JP2904033B2 - 粉末冶金用バインダーおよび混合粉末 - Google Patents
粉末冶金用バインダーおよび混合粉末Info
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Description
末をベースとし、これに物性を改善する為の成分として
合金元素、黒鉛等の粉末を混合し、且つステアリン酸亜
鉛等の潤滑剤を含まない粉末冶金用混合粉末において、
特定の脂肪酸エステルをバインダーととして含有させる
ことにより、ベースとなる金属粉末の物性を阻害するこ
となく上記物性改善成分の偏析を抑え、また粉末取扱時
の発塵を抑え、更に潤滑剤を用いなくとも粉末成形時の
潤滑性を良好にしたものである。
粉末冶金においては、焼結体の物性(強度特性や加工性
等)を改善するために、銅、ニッケル、クロム、モリブ
デン等の合金元素や黒鉛、燐、硫黄等の無機成分(本明
細書では一括して、物性改善成分ということがある)の
粉末およびステアリン酸亜鉛等の潤滑剤粉末を配合する
ことが多い。この場合、ベースとなる金属粉末と物性改
善成分粉末の粒子サイズや比重等はかなり違っているの
が普通であり、たとえばベース金属粉末が鉄粉や鋼粉で
あり物性改善成分粉末が黒鉛や燐等である場合の比重差
は極端に大きくなるため、混合後成形までの取扱い過程
中にこれらが偏析を起こし易く、焼結体の特性および均
質性を悪くする。また潤滑剤粉末として、ステアリン酸
亜鉛等の金属石鹸を用いると、スス状の汚れが発生しや
すいことが知られており、一方ワックス系の潤滑剤を用
いると見掛密度および潤滑特性が低下する。
公平2−10201号や特開昭63−103001号に
は、有機バインダーを用いて鉄・鋼粉末等に黒鉛粉末等
を付着させる方法が提案されている。
報に開示された有機バインダーは親水性であるため、保
存時に吸湿して流動性を低下させたりベース金属粉末の
発錆を促すという問題があり、焼結体の品質をかえって
悪化させることもあった。またこの有機バインダーは、
鉄・鋼粉末と物性改善成分の結合力を高めるよりも、鉄
・鋼粉末同士の結合力を高める作用の方が強いので、黒
鉛等に対する偏析防止効果が不十分であり、より優れた
効果を得ようとすれば大量のバインダーを混合しなけれ
ばならない。その結果、鉄・鋼粉末同士の結合(塊状
化)が著しくなるため、混合・乾燥後の再粉砕や篩い工
程が不可欠となる。また上記の様な有機バインダーを用
いても、潤滑剤を併用する必要があり、潤滑剤の持つ従
来の問題も依然として残ることになる。
ものであって、その目的は、ベース金属粉末の変質や流
動性低下或はベース金属粉末同士の凝集といった問題を
生ずることなく、黒鉛等の分散不良、即ち偏析を防止す
ることができ、また取扱い時の粉塵発生を抑制し、更に
は粉末成形時に潤滑剤を用いなくても良好な潤滑性を有
する粉末冶金用混合粉末、およびその様な粉末冶金用混
合粉末を得ることのできる粉末冶金用バインダーを提供
しようとするものである。
のできた本発明の粉末冶金用バインダーとは、下記構造
式(1)で表される脂肪酸エステルである点に要旨を有
するものである。 R1 COO−CH2 −CH2 −OCOR2 ……(1) (但し、R1 ,R2 は、同一または異なって、脂肪族炭
化水素残基を意味する) 上記の脂肪酸エステルにおいて、R1 およびR2 は、同
一または異なって、炭素数12以上の脂肪族炭化水素残
基であることが好ましい。
することによって、希望する粉末冶金用混合粉末が得ら
れる。また粉末冶金用混合粉末において、バインダーの
含有量は、1.5重量%以下であることが好ましい。更
に、バインダーとしての効果と潤滑効果を発揮させる為
には、その含有量は0.3重量%以上であることが好ま
しい。
決すべく種々研究を進めた結果、前記構造式(1)に示
した様な特定の脂肪酸エステルをバインダーとして使用
すれば、前述の問題点が一挙に解消され、ベース金属粉
末の変質や流動性低下といった問題を生じることなく物
性改善成分の偏析を効果的に防止することができ、併せ
て潤滑剤を用いなくとも混合粉末取扱い時の潤滑性が良
好であることが確認された。
ウ素価が100以下、且つ100°Fにおける粘度が5
0cST以下の液状脂肪酸エステルからなる結合剤を、
同一出願人によって既に特許出願している(特開平6−
93302号)。この発明における結合剤は、少なくと
もステアリン酸亜鉛等の潤滑剤を必要とすることを前提
とし、またスチレンとブタジエンをモノマー成分とする
スチレン系合成ゴム共重合体を固体結合剤として併用
し、しかも混合粉末に対する含有量も0.01〜0.2
重量%と極めて少ないものである。これに対し本発明の
粉末冶金用バインダーは固体状のものであり、しかも結
合剤としての機能と潤滑剤としての機能を併せ有し、基
本的に潤滑剤を必要としないものである。即ち、本発明
者らが、前記した不都合の生じるステアリン酸亜鉛等の
潤滑剤をできるだけ使用しないという観点から検討した
ところ、上記の様な特定の脂肪酸エステルは潤滑剤とし
ての機能も併せ有しており、この脂肪酸エステルを粉末
冶金用バインダーとして用いれば、前記目的が見事に達
成されることを見い出し、本発明を完成した。
造式(1)に表される脂肪酸エステルからなるものであ
り、この構造式(1)を構成する脂肪族炭化水素残基R
1 およびR2 は、同一または異なる脂肪族炭化水素残基
であるが、二重結合を含んでいるもの(即ち不飽和脂肪
酸を用いたエステル)であっても良い。
ルと各種脂肪酸をエステル化することによって得られる
が、このとき用いることのできる脂肪酸としては(即
ち、脂肪族炭化水素残基を構成する脂肪酸)、特に限定
するものではなく、例えばトリデカン酸,ミリスチン
酸,ペンタデカン酸,パルチミル酸,マルガリン酸,ス
テアリン酸,ノナデカン酸,アラキジン酸,ベヘン酸,
リグノセリン酸、セロチン酸,モンタン酸,メリシン酸
等の飽和脂肪酸や、オレイン酸,リノール酸,リノレン
酸,アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等、様々なものが挙
げられる。尚不飽和脂肪酸のうちパロミトレイン酸は、
三重結合を有しており、脱ロウ工程(有機物除去工程)
での熱分解性が悪いので、好ましくない。また本発明の
粉末冶金用バインダーにおいては、単独の脂肪酸エステ
ルを用いても良く、或は種類の異なる(即ち、脂肪族炭
化水素残基の異なる)2種以上を混合して用いても良
い。
水素残基R1 ,R2 は、いずれも炭素数が12以上の炭
化水素残基であることが好ましい。即ち炭化水素残基R
1 ,R2 のいずれかの炭素数が11以下(対応する脂肪
酸:酪酸,カプロン酸,カプリル酸,ラウリン酸等)に
なると、ジエステルが液体状や半固体状(グリース状)
になり、流動性が低下する。また一般式Cn H2n+1で示
される脂肪酸炭化水素残基は疎水基であり、潤滑機能を
有しているが、このnの数が小さくなれば潤滑性が損な
われてしまい、多量の潤滑剤の併用が強いられ、従来技
術で述べた様な問題が生じる。但し、混合粉末の潤滑性
を更に向上させるという観点からして、ワックス等の潤
滑剤の併用は、前述した様な問題が生じない程度の少量
であれば可能である。
粉末を混合することによって、本発明の粉末冶金用混合
粉末が得られるのであるが、このときのバインダーの含
有量は、1.5重量%以下であることが好ましく、これ
より多くなると圧粉密度が小さくなる。またバインダー
の含有量の下限は、バインダー効果と潤滑効果を発揮さ
せるという観点から、0.3重量%以上であることが好
ましい。尚バインダーの含有量が0.2重量%以下にな
ると、後記実施例に示す様に、バインダーとしての機能
の低下よりも潤滑機能の低下の方が大きくなる。
説明するが、下記実施は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更するとはいず
れも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
商品名「アトメル300M」:粒径180μm以下)
と、市販されている銅粉および黒鉛粉末を、鉄粉:10
0重量部に対して銅粉:2重量部、黒鉛粉末:0.8 重量
部の比率で混合したものを用いた。
示す如く、羽根付きミキサーによって高速撹拌しつつ、
後述する粉末冶金用バインダー溶液(8%トルエン溶
液)を滴下もしくは噴霧し、約5分間強撹拌した後、緩
やかな撹拌に切り替えて所定時間乾燥し溶媒を除去し
た。そして該乾燥粉末を、粉体特性(黒鉛飛散率,流動
度,圧粉密度および抜き圧等)の測定用試料とした。
ュークリポアフィルタ1(網目12μm)を付した漏斗
状のガラス管2(内径:16mm、高さ106mm)を使用
し、上記で得た試料粉末P(25g)を入れて下方より
N2 ガスを0.8 リットル/分の速度で20分間流し、次
式により黒鉛飛散率を求めた。また流動度は、JIS−
Z2502により求めた。 黒鉛飛散率(%)=[1−N2 ガス流通後炭素量/N2 ガス流
通前炭素量]×100
(金属粉の圧縮性試験法)に準じて行ない、圧力:5ト
ン/cm2 (490.3MPa)で直径:11.3m
m,高さ10mmの成形体を作成して測定した。また潤
滑性の指標となる抜出し圧の測定は、圧粉密度測定用の
成形体の抜出し荷重を金型接触面で除して求めた。更
に、その他の一般的特性は、JISおよびJSPM標準
に準じて求めた。
圧)の測定結果を表1に示す。尚表1において、実施例
1,2および参考例1は、バインダーとしてエチレング
リコールのステアリン酸,ベヘン酸およびラウリン酸の
エステルを夫々用いたものである。またバインダー量
は、いずれも鉄粉:100重量部に対して0.5重量部
とし、潤滑剤は使用しなかった。
2および参考例1は各々十分なバインダー機能を有する
が、参考例1では流動度および潤滑性が大幅に低下して
いることが分かる。次に、バインダーとして、エチレン
グリコールのステアリン酸ジエステルを用い、その含有
量を変えて得られた混合粉末の粉体特性(黒鉛飛散率,
流動度,抜き圧および圧粉密度)の測定結果を、表2に
示す。
含有量が0.2重量%の参考例2では黒鉛飛散率が増加
すると共に、特に潤滑機能が低下しており、またバイン
ダーの含有量が2.0重量%の参考例3では圧粉密度が
低下しており、粉体として好ましくないのに対し、実施
例3,4の混合粉末では良好な粉体特性を示しているこ
とがわかる。
ースとなる金属粉末の物性を阻害することなく、合金粉
末や黒鉛粉末等の偏析を抑え、また粉末取扱時の発塵を
抑え、更に潤滑剤を用いなくても粉末成形時の潤滑性が
良好である粉末冶金用混合粉末を提供し得ることになっ
た。
る。
Claims (4)
- 【請求項1】 下記構造式(1)で表される脂肪酸エス
テルからなることを特徴とする粉末冶金用バインダー。 R1 COO−CH2 −CH2 −OCOR2 ……(1) (但し、R1 ,R2 は、同一または異なって、脂肪族炭
化水素残基を意味する) - 【請求項2】 R1 およびR2 が、同一または異なっ
て、炭素数12以上の脂肪族炭化水素残基である請求項
1に記載の粉末冶金用バインダー。 - 【請求項3】 請求項1または2に記載のバインダー
と、金属粉末を混合したものである粉末冶金用混合粉
末。 - 【請求項4】 バインダーの含有量が1.5重量%以下
である請求項3に記載の粉末冶金用混合粉末。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31692494A JP2904033B2 (ja) | 1994-12-20 | 1994-12-20 | 粉末冶金用バインダーおよび混合粉末 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31692494A JP2904033B2 (ja) | 1994-12-20 | 1994-12-20 | 粉末冶金用バインダーおよび混合粉末 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08176606A JPH08176606A (ja) | 1996-07-09 |
JP2904033B2 true JP2904033B2 (ja) | 1999-06-14 |
Family
ID=18082441
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31692494A Expired - Lifetime JP2904033B2 (ja) | 1994-12-20 | 1994-12-20 | 粉末冶金用バインダーおよび混合粉末 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2904033B2 (ja) |
-
1994
- 1994-12-20 JP JP31692494A patent/JP2904033B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08176606A (ja) | 1996-07-09 |
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