JP2902478B2 - 脱煙鋳型材 - Google Patents

脱煙鋳型材

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JP2902478B2 JP2338794A JP33879490A JP2902478B2 JP 2902478 B2 JP2902478 B2 JP 2902478B2 JP 2338794 A JP2338794 A JP 2338794A JP 33879490 A JP33879490 A JP 33879490A JP 2902478 B2 JP2902478 B2 JP 2902478B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、鋳鋼、鋳鉄、アルミニウム等の金属の鋳造
に用いられる鋳造用鋳型の主型および中子を製造する際
に用いるシェル鋳型材料に関する。さらに詳しくは、鋳
型の製造時の加熱により発生する煙、および刺激臭、異
臭、有毒性のガス(以下、刺激性ガスという)の発生量
が少なく、しかも該鋳型の強度の低下が少ない脱煙鋳型
材に関するものである。
〔従来の技術およびその問題点〕
従来より、鋳造用鋳型の主型および中子(以下、単に
鋳型とする)の製造方法として、フェノール樹脂等の合
成樹脂が熱によって硬化する性質を鋳型の硬化に利用し
たシェルモールド法が多く採用されている。この方法に
より製造された鋳型を用いて鋳造することにより、極め
て寸法精度の高い美麗な鋳肌を持った鋳物が製造でき
る。このシェルモールド法に用いられる鋳型材として
は、珪砂等の鋳型材基材にフェノール樹脂等の熱硬化性
樹脂、硬化剤、潤滑材を順に被覆した樹脂被覆鋳物砂
(レジンコーテッドサンド:RCS)が一般的に使用に供さ
れ、さらに、必要に応じて硬化促進剤やその他の添加剤
を前記樹脂被覆鋳物砂に添加・混合して使用されてい
る。
しかし、この樹脂被覆鋳物砂を原料として鋳型を製造
する場合、加熱金型内にこの鋳型材料を封入し焼成・固
結するため、成形工程等の加熱の際、加熱金型を開放し
たときや鋳型を取り出し、搬出する際に、煙やホルムア
ルデヒド、フェノール、アンモニア等の強い刺激性ガス
が発生し、作業環境を著しく悪化させている。また、最
近、鋳型の製造において大量生産をする場合、空気圧を
利用して樹脂被覆鋳物砂を成形金型へ吹き込むブロー法
が用いられている。この方法では、成形金型への充填性
を上げるため潤滑剤として主にステアリン酸カルシウム
が用いられ、鋳型を作製するときに該ステアリン酸カル
シウムが分解し、煙を多量に発生するという問題があっ
た。
このように、従来の鋳型材は、鋳型製造用機械の周囲
に発煙用ダクトを取付けにくいため、鋳型の製造工程に
おいて発生する煙および刺激性ガスが鋳物工場内の作業
環境を悪化させる原因になっており、これらの低減のた
めには莫大な設備費用を必要とし、しかも必ずしも十分
な対策とはいえず、根本的な対策が強く切望されてい
た。
これらの不具合を解決する方法として、樹脂被覆鋳物
砂に、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物、活性炭、活性
アルミナ等の細孔を多数有しかつ比表面積が50m2/g以上
の多孔性物質を混合した鋳型材(特開昭63−60042号公
報)が提案されている。これより、該鋳型材を用いて鋳
造用鋳型を成形する場合や、該鋳型を用いて鋳造を行っ
た場合の加熱の際に発生する刺激性ガスの発生量を吸着
および触媒作用により低減することができたとされてい
る。
しかしながら、この鋳型材では、煙および刺激性ガス
を完全に除去するためには前記多孔性物質の混合量を多
くする必要があり、それに伴って鋳型の強度が大きく低
下し、鋳造工程において鋳型割れが発生するという問題
点を有している。さらに、前記の多孔性物質を多く混合
した鋳型材を再生し、利用した場合、再生処理工程を経
た後でも珪砂等の鋳型材基材(再生砂)の中に活性炭等
炭化物を除く前記多孔性物質が形をとどめて細孔を有し
たまま残り、該多孔性物質を含有した再生砂を用いて鋳
型を作製すると、型として使用できない程に鋳型強度を
大きく低下させるという問題を有していた。
そこで、本発明者等は、これら従来の問題点を解決す
べく鋭意研究し、各種の系統的実験を行った結果、本発
明を成すに至ったものである。
〔発明の目的〕
本発明の目的は、鋳造用鋳型の製造を行うときに煙お
よび刺激性ガスの発生量が少なく、かつ必要な型強度が
得られる脱煙鋳型材を提供するにある。
すなわち、従来技術のシェルモールド法に用いられる
鋳型材は、珪砂等の鋳型材基材に熱硬化性樹脂等を被覆
した樹脂被覆鋳物砂と、さらに必要に応じて、該樹脂被
覆鋳物砂に添加・混合された硬化促進剤やその他の添加
剤とからなる。また、この樹脂被覆鋳物砂に多孔性物質
を混合した鋳型材は、刺激性ガスの低減効果はあるもの
の、該効果を高めるために多孔性物質の混合量を増加さ
せると、該鋳型料により作製される型の強度が低下して
しまい、鋳造中に型が崩壊してしまうという問題があっ
た。
本発明者らは、鋳型製造時における煙や他の刺激性ガ
スの発生メカニズムを解明すべく各種の系統的実験や研
究を行った。その結果、鋳型製造時に発生する煙には、
熱硬化性樹脂の硬化反応によって発生する煙と潤滑剤と
して使用しているステアリン酸カルシウムの分解により
発生する煙の二つがあり、両者が同時に発生すると煙の
発生量が極めて増大していることが分かった。
そこで、熱硬化性樹脂の硬化反応によって発生する煙
は、該反応の際に樹脂成分量の一部が多孔性物質の細孔
中へ吸収され、硬化剤に対する樹脂の割合の減少による
硬化反応の促進により、未反応ガスの発生が低減するこ
と、およびステアリン酸カルシウム等の潤滑剤に起因す
る煙は水あるいは水蒸気によりより小さな分子量のガス
に分解されることに着眼した。
そして、多孔性物質中の細孔中に水ガラスを吸収さ
せ、必要な大きさの細孔にすることにより鋳型製造の加
熱時に適量の保有水を放出して未反応ガス等の分解を促
進するとともに、流動状態の樹脂成分を適量に吸収可能
な細孔にした無機保水材を、樹脂被覆鋳物砂に適量混合
して鋳型材料とすることにより、前記問題点を解決する
に至った。
〔第1発明の説明〕 発明の構成 本発明の脱煙鋳型材は、熱硬化性樹脂等を鋳型材基材
に被覆した鋳型材と、細孔構造を有し含水能力が30重量
%以上でかつ100〜250℃においても水分の吸脱着能力を
有するとともに水ガラスを含有した無機保水材とからな
り、該無機保水材の混合量が前記鋳物砂基材の1.5〜4.5
体積%であることを特徴とする。
発明の作用および効果 本発明の脱煙鋳型材は、鋳造用鋳型を製造するときに
煙、および刺激臭、異臭、有毒性ガス等の刺激性ガスの
発生量が少なく、かつ必要な型強度を得ることができ
る。
本発明の脱煙鋳型材が、上述のごとき優れた効果を発
揮するメカニズムについては、未だ必ずしも十分に明ら
かではないが、以下のように考えられる。
すなわち、本発明では、シェルモールド法に用いる鋳
型材として、一般的に使用に供されている構成材料に、
さらに水ガラス含有無機保水材を混合してなる。この無
機保水材は、細孔構造を有し100〜250℃においても水分
の吸脱着能力を有するとともに含水能力が30重量%以上
の無機保水材である。これより、鋳型の製造時等の加熱
時に、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤に起因する煙
は、該無機保水材から放出される保有水によってより小
さな分子量のガスに分解され、煙やその他の刺激性ガス
の発生が低減するものと思われる。また、フェノール樹
脂等の樹脂の硬化反応により発生する煙は、水または水
蒸気によりヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤の分解
が促進されるとともに、水が排出した無機保水材の細孔
の中に樹脂の主成分であるフェノールレジン等が吸収さ
れ、樹脂中成分量の変化および樹脂と硬化剤の割合の変
化により硬化反応が促進され、未反応ガスの発生が低減
するものと考えられる。さらに、鋳型の強度低下は無機
保水材の細孔の中にフェノールレジン等の樹脂が吸収さ
れることによるため、該無機保水材に適量の水ガラスを
含有させることにより鋳型の焼成工程において無機該保
水材の細孔に吸収される樹脂の量を適度に抑制し、煙や
刺激性ガスの発生量を低下させ、かつ鋳型強度の低下を
より小さくすることができるものと考えられる。また、
再生処理における750〜800℃の焼成工程により、水ガラ
ス含有の無機保水材は水ガラスのガラス化により体積収
縮を起こし、細孔形状も小さくなる。このため、篩工程
において再生砂中に残存する量も少なくなり、かつ樹脂
吸収能力が小さくなり、鋳型強度低下が大幅に小さくな
るものと考えられる。
〔第2発明の説明〕 以下に、前記第1発明をさらに具体的にした第2発明
を説明する。
本発明において用いられる熱硬化性樹脂等を鋳型材基
材に被覆した鋳型材、すなわち樹脂被覆鋳物砂は、該材
料の鋳型材基材(鋳物砂)の表面に、粘結材としての熱
硬化性樹脂を被覆してなるもので、さらに必要に応じて
樹脂の硬化促進を目的としてヘキサメチレンテトラミン
等の硬化材や鋳型材料作製工程における鋳物砂の粒同士
の固結防止や流動性を良くして充填密度を大きくするこ
とを目的としてステアリン酸カルシウム等の潤滑剤等の
添加剤を添加してなる。
ここで、鋳型材基材は、シェル鋳型の基材をなす耐火
性の砂状物質であり、具体的には珪砂、ジルコン砂、ク
ロマイト砂、オリビン砂、海砂、川砂、岩石を破砕して
作った砂等があり、それら一種類または二種類以上の混
合物を用いる。この鋳物砂は、流動性、充填性、じん
性、熱膨張性、凝固速度等を考慮して適宜な形状、大き
さ、種類のものを選択する。この鋳物砂の粒形は、丸形
または多角形等の球形様のものであることが好ましい。
それは、この場合には、砂の流動性がよく、比較的少量
の樹脂で高い型強度が得られ易く、また、鋳型の通気性
を良好ならしめるからである。
また、熱硬化性樹脂は、シェル鋳型材料の基材として
の鋳物砂及び無機保水材を相互に結合し、所定の鋳型形
状に造形する機能を有する粘結材であり、具体的には、
フェノール・フォルムアルデヒド樹脂、フェノール・フ
ルフラール樹脂等のノボラック系フェノール樹脂等を用
いる。
鋳物砂への樹脂の被覆は、ホットコート法、ドライホ
ットコート法、セミホットコート法、コールドコート
法、粉末溶剤法等の常法により、必要に応じて適宜添加
剤を加え行う。
ここで、樹脂の配合量は、鋳型材基材に対し1〜10wt
%であることが好ましい。この配合量は、その目的、無
機保水材および他の添加剤の添加量、製造条件により異
なるが、大略、鋳型材基材が珪砂である場合には1〜6w
t%、ジルコン砂を用いた場合には1〜4wt%がよい。ま
た、該鋳型材基材の粒径は、50μm〜1mmであることが
好ましい。
次に、無機保水材は、鋳型製造時等の加熱時に適量の
保有水を放出して硬化剤や潤滑剤等の分解を促進すると
ともに流動状態の樹脂成分を吸収可能な細孔を有する無
機保水材であって、100〜250℃においても水分の吸脱着
能力を有するとともに含水能力が30重量%以上の無機質
の保水材である。このような無機保水材を用いることに
より、鋳型製作時における煙や刺激性ガスの発生を低減
し、かつ鋳型の強度低下率を20%以下とすることができ
る。具体的には、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物、ヤ
シガラ炭が挙げられ、これらの一種または二種以上であ
る。また、これ以外でも、上記吸脱着能力及び含水能力
を有する物質、すなわち天然の多孔性無機物質や、無機
物質または繊維を多く含む有機物質を熱処理した無機多
孔質物質、さらには、これらの微粉末を単独または粘土
等の無機質系粘結材との混合物を固結して用いてもよ
い。また、これらのものを仮焼したものを用いてもよ
い。
ここで、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物は、含水珪
酸マグネシウム質を主成分とし、直径が0.005〜0.6μm
程度の繊維からなり、該繊維に平行に約10〜6Å程度の
長方形の断面を持つ細孔(チャンネル)が存在し、表面
に反応性に富む水酸基を有する。なお、マグネシウム或
いは珪素の一部がアルミニウム、鉄、ニッケル、ナトリ
ウム等に置換されているものでもよい。また、これらの
ものを、400〜800℃の温度範囲内で仮焼したものを用い
てもよい。
また、該無機保水材は、細孔が残留する程度に粉砕し
たものであれば何れの形で用いてもよいが、その大きさ
が鋳型材基材と同程度の50μm〜1mmの範囲であること
が好ましい。その中でも、鋳型材基材の粒度分布のうち
最大量を示す粒度以上の大きさが好ましく、特に149〜5
00μmであることがより好ましい。これは、無機保水材
の温度上昇が樹脂被覆鋳物砂の温度上昇と同じにする必
要があるからである。また、粒度が小さいと得られる鋳
型の強度が低下し、また煙低減効果が小さくなる。な
お、該無機保水材は、熱硬化性樹脂を被覆する前の鋳物
砂の粒度分布のうち、最大量を示す粒度より小さい粒度
を持つもの、特に149μm未満の大きさのものを10重量
%以下にした粒度分布を持つ顆粒状物質であることが好
ましい。すなわち、硬化反応において煙を無くするため
には無機保水材が該樹脂を吸収することが必要である
が、この樹脂吸収のために鋳型強度が低下する。従っ
て、小さい粒度のものが多いと樹脂が吸収される部位が
多く、かつ吸収される量が増加することとなり、鋳型の
強度低下が大きくなる。これより、小さい粒度のものを
少なくすることが好ましい。これらの粉砕は、ジョーク
ラッシャー、ハンマーミル、ローラーミル、破砕造粒
機、振動ミル、ピンミル、叩解機等を用い、湿式粉砕ま
たは乾式粉砕により行う。
含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物は、これを無機保水
材として鋳型材に用いた場合、鋳型強度低下率が約20%
と大きく、さらに再生処理をした鋳型材基材中に残存
し、この再生砂を利用して樹脂被覆鋳物砂を製作する際
に樹脂をよく吸収し、鋳型強度を大きく低下させる。ま
た、ヤシガラ活性炭は、煙や刺激性ガスの低減硬化を発
揮させる添加量の範囲では、鋳型強度低下率が許容範囲
の20%以内にすることができない。
このため、本発明の無機保水材、特に含水珪酸マグネ
シウム質粘土鉱物およびヤシガラ活性炭は、水ガラスを
含有してなる。この含有された水ガラスにより、鋳型作
製のための焼成時に、樹脂が無機保水材の細孔中に必要
以上に吸収されるのを防ぎ、これより鋳型の強度低下を
小さくし、さらに再生処理の際に無機保水材が収縮して
残留量が減少し、また残留したものは樹脂の吸収が減少
する。なお、該水ガラスは、水ガラス固形分で20〜35重
量%、より好ましくは25〜30重量%の水ガラス水溶液を
含水能力未満、即ち無機保水材の表面が水に濡れた状態
にならない量を、該無機保水材に含有させることが好ま
しい。この場合、水ガラス含有前後の乾燥無機保水材の
重量変化により、水ガラスの固形分が無機保水材中に20
〜35重量%残ることが分かった。これは、該固形分含有
量が20重量%未満の水ガラス水溶液の場合は、無機保水
材の中に適量の固形分を含有させるために多くの水ガラ
ス水溶液が必要となり、無機保水材表面に水溶液が残存
するので好ましくない。また、該固形分含有量が35重量
%を越える水ガラス水溶液の場合は、水溶液の粘度が高
く、無機保水材の細孔に入りにくく、無機保水材表面に
水ガラス溶液が残存するので好ましくない。すなわち、
このように無機保水材の表面に水ガラス水溶液が残存し
た場合、水ガラスを含有した無機保水材を約100℃で乾
燥しても、水ガラス固形分が無機保水材表面に多く残
る。これら無機保水材表面の水ガラス固形分は、水分を
多く含有しており、無機保水材表面に水分が吸着した場
合と同様の状態となる。このため、該無機保水材と樹脂
被覆鋳物砂とを混合した鋳型材は、混合の際に固結した
り、鋳型強度低下が大きいという問題が発生する。な
お、保水材の前記水ガラス含有量は、水ガラス固形分で
25〜30重量%である場合、特に好ましい。
この水ガラス含有無機保水材の作製方法としては、前
記所定の固形分含有の水ガラス溶液を無機保水材中に完
全に吸収するようにすればよく、特に限定されるもので
はない。なお、水ガラス含有無機保水材の具体的作製方
法の一例を説明すると以下のようである。すなわち、保
水材10g当り固形分20〜35%の水ガラス水溶液7〜10cc
を、室温〜50℃で前記無機保水材に吸収させ、該保水材
中の水含有量が所定量、好ましくは5〜20重量%となる
まで乾燥することにより得られる。これは、焼成時の煙
の発生を低減するために、無機保水材が焼成前に所定の
水を保有していることが必要だからである。すなわち、
水または水蒸気がステアリン酸カルシウムの分解やヘキ
サメチレンテトラミンの分解促進に必要なためである。
該保有量が5重量%未満の場合はステアリン酸カルシウ
ムやヘキサメチレンテトラミンの混合量に対して水分量
が不足し、煙や刺激性ガスの低減効果が十分みられず、
水ガラス含有無機保水材表面に水が出ると鋳型材料の混
合時に樹脂被覆鋳物砂を固結させ鋳型の強度低下の原因
となるので好ましくない。なお、水ガラス含有無機保水
材は、再生処理のために750〜800℃程度に焼成したと
き、水ガラスのガラス化および水ガラスとの反応で無機
保水材が収縮し細孔がつぶれ、また顆粒形状も小さくな
る。このため、該再生処理物後の再生砂中への残存が減
り、かつ細孔が小さくなることにより、樹脂被覆鋳物砂
の製作時に樹脂吸収量が減り、鋳型強度の低下が抑制さ
れる。
本発明の脱煙鋳型材は、前記樹脂被覆鋳物砂と前記水
ガラス含有無機保水材とからなる。
ここで、鋳型材基材に熱硬化性樹脂等を被覆した鋳型
材(樹脂被覆鋳物砂)と水ガラス含有無機保水材との混
合割合は、鋳型基材(鋳物砂)に対して該無機保水材が
1.5〜4.5体積%である。これは、該混合量が1.5体積%
未満の場合には、脱煙鋳型の製造を行う場合や鋳造時に
発生する煙および刺激性ガスの発生量を十分に低減せし
めることが難しいからである。また、無機保水材の混合
量が4.5体積%を越える場合には、該材料を用いて製造
された鋳型の強度低下をより小さくすることができな
い。但し、型強度低下率が20%で良い場合には、該混合
量は7.5体積%以下でもよい。なお、この混合量が、4.0
〜4.2体積%である場合には、本発明の効果をより一層
奏し得るのでより好ましい。
また、本発明の脱煙鋳型材は、該材料の優れた性能を
損なわない程度に他の添加剤を適宜添加・混合すること
ができる。具体的には、鋳型製造工程における樹脂の硬
化促進または鋳込工程における樹脂の熱分解の促進を目
的として酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マンガン、酸化チタン
等の金属酸化物等が、鋳造後の型の崩壊性を改良するも
のとして樹脂中にハロゲン系物質等が、鋳込時の型張り
を防ぐものとして鋼球、バラス、珪砂等の充填剤が、製
品鋳肌の確保のために石炭粉、ピッチ粉、コークス粉、
黒鉛粉末、ギルソナイト等の可燃性揮発物質が、珪砂等
鋳物砂の表面に均一に樹脂を被覆するためにケロシン等
の湿潤剤がある。これらの添加剤は、その目的に応じ、
樹脂中に含ませてもよいし、または鋳物砂に樹脂を被覆
する際に、更には脱煙鋳型材を混合調整する際等、適宜
の時期に混合する。
本発明の脱煙鋳型材の代表的な調整方法を簡単に示す
と以下の様である。
先ず、常法に従い鋳型材基材にフェノール・ホルムア
ルデヒド樹脂等の樹脂、ヘキサメチレンテトラミン等の
硬化剤、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を順に被覆
して得られた樹脂被覆鋳物砂を用意する。
次に、細孔構造を有し100〜250℃においても水分の吸
脱着能力を有するとともに含水能力が30重量%以上の無
機保水材を用意し、水ガラスを含浸させた後所定の水分
量となるように調整する。なお、該無機保水材の形状や
大きさは、適宜の形状・大きさのものとし、また、この
粉砕工程の前または後で400〜800℃に仮焼したものを用
いてもよい。
次に、所定の水分を保有する無機保水材を、混合量が
前記鋳型材基材の1.5〜4.5体積%の所定量となるように
添加し均一に分散する様に混合し、さらに該混合物に必
要に応じて適宜添加剤を加え、モルタルミキサー、スピ
ードマラー、スピードミキサー等の混練機を用いて均一
に分散するように混練し、本発明にかかる脱煙鋳型材を
得る。なお、添加剤の添加時期は、水ガラス含有無機保
水材の添加前であってもよい。また、必要な添加剤を、
樹脂被覆鋳物砂を作製する際に、該樹脂に添加して被覆
してもよい。
この様にして得た本発明にかかる脱煙鋳型材は、概念
的に1図に示す如く、樹脂1を被覆した鋳物砂2と、水
ガラス含有無機保水材3とからなる。
〔実施例〕
以下に、本発明の実施例を説明する。
第1実施例 無機保水材として含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物お
よびヤシガラ活性炭を用い、種々の固形分量の水ガラス
を含有させて水ガラス含有無機保水材を作製し、次いで
鋳物砂とノボラック系フェノール樹脂と水ガラス含有無
機保水材とを用いて鋳型材料を製造した後、該材料を用
いて鋳型を成形し、性能評価を行った。
先ず、無機保水材として含水能力が46.7重量%で粒径
149〜297μmの含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物(試料
番号1〜10)および含水能力が39.7重量%で粒径149〜2
97μmのヤシガラ活性炭(試料番号11)を用意した。次
いで、第1表に示す固形分の水ガラス水溶液と該無機保
水材とを40℃の炉中に入れ、該炉中で無機保水材10g当
り第1表に示す添加量で添加し、混合した。この後、10
0℃の炉中で約40分間乾燥して、第1表に示す水ガラス
固形分量、含水能力の水ガラス含有無機保水材を作製し
た(試料番号1〜11)。なお、含水量は、100℃で乾燥
した無機保水材に約40mgずつの水を加え、無機保水材の
表面が水に濡れた状態になったときの水の量で示した。
次に、市販の珪砂(三河珪石(株):粒度6号)と、
該珪砂に対し2重量%のノボラック系フェノール樹脂、
前記水ガラス含有無機保水材を珪砂に対し4体積%添加
し、小型モルタルミキサーで混合し、本実施例の脱煙鋳
型材を得た(試料番号1〜11)。
次に、この脱煙鋳型材を用い、10mm×10mm×135mmが
3本とれる金型により、型温250℃、炉温350℃の1分の
条件で鋳型を作製した。このとき、鋳型の成形性は大変
良好であった。また、鋳型の製造の加熱の際の発煙量の
観察および発生臭の官能試験により行った結果、発煙は
認められず、また刺激臭・異臭の発生も認められなかっ
た。また、型の強度試験を行った。その結果を、第1表
に示す。なお、無機保水材を添加しない鋳型の強度は、
平均52kg/cm2であった。また、前記無機保水材を、炉温
度800℃で5時間焼成し、炉冷して、焼成後の無機保水
材の含水能力および48〜100メッシュ(297μm〜149μ
m)の焼成前の量に対する割合(残存量)を調べた。そ
の結果を、第1表に示す。なお、この含水能力により細
孔の大きさを、残存量により収縮状態を判断することが
できる。
比較のために、水ガラスを含有しない含水珪酸マグネ
シウム質粘土鉱物を無機保水材としたもの(試料番号C
1)、水ガラスに代えてCaCl2を含有させた含水珪酸マグ
ネシウム質粘土鉱物を無機保水材としたもの(試料番号
C2)、水ガラスを含有しないヤシガラ活性炭を無機保水
材としたもの(試料番号C3)、含水能力が30重量%未満
の鹿沼土を無機保水材を用いたもの(試料番号C4〜C
7)、含水能力が30重量%未満の赤玉土を無機保水材を
用いたもの(試料番号C8〜C10)を比較用無機保水材と
し、第2表以外の条件は前記実施例と同様にして比較用
無機保水材および比較用鋳型材を作製し、同様の性能評
価を行った。その結果を、第2表に示す。また、比較用
無機保水材の焼成試験を、前記実施例と同様に行った。
その結果を、第2表に示す。
その結果、試料番号3、4、7、8、11に示した水ガ
ラス含有無機保水材を用いた場合は、強度低下率が小さ
く、12%以下になっている。これは、無機保水材を添加
しない鋳型材で強度試験数を増加したときのバラツキ範
囲10kg/cm2に近い値である。これらは、水ガラスを含有
しない無機保水材に対して40%以上の強度低下改善効果
が得られた。なお、強度低下率が少ないが含水能力が大
きいのは、水ガラス内に多くの水を含むためである。し
かし、水ガラス内から水がでた後に小さい孔は残るが、
樹脂の吸収が少ないため、鋳型の強度低下が小さくなる
と思われる。また、これら水ガラス含有無機保水材800
℃で焼成すると、48〜100メッシュのものが焼成前の84
重量%以下となり、体積収縮を起こしていると考えられ
る。さらに、この焼成後の含水能力は、約18重量%以下
となり、細孔が少なくなっていることが分かる。
次に、試料番号5は、水ガラス水溶液の粘度が高いた
めか無機保水材への吸収がやや遅い。また、水ガラス3
号(固形分38.5%)そのままでは、無機保水材が吸収さ
れず、大きな固まりを形成してしまう。一方、試料番号
6は、水ガラス水溶液量が多く、無機保水材表面に残存
する。これらのものは、無機保水材表面に水分を有する
ので、強度低下を小さくすることが難しいものと思われ
る。また、理由は明らかではないが、試料番号1、9、
10のように水ガラス固形分が少ないものは、水ガラスを
含有しない無機保水材(比較例:試料番号C1)よりも、
鋳型強度低下率が大きくなった。
一方、比較例の試料番号C2は、水への溶解度が大き
く、無機保水材の細孔中に多くの固形分を残すと考えら
れるCaCl2を含有させたものである。この場合、鋳型強
度低下率は非常に小さいが、本比較例のように試料が小
さいサイズの場合でも塩素系の強い刺激臭が発生した。
また、含水能力が30重量%未満の鹿沼土および赤玉土
に水ガラスを含有させた比較用無機保水材を用いた場合
は、水ガラス含有量が少ない場合は鋳型強度低下がほぼ
同程度であるが、該水ガラス含有量が増加すると逆に水
ガラスを含有しないものより鋳型強度低下が大きくなっ
てしまう。これは、細孔が少ないので水ガラスの含有能
力が小さいために、水ガラスが無機保水材の表面に残存
するためと思われる。
以上のように、含水能力が30重量%以上の無機保水材
の場合、水ガラスを含有させることにより鋳型の強度低
下を改善することが分かる。また、無機保水材のように
含水能力のみでは特定できないが、無機保水材の細孔中
に残存する固形分が20〜35重量%になるように含有させ
ることにより、鋳型強度低下の改善効果が大きくなる。
なお、無機保水材の表面には水ガラス水溶液が、さらに
乾燥後に該表面に水ガラスが残らないようにする必要が
ある。
第2実施例 前記第1実施例の試料番号3で得られた水ガラス含有
含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物を用い、該水ガラス含
有無機保水材を800℃×5時間で1回焼成したもの(試
料番号12)、同様に3回焼成したもの(試料番号13)、
水ガラスを含有しない含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物
を同様に1回焼成した比較用無機保水材(試料番号C1
1)を用意した。
次に、市販の珪砂(三河珪石(株):粒度6号)と、
該珪砂に対し4体積%の前記焼成した各水ガラス含有無
機保水材を混合して鋳物砂を作製し、該鋳物砂に対し2.
5重量%のノボラック系フェノール樹脂、該樹脂に対し
て15重量%のヘキサメチレンテトラミン、鋳物砂に対し
て0.1重量%のステアリン酸カルシウムをミックスマー
ラに入れて順次混合し、鋳型材を得た。
次に、この鋳型材を用いて、前記第1実施例と同様に
して、鋳型を作製した。このとき、鋳型の成形性は大変
良好であった。
次に、型の強度試験を前記第1実施例と同様にして行
った。その結果、鋳型の強度低下率は、試料番号12が28
%、試料番号13が24%、比較例としての試料番号C11が5
5%であった。このように、水ガラス含有のものは、含
有しないものに比べて約半分以下の低下率であった。ま
た、焼成回数が1回のものより3回のものの方が、僅か
ではあるが型強度低下率が小さくなり、繰り返し毎に無
機保水材の細孔が少なくなっていることが分かる。
また、再生処理した場合、鋳型材基材中にどのくらい
無機保水材が残っているかを分離・測定することは難し
い。従って、第1表のように、使用する大きさの無機保
水材として残存する量を添加量の77重量%、通常用いら
れるように使用する鋳型材基材は新しい基材50体積%、
再生した基材50体積%の割合で用い、水ガラス含有無機
保水材を4体積%添加すると、繰返した後に鋳型材基材
に最終的に残る無機保水材は約1.6体積%に収束し、新
しい加えていく水ガラス含有無機保水材の半分以下の量
であり、さらに残った無機保水材は繰返し毎に強度低下
が小さくなることを考慮すれば、本実施例の水ガラス含
有無機保水材は実用上問題なく利用することができる。
第3実施例 鋳物砂とノボラック系フェノール樹脂と水ガラス含有
無機保水材を用いて鋳型材料を製造した後、該材料を用
いて鋳型を成形し、鋳込みを行い、性能評価を行った。
先ず、無機保水材として、含水能力が46.7重量%、粒
径が149〜297μmの含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物お
よび含水能力が39.2重量%、粒径が149〜297μmのヤシ
ガラ活性炭からなる無機保水材を用意した。次いで、24
%固形分の水ガラス水溶液と該無機保水材とを40℃の炉
中に入れ、該炉中で無機保水材10gに対し水ガラス水溶
液を9ccの割合で混合した。この後、100℃の炉中で約40
分間乾燥して、第3表に示す含水能力、含水量、水ガラ
ス固形分含有量の水ガラス含有無機保水材を作製した
(試料番号14〜25)。
次に、市販の珪砂(三河珪石(株):粒度6号)と、
該珪砂に対し2重量%のノボラック系フェノール樹脂、
該樹脂に対して15重量%のヘキサメチレンテトラミン、
珪砂に対して0.1重量%のステアリン酸カルシウムを小
型スピードミキサーに入れて順次混合し、樹脂被覆鋳物
砂を作製した。さらに、前記水ガラス含有無機保水材を
珪砂に対し第3表に示す量を添加し、小型モルタルミキ
サーで混合し、本実施例の脱煙鋳型材を得た(試料番号
14〜25)。
次に、この脱煙鋳型材を、予め250℃に加熱された外
径80mm×内径60mm×高さ135mm×底厚さ15mm、抜き勾配
が2度のカップ状製品用の鉄製の金型に入れ、該型をシ
リコニット炉で400℃に2分間加熱・保持した後、炉か
ら取り出し金型をはずして鋳型を得た。
このとき、鋳型の成形性は大変良好であった。また、
鋳型の製造の加熱の際の発煙量の観察および発生臭の官
能試験により行った。その結果を、第4表に示す。尚、
表中、発煙状況は「◎」は「発煙は認められない」、
「△」は「発煙微かに認められる」、「×」は「少量の
発煙あり」を示す。また、表中、刺激臭は「◎」は「刺
激臭は認められない」、「△」は「刺激臭微かに感じら
れる」を示す。第4表より明らかの如く、添加量1.5体
積%以上のもの及び含水量5重量%以上のものを用いた
場合は、発煙は認められず、また刺激臭・異臭の発生も
認められなかった。次に、型の強度試験を行った。その
結果を、第4表に示す。同表より明らかの如く、鋳型の
強度低下が約7%と許容範囲20%を大きく下回った。
さらに、鋳造後の型材を回収し、再生砂としての評価
を実施した。すなわち、前記樹脂被覆鋳物砂作製工程に
おいて、珪砂の50%をこの水ガラス含有無機保水材が入
った再生砂に置き換え、それ以外は前記と同様にして脱
煙鋳型材を作製し、同様に評価を行った。その結果、鋳
型の製造時の煙の発生状況、刺激臭の程度は再生砂を用
いないものと全んど変わらず良好で、型強度の低下の程
度も略同じ値を示した。また、該鋳型内に鋳鉄およびア
ルミニウム溶湯を鋳込んだが、型崩れはなかった。
比較のために、水ガラスを含有しない前記含水珪酸マ
グネシウム質粘土鉱物を無機保水材としたもの(試料番
号C12)、無機保水材として規定の量より少ない量の水
ガラス含有含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物を添加した
もの(試料番号C13)、無機保水材として規定の量より
多い量の水ガラス含有含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物
を添加したもの(試料番号C14)、含水能力が30重量%
未満の無機保水材を用いたもの(試料番号C15〜C22)を
比較用無機保水材とし、第5表以外の条件は前記実施例
と同様にして比較用鋳型材を作製し、同様の性能評価を
行った。その結果を、第6表に示す。第6表より明らか
の如く、試料番号C12およびC14の比較例の場合は、型強
度が本実施例よりも大きく低下していることが分かる。
また、試料番号C13の場合は、型強度の低下は少ないも
のの、鋳型製造時、鋳込み後の発煙量が少量認められ、
また、刺激臭も感じられた。また、試料番号C15〜C22の
場合は、型強度が本実施例よりも大きく低下しているこ
とが分かる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明にかかる脱煙鋳型材の概念図である。 1……熱硬化性樹脂 2……鋳型材基材 3……水ガラス含有保水材
フロントページの続き (72)発明者 平野 春好 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式 会社豊田自動織機製作所内 審査官 岡田 和加子

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱硬化性樹脂等を鋳型材基材に被覆した鋳
    型材と、細孔構造を有し含水能力が30重量%以上でかつ
    100〜250℃においても水分の吸脱着能力を有するととも
    に水ガラスを含有した無機保水材とからなり、該無機保
    水材の混合量が前記鋳型材基材の1.5〜4.5体積%である
    ことを特徴とする脱煙鋳型材。
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