JP2901571B2 - 列車人身事故防止システム - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、駅構内のプラット
ホームにおける列車人身事故、特に発車直後に乗降客が
乗降ドアに挟まれた状態で列車に引きずられる人身事故
の防止システムに関する。

【０００２】

【従来の技術】通勤通学者による朝夕ラッシュ時の駅構
内プラットホームは非常に混雑が激しく、乗降する人の
動きも複雑を極める。そのため、無理に乗車しようと試
みた乗客が発車直後の列車の乗降ドアに挟まれたまま、
プラットホーム上を引きずられる事故が多発している。

【０００３】従来より、そうした列車人身事故防止にむ
けて、次のような防止システムがとられている。プラッ
トホームの要所要所に監視用テレビカメラを設置し、プ
ラットホーム上の乗降客の動作状況をカメラからの撮像
による第１の状況データとして、所定時間だけ記憶して
おく。続いて送られてきた第２の状況データを前回の第
１の状況データと比較し、前後の状況の変化が予め定め
ている所定値を超えた場合、列車を非常停止させてい
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、係る従来の
列車人身事故防止システムにあっては、テレビ撮像によ
る第１，第２の状況を監視し、一定時間経過後にその状
況が変化したことで、緊急事態発生と判断して列車停止
処置を行っている。そのため、撮像上で乗降客が通常時
と異なる動作や行動をとったり、あるいは線路上で保守
工事作業員が撮像として捕らえられたりした場合、それ
を人身事故と誤判断し、列車を緊急停止させてしまうと
いった不都合がある。

【０００５】したがって、本発明の目的は、混雑する駅
構内プラットホームにおいて、乗降客が実際に列車事故
に遭遇したか否かを正確に見極めて判断し、迅速かつ的
確に列車を停止させて、人身に及ぶ被害を最小限に抑え
ることができる列車人身事故防止システムを提供するこ
とにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の列車人身事故防
止システムは、駅構内プラットホーム上の乗降客が異常
移動する動態速度を検出し、かつ発車直後の列車の速度
を検出して、両検出速度が一致したとき前記列車を緊急
停止するように構成している。

【０００７】この場合のシステムは、具体的には、プラ
ットホームの全長にわたって適宜部位に所定ピッチで配
置され、プラットホーム上で異常移動する乗降客の動態
を検出する複数の人身動態検出センサと、プラットホー
ムから出発する数両編成よりなる列車のいずれかの車両
の台車部に設置された発光手段と、線路に臨むプラット
ホームの側壁に所定ピッチで配置され、発光手段からの
光を受光する複数の受光手段と、人身動態検出センサか
ら送られてきた動態検出信号に基づいて乗降客の移動速
度を算出する動態速度測定手段と、発光手段からの光を
受光した受光手段の検出信号に基づいて列車の走行速度
を算出する列車速度測定手段と、動態速度測定手段と列
車速度測定手段から送られてきたそれぞれの速度信号を
比較し、一致していることの判定に基づいて列車緊急停
止指令信号を送出する速度データ処理部と、この速度デ
ータ処理部から送られた列車緊急停止指令信号に基づい
て列車に対して緊急停止信号を出力する防護無線部と、
によって構成することができる。

【０００８】また、人身動態検出センサは、乗降客が列
車の乗降ドアに挟まれた状態で異常移動する動態を検出
するものであり、この場合、発光手段としては、複数両
編成の列車の最後尾車両に設けられていることが好まし
い。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、本発明による列車人身事故
防止システムの実施の形態について、図を参照して詳細
に説明する。

【００１０】図１および図２は、本実施の形態の防止シ
ステムが設備されている駅構内プラットホーム１におい
て、発車する列車３を示す斜視図およびＡ−Ａ線からの
側面断面図である。数百メートルにも及ぶホーム１の一
端から他端までのほぼホーム全長にわたって、それを覆
う屋根２の梁等を利用し、例えば１メートルピッチの間
隔で複数個の人身動態検出センサ４が取り付けられてい
る。

【００１１】また、図２のように、ホーム１の線路に臨
む側壁１ａを利用して、やはり１メートルピッチの間隔
で複数個のフォトダイオード等による受光器５が取り付
けられている。

【００１２】一方、数両から数１０両編成による列車３
においては、その編成車両３ａ，３ｂ・・・３ｎのう
ち、最後尾車両３ｎの台車の一個所に１個の発光ダイオ
ード（ＬＥＤ）等による発光器６が取り付けられてい
る。

【００１３】図３は、以上各機器や設備による本実施の
形態のシステム構成を示すブロック図である。まず、動
態速度測定手段１０を有し、ここには前述の１メートル
間隔で設けた人身動態検出センサ４によってプラットホ
ーム１上の乗客７の動態を検出した信号が入力されるよ
うになっている。また、列車速度測定手段１１を有し、
ここには最後尾車両３ｎの発光器６による発光を前述の
ホーム側壁１ａに１メートル間隔で設けた受光器５が受
光したことの信号が入力される。

【００１４】さらに、システムは、速度データ処理部１
２と防護無線部１３が備わっている。速度データ処理部
１２は、動態速度測定手段１０および列車速度測定手段
１１からそれぞれの速度測定値信号を受け取り、両速度
測定値を比較して一致しているか否かを判定するように
なっている。防護無線装置１３は、速度データ処理部１
２から判定に基づく指令信号を受け取り、発車進行中の
列車３に非常停止信号を無線で出力して送信可能となっ
ている。

【００１５】したがって、係る構成によって、本実施の
形態の列車人身事故防止システムは以下のように動作お
よび作用する。

【００１６】プラットホーム１上において、不幸にも乗
客７が発車し始めた列車３の乗降ドアに挟まれたまま引
きずられる事態が発生したとする。引きずられた当該乗
客７の動態は、その身体の移動を上方の屋根梁に１メー
トル置きに設けた人身動態検出センサ４によって次々に
検出される。この動態検出信号は動態速度測定手段１０
に向けて送られる。動態速度測定手段１０では、人身動
態検出センサ４から次々に送られてくる乗客７の引きず
られ移動による動態検出信号を受け取り、移動距離と時
間との相関によって乗客７の動態速度を演算する。算出
された乗客７の動態速度の値は変換信号でもって速度デ
ータ処理部１２に送られる。

【００１７】この乗客７に対する処理と同期して、一方
では、発車開始して走行する列車３の最後尾車両３ｎに
設けた発光器６が移動する。この移動する発光器６から
の発光はホーム側壁１ａの１メートル置きに設けた受光
器５に次々に受光され、受光したことの検出信号が順に
列車速度測定手段１１に送られる。この列車速度測定手
段１１においては、１メートル置きの受光器５から次々
に送られてくる受光信号を受け取り、移動距離と時間と
の相関によって列車３の速度を演算する。算出された列
車３の走行速度の値は変換信号でもって速度データ処理
部１２に送られる。

【００１８】したがって、速度データ処理部１２におい
ては、送られてきた乗客７の動態速度値の信号と列車３
の走行速度値の信号とを比較し、それら速度データ値の
大小を判定して、両速度が同等であれば、それを乗客７
の引きずり事故発生と判断する。この判断により速度デ
ータ処理部１２は防護無線装置１３に対して列車３を緊
急停止させるべく停止指令の信号を送出し、その信号を
受け取った防護無線装置１３は走行中の列車３に緊急停
止信号を送り、列車３を緊急停止させる。

【００１９】

【発明の効果】以上説明したように、本発明による列車
人身事故防止システムは、駅構内プラットホーム上で発
生した列車による乗降客引きずり事故に対して、人身の
移動速度と列車の速度とを検出して一致した場合に列車
を緊急停止させるので、従来システムのような誤作動も
なく、実際に発生した人身事故を的確かつ迅速に判断処
理して人身におよぶ被害を最小限にとどめる優れた効果
を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による列車人身事故防止システムの実施
の形態が設置された駅構内プラットホームと列車を示す
斜視図である。

【図２】図１のＡ−Ａ線からの正面断面図である。

【図３】本実施の形態のシステム構成を示すブロック図
である。

【符号の説明】

１ プラットホーム ２ ホーム屋根梁 ３ 列車 ３ｎ 最後尾車両 ４ 人身動態検出センサ ５ 受光器 ６ 最後尾車両に設けた発光器 ７ 乗客 １０ 動態速度測定手段 １１ 列車速度測定手段 １２ 速度データ処理部 １３ 防護無線部

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】駅構内プラットホーム上の乗降客が異常移
   動する動態速度を検出し、かつ発車直後の列車の速度を
   検出して、両検出速度が一致したとき前記列車を緊急停
   止するように構成したことを特徴とする列車人身事故防
   止システム。
2. 【請求項２】前記プラットホームの全長にわたって適宜
   部位に所定ピッチで配置され、プラットホーム上で異常
   移動する前記乗降客の動態を検出する複数の人身動態検
   出センサと、 前記プラットホームから出発する数両編成よりなる前記
   列車のいずれかの車両の台車部に設置された発光手段
   と、 線路に臨む前記プラットホームの側壁に所定ピッチで配
   置され、前記発光手段からの光を受光する複数の受光手
   段と、 前記人身動態検出センサから送られてきた動態検出信号
   に基づいて前記乗降客の移動速度を算出する動態速度測
   定手段と、 前記発光手段からの光を受光した前記受光手段の検出信
   号に基づいて前記列車の走行速度を算出する列車速度測
   定手段と、 前記動態速度測定手段と前記列車速度測定手段から送ら
   れてきたそれぞれの速度信号を比較し、一致しているこ
   との判定に基づいて列車緊急停止指令信号を送出する速
   度データ処理部と、 この速度データ処理部から送られた列車緊急停止指令信
   号に基づいて前記列車に対して緊急停止信号を出力する
   防護無線部と、を備えたことを特徴とする請求項１に記
   載の列車人身事故防止システム。
3. 【請求項３】前記人身動態検出センサは、前記乗降客が
   前記列車の乗降ドアに挟まれた状態で異常移動する動態
   を検出することを特徴とする請求項２に記載の列車人身
   事故防止システム。
4. 【請求項４】前記発光手段は、前記列車の最後尾車両に
   設けられていることを特徴とする請求項２に記載の列車
   人身事故防止システム。