JP2903611B2 - 魚類病原性菌種の決定遺伝子dnaおよびその用途 - Google Patents

魚類病原性菌種の決定遺伝子dnaおよびその用途

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JP2903611B2 JP8004490A JP8004490A JP2903611B2 JP 2903611 B2 JP2903611 B2 JP 2903611B2 JP 8004490 A JP8004490 A JP 8004490A JP 8004490 A JP8004490 A JP 8004490A JP 2903611 B2 JP2903611 B2 JP 2903611B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野: この発明は魚類病原菌の種決定遺伝子DNAに関するも
のであり、さらに詳細にはエロモナス・ハイドロフィラ
あるいはエロモナス・サルモニシダ種、非溶血性ストレ
プトコッカスsp.種およびエドワジエラ・タルダ種の種
決定遺伝子DNAおよびそれらを含有する該菌種の同定試
薬に関するものである。
従来の技術: 魚類病原菌による感染症が養殖場で発生したとき、そ
の原因菌を究明することは魚病の予防・治療にとって重
要なことである。
従来、魚類病原菌を問わず一般細菌の分類、同定はそ
の形態や生化学的あるいは免疫学的手法を用いた生物学
的性状で行われてきた。最近、生化学あるいは分子遺伝
学の進歩により、その菌の持つ染色体DNAやRNA、菌体物
質および菌が生産する物質を比較することによる、いわ
ゆる化学的性状による分類が行われるようになってき
た。
発明が解決しようとする問題点: しかしながら、生物学的性状あるいは化学的性状によ
る分類法は、最近の分類学にとっては重要であるが、各
々の手法は複雑で時間を費やすために、病魚の原因菌を
簡便かつ迅速に同定するには適していない。
問題点を解決するための手段: 生物は種によって形態やそれを構成する成分が異な
る。これらの特徴はその生物の持つ遺伝子によって規定
されている。細菌においても同様で、種によって生化学
的性状が異なる。即ち性状が異なることはそれを規定す
る遺伝子も異なる。
このような観点から、この発明者等は養殖場で流行が
絶えず、経済的に損失が大きいエロモナス病(せっそう
病および出血性敗血症)、連鎖球菌症およびエドワジエ
ラ感染症について、それらの病原菌である、遺伝子的に
等しいと考えられるため区別でけいないエロモナス・サ
ルモニシダ(Aeromonas salmonicida)およびエロモナ
ス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila))、非
溶血性ストレプトコッカスsp.(Streptococcus sp.)
およびエドワジエラ・タルダ(Edwardsiella tarda
のみが持つ種特定遺伝子をそれぞれ見出し、さらにこれ
らのDNAをプローブ(標識した検出試料)として菌種未
知の魚病の病原菌のDNAとハイブリダイゼーションする
ことにより、該菌がエロモナス・ハイドロフィラあるい
はエロモナス・サルモニシダ種、非溶血性ストレプトコ
ッカスsp.種またはエドワジエラ・タルダ種であるか否
かを簡易かつ迅速に同定できるという新知見を得、この
発明を完成した。
以下に、エロモナス・ハイドロフィラあるいはエロモ
ナス・サルモニシダ種の種決定遺伝子DNA、非溶血性ス
トレプトコッカスsp.種の種決定遺伝子DNAおよびエドワ
ジラ・タルダ種の種決定遺伝子DNAの一般的な製造法を
示す。
第4図に示すように、せっそう病の起因菌、たとえば
エロモナス・サルモニシダATCC14174、連鎖球菌症の起
因菌ストレプトコッカスsp.NG8206およびパラコロ病等
の起因菌エドワジエラ・タルダEdk−1それぞれの染色
体DNAを常法、例えばマーマー(Marmur)法により抽出
する。
ここで用いるエロモナス・サルモニシダATCC14174は
アメリカン・タイプ・カルチュアー・コレクションに寄
託されていて一般に入手できる菌株であり、ストレプト
コッカスsp.NG8206およびエドワジエラ・タルダEdk−1
も工業技術院微生物工業技術研究所にそれぞれ受託番号
微工研菌寄第11371号および11372号として寄託されてい
る。
得られるDNA断片のそれぞれについて、DNAをそれぞれ
エロモナス・サルモニシダATCC14174は制限酵素BamHI
で、非溶血性ストレプトコッカスsp.NG8206およびエド
ワジエラ・タルダEdk−1は制限酵素Sau3AIで切断し、
得られるDNA断片それぞれについてベクタープラスミドp
UC119にショットガンクローニングを行う。
ここで使用するベクタープラスミドpUC119は、例えば
Methods in enzymology第153巻(1987年)(ACADEMIC P
RESS,INC.)に記載されている公知のプラスミドであ
る。
このようにして得られるリコンビナントプラスミドを
それぞれエスシェリヒア・コリMV1184株(Messing.J.,
R.Crea,and P.H.Seeburg.1981.A system for shotgun D
NA seqencing.Nucleic Acids Res.9:309参照)に形質転
換を行い、得られるエロモナス・サルモニシダATCC1417
4、ストレプトコッカスsp.NG8206およびエドワジエラ・
タルダEdk−1の染色体DNA断片を含むリコンビナントプ
ラスミドDNAをアルカリSDS法{Plasmids(IRL PRESS)
−a practical approachに記載の方法}により抽出し、
そのDNAをそれぞれエロモナス・サルモニシダATCC14174
は制限酵素BamHIで、非溶血性ストレプトコッカスsp.NG
8206およびエドワジエラ・タルダEdk−1は制限酵素Sau
3AIで切断し、電気泳動によりこれらのクローン化され
たDNAの分子量を求め、エロモナス・サルモニシダATCC1
4174についてはアガロース電気泳動法により測定した分
子量0.35kbp附近のクローンを、非溶血性ストレプトコ
ッカスsp.NG8206に就いては、同様の測定法により測定
した分子量0.45kbp附近のクローンを、エドワジエラ・
タルダEdk−1についても分子量0.65kbp附近のクローン
をそれぞれ選択し、単離する。
このようにして得られるエロモナス・サルモニシダAT
CC14174の分子量0.35kbp附近のDNA断片をそれぞれプロ
ーブとして、これらとエロモナス・サルモニシダの染色
体DNAのBamHI消化断片とサザン ブロット ハイブリダ
イゼーションを行い、かつエロモナス・サルモニシダの
増殖したコロニーとコロニーハイブリダイゼーションを
行い、エロモナス・サルモニシダおよびエロモナス・ハ
イドロフィラとのみハイブリッドを形成し、他の細菌と
ハイブリッドを形成しないものを探索することにより、
目的とするエロモナス・ハイドロフィラあるいはエロモ
ナス・サルモニシダ種の決定遺伝子DNAが得られる。
同様にして、非溶血性ストレプトコッカスsp.NG8206
の分子量0.45kbp附近のDNA断片をそれぞれプローブとし
て、これらと非溶血性ストレプトコッカスsp.の染色体D
NAのSau3AI消化断片とサザン ブロット ハイブリダイ
ゼーションを行い、かつ非溶血性ストレプトコッカスs
p.の増殖したコロニーとコロニーハイブリダイゼーショ
ンを行い、非溶血性ストレプトコッカスsp.とのみハイ
ブリッドを形成、他の細菌とハイブリッドを形成しない
ものを探索することにより、目的とする非溶血性ストレ
プトコッカスsp.の決定遺伝子DNAが得られる。
同様にしてエドワジエラ・タルダEdk−1の分子量0.6
5kbp附近のDNA断片をそれぞれプローブとして、これら
とエドワジエラ・タルダの染色体DNAのSau3AI消化断片
とサザン ブロット ハイブリダイゼーションを行い、
かつエドワイエラ・タルダの増殖したコロニーとコロニ
ーハイブリダイゼーションを行い、エドワジエラ・タル
ダとのみハイブリッドを形成し、他の細菌とハイブリッ
ドを形成しないものを探索することにより、目的とする
エドワジエラ・タルダの種決定遺伝子DNAが得られる。
このようにして得られるエロモナス・ハイドロフィラ
あるいはエロモナス・サルモニシダ種の決定遺伝子DNA
は次のような特徴を有する。
(イ)該DNAの塩基配列は第1図に示す通りである。
(ロ)該DNAの塩基対数は352bpである。
また、非溶血性ストレプトコッカスsp.の種決定遺伝
子DNAは次のような特徴を有する。
(イ)該DNAの塩基配列は第2図に示す通りである。
(ロ)該DNAの塩基対数は454bpである。
さらにエドワジエラ・タルダの種決定遺伝子DNAは次
のような特徴を有する。
(イ)該DNAの塩基配列は第3図に示す通りである。
(ロ)該DNAの塩基対数は663bpである。
発明の効果: この発明のエロモナス・ハイドロフィラあるいはエロ
モナス・サルモニシダ種の決定遺伝子DNAはエロモナス
・サルモニシダあるいはエロモナス・ハイドロフィラの
同定に、非溶血性ストレプトコッカスsp.の種決定遺伝
子DNAは魚類病原菌非溶血性ストレプトコッカスsp.の同
定に、エドワジエラ・タルダの種決定遺伝子DNAは魚類
病原菌エドワジエラ・タルダの同定にそれぞれ有用であ
る。すなわち、適当な標識物で標識したエロモナス・ハ
イドロフィラあるいはエロモナス・サルモニシダ種の決
定遺伝子DNAの一本鎖DNA(同様に、適当な標識物で標識
した非溶血性ストレプトコッカスsp.の種決定遺伝子DNA
の一本鎖DNAあるいはエドワジエラ・タルダの種決定遺
伝子DNAの一本鎖DNA)と種未知の魚の病原菌のDNAの一
本鎖とをハイブリダイゼーションすることによって、該
菌種未知の魚の病原菌がエロモナス・ハイドロフィラあ
るいはエロモナス・サルモニシダ種(同様にして、非溶
血性ストレプトコッカスsp.あるいはエドワジエラ・タ
ルダであるか否か)を同定するとができる。
ここで用いられる標識物としては、通常この分野で用
いられる標識物をそのまま使用することができ、そのよ
うな例としては、放射性同位元素、酵素、蛍光性化合
物、化学的発光性化合物、化学的発色性化合物、生物発
光性化合物、生物発色性化合物等が挙げられる。
この発明の、標識物で標識されたエロモナス・ハイド
ロフィラあるいはエロモナス・サルモニシダの種決定遺
伝子、非溶血性ストレプトコッカスsp.の種決定遺伝子D
NAおよびエドワジエラ・タルダの種決定遺伝子DNAは、
それぞれの一本鎖と各種担体、希釈剤とを含有するエロ
モナス・ハイドロフィラあるいはエロモナス・サルモニ
シダ種、非溶血性ストレプトコッカスsp.種およびエド
ワジエラ・タルダ種の同定用試薬として、また、これら
の標識された種決定遺伝子DNAをそれぞれ含有するキッ
トとして用いることができる。
実施例: 次にこの発明を実施例により説明する。
なお、以下の実施例の説明には、下記の略号を使用し
た。
1NB: 1l中 ポリペプトン 10g ビーフエクストラクト 10g 食塩 10g pH7.5に調整 HIA:ハートインフュージョン寒天培地 1HIA:0.5%食塩加ハートインフュージョン寒天培地 2HIYA:0.2%イーストエクストラクト添加および1.5%食
塩加ハートインフュージョン寒天培地 HIGA:0.3%グルコース添加ハートインフュージョン寒天
培地 2xYT: 1l中 バクトトリプトン 20g イーストエクストラクト 10g 食塩 5g 寒天 15g ph7.5に調整 dDW:精製水 トリス:ヒドロキシメチル アミノメタン DTT:ジチオスレイトール ATP:アデノシン−5′−トリフォスフェート BSA:牛血清アルブミン X−gal:5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリール−
β−D−ガラクトピラノシド TBE緩衝液:0.089Mトリス・ホウ酸塩 0.089M−ホウ酸及び0.002M EDTA混液 2ME:2−メルカプトエタノール Kbp:キロ塩基対 EDTA:エチレンジアミンテトラ酢酸 TE:10mlM トリス・HCl(pH8.0) 1mM EDTA混液 CTAB−NaCl溶液: 10%CTAB(ヘキサデシルトリメチル アンモニウムブロ
マイド) 0.7M NaCl 実施例1(エロモナス・サルモニシダあるいはエロモナ
ス・ハイドロフィラ種の種決定遺伝子DNAの製法) (1)エロモナス・サルモニシダの染色体DNAの抽出: エロモナス・サルモニシダATCC14174株を1NB培地で25
℃一夜培養した。該菌培養液から6,000rpmで10分間遠心
分離し、上澄を捨て、沈殿菌体を得た。この沈殿菌体か
ら、Meadeらの方法(J.Bacteriology,149:114−122,198
2)でエロモナス・サルモニシダATCC14174株の染色体DN
Aを得た。これを真空乾燥した後、1mlのTE溶液に溶解さ
せ、得られたDNAを−20℃で保存した。
(2)ベクタープラスミドpUC119 DNAの抽出: ベクタープラスミドDNA pUC119を保持するエスシェリ
ヒア・コリMV1184株を2xYT培地で一晩培養し、アルカリ
SDS法に従ってベクタープラスミドDNA pUC 119を採取し
た。
(3)エロモナス・サルモニシダ染色体DNAの消化: エロモナス・サルモニシダ染色体DNA約1μgをBamHI
緩衝液[150mM NaCl、6mMトリス・HCl(pH8.0)、6mM M
gCl2]20μlに溶かし、BamHI約2〜4ユニットを加え
て37℃で1時間反応させた。反応後、常法に従ってフェ
ノール処理を1回、ジエチルエーテル処理を2回行って
反応を止め、BamHIによるDNAの消化断片を得た。
(4)ベクタープラスミドDNA pUC119のBamHIによる消
化: ベクタープラスミドDNA pUC119約0.1μgをBamHI緩衝
液に溶かし、BamHI約1ユニットを加えて37℃で1時間
反応させた。反応後、常法に従ってフェノール処理を1
回、ジエチルエーテル処理を2回行って反応を止め、Ba
mHIによるDNAの消化断片液を得た。
(5)エロモナス・サルモニシダDNAのBamHI消化断片の
ベクタープラスミドDNA pUC119へのクローニング: エロモナス・サルモニシダ染色体DNAのBamHI消化断片
とベクタープラスミドDNA pUC119のBamHI消化断片とを
混合し、2倍量の99%冷エタノール(−20℃保存)と10
分の1量の3M酢酸ナトリウムを加え、−70℃で15分間静
置した。これを14,000rpmで5分間遠心後、アスピレー
トし、75%冷エタノールでリンスした後、乾燥させた。
dDW14μlを入れライゲーション緩衝液[0.5Mトリス
・HCl(pH7.4)、0.1M MgCl2、0.1M DTT 10mMスペルミ
ジン、10mM ATP、1mg/ml BSA]4μlを加え、さらにT4
リガーゼ(エスシェリヒア・コリC75T4リガーゼ)2μ
l追加し、15℃で一晩反応させて、環状のリコンビナン
トプラスミドDNAを得た。
(6)エスシェリヒア・コリの形質転換によるリコンビ
ナントプラスミドDNAの複製: 連結された環状のリコンビナントDNAを用い、Molecul
ar Clonig(Cold Spring Harbar Laboratory)記載の方
法に従って、エスシェリヒア・コリMV1184株に形質転換
した。得られた形質転換株をアンピシリン100μg/mlお
よびX−gal 40μg/ml含有2xYT平板に塗抹し、37℃で一
晩培養した。培地上に成育したアンピシリン耐性白色の
コロニーを、リコンビナントDNAの複製株として回収し
た。
(7)エロモナス・サルモニシダDNAの消化断片クロー
ンの選択: 得られた環状のリコンビナントプラスミドDNA複製株
を、アルカリSDS法で抽出し、BamHIで消化後、0.8%ア
ガロースゲルを用いてTBE緩衝液中80mAで1時間電気泳
動を行った。アガロースゲルにおけるDNAバンドの検出
はMolecular Cloning記載の方法で行った。切断DNA断片
の分子サイズは、アガロースゲルにおけるそれらの相対
移動速度をλファージDNAのHindIII消化断片の移動度
[L.H.Robinson and A.Landy,Gene2(1977)]と比較し
て測定し、約0.45kbpのBamHI消化DNA断片を得た。
(8)ハイブリダイゼーションによる確認: 得られた約0.45kbpのDNA断片は、ニック・トランスレ
ーション法(Molecular Cloning記載の方法)により32P
で標識し、目的細菌であるエロモナス・サルモニシダお
よびエロモナス・ハイドロフィラの一本鎖DNAとのみハ
イブリッドを形成することをサザン ブロット ハイブ
リダイゼーション法およびコロニーハイブリダイゼーシ
ョン法(第1表)により確認した。
(9)塩基配列の決定: 確認の済んだ約0.45kbpのDNAクローン断片の塩基配列
を、ニッポンジーン(株)のM13 Sequencing Kit 1を用
いてジデオキシ法[J.Messing,Methods in enzymology,
101,78(1983)]で決定した。その結果は、第1図に示
した。
実施例2(非溶血性ストレプトコッカスsp.種の種決定D
NA断片の製法) (1)非溶血性ストレプトコッカスsp.の染色体DNAの抽
出: 非溶血性ストレプトコッカスsp.ND8206株を1NB培地20
0mlで一夜培養し、菌培養液を得た。該菌培養液を6,000
rpmで10分間4℃で遠心して上澄液を捨て、沈殿菌体に1
0mMトリス・HCl(pH8.0)と10mM EDTAの混液を加えて攪
拌し、この液を6,000rpmで15分間4℃で遠心して上澄液
を捨てた。残った菌体を25mlの10mMトリス・HCl(pH8.
0)と10mM EDTAの混液で懸濁し、50mgのリゾチーム(和
光純薬製)を加え、穏やかに混合し、4℃で2〜3時間
放置した。この液を6,000rpmで15分間4℃で遠心して,
再度10mMトリス・HCl(pH8.0)と10mM EDTAの混液で懸
濁し、1mlの20%SDSを加えて37℃で1時間反応させた。
さらに、1mlのTE飽和フェノールを加え、5分間穏やか
に振盪後8,000rpmで15分間遠心した。この上澄を別の遠
心チューブに移し、これと等量のフェノール/クロロホ
ルム(1:1)を加え、穏やかに振盪した後、8,000rpmで1
5分間遠心した。この上澄を別の遠心チューブに移し、1
/10量の酢酸ナトリウム溶液と2.5倍量の冷エタノールを
加え、−80℃で10分間放置した。
その後、12,000rpm10分間4℃で遠心し、上澄を捨
て、これに75%冷エタノールを加え、洗浄し、真空乾燥
した。最後に1mlのTE溶液で溶解させ、得られたDNAを−
20℃で保存した。
(2)ベクタープラスミドpUC119 DNAの抽出: 実施例1−(2)と同じ方法でベクタープラスミドpU
C119 DNAを精製した。
(3)非溶血性ストレプトコッカスsp.染色体DNAの消
化: 非溶血性ストレプトコッカスsp.染色体DNA約1μgを
Sau3AI[50mM NaCl、20mMトリス・HCl(pH7.5)、10mM
MgCl2]緩衝液に溶かし、Sau3AI約2〜4ユニットを加
えて37℃で1時間反応させた。反応後、常法に従ってフ
ェノール処理を1回、ジエチルエーテル処理を2回行っ
て反応を止め、Sau3AIによるDNAの消化断片液を得た。
(4)ベクタープラスミドDNA pUC119の消化: 実施例1−(4)と同じ方法でベクタープラスミドpU
C119のBamHI消化断片DNAを得た。
(5)非溶血性ストレプトコッカスsp.DNAのSau3AI消化
断片とベクタープラスミドpUC119へのクローニング: 非溶血性ストレプトコッカスsp.染色体DNAのSau3AIの
消化断片とベクタープラスミドDNA pCU119のBamHIの消
化断片とを混合し、これにフェノール/クロロホルム
(1:1)を等量入れ良く混合した後、12,000rpmで5分間
遠心し、上澄を新しいチューブに移し、ジエチルエーテ
ル処理を2回行なった。ジエチルエーテルを完全に除い
た後、1/10量の3M酢酸ナトリウムと2.5倍量の99%冷エ
タノールを加え、−80℃で20分間静置した。こえを13,0
00rpmで5分間4℃で遠心を行ない上澄を取除いた。沈
殿物を70%冷エタノールでリンスした後、真空乾燥し、
dDW20μlに溶解させた。これに20%PEG6000/2.5M NaCl
液1μlに2μlのT4ライゲーション緩衝液と100ユニ
ットのT4リガーゼを混ぜて、15℃で一晩反応させ、環状
のリコンビナントプラスミドDNAを得た。
(6)エスシェリヒア・コリの形質転換によるリコンビ
ナントプラスミドDNAの複製: 連結された環状のリコンビナントDNAを用い、Molecul
ar Cloning記載の方法に従って、エスシェリヒア・コリ
MV1184に形質転換した。得られた形質転換株をアンピシ
リン200μg/ml、X−gal 40μg/mlおよび0.01%チアミ
ン含有2xYT平板に塗抹し、37℃で一晩培養した。培地上
に成育したアンピシリン耐性白色のコロニーを、リコン
ビナントDNAの複製株として単離した。
(7)非溶血性ストレプトコッカスsp.DNAの消化断片ク
ローンの選択: 得られた環状のリコンビナントプラスミドDNA複製株
を、実施例1−(7)と同じ電気泳動法で、約0.45kbp
Sau3AI消化DNA断片を得た。
(8)ハイブリダイゼーションによる確認: 得られた約0.45kbpのDNA断片は、実施例1−(8)の
方法で標識し、目的細菌である非溶血性ストレプトコッ
カスsp.の一本線DNAとのみハイブリッドを形成すること
をサザン ブロット ハイブリダイゼーション法および
コロニーハイブリダイゼーション法(第2表)により確
認した。
(9)塩基配列の決定: 確認の済んだ約0.45kbpのDNAクローン断片の塩基配列
を、ファルマシア社のT7 DNA Sequencing Kitを用いて
ジデオキシ法で決定した。その結果は、第2図に示し
た。
実施例3(エドワジエラ・タルダ種の種決定DNA断片の
製法) (1)エドワジエラ・タルダ染色体DNAの抽出: エドワジエラ・タルダEdk−1を1NB培地100mlで一夜
培養し、菌培養液を得た。該菌培養液を6,000rpmで10分
間4℃で遠心して上澄液を捨て、沈殿菌体に9mlのTE緩
衝液を加え懸濁し、0.5mlの10%SDS溶液および50μlの
プロテナーゼK溶液(20mg/ml:dDW)を加え37℃で1時
間反応させた。この溶液に5M NaClを1.8ml加え完全に混
合し、さらにCTAB/NaCl溶液を加え混合後、65℃で20分
間反応させた。反応後、等量のクロロホルム/イソアミ
ルアルコールを加え8,000rpmで10分間4℃で遠心し、上
澄を新しいチューブに移し、等量のフェノール/クロロ
ホルム/イソアミルアルコールを加えて8,000rpmで10分
間4℃で遠心した。上澄を新しいチューブに移し、0.6
容のイソプロパノールを加え、15分間放置した後、12,0
00rpmで10分間4℃で遠心した。この上澄を捨て、70%
エタノールを加えてリンスし、真空管層した。乾燥残渣
を2mlのTE緩衝液で溶解した。溶解した乾燥残渣に100μ
lのエチジウムブロマイドおよび2.6gのCaClを加え、10
0,000rpmで5時間20℃で遠心した。紫外線照射下で遠心
チューブにDNAのバンドを確認し、その部分を抜取り、
イソプロパノールでエチジウムブロマイドを除去した。
次に、この溶液を21のTE緩衝液で一昼夜透析を行ない、
CaClを取除き、染色体DNAを採取した後、トリス・HCl
(pH7.5)50mMとEDTA1mMを含有する液2mlを加えて4℃
で保存した。
(2)ベクタープラスミドpUC119 DNAの抽出: 実施例1−(2)と同様にしてベクタープラスミドDN
A pUC119を採取した。
(3)エドワジエラ・タルダ染色体DNAの消化: エドワジエラ・タルダ染色体DNA約1μgをSau3AI緩
衝液20μlに溶かし、Sau3AI約3ユニットを加えて37℃
で1時間反応させた。反応後、常法に従ってフェノール
処理を1回、ジエチルエーテル処理を2回行って反応を
止め、Sau3AIによるDNAの消化断片液を得た。
(4)ベクタープラスミドDNA pUC119の消化: 実施例1−(4)と同様にしてベクタープラスミドpU
C119の、BamHIによるDNAの消化断片液を得た。
(5)エドワジエラ・タルダDNAのSau3AI消化断片のベ
クタープラスミドpUC119へのクローニング: エドワジエラ・タルダ染色体DNAのSau3AI消化断片と
ベクタープラスミドDNA pUC119のBamHI消化断片を混合
し、実施例1−(5)と同様にして、環状のリコンビナ
ンドプラスミドDNAを得た。
(6)エスシェリヒア・コリの形質転換によるリコンビ
ナントプラスミドDNAの複製: 連結された環状のリコンビナントDNAを用い、Molecul
ar Cloning記載の方法に従って、エスシェリヒア・コリ
MV1184株に形質転換した。
得られた形質転換体をアンピシリン50μg/mlおよびX
−gal 40μg/ml含有2xYT平板に塗抹し、37℃で一晩培養
した。培地上に成育したアンピシリン耐性白色のコロニ
ーを、リコンビナントDNAの複製株として回収した。
(7)エドワジエラ・タルダDNAの消化断片クローンの
選択: 得られた環状のリコンビナントプラスミドDNA複製株
を、アルカリSDS法で抽出し、Sau3AIで消化後、0.8%ア
ガロースゲルを用いてTBE緩衝液中80mAで1時間電気泳
動を行った。アガロースゲルにおけるDNAバンドの検出
はMolecular Cloning記載の方法で行った。切断DNA断片
の分子サイズは、アガロースゲルにおけるこれらの相対
移動速度をλファージDNAのHindIII及びEcoRI消化断片
の移動度と比較して測定し、約0.65kbpのDNA断片を得
た。
(8)ハイブリダイゼーションによる確認: 得られた約0.65kbpのDNA断片は、ニック・トランスレ
ーション法により32Pで標識し、目的細菌であるエドワ
ジエラ・タルダの一本鎖DNAとのみハイッブリッドを形
成することをサザン ブロット ハイブリダイゼーショ
ン法およびコロニーハイブリダイゼーション法(第3
表)により確認した。
(9)塩基配列の決定: 確認の済んだ約0.65kbpのDNAクローン断片の塩基配列
を、ファルマシア社製のT7 DNA Sequencing Kitを用い
てジデオキシ法で決定した。その結果は、第3図に示し
た。
実施例4(エロモナス・サルモニシダあるいはエロモナ
ス・ハイドロフィラ感染のコロニーハイブリダイゼーシ
ョンによる診断) 実施例1で得られたエロモナス・サルモニシダあるい
はエロモナス・ハイドロフィラ種を決定する352bpの染
色体DNA断片を、ニックトランスレーション法によりア
イソトープ32Pでラベルした。
この32Pラベル断片で、野外から入手した新鮮病魚か
ら菌を分離し、エロモナス・サルモニシダあるいはエロ
モナス・ハイドロフィラによる感染であるか否かの診断
を行なった。
日本各地の養殖場から、明らかに感染症を疑う疾病の
発生が認められた「あまご」および「こい」の、各魚群
の魚の肝臓からHIA培地に直接釣菌した平板の送付を受
けた。このHIA平板上に成育していたコロニーを無作為
に1枚当り3株選び、実施例1−(8)に記載の方法で
当日中にコロニーハイブリダイゼーション法による迅速
同定を行なった。なお、細菌の生育が旺盛なため単独コ
ロニーが得られ無い時は、細菌の生育中心と推定される
部分3点を選んだ。同様に、初期平板上で単独コロニー
が得られる場合はそのまま、得られない場合はモノセル
を反復した後、バーギース(Berger′s)マニュアル第
8版に従って生物学的方法でも同定を行なった。但し、
生物学的方法では文献上当該魚種の疾病と認知されてい
る菌と明らかに異なる性質の菌であった場合には、雑菌
として処理し、最終同定まで行なわなかった。
結果は、第4表に示したように今回用いたエロモナス
・サルモニシダあるいはエロモナス・ハイドロフィラの
種決定一本鎖DNAは、単一コロニーが得られなかった場
合でも、該菌が存在した時はエロモナス・サルモニシダ
およびエロモナス・ハイドロフィラともにハイブリッド
を形成し、診断までに要した日数は2日であった。一
方、生物学的方法では最長7日を要し、雑菌の繁殖のた
め診断できないこともあった。実用上エロモナス・サル
モニシダあるいはエロモナス・ハイドロフィラのいずれ
であっても、魚類に対する病原性および宿種特異性は既
知で、種を特定しなくとも診断用としては充分有益であ
る。また、菌の増殖確認後直ちに診断が可能であったこ
とは、対象魚の早期治療に資する意味が大きく、種決定
遺伝子DNAのコロニーハイブリダイゼーション法による
早期診断の有益性が示唆された。
実施例5(非溶血性ストレプトコッカスsp.感染症のコ
ロニーハイブリダイゼーションによる診断) 実施例2で得られた非溶血性ストレプトコッカスsp.
の種を決定する454bpの染色体DNA断片を、ニックトラン
スレーション法によりアイソトープ32Pでラベルした。
この32Pラベル断片で、野外から入手した新鮮病魚か
ら菌を分離し、非溶血性ストレプトコッカスsp.による
感染であるか否かの診断を行なった。
日本各地の養殖場から、明らかに感染症を疑う疾病の
発生が認められた「はまち」の、各魚群の魚の肝臓から
1HIA培地に直接釣菌した平板の送付を受けた。この1HIA
平板上に成育していたコロニーを無作為に1枚当り3株
選び、実施例4と同様の方法および基準で、コロニーハ
イブリダイゼーション法および生物学的方法による同定
を行なった。
結果は、第5表に示したように今回用いた非溶血性ス
トレプトコッカスsp.の種を決定する一本鎖DNAは、単一
コロニーが得られなかった場合でも、該菌が存在した時
は全てハイブリッドを形成し、診断までに要した日数は
2日であった。一方、生物学的方法では最長6日を要
し、雑菌の繁殖のため診断できないこともあった。こ
の、種決定一本鎖DNAのコロニーハイブリダイゼーショ
ン法による診断は、菌の増殖確認後直ちに診断が可能で
あり、精度も高いため、有益であることが示唆された。
実施例6(エドワジエラ・タルダ感染症のコロニーハイ
ブリダイゼーションによる診断) 実施例3で得られたエドワジエラ・タルダの種を決定
する663bpの染色体DNA断片を、ニックトランスレーショ
ン法によりアイソトープ32Pでラベルした。
この32Pラベル断片で、野外から入手した新鮮病魚か
ら菌を分離し、エドワジエラ・タルダによる感染である
か否かの診断を行なった。
日本各地の養殖場から、明らかに感染症を疑う疾病の
発生が認められた「ひらめ」および「うなぎ」の、各魚
群の魚の肝臓から1HIAおよびHIA培地に直接釣菌した平
板の送付を受けた。この1HIAおよびHIA平板上に成育し
ていたコロニーを無作為に1枚当り3株選び、実施例4
と同様の方法および基準で、コロニーハイブリダイゼー
ション法および生物学的方法による同定を行なった。
結果は、第6表に示したように今回用いたエドワジエ
ラ・タルダの種を決定する一本鎖DNAは、単一コロニー
が得られなかった場合でも、該菌が存在した時は全てハ
イブリッドを形成し、診断までに要した日数は2日であ
った。一方、生物学的方法では最長7日を要し、雑菌の
繁殖のため診断できないこともあった。即ち、実施例4
および5と同様に、種決定遺伝子の一本鎖DNAのコロニ
ーハイブリダイゼーション法による細菌同定の有益性が
示された。
【図面の簡単な説明】
第1図はエロモナス・サルモニシダあるいはエロモナス
・ハイドロフィラの種決定遺伝子DNAの塩基配列を、第
2図は非溶血性ストレプトコッカスsp.の種決定遺伝子D
NAの塩基配列を、第3図はエドワジエラ・タルダの種決
定遺伝子DNAの塩基配列を、第4図はエロモナス・サル
モニシダあるいはエロモナス・ハイドロフィラの種決定
遺伝子DNA、非溶血性ストレプトコッカスsp.の種決定遺
伝子DNAおよびエドワジエラ・タルダの種決定遺伝子DNA
のクローニング過程を、それぞれ示す。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次のような特徴を有する魚類病原菌エロモ
    ナス・ハイドロフィラあるいはエロモナス・サルモニシ
    ダ種の決定遺伝子DNA: (イ)該DNAの塩基配列は第1図に示す通りである。 (ロ)該DNAの塩基対数は352bpである。
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