JP2913922B2 - 量子井戸分布帰還型半導体レーザ - Google Patents

量子井戸分布帰還型半導体レーザ

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裕幸 山崎
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光ファイバ通信に用いら
れる単一軸モード発振の分布帰還型半導体レーザに関す
る。
【0002】
【従来の技術】コヒーレント光通信システムは大容量の
通信が可能であり、現在精力的に研究が行われている。
このようなシステムに要求される光源としては周波数変
調(FM)効率が高く、平坦なFM応答特性と狭スペク
トル線幅動作を同時に実現する半導体レーザが要求され
る。量子井戸分布帰還型半導体レーザは狭スペクトル線
幅動作が可能なことからコヒーレント光通信用光源とし
て魅力的であり、注目を集めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】半導体レーザのFM変
調特性において、一般に変調周波数が数百kHz以下の
低減では電流注入による発熱効果に起因するFM変調が
支配的であり、それ以上の高域では活性層内にキャリア
を注入したことによるFM変調が支配的となる。コヒー
レント光通信用光源としてはそれらの効果が相殺しあう
周波数(以下FMディップ周波数と呼ぶ)が十分低く、
且つ高周波領域にわたって平坦なFM応答特性を有する
ことが要求される。実用性が高いと考えられるCPFS
K伝送方式で、例えば2.5Gbit/sのシステムを
考えた場合、FMディップ周波数として約100kHz
以下、高域(数十MHzから数GHzの変調周波数域)
で200〜300MHz/mA程度以上のFM変調効率
が要求性能の目安となる。量子井戸分布帰還型半導体レ
ーザは多くの素子が狭スペクトル線幅動作し、良好なF
M応答特性を有するが、中にはFMディップ周波数が高
く、さらにGHz帯でのFM変調効率が100〜150
MHz/mA程度と低い値を示すものや高周波域でFM
変調効率が急激に低下するものも認められた。良好なF
M応答特性を有するDFB−LDを安定に実現すること
が課題となっている。
【0004】本発明の目的は量子井戸活性層脇の厚い光
ガイド層にキャリアオーバーフローによってエレクトロ
ンを注入して屈折率を変化させ波長変化を大きくするこ
とによってFM変調効率を増加させコヒーレント光通信
システム用光源として十分な特性を有する量子井戸分布
帰還型半導体レーザを安定に提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明により下記の構成
の量子井戸分布帰還型半導体レーザを提供する。
【0006】(1)InGaAs活性層、InGaAs
Pバリア層からなる量子井戸活性層を有し、量子井戸活
性層の両脇に光ガイド層を有している量子井戸分布帰還
型半導体レーザにおいて、前記光ガイド層の合計膜厚が
2000Å以上であることを特徴とする量子井戸分布帰
還型半導体レーザ。
【0007】(2)前記光ガイド層が量子井戸構造また
は歪量子井戸構造を有している前記(1)に記載の量子
井戸分布帰還型半導体レーザ。
【0008】(3)前記光ガイド層のエネルギーギャッ
プがバリア層のエネルギーギャップよりも小さく、伝導
帯下端がバリア層よりも前記光ガイド層において低いこ
とを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の量子井戸
分布帰還型半導体レーザ。
【0009】
【作用】量子井戸分布帰還型半導体レーザでは量子井戸
活性層内に注入されたキャリアの一部がバリア層もしく
は光ガイド層に漏れ出し屈折率の変化を生じさせる。キ
ャリアの漏れる領域が大きいと波長の変化も大きくな
り、大きなFM変調効率が得られることを本願の発明者
は見いだした。さらにFM応答特性のκL依存性を評価
したところ、κLが小さい素子は軸方向のホールバーニ
ングの影響が小さく、FM応答特性が平坦になることも
判明した。
【0010】本発明の主旨は量子井戸活性層両脇の光ガ
イド層の膜厚の合計を2000Å以上と厚くしてこの領
域での光閉じ込め係数を大きくし、バリア層へのキャリ
アオーバーフローにより光ガイド層に注入されたエレク
トロンによって大きな波長変化を生じさせFM変調効率
を増大させるものである。GaAs系の半導体レーザで
は伝導帯におけるウエル層とバリア層のエネルギーギャ
ップ差ΔEc が大きいのでエレクトロンのバリア層への
オーバーフローが小さいと考えられるが、InP系では
ΔEc が小さいためGaAs系に比べて多くのキャリア
がオーバーフローによってバリア層もしくは光ガイド層
に多く注入され本発明の効果がより大きくなるものと考
えられる。
【0011】さらに上記光ガイド層を量子井戸構造とす
ればキャリア密度の変化に対する屈折率変化が大きくな
ることから、より大きなFM変調効率が得られると思わ
れる。
【0012】キャリアオーバーフローを考慮してFM変
調効率の計算を行った結果を図4に示す。光ガイド層が
厚くなるに従ってFM変調効率が上昇し、2000Å以
上で300MHz/mA以上の変調効率が得られている
ことが判る。さらに光ガイド層に量子井戸構造を導入す
ればこの効果はより大きくなるものと考えられる。さら
に上記のことに加え、κLの値を軸方向ホールバーニン
グの影響が最も少ない1.25前後に設定すれば、FM
変調効率が大きく、且つFM応答特性が平坦な特性が実
現できると考えられる。
【0013】
【実施例】以下実施例を示す。図面を用いて本発明を詳
細に説明する。
【0014】図1は本発明請求項1の実施例であり、量
子井戸分布帰還型半導体レーザの断面構造図である。回
折格子の形成されたn−InP層2上に5×10-17
-3ドナーをドーピングした1.15μm組成のInG
aAsP光ガイド層3を1000Å、5×10-17 cm
-3ドナーをドープしたInPスペーサ層4を500Å、
ノンドープの1.3μm組成のInGaAsP光ガイド
層5を2000Å、70ÅのInGaAsウエル層9と
150Åの1.3μm組成のInGaAsPバリア層6
からなる量子井戸活性層、ノンドープの1.3μm組成
のInGaAsP光ガイド層5を2000Å、1×10
18cm-3アクセプターをドーピングしたp−InP層を
MOVPE法により順次結晶成長して、DC−PBH埋
め込み構造に加工してレーザを作製する。回折格子深さ
は200Åである。
【0015】図2は本発明請求項2の実施例であり、量
子井戸分布帰還型半導体レーザの断面構造図である。回
折格子の形成されたn−InP基板2上に5×10-17
cm-3のドナーをドーピングした1.15μm組成のI
nGaAsP層3、5×10-17 cm-3のドナードーピ
ングしたInPスペーサ層4、1.4μm組成のInG
aAsP層11と1.15μm組成のInGaAsP層
からなる量子井戸光ガイド層10、InGaAsウエル
層9と1.3μm組成のInGaAsPバリア層6から
なる量子井戸活性層、1.4μm組成のInGaAsP
層11と1.15μm組成のInGaAsP層10から
なる量子井戸光ガイド層、1×10-17 cm-3のアクセ
プタードープしたp−InP層7をMOVPE法により
順次結晶成長し、DC−PBH埋め込み構造に加工して
レーザを試作する。
【0016】さらに本請求項3の構造に関して実施例を
図3に示す。回折格子の形成されたn−InP基板2上
に5×10-17 cm-3のドナーをドーピングした1.1
5μm組成のInGaAsP層3、5×10-17 cm-3
ドナーをドーピングしたInPスペーサ層4、ノンドー
プの1.3μm組成のInGaAsP光ガイド層5、ノ
ンドープの1.15μm組成のInGaAsP層3、I
nGaAsウエル層9と1.15μm組成のInGaA
sPバリア層6からなる量子井戸活性層、ノンドープの
1.15μm組成のInGaAsP層3、ノンドープの
1.3μm組成のInGaAsP光ガイド層5、1×1
-17 cm-3アクセプターをドーピングしたp−InP
層7をMOVPE法により順次結晶成長し、DC−PB
H埋め込み構造に加工してレーザを試作する。
【0017】この様にして作製したレーザを共振器長1
000μmに切り出して評価を行えば、室温CWにおい
て50mW程度の光出力が得られる。FM変調効率は3
00MHz/mA程度の素子が安定に得られFM変調特
性も平坦なものが得られる。さらにスペクトル線幅に関
しても500kHz以下とコヒーレント光通信用光源と
して十分な特性が得られる。
【0018】なお本実施例では光ガイド層に量子井戸構
造を導入したが、これを歪量子井戸構造としても何等問
題なく、さらなるFM変調効率の増大が期待される。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明の特長はIn
GaAs活性層、InGaAsPバリア層からなる量子
井戸活性層を有し、量子井戸活性層の両脇に光ガイド層
を有している量子井戸分布帰還型半導体レーザにおいて
2000Å以上の光ガイド層厚を有する量子井戸分布帰
還半導体レーザ、同半導体レーザにおいて光ガイド層が
量子井戸構造を有していることを特長とする量子井戸分
布帰還型半導体レーザ、バリア層よりも長波長の波長組
成のバリア層を有する量子井戸型分布帰還半導体レーザ
である。これによって大きなFM変調効率が得られ、さ
らに平坦なFM変調特性の素子が安定に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明請求項1の実施例である量子井戸分布帰
還型半導体レーザの断面図である。
【図2】本発明請求項2の実施例である量子井戸分布帰
還型半導体レーザの断面図である。
【図3】本発明請求項3の実施例である量子井戸分布帰
還型半導体レーザの断面図である。
【図4】FM変調効率の光ガイド厚依存性を説明するた
めの図である。
【符号の説明】
1 n電極 2 n−InP層 3 1.15μm組成のInGaAsP層 4 InPスペーサ層 5 1.3μm組成のInGaAsP層 6 1.3μm組成のInGaAsPバリア層 7 p−InP層 8 p電極 9 InGaAsウエル層 10 1.15μm組成のInGaAsP層 11 1.4μm組成のInGaAs層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01S 3/18

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 InGaAs活性層、InGaAsPバ
    リア層からなる量子井戸活性層を有し、量子井戸活性層
    の両脇に光ガイド層を有している量子井戸分布帰還型半
    導体レーザにおいて、前記光ガイド層の合計膜厚が20
    00Å以上であることを特徴とする量子井戸分布帰還型
    半導体レーザ。
  2. 【請求項2】 前記光ガイド層が量子井戸構造または歪
    量子井戸構造を有している請求項1に記載の量子井戸分
    布帰還型半導体レーザ。
  3. 【請求項3】 前記光ガイド層のエネルギーギャップが
    バリア層のエネルギーギャップよりも小さく、伝導帯下
    端がバリア層よりも前記光ガイド層において低いことを
    特徴とする請求項1又は2に記載の量子井戸分布帰還型
    半導体レーザ。
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JP2755141B2 (ja) * 1993-12-22 1998-05-20 日本電気株式会社 量子井戸構造半導体素子
CA2410964C (en) * 2000-06-02 2010-11-30 Larry A. Coldren High-power, manufacturable sampled grating distributed bragg reflector lasers

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