JP2916107B2 - 地中に埋めたケーシングの引抜き装置 - Google Patents

地中に埋めたケーシングの引抜き装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地中に埋めた鋼管
その他のケーシングを引き抜く装置に関し、たとえば、
管推進工法による管埋設工事を実施する際、地中に設け
た発進縦坑又は到達縦坑用ケーシングを、工事終了後に
地中から引き抜くのに適する引抜き装置に関する。
【0002】
【従来の技術】管推進工法による管埋設工事を実施する
際、発進縦坑に元押しジャッキを配置し、この元押しジ
ャッキによってカッタヘッドと埋設すべき管とを推進す
る。埋設すべき管が到達縦坑に到達したとき、元押しジ
ャッキとカッタヘッドとを撤去し、さらに、地表部に残
存する発進縦坑及び到達縦坑を撤去し、埋め戻して工事
が完了する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】特に小口径用の管を管
推進工法によって地中に埋設する場合、現場打ちコンク
リート構造物に代えて、鋼管その他の全体に円筒状又は
楕円状のケーシングを鉛直に地中に埋め込み、これを発
進縦坑又は到達縦坑とすることがある。このようなケー
シングを使用する工事では、管の埋設が終了した後、ケ
ーシングの埋め込みと引き抜きとを行う大型の専用機を
使用して地表部のケーシングを引き抜いているが、これ
では、設備費や運転費がかかり過ぎるため、工事費の高
騰の原因となっている。ケーシングを引き抜くことな
く、地表部にあるケーシングを切断して破棄することも
あるが、これでは、ケーシングを繰り返して使用するこ
とができず、不経済である。
【0004】本発明は、ケーシングの埋め込みと引き抜
きとをそれぞれ別個の装置で行うことによって大型化を
避け、これによって設備費や運転費を抑えることがで
き、ケーシングを繰り返して使用できる、地中に埋めた
ケーシングの引抜き装置を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】本発明
は、地中に埋めたケーシングを引き抜く装置であって、
前記ケーシングの周りに間隔をおいて配置される3個の
液圧シリンダ装置と、これら液圧シリンダ装置によって
昇降可能な、吊り下げ金具を有するフレームと、前記ケ
ーシングと前記フレームの吊り下げ金具とを連結する手
段と、前記3個の液圧シリンダ装置を同時に操作可能な
手動切替弁と、前記3個の液圧シリンダ装置による前記
ケーシングの引き抜き中に任意の1個又は2個の液圧シ
リンダ装置の引き抜き操作をさらに継続すると共に、他
の液圧シリンダ装置の引き抜き操作を停止可能に、前記
手動切替弁と前記各液圧シリンダ装置との間に接続され
た手動緊急切替弁とを備える。
【0006】ケーシングを地中から引き抜くべきとき、
液圧シリンダ装置をケーシングの周りに配置し、ケーシ
ングとフレームの吊り下げ金具とを連結手段で連結す
る。液圧シリンダ装置によってフレームを持ち上げ、ケ
ーシングを地中から引き抜く。
【0007】簡単な構造であるため安価に製作でき、設
備費を抑えることができる。また、埋め込みと引き抜き
とを行う専用機では、ケーシングを埋め込む際の反力を
受けるウエイトを備えるが、このウエイトをも含めた専
用機の全体を現場へ移動する運転費は無視できない。こ
れに対して、本発明では、ケーシングを引き抜く際の反
力は地面で受けさせ、ウエイトのような反力受けは不要
であるため、軽量に製作でき、運転費を低減できる。ま
た、引き抜いたケーシングを繰り返して使用できる。以
上の総合によって、工事費を低減できる。
【0008】液圧シリンダ装置を使用するものであるか
ら、簡単な構造によって大出力を発生できる上、3個の
液圧シリンダ装置を同時操作することにより、ケーシン
グの引き抜きを効率的に行うことができる。3個の液圧
シリンダ装置を同時に操作してケーシングの引き抜きを
行うとき、ケーシングが真直ぐに引き抜かれず、偏って
引き抜かれることがある。このとき、大目に引き抜かれ
ている箇所では、液圧シリンダ装置による引き抜きを停
止すると共に、少な目に引き抜かれている箇所では、液
圧シリンダ装置による引き抜きを継続できる。これによ
って、ケーシングの実質的に真直ぐの引き抜きが可能と
なる。
【0009】4個又はそれ以上の液圧シリンダ装置を使
用する場合、各液圧シリンダ装置に均等に荷重を負担さ
せることが難しいことは経験的に知られている。しか
し、本発明では3個の液圧シリンダ装置を使用すること
から、3個の液圧シリンダ装置をケーシングの周りに等
間隔で配置する限り、各液圧シリンダ装置に均等に荷重
を負担させることができる。
【0010】前記フレームは、3本のビームによって平
面形状が実質的に正三角形状を呈するように形成され、
前記3個の液圧シリンダ装置は正三角形の頂角部に連結
され、3個の前記吊り下げ金具が前記3個の液圧シリン
ダ装置からそれぞれ半径方向へ伸びるように前記フレー
ムに取りつけられることが好ましい。
【0011】フレームが3個の液圧シリンダ装置を配置
位置に保持するため、これら液圧シリンダ装置を保持す
るための別個の保持構造が不要である。
【0012】たとえば、1個の吊り下げ金具をフレーム
の中央に取り付け、この吊り下げ金具から連結手段であ
る複数のワイヤをケーシングに掛け渡しても、ケーシン
グの引き抜きは可能である。しかし、本発明のように液
圧シリンダ装置の数量と同じ数量の吊り下げ金具を準備
すると共に、各吊り下げ金具を各液圧シリンダ装置に対
応して位置させることにより、吊り下げ金具を液圧シリ
ンダ装置の可及的近くに設けることが可能となる。
【0013】前記各吊り下げ金具は2枚の間隔をおいた
平板からなり、異なる大きさのケーシングを連結するた
めの複数の穴を水平方向の異なる位置に有することが好
ましい。
【0014】各吊り下げ金具が複数の穴を水平方向の異
なる位置に有することから、異なる大きさのケーシング
を実質的に鉛直方向に吊り下げて引き抜くことができ
る。これにより、液圧シリンダ装置の能力を最大限に発
現できる。また、一機種で口径ないし大きさの異なる複
数のケーシングを引き抜くことができる。
【0015】前記連結手段は、前記吊り下げ金具の2枚
の平板の間隔内に差し込み可能な厚みのフラットバーか
らなり、上方の端部に1つの孔を有し、この孔は前記吊
り下げ金具の前記複数の孔のそれぞれと整合することが
好ましい。
【0016】前記手動緊急切替弁は、前記液圧シリンダ
装置による引き抜き操作を行わせる方向に液圧を供給す
る状態にばねによって保持され、手動操作すると遮断さ
れることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】地中に埋めたケーシングは、通
常、円筒状又は楕円状である。このケーシングを引き抜
く装置は、前記ケーシングの周りに等間隔をおいて配置
される3個の液圧シリンダ装置を備える。油圧シリンダ
装置その他の液圧シリンダ装置は、シリンダと、シリン
ダ内を滑動するピストンと、ピストンに連結され、シリ
ンダの一方の端部から外部へ突出するピストンロッドと
からなる複動式のものである。本発明の実施に際し、ピ
ストンロッドを地面に載せて固定するようにし、シリン
ダをピストンロッドに対して昇降させる。3個の液圧シ
リンダ装置それぞれのシリンダをフレームに固定する
と、フレームは昇降可能となり、さらに、3個の液圧シ
リンダ装置を配置位置に保持する。液圧シリンダ装置と
して、1段式の他、2段式のような多段式を採用でき
る。
【0018】3個の吊り下げ金具をフレームに取り付け
る。3個の液圧シリンダ装置は、ケーシングが円筒状の
場合、円周方向に等間隔をおいて配置するが、各吊り下
げ金具は、3個の液圧シリンダ装置を結ぶ円の半径方向
の内方に半径方向へ伸びるように配置し、各液圧シリン
ダ装置に対応させる。吊り下げ金具は、半径方向の位置
が異なる複数の穴を有する。複数の穴の位置が、円筒状
の異なる直径のケーシングを連結するのに適当であるよ
うに穴の位置を選定する。
【0019】
【実施例】引抜き装置は、正面状態を示す図1および平
面状態を示す図2を参照すると、地中に埋めたケーシン
グ10を引き抜く装置であって、3個の液圧シリンダ装
置12、14、16と、フレーム18と、吊り下げ金具
20と、連結手段22とを備える。
【0020】図示の実施例では3個の液圧シリンダ装置
12、14、16がケーシング10の周りの直径D1
円上に等間隔をおいて配置されており、各液圧シリンダ
装置は油圧シリンダ装置からなる。直径D1 は、図示の
実施例では、2300mmである。油圧シリンダ装置はシリン
ダ24と、シリンダ24内に滑動可能に配置されるピス
トン(図示せず)と、ピストンに連結され、シリンダ2
4から外部へ突出するピストンロッド26とからなる複
動式のものである。ピストンロッド26の端部に座27
を取り付け、座27が地面に載るように各油圧シリンダ
装置の姿勢を定めてある。油圧シリンダ装置は、たとえ
ば、1650mmのストロークを有し、11tonの引抜き力を発
現できるものを選定する。
【0021】フレーム18は、平面形状が実質的に正三
角形状を呈するもので、溝型鋼からなる3本のビーム3
0を備える。3本のビーム30を正三角形状に配置して
各頂角部の上下の面に補強プレート32を溶接する。さ
らに、長方形状の縦壁と、縦壁の下端部の底壁と、縦壁
の2つの側部それぞれの三角形状の側壁とからなるブラ
ケット34を図示のように各頂点に溶接する。ブラケッ
ト34の前記底壁には油圧シリンダ装置のシリンダ24
の端部が貫通できる穴を開けてある。この穴にシリンダ
24の端部を貫通させて底壁をシリンダ24の肩に突き
当て、底壁の下側からシリンダの端部にナットをねじ込
み、ブラケット34と各油圧シリンダ装置のシリンダ2
4とを連結する。その結果、フレーム18と3個の油圧
シリンダ装置それぞれのシリンダ24とが連結され、フ
レーム18は3個の液圧シリンダ装置12、14、16
によって昇降可能となり、また、3個の液圧シリンダ装
置12、14、16を所定の位置関係に保持する。
【0022】吊り下げ金具20は3個設けられている。
各吊り下げ金具20は、2枚の間隔をおいた平板からな
る。2枚の平板が直径D1 の円の内方で各液圧シリンダ
装置から半径方向へ伸びるように、2枚の平板を間隔を
おいてフレーム18の各頂角部の下側の補強プレート3
2に溶接し、吊り下げ金具20が形成されている。その
結果、1個の吊り下げ金具20が1個の液圧シリンダ装
置に対応して位置している。各吊り下げ金具20は、異
なる直径D2 、D3 、D4 のケーシング10を連結する
ための複数の穴36を水平方向の異なる位置に有する。
たとえば、ケーシング10の直径D2 は2000mm、直径D
3 は1800mm、直径D4 は1500mmであり、複数の穴36
は、後述の連結手段22がケーシングから実質的に鉛直
となるように各穴の位置を定めることが好ましい。
【0023】連結手段22は、ケーシング10とフレー
ム18の吊り下げ金具20とを連結するもので、図示の
実施例では、吊り下げ金具20の2枚の平板の間隔内に
差込み可能な厚みのフラットバーで形成してある。フラ
ットバーの両端部にそれぞれ1つの穴を開ける。この穴
を一方では吊り下げ金具20の穴36に整合させ、他方
ではケーシング10に設けたブラケット38の穴40に
整合させ、穴にボルトを通してナットをねじ込み、フラ
ットバー22と吊り下げ金具20とを、またフラットバ
ー22とケーシング10とを連結する。ブラケット38
は、吊り下げ金具20と同様に、2枚の平板を間隔をお
いてケーシング10に溶接したものである。連結手段2
2はワイヤまたはロッドによって形成することもでき
る。
【0024】引抜き装置は、フレーム18の各頂角部の
上側の補強プレート32に溶接したフック42をワイヤ
で吊り上げてトラック上に載せ、工事現場に搬入する。
工事現場では、油圧シリンダ装置12、14、16それ
ぞれのピストンロッド26の座27を環状の反力受け4
4に載せ、油圧シリンダ装置12、14、16をケーシ
ング10の周りに配置する。反力受け44はケーシング
10の周りに配置する鋼板またはコンクリート構造物で
ある。油圧シリンダ装置12、14、16を図3に示す
ように駆動源50に接続し、ケーシング10の引き抜き
操作をする。駆動源50は、3個の油圧シリンダ装置1
2、14、16を同時に操作可能であり、かつ、3個の
油圧シリンダ装置によるケーシング10の引き抜き中に
任意の1個又は2個の油圧シリンダ装置の引き抜き操作
をさらに継続すると共に、他の油圧シリンダ装置の引き
抜き操作を停止可能に3個の油圧シリンダ装置を操作す
る。
【0025】図示の実施例では、駆動源50は、被駆動
のポンプ52と、手動切替弁54と、3つの手動緊急切
替弁56、58、60とからなる。手動緊急切替弁は、
油圧シリンダ装置のシリンダを上昇させる方向に油圧を
供給する状態に、ばねによって保持されている。そし
て、そのうちの任意のもの、たとえば、手動緊急切替弁
56を手動操作すると、この手動緊急切替弁56は遮断
されるため、シリンダ装置12への油圧の供給は停止す
るが、残りの2つの手動緊急切替弁58、60は依然と
して油圧を供給する状態にあるため、シリンダ装置1
4、16への油圧の供給が継続する。
【0026】手動切替弁54を図示の中立位置62から
第1位置63に切り替えると、リリーフ弁66の作用に
よって一定に保たれているポンプ52からの油圧が3個
の油圧シリンダ装置12、14、16に同時に供給さ
れ、各シリンダが上昇する。これによってケーシングの
引き抜きが行われる。ケーシングを引き抜いていると
き、たとえば、油圧シリンダ装置12の近傍のケーシン
グが大目に引き抜かれ、その他の油圧シリンダ装置1
4、16の近傍のケーシングが少な目に引き抜かれてい
るとき、手動緊急切替弁56を手動操作すると、油圧シ
リンダ装置12への油圧の供給は停止するが、他の2つ
の油圧シリンダ装置14、16への油圧の供給は継続す
る。したがって、少な目に引き抜かれているケーシング
の部分のみに引き抜き力が働き、ケーシングを実質的に
真直ぐにすることができる。ケーシングが真直ぐになっ
たとき、手動緊急切替弁56の操作を停止すると、油圧
が3個の油圧シリンダ装置12、14、16に均等に供
給される。ケーシングの引き抜きが完了したとき、連結
手段22を外してケーシングを引抜き装置の外部へ取り
出し、手動切替弁54を第2位置64に切り替える。こ
れによって、油圧シリンダ装置12、14、16のシリ
ンダは下降し、図1の状態に戻る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る地中に埋めたケーシングの引抜き
装置の実施例の正面図で、地中に埋めたケーシングを断
面で示してある。
【図2】本発明に係る地中に埋めたケーシングの引抜き
装置の実施例の平面図で、異なる大きさのケーシングを
仮想線で示してある。
【図3】引抜き装置を駆動する回路図である。
【符号の説明】
10 ケーシング 12、14、16 液圧シリンダ装置(油圧シリンダ装
置) 18 フレーム 20 吊り下げ金具 22 連結手段 50 駆動源 54 手動切替弁 56,58,60 手動緊急切替弁

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 地中に埋めたケーシングを引き抜く装置
    であって、 前記ケーシングの周りに間隔をおいて配置される3個の
    液圧シリンダ装置と、 これら液圧シリンダ装置によって昇降可能な、吊り下げ
    金具を有するフレームと、 前記ケーシングと前記フレームの吊り下げ金具とを連結
    する手段と、 前記3個の液圧シリンダ装置を同時に操作可能な手動切
    替弁と、 前記3個の液圧シリンダ装置による前記ケーシングの引
    き抜き中に任意の1個又は2個の液圧シリンダ装置の引
    き抜き操作をさらに継続すると共に、他の液圧シリンダ
    装置の引き抜き操作を停止可能に、前記手動切替弁と前
    記各液圧シリンダ装置との間に接続された手動緊急切替
    弁とを備える、地中に埋めたケーシングの引抜き装置。
  2. 【請求項2】 前記フレームは、3本のビームによって
    平面形状が実質的に正三角形状を呈するように形成さ
    れ、前記3個の液圧シリンダ装置は正三角形の頂角部に
    連結され、3個の前記吊り下げ金具が前記3個の液圧シ
    リンダ装置からそれぞれ半径方向へ伸びるように前記フ
    レームに取りつけられた、請求項1に記載の地中に埋め
    たケーシングの引抜き装置。
  3. 【請求項3】 前記各吊り下げ金具は2枚の間隔をおい
    た平板からなり、異なる大きさのケーシングを連結する
    ための複数の穴を水平方向の異なる位置に有する、請求
    項2に記載の地中に埋めたケーシングの引抜き装置。
  4. 【請求項4】 前記連結手段は、前記吊り下げ金具の2
    枚の平板の間隔内に差し込み可能な厚みのフラットバー
    からなり、上方の端部に1つの孔を有し、この孔は前記
    吊り下げ金具の前記複数の孔のそれぞれと整合可能であ
    る、請求項3に記載の地中に埋めたケーシングの引抜き
    装置。
  5. 【請求項5】 前記手動緊急切替弁は、前記液圧シリン
    ダ装置による引き抜き操作を行わせる方向に液圧を供給
    する状態にばねによって保持され、手動操作すると遮断
    される、請求項1又は2に記載の地中に埋めたケーシン
    グの引抜き装置。
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