JP2918319B2 - 圧電トランス - Google Patents

圧電トランス

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Description

【発明の詳細な説明】 〔概要〕 圧電トランスに関し、 昇圧比が大きく高安定で,かつ、信頼性の高い圧電ト
ランスを実用化することを目的とし、 長さ方向に振動する一様に分極された圧電単結晶板を
用いる圧電トランスであって、前記圧電単結晶板の長さ
方向の一部両面から厚さ方向に入力電圧を印加して圧電
的に振動を励起し、前記入力電圧を印加していない部分
の長さ方向に発生する電圧を出力として取り出すように
圧電トランスを構成する。具体的にはこのような圧電単
結晶板としてZ軸方向に一様に分極されたニオブ酸リチ
ウム単結晶の130゜±20゜回転Y板を用いて効果的に構
成することができる。
〔産業上の利用分野〕
本発明は圧電トランス,とくに、圧電単結晶,たとえ
ば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)単結晶の回転Y板を用
いた高性能で,かつ、安定性の高い圧電トランスの構成
に関する。
〔従来の技術〕
陰極線管(CRT)の電子線の偏向や静電印刷における
光導電ドラムの帯電など、大きな電流は必要としないが
数kV以上の高電圧を必要とする機器が多くある。現在、
一般的には電磁トランスを使用しているが、小型・計量
でソリッドステートなデバイスとして圧電トランスが注
目され一部に具体的に提案されている。
第5図は従来の圧電トランスの構造例を示す図で、Ro
senによって提案された代表的な例であり(C.A.Rosen:P
roc.,Electronic Components Symp.,p205,1957)、同図
(イ)は斜視図,同図(ロ)は断面図である。
図中、1′は圧電セラミック板,たとえば、チタン酸
バリウムセラミック板で、長方形の薄板の,たとえば、
図示したごとく中央部から左側は板厚方向に分極(Pi
し、右側は板の長さ方向に分極(Po)してある。そして
左側の分極(Pi)部分の両側に入力電極2および3を形
成して入力部とし、右側の分極(Po)部分の右端に一方
の出力電極4を形成し、他方の出力電極は入力電極3と
共用させてある。
いま、入力電極2,3の間に長さ方向の寸法で決まる共
振周波数の入力電圧Viを印加すると,たとえば、図中、
変異が実線d,破線d′で示したごとき長さ方向の振動が
励起され、圧電縦効果を介して出力電極4,3間に高電圧V
oが発生する。この場合、出力端無負荷時の昇圧比(Vo/
Vi)は次式で表される。
Vo/Vi=4/π・K31・k33・Qa・L2/T ……(1) こゝで、k31は横効果の結合係数,k33は縦効果の結合
係数,Qaは圧電板1′の機械的Q,L2は右半分の長さ方向
の分極(Po)部分の長さ,Tは圧電セラミック板の厚さで
ある。
すなわち、このような構造の圧電トランスの昇圧比
(Vo/Vi)は、横効果の結合係数K31,縦効果の結合係数k
33および圧電板1′の機械的QであるQaの積に比例す
る。
そして、デバイスとしては中央部の振動の節の部分を
支点5で支えて固定し圧電トランスを構成している。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、上記従来の圧電セラミック板を用いた圧電ト
ランスでは、入力部と出力部の境界,たとえば、圧電セ
ラミック板1′の中央部分で分極方向が直交するように
分極処理をしなければならず、このために振動変位の大
振巾時に歪み集中などが原因となって破壊するなどのト
ラブルが生じる。また、一般にセラミックは入力電圧を
上げていくと飽和特性を示したり、大振巾時に蒸発その
他の原因により圧電定数や弾性定数が劣化して動作安定
性や長期の信頼性に不安があるなど多くの問題があり、
その解決が求められている。
〔課題を解決するための手段〕
上記の課題は、長さ方向に振動する一様に分極された
圧電単結晶板1を用いる圧電トランスであって、前記圧
電単結晶板1の長さ方向の一部両面から厚さ方向に入力
電圧を印加して圧電的に振動を励起し、前記入力電圧を
印加していない部分の長さ方向に発生する電圧を出力と
して取り出すように構成した圧電トランスによって解決
することができる。具体的には前記圧電単結晶板1の長
さ方向の半分の領域に入力電圧を印加し中央部に振動の
節が生じるように構成する。
なお、前記圧電単結晶板1の材料としては、Z軸方向
に一様に分極されたニオブ酸リチウム単結晶の回転Y
板,とくに、130゜±20゜回転Y板を用いた圧電トラン
スにより効果的に解決することができる。
〔作用〕
本発明によれば、圧電単結晶板1は単結晶であるの
で、単一の方向に分極を揃え所望のカットを選択するこ
とにより充分大きい昇圧比のトランス作用が得られる。
とくに、LiNbO3は圧電定数積が大きく、かつ、機械的Q
もセラミックに比較してはるかに大きいのでより大きな
昇圧比か得られる。
さらに、単結晶の特性として誘電損失や機械損失が小
さいので変換効率を高く,したがって、自己発熱による
温度上昇も少なく、また特性が安定しているので動作安
定性も長期の信頼性も極めて優れているのである。
〔実施例〕
第1図は本発明の実施例を示す図で、同図(イ)は斜
視図,同図(ロ)は断面図である。
通常、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)のような圧電単結
晶は圧電セラミックとは異なり、入力部と出力部で自発
分極の方向を変えることはできないが、あとで詳しく述
べるごとく、そのカットの方位を最適に選択することに
よって圧電トランスに適用可能であることがわかった。
図中、1は圧電単結晶板,たとえば、ニオブ酸リチウ
ム(LiNbO3)単結晶板でZ軸方向に一様に分極処理を行
った単結晶から切り出された,たとえば、回転Yカット
板(とくに、約128゜回転Yカット板)を用いた。板の
大きさは長さ29.5mm,巾6.6mm,厚さ0.53mmのものを用
い、入力電極2および3としては圧電単結晶板1の中央
から左側の半分の両面に厚さ30nmのNiCrを下地にしその
上に厚さ100nmのAuを何れも真空蒸着により形成した。
出力電極4は同様の構成で右端側の端部から上面の約3m
mの巾にかけて同じく真空蒸着により形成した。図中、
板の側面図あるいは側断面に図示した矢印pは分極方向
を概念的に示したものである。
いま、図示していない交流発振電源から入力電源2,3
の間に長さ方向の寸法で決まる共振周波数の入力電圧Vi
を印加すると,たとえば、同図(ロ)に示した変位が実
線d,破線d′で示したごとき長さ方向の振動(基本振
動)が励起され、圧電縦効果を介して出力電極4,入力電
極3間に高電圧Voが発生するので,たとえば、ハイイン
ピーダンスの交流電圧計でそれを測定すれば昇圧比(Vo
/Vi)を求めることができる。この場合、振動が有効に
励起されるように圧電単結晶板1は振動の節,すなわ
ち、図示した例では中央部を支点5で支えるように,た
とえば、図示していないベースの上に接続搭載する。ま
た、各電極からは,たとえば、Auワイヤでボンディング
すればよい。
第2図は本発明実施例の入力電圧−出力電圧特性を示
す図で、縦軸に出力電圧,横軸に入力電圧をとってあ
る。図からわかるように極めて簡単な構造で約600とい
う大きな昇圧比が得られ,しかも、直線性のよい特性を
示している。
第3図はLiNbO3回転Y板における結合係数の回転角依
存性を示す図、縦軸に結合係数,横軸に回転角をとって
ある。図からLiNbO3単結晶の結晶本来の電気機械結合係
数kは余り大きくないが単結晶板を切り出す方位により
大きな結合係数が選べることがわかる。
前記式(1)をLiNbO3単結晶の回転Y板に置き換え
て、横効果の結合係数K23,縦効果の結合係数k33の回転
角依存性を実線で、両者の積K23・k33のそれを破線で示
した。すなわち、K23・k33の値は回転角130゜近辺で最
大(約0.30)となり、この値は代表的な圧電セラミック
のK31・k33の値(0.24)よりも大きい。すなわち、実用
的には回転角として130゜±20゜の範囲であれば有効な
圧電トランスが得られることがわかる(K23・k33の値が
0.15以上)。
第4図は本発明実施例の周波数−昇圧比特性を示す図
で、縦軸に昇圧比,横軸に周波数をとってある。この図
から機械的Qがかなり大きいことがわかる。Qが余り大
きすぎると共振周波数が少し変化しただけで昇圧比が大
巾に小さくなるが、実際にはLiNbO3単結晶は大振巾時で
も共振周波数の変化は小さく,さらに、入力側駆動回路
を自励発振器とすれば実用上何ら問題は生じない。
以上述べた実施例は例を示したものであり、本発明の
趣旨に添うものである限り、上記実施例に示した以外の
素材(たとえば、LiNbO3単結晶など),素子構成,ある
いは、それらの組み合わせや,また、膜形成技術につい
ても他の方法を適宜用いて、本発明の圧電トランスを構
成してよいことは言うまでもない。
〔発明の効果〕
以上詳しく述べたように、本発明によれば、圧電単結
晶板1は単結晶であるので、単一の方向に分極を揃え所
望のカットを選択することにより充分大きな昇圧比のト
ランス作用が得られる。とくに、LiNbO3は圧電定数積が
大きく,かつ、機械的Qもセラミックに比較してはるか
に大きいのでよい大きな昇圧比が得られる。さらに、単
結晶の特性として誘電損失や機械損失が小さいので変換
効率が高く,したがって、自己発熱による温度上昇も少
なく特性が安定しており、圧電トランスの性能,品質な
らびに信頼性の向上に寄与するところが極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例を示す図、 第2図は本発明実施例の入力電圧−出力電圧特性を示す
図、 第3図はLiNbO3回転Y板における結合係数の回転角依存
性を示す図、 第4図は本発明実施例の周波数−昇圧比特性を示す図、 第5図は従来の圧電トランスの構造例を示す図である。 図において、 1は圧電単結晶板、 2,3は入力電極、 4は出力電極、 5は支点である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】長さ方向に振動する一様に分極された圧電
    単結晶板(1)を用いる圧電トランスであって、前記圧
    電単結晶板(1)の長さ方向の一部両面から厚さ方向に
    入力電圧を印加して圧電的に振動を励起し、前記入力電
    圧を印加していない部分の長さ方向に発生する電圧を出
    力として取り出すことを特徴とした圧電トランス。
  2. 【請求項2】前記圧電単結晶板(1)の長さ方向の半分
    の領域に入力電圧を印加し、中央部に振動の節が生じる
    ように構成することを特徴とした請求項(1)記載の圧
    電トランス。
  3. 【請求項3】前記圧電単結晶板(1)がZ軸方向に一様
    に分極されたニオブ酸リチウム単結晶の回転Y板である
    ことを特徴とした請求項(1)または(2)記載の圧電
    トランス。
  4. 【請求項4】前記ニオブ酸リチウム単結晶の回転Y板の
    回転角が130゜±20゜であることを特徴とした請求項
    (3)記載の圧電トランス。
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