JP2899637B2 - 耐熱エナメル塗料組成物及び耐熱エナメル電線 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は耐熱エナメル塗料組成物及び同塗料組成物を
導線に塗布、焼付けてなる耐熱エナメル電線に関する。

（従来の技術） 耐熱性の電気機器用エナメル電線には、耐熱区分が18
0℃クラス（Ｈ種）のものとしてポリエステルイミド
線、ポリアミドイミド線、さらに180℃以上のクラス
（Ｃ種）のものとしてポリイミド線が知られている。そ
して、これらの電線は耐熱性に優れているが、ポリエス
テル線やホルマール線に較べて、エナメル線の焼付け速
度がおそく、塗装・焼付けの作業性に劣っている。ま
た、ポリアミド線は、一般的に用いる塗料が吸湿現象及
びそれにもとづく白化現象を起こしやすく、貯蔵安定性
に欠けている。

焼付け速度の向上については、ポリアミドイミド塗料
に分子量800以上で、エポキシ当量400以上のビスフェノ
ール系エポキシ樹脂を配合することにより改良すること
（特公昭62−54147号公報）が提案されたが、この場合
に塗料の貯蔵安定性が改良されず、実用性に問題があ
る。

（発明の課題） 本発明は、貯蔵安定性に優れ、耐熱性及び機械的特性
に優れた焼付塗膜を与えることができる耐熱性エナメル
塗料組成物を提供すること、及び耐熱性及び機械特性に
優れた耐熱エナメル電線を提供することを目的とするも
のである。

（課題の解決手段） 本発明の耐熱エナメル塗料組成物は、 （Ａ）１分子中に少なくとも２個のマレイミド基を有す
るポリマレイミド化合物100重量部、 （Ｂ）一般式 （式中、ｎは平均値で３〜15の数を示す。） で表わされるエポキシ化合物50〜600重量部、 （Ｃ）炭素数１〜４のアルキル基で置換されたモノ−若
しくはジ−アルキルフェノール化合物から選ばれた少な
くとも１種のフェノール化合物５〜60重量部、 （Ｄ）一般式 （式中、R¹及びR²はそれぞれ独立に水素原子、メチル基
又はエチル基を示す。） で表わされるジアミン化合物10〜50重量部、並びに
（Ｅ）安定化イソシアネート化合物、メラミンホルムア
ルデヒド樹脂及びフェノールホルムアルデヒド樹脂から
選ばれた少なくとも１種の樹脂成分100〜700重量部 を含有してなる組成物である。

また、本発明の耐熱エナメル電線は、上記の耐熱エナ
メル塗料組成物を導線に塗布、焼付けてなる電線であ
る。

本発明における（Ａ）成分のポリマレイミド化合物と
しては、たとえば4,4′−ジアミノジフェニルメタンビ
スマレイミド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフ
ェニルメタンビスマレイミド、3,3′,5,5′−テトラメ
チル−4,4′−ジアミノジフェニルメタンビスマレイミ
ド、3,3′−ジアミノジフェニルメタンビスマレイミ
ド、一般式 （式中、ｍは平均値で０〜４の数である。）で表わさ
れるポリマレイミド化合物、及び一般式 （式中、Ｘは水素原子、ハロゲン原子、炭素数１〜４
のアルキル基、同炭素数のアルコキシ基である。） で表わされる四官能マレイミド化合物等があげられる。

また、（Ｂ）成分の前記の一般式（Ｉ）で表わされる
エポキシ化合物としては、市販品のエピコート1004（ｎ
＝3.4）、同1007（ｎ＝７）、同1009（ｎ＝11）〔以上
はいずれも油化シェルエポキシ株式会社商品名であり、
ｎの値は前記一般式（Ｉ）のｎの値である。〕などがあ
げられる。平均重合度を示すｎの値が３未満になると、
得られるエナメル線の可撓性や密着性が悪くなるし、ｎ
の値が15を超えると塗料粘度の上昇のため、不揮発分濃
度が低下し、焼付速度がおそくなる。

（Ｂ）成分の含有割合は、（Ａ）成分100重量部に対
して50〜600重量部、好ましくは80〜500重量部である。
（Ｂ）成分の割合が少なすぎるとエナメル線の伸び、可
撓性及び密着性が悪くなるし、多すぎると耐熱性が悪く
なる。

また、（Ｃ）成分のモノ−若しくはジ−アルキルフェ
ノール化合物としては、たとえばｏ−クレゾール、ｐ−
クレゾール、2,6−キシレノール、２−エチルフェノー
ル、４−ｔ−ブチルフェノールなどがあげられる。

（Ｃ）成分の含有割合は、（Ａ）成分100重量部に対
して５〜60重量部、好ましくは８〜40重量部である。
（Ｃ）成分の割合が少なすぎると塗料の貯蔵安定性が悪
くなるし、多すぎるとエナメル線の表面に粒状粒子やザ
ラツキが生じる。

また、（Ｄ）成分の前記一般式（II）で表わされるジ
アミンとしては、たとえば4,4′−ジアミノジフェニル
メタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニル
メタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノ
ジフェニルメタン、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノ
ジフェニルメタンなどがあげられる。前記一般式（II）
におけるR¹やR²が炭素数が３よりも多いアルキル基にな
ると、得られるエナメル線の耐熱性が悪くなる。

（Ｄ）成分の含有割合は、（Ａ）成分100重量部に対
して10〜50重量部、好ましくは12〜30重量部である。
（Ｄ）成分の割合がこの範囲外になると、塗料の貯蔵安
定性が悪くなったり、沈でん物が生成する。

さらに（Ｅ）成分のうちの安定化イソシアネート化合
物としては、たとえばトリレンジイソシアネート（TDI
と略称）、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート
（MDIと略称）などのフェノール化合物との付加物、TDI
やMDIとトリメチロールプロパンの反応物にフェノール
化合物を付加させたものなどがあげられる。また、安定
化イソシアネート化合物の代りにメラミンホルムアルデ
ヒド樹脂やフェノールホルムアルデヒド樹脂を、（Ｅ）
成分として使用することができる。これらの（Ｅ）成分
は、２種以上を併用してもよい。

（Ｅ）成分の含有割合は、（Ａ）成分100重量部に対
して100〜700重量部、好ましくは130〜500重量部であ
る。（Ｅ）成分の割合が少なすぎると、エナメル線の耐
熱性、可撓性、密着性が悪くなるし、多すぎると塗料の
貯蔵安定性が悪くなるし、エナメル線の耐熱性が悪くな
る。

本発明の耐熱エナメル塗料組成物は、使用に当って溶
剤を添加するのが一般的であり、その溶剤としては、た
とえばグリコールエーテル類、グリコールエーテルアセ
テート類、グライム類、ケトン類、芳香族炭化水素類、
その他塗料成分に対して化学的に不活性な各種の溶剤
を、単独で、又は２種以上組合わせて使用することがで
きる。

本発明の耐熱エナメル塗料組成物を用いてエナメル電
線を製造するには、銅やアルミニウムなどの導線に、そ
の塗料組成物を溶剤に溶解したものを、常法にしたがっ
て塗布し、焼付ける。その焼付け温は200〜500℃、好ま
しくは250〜450℃である。

本発明の塗料組成物は、ポリエステルイミド塗料、ポ
リアミド塗料、ポリイミド塗料に較べて、貯蔵安定性に
優れており、かつ焼付速度が極めて速く、塗布・焼付け
の作業性に優れている。しかも、得られるエナメル電線
は、耐熱性及び機械的特性に優れている。

（実施例等） 以下に、実施例及び比較例をあげてさらに詳述する。
これらの例におけるエナメル電線の製造は、有効長3mの
電気炉を用いて、直径0.35mmの銅線に焼付皮膜の厚さが
0.025mmになるように塗布・焼付けを繰返した。また、
エナメル電線の特性試験は、JIS C−3003に準拠して行
なった。

実施例１ 撹拌機付き混合槽内に、ビスフェノールＡ系エポキシ
樹脂（油化シェルエポキシ株式会社商品名エピコート10
09、エポキシ当量2700、ｎ＝11）125重量部、ｏ−クレ
ゾール10重量部、及びジエチレングリコールモノメチル
エーテル185重量部を入れ、165℃で３時間撹拌混合した
のち、4,4′−ジアミノジフェニルメタンビスマレイミ
ド（DDM−BMIと略称）100重量部、3,3′−ジメチル−4,
4′−ジアミノジフェニルメタン14重量部を加え、さら
に130℃で２時間撹拌・混合して褐色の粘稠溶液を得
た。次いで、この溶液に室温で安定化イソシアネート化
合物（日本ポリウレタン社商品名 コロネートAPステー
ブル）の50％、シクロヘキサノン溶液500重量部を加
え、撹拌混合して塗料とした。この塗料は、不揮発分が
52.3％であり、貯蔵安定性（60℃で貯蔵時のゲル化する
までの日数）は90日以上であり、安定性に優れていた。

次いで、この塗料を用いて、400℃の電気炉中で焼付
け速度40m/分で８回塗布・焼付けを繰返して、エナメル
線を得た。このエナメル線の特性を試験したところ、絶
縁破壊電圧13.5KV、熱軟化点320℃、伸び39％であっ
た。また、その外観、可撓性（自己径巻付け）、密着
性、耐熱衝撃性、耐摩耗性、耐溶剤性及び耐薬品性も、
表１に示すとおり良好であった。

実施例２〜４ 塗料組成を表１に示す組成に変え、そのほかは実施例
１と同様にして塗料を調製し、同様にしてエナメル線を
製造した。得られた塗料の性状、エナメル線の特性は表
１に示すとおり良好であった。

実施例５ マレイミド化合物を四官能マレイミド化合物（三菱油
化株式会社商品名MP−2000X）に変え、そのほかは実施
例１と同様にして塗料及びエナメル線を製造した。その
結果を表１に示す。

実施例７ フェノール化合物を2,6−キシレノールに変え、その
ほかは実施例１と同様にして塗料及びエナメル線を製造
した。その結果を表１に示す。

実施例８ ジアミン化合物を4,4′−ジアミノジフェニルメタン
に変え、そのほかは実施例１と同様にして塗料及びエナ
メル線を製造した。その結果を表１に示す。

実施例９ 実施例１で用いた安定化イソシアネート化合物のコロ
ネートAPステーブルの50％シクロヘキサノン溶液500重
量部の代わりに、同コロネートAPステーブルの50％シク
ロヘキサノン溶液250重量部とメラミンホルムアルデヒ
ド樹脂の50％シクロヘキサノン溶液250重量部の混合物
を用い、そのほかは実施例１と同様にして塗料及びエナ
メル線を製造した。その結果を表１に示す。

比較例１〜５ 塗料組成を表２に示す組成に変え、そのほかは実施例
１と同様にして塗料及びエナメル線を製造した。その結
果を表２に示す。

比較例６ エポキシ化合物をエピコート1002（油化シェルエポキ
シ株式会社商品名、エポキシ当量650、ｎ＝2.5）に変
え、そのほかは実施例１と同様にして塗料及びエナメル
線を製造した。その結果を表２に示す。

比較例７及び８ 市販塗料としてポリエステルイミド塗料（大日本精化
社商品名 Ｅ−800）、及びポリアミドイミド塗料（日
立化成工業社商品名 HI−400）をそれぞれ用い、各例
とも400℃の電気炉中で、焼付け速度23m/分で、12回塗
布焼付けを繰返し、エナメル線を製造した。その結果を
表２に示す。

表１及び表２の註 註１…4,4′−ジアミノジフェニルメタンビスマレイミ
ド 註２…三菱油化株式会社商品名 MP−2000X 註３…油化シェルエポキシ株式会社商品名 ビスフェノ
ールＡ系エポキシ樹脂、エポキシ当量2700、ｎ＝11 註４…同上、エポキシ当量2000、ｎ＝７ 註５…日本ポリウレタン工業商品名 コロネートAPステ
ーブル 註６…油化シェルエポキシ株式会社商品名 ビスフェノ
ールＡ系エポキシ樹脂、エポキシ当量650、ｎ＝2.5 註７…大日精化社商品名 Ｅ−800 註８…日立化成工業社商品名 HI−400 註９…外観等の評価基準は下記によった。

○：良好 ×：不良 （発明の効果） 本発明のエナメル塗料組成物は、貯蔵安定性が良好
で、焼付速度が速く、塗装・焼付けの作業性に優れてい
る。また、本発明のエナメル電線は、耐熱性及び機械特
性に優れ、電気機器用電線として優れている。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 ＦＩ Ｈ０１Ｂ 3/30 Ｈ０１Ｂ 3/30 Ｈ 7/34 7/34 Ａ (72)発明者 藤村 四郎 埼玉県北葛飾郡吉川町大字吉屋718番地 礎電線株式会社工場内 (72)発明者 長野 卓馬 埼玉県北葛飾郡吉川町大字吉屋718番地 礎電線株式会社工場内 (56)参考文献 特開 昭53−16099（ＪＰ，Ａ) 特開 昭53−30700（ＪＰ，Ａ) 特開 昭53−39398（ＪＰ，Ａ) 特開 昭64−26681（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−172468（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−217031（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) C09D 163/02 C09D 175/04 - 175/16 C09D 161/28 C09D 161/06 - 161/14 C08G 59/56 H01B 3/30 H01B 7/34

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】（Ａ）１分子中に少なくとも２個のマレイ
   ミド基を有するポリマレイミド化合物100重量部、 （Ｂ）一般式 （式中、ｎは平均値で３〜15の数を示す。） で表わされるエポキシ化合物50〜600重量部、 （Ｃ）炭素数１〜４のアルキル基で置換されたモノ−若
   しくはジ−アルキルフェノール化合物から選ばれた少な
   くとも１種のフェノール化合物５〜60重量部、 （Ｄ）一般式 （式中、R¹及びR²はそれぞれ独立に水素原子、メチル基
   又はエチル基を示す。） で表わされるジアミン化合物10〜50重量部、並びに
   （Ｅ）安定化イソシアネート化合物、メラミンホルムア
   ルデヒド樹脂及びフェノールホルムアルデヒド樹脂から
   選ばれた少なくとも１種の樹脂成分100〜700重量部 を含有してなる耐熱エナメル塗料組成物。
2. 【請求項２】請求項１に記載の耐熱エナメル塗料組成物
   を導線に塗布、焼付けてなる耐熱エナメル電線。