JP2925447B2 - 金属加工用潤滑油組成物およびその製造方法 - Google Patents

金属加工用潤滑油組成物およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属材料、その中でも
特にステンレス鋼の塑性加工を容易にし、かつ、工具お
よび機械系に主として用いられている鉄系材料に対する
腐食性の低い高性能な潤滑油組成物およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ステンレス鋼の冷間塑性加工の潤
滑法として、以下の方法が広く用いられている。ひとつ
は、シュウ酸塩被膜上に金属石ケン被膜を形成させる処
理を、被加工材の表面にあらかじめ施しておく潤滑法で
ある。この潤滑法が多用されている理由は、この潤滑法
によって形成される被膜が、冷間塑性加工時、金型と被
加工材との間に焼付きが発生することを防止する能力に
優れているためである。したがって、この潤滑法は、形
状が複雑で、加工条件の厳しい製品の冷間塑性加工にも
適用することができる。
【0003】上記以外の潤滑法としては、ベースオイル
に硫黄系添加剤、塩素系添加剤、りん系添加剤もしくは
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)などを配合
した市販または発表済みの潤滑油を使用する方法があ
る。この方法では、冷間塑性加工を行うに当たり、上記
シュウ酸塩被膜上に金属石ケン被膜を形成する潤滑法の
ように冷間塑性加工前の被加工材に被膜を形成させてお
く必要がなく、ベースオイルに硫黄系添加剤、塩素系添
加剤、りん系添加剤もしくはZnDTPなどを配合した
潤滑油を加工部にスプレーなどで供給するだけでよい。
したがって、この方法は、下記するようなシュウ酸塩被
膜上に金属石ケン被膜を形成させる潤滑法の問題点、す
なわち、全冷間加工工程をオンライン化できないである
とか、スラッジおよびスケールの除去および廃棄作業や
金属石ケン処理液の廃液処理作業が必要となる等の問題
点を解決できるという長所を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】シュウ酸塩被膜上に金
属石ケン被膜を形成させる潤滑法では、冷間塑性加工を
行う前にシュウ酸塩被膜とこのシュウ酸塩被膜の上に金
属石ケン被膜を形成させる処理をあらかじめ施さなくて
はならない。この処理は、アルカリ脱脂→水洗→酸洗→
水洗→シュウ酸塩処理→水洗→金属石ケン被膜処理→乾
燥といった工程からなり、大変複雑な操作によって行わ
れる。したがって、この被膜処理は、材料の切断から冷
間塑性加工にいたる加工ラインに連続的に組込むことが
できず、別個の独立した工程としなくてはならない。こ
のため、この潤滑法を用いた冷間塑性加工ラインでは、
材料の切断と冷間塑性加工との間で、かかる被膜処理の
ために冷間塑性加工ラインの流れが中断してしまい、全
冷間塑性加工ラインを自動化することができない。この
ことは、現在の生産現場に課せられている、必要な品物
を、必要な量だけ、必要なときに供給するという要求に
対処する上で大きな問題となっている。また、シュウ酸
塩被膜処理の工程においては、スラッジおよびスケール
が生成するため、これらの除去および廃棄作業が必要で
ある。さらに、金属石ケン被膜処理の工程においても、
金属石ケン処理液の廃液作業が必要である。それゆえ、
シュウ酸塩被膜上に金属石ケン被膜を形成させる潤滑法
には、多大な労力、経費、時間を必要とするという問題
点がある。
【0005】ベースオイルに硫黄系添加剤、塩素系添加
剤、りん系添加剤もしくはZnDTPなどを配合した潤
滑油を使用する方法は、冷間塑性加工を行った場合の焼
付き防止性能、すなわち加工性能が、シュウ酸塩被膜上
に金属石ケン被膜を形成させる潤滑法に比べてはるかに
劣るという問題点がある。それゆえ、この方法は、加工
条件の穏やかなものにしか適用できないという欠点を有
する。この方法による焼付き防止性能の低さは、油膜お
よび冷間塑性加工中に生成する反応被膜や吸着膜だけに
依存して焼付き防止が行われることに起因する。
【0006】無機酸や酸性リン酸エステルなどの反応性
の高い物質を配合することにより、加工時の材料表面に
反応被膜や吸着膜を形成しやすくした潤滑油がある。し
かし、この種の潤滑油は、生産現場のプレスおよびその
周辺設備の部品として一般的に用いられている鉄系の材
料に対して腐食性が高いという性質を有しているという
問題がある。また、塩素系添加剤を配合した潤滑油は、
冷間塑性加工後の製品や、生産現場のプレスおよびその
周辺の装置の部品に赤錆を生じさせやすいという欠点が
ある。
【0007】本発明は上記問題に鑑み案出されたもので
あり、優れた焼付き防止能と低腐食性とを両立した金属
加工用潤滑油組成物およびその製造方法を提供すること
を解決すべき課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の金属加工用潤滑
油組成物は、鉱油、合成油またはこれらの混合油と、リ
ン酸エステルと、正リン酸と、金属リン酸塩と、有機塩
素化合物とを含有していることを特徴とするものであ
る。そして、本発明の金属加工用潤滑油組成物の製造方
法は、鉱油、合成油またはこれらの混合油に、リン酸エ
ステルを0.5重量%以上、正リン酸を0.3重量%以
上、金属リン酸塩を0.1重量%以上配合し、これを一
旦80℃以上に加熱した後室温まで冷却し、これに有機
塩素化合物を0.5重量%以上配合することにより、前
記リン酸エステル、前記正リン酸、前記金属リン酸塩お
よび前記有機塩素化合物を溶解させることを特徴とする
ものである。
【0009】本発明における鉱油、合成油またはこれら
の混合油は、本組成物の主要成分(ベースオイル)とな
るものである。リン酸エステルとしては、トリブチルホ
スフェート、トリオクチルホスフェート、トリオレイル
ホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホス
フェート、モノブチルホスフェート、モノデシルホスフ
ェート等または、ジエステルとモノエステルとの混合物
であるオクチルアシッドホスフェート、デシルアシッド
ホスフェート、オレイルアシッドホスフェート等を使用
することができる。
【0010】正リン酸は通常の市販品である水溶液でよ
く、水分量は問わない。金属リン酸塩としては、リン酸
カルシウム、リン酸マンガン、リン酸鉄、リン酸亜鉛等
を使用できる。また、有機塩素化合物としては、塩素化
パラフィン、塩素化油脂、塩素化脂肪酸、塩素化脂肪酸
エステル等を使用することができる。
【0011】リン酸エステルの配合量は、0.5重量%
以上、好ましくは5〜60重量%の範囲であり、正リン
酸の配合量は、0.3重量%以上、好ましくは0.5〜
10重量%の範囲であり、金属リン酸塩の配合量は、
0.1重量%以上、好ましくは0.1〜2.0重量%の
範囲であり、有機塩素化合物の配合量は、0.5重量%
以上、好ましくは5〜60重量%の範囲である。リン酸
エステルの配合量が0.5重量%以下、正リン酸の配合
量が0.3重量%以下、有機塩素化合物の配合量が0.
5重量%以下となると、焼付きの防止に対する添加の効
果が減少する。また、リン酸エステルの配合量が60重
量%以上、正リン酸の配合量が10重量%以上、有機塩
素化合物の配合量が60重量%以上となると性能はもは
や向上せず、経済的には好ましくない。また、金属リン
酸塩の配合量について、0.1重量%以下では腐食抑制
能が低く、2.0重量%以上では油に溶解しきれなくな
り、また、経済的にも好ましくない。
【0012】正リン酸および金属リン酸塩を油に可溶化
させるために行う、リン酸エステル、正リン酸および金
属リン酸塩を配合した潤滑油組成物を加熱処理する際の
温度は、80℃以上であり、好ましくは100〜200
℃の範囲である。加熱処理の時間は加熱温度に依存して
決まり、高温であれば短時間でよく低温では長時間必要
であるが、最低限3分以上、好ましくは15分以上必要
である。加熱温度が80℃以下および加熱時間が3分以
下では正リン酸および金属リン酸塩の油への可溶化が十
分ではなく、焼付き防止能および腐食抑制能の向上が小
さい。加熱温度が200℃を越えると、ベースオイルが
鉱油の場合ベースオイルの劣化を生じるようになるため
好ましくない。加熱処理中、攪拌機等により攪拌して
も、また静置してもよいが、密閉系よりも解放系である
ほが望ましい。加熱処理後未溶解の金属リン酸塩が残存
する場合には、ろ過によって取り除く。加熱処理の後
は、手法を限定せず室温にまで冷却する。
【0013】上記、リン酸エステル、正リン酸および金
属リン酸塩を配合し、加熱処理を施した後室温まで冷却
したものと有機塩素化合物を混合することによって所望
の潤滑油組成物を得る。ここで、リン酸エステル、正リ
ン酸、金属リン酸塩および有機塩素化合物のすべてを配
合したものに加熱処理を加えない理由は、加熱による有
機塩素化合物の分解を避けることにある。
【0014】なお、本発明の潤滑油組成物には、必要に
応じて、エポキシ化油脂、エポキシ化脂肪酸エステル等
の遊離塩酸の捕捉剤、フェノ−ル、アミン等の酸化防止
剤、添加剤の溶解性を向上するための界面活性剤を配合
してもよい。
【0015】
【発明の作用】本発明で使用される正リン酸は水溶液で
ある。したがって、正リン酸とリン酸エステルとをベー
スオイルに加えただけの潤滑油組成物は不均一溶液とな
る。そして、正リン酸は主に水相に、リン酸エステルは
主に油相に溶解している。この潤滑油組成物に加熱処理
を加えることによって水分が蒸発し、潤滑油組成物中の
水分は減少する。そのため、正リン酸とリン酸エステル
との水素結合による会合が進行し、正リン酸は油に可溶
化する。正リン酸とリン酸エステルとの会合の度合い、
すなわち油に可溶化したリン酸の量は、加熱温度が高い
ほど、また、加熱時間が長いほど大きく、会合が飽和に
達するまで増大する。
【0016】リン酸エステルと会合体を形成し油に可溶
化した正リン酸は、遊離の正リン酸に比べて、鉄系材料
に対する反応性が著しく大きい。しかし、ステンレス鋼
表面に存在する酸化クロムの不動態膜に対しては不活性
である。有機塩素化合物は、この酸化クロム被膜に対し
て活性を有しており、酸化クロム被膜を溶解する。酸化
クロムの不動態被膜が溶解したステンレス鋼に対して
は、正リン酸は高い反応性を有している。したがって、
リン酸エステル、正リン酸および有機塩素化合物を含有
した本発明の潤滑油組成物をステンレス鋼の表面に塗布
して加工することにより、ステンレス鋼表面に強固なリ
ン酸鉄系の反応被膜を生成する。また、その最表面に、
リン酸エステルの有機吸着膜を生成する。加工時の被加
工材表面に、このようなリン酸鉄系の反応被膜とリン酸
エステルの吸着膜が形成されることにより、優れた焼付
き防止能が得られる。
【0017】金属リン酸塩は、リン酸エステルとの共存
の下、加熱により、会合体を形成することにより油に溶
解する。金属リン酸塩は、金属に対して反応性が低い。
従って、加工時のように反応時間が短い場合には、ステ
ンレス鋼表面とほとんど反応せず、正リン酸およびリン
酸エステルとステンレス鋼との反応を阻害することはな
い。しかし、長時間油と金属とが接触する場合には、反
応被膜の油中への溶解を抑制し、安定な被膜を金属表面
に生成することにより、正リン酸ならびにリン酸エステ
ルと金属との過剰な反応および反応被膜の脱落・溶解を
防ぐことができる。
【0018】また、有機塩素化合物と鉄系材料との反応
によって塩化鉄が生成しても、この塩化鉄はリン酸エス
テルを含んだ潤滑油組成物に溶解するため、塩化鉄は表
面に残らず、リン酸鉄系の被膜だけで表面が覆われるこ
とになる。塩化鉄は、大気中の水分と容易に加水分解
し、水酸化鉄、すなわち赤錆に変化する。本発明の潤滑
油組成物では、潤滑油組成物中に有機塩素化合物を含ん
でいるにもかかわらず、反応生成物として塩化鉄を金属
材料表面に残さないため、赤錆を生じることはない。
【0019】
【発明の効果】本発明の潤滑油組成物は、ステンレス鋼
表面に対する反応性が高いため、塗布するだけで加工に
伴い迅速に、十分な強度を持った反応被膜および吸着膜
をステンレス鋼表面に生成させることができる。得られ
る反応被膜および吸着膜はステンレス鋼の冷間塑性加工
における焼付きを防止するのに適している。また、この
潤滑油組成物には、金属表面に対する過剰な反応を抑制
する作用がある。さらに、赤錆を生じさせない性質があ
る。したがって、本発明の潤滑油組成物を用いると、被
加工材、工具および加工装置に対して腐食性が低く、か
つ、従来の潤滑油では加工できなかった厳しい加工条件
で製造される製品にも適用することができる。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。 (実施例1)本実施例の潤滑油組成物は、ベースオイル
となるパラフィン系鉱油(40℃における動粘度が85
cSt)と、リン酸エステルとしてのオレイルアシッド
ホスフェート(OLAP)15重量%と、正リン酸(1
5wt%の水を含有)2重量%と、有機塩素化合物とし
ての塩素化脂肪酸50重量%と、金属リン酸塩としての
リン酸亜鉛0.5重量%とを含有してなるものである
(表1参照)。この潤滑油組成物は、パラフィン系鉱油
にOLAP、正リン酸およびリン酸亜鉛を配合し、これ
を一旦120℃で1時間加熱した後室温まで冷却し、こ
れに塩素化脂肪酸を配合することにより製造した。
【0021】(実施例2)本実施例の潤滑油組成物は、
実施例1のものとリン酸亜鉛の配合量のみが異なり、パ
ラフィン系鉱油と、OLAP15重量%と、正リン酸2
重量%と、塩素化脂肪酸50重量%と、リン酸亜鉛0.
25重量%とを含有してなるものである(表1参照)。
なお、この潤滑油組成物の製造方法は実施例1の場合と
同じである。
【0022】(比較例)比較例として、表1に示す7種
類の潤滑油組成物を調製した。これら比較例1〜7の潤
滑油組成物は、全てリン酸亜鉛を含有せず、OLAP、
正リン酸および塩素化脂肪酸のうちの1〜3種類を種々
組み合わせを変えて配合したものである。なお、正リン
酸を含有する比較例1、2、4、6は実施例1、2の場
合と同様の方法で製造したが、正リン酸を含有しない比
較例3、5、7は加熱処理を施すことなく製造した。
【0023】
【表1】 (焼付き防止性能試験)表1に示した実施例1、2およ
び比較例1〜7の潤滑油組成物の冷間鍛造における焼付
き防止性能をテーパプラグ通し試験によって評価した。
図1にテーパプラグ通し試験に使用した装置の構成を示
す。この装置は、内周径30mmの貫通孔を持つ高速度
鋼製のダイス4の貫通孔中に外周径30mmで内周径の
異なる種々の筒状試験片1を配置し、貫通孔の一端にカ
ウンタパンチ5を、他端にテーパプラグ2を配置し、2
50トンのナックルジョイントプレスでテーパプラグ2
を試験片1の中心孔に押し通すことにより試験片1に塑
性変形を生じさせ、テーパプラグ2と試験片1との間の
焼付き発生状況を調べるものである。
【0024】試験片1としては、表2に示すように内周
径が16.5mm、17.0mmおよび17.5mmの
3種類のステンレス鋼(SUS430)製円筒型試験片
を使用し、各試験片の表面に各潤滑油組成物の一つを塗
布したものとした。テーパプラグ2としては、直径1
8.1mmの軸受用鋼(SUJ2)製のテーパプラグを
使用した。そして、テーパプラグ2の直径(Dp;1
8.1mm)および試験片1の内径(Di)を表2のご
とく組合せることにより、減面率(R) (ここで、R={(Dp2 −Di2 )/(302 −Di
2 )}×100(%))の値を、1、4、6、9%とす
る冷間塑性加工を行った。減面率の値が大きいほど加工
条件が厳しく焼付きが起こりやすい。
【0025】潤滑油組成物の加工性能の評価は、加工後
の試験片内面を目視観察し、焼付きが発生することなく
加工できた最大の減面率(maxR)によって行った。
maxR値が大きい潤滑油組成物ほど鍛造性能が高いこ
とを意味する。なお、試験温度は室温である。表3に試
験結果を示す。なお、表3に示す従来例1は塩素系の添
加剤を含む市販品であり、従来例2はリン系の添加剤を
含む市販品である。
【0026】
【表2】 Dp:テーパプラグ直径 Di:試験片内径 R:減面率 〔R={(Dp2 −Di2 )/(302 −Di2 )}×
100〕
【0027】
【表3】 表3の結果から、リン酸エステルと正リン酸および金属
リン酸塩とを鉱油に配合し加熱処理を施した後、有機塩
素化合物を配合した本発明の潤滑油組成物(実施例1、
2)は、リン酸エステルと正リン酸とを鉱油に配合し加
熱処理を施した後、塩素を含む有機化合物を配合したも
の(比較例1)と同様に、リン酸エステル、正リン酸お
よび塩素を含む有機化合物の中からいずれか1種類以上
が抜けたもの(比較例2、3、4、5、6、7)に比べ
てmaxR値が大きくなっており、塑性加工性能が向上
していることが分かる。また、従来例1、2の市販品に
比べても明らかに加工性能が優れていることが分かる。
【0028】表4に、テーパプラグ通し試験後の試験片
表面のEPMA(X線マイクロアナライザ)による元素
の定量分析結果を示す。検出元素は、リン、亜鉛および
塩素である。
【0029】
【表4】 表4の結果から、リン酸エステルと正リン酸および金属
リン酸塩とを鉱油に配合し加熱処理を施した後、有機塩
素化合物を配合した本発明の潤滑油組成物(実施例1、
2)は、リン酸エステルと正リン酸とを鉱油に配合し加
熱処理を施した後、塩素を含む有機化合物を配合したも
の(比較例1)と同様に、リン酸エステルと正リン酸の
2成分だけを配合したもの(比較例2)に比べて、リン
の検出量が多く、加工物表面における主にリン酸鉄から
なる反応被膜の生成量が多いことが分かる。このような
本発明の潤滑油組成物の高い反応性が優れた加工性能に
寄与していることは明らかである。
【0030】(腐食試験)表1に示した潤滑油組成物の
鉄系材料に対する腐食性を静的腐食試験によって検討し
た。これは、60℃の試料油中にSPCC製の鉄片を浸
漬して2週間保ち、初期面からの浸食された深さを測定
するものである。試料油の量に対する鉄片の表面積の比
率は、試料油1g当たり鉄片0.37cm2 である。ま
た、腐食試験後の試験片をn−ヘキサンで脱脂した後、
大気中で1週間放置し、赤錆の発生の有無を観察した。
表5にその結果を示す。
【0031】
【表5】 表5に示すように、リン酸エステル、正リン酸および塩
素を含む有機化合物の3成分を配合したもの(比較例
1)に比べ、この組成物にさらにリン酸亜鉛を配合した
本発明の組成物(実施例1、2)の方が、浸食深さが小
さくなり、腐食が抑制されている。また、リン酸亜鉛の
配合量の多い方が、浸食深さはより小さくなっている。
この腐食の抑制は、前もって多量のリン酸亜鉛を含んだ
試料油に対しては、鉄片表面の腐食生成物であるリン酸
鉄の油中への溶解平衡が容易に達成され、それによって
生成金属リン酸塩被膜の油中への溶解が阻害されること
に起因するものと考えられる。
【0032】また、有機塩素化合物だけを含む組成物で
ある比較例7および従来例1では赤錆を発生している。
それに対して、本発明の潤滑油組成物の実施例1、2で
は、有機塩素化合物を含んでいるのにもかかわらず赤錆
を発生していない。表6に、腐食試験後の試験片表面の
EPMAによる元素の定量分析結果を示す。検出元素
は、リン、亜鉛および塩素である。
【0033】
【表6】 表6の結果から、比較例7および従来例1では塩化鉄の
生成を意味する塩素が検出されているのに対して、本発
明の潤滑油組成物である実施例1、2では、塩素は全く
検出されていない。塩化鉄は容易に加水分解して赤錆で
ある水酸化鉄に変化する。したがって、本発明の潤滑油
組成物である実施例1、2において赤錆が発生しなかっ
たのは、リン系添加剤の共存によって塩化鉄が生成され
なかったことに起因するものである。
【0034】以上のような、浸食深さの測定結果および
赤錆の発生状況の観察結果から、本発明の潤滑油組成物
においては鉄系材料に対する腐食性が抑制されているこ
とが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】テーパプラグ通し試験に使用した型の構成の概
略を示す断面図である。
【符号の説明】
1…試験片、2…テーパプラグ、3…パンチ、4…ダイ
ス、5…カウンタパンチ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C10N 10:04 30:12 40:24 70:00 (72)発明者 志村 好男 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1 株式会社豊田中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭61−60791(JP,A) 特開 昭62−207396(JP,A) 特開 昭62−149795(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C10M 141/10 C10M 137/04 C10M 125/24 C10M 131/12 C10N 10:04 C10N 40:24 C10N 70:00 WPI/L(QUESTEL)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉱油、合成油またはこれらの混合油と、
    リン酸エステルと、正リン酸と、金属リン酸塩と、有機
    塩素化合物とを含有していることを特徴とする金属加工
    用潤滑油組成物。
  2. 【請求項2】 鉱油、合成油またはこれらの混合油に、
    リン酸エステルを0.5重量%以上、正リン酸を0.3
    重量%以上、金属リン酸塩を0.1重量%以上配合し、
    これを一旦80℃以上に加熱した後室温まで冷却し、こ
    れに有機塩素化合物を0.5重量%以上配合することに
    より、前記リン酸エステル、前記正リン酸、前記金属リ
    ン酸塩および前記有機塩素化合物を溶解させることを特
    徴とする金属加工用潤滑油組成物の製造方法。
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