JP2879906B2 - プロコラゲナーゼの製造方法 - Google Patents

プロコラゲナーゼの製造方法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は分子量52000のプロコラゲナーゼの製造方法
に関する。さらに詳しくは、ヒト線維肉腫細胞HT1080由
来で無血清無蛋白質培地に於いて生育可能な足場非依存
性細胞を、無血清無蛋白質培地で培養し、培養液から分
子量52000のプロコラゲナーゼを分離精製することを特
徴とするプロコラゲナーゼの製造方法に関する。
本発明で得られるプロコラゲナーゼは、医化学、生化
学および薬学の研究用試薬として有用である。
[従来の技術] プロコラゲナーゼはコラーゲン分解酵素(コラゲナー
ゼ)の前駆物質であり、間質型コラーゲン(I型、IIお
よびIII型コラーゲン)を分解するコラゲナーゼ(以
下、間質型コラゲナーゼと呼ぶ)のプロコラゲナーゼと
して分子量52000または57000のものが知られている(Bi
ochemistry,27巻,6751頁,1988年参照)。これは、プラ
スミン、トリプシン等の蛋白分解酵素あるいは水銀化合
物などによって間質型コラゲナーゼに活性化される。
間質型コラゲナーゼは、動物の結合組織中に豊富に存
在するコラーゲン(間質型コラーゲン)の代謝調節をし
ていると考えられ、コラーゲンの異常蓄積が認められる
肝硬変、動脈硬化、肺線維症およびケロイド、あるいは
コラーゲンの分解亢進の認められるリウマチ様関節炎、
歯周炎、角膜潰瘍等の関連に於いて注目され研究されて
来た(例えば、American Journal of Pathology、92
巻、509頁、1978年参照)。そしてまた、この前駆体で
あるプロコラゲナーゼも上記の各病態の解明に関して注
目されている(例えば、The Journal of Biological Ch
emistry,258巻、9374頁、1983年参照)。
従って、前記各病態の医化学的、生化学的および薬学
的研究のために、高純度のヒト由来プロコラゲナーゼが
要求され、この効率的製造方法が望まれている。
さて、ヒト皮膚線維芽細胞あるいは癌細胞がイン ビ
トロで、間質型コラゲナーゼおよびプロコラゲナーゼを
産生することは既に知られ、これら細胞の培養液からプ
ロコラゲナーゼが得られている(Biochemistry,16巻,16
07頁,1977年、同25巻,4750頁,1986年、同27巻,6751頁,1
988年、Proceeding of the National Academy of Scien
ces of the United States of America,83巻,3756頁,19
86年参照)。これら方法では、血清含有培地で細胞を増
殖させた後、培地交換し無血清培地とし、無血清培地中
に産生されるプロコラゲナーゼを分離精製している。こ
のように培地交換操作を行なうのは、使用する細胞がそ
の増殖に血清含有培地を必要とするが、血清含有培地の
ままではプロコラゲナーゼに血清成分が混入して精製が
困難であるからである。
[発明が解決しようとする課題] 上記公知の方法は以下のいずれかの点に於いて工業的
に十分とは言い難い。
すなわち、まず第1に、使用細胞はその増殖に高価な
血清を要求するので製造コストが高くなる。
第2に、血清含有培地で細胞を増殖させた後、無血清
培地へと培地交換する際に無血清培地で細胞を十分洗浄
する必要があるので操作が煩雑となる。
第3に、使用細胞のプロコラゲナーゼ生産能が低い。
生産能を上昇させるために培地中へホルボール 12−ミ
リステート 13−アセテートの添加がなされている場合
もあるが、これは発癌物質であってこの使用は危険であ
る。
本発明の目的は、上記の各欠点を克服し、工業的に有
利なプロコラゲナーゼの製造方法を提供することにあ
る。
[課題を解決するための手段] 種々検討の結果、本発明者等は、ヒト線維肉腫細胞HT
1080由来で無血清無蛋白質培地に於いて増殖可能な足場
非依存性細胞が、無血清無蛋白質培地中でプロコラゲナ
ーゼを高単位に産生する事を見い出し、この知見をもと
に本発明を完成した。
以下、本発明のプロコラゲナーゼ製造方法を説明す
る。
まず、ヒト線維肉腫細胞HT1080由来で無血清無蛋白質
培地に於いて増殖可能な足場非依存性細胞を無血清無蛋
白質培地に懸濁し、35〜37℃で静置培養する。
ヒト線維肉腫細胞HT1080由来で無血清無蛋白質培地に
於いて増殖可能な足場非依存性細胞は、ヒト線維肉腫細
胞HT1080(ATCC CCL 121)を無血清無蛋白質培地中で培
養し、ここで生育可能な細胞を選別することによって得
ることが出来る。すなわち、3〜4日の割合で細胞を含
む培養懸濁液の1/5〜1/2量を捨て、同量の新鮮な無血清
無蛋白質培地を補充する方法で培地交換しながら、ヒト
線維肉腫細胞HT1080(ATCC CCL 121)を無血清無蛋白質
培地中で1〜2年間培養し続け、生育した細胞を選別す
ることにより得ることが出来る。この様な方法で得られ
る細胞は、ヒト線維肉腫細胞HT1080(ATCC CCL 121)が
足場依存性であるのに対し、足場非依存性である。かく
して得られた細胞の1つは、「ヒト線維肉腫HT−P12−
4」と表示して工業技術院微生物工業技術研究所に寄託
した(受託番号、FERM P−10912)。
なお、上記と同様にして得られた細胞の1つは、既に
公知のものもある(ヒト線維肉腫細胞HT1080−SF2、生
体の科学、37巻、4号、266頁、1986年参照)が、この
細胞も本発明の製造方法に使用し得る。
無血清無蛋白質培地には、例えばハムF−12、イーグ
ルMEM、RPMI−1640、MEMダルベッコ液体培地等、通常の
無血清無蛋白質基礎培地から選ばれる1種または2種以
上の混合培地、好ましくはこれら培地にアミノ酸または
/およびビタミンを添加したpH6.5〜7.4の培地を使用す
る。アミノ酸または/およびビタミンの添加は、プロコ
ラゲナーゼ生産性を上昇させる効果が有る。これら培地
にはマイコプラズマによる汚染を防止するために例えば
硫酸ストレプトマイシン、硫酸カナマイシン等の抗生物
質を添加する事ができる。また培地のpHを調整するため
に適宜、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機
塩基を添加したり炭酸ガスを溶存させる事も出来る。
本発明に使用する細胞は、通常、培地1ml当り105個の
細胞密度以上で培養した時にプロコラゲナーゼの生産性
が高い。従って予め上記の培地で増殖させた細胞を集
め、好ましくは5X105〜3X106個/ml培地の細胞密度、さ
らに好ましくは1X106〜3X106個/ml培地の細胞密度に細
胞を懸濁し、通常4〜20日間、好ましくは7〜14日間静
置培養する。もちろん、上記の細胞密度以下で培養を開
始して細胞を増殖させ、これ以上の細胞密度に達してか
らさらに4〜20日間、好ましくは7〜14日間培養しても
良いことは言うまでもない。
次に、遠心分離、濾過等の通常の分離手段で培養液か
ら細胞を除去し、得られる培養上清液をカラムクロマト
グラフィーに付しプロコラゲナーゼを分離精製する。
カラムクロマトグラフィーによる分離精製は、通常2
段階で行なう。カラムから溶出されるプロコラゲナーゼ
は、後記のプロコラゲナーゼ量測定法により検出し、こ
れを指標に分画する。
第1段階目のカラムクロマトグラフィーでは、通常の
陽イオン交換体、例えばCM−セファロースCL−6B (フ
ァルマシア社製)あるいはヘパリン群特異的吸着体、例
えばヘパリンセファロース CL−6B(ファルマシア製)
を充填したカラムに培養上清を通し、下記の展開液で展
開し、粗製のプロコラゲナーゼの画分を分画する。
陽イオン交換体を充填したカラムクロマトグラフィー
の展開液には、CaCl2および非イオン界面活性剤を0.01
〜0.1v/v%含むトリス塩酸緩衝液と、CaCl2、非イオン
界面活性剤およびNaClを含むトリス塩酸緩衝液(pH7.
8)とを用い、直線的なNaClの濃度勾配をかけてプロコ
ラゲナーゼを溶出させる。非イオン界面活性剤には、ポ
リオキシエチレン ラウリルエーテルを用いるのが好ま
しい。プロコラゲナーゼはNaClが0.3〜0.5M濃度の時に
溶出する。
ヘパリン群特異的吸着体を充填したカラムクロマトグ
ラフィーの展開液にも上記と同様の緩衝液を使用し得る
が、この場合、プロコラゲナーゼはNaClの濃度が0.4〜
0.6Mの時に溶出する。
次に、上記で溶出した粗製のプロコラゲナーゼ画分を
要すれば膜フィルターで濃縮後、金属キレートアフィニ
ティカラムクロマトグラフィーで精製する。
このカラムには、例えば、金属キレーティングセファ
ロース 6B(ファルマシア社製)に亜鉛をキレーティ
ングし、これ(亜鉛キレーティングセファロース 6
B)を充填したカラムを使用する。
展開液には、NaCl、CaCl2および非イオン界面活性
剤、例えばポリオキシエチレン ラウリルエーテルを含
む酢酸緩衝液(pH約4.8)と、NaCl、CaCl2および非イオ
ン界面活性剤を含む2−(モルホリノ)エタンスルホン
酸モノハイドレート緩衝液(pH約6.8)とを用い、pH勾
配をかけながら(pHを徐々に低下させながら)カラムを
展開する。
プロコラゲナーゼは、展開液のpHが約5.3付近に達し
た時に溶出されるのでこの画分を集め、要すれば分子ふ
るい膜、例えばDIAFLO YM−5あるいはYM−10(アミ
コン社製)等の膜を使用して濃縮し、さらに要すればpH
を約7.5に調整してプロコラゲナーゼの水溶液を得る。
プロコラゲナーゼの水溶液は、通常凍結して保存する。
[発明の効果] 本発明の方法によると高価な血清を使用することな
く、高収量でしかも高純度のプロコラゲナーゼを容易に
製造することが出来る。また、本発明の方法で使用する
細胞は足場非依存性であるので、小さい培養装置で培養
可能である利点も有する。従って、本発明の方法はプロ
コラゲナーゼの工業的製造方法として優れている。
[実施例] 以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。な
お、プロコラゲナーゼの物理化学的、生化学的性質は、
以下の方法で測定した。
なお、測定時に使用する測定用緩衝液とは、0.2MNaC
l,5mMCaCl2,0.05(v/v)%Brij−35(ポリオキシエチレ
ン23ラウリルエーテルの商品名)および0.02(w/v)%N
aN3を含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)を意味す
る。また、特にことわりがない限り、%表示はv/v%を
意味する。
(a)プロコラゲナーゼ量の測定法 a−1)プロコラゲナーゼ量の定義: 以下の操作で、プロコラゲナーゼをトリプシンで活性
化し、生じるコラゲナーゼが1分間当り1μgのI型コ
ラーゲンを分解する量をプロコラゲナーゼの1単位とす
る。
a−2)プロコラゲナーゼの活性化方法: 検体溶液を測定用緩衝液に溶解して約0.1〜0.7単位/m
lの溶液を調製し、これを試験液とする。
次に、試験液50μにトリプシン溶液(濃度1mg/ml、
シグマ社製トリプシンType12を測定用緩衝液に溶解して
調製)20μを添加し、35℃にて5分間インキュベート
した後、ダイズトリプシンインヒビター溶液(濃度3mg/
ml、メルク社製ダイズトリプシンインヒビターを測定用
緩衝液に溶解して調製)30μを添加してトリプシンを
失活させ、コラゲナーゼ溶液を得る。
a−3)コラゲナーゼ活性の測定方法: 牛由来I型コラーゲンをフルオレッセンイソチオシア
ネートで標識した基質溶液、すなわちFITC−コラーゲン
(コスモバイオ社製)の0.01N酢酸溶液(濃度1mg/ml)
を用い、永井等の方法(炎症、4巻、123頁、1984年
参照)に従って上記コラゲナーゼ溶液の活性(単位/m
l)を測定する。
(b)分子量の測定: レムリーの方法(U.K.Laemmli,Nature,237巻、680
頁、1970年)に従い、SDS−ポリアクリルアミドゲルの
スラブ型電気泳動(6%ゲル)法で測定した。標準分子
量マーカーとして、ウサギ筋肉ホスホリラーゼb(分子
量94000)、ウシ血清アルブミン(分子量68000)、卵白
オブアルブミン(分子量43000)、ウシ赤血球カーボニ
ックアンヒドラーゼ(分子量30000)を用いた。
(c)パラアミノフェニル水銀酢酸(APMA)による活性
化の検討: 測定用緩衝液にプロコラゲナーゼを溶解し、約400単
位/mlの溶液を調製し、この140μにパラアミノフェニ
ル水銀酢酸の8mM溶液(測定用緩衝液に溶解して調製)2
0μを加え、35℃にて2時間インキュベートする。そ
の後、前記a−3)の方法でコラゲナーゼ活性を測定す
る。
(d)活性化して得られるコラゲナーゼの基質特異性お
よびコラーゲンの切断様式の測定: 上記(c)の方法でAPMAとのインキュベートにより活
性化して得たコラゲナーゼ溶液を、測定用緩衝液で60単
位/mlに希釈し、この10μをそれぞれI型、II型およ
びIII型可溶性コラーゲンの測定用緩衝液溶液(濃度1.5
mg/ml)100μに加え、37℃で4時間インキュベート
し、この溶液を上記(b)と同様にして電気泳動する。
(e)阻害剤の検討 上記(a)に記載の通り、トリプシンで活性化して得
たコラゲナーゼ溶液あるいは上記(c)に記載の通りAP
MAで活性化して得たコラゲナーゼ溶液を測定用緩衝液に
て0.5単位/mlに希釈し、この50μに阻害剤溶液[エチ
レンジアミン4酢酸2ナトリウム溶液(測定用緩衝液に
溶解、濃度20mM)、オルトフェナンスロリン溶液(測定
用緩衝液に溶解、濃度20mM)、あるいは組織金属プロテ
イナーゼ阻害物質の溶液(測定用緩衝液に溶解、濃度40
単位/ml)]50μを加え、前記(a)の方法でコラゲ
ナーゼ活性を測定し、阻害能を判定する。なお、組織金
属プロテイナーゼ阻害物質(The Journal of Biochemis
try,254巻、1938頁、1979年参照)は、ヒト線維芽細胞W
S−1株(ATCC CRL 1502)を培養し、CMセファロース
CL−6B、亜鉛キレーティングセファロース 6B(い
ずれもファルマシア社製)およびG−3000 SW−XL(東
洋ソーダ社製)を用いたカラムクロマトグラフィーによ
り調製した。
実施例1 ハム−F12培地[ハムF−12粉末培地(日水製薬社
製)10.6gを蒸留水1に溶解して調製、以下HF培地と
呼ぶ]1当りに、粉末イーグルアミノ酸ビタミン培地
(日水製薬社製)1.76g、炭酸水素ナトリウム1.6g、硫
酸ストレプトマイシン50mgおよび硫酸カナマイシン60mg
を加えた後、炭酸ガスを吹き込んでpHを約7に調整し培
地を調製した(以下、これをHF−AV培地と呼ぶ)。
ヒト線維肉腫細胞HT1080由来で無血清無蛋白質培地に
於いて生育可能な足場非依存性細胞(ヒト線維肉腫HT−
P12−4と表示し、工業技術院微生物工業技術研究所に
寄託済み、受託番号、FERM P−10912)を、HF−AV培地
に懸濁し、1X105個/ml培地の懸濁液として前培養した。
すなわち、この懸濁液を12個のフラスコ(底面積それぞ
れ225cm2)に50mlずつ加え、95%空気−5%炭酸ガスの
雰囲気下、37℃で14日間静置培養した。この間、培養開
始より4日目、8日目および11日目にそれぞれHF−AV培
地50mlを添加した。
14日間培養の後、培養上清液を吸引して廃棄の後、遠
心分離(600rpm,15分間)により細胞を集めた。
得られた細胞を、HF−AV培地に懸濁し、細胞密度1X10
6個/ml培地の懸濁液を調製し、この懸濁液を60mlずつ6
個のフラスコ(底面積175cm2)に加え、95%空気−5%
炭酸ガスの雰囲気下、37℃で14日間静置培養した。
培養液を集め、遠心分離(1000rpm、5分間)して培
養上清約340mlを得、これに1mM CaCl2および0.05% Bri
j−35(ポリオキシエチレン23ラウリルエーテルの商品
名)を含む10mMトリス塩酸緩衝液(4℃でpH7.8、以
下、CM−A緩衝液と略記する)を加えて600mlの溶液を
得た。
次に、この溶液を、CM−A緩衝液で平衡化したCM−セ
ファロースCL−6B (ファルマシア社製)が充填された
カラム(2.46cm X 18cm、充填容量85ml)に供した。CM
−A緩衝液でカラムを洗浄後、CM−A緩衝液250mlと、
0.7MNaClを含むCM−A緩衝液250mlとを用いて直線的な
濃度勾配法により毎時40mlの流速で展開した。プロコラ
ゲナーゼはNaCl濃度が0.3〜0.5Mの時に溶出した。
プロコラーゲナーゼを含む画分114ml(濃度、306単位
/ml)を集め、DIAFLO YM−5膜(アミコン社製)を用
いて濃縮して粗精製プロコラゲナーゼ溶液(濃度2123単
位/ml)15mlを得た。
この溶液を、0.5MNaCl、1mM CaCl2および0.05%Brij
−35(ポリオキシエチレン23ラウリルエーテルの商品
名)を含む50mM 2−(モルホリノ)エタンスルホン酸
モノハイドレート緩衝液(トリスにて4℃でpH6.8に調
整、以下、MES−A緩衝液と略記する)で平衡化した亜
鉛キレーティングセファロース6B (ファルマシア社
製)を充填したカラム(1.2cm X 16cm、充填容量18ml)
に供した。カラムをMES−A緩衝液で充分洗浄後、0.5MN
aCl、1mM CaCl2および0.05%Brij−35(ポリオキシエチ
レン23ラウリルエーテルの商品名)を含む酢酸緩衝液
(トリスにて4℃でpH4.8に調整、以下、酢酸緩衝液と
略記する)45mlと、MES−A緩衝液45mlとを用いて、毎
時13mlの流速でpH勾配をかけながら(pHを低下させなが
ら)展開した。プロコラゲナーゼはpHが5.3付近で単一
ピークとして溶出した。この画分を集めプロコラゲナー
ゼの溶液6.1ml(5619単位/ml)を得た。
ここで得られたプロコラゲナーゼは、以下に示す物理
化学的、生化学的性質から間質型コラゲナーゼの前駆体
であるプロコラゲナーゼと同定された。
・分子量:52000 ・活性化:そのままではコラゲナーゼ活性を示さない
が、トリプシン、パラアミノフェニル水銀酢酸およびパ
ラクロロ水銀安息香酸で活性化され、分子量43000のコ
ラゲナーゼが生成する。
・活性化により生成するコラゲナーゼの基質特異性:I
型、II型およびIII型コラーゲンを加水分解し、これら
を3:1に切断する。
・阻害剤:活性化により生成したコラゲナーゼは、エチ
レンジアミン4酢酸2ナトリウム、オルトフェナンスロ
リンおよびヒト線維芽細胞WS−1(ATCC CRL 1502)由
来組織金属プロテイナーゼ阻害物質により阻害される。
実施例2 実施例1の場合と同一の細胞を前培養し(前培養条件
は実施例1の場合に同じ)、HF−AV培地に懸濁し、それ
ぞれ5X105,8X105,1X106および2X106個/ml培地の細胞懸
濁液を調製した。この60mlずつをそれぞれ底面積175cm2
のフラスコ内に入れ95%空気−5%炭酸ガスの雰囲気
下、37℃で14日間静置培養した。
培養開始7日目および14日目に、各フラスコから培養
液1mlを採取した。2.5%Brij−35(ポリオキシエチレン
23ラウリルエーテルの商品名)20μ、次いで上記培養
液1mlをポリスチレン性遠沈管に入れ、1000rpmで5分間
遠心分離し、得られた培養上澄液を以下の分析時まで−
80℃で凍結保存した。
凍結保存していた培養上清をすみやかに解凍し、以下
の通りカラムクロマトグラフィーでコラゲナーゼ阻害物
質を除去し、プロコラゲナーゼ定量用試験溶液を調製し
た。
培養上澄液からのコラゲナーゼ阻害物質の除去法: MES−A緩衝液で平衡化した亜鉛−キレーティングセ
ファロース 6B(ファルマシア社製)0.5mlをカラムに
充填し、培養上清液0.5mlをカラム上部に加えた。
次いで、酢酸緩衝液とMES緩衝液とを混合してpH6.2の
緩衝液を調製し、カラムを4回洗浄した(1回当り1ml
の緩衝液を使用)。
次いで酢酸緩衝液とMES緩衝液を混合してpH5.3の緩衝
液を調製し、この緩衝液をカラムに2回通した(1回当
り1mlの緩衝液を使用)。
溶出液(pH5.3の画分)を集め、1N NaOHで中和し、プ
ロコラゲナーゼ定量用溶液を得た。
次に、前記のプロコラゲナーゼ量測定法に従い、この
溶液中のプロコラゲナーゼ量を測定し、この値から、プ
ロコラゲナーゼの生産量(単位/ml培地)を算出した。
結果を第1表に示す。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ヒト線維肉腫細胞HT1080由来で無血清無蛋
    白質培地に於いて生育可能な足場非依存性細胞を、無血
    清無蛋白質培地で培養し、培養液から分子量52000のプ
    ロコラゲナーゼを分離精製することを特徴とするプロコ
    ラゲナーゼの製造方法。
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