JP2924930B2 - Pc鋼より線の定着端部 - Google Patents

Pc鋼より線の定着端部

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プレストレストコンク
リート部材とか、斜張橋用吊材、アウターケーブル等に
使用される、PC鋼より線の定着部の耐疲労性、さらに
は耐食性を向上させた定着端部に関するものである。
【0002】
【従来の技術】PC鋼より線を定着する方法としては、
大きく分けて次の3通りのタイプの定着具による方法が
ある。 (1)楔のPC鋼より線を把むところが歯形になってい
るウェッジタイプ (2)PC鋼より線を摩擦抵抗で把むコーンタイプ (3)PC鋼より線を圧着加工して把むスリーブタイプ このうち(3)のスリーブを用いてPC鋼より線に被ぶ
せて圧着加工する方法は、従来次のように実施してい
た。使用するPC鋼より線の直径より大きい孔をあけた
鋼製スリーブおよびスリーブとPC鋼より線の間に介在
させる金属類をPC鋼より線の間に挿入し、これをスリ
ーブの外径より小さい孔径をもつダイスで押し出し加工
する。スリーブとPC鋼より線の間に介在させる金属類
としては、断面が角状になったもので、コイル状になっ
たものとか、金網で円筒状に形成したもの、さらに内側
にネジ切り状の歯をもった筒状のものがあるが、これら
はいずれもスリーブを圧縮し、PC鋼より線に対し、圧
着加工を施した時、PC鋼より線とスリーブの内面の抵
抗を大きくして、PC鋼より線の引張り力方向の抵抗を
大きくして所定の荷重に耐えるようにしたものである。
図3は上記の例を示し、1はPC鋼より線、2はスリー
ブ、3,3'は金属類、例えばコイル状ばねと金網を筒状
に形成したものである。もちろん、これら金属類の介在
物がなく、スリーブのみでも所定の荷重に耐えるように
したものがあるが、この場合スリーブ長が長いものとな
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、これらの圧
着加工したスリーブタイプのものは、斜張橋用吊材等の
くり返し応力のかかるところに用いられた場合、疲労抵
抗を発揮できない。何故ならば、この種タイプの定着具
は、PC鋼より線1の軸方向のスリーブ2との摩擦抵抗
で、引張方向の荷重に耐えるようになっているため、こ
の定着具で定着されたPC鋼より線1に引張り力が加わ
ると、図4に示すように圧着グリップのプレート4の側
から抜け出そうとする力が働くような機構になってい
る。そのため、PC鋼より線1にくり返し応力がかかっ
た時、圧着グリップのプレート4側出口付近でPC鋼よ
り線の上、下運動が発生する。そして、この上、下運動
時にスリーブ2とPC鋼より線1の間に介在している金
属類と常時擦れる状態になる。また、圧着加工前、金属
類を挿入するが、この金属類がスリーブ2より出てこな
いようにするため、図5に示すようにスリーブ2の先端
孔をせばめてストッパー5を形成しているが、PC鋼よ
り線1が上、下運動する時、このストッパー5とも擦れ
ることがある。この上、下運動により、PC鋼より線1
にフレッチング現象が発生し、疲労抵抗を弱めることに
なる。このような定着具で疲労抵抗を高める方法とし
て、図6に示すように引張り力が伝達していく側(プレ
ートに近い側)のスリーブ2の先端をテーパー6を備え
る形状となし、このテーパー6と同程度の角度をもつ孔
の中に定着するようにして、PC鋼より線に引張り力が
加わり、くり返し応力が加わることによってPC鋼より
線1に締めつけ力が働き、スリーブ先端部内でのPCの
上、下運動をできるだけ少なくする方法がある。しか
し、この方法では、スリーブの加工が複雑で非常に高い
費用を要するという欠点がある。一方、PC鋼より線を
複数本より合せたケーブルにおいては、スリーブとの間
に金属類を直接介在させることなく、圧着加工している
ため、スリーブ長が長くなっている。そして、この定着
方法では、金属類が介在している場合より、さらにPC
鋼より線のくり返し応力が加わった時の上、下運動は大
きくなり、疲労抵抗が小さい。そのために図7に示すよ
うに、スリーブ先端内側に切欠き部7を設けて樹脂8を
注入する方法がある。(特公昭61−3915号参照)しかし
ながら、この方法では樹脂と接する面積が小さく、ケー
ブル1'の引張り力に耐えるだけの接着力がない。そのた
め、くり返し応力がかかった時、最初に上、下運動がか
かった部分でのスリーブ2との接触は少ないが、くり返
し数が多くなり、くり返し応力が大きくなると、樹脂の
接着が切れ、スリーブ2とケーブル1'が直接接触してい
る部分においても、上、下運動が起りうる。そのため、
その部分にフレッチングが発生し、疲労強度の向上がそ
れほど望めない。このように、従来のスリーブを圧着し
て定着具とする方法には、疲労抵抗を上げるという点で
問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記のような問
題を解決したものであって、次のような観点に立って、
改善の手段を講じている。 (1)PC鋼より線とスリーブが、くり返し応力による
上、下運動の時に直接接しない。 (2)PC鋼より線の部分への酸素の供給をできるだけ
少なくする。 (3)PC鋼より線の引張り力に対しては、十分保持力
がある。 これらの要件を満足する手段として、 (1)少なくともPC鋼より線の圧着力加工をする部分
の表面に樹脂を粉体塗装する。もちろん、この粉体塗装
はPC鋼より線の表面を処理して、樹脂との接着力が十
分あるものにする。 (2)PC鋼より線に対する十分な保持力を確保するた
めに、スリーブとの間に鉄、鋼を含む金属類を介在させ
るが、この金属類は粉体塗装製の被覆を突き破り、PC
鋼より線の表面に達するものでなければならない。 何故なら、金属類を介在させないで、直接、スリーブを
圧縮して圧着加工させると、スリーブとPC鋼より線の
間に樹脂被覆の界面が生じて、PC鋼より線の引張り力
に対する保持力の問題が生じ、保持力を確保するために
は、スリーブを長くする必要があり、長期的に引張り力
がかかる場合、不安定である。また、金属類を介在させ
た時でも、この金属類が圧着時PC鋼より線の表面に到
達しないならば、やはりPC鋼より線の引張り力に対し
て、保持力に問題を生じるからである。図1は本発明の
実施例を示すが、PC鋼より線1の端部表面を清浄化処
理し、粉体塗装により樹脂被覆9を形成し、金網状筒10
を間にしてスリーブ2を嵌める。図は圧縮加工後を示し
ているが、金網状筒を形成する金属類はPC鋼より線1
の表面に達し、同時にスリーブ内とも圧接されているこ
とを示す。
【0005】
【作用】このように、表面を十分処理してPC鋼より線
に粉体塗装により樹脂被覆を接着させ、その外周に金属
類を巻きつけ、さらにスリーブを嵌め、このスリーブを
圧着加工することにより、金属類が樹脂被覆を突き破
り、PC鋼より線の表面に到達すると、PC鋼より線の
引張り力方向の保持力に対しては、金属類との摩擦抵抗
力と同時に樹脂との摩擦力が効果を発揮する。また、く
り返しの応力によるPC鋼より線の上、下運動において
は、樹脂によってスリーブとPC鋼より線の直接の接触
を防ぎ、かつ樹脂被覆でPC鋼より線表面が被われてい
るので、金属類が樹脂被覆を突き破ってPC鋼より線の
表面に到達しても、外部からの酸素の供給は絶たれるこ
とにより、PC鋼より線表面でのフレッチングが生じる
ことはなくなり、優れた疲労特性のものが得られる。
【0006】(疲労試験)図1に示す本発明の実施例に
おいて、金網の筒状介在物を用い、径が15.2mmのPC鋼
より線、上限荷重 190kg/mm2×0.45=85.5kg/mm2以下
で、くり返し速さ4Hzで定着部の疲労試験を行い、同時
に上記PC鋼より線を用い、従来の定着法を示す図3の
金網の筒状介在物を用いるもの、図7のスリーブ端部切
欠部に硬化性エポキシ樹脂を注入したものを同一条件で
試験した。なお、本実施例における樹脂被覆は静電塗装
によりエポキシ系の粉体を塗装し、半硬化させたもの
で、その厚みは0.7mm であり、鋼製スリーブは、樹脂被
覆を備えるPC鋼より線の外周に前記金網の筒状介在物
を用いて、内側にあるPC鋼より線の中心方向に所定の
圧縮を加えたとき、前記金網がPC鋼より線の表面のエ
ポキシ被覆を破り、金網の一面がPC鋼より線の表面と
直接接触できる程度の径としている。その試験結果は、
図2の特性グラフに示される。応力振幅を変更して、4
Hzのくり返し周期で破断試験を行った。丸印は本発明に
よる定着端部を示し、黒丸印は破断、白丸印は未破断を
示し、四角印は図7による定着端部を示し、黒四角印は
破断、白四角印は未破断を示し、三角印は図3による定
着端部を示し、黒三角印は破断、白三角印は未破断を示
している。このグラフによれば、本発明の定着端部は図
7、図1に示したような従来の定着端部に比較して、格
段に疲労強度が優れていることが明らかである。
【0007】なお、PC鋼より線の端部に粉体塗装をす
るだけでなく、PC鋼より線全長に粉体塗装をすること
によって耐食性も向上させたPC鋼より線とその定着端
部を提供することができる。また、PC鋼より線の表面
には、表面処理した後、粉体塗装により樹脂を被覆して
いるが、接着性、膜厚の均一性等から考えて最適であ
る。通常の樹脂を定着するところに塗布して同様に金属
類を介在させ、スリーブを圧着加工しても疲労特性の改
善は期待できるが、接着性、膜厚の均一性が粉体塗装よ
り低下するから、粉体塗装によるほどは、引張り力に対
する保持力、ならびに疲労特性の向上は期待できない。
【0008】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のPC鋼よ
り線の定着端部の構成によれば、くり返し引張り力に対
する疲労強度を従来の同様スリーブを用いたものに比
べ、格段に改善することができ、プレストレストコンク
リート部材、斜張橋用吊材、アウターケーブル等に適用
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す。
【図2】本発明、図7、図3によるPC鋼より線の定着
端部の疲労試験の結果をグラフで示す。
【図3】従来のPC鋼より線の定着端部を示す。
【図4】従来のPC鋼より線の定着端部を示す。
【図5】従来のPC鋼より線の定着端部を示す。
【図6】従来のPC鋼より線の定着端部を示す。
【図7】従来のPC鋼より線を複数本より合わせたケー
ブルの定着端部を示す。
【符号の説明】
1 PC鋼より線 1' PC鋼より線複数本をより合わせたケーブル 2 スリーブ 3 コイル状ばね 3' 金網状筒 4 プレート 5 ストッパー 6 テーパー 7 切欠部 8 樹脂 9 樹脂被覆 10 金網状筒

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粉体塗装により表面に樹脂被覆を備える
    PC鋼より線の外周に金属類を介在させて鋼製のスリー
    ブを嵌め、前記スリーブを圧縮して、前記介在の金属類
    が前記樹脂被覆を突き破り、PC鋼より線の表面に達す
    るように、金属類を介在させてスリーブをPC鋼より線
    に圧着加工してなることを特徴とするPC鋼より線の定
    着端部。
  2. 【請求項2】 金属類がコイル状、または金網を筒状に
    形成したものであることを特徴とする請求項1によるP
    C鋼より線の定着端部。
  3. 【請求項3】 金属類が内側にねじを切った筒状に形成
    したものであることを特徴とする請求項1によるPC鋼
    より線の定着端部。
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