JP2912501B2 - 歯車研削機の位相修正方法および装置 - Google Patents

歯車研削機の位相修正方法および装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、同期回転制御される研
削工具と被研削用歯車との位相を修正する歯車研削機の
位相修正方法および装置に関し、一層詳細には、入力さ
れた研削量の修正値によって、次に加工される被研削用
歯車の回転位相を修正することができる歯車研削機の位
相修正方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、研削工具、例えば、砥石と、被研
削用歯車とを噛合させ、前記研削工具によって被研削用
歯車を研削する歯車研削機が用いられている。この場
合、研削工具を回転するスピンドルモータと被研削用歯
車を回転するワークスピンドルモータとは同期回転制御
がなされている。
【0003】このような歯車研削機において、歯車の偏
心等を検出して、自動的に位相を補正し、精度の良い研
削を行うとともに、研削効率を向上させる技術的思想
が、特公昭62−34489号の発明「噛合装置」に開
示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来技術に
おける噛合装置では、ワークスピンドルモータの回転作
用が複数のギヤによって構成されるギヤトレインを介し
て被研削用歯車に伝達されるが、このギヤトレインでは
ギヤの精度誤差およびギヤの組付け精度誤差によりバッ
クラッシュが発生する(以下、フリクション誤差とい
う)。
【0005】このフリクション誤差によって、制御回路
から出力される被研削用歯車の位相データと実際の位相
とが異なり、研削精度が低下して研削不足の箇所が発生
し、被研削用歯車に黒皮が残る等の研削残しが発生する
という問題がある。
【0006】本発明は、このような従来の問題を解決す
るためになされたものであって、研削された被研削用歯
車に研削残しが発生したとき、オペレータによって入力
された研削量の修正値に基づき、次に研削される被研削
用歯車の回転位相を修正することにより、研削精度を向
上させるとともに、研削残しを防止することができる歯
車研削機の位相修正方法および装置を提供することを目
的とする。
【0007】さらに、被研削用歯車の回転位相を迅速に
修正することにより、被研削用歯車の加工のサイクルタ
イムを短縮し、生産性を向上させることができる歯車研
削機の位相修正方法および装置を提供することを目的と
する。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、第1の発明は、同期回転制御される研削工具の回
転数に応じたパルス数を発生するパルス発生器を具備し
た歯車研削機に対し、前記研削工具と被研削用歯車との
回転位相を、入力された研削量の修正値によって修正す
る歯車研削機の位相修正方法であって、前記入力された
研削量の修正値を読み取る第1のステップと、予め設定
された前記被研削用歯車のモジュール値を読み出す第2
のステップと、前記被研削用歯車のモジュール値に基づ
いて研削工具の回転軸が1回転するときの前記被研削用
歯車の変位量を求め、この変位量と前記研削工具の回転
数に応じたパルス数に基づいて1パルス当たりの前記
研削用歯車の単位変位量を求め、前記入力された研削量
の修正値と前記単位変位量に基づいて被研削用歯車の回
転位相の修正値を求める第3のステップと、前記回転位
相の修正値に基づいて、次に加工される被研削用歯車の
回転位相を修正する第4のステップと、からなることを
特徴とする。
【0009】さらに、第2の発明は、同期回転制御され
る研削工具の回転数に応じたパルス数を発生するパルス
発生器を具備した歯車研削機に対し、前記研削工具と被
研削用歯車との回転位相を、入力された研削量の修正値
によって修正する歯車研削機の位相修正装置であって、
被研削用歯車の研削量の修正値を入力する入力手段と、
予め設定された前記被研削用歯車のモジュール値を記憶
する被研削用歯車形状記憶手段と、前記被研削用歯車の
モジュール値に基づいて研削工具の回転軸が1回転する
ときの被研削用歯車の変位量を求め、この変位量と前記
研削工具の回転数に応じたパルス数に基づいて1パルス
当たりの被研削用歯車の単位変位量を求め、前記入力さ
れた研削量の修正値と前記単位変位量に基づいて被研削
用歯車の回転位相の修正値を求める位相修正値演算手段
と、前記被研削用歯車の回転位相の修正値に基づいて前
記被研削用歯車の回転位相を修正する位相修正手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
【作用】本発明に係る歯車研削機の位相修正方法および
装置では、被研削用歯車のモジュール値に基づいて研削
工具の回転軸が1回転するときの前記被研削用歯車の変
位量を求め、この変位量と検出された研削工具の回転数
に基づいて被研削用歯車の単位変位量を求める。そし
て、研削結果に基づいて入力手段から入力された研削量
の修正値と前記単位変位量に基づいて被研削用歯車の回
転位相の修正値を求める。次いで、前記回転位相の修正
値に基づいて位相修正手段が次に研削される被研削用歯
車の回転位相を修正する。
【0011】
【実施例】次に、本発明に係る歯車研削機の位相修正方
法について、それを実施する装置との関係において好適
な実施例を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に
説明する。
【0012】図1は本発明を実施する歯車研削機10の
外観構造を示す図である。歯車研削機10はベッド12
の上面に切込テーブル14が配設され、切込テーブル1
4は切込モータ16の回転作用下に矢印A方向に進退動
作する。前記切込テーブル14の上面に配設されるトラ
バーステーブル18はトラバースモータ20の回転作用
下に矢印A方向と直角の方向、すなわち、矢印B方向に
進退動作する。
【0013】また、トラバーステーブル18上には歯車
等からなる被研削用歯車22、および回転する被研削用
歯車22の歯数を検出して、所定のパルスを発生させる
近接スイッチからなるワークセンサ24が配設される。
被研削用歯車22はワークスピンドルモータ26の回転
作用下に回転する。
【0014】一方、切込テーブル14の進行方向であっ
て、且つ、ベッド12上にコラム28が配設され、コラ
ム28に旋回テーブル30が保持される。旋回テーブル
30はコラム28内に配設された図示しないモータによ
り矢印C方向に旋回するものであり、さらに旋回テーブ
ル30にはシフトテーブル32が設けられ、このシフト
テーブル32はシフトモータ34の作用下に、矢印D方
向に移動する。
【0015】シフトモータ34にはシフト軸エンコーダ
35が取着され、シフト軸エンコーダ35はシフトモー
タ34の回転数を検出する。
【0016】図2に示すように、砥石スピンドルユニッ
ト36は砥石スピンドルモータ38と、この砥石スピン
ドルモータ38によって回転する工具軸であるマスタ軸
39に係合するマスタ軸エンコーダ46とから基本的に
構成される。砥石スピンドルモータ38の作用下に回転
する砥石42は円筒形状であり、その周縁に螺旋条の溝
が刻設されている。
【0017】また、砥石スピンドルユニット36は前記
シフトテーブル32に係着されるため、シフトモータ3
4の回転作用下にシフトテーブル32とともに矢印D方
向に変位する。
【0018】一方、図3に示すように、被研削用歯車2
2は、回転軸48の一端部に一対のクランプ治具50を
介して着脱自在に軸支され、前記回転軸48の他端部側
には電磁クラッチ52を介して比較的大径のギヤ54が
軸支される。このギヤ54はそれよりも小径のギヤ56
と噛合し、ギヤ56は軸58に軸支される。この軸58
にはギヤ57が軸支され、さらに前記ギヤ57はそれよ
りも小径のギヤ59と噛合し、前記ギヤ59はスレーブ
軸61に軸支される。スレーブ軸61の一端はカップリ
ング60を介してワークスピンドルモータ26に接続さ
れ、このワークスピンドルモータ26にスレーブ軸エン
コーダ62が取着される。また、スレーブ軸61の他端
部にはイナーシャダンパ63が接続される。
【0019】次いで、前記歯車研削機10に配設され
て、砥石42と被研削用歯車22との位相を同期させる
同期制御回路64について、図4を参照しながら説明す
る。
【0020】砥石スピンドルモータ38の作用下に回転
するマスタ軸39の回転数NM はマスタ軸エンコーダ4
6によって検出される。このマスタ軸エンコーダ46の
出力信号PG1 はフィードフォワード制御ユニット65
を構成する4逓倍カウンタ66に入力されて4逓倍され
た後に、加減算回路67を介してフィードフォワード演
算器68に入力される。
【0021】フィードフォワード演算器68の演算結果
は、D/Aコンバータ70を介してフィードフォワード
指令信号Sffとして加算器72の第1の入力端子に導入
される。
【0022】一方、フィードフォワード演算器68の他
の演算結果であるマスタ軸速度データSM はセミクロー
ズドループ制御ユニット74を構成するセミクローズド
ループ演算器76に導入される。この場合、セミクロー
ズドループ演算器76の他の入力端子にはワークスピン
ドルモータ26に軸着されたスレーブ軸エンコーダ62
から出力されるフィードバック信号PG2 が4逓倍カウ
ンタ78を介して導入されている。
【0023】このフィードバック信号PG2 を基にセミ
クローズドループ演算器76はD/Aコンバータ80を
介してセミクローズドループ指令信号Sf2を加算器72
の第2の入力端子に導入する。加算器72の出力信号で
あるスレーブ軸速度データS S はモータ駆動回路81を
介して被研削用歯車駆動用のワークスピンドルモータ2
6の回転数を制御する。
【0024】トラバースモータ20にはトラバース軸エ
ンコーダ82が軸着され、このトラバース軸エンコーダ
82の出力信号PG3 は、前記セミクローズドループ制
御ユニット74内の4逓倍カウンタ84を介してセミク
ローズドループ演算器76に導入される。
【0025】従って、トラバースモータ20の回転によ
るトラバーステーブル18のトラバース移動量はセミク
ローズドループ演算器76によって後述するような所定
の差動演算が行われ、演算結果はD/Aコンバータ80
を介し前記セミクローズドループ指令信号Sf2に加算さ
れるべく加算器72に導入される。
【0026】一方、キーボード86から入力された研削
量の修正値Sに基づいて位相修正値演算回路88は位相
の修正値PF を演算し、該演算された修正値PF は修正
値出力回路90を介して前記加減算回路67に出力され
る。
【0027】なお、前記フィードフォワード制御ユニッ
ト65とセミクローズドループ制御ユニット74のクロ
ック入力端子CK、および修正値出力回路90には図示
しない水晶発振器の発振周波数を分周して得られるサン
プリングクロックTS が導入される。
【0028】以上のように構成される歯車研削機10に
よって、砥石42で被研削用歯車22を研削する作用に
ついて、図5に示すメイン処理のフローチャートを参照
しながら説明する。
【0029】先ず、被研削用歯車22と砥石42との位
相を合わせ(ステップS1)、砥石42と被研削用歯車
22との回転を同期制御し(ステップS2)、砥石42
で被研削用歯車22を研削する(ステップS3)。
【0030】オペレータは前記研削された被研削用歯車
22のリード測定を行うことにより研削の仕上がり結果
を確認し(ステップS4)、必要であれば研削量の修正
値Sをキーボード86から入力する(ステップS5)。
【0031】次いで、前記ステップS1と同様に、歯車
研削機10に装着された次なる被研削用歯車22と、砥
石42との位相を合わせ(ステップS6)、被研削用歯
車22と砥石42との回転を同期制御する(ステップS
7)。この同期制御における砥石42の回転データと、
前記ステップS5で入力された研削量の修正値Sと、記
憶手段に予め記憶された被研削用歯車22の形状データ
とに基づいて、スレーブ軸61の位相の修正値PF を演
算する(ステップS8)。
【0032】前記演算された修正値PF に基づいてワー
クスピンドルモータ26の回転位相が修正され(ステッ
プS9)、この修正された位相によって回転する被研削
用歯車22は砥石42によって研削される(ステップS
10)。
【0033】次いで、前記ステップS7〜ステップS1
0における同期回転制御の作用並びに効果について、図
1〜図8を参照しながら説明する。
【0034】表1に本実施例に係る被研削用歯車22の
諸元、並びに歯車研削機10に配設されるエンコーダの
分解能等を示す。これらの諸元は図示しない記憶手段に
記憶されフィードフォワード演算器68およびセミクロ
ーズドループ演算器76に読み取られる。
【0035】
【表1】
【0036】前記表1におけるマスタ軸エンコーダ46
の分解能RM は4逓倍カウンタ66によって4逓倍され
た後の値であり、RM =72000p/r (pulses/revolu
tion)である。
【0037】先ず、フィードフォワード制御ユニット6
5の演算内容について説明する。
【0038】砥石スピンドルモータ38を付勢して砥石
42を回転数NM =3000rpm で回転させると、マス
タ軸エンコーダ46から出力信号PG1 が出力され、こ
の出力信号PG1 はフィードフォワード制御ユニット6
5を構成する4逓倍カウンタ66を介してフィードフォ
ワード演算器68に導入される。
【0039】砥石42が3000rpm で回転したときに
サンプリング時間tS =300μs毎にマスタ軸エンコ
ーダ46から発生するパルス列、すなわち、マスタ軸速
度データSM は次の(1)式に示すように1080p/sa
mpleとなる。
【0040】 SM =(NM /60)×RM ×tS (p/sample) …(1) =(3000/60)×72000×300×10-6 =1080 (p/sample) 一方、表1に示すように被研削用歯車22の歯数Zが6
0であるから、3000rpm で回転する砥石42に対す
る被研削用歯車22の回転数NW は次の(2)式で導か
れ、その値は50rpm となる。なお、(2)式において
参照符号Pは工具の条数であり、この場合、砥石42の
条数に対応して、「1」である。
【0041】 NW =(P/Z)×NM (rpm) …(2) =(1/60)×3000 =50 (rpm) 次に、ワークスピンドルモータ26と被研削用歯車22
との間に介装される回転伝達手段であるギヤトレインの
減速比Qが24:1(Q=24)であることを考慮する
と、ワークスピンドルモータ26の回転数NS は、次の
(3)式に示すように、1200rpm で回転させればよ
い。
【0042】 NS =NW ×Q (rpm) …(3) =50×24=1200 (rpm) そこで、ワークスピンドルモータ26に与えるべき電圧
値はワークスピンドルモータ26およびモータ駆動回路
81の定格仕様値から、例えば、定格回転数N SRが30
00rpm であって、ワークスピンドルモータ26の定格
入力電圧VR が6Vであるとすれば、1V当たりの回転
数は500rpm /Vであることが諒解され、結局、12
00rpm で回転させるためにはワークスピンドルモータ
26に2.4Vを供給すればよいことになる。この関係
を(4)式に示す。
【0043】 NSR/VR =(定格回転数)/(定格入力電圧) (rpm/V) …(4) =3000/6=500 (rpm/V) この場合、D/Aコンバータ70のビット数を12ビッ
トとし、12ビットに対応する出力電圧を±10Vとす
ると、ワークスピンドルモータ26を1200rpm で回
転させるためのアナログ電圧2.4Vを得るためには、
(5)式に示すように、D/Aコンバータ70にデジタ
ル値V(D/A24) =2539を供給すればよい。
【0044】 V(D/A24) ={(212×2.4)/20}+211=2539 …(5) なお、本実施例においてモータ駆動回路81はボルテー
ジフォロアとして動作している。
【0045】このように、砥石42が3000rpm で回
転している限り、被研削用歯車22は50rpm で同期回
転する。
【0046】しかしながら、これらの制御系には外乱が
混入する。この外乱を補正するために、位置ループ制御
系が必要になる。そこで、次に、位置ループ制御系を構
成するセミクローズドループ制御ユニット74について
説明する。
【0047】高精度な同期回転制御を行うためには正確
な位置制御を行う必要がある。この同期演算は、マスタ
軸エンコーダ46から発生する位置に係る出力信号PG
1 をフィードフォワード制御ユニット65でマスタ軸速
度データSM に換算し、次に、スレーブ軸エンコーダ6
2から発生する位置に係るフィードバック信号PG2
セミクローズドループ制御ユニット74でスレーブ軸速
度データSS に換算する。
【0048】次いで、前記マスタ軸速度データSM とス
レーブ軸エンコーダ62の分解能R S との乗算値(SM
×RS ) と 、スレーブ軸エンコーダ62のスレーブ軸
速度データSS 、マスタ軸エンコーダ46の分解能
M 、被研削用歯車22の歯数Z、およびギヤトレイン
の減速比Qの逆数の乗算値(SS ×RM ×Z×(1/
Q))とが同一の値となるように制御すればよい。
【0049】この場合、外乱等による位置エラーEP
(6)式に示すように算出され、マスタ軸速度データS
M とスレーブ軸エンコーダ分解能比R0 =RS /RM
の乗算値(SM ×(RS /RM ))と、スレーブ軸速度
データSS とマスタ軸エンコーダ分解能比(RM
M )=1と被研削用歯車22の歯数Zとギヤトレイン
の減速比(1/Q)とを乗算した値(SS ×RM ×Z×
(1/Q))とが等しい場合にはマスタ軸39と回転軸
48とは完全に同期していると判断される。
【0050】一方、互いの乗算値に差が生じた場合に
は、その差である位置エラーEP に位置ループゲインK
P (図示せず)を乗じた値がD/Aコンバータ80に出
力されるので、ワークスピンドルモータ26が当該位置
エラーEP を補正するように回転する。 EP =(マスタ軸速度データ×スレーブ軸エンコーダ分解能比) −(スレーブ軸速度データ×マスタ軸エンコーダ分解能比 ×被研削用歯車の歯数×1/ギヤトレイン減速比) …(6) ={SM ×(RS /RM )}−{SS ×(RM /RM )×Z×(1/Q)} =(1080×1)−{432×1×60×(1/24)}=0 ここで、スレーブ軸速度データSS は次の(7)式によ
って与えられる。 SS =(NS /60)×RS ×tS (p/sample) …(7) =(1200/60)×72000×300×10-6 =432 (p/sample) 前記(6)式による計算の結果はマスタ軸39とスレー
ブ軸61とが完全に同期回転している状態を示してい
る。
【0051】次に、以上のように動作する同期制御回路
64におけるフィードフォワード制御ユニット65およ
びセミクローズドループ制御ユニット74の相互関係に
ついて、図6〜図8のフローチャートを参照しながらさ
らに詳細に説明する。なお、当該フローチャートにおい
て、ステップSの後に付した参照符号であるアルファベ
ットaはフィードフォワード制御ユニット65、アルフ
ァベットbはセミクローズドループ制御ユニット74に
よる制御に夫々対応させてある。
【0052】前記表1に示した夫々の初期データがフィ
ードフォワード演算器68、およびセミクローズドルー
プ演算器76に読み取られ、所定の演算が行われる(ス
テップS11a、ステップS11b)。前記所定の演算
とは、予め演算することが可能な項目、例えば、ワーク
スピンドルモータ26の1V当たりの回転数、およびス
レーブ軸エンコーダの分解能比RO を求めるための演算
である。
【0053】次に、マスタ軸エンコーダ46から出力さ
れる位置に係る出力信号PG1 が、フィードフォワード
制御ユニット65内の4逓倍カウンタ66に導入され
(ステップS12a、ステップS13a)、この4逓倍
カウンタ66で4逓倍された出力信号PH は加減算回路
67に対して出力される。
【0054】一方、位相修正値演算回路88はオペレー
タによってキーボード86から入力された研削量の修正
値Sに基づいて位相の修正値PF を演算し、この演算結
果が「0」ではないとき、修正値PF を修正値出力回路
90に対して出力する。修正値出力回路90はサンプリ
ングクロックTS に同期して、前記修正値PF を1パル
スずつ加減算回路67に対して出力する。
【0055】加減算回路67は、前記4逓倍カウンタ6
6の出力信号PH から位相の修正値PF を加減算し、こ
の演算結果をフィードフォワード演算器68に対して出
力する(ステップS14a)。
【0056】この場合、加減算回路67は前記修正値P
F の値によって演算処理を分岐する。すなわち、修正値
F がPF >0であるとき前記4逓倍カウンタ66の出
力信号PH と修正値PF とを加算して、この加算結果を
フィードフォワード演算器68に対して出力する。ま
た、修正値PF の値がPF <0であるとき前記4逓倍カ
ウンタ66の出力信号PH から修正値PF を減算して、
この減算結果をフィードフォワード演算器68に出力す
る。前記修正値PF がPF >0であるとき修正される位
相は進みとなり、PF <0であるとき修正される位相は
遅れとなる。
【0057】前記加減算回路67の出力はフィードフォ
ワード演算器68によって時間微分されて、砥石42の
回転に対応するマスタ軸速度データSM が算出され
((1)式参照)(ステップS15a)、セミクローズ
ドループ演算器76にパラレルデータとして転送される
(ステップS16a)。次いで、同期演算が行われ、ス
レーブ軸同期速度データSW が算出される(ステップS
17a)。
【0058】前記スレーブ軸同期速度データSW にフィ
ードフォワードループゲインKf が乗算されて、ワーク
スピンドルモータ26を回転数NS =1200で回転さ
せるためのフィードフォワード指令信号Sffが求めら
れ、D/Aコンバータ70に導入される(ステップS1
8a、ステップS19a)。D/Aコンバータ70の出
力信号であるフィードフォワード指令信号Sffは加算器
72の第1の入力端子に導入される(ステップS29
)。
【0059】一方、スレーブ軸61に軸着されたスレー
ブ軸エンコーダ62から出力されるフィードバック信号
PG2 が、セミクローズドループ制御ユニット74の4
逓倍カウンタ78で4逓倍され(ステップS12b、ス
テップS13b)、この4逓倍された信号は微分され
て、前記(7)式と同様に、セミクローズドループ系に
対応するスレーブ軸速度データSS に変換される(ステ
ップS14b)。
【0060】また、トラバース軸83に軸着されたトラ
バース軸エンコーダ82から、位置を示す出力信号PG
3 が4逓倍カウンタ84を介してセミクローズドループ
演算器76に入力され(ステップS15b)、セミクロ
ーズドループ演算器76で微分されて、セミクローズド
ループに対応するトラバース軸83の速度データSt
求められ(ステップS16b)、差動演算が行われる
(ステップS17b)。
【0061】次いで、フィードフォワード演算器68か
らマスタ軸速度データSM を入力し(ステップS18
b)、セミクローズドループ系に対応する位置エラーE
P を算出する(ステップS19b〜ステップS21
b)。すなわち、マスタ軸速度データSM が積分され、
この積分値とトラバース軸83の速度データSt の積分
値とが加算され、当該加算値からスレーブ軸速度データ
S の積分値が減算される。
【0062】前記算出された位置エラーEP が時間微分
されて、速度エラーEV が算出され(ステップS22
b)、位置エラーEP が積分されて、積分位置エラーE
P1が算出される(ステップS23b)。次に、ステップ
S20a〜ステップS22bで算出された位置エラーE
P に位置ループゲインKP が乗算される(ステップS2
4b)。
【0063】次いで、ステップS22bで算出された速
度エラーEV に速度ゲインKV が乗算され(ステップS
25b)、ステップS23bで算出された積分位置エラ
ーEP1に積分ゲインKi が乗算される(ステップS26
b)。前記のように、ステップS24b〜ステップS2
6bで算出された演算結果は各項毎に加算され(ステッ
プS27b)、この出力信号がD/Aコンバータ80
よってアナログのセミクローズドループ指令信号Sf2
され(ステップ28b)、該指令信号S f2 加算器72
の第2の入力端子に導入される(ステップ29b)。
【0064】前記セミクローズドループ指令信号Sf2
前記フィードフォワード指令信号S ffと加算器72で加
算され、当該加算データはモータ駆動回路81を介して
ワークスピンドルモータ26に導入され、ワークスピン
ドルモータ26はスレーブ軸61を回転させる(ステッ
プS29〜ステップS31)。
【0065】以上説明したように、フィードフォワード
制御ユニット65、およびセミクローズドループ制御ユ
ニット74が夫々有機的に結合されて同期演算が遂行さ
れるが、このとき、位相修正値演算回路88はキーボー
ド86から入力された研削量の修正値Sに基づいて位相
の修正値PF を演算し、この修正値PF が「0」でない
とき、修正値PF を修正値出力回路90に出力する。
【0066】修正値出力回路90はサンプリングクロッ
クTS に同期して、前記修正値PFを1パルスずつ加減
算回路67に対して出力し、加減算回路67は前記1パ
ルスと4逓倍カウンタ66の出力信号PH とを演算し
て、この演算結果をフィードフォワード演算器68に入
力する。
【0067】この動作における位相修正値演算回路88
の作用について、以下に詳述する。
【0068】位相修正値演算回路88は、図示しない記
憶手段から読みとった被研削用歯車22のモジュールM
n から、マスタ軸39が1回転するときの被研削用歯車
22の変位量Wを下式によって求める。
【0069】 W=Mn ×π (mm) …(8) 前記(8)式によって求めたマスタ軸39が1回転する
ときの被研削用歯車22の変位量Wと、4逓倍カウンタ
66の出力信号PH とから位相修正値演算回路88は、
4逓倍カウンタ66の出力信号PH の1パルスによって
被研削用歯車22が回転する変位量W1 を下式によって
求める。
【0070】 W1 =W/PH =(Mn ×π)/PH (mm/p) …(9) ここで、前記変位量W1 と、キーボード86から入力さ
れた被研削用歯車22の研削量の修正値Sとから、マス
タ軸エンコーダ46の分解能RM に換算された位相の修
正量PF を下式によって求める。
【0071】 PF =S/W1 =S/(W/PH )=(S×PH )/(Mn ×π) (p) …(10) 従って、ステップS5によるリード測定の結果、被研削
用歯車22の歯面で研削量を20μm修正する必要があ
ると判定された場合は、この研削量の修正値S=20μ
mと、図示しない記憶回路から読み出した被研削用歯車
22のモジュールMn =2.75、および4逓倍カウン
タ66の出力信号PH =72000(p)とから、マスタ
軸エンコーダ46の分解能RM に換算された位相の修正
値PF を(10)式によって求める。
【0072】 PF =20×10-3×72000/(2.75×π)≒167 (p) この結果、研削量を20μm修正するためには、計数さ
れたマスタ軸エンコーダ46の出力を167パルス修正
すればよいこととなる。
【0073】このとき、演算された位相の修正値PF
F >0であるなら、4逓倍されたマスタ軸エンコーダ
46のパルス数に前記修正値PF が加算され、演算され
た位相の修正値PF がPF <0であるなら減算されるこ
とにより、マスタ軸とスレーブ軸との位相が修正され
る。
【0074】以上説明したように、本実施例によれば、
キーボード86から入力された研削量の修正値Sに基づ
いて、マスタ軸エンコーダ46の分解能RM のパルス数
に換算された位相の修正値PF を求め、この修正値PF
によって4逓倍されたマスタ軸エンコーダ46のパルス
数を修正することによってワークスピンドルモータ26
の位相を修正する。
【0075】なお、本実施例においては、ステップS4
において研削後のリード測定を行い、この測定結果に基
づいて入力された研削量の修正値Sから、スレーブ軸6
1の位相の修正値PF を演算していたが、研削不足によ
り被研削用歯車22の表面部に残った黒皮のパターンと
研削量との関係を示す図表等を予め作成しておき、該図
表等によって位相の修正値PF を迅速に判定することも
可能である。
【0076】
【発明の効果】本発明に係る歯車研削機の位相修正方法
および装置では、同期回転させる研削工具と被研削用歯
車との位相を容易に修正することができるため、同期回
転制御データと実際の回転とがフリクション誤差等によ
って異なる場合であっても、容易に位相を修正し、該修
正された位相によって次なる被研削用歯車を回転させ、
研削することができる。
【0077】さらに、位相を修正することにより、被研
削用歯車の研削精度を向上させることが可能になるとと
もに、製品の歩留りが向上し、良質で安価な製品を供給
することができ、また、被研削用歯車の回転位相を迅速
に修正することにより、被研削用歯車の加工のサイクル
タイムを短縮し、生産性を向上させることができるとい
う効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する歯車研削機の外観構成を示す
斜視図である。
【図2】図1に示す実施例の砥石と被研削用歯車との相
関関係を示す説明図である。
【図3】図1に示す実施例の被研削用歯車とパルス発生
器とこれらを駆動するワークスピンドルモータとの相関
関係を示す説明図である。
【図4】図1に示す実施例の同期制御回路のブロック構
成図である。
【図5】図1に示す実施例の研削動作を示すメインフロ
ーチャートである。
【図6】図4に示す同期制御回路において、同期運転制
御を行う動作を示すフローチャートである。
【図7】図4に示す同期制御回路において、同期運転制
御を行う動作を示すフローチャートである。
【図8】図4に示す同期制御回路において、同期運転制
御を行う動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…歯車研削機 14…切込テーブル 16…切込モータ 18…トラバーステーブル 20…トラバースモータ 22…被研削用歯車 24…ワークセンサ 26…ワークスピンドルモータ 32…シフトテーブル 34…シフトモータ 35…シフト軸エンコーダ 38…砥石スピンドルモータ 42…砥石 46…マスタ軸エンコーダ 61…スレーブ軸 62…スレーブ軸エンコーダ 64…同期制御回路 65…フィードフォワード制御ユニット 66、78、84…4逓倍カウンタ 67…加減算回路 68…フィードフォワード演算器 72…加算器 74…セミクローズドループ制御ユニット 76…セミクローズドループ演算器 81…モータ駆動回路 86…キーボード 88…位相修正値演算回路 90…修正値出力回路

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】同期回転制御される研削工具の回転数に応
    じたパルス数を発生するパルス発生器を具備した歯車研
    削機に対し、前記研削工具と被研削用歯車との回転位相
    を、入力された研削量の修正値によって修正する歯車研
    削機の位相修正方法であって、 前記入力された研削量の修正値を読み取る第1のステッ
    プと、 予め設定された前記被研削用歯車のモジュール値を読み
    出す第2のステップと、 前記被研削用歯車のモジュール値に基づいて研削工具の
    回転軸が1回転するときの前記被研削用歯車の変位量を
    求め、この変位量と前記研削工具の回転数に応じたパル
    ス数に基づいて1パルス当たりの前記被研削用歯車の単
    位変位量を求め、前記入力された研削量の修正値と前記
    単位変位量に基づいて被研削用歯車の回転位相の修正値
    を求める第3のステップと、 前記回転位相の修正値に基づいて、次に加工される被研
    削用歯車の回転位相を修正する第4のステップと、 からなることを特徴とする歯車研削機の位相修正方法。
  2. 【請求項2】同期回転制御される研削工具の回転数に応
    じたパルス数を発生するパルス発生器を具備した歯車研
    削機に対し、前記研削工具と被研削用歯車との回転位相
    を、入力された研削量の修正値によって修正する歯車研
    削機の位相修正装置であって、 被研削用歯車の研削量の修正値を入力する入力手段と、 予め設定された前記被研削用歯車のモジュール値を記憶
    する被研削用歯車形状記憶手段と 記被研削用歯車のモジュール値に基づいて研削工具の
    回転軸が1回転するときの被研削用歯車の変位量を求
    め、この変位量と前記研削工具の回転数に応じたパルス
    数に基づいて1パルス当たりの被研削用歯車の単位変位
    量を求め、前記入力された研削量の修正値と前記単位変
    位量に基づいて被研削用歯車の回転位相の修正値を求め
    る位相修正値演算手段と、 前記被研削用歯車の回転位相の修正値に基づいて前記被
    研削用歯車の回転位相を修正する位相修正手段と、 を備えることを特徴とする歯車研削機の位相修正装置。
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