JP2887151B2 - 血中成分の履歴を調査する方法及び手段 - Google Patents

血中成分の履歴を調査する方法及び手段

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、血中成分の赤血球生成後の履歴を調査する
方法及び該方法に用いる装置に係るものであり、特に血
糖値の赤血球生成後の履歴の調査に好適な方法及び装置
に関するものである。
[従来の技術] 赤血球は直径約7〜8.5μm、厚さ約2.5μmの中くぼ
み円盤状の形態をした細胞であり、主として骨髄で産出
され、網状赤血球として、末梢血に送り込まれる。その
後2〜3日で網物質を失い、成熟赤血球となると言われ
る。赤血球は常に体内を循環し、肺におけるガス交換、
及び全身各組織への酸素運搬など生命の維持上不可欠な
機能を分担している。赤血球の平均寿命は約120日であ
り、その老化に従い赤血球胞体内の酵素活性が低下し、
膜面に変化を生じて崩壊死滅すると言われている。平均
的には、全赤血球量の1/120が毎日崩壊死滅し、ほぼ同
量の赤血球が毎日産出されて、一定の赤血球量を保持し
ている。従って、実際の血液では新生の赤血球から崩壊
寸前のものまでが混在している。
そこで、もしこれらの赤血球をその加齢の順に分ける
ことができ、赤血球中の適切な成分、例えばヘモグロビ
ン、酵素、細胞膜成分等の量或いは活性値或いは特性値
を測定すれば、それらの量或いは活性値或いは特性値の
加齢に従った変動が見られることになる。さらに、赤血
球中の該成分の量或いは活性値或いは特性値が疾病若し
くは健康状態の推移により左右され、かつその変動が該
成分に「履歴」として「記憶」されていれば、該赤血球
を加齢の順に分け、該成分の量或いは活性値或いは特性
値を測定することにより、健康時の変動相からの「ず
れ」として、疾病若しくは健康状態の推移を把握できる
ことになる。
しかし、従来の臨床現場における検査では、血液を赤
血球と血漿の混合物である「全血」、或いは赤血球を分
離除去した血漿または血清として扱うことが圧倒的に多
い。また赤血球が検査対象となる場合でも、測定される
のは赤血球数、血球容積(ヘマトクリット)、網状赤血
球比率、赤血球抵抗性、赤血球沈降速度、赤血球寿命な
どであり、赤血球の加齢に関係して何らかの量の履歴を
調査することは極めて稀であり、それは特殊検査或いは
研究に属するものである。
さらに、以下詳述するように、特殊検査或いは研究を
目的として赤血球を加齢に従って分離している例におい
ても、分画の分取手段が通常のピペット操作を基本とす
るため、多量の血液を必要とし、また分離剤により比重
の異なる赤血球の間に隔壁を作る必要があるなど問題が
ある。
次に、赤血球中のある成分の量、或いは活性値或いは
特性値が疾病若しくは健康状態推移により左右され、か
つその変動が該成分に「履歴」として「記憶」される事
例との関連で、従来技術を概観する。
血液中の糖は生体のエネルギー源として必須である
が、この血中濃度が異常に高値となった状態が糖尿病で
あり、従来血液中の糖濃度すなわち血糖値は、糖尿病を
判定する診断指標として重要である。しかし、その値は
種々の要因−食事や断食、或いは精神的緊張や弛緩など
−によってかなり急激に、且つ大幅に変動する。従っ
て、血糖値を誤りなく診断指標として使うためには、採
血時の条件を揃える必要があり、被検者に余分な制限や
苦痛を与えることになる。これに対し、糖化ヘモグロビ
ン(HbA1C、HbA1)は赤血球中の一成分であるヘモグロ
ビン(Hb)が血中成分である糖の経時的変動の影響を受
けつつ老化し、Maillard反応により物質的「履歴」とし
て蓄積された糖化ヘモグロビン量の全ヘモグロビン量に
対する平均比率として求められるものであり、血糖値と
異なり、食事その他の要因によっては変化せず、過去2
〜3ヶ月の血糖値の平均値を反映しており、糖尿病に関
する安定な情報を提供することは周知の通りである。糖
化ヘモグロビン測定には採血時の条件は揃える必要がな
いため、HbA1C、HbA1の測定装置は近年、臨床現場の検
査に急速に普及するに至った。
Hbと同様血漿中の蛋白質もMaillard反応により糖化蛋
白質を生成することは周知のとおりであり、血糖変動の
経緯を物質的「履歴」として蓄積する。1982年ニュージ
ーランドのJohnson,Bakerらは、糖化蛋白質がアルカリ
溶液中で発現するケトアミンの還元力を利用した新しい
糖化蛋白質の簡易比色定量法を開発し、該方法により測
定される血漿或いは血清中の糖化蛋白質をフルクトサミ
ンと命名した。(Roger N.Johnson,Patricia A.Metcal
f,John R.Baker:Fructosamine;a new approach to the
estimation of serum glycosylprotein.An index of de
abetic control.,Clinica Chimica Acta,127(1982)87
−95)。
血漿或いは血清は多くの蛋白質の混合物として構成さ
れているが、その主成分であるアルブミンの寿命がヘモ
グロビンの寿命より短い(約40日といわれている)た
め、フルクトサミン濃度はHbA1C、HbA1に比べ、より現
在に近い過去の平均血糖値を反映するものとされ、次第
に普及されようとしている状況である。ただし、フルク
トサミンは血漿或いは血清中蛋白を起源とする糖化蛋白
であり、赤血球中成分ではないので、本発明の方法を適
用することができない。すなわち、過去の血糖変動を変
化動態として捕えることはできない。
赤血球中成分は赤血球という細胞膜でその内外を仕切
られた細胞中に存在する成分であり、赤血球の加齢に従
った細胞比重の違いにより分離することが可能である。
従って、赤血球中成分が蓄積する血中成分の変動「履
歴」をになう物質は、赤血球の細胞加齢の順に分けるこ
とが可能であり、該物質の一種の「経時変化」を把握す
ることが可能である。すなわち、平均値ではなく、経時
変化としてのより情報量の豊かな測定値群を入手するこ
とができるため、病態或いは健康状態をダイナミックに
捕えることが可能になる。HbA1C、HbA1は、赤血球中に
多量に存在するヘモグロビンを起源とする糖化蛋白であ
り、本発明の方法が適用できる好適例である。さらに、
本発明の方法及び装置は、この他にも赤血球膜の性状、
赤血球中の各種酵素の量や活性値、或いはヘモグロビン
の酸素親和性などの赤血球加齢に伴う変化の調査に適用
することが可能であり、貴重な医療情報を提供できる可
能性に富んでいる。
次に赤血球をその加齢に従い分離する技術を中心に従
来技術を概観する。赤血球はその加齢に従って表面膜の
性状が変化し、またその細胞比重が増大することはよく
知られている。まず、赤血球膜性状の変化を利用した細
分画法には向流分配法があるが、分離に長時間を要する
こと、低温分離が不可能なことなどから、臨床現場への
適用は困難とされている。
一方、加齢に従った赤血球比重の増大を利用した細分
画法は基本的に遠心分離法であり、遠心に際し、比重の
異なる分離剤を試料血液と共存させる方法が用いられて
いる。遠心の結果、既知比重の分離剤の位置に対し、よ
り比重の大きな赤血球は分離剤の下部に位置し、より比
重の小である赤血球は、分離剤の上部に位置するので、
赤血球を分離することができる。この方法には、分離剤
の比重を連続的に変える場合と、不連続に変える場合と
がある。また、分離剤の比重を不連続に変える場合に
は、異なる比重の分離液を重層して使用する場合と異な
る比重の分離液を各々分注された同一試料に各々添加
し、各々の分注された試料を添加された分離液の上下に
分離する場合がある。
いずれの方法を採るにしても、分離剤が必要であり、
分離された試料の分画は、ピペットを使用して分取され
る。分離剤には赤血球に対し悪影響を及ぼさないこと、
わずかに比重の異なる赤血球を分離するに必要な精度の
比重液が安定に調製できること、分離剤の溶液としての
物理化学的性状(浸透圧、pH、粘性等)が血清に近いこ
となどが要求される。実際に使用されている分離液とし
ては、ウシ血清アルブミン、フィコール、アラビアゴ
ム、デキストラン、フタル酸エステルなどがある。
このような分離剤を用いた各種の密度勾配遠心分離法
は、次のような特殊検査、或は研究目的に用いられて来
ている。例えば、D.DANONらは、20種の0.004ずつ比重の
異なるフタル酸エステルを分離剤として用い、赤血球を
比重に従って分離した。さらに家兎に59Feを注入し、生
成する赤血球を放射性同位元素で標識し、該放射性同位
元素が次第に高比重画分に移行することにより、赤血球
の比重分布が該赤血球の加齢分布に対応することを示し
ている。(David Danon,and Yehuda Marikovsky:Determ
ination of density distribution of red cell popula
tion,J.Lab. & Clin.Med.,64(1964)668−674)。
本発明の発明者らは(Koji Nakashima,Susumu Oda,an
d Shiro Miwa:Red cell dencity in various blood dis
orders,J.Lab.Clin.Med.,82(1975)297−302)、ジメ
チルフタレート(比重1.189)とジブチルフタレート
(比重1.042)を混合し、高比重液A(男性用:比重1.1
04、女性用:比重1.102)、低比重液B(男性用:比重
1.096、女性用:比重1.094)を調製し、種々の貧血患者
について、A液より比重の大きい赤血球画分(D画
分)、A液とB液にはさまれる赤血球画分(I画分)、
B液より比重の小さい赤血球画分(L画分)に分離し
た。その結果、貧血の病種によりD、I、Lの各画分の
比率に特徴的な差異が表れることを発見した。さらに、
鉄欠乏性貧血においては、その治療過程においてD、
I、Lの画分比率が次第に正常化する様子が見られた。
James.F.Fitzgibbonsらは(James F.Fitzgibbons,Rob
ert D.Koler,and Richard T.Jones:Red Cell Age−Rela
ted Changes of Hemoglobins A1a+b and A1C in Normal
and Diabetic Subjects,J.Clin.Invest.,58(1976)82
0−824)、分離剤として28.5%デキストラン溶液を使用
することにより、全赤血球の10〜15%に当たる比重の小
さい(幼若)赤血球層を分離し、分離剤として30.5%デ
キストラン溶液を使用することにより、全血球の10〜15
%に当たる比重の大きい(老化)赤血球層を分離して、
各々の画分中の糖化ヘモグロビン(HbA1a+b及びHbA1C
を測定した。この結果、どちらの画分中の糖化ヘモグロ
ビン値も全血中の糖化ヘモグロビン同様に、健常者と糖
尿病患者では有意の差があることが確認され、また糖尿
病患者の血糖値管理の良否が測定値に反映される可能性
があることが示唆されている。
以上詳述したように、医療の現場において赤血球を加
齢に従って分離・分画して検査することは極めて稀であ
り、特殊検査または研究目的に限られている。その主原
因は分離・分画に経験と手間が必要であり、全く新しい
臨床知見が期待されるにもかかわらず、その手法の発展
が阻害されている現状である。
[発明が解決しようとする課題] 上述のように、赤血球を加齢に従い分離し、該赤血球
中成分を測定する手法は、多くの貴重な医療上の情報を
提供する可能性を内蔵しているが、現状では、ほとんど
研究目的に用いられているに過ぎない。赤血球の分離・
分画に専門的な経験と長時間の手間が必要である点が、
この手法の一般的普及を妨げている阻害要因であると考
えられる。
本発明の課題は、これら阻害要因を取り除き、簡便で
精度の良い赤血球の分離・分画方法と手段を確立し、上
記手法を研究目的のみでなく、臨床現場の検査等にも適
用できる手法とすることにある。
分離・分画技術の中心をなしている問題は、第一に分
離剤を使う点にある。第二に得られた画分の分取に、ピ
ペットを使用する点にある。第三に第一、第二の項目の
結果として、大型の遠心分離機を使用しなければならな
い点にあると考えられる。以下、これらの点について詳
述する。
まず、分離剤の調製、管理の問題がある。密度勾配法
により健常人の赤血球を比重に従い分離し配列した場
合、平均比重約1.1に対し、最上層と最下層の比重差は
通常0.010程度である。また、健常人の男女で平均的に
約0.002の比重差があり、男性の赤血球の比重の方が大
である。このような関係を考慮すれば、例えば全赤血球
層の10%の容積比をもつ最も比重の小さい赤血球層を分
取するためには、最も表面に来るべき赤血球(新生赤血
球)より0.001だけ比重の大きい分離剤を調製する必要
があり、その分離液の比重が0.0001の誤差をもてば全赤
血球層の10%の容積であるべき赤血球層は全血球層の
(10±1)%となり、相対的に10%の誤差を持つことに
なる。
しかし、実際にはこのような精度を臨床現場で実現す
るのは極めて困難である。分取する赤血球層が二層以上
の場合には、互いに比重の異なる複数種の分離液を調製
しなければならないので、一層の困難を生じる。また上
記のように、男女で赤血球比重には約0.02の差があるの
で、男性用と女性用の分離液を別々に調製する必要があ
る。さらに、臨床現場では検査対象者は当然患者であ
り、赤血球比重が正常範囲から大きくはずれる例は、日
常経験するところである。例えば、健常人であれば全赤
血球層の10%を占める最上層を形成できるような分離剤
であっても、鉄欠乏性貧血患者の赤血球に使用した場合
には、その50%近くが分離剤の上側に層を形成すること
が起こり得る。従って、このような患者の履歴を調査す
るためには、患者毎に分離剤系列を調製する必要が生
じ、極めて繁雑な状況に陥ってしまう。さらに、分離剤
には経時的な比重の変化や、使用する材料によっては変
質の問題があり、定期的な再調製、比重の確認、保管等
の管理の問題が生じ、分離剤の種類が多数となれば、実
際的に分離剤の調製・管理は不可能となりかねない。
次に、分取すべき画分の全赤血球層に対する容積比率
の問題と、分取すべき画分数の問題がある。これらの問
題は最終の測定結果が提供する情報の質と量に対応す
る。該画分の全赤血球層に対する容積比率が小さければ
小さい程、「分離能」の良好な「履歴情報」を提供する
ことが可能である。分取した画分数が多ければ多い程、
「正確度」の高い「履歴情報」を与えることが可能であ
る。これらの要求を分離剤で実現するには、できるだけ
比重の接近した多くの分離剤を調製し、使用することが
必要となる。これは、上記の第一の問題点を精度の厳し
さと調製すべき分離剤をさらに多くするという繁雑さを
極めて高度にする問題に加えて、新たに分離剤原料の問
題ないしは赤血球層の分画操作を極めて困難にするとい
う別の問題も生じる。すなわち、分離剤を重層使用する
方向で、該要求を解決しようとすれば、異なる比重の分
離剤は互いに拡散し合ってはならないので、分離剤材質
の選択及び処方の問題を解決しなければならない。ま
た、同質原料の混合比のみを変えて調製した分離剤を使
用する方向で該問題を解決しようとすれば、分離剤添加
の手順を工夫しなければならない。
また、分離剤による赤血球の汚染及び損傷の問題があ
る。分離剤は、赤血球と触れ、入れ換わりつつ、該分離
剤の比重と等しい比重の赤血球の位置で静止する。従っ
て、分離剤は必ず赤血球と接触するので、これを損傷し
難い原料を選定しなければならない。しかし、そのよう
な原料で分離剤を調製した場合でも、わずかな浸透圧の
違いで、赤血球比重に影響を与えてしまうことは避けら
れない。また、分離剤はどうしても赤血球の画分に持ち
込まれるので、画分の測定に影響を及ぼす場合は、複数
回の洗浄によりこれを除去しなければならない。さらに
その洗浄液が該赤血球を損傷し、或いは測定対象成分に
影響することは避けなければならない。
最後に、従来の方法では、通常は分離した画分の採取
にピペットを用いる点に注目しなければならない。この
ようなピペットは吸口を細く絞ってあるのが通例である
が、それにもかかわらず、これを手操作する場合、赤血
球と共に分離剤も吸い取ることは避けられない。むし
ろ、分離剤は赤血球層の隣接する画分を明確に切り離
し、分取の際のピペット操作によって、該隣接画分が混
入するのを回避するのが目的であるので、当然分離剤は
赤血球と共に吸い取られるのである。従って、従来のこ
の方法は、分離剤とピペット操作が前提であり、遠心分
離機にかける液体量は多量となるのは避けられない。ま
た、遠心操作は、10,000G程度以上の遠心力で行なう必
要があり、必然的に高価な大型遠心分離機が必要とな
る。
以上述べたように、従来の密度勾配法は煩雑で、しか
も分画精度が不十分であり、高価な遠心分離機が必要で
あるなどの状況のため、血中成分の変動情報の赤血球成
分に「記憶された履歴」を調査する方法として有効に適
用できず、ますます厳しくなる医療の要求を満足させる
ことができなかった。
[課題を解決するための手段] そこで本発明者は、上記諸点に鑑み鋭意研究した結果
本発明を成し得たのであり、その特徴とするところは、
第一に、血中成分の履歴を比重に従い連続的に形成され
た赤血球層から分画された各画分中の赤血球中成分を測
定することにより調査する方法において、該赤血球層を
複数の画分に分画・分取する点にある。この画分は、容
積比率約で10%以下であることが好ましく、さらに好ま
しくは5%以下とする。
第二に、直管状分離容器中に比重に従い形成させた赤
血球層の全長を、該全長を計測することにより、該赤血
球層全長の1/n(nは好ましくは10以上)の分画位置を
直接設定できる装置として、歯車機構によるものを提供
する点にある。
第三に、分離容器から測定対象画分を分取する場合に
おいて、当該画分の露出させた液面に曲線状細管の先端
部(該先端部の試料吸引口面が分離容器の側面に略平行
であることが好ましい)を挿入することによって画分の
一部を吸引・採取する点にある。
尚、比重に従い赤血球層を形成させる分離容器とし
て、本発明者による実用新案(実願昭63−55656)にて
考案された分離容器を使用することも好ましい。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。まず、
本発明で言う「血中成分」とは、血管中を循環する体液
としての血液に含まれるいかなる成分をも指し、分子、
イオン、細胞膜、細胞等血液中に存在するどのような形
態の物質であってもかまわない。また、その起源が該血
液本来の構成物質であってもかまわないのは勿論、体外
からの外来物質、例えば細菌、ヴィールス或いは薬物で
あってもかまわない。
また「赤血球中成分」とは、血液中主成分の一つであ
る赤血球に含まれているいかなる成分をも指し、分子、
イオン、細胞膜等赤血球中に存在するどのような形態の
物質であってもかまわない。また、その起源が該赤血球
本来の構成物質であっても、赤血球胞体外からの外来物
質、例えばヴィールス或いは薬物であってもかまわな
い。
次に、「血中成分の履歴」を「赤血球中成分を測定す
ることにより調査する」とは、上述した意味における血
液中のいずれかの成分の過去の変動情報−即ち該血中成
分の履歴−を、該血液中の一成分である赤血球が経時的
に感知しつつ老化した結果、現在該血中成分の履歴に対
応して該赤血球の何れかの成分が結果的に持つに至っ
た、物質量或いは活性値或いは特性値を推定することに
より、さかのぼって該血中成分の変動情報、すなわち履
歴を推察できる情報を提供することを言う。
一方、医療の焦点は、治療から予防へ移っており、老
人人口比率の増大により、その傾向に拍車がかかってい
る。本発明は、そのような医療上の傾向に応じられる好
適な手段を提供できるものであると考える。例えば、糖
尿病においては採血条件によらず安定な診断指標として
糖化ヘモグロビン量が利用されてきた。さらに近年、上
述のフルクトサミン量がより近過去の血値情報を反映す
る指標として導入されている状況である。糖化ヘモグロ
ビンが過去2〜3ヶ月の血糖値を反映し、フルクトサミ
ンは過去2〜3週間の血糖値を反映しているといわれて
おり、医療上の要求の傾向を具体的に示すものであろ
う。
しかしながら、HbA1Cもフルクトサミンも過去の血糖
値の累積効果を示す情報であり、一回の測定で、血糖値
の動態を把握することはできない。本発明の方法を赤血
球中のHbA1Cに適用すれば、一回の測定で過去120日間
(赤血球の寿命の期間)の血糖値の動態を反映したHbA
1C値のデータ群を入手することが可能であり、その動向
を見て、予防的な医療が実施可能になると考えられる。
該動向を示すデータの分解能は、赤血球層全長に対する
各画分の容積比率に依存し、小さい程分解能は向上す
る。
例えば、該容積比率が10%の場合、平均的に表現すれ
ば、最も比重の小さい第1画分は最近過去約12日間に生
成された赤血球を含み、次の第2画分以降も、各々約12
日間ずつ過去にさかのぼった期間に生成された赤血球を
含むこととなる。従って、第1画分について測定して得
られるHbA1C値は近過去約12日間の血糖値変動を反映し
たものであり、第2画分について得られるHbA1C値は近
過去約24日間の血糖値変動を反映したものである。第3
画分以下の画分についても同様である。
このように、比重(加齢)に従って形成した赤血球層
に対し、容積比約10%以下の画分に分画・分取し、該画
分中のHbA1C値を測定することにより、約12日を分解単
位とする近過去の血糖値変動を反映した情報を提供する
ことができる。この情報により、隔週ごとに訪れる糖尿
病患者の治療と指導を予防的に実施することが可能とな
る。
さらに、赤血球層の約5%以下の容積比率の画分に分
画・分取した場合には、約6日を分解単位とする近過去
の血糖値変動を反映した情報を提供することができ、こ
の情報により、さらにきめ細かい治療と患者指導が可能
となる。特に重症糖尿病患者や糖尿病妊娠の場合には、
このような迅速な病態情報が強く望まれている。
全画分中の特定の1個または複数個の画分を測定対象
とすることにより、医療上意義のある情報を提供するこ
とができる場合があり、迅速性、経済面から有利であ
る。例えば、測定対象成分がHbA1Cの場合、特定の1個
の画分が最も比重の小さい第1画分である場合であっ
て、赤血球層に対する容積比率が10%である場合におい
ては、該第1画分は近過去約12日間の血糖値変動を反映
した情報を提供し、該容積比率が5%である場合におい
ては、該第1画分は近過去約6日間の血糖値変動を反映
した情報を提供することができる。
この情報は、平均的な糖化ヘモグロビン量やフルクト
サミンが反映する過去の血糖値変動の情報に比べ格段に
短期の情報を反映しており、まさに医療の求めている速
い応答の情報と言えよう。特定の画分として第1画分の
他に最も比重の大きい画分(各画分の容積比率が10%の
ときには第10画分、5%のときには第20画分)を利用す
ることができる。この場合、第1画分のHbA1C値は、上
記のように最も近過去の血糖情報を反映し、最も比重の
大きい画分のHbA1C値は赤血球寿命全期間(約120日)の
血糖情報を反映する。従って、これら2画分のHbA1C
の差又は比は過去120日の血糖値に対し、最近1〜2週
間の血糖値は高いのか低いのか即ち糖尿病の動態をうか
がい知るひとつの指標を提供できる。つまり、適切な2
画分のHbA1Cの測定により、従来の方法では得られなか
った質の異なる情報を提供することができる。
以上は、測定対象成分としてHbA1Cを例に採ったが、
他の赤血球中成分であっても、測定対象とする画分の数
および画分番号の特定はすべての画分を測定した種々の
臨床例に関するデータ、当該対象成分の赤血球中におけ
る挙動あるいは特性を考慮し、必要とする情報は何かに
よって、決定することができる。
比重に従い赤血球層を形成し、必要とする画分を分取
する方法として、従来の密度勾配法を利用することは、
実用上不可能である点は、[従来の技術]の項で上述し
たとおりである。この課題を解決するために本発明にお
いては、密度勾配法で前提とする二点について根本的な
変更を加えた。
第一点は、分離剤を使用せず、赤血球のもつ変形能を
利用できたこと、即ち赤血球そのものに分離剤の役割を
負わせることができたこと、第二点はピペットを使用せ
ず、専用の画分採取装置を開発したことである。
分離剤を使用しないため、遠心分離の結果得られた赤
血球層は外見上何の仕切りもない状態であり、疾病,男
女差,個人差にかかわらず該被検者の赤血球個々の比重
(即ち加齢)の順序に配列される。従って、細い直管状
分離容器には該赤血球層を形成させた場合、必要に応じ
て好適な分画長を決定し、各々の分画を採取し、測定に
かけることができる。あるいは、本発明者の考案になる
実用新案(実願昭63−55656)に記述した分離部位を1
個又は複数個持つ分離容器を使用し、測定にかけること
ができる。このように、分離剤を使用しないことによ
り、採取すべき画分の分画位置及び分画の大きさの決定
に、大幅な柔軟性が生まれる。
分画を採取するための実用上の装置として、細い(内
径約0.2〜10mm程度)直管状分離容器に形成した赤血球
層の全長に対し、1/n長の画分位置を決定する装置が便
利である。n=10とすれば容積比率10%の、n=20とす
れば容積比率5%の画分位置を決定することができる。
本装置は、1/n長の画分位置を決定する手段であるが、
原理的にはm/n長の画分位置を決定する機構も容易に実
現できる。どちらを選択するかは、画分分取の方法と経
済性、簡便さにより決定すればよい。
1/n、m/n位置の決定装置は歯数比が1/n、m/nになる歯
車を同一軸に固定することにより、容易に実現すること
が可能である。1/n位置決定装置において、該1/n位置
に、切断機構を備えれば、位置決定と同時に分離容器を
切断し、必要とする画分を採取できるので実用上便利で
ある。分離容器の材質としては、ガラス、プラスチック
等が使用に耐えるが、切断の容易さからプラスチックの
方が好適である。
画分を採取する一つの方法としては、上記の1/n位置
に切断機構を有する位置決定装置にて、分離容器を次々
に切断し、切断された断片を各々試験管、サンプル容器
等に採取すればよい。分離容器は内径が小さく、遠心さ
れ加圧された赤血球層の粘性が高いので、分離容器断片
から赤血球がこぼれ出ることはなく扱いが容易である。
測定に際しては、分取した赤血球を適切な溶媒で必要
とする濃度に希釈しなければならない。このため、断片
を収容した試験管又はサンプル容器に適量の溶媒を添加
し、分離容器断片内から溶出する。しかし、各画分中の
赤血球は、非常に密に充填されていて、溶出され難いの
で、この溶出操作は、分画対象の血液試料の数が増加し
分画する画分数が増加するとともに、作業量として飛躍
的に増大する。この難点を解決する具体的手段としてシ
リンジと密封状態で接続した曲線状細管を使用するのが
簡便である。
該細管は、外径約1mm以下(好ましくは外径約0.8mm以
下)の耐蝕性材料からなり、赤血球層内に一定深さ該細
管を挿入したとき、該細管の下端が分離容器の赤血球露
出面側の容器上端に当たるように曲線状に曲げられたも
のが好適である。実際の操作に当たっては、まず赤血球
層の最上層面が露出するよう分離管を切断する。次に、
該細管を挿入し、該細管の曲線部の下端が分離容器上端
に当たる一定位置で止め、シリンジを一定容量吸引する
ためのスタートボタンを押す。この操作で必要とする一
定量の赤血球が吸引される。次に、該赤血球と適切な溶
媒の適量とを同時に吐出することにより、容易に必要と
する希釈検体を調製することが可能である。
次に、切断機構を有する1/n位置決定装置により赤血
球層の1/n長を切断する。残された分離管の露出された
液面から上記操作と同様に一定量の赤血球を吸引後、一
定量の溶媒と共に吐出し、希釈する。以上の操作を続け
ることにより、必要な画分を採取し、好適濃度に希釈さ
た検体を得ることができる。
なお、本発明の曲線状細管において、その試料吸引口
が張る面(開口面)は分離容器の側面に略並行であるこ
とが望ましい。即ち、上記操作で赤血球を吸引するに際
し、吸引される赤血球は開口面の前方付近に存在する赤
血球が大部分を占めるので、開口面が分離容器の側面に
略並行であることにより、採取吸引する赤血球層が狭く
なり、分画精度が向上する。
以上の手段により、従来の密度勾配法が持つ全ての問
題点を解消し、医療の求める厳しい要求に適合し得る情
報を提供する方法が確立された。
[作用] 本発明においては、赤血球加齢に対応して比重に従い
連続的に配列した赤血球層に対し、その1/n長の分画位
置を決定する装置および該画分からその一部の赤血球を
分離する手段を用いることにより、容積比約10%以下あ
るいは5%以下の赤血球画分を簡便に精度よく分取する
ことが可能となった。
さらに、各画分中の赤血球中成分を測定することによ
り、該赤血球中成分を赤血球加齢に対する関数として把
握することが可能となり、結局血中成分の変動即ち履歴
を、赤血球中成分に残された影響として把握することが
可能となる。
[実施例] 以下、本発明の方法および該方法を実行するための装
置について、実施例に基づいて説明する。
例1 比重差により16分画した、赤血球中の糖化ヘモグ
ロビンの測定 第1図は、本発明方法に用いる遠心分離用分離容器1
の一例を示す。分離部位3は、硬質ポリエチレンからな
る内径2mm、外径3mmのチューブであり、一端が閉じられ
ている。液溜部2は、ポリエチレンを材質とする成形品
である。液溜部2と分離部位3は第1図のようにしっか
り挿入固定されている。
赤血球の分画に際しては、まずヘパリン血0.5mlを液
溜部2に入れ、全体を2000rpmで5分間遠心し、赤血球
を分離部位3に閉じ込める。次に、余分の赤血球とバッ
フィーコートおよび血漿の入った液溜部2を外す。赤血
球が充填された分離部位3を、該分離部位3がかけられ
るようロータのみぞを拡大したヘマトクリット用遠心分
離機にかけ、12,000rpmにて15分間遠心した。この操作
により、分離部位3内に充填された前記赤血球はさらに
血漿部と赤血球層に分離されるので、その境界(X1−X1
線)で切断した。このX1−X1線から分離部位3の閉止端
3aまでの長さが赤血球層全長となる。
この露出された液面(X1−X1線)より、実施例4に記
述する曲線状細管13の先端部を挿入し、該曲線状細管13
の末端部17と密閉して接続されたシリンジにて赤血球を
1.3μl吸引し、これを溶血試薬と共に測定用サンプル
カップに吐出して、測定に適合する第1画分の希釈検体
を得た。さらに第2画分を得るためには、上記血漿部と
赤血球の境界で切断された分離部位3の閉じられた方の
断片を実施例3に記述する切断機構付き1/n位置決定装
置の分離容器セット位置4に、露出された液面が先端止
位置5に接するようセットし、切断位置6に降下するべ
く取り付けられている鋭利な刃物にて長さS=l/16だけ
(X2−X2線)切断した。これによって、第1画分の断片
は切り捨てられ、第2画分の液面が露出されので、前記
のように曲線状細管13の先端部を挿入し、1.3μlの赤
血球を吸引後溶血試薬と共に吐出して、第2画分の希釈
検体を得た。第3画分以降の希釈検体も同操作を繰返す
ことによって得た。
以上の操作で得られた第1画分〜第16画分までの糖化
ヘモグロビンを専用測定装置(株式会社京都第一科学製
HA−8121)にて測定した。測定結果を第2図に示した。
縦軸は測定された糖化ヘモグロビン(HbA1C%)であ
り、横軸は画分番号である。
は、本発明の方法および手段による赤血球分画法による
希釈検体を測定した結果得られたものである。Normalで
表示した測定点は、健常人より採血された赤血球、DMで
表示した測定点は糖尿病患者より採血された赤血球を試
料とした測定結果を示している。なお は、本発明の発明者らの前記[従来の技術]の項で引用
した文献(Nakashima K.et al,J.Lab.Clin.Med.,82(19
75)297−302)で使用した分離剤を2種類添加し、遠心
分離した後、本発明の手段を利用して、上記同様に画分
採取・希釈し得たデータである。分離剤が静止した位置
の赤血球のデータは分離剤と赤血球が混合し、分離困難
であるため欠落している。
これら2方法で得たデータが第2図に示されるよう
に、極めて良く一致していることから、特殊な分離剤を
用いなくても、赤血球の持つ変形能により、赤血球その
ものが比重液の役割を果たし、互いに個々の比重に合っ
た部位まで移動したことが確認された。さらに、これら
画分において網状赤血球は第1画分(F1)に全血の10倍
以上集まり、第2画分以降で著減し、第5画分〜第16画
分では殆ど0であったこと、ピルビン酸キナーゼ活性は
少量の白血球のコンタミのある第1画分で4.55IU/gHbと
高いのを除き、赤血球のコンタミのない第2画分(3.04
IU/gHb)から第16画分(1.38IU/gHb)まで直線的に低下
していたことから、赤血球は本発明の方法と手段により
加齢順に分画されたと考えられる。
例2 実施例1の方法と装置を適用し、分離・分画した赤血
球及び全血について、HbA1Cを測定した。さらに同じ血
液試料について、別途血漿フルクトサミンを測定した。
測定結果を整理したデータを第1表に示す。
第1表において、ドック受診者55人は年齢36〜79才、
平均年齢59才であり、GTTが性状パターンを示し、糖代
謝異常が見られなかった。GTT境界型30人は年齢28〜74
才、平均年齢56才であり、個々に見ると多くの例が正常
パターンを示したが、未分画赤血球WとLのHbA1C、フ
ルクトサミンが正常で、M2とDのHbA1Cが高値を示す例
が見られ、L、フルクトサミンと異なり、M2、Dでは老
化赤血球が多いので、より長い期間の血糖値を反映し、
耐糖能が正常でない境界型において、過去における過食
の繰り返しを反映しているものと考えられた。糖尿病患
者38人は、年齢35〜80才、平均年齢60才であり、個々に
見ると新しくドックで発見された患者はL画分のHbA1C
値が相対的に高く、治療によりLのHbA1C値がフルクト
サミン値より早く正常化した。コントロール不良例では
全ての測定値が高かった。特にインスリン治療例におい
て、一応、尿糖値、血糖値から見てコントロールされた
と考えられる症例で、LのHbA1C値が正常化しているに
もかかわらず、フルクトサミン及びM1、M2、D及び未分
画赤血球WのHbA1値が高値を示した例が見られた(第1
図のDM参照)。
第2表には、L、M1、M2、Dの各画分及び未分画赤血
球WのHbA1Cとフルクトサミンとの相関係数を示した。
L画分の相関係数が他の画分との相関係数に比べて小さ
いことが上記インスリン治療例において、L画分中HbA
1Cがフルクトサミンや他の画分中HbA1Cより早く正常化
した件とともに注目に値する。
例3 切断機構付き1/n位置決定装置 1/n位置決定装置の実施例として切断機構付き1/n位置
決定装置を第3図にもとづいて説明する。
まず、血漿部と赤血球層の境界で切断された分離部位
3の閉じられた方の断片を分離管セット位置4に露出さ
れた液面が先端停止位置5に接するようにセットする。
次に赤血球層長位置設定子8を左右に動かせて、赤血球
層長設定位置7を赤血 球層の液面位置に合わせる。この操作レバー(図示略)
は、大ギヤ9と小ギヤ10の共通の軸に取りつけられてお
り、該操作レバーを左右に動かすことにより、その回転
角だけ該軸すなわち大ギヤ9と小ギヤ10が回転させられ
る。
大ギヤ9は、並進ギヤ11と噛み合っており、該並進ギ
ヤ11は、大ギヤ9の回転角の長さlだけ移動する。一方
小ギヤ10は他の並進ギヤ12と噛み合っており、該他の並
進ギヤ12は、小ギヤ10の回転分の長さSだけ移動する。
従って、並進ギヤ11の移動距離lと他の並進ギヤ12の移
動距離Sとの比は、大ギヤ9の歯数Z1と小ギヤ10の歯数
Z2の比と等しくなる。即ち、この比をnとすれば、 n=l/S=Z1/Z2 が成り立つ。
ゆえに、この位置決定装置において赤血球層長位置決
定子8を切断位置(或いは1/n位置)6から長さlの位
置に設定すれば、先端止め位置5は、該切断位置6から
赤血球層長位置決定子8とは逆方向Sの長さの位置に設
定され、 S=l/n の長さとなる。
即ち、大ギヤ9と小ギヤ10の歯数比n=Z1/Z2を適切
に選定することにより、nを任意の整数に設定すれば、
赤血球層全長lの位置に赤血球層長設定位置7を合わせ
ることによりその全長の1/nの長さの位置を決定するこ
とができ、切断機構により、1/n長だけ切断することが
可能となる。以上の操作を繰り返すことにより、赤血球
層はその全長をn等分することができる。
例4 赤血球画分を吸引・採取する曲線状細管 比重に従い連続的に赤血球層を形成させた直細管状分
離容器から測定対象画分を分取するに際し使用する、画
分の一部を吸引・採取する画分採取手段の実施例を第4
図〜第6図にもとづいて説明する。
測定対象画分を吸引・採取するに際し、該対象画分の
1画分だけ表面に近い画分は、予め切断し、測定対象画
分の液面を露出させる。次に、該液面に曲線状細管13を
挿入する。該曲線状細管13は外径1mm以下(好ましくは
0.8mm以下)の非反応性材料により製作され、第4図〜
第6図のように先端から1〜5mm位の部位で「く」の字
状に成型するのが取り扱いに便利であるばかりでなく、
分取深さを安定化できる。すなわち、「く」の字形の開
き角は100°〜130°(好ましくは120°)が最も使用し
やすく、「く」の字形の折れ曲がり点付近を分離容器13
の上端面との接触点15とすることにより、常に画分の一
部を吸収・採取する深さを一定に管理することが容易と
なる。さらに、該曲線状細管13の先端に位置する試料吸
引口16が張る面は、分離容器13の側壁に略面しているこ
とが望ましく、それにより吸引赤血球が該試料吸引口16
近傍、特に下方から補給されることが防止でき、対象画
分の分画精度が向上する。
このような曲線状細管13を赤血球層の表面に挿入した
後、該曲線状細管13の末端部17と密封して接続されたシ
リンジにて一定容積(実施例1の場合は1.3μl)を吸
引する。さらに必要に応じて、赤血球の希釈液又は、溶
血試薬を別のシリンジに計量し、切り換えバルブを経由
して、該曲線状細管に採取した赤血球と共に吐出するこ
とにより、該赤血球を望ましい濃度に希釈することは容
易である。
[発明の効果] 本発明により、赤血球の変形能を利用し、遠心分離法
により比重に従い連続的に形成させた赤血球層を該赤血
球層の容積比率10%以下、必要に応じて5%以下の画分
に分画し、各画分よりそれぞれ一定量の赤血球を分取で
きるので、 汚染の無い分画精度の良好な画分が極めて容易に分取
できる。
必要に応じ、該画分を測定に好適な濃度に直ちに希釈
できる。
該赤血球画分中の特定の成分の量あるいは活性値ある
いは特性値を測定することにより、該成分が受けて、物
質的変化として該成分中に「記憶」した血中成分の履歴
を調査することができる。
赤血球中成分が糖化ヘモグロビンである場合には、糖
化ヘモグロビン濃度(HbA1C)の赤血球画分に従った変
化は、赤血球が幼若である程HbA1Cが低く、赤血球が老
化すればする程HbA1Cが高い傾向があるが、この変動の
巾や絶対値により、血中成分であるグリコース(血糖)
の変動の履歴をうかがい知ることができる。
測定対象画分の特定の1個または複数個に限った場合
でも、生成間もない幼若赤血球のみの「記憶」した血中
成分の履歴や該幼若赤血球の「記憶」と、老化赤血球の
「記憶」との比較、あるいは幼若赤血球の「記憶」と平
均値を示す赤血球画分の「記憶」との比較は非常に有益
な医療上の情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は分離容器の断面図、第2図は本発明方法と従来
の分離方法により分画した赤血球層の各画分ごとの糖化
ヘモグロビンの割合を示すグラフ、第3図は分離容器の
切断装置を示す側面図、第4図は曲線状細管を用いて赤
血球試料を分取する状態の断面図、第5図及び第6図は
夫々異なる曲線状細管を示す斜視図である。 1……分離容器 2……液溜部 3……分離部位 4……分離容器のセット位置 5……先端止位置 6……切断位置 7……赤血球層長設定位置 8……赤血球層長位置設定子 9……大ギヤ 10……小ギヤ 11……並進ギヤ 12……並進ギヤ 13……曲線状細管 14……赤血球層 15……接触点 16……試料吸引口 17……曲線状細管末端

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】比重に従って連続的に赤血球層を形成させ
    て、赤血球層全長の1/nにおける1個又複数個の部位で
    赤血球を採取し、糖化ヘモグロビン量を測定する方法に
    用いるものであって、n:1のギア比を有する大ギアと小
    ギアを回転軸上に設け、大ギアと係合する並進ギアに赤
    血球を満たした直細管状容器の開放口を接当する先端止
    めを取付け、小ギアと係合する他の並進ギアに赤血球層
    長位置設定子を取付けたものであって、該並進ギアと他
    の並進ギアとは回転軸の回転によって逆に並進するよう
    設けられていることを特徴とする1/nの位置を決定する
    ための位置決定装置。
  2. 【請求項2】1/n位置において、切断機構を有するもの
    である特許請求の範囲第1項記載の位置決定装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPS62209359A (ja) * 1986-03-11 1987-09-14 Yukio Osawa 分離機

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