミキサーなどの
回転式の乳化撹拌機を使用する場合、せん断速度が低
く、安定性を確保するために油相の粘度を高くし、その
ために樹脂が用いられ、また乳化系のバランスを取るの
がたいへん困難であった(特開昭61−255967号
公報)。また、安定性向上のために用いられる樹脂とし
て、例えばフェノール樹脂、マレイン酸樹脂、石油樹
脂、アルキド樹脂、ゴム誘導体樹脂等が知られている
が、これらの樹脂で充分な安定性を得るためには多くの
樹脂を必要とする。ところが、温度依存性の大きい高分
子化合物である樹脂をインキに多量配合するため、得ら
れる画像品質の温度依存性も当然大きくなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、前記従来技術の欠点を除去し、輪転孔版印刷機にお
いて、保存安定性に優れ、しかも画像品質の温度依存性
が小さい孔版印刷用エマルションインキが容易に得られ
る孔版印刷用エマルションインキの製造方法を提供する
ことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究
を重ねた結果、油相中の界面活性剤の量が水相の1/7
0(重量比)以上である孔版印刷用エマルションインキ
を、特定の撹拌機を用いて、高せん断速度で処理するこ
とによって、上記目的が達成されることを見出し、本発
明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明によれば、油相10〜5
0重量%と水相90〜50重量%とからなる油中水型エ
マルションからなり、且つ該油相中の界面活性剤の量が
水相の1/70(重量比)以上である孔版印刷用エマル
ションインキを、ローターステータ式撹拌機を用いて1
秒間に25万回以上のせん断速度で処理することを特徴
とする孔版印刷用エマルションインキの製造方法が提供
され、また該製造方法において、前記ローターステータ
式撹拌機としてインライン方式のものを用いることを特
徴とする孔版印刷用エマルションインキの製造方法が提
供され、更に前記製造方法において、前記水相に離液順
列の上位に位置するイオンからなる電解質を水相の0.
1重量%以上含有するものを用いることを特徴とする孔
版印刷用エマルションインキの製造方法が提供される。
【0007】なお、本発明でいうローターステータ式撹
拌機とは、固定翼(ステータ)とタービン翼(ロータ
ー)とからなり、このステータとローターとの間のわず
かな間隙を処理物が通過するようタービン翼を高速度回
転させるものである。
【0008】本発明の孔版印刷用エマルションインキの
製造方法によると、ローターステータ式撹拌機を使用し
たことから、これまでの撹拌機では得られなかったシェ
アが乳化の際得られ、エマルションの粒径が小さく、粒
径分布も狭くなることで、安定性に優れたエマルション
インキが得られ、且つ乳化により得られる粘度が高いた
め、温度依存性に影響すると思われる油相の粘度を従来
のものより低くすことができることにより、温度依存性
に優れたエマルションインキが得られる、と推定され
る。なお、インライン方式のローターステータ式撹拌機
を使用すると、更に上記安定性の向上効果が確実なもの
となるし、またエマルションの水相に電解質を添加する
と、水の構造が破壊されることや、エマルションの界面
活性剤密度が高くなり、更にエマルションの粒径が小さ
く、粒径分布も狭くなることで、安定性が更に良くなる
もの、と推定される。
【0009】以下、本発明を更に詳細に説明する。本発
明の孔版印刷用エマルションインキの製造方法は、特定
の孔版印刷用エマルションインキを、ローターステータ
式撹拌機を用いて1秒間に25万回以上のせん断速度で
処理することを特徴とするものであり、本発明において
原料(処理対象)となるエマルションインキは、油相1
0〜50重量%と水相90〜50重量%とからなる油中
水型エマルションからなり、且つ該油相中の界面活性剤
の量が水相の1/70(重量比)以上であるものであ
る。
【0010】前記エマルションの水相は、水、電解質、
防腐・防かび剤、酸化防止剤、水蒸発防止剤、水溶性高
分子等から構成され、また前記油相は、油成分、顔料成
分、樹脂成分、乳化剤等から構成される。これらの構成
成分には、エマルションの形成を阻害しない公知のもの
が使用される。
【0011】本発明の原料エマルションインキで用いら
れる油相中の油成分としては、従来公知のものが適用で
き、例えば、流動パラフィン、スピンドル油、軽油、灯
油、マシン油、潤滑油等の鉱物油;オリーブ油、ナタネ
油、ヒマシ油、大豆油等の植物油等が使用される。ま
た、合成油を使用することもできる。合成油を使用する
場合、種々の化合物が利用できる。代表的な合成ビヒク
ルには、ポリイソブチレン類、水素化ポリデセン類、ト
リメチロールプロパンエステル類、ネオペンチルエステ
ル及びペンタエリトリトールエステル、ジ(2−エチル
ヘキシル)セバケート、ジ(2−エチルヘキシル)アジ
ペート、ジブチルフタレート、フルオロカーボン類、珪
素エステル類、シラン類、リン含有酸類のエステル類、
液体尿素、フェロセン誘導体類、水素化合成油類、鎖状
ポリフェニル類、シロキサン類及びシリコン類(ポリシ
ロキサン類)、ブチル置換ビス(p−フェノキシフェニ
ル)エーテル類に代表されるアルキル置換ジフェニルエ
ーテル類、フェノキシフェニルエーテル類などが挙げら
れる。
【0012】インキと紙との固着性、油相中の顔料の分
散性等の向上を目的として、油相中に樹脂が使用される
が、その例としては、フェノール樹脂、マレイン酸樹
脂、石油樹脂、アルキド樹脂、ゴム誘導体樹脂等が挙げ
られ、これらは単独であるいは2種類以上組み合わせ用
いられる。
【0013】油相中で用いられる乳化剤は、好ましくは
非イオン系界面活性剤であり、例えば、ソルビタン高級
脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂
肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセ
リド及び高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸
等の酸化エチレン付加物等が挙げられる。これらは単独
であるいは2種以上組み合わせて使用される。
【0014】油相中で用いられる顔料としては、例え
ば、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、シ
アニンブルー、シアニングリーン、レーキレッド、酸化
チタン、炭化カルシウム等の有機及び/又は無機の顔料
が挙げられる。
【0015】また、本発明の原料エマルションインキで
用いられる水相中の蒸発防止剤兼凝結防止剤としては、
例えばエチレングリコール、ソルビトール、グリセリン
など多価アルコールや、ポリエチレングリコール等が挙
げられる。防腐・防かび剤としては、例えば、芳香族ヒ
ドロキシ化合物およびその塩素化合物、サリチル酸、フ
ェノール酸、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安
息香酸エチル等、ソルビン酸、デヒドロ酢酸等が用いら
れる。
【0016】水相中で用いられる水溶性高分子として
は、例えば、デンプン、マンナン、アルギン酸ソーダ、
ガラクタン、トラガントガム、アラビアガム、ブルラ
ン、デキストラン、キサンタンガム、ニカワ、ゼラチ
ン、コラーゲン、カゼイン等の天然高分子;キルボキシ
メチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチ
ルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロ
キシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルデン
プン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプ
ン等の半合成高分子;アクリル酸樹脂及びポリアクリル
酸ナトリウム、ポリアクリル酸トリエタノールアミンな
どのアクリル酸樹脂誘導体、ポリビニルアルコール、ポ
リビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレ
ンオキサイド、ポリビニルメチルエーテルなどの合成高
分子等が用いられる。
【0017】なお、水相の増粘のため、前記水溶性高分
子の外に更に増粘促進剤を併用することができる。例え
ば、アクリル酸樹脂の場合に併用される増粘促進剤とし
ては、ジイソプロパノールアミン、ジ−2(エチルヘキ
シル)アミン、トリエタノールアミン、トリアミルアミ
ン、b−ジメチルアミノプロピオニトリル、ドデシルア
ミン、モルフォリン等の低分子アミンやアルカノールア
ミン等、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸
化アンモニウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0018】本発明の原料エマルションインキの水相に
は、離液順列の上位に位置するイオンからなる電解質を
水相の0.1重量%以上含有させると、エマルションの
安定性が更に向上し、非常に好ましい。この場合、離液
順列の上位に位置する陰イオンとしては、例えばクエン
酸、酒石酸、SO4、CH3CO2などがあり、また陽イ
オンとしては、例えばLi、Na、K、Mg、Caなど
があり、これらの少なくとも一方のイオンを含有するも
のが好ましい。その具体例としては、例えば硫酸マグネ
シウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸
水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウムなどが挙げられ、酢
酸も使用できる。
【0019】本発明において、原料エマルションインキ
は前記した水相と油相とから構成されるが、更に該油相
中の界面活性剤の量を水相の1/70(重量比)以上と
したものである。油相中の界面活性剤の量を上記範囲と
したことから、該原料エマルションインキをロータース
テータ式撹拌機を用いて1秒間に25万回以上のせん断
速度で処理することによって、エマルション安定性に優
れ且つ画像品質温度依存性に優れたエマルションインキ
が得られる。
【0020】本発明の実施に当たっては、前記構成の油
相に前記構成の水相を徐々に加え乳化してエマルション
インキを得、該インキをローターステータ式撹拌機、好
ましくはインライン方式のローターステータ式撹拌機を
用いて、1秒間に25万回以上、好ましくは100万回
〜300万回のせん断速度で、充分に撹拌することによ
って目的とする孔版印刷用エマルションインキを得るこ
とが好ましい。なお、ローターステータ式撹拌機上で前
記油相に前記水相を徐々に加えることによって乳化し、
前記撹拌を実施することもできる。
【0021】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、本発明はこれらに限定されるものではない。な
お、以下に示す部はいずれも重量基準である。
【0022】実施例1 以下に示される処方の原料を使用した。 (着色剤) ファーネスカーボンブラック 4部 (乳化剤) ソルビタンセスキオレエート 6部 (油成分) 高粘度パラフィン系オイル 6部 低粘度石油系溶剤 6部 (樹脂) アルキド樹脂 8部 (水) イオン交換水 58.5部 (凍結防止剤) エチレングリコール 10.00部 (電解質) 硫酸マグネシウム 1.5部
【0023】顔料分散体の調整はカーボンブラック、パ
ラフィン系オイル及び界面活性剤、更に場合によりアル
キド樹脂を3本ロールで練肉することで行ない、続いて
オイルと顔料分散体、又は必要に応じてロジン変性フェ
ノール樹脂等のゲルワニスを少量加え、これらを均一に
混合撹拌機で混合したものを油相とした。(油相粘度は
4.7Pであった。)また、水相の調製は、アクリル酸
ポリマーを水に一晩浸漬し、これにエチレングリコール
を加えた後、撹拌しながら増粘促進剤である水酸化ナト
リウム水溶液を加え増粘することによって、あるいは水
にエチレングリコールと電解質を溶かし込むことによっ
て行ない、これらを水相とした。
【0024】次に、上記油相に上記水相を徐々に加え乳
化してエマルションインキを調製した後、該インキをイ
ンライン方式のローターステータ式撹拌機を用いて30
万回のせん断速度で充分に撹拌することによって、孔版
印刷用エマルションインキを得た。
【0025】実施例2〜5及び比較例1〜5 表1に記載した処方で、実施例1と同様な方法で孔版印
刷用エマルションインキを得た。なお、表1における油
相及び水相の各成分の数値はいずれも部数を示す。ま
た、表1に油相粘度も記載した。
【0026】
【表1】
【0027】以上の実施例及び比較例で得られたエマル
ションインキを用い、感熱孔版印刷機〔(株)リコー
製、プリポートVT3500〕で、充分印刷を行なって
インキを印刷機内にいきわたらせた後、10℃、20
℃、30℃の環境温度で印刷した。この際の印刷物の印
刷濃度は反射式光学濃度計(マクベス社製)によって測
定した。また、インキ約1gを遠心沈降管に入れ、63
00G、2時間の条件下で遠心分離した時の油分離率か
ら、保存安定性を評価した。これらの結果を表2にまと
めて示した。
【0028】
【表2】 安定性:◎…オイル分離量0.2%以下 ○…オイル分離量0.2〜0.5% △…オイル分離量0.5〜1.0% ×…オイル分離量1.0%以上、又は水分離
【0029】表2の実施例1、3、4及び5と比較例
2、4及び5から明らかなように、本発明のエマルショ
ンインキの製造方法によると、せん断速度が速いほど安
定性の良いエマルションインキが得られ、温度依存性の
少ないインキを作ることができることが分かる。一方、
比較例1及び5で見られるように、低せん断速度では油
相の粘度を高くする必要があることが分かる。また、実
施例5と比較例3から明らかなように、界面活性剤の量
が少ないと安定性が悪いことが分かる。更に、実施例3
及び4から明らかなように、同じ高せん断速度でも電解
質を加えることで安定性が増すことも分かる。
【0030】
【発明の効果】請求項1の孔版印刷用エマルションイン
キの製造方法は、油相中の界面活性剤の量が水相の1/
70(重量比)以上である孔版印刷用エマルションイン
キを、ローターステータ式撹拌機を用いて1秒間に25
万回以上のせん断速度で処理するという構成としたこと
から、本方法によると、保存安定性に優れ、且つ油相粘
度を低くすることができることから温度依存性の小さい
エマルションインキを得ることができる。
【0031】請求項2の孔版印刷用エマルションインキ
は、前記ローターステータ式撹拌機としてインライン方
式のものを用いたことから、保存安定性に優れ且つ温度
依存性の小さいエマルションインキを、より安定して得
ることができる。
【0032】請求項3の孔版印刷用エマルションインキ
は、原料エマルションインキとして、前記水相に離液順
列の上位に位置するイオンからなる電解質を水相の0.
1重量%以上含有するものを用いたことから、水相の水
の構造を壊すことや、エマルションの界面活性剤密度を
高くする効果により、更に保存安定性や温度特性に優れ
たエマルションインキを得ることができる。
フロントページの続き (72)発明者 渡会 幸隆 宮城県柴田郡柴田町大字中名生字神明堂 3番地の1 東北リコー株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−209976(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 油相10〜50重量%と水相90〜50
    重量%とからなる油中水型エマルションからなり、且つ
    該油相中の界面活性剤の量が水相の1/70(重量比)
    以上である孔版印刷用エマルションインキを、ローター
    ステータ式撹拌機を用いて1秒間に25万回以上のせん
    断速度で処理することを特徴とする孔版印刷用エマルシ
    ョンインキの製造方法。
  2. 【請求項2】 ローターステータ式撹拌機としてインラ
    イン方式のものを用いることを特徴とする請求項1に記
    載の孔版印刷用エマルションインキの製造方法。
  3. 【請求項3】 水相に離液順列の上位に位置するイオン
    からなる電解質を水相の0.1重量%以上含有するもの
    を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の孔
    版印刷用エマルションインキの製造方法。
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