JP2895205B2 - 中性紙の製造方法 - Google Patents

中性紙の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】
本発明は、アルキルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チア
ジアジン−2−チオンを添加したカチオン澱粉、及びア
ルキルケテンダイマーを紙料に添加することを特徴とす
る、スライム発生が少なく、サイズ性と人体に対する安
全性に優れた中性紙の製造方法に関するものである。
【従来の技術】
スライムは、微生物の作用により、抄紙工程のパイ
プ、チェストの内壁など流速が遅くなる部分の紙料中に
発生する粘状物質であり、紙の異物、斑点など外観に関
する品質に悪影響を及ぼすのみならず、紙切れ、プレス
毛布の汚れ発生など操業性を阻害する原因にもなるた
め、種々の方法でスライムの防除が図られている。 これらの方法の中で最も効果的であるとされているの
は、化学薬剤を紙料に添加して微生物の生育を抑制した
り、殺菌したりする方法であるが、白水再利用率の向上
や工程pHの中性化に伴って、効果ある化学薬品(スライ
ムコントロール剤)の種類、添加位置などの選択が難し
くなってきている。また、スライムコントロール剤の多
くは生物に悪影響を与える薬品であるため、それを添加
した紙の人体に対する安全性を考慮することも重要にな
って来ている。 従来からスライムコントロール剤としては、5−クロ
ロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−チオンのよ
うな有機窒素硫黄化合物、2,2−ジブロモプロピオンア
ミドのような有機ブロム化合物、ジクロロイソシアネー
トのような有機窒素化合物などが、連続あるいは衝撃的
に紙料に添加され使用されている。
【発明が解決しようとする課題】
従来のスライムコントロール剤を紙料を添加する方法
では、微生物の栄養源となるカチオン澱粉を多量に添加
し、微生物の生育に好適なpH7.0〜8.5の中性域で紙を製
造する中性紙製造の場合には、十分なスライム防除効果
の得られないことが多かった。また、十分なスライム防
除効果の得られるスライムコントロール剤であっても、
添加によりアルキルケテンダイマーのサイズ性に悪影響
を及ぼしたり、人体に対して危険性が高いなど、適当な
スライムコントロール剤や防除方法を見いだすことは困
難であった。 すなわち、本発明の目的はこれらの欠点を有さないス
ライムコントロール剤を効率よく使用し、サイズ性と人
体に対する安全性に優れた中性紙の製造方法を提供する
ことである。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために、カチオン澱
粉とアルキルケテンダイマーを添加した紙料に対する、
種々のスライムコントロール剤のスライム防除効果、人
体に対する安全性、及び紙のサイズ性に対する影響につ
いて検討した結果、スライムコントロール剤としてアル
キルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チアジアジン−2−チ
オンが優れていることを見いだした。さらに、スライム
コントロール剤の添加方法について検討した結果、通常
の紙料に添加する方法ではなく、微生物に対する主要な
栄養源であるカチオン澱粉に添加すれば最もスライム防
除効果の高いことを見いだし、本発明を完成するに至っ
た。 本発明の中性紙に使用するカチオン澱粉としては、と
うもろこし、馬鈴薯、タピオカ、小麦などに由来する澱
粉の第3級アミン誘導体、あるいは第4級アンモニウム
塩を使用することが出来る。また、上記カチオン基より
少ない量のアニオン基を含有する両性澱粉を使用するこ
とも可能である。カチオン澱粉の添加量は、紙料固形分
に対し0.1〜3.0重量%の範囲が好ましい。 本発明におけるアルキルケテンダイマーとしては、例
えば米国特許2,785,067号、米国特許2,865,743号、特開
昭52−40605号、特開昭55−98997号、特開昭55−116898
号、特開昭55−132799号特開昭56−101998号等に記載さ
れているようなアルキルケテンダイマーを使用すること
が出来る。紙料固形分に対する添加量は、通常0.05〜0.
5重量%の範囲が良い。 本発明のアルキルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チアジ
アジン−2−チオンとしては、例えば3,5−ジメチルテ
トラヒドロ−1,3,5−2H−チアジアジン−2−チオン
(略称DMTT)として知られているスライムコントロール
剤などが使用でき、その添加量はパルプの種類、叩解の
程度、添加薬品の添加量などにより異なるが、カチオン
澱粉固形分に対し100〜3000ppmの範囲が好ましい。添加
方法としては、まず固形分濃度が5%以下のカチオン澱
粉糊液にアルキルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チアジア
ジン−2−チオンを添加し、その糊液を紙料に添加する
のが良い。また、アルキルケテンダイマーを乳化分散す
る際のカチオン澱粉糊液に添加することも可能である。 本発明の中性紙とは、pH7.0〜8.5の中性域で製造する
紙のことであり、通常抄紙で用いられる、染料、填料、
定着剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留まり向
上剤などを必要に応じて添加するものとする。 本発明の中性紙は、印刷筆記用紙、連続伝票用紙、電
子写真用転写紙等の未塗工紙、コート紙、感熱紙、感圧
紙、インクジェット用紙等の原紙あるいは食品包装用紙
等サイズ用と共に人体に対する安全性を強く必要とする
用紙に使用できる。
【作用】
本発明のアルキルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チアジ
アジン−2−チオンを添加したカチオン澱粉、及びアル
キルケテンダイマーを紙料に添加する方法により、スラ
イム発生が少なく、サイズ性と人体に対する安全性に優
れた中性紙を得ることが出来る。
【実施例】
以下では、本発明を実施例により詳細に説明する。な
お、本発明は実施例に限定されるものではない。以下に
おける、部、%は全て重量によるものである。 実施例1 ろ水度350mlまで叩解したLBKPとろ水度450mlまで叩解
したNBKPを重量比で7:3混合して得た、叩解パルプ100部
に、沈降製炭酸カルシウム(TP121、奥多摩工業社製)
を10部、3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チア
ジアジン−2−チオン(サンセレクト330、三新化学社
製)を前もって澱粉糊液固形分に対して600ppm添加した
カチオン澱粉(ケイトF、王子ナショナル社製)を1.0
部、アルキルケテンダイマーサイズ剤(SPK903、荒川化
学社製)を0.1部添加し、最後に工業用水を加え、固形
分濃度2.5%の紙料とした。まず、調製直後の紙料を用
いて坪量60g/m2の手すきシートを作製した。シートの乾
燥条件は、熱風乾燥機中で80℃、5分間とした。このシ
ートを紙料1−1とする。また、この紙料の一部を、32
℃で7日間保存後、80メッシュの金網でろ別し、ろ液の
ニンヒドリン反応を評価することによりスライムコント
ロール剤の効力評価を行た。このろ液を紙料1−2とす
る。 比較例1 実施例1で添加するカチオン澱粉をケイトFのみを1.
0部とし、3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チ
アジアジン−2−チオンを紙料に、紙料固形分に対して
30ppm添加する(カチオン澱粉固形分に対しては3330ppm
に相当する)以外は全ての同一の方法で、手すきシート
及びろ液を得た。これらをそれぞれ試料2−1及び試料
2−2とする。 比較例2 比較例1で3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5−2H−
チアジアジン−2−チオンの代わりに、5−クロロ−2
−メチル−4−イソチアゾリン−3−チオンを30ppm添
加する以外は、全て同一の方法で手すきシート及びろ液
を得た。これらをそれぞれ試料3−1及び試料3−2と
する。 比較例3 比較例1で3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5−2H−
チアジアジン−2−チオンの代わりに、2,2−ジブロモ
プロピオンアミドを30ppm添加する以外は、全て同一の
方法で手すきシート及びろ液を得た。これらをそれぞれ
試料4−1及び試料4−2とする。 以上の手すきシートとろ液の結果をまとめて、それぞ
れ第1表と第2表に示す。 ここで、サイズ度はJIS P 8122に準じてステキヒ
ト法により測定した値であり、他の薬品が悪影響を及ぼ
さないとすると、アルキルケテンダイマーサイズ剤の添
加量が0.1%の場合、20〜25秒の値が得られるはずであ
る。 変異原性試験は、労働省労働基準局 基発第261号
(昭和60年5月18日)に準じ、各手すきシートをベンゼ
ン/エタノール(9/1、vol%)で80℃、3時間抽出する
ことにより得た抽出物に対し、Salmonella typyhimuri
um TA100を用いて、代謝活性化法によらない復帰変異
試験により行った。溶媒対照として用いたジメチルスル
ホオキシドに比較して復帰変異コロニー数が2倍以上に
増加する場合を陽性とした。陽性の場合は、突然変異誘
起性を有する可能性が高いため、紙としての安全性に問
題がある。 ニンヒドリン反応は、ろ液10mlに1%ニンヒドリン水
溶液を0.5ml添加した際、液が赤紫色に変化する程度に
より判定した。液が変色した場合を+で表したが、この
場合はスライムが発生していると考えられる。 試料1−2と試料2−2の比較から、3,5−ジメチル
テトラヒドロ−1,3,5−2H−チアジアジン−2−チオン
を添加したカチオン澱粉を紙料に添加することにより、
通常の添加方法に比べ、対紙料固形分で約5分の1と少
ないスライムコントロール剤添加量で優れたスライム防
除効果の得られることが明かである。 試料1−1と試料3−1あるいは試料4−1の比較か
ら、3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チアジア
ジン−2−チオンのような化合物が人体に対する安全性
にすぐれ、またサイズ性に対する悪影響の少ないスライ
ムコントロール剤であることが分かる。
【発明の効果】
以上から、本発明の方法すなわち、アルキルテトラヒ
ドロ−1,3,5−2H−チアジアジン−2−チオンを添加し
たカチオン澱粉、及びアルキルケテンダイマーを紙料に
添加する方法により、スライム発生が少なく、サイズ性
と人体に対する安全性に優れた中性紙の得られることが
明かである。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D21H 11/00 - 27/42 A01N 43/88

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルキルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チア
    ジアジン−2−チオンを添加したカチオン澱粉、及びア
    ルキルケテンダイマーを紙料に添加することを特徴とす
    る中性紙の製造方法。
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