JP2874716B2 - 信号処理装置 - Google Patents

信号処理装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、信号処理装置に関
し、特に、記録データを再生する機能を有するディスク
装置に用いられる再生信号処理回路に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ディスク記録装置において、記
録密度の上昇に伴なう信号劣化を補償するため、PRM
L(Partial−Response Maximu
m−Likelihood)信号処理と呼ばれる再生信
号処理が実用化されている。PRML信号処理とは、例
えば、「1994年、テレビジョン学会年次大会(IT
E '94)予稿集、287〜288頁」に示されている
ように、高い記録密度において再生信号の符号間干渉量
が増大したり、光ディスクのヘッド/媒体部の記録再生
過程で再生信号に加わるノイズが増大しても、それらを
再生信号中から除去し信号処理後のデータビットの誤り
率を低減させる方式である。
【0003】ここで、従来のPRML信号処理方式につ
いて、図9,図10,図15〜18を参照して説明す
る。このPRML信号処理方式では、データが最小符号
反転間隔δ=2の変調符号によって変調され、変調後の
信号が、Non−Return−to Zero In
version(NRZI)変換によってビット列の変
換が行われ、変換後のデータ列が、光ディスクの場合に
は記録媒体上へ記録、磁気ディスクの場合には垂直磁気
記録され、その(磁気ディスクの場合にはMRヘッドに
よる)再生信号に対し、PRML信号処理を施す。な
お、以下の説明では、光ディスク装置の場合について説
明する。
【0004】光ディスク装置において、ヘッド/媒体部
における記録ピットの形状及び信号の変化を図18
(a)〜(g)に示す。図18(a)は最小符号反転間
隔(δ)が2の変調符号列、図18(b)はNRZI変
換器出力、図18(c)はLDドライバ出力、図18
(d)は生成される記録ピット、そして、図18(e)
は再生信号A′であり、各図は時間方向に同期して描か
れている。ここで、δは変調符号列のディジット1と1
の間にあるディジット0数の最小値であり、変調符号の
特性や適用するPRML信号処理装置の構造に影響する
重要な値である。
【0005】図18(c)のLDドライバ出力は図18
(b)のNRZI変換器出力が1の場合にだけONとな
る様子を示している。その結果、変調符号が1の場合に
だけ光ディスク媒体上に図7(d)に示すタイミングで
記録ピットが生成される。
【0006】特に記録密度が高い場合には、再生ヘッド
の出力信号A′は、図18(e)に示す符号間干渉の発
生によって分解能が低下してなだらかな波形となってし
まい、実際にはこれに媒体ノイズが加わるので、再生信
号の各時刻でのレベルを観察するだけでは図18(e)
の再生信号から図18(a)の各時刻の変調符号列を正
しく再現することは困難となる。
【0007】図18(e)の再生信号A′から正しく図
18(a)k変調符号列を再現するため、再生信号A′
はPRML信号処理回路に入力される。
【0008】図16は従来のPRML信号処理回路の構
成を示したものである。再生信号A′はまずPR等化器
161へ入力される。PR等化器161では部分的に振
幅の低下した再生信号A′を、図18(f)に示すよう
に、信号サンプル時刻において、{0,±0.67,±
1}のいずれかの値をとるような信号E′へ等化する。
図18(f)の信号レベル−1.0をベースラインレベ
ルと呼ぶとき、信号E′は図18(d)の記録ピットの
単位長に対して各時刻におけるレベルが0.33,0.
66,0.66,0.33、即ち、0.33と1の積、
0.33と2の積、0.33と2の積、0.33と1の
積という単位波形を割り当て、これら単位波形をピット
パターンに応じて畳み込んだ後で、畳み込んだ波形をベ
ースラインレベルに加えた波形になっている。
【0009】信号E′は次にビタビ検出器162へ入力
され、ここでビタビ検出されることによって信号E′に
含まれるビット誤り個数が低減される。
【0010】図17はδが2の変調符号をME記録しそ
の再生信号をPR(1,2,2,1)等化した場合に用
いられるビタビ検出器162の構成図である。図17
で、枝メトリック計算回路174は等化器出力信号E′
と5個の基準振幅{−1,−0.67,0,0.67,
1}それぞれとの差の二乗(E′+1)2 ,(E′+
0.67)2 ,(E′−0)2 ,(E′−0.6
7)2 ,(E′−1)2 を計算し、これらそれぞれを枝
メトリックB1′〜B5′としてACS回路174へ出
力する。
【0011】ACS回路174の動作を数1に示す。
【0012】
【数1】 従来において、数1を参照する際には、数1のEをE′
に、B1〜B5それぞれをB1′〜B5′に読み替える
ものとする。
【0013】ビタビ検出動作を行う前に、ビタビ検出器
は数1(a)に示すようにパスメトリックP(1)〜P
(6)を0にリセットする。次に、再生動作時には各時
刻tにおいて、ACS回路にはまずB1′〜B5′が入
力される。これらを用いて、ACS回路は、数1(b−
1)に示すパスメトリックと枝メトリックの和P
t (1)+B1,Pt (4)+B2,Pt (3)+B
4,Pt (6)+B5を計算した後、Pt (1)+B1
とPt (4)+B2,Pt (3)+B4とPt (6)+
B5の大小比較を数1(b−1)の不等式に示すように
行い、各大小関係に応じたビタビ検出器制御信号J1,
J2={0,1}をパスメモリへ出力する。
【0014】次に、ACS回路は、数1(b−2)に示
すように内部のパスメモリの更新を行う。即ち、次時刻
t+1において利用するパスメトリックPt+1 (1)へ
t(1)+B1′とPt (4)+B2′のうち小さい
方を代入する、Pt+1 (2)へPt (1)+B2′を代
入する、というようにしてPt+1 (1)〜Pt+1 (6)
を求める。次に、パスメトリックがオーバフローしない
ようにPt+1 (1)〜Pt+1 (6)それぞれからPt+1
(6)を差し引く。数1(b−3)はこの手順を示した
ものである。以上の数1(b−1),(b−2),(b
−3)を各時刻tにおいて行うことがACS回路の動作
である。
【0015】図17において、ACS回路から出力され
たパスメモリ制御信号J1,J2はパスメモリ175へ
入力される。図9にビタビ検出器のパスメモリの構成を
示す。図9で、1個のビットを処理する時刻毎に、パス
メモリ制御信号の値が(J1,J2)=(0,0),
(1,0),(0,1),(1,1)それぞれの場合に
対して、検出系列切替器(1)〜検出系列切替器(n)
91の全ての入出力端子の接続法を図10(a),
(b),(c),(d)のいずれかに示した形とする。
図9には(J1,J2)=(0,0)の接続が示されて
いる。
【0016】次に、図9の検出系列切替器(1)〜検出
系列切替器(n−1)91の出力端子に接続されている
一単位時間遅延素子FF(1)〜FF(n−1)92の
値全てを右向きに次の一単位時間遅延素子へ検出系列切
替器を経由してシフトさせ、同時に入力端子X1〜X6
それぞれからビタビ検出器出力系列ディジットの候補で
あるV1=0,V2=1,V3=0,V4=0,V5=
1,V6=0を入力する。これによって、一時刻分のビ
タビ検出器出力Z′がビタビ検出器出力端子d2から出
力され、かつ前記V1〜V6は検出系列切替器(1)と
その出力端子Y1〜Y6を経由して4個の一単位時間遅
延素子FF1へ入力される。
【0017】図9では最後の検出系列切替器(n)の出
力端子Y1だけがビタビ検出器出力端子d3へ接続され
ているが、検出系列切替器の数nが数十以上と大きけれ
ば検出系列切替器(n)の出力端子Y1〜Y3から出力
される系列は互いに同一となるから、一個の出力端子例
えばY1だけをビタビ検出器出力端子d2へ接続すれば
よい。
【0018】以上の手順を各時刻において行うことによ
り、ビタビ検出器出力端子d2から二元シンボル{0,
1}からなるビタビ検出器出力系列Z′が出力される。
【0019】数5の(a)及び(b)に示した枝メトリ
ックやパスメトリックの更新手順、制御信号J1,J2
の決定法、及び図10に示した検出系列切替器の入出力
端子間の接続法は、いずれも図11(a)のME記録・
PR(1,2,2,1)用トレリスに基づいて定められ
たものである。
【0020】図11(a)のトレリスはδが2の変調符
号をME記録しその再生信号をPR(1,2,2,1)
等化した信号(図18のE′)のレベルの、ノイズが加
わっていない場合の遷移規則を表す。図11(a)の各
枝に付された[出力ビット/基準振幅]において、出力
ビットは図9のV1〜V6を定め、基準振幅は図17の
減算器172の入力値−1,−0.67,0,0.6
7,1を定めている。また、同図中の四角形はトレリス
の状態を表し、各状態間を結ぶ枝の接続法は図9の検出
系列切替器91内の伝送線の接続規則を定めている。
【0021】以上、光ディスクの記録・再生チャネルに
PRML信号処理を施す技術について説明したが、図1
8において、記録ピット有りの領域を記録磁化が上向
き、記録ピット無しの領域を記録磁化が下向き、という
ように対応させると、そのMRヘッドによる再生信号の
波形形状は図18(e)の再生信号A′とほぼ同一とな
るから、以上述べた装置は磁気ディスク装置において垂
直磁気記録を行いMRヘッドを用いて再生する場合にも
適用できる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の信号
処理装置では、ビタビ検出入力列に含まれるノイズは電
力密度が周波数に関して偏りをもつノイズすなわち有色
ノイズであり、ビタビ検出器入力列に有色ノイズが存在
すると、同一の電力の白色ノイズが存在する場合に比べ
て、ビタビ検出器出力列のビット誤り率が劣化すること
が挙げられる。
【0023】このような問題点が存在する理由は、一般
に再生信号中に含まれるノイズは白色に近いが、これが
PR等化器を通過する際に、再生信号がPR特性をもつ
信号へ等化されるのと引き替えに、ノイズには電力密度
の偏りを生じさせるからである。
【0024】本発明の目的は、光ディスク装置または垂
直磁気記録された磁気ディスク装置のPRML信号処理
装置において、ビタビ検出器入力信号に含まれるビタビ
検出器出力信号のビット誤り率を低減させることができ
る信号処理装置を提供することにある。
【0025】本発明の他の目的は、再生信号の電力密度
が時間的に変動しPR等化器で作られるノイズの自己相
関が変動しても、ビタビ検出器出力のビット誤り率を常
に低く保つことのできる信号処理装置を提供することに
ある。
【0026】本発明のさらに他の目的はビタビ検出器の
基準振幅の一部を外部から設定できるようにして有色性
をもつノイズが加わったビタビ検出器入力信号のビット
誤り率を低減できる信号処理装置を提供することにあ
る。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明の信号処理装置
は、装置を構成するビタビ検出器の基準振幅の少なくと
も一部をPR等化器の伝達特性を元に基準振幅計算部に
よって計算しビタビ検出器へ設定することを特徴とす
る。これにより、PR等化器を通過することにより自己
相関をもつに至ったノイズを含むPR等化器出力信号
を、従来のビタビ検出器よりもビット誤り率低くビタビ
検出処理することが可能となる。
【0028】前記特徴は、有色ノイズに適したビタビ検
出動作を行わせる際に、ビタビ検出器が保持するパスメ
トリックを直接に操作するのではなく、ビタビ検出器の
基準振幅の少なくとも一部だけを従来の値から有色ノイ
ズに適する値へ変更するものである。これにより、基準
振幅計算部を新たに設ける代わりに、従来のビタビ検出
器の構成と動作を流用することが可能となる。
【0029】また、PR等化器は適応的にその伝達特性
を制御し、かつ前記伝達特性は基準振幅計算部へ逐次的
に入力され、基準振幅計算部は前記伝達特性から逐次的
に有色ノイズに適した基準振幅を計算することも他の特
徴である。これにより、再生信号の電力密度分布の変動
に伴ってPR等化器のタップ係数が変動しても、常にP
R等化器で作られる有色ノイズに適した基準振幅を計算
しビタビ検出器がこれを利用してビット誤り率低減の効
果を発揮することが可能となる。
【0030】また、再生出力信号の変動が小さい場合に
は、既知のPR等化器の伝達特性からあらかじめビタビ
検出器に設定すべき適した基準振幅を計算しておき、前
記計算結果を固定的にビタビ検出器に設定することも本
発明の他の特徴である。これにより回路規模は従来のP
RML信号処理回路とほとんど同一であるにもかかわら
ずビタビ検出器出力信号のビット誤り率を従来よりも低
減させることが可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】以下本発明について図面を参照し
て説明する。
【0032】ここでは、まず、図11(a),(b)、
図12を参照して本発明の作用を説明する。ここでは例
としてEFM符号や2−7変調符号を用いマークエッジ
(ME)記録した信号を、再生後にPR(1,2,2,
1)等化し、これをビタビ検出する場合を考える。
【0033】図11(a)はPR(1,2,2,1)等
化した信号をビタビ検出するビタビ検出器の動作原理を
示す図で、トレリスと呼ばれる。同図において、t−
1,tは時刻を、S1〜S6はトレリスの状態を表す。
時刻t−1からtへは各状態間が矢印で結ばれておりこ
れは枝と呼ばれる。枝は、ビタビ検出器が検出する入力
値列に制約を加える。例えば、図11(a)において時
刻t−1のS1からは時刻tのS1とS2へしか枝が接
続されていない。これは、時刻t−1までで状態S1に
入った枝があるとすると、その次の時刻tへはS1→S
1あるいはS1→S2へしか枝が続かないという制約で
ある。枝とビタビ検出器入力値とを関連づけるのは各枝
に付された[出力ビット/基準振幅]であり、基準振幅
とはビタビ検出器入力値として期待される値、これに併
せて記載された出力ビットとは前記基準振幅に対応する
ビタビ検出器出力ビットの候補である。
【0034】図11(b)は図11(a)のトレリスを
時間方向に4個並べた図である。以後、連続した枝の集
合をパスと呼ぶ。図11(b)には実線で時刻t−1で
S1から始まりS1→S1→S2→S3→S6と遷移す
るパスと同S1→S2→S3→S6→S6と遷移するパ
スが示されている。各パスの枝に付された値はその枝の
基準振幅であり、前者の各時刻のパスの基準振幅を並べ
ると1,0.67,0,−0.67、後者のそれは0.
67,0,−0.67,−1である。各時刻毎に基準振
幅の差を計算しそれらの二乗の和を作ると1.11とな
り、これは図11(b)のトレリスにおいて全ての二個
のパスの組み合わせの中で最小であるため最小自由距離
と呼ばれる。特にノイズの量が比較的小さい場合には、
ビタビ検出器出力系列中のビット誤りの原因は、前記最
小自由距離を与えるパスの組み合わせの一方に対応する
記録データが、記録再生過程のノイズにより他方のパス
へ誤る場合が支配的となる。従ってビタビ検出器出力系
列のビット誤り率の、ビタビ検出器入力列のビット誤り
率に対する改善量は、このトレリスの最小自由距離で定
まると考えて良い。以後は最小自由距離を与えるパスの
組み合わせに関してだけ検討する。
【0035】前記最小自由距離を与える二本の各パスの
基準振幅列を4次元ベクトルとして数2のように表す。
【0036】
【数2】 また、ヘッド/媒体部分で発生するノイズを加法性白色
ガウスノイズと仮定する。この時、ビタビ検出器の入力
信号に注目すると、ビタビ検出器入力信号におけるSN
Rは等化器入力信号のSNRよりも改善されているけれ
ども、依然ノイズは存在する。等化器の等化目標値u=
{0,±0.67,±1}付近のビタビ検出器入力信号
値yの確率密度の分布は、σをこの分布の標準編差とす
ると、数3となる。
【0037】
【数3】 次にノイズを4時点分まとめて捉える。仮にビタビ検出
器入力信号中のノイズがサンプル各時刻の値間に相関を
もたないノイズ、すなわち白色ノイズであるならば、4
次元空間内でのノイズ分布pw (ベクトルy)は分布の
平均:ベクトルu=(u1 ,u2 ,u3 ,u4 t に対
し数4となる。
【0038】
【数4】 ここにy1 〜y4 はそれぞれ時刻1,2,3,4におけ
るビタビ入力値の座標を示す。ノイズが加わらない場合
の信号点(u1 ,u2 ,u3 ,u4 )がベクトルaまた
はbならば、ノイズは加法性なのでノイズ分布の中心点
はこれらベクトルaまたはベクトルbとなる。この時、
ベクトルu=ベクトルa、ベクトルbとしpを様々な値
に変えると、各pに対応するベクトルyの集合はベクト
ルa、ベクルbを中心とし半径が一定でない同心の球と
なる。pc (ベクトルy−ベクトルu)=pにおいてp
=p1 ,p2 の場合の例を二次元上に模式的に表すと図
12(b)の二個の同心円群となる。
【0039】ところで、ビタビ検出器の動作は、最小自
由距離を与えるパスに関する限り、あるビタビ検出器入
力信号ベクトルyに対し数5の二個の値
【0040】
【数5】 を計算し、|ベクトルy−ベクトルa|,|ベクトルy
−ベクトルb|のうちいずれか小さい方を定めるもので
ある。すなわち図12(b)でベクトルa,ベクトルb
のうちベクトルyから近い距離にあるどちらか一方を検
出結果として定める。これは、図12(b)においてベ
クトルaとベクトルbを結ぶ線分を垂直に二等分する平
面Pによって空間全体を二個の空間に分け、入力信号
点:ベクトルyがベクトルa側の空間に存在すれば検出
結果としてベクトルaを出力し、入力信号点:ベクトル
yがベクトルb側の空間に存在すれば検出結果としてベ
クトルbをしつつすることに相当する。また、平面P
は、信号点のベクトルaを中心とし分布するノイズのう
ちPを越えてベクトルb側へ逸脱するノイズ量と、信号
点のbを中心とし分布するノイズのうちPを越えてベク
トルa側へ逸脱するノイズ量の和を最小にするような境
界をつくる。、平面となっている。
【0041】しかし、実際には、PR等化器入力信号中
のノイズが白色であっても、PR等化器において各サン
プル時刻におけるノイズ間に相関が生じるので、ビタビ
検出器入力信号中のノイズは有色ノイズとなる。以下、
PR等化器入力信号中のノイズが白色であるという前提
で、PR等化器により作られるPR等化器により作られ
るPR等化器出力信号中のノイズ分布を、図12(b)
と同様4個の時刻に関し求める。例としてPR等化器が
図15に示すようなタップ数N、各タップ係数が数6の
トランスバーサルフィルタである場合を考える。4個の
時点の間に前記N個のタップへ入力され得る計N+3個
の等化器入力列を数7とすれば、等化器出力信号列yi
は数8で表される。
【0042】
【数6】
【0043】
【数7】
【0044】
【数8】 数8の変換を(y1 ,y2 ,y3 ,y4 t =Λ
(x1 ,x2 ,…,xN+3 tと表し、以後は(y1
2 ,y3 ,y4 t をベクトルy,(x1 ,x2
…,xN+3 t をベクトルxとする。ベクトルxの要素
であるx1 ,x2 ,…,xN+3 個々の頻度分布はガウス
分布であり、これらは数3においてyをxi 、i=1,
2,…,N+3に読み替えた式に従う。これに加えてベ
クトルyとベクトルxの間に数8の関係があるとき、ベ
クトルyの生起確率分布pc (ベクトルy)はその分布
の平均値であるベクトルu=(u1 ,u2 ,u3
4 )に対し数9及び数10で表される。
【0045】
【数9】
【0046】
【数10】 ここにσ=1とした。またrk,m はRの余因子であり、
行列Rの中で第i行の要素とj列の要素(i,j=1,
2,3,4)を取り除いてできる3行3列の行列Ri,j
の行列式|Ri,j |に対し、数11で定義される。
【0047】
【数11】 数9において、pc (ベクトルy−ベクトルu)=p
(pはある確率)をみたすベクトルyの集合は一般に座
標軸がy1 ,y2 ,y3 ,y4 の4次元空間上の半径が
一定でない球となる。ベクトルu=ベクトルa,ベクト
ルbとしpを様々な値に変えると、各pに対応するベク
トルyの集合はベクトルa,ベクトルbを中心とし半径
が一定でない同心の球となる。pc (ベクトルy−ベク
トルu)=pにおいてp=p1 ,p2 の集合の例を二次
元上に模式的に表すと図12(a)の二個の楕円群とな
る。同図で従来の基準振幅の垂直二等分面Pは有色ノイ
ズの下では前記逸脱するノイズ量を最小とするような境
界平面になっていないので、有色ノイズ下においても従
来の基準振幅からなるベクトルa,ベクトルbを用いた
のではビタビ検出器出力系列のビット誤り率は劣化す
る。
【0048】今、図12(a)のベクトルa,ベクトル
bを中心とした二個のノイズ分布を、平面Pとは別のあ
る図形Qで隔てることを考える。この時、ベクトルaを
中心として分布するノイズのうちQを越えてベクトルb
側へ逸脱するノイズ量と、ベクトルbを中心として分布
するノイズのうちQを越えてベクトルa側へ逸脱するノ
イズ量の和を最小にするように境界となる図形Qは、数
12
【0049】
【数12】 を満たすベクトルyの集合である。すなわち上式の解
は、図12(a)のベクトルaを中心とするノイズ分布
において確率p1 ,p2 を与える楕円と、ベクトルbを
中心とするノイズ分布において確率p1 ,p2 を与える
楕円それぞれの交点を結んだ図形になっている。数11
を解くとQは数13及び14の平面となる。
【0050】
【数13】
【0051】
【数14】 ここにベクトルHはQの法線ベクトル、ai ,bi は式
1でそれぞれベクトルa,ベクトルbのyi 軸の要素で
ある(i=1,2,3,4)。
【0052】ここで、H1 〜H4 相互の関係を求めてお
く。数7で定義される行列Λの第i行をベクトルΛi
すると、数15となる。
【0053】
【数15】 数8においてΛの各行はN次元ベクトル(c1 ,c2
…,cN )を行を進める毎に右へ一列ずつスライドさせ
た形になって、数16
【0054】
【数16】 が成立。この時Rの余因子ri,j 、i,j=1,2,
3,4の間には数17の関係
【0055】
【数17】 が成立する。数17と、数2すなわち−a1 +b1 =−
4 +b4 ,−a2 +b2 =−a3 +b3 から、H1
4 及びH2 =H3 が成立する。
【0056】図12(a)で、境界平面を従来の平面P
からQへ変更するためには、ビタビ検出器の従来の基準
振幅であるベクトルa,ベクトルbそれぞれを同図のベ
クトルL,ベクトルMへ変更すればよい。ここでベクト
ルL,ベクトルMはそれらの垂直二等分面がQとなるよ
うな二個の点である。QがベクトルL,ベクトルMの垂
直二等分面であるためにベクトルL,ベクトルMが満た
すべき条件は、数18となる。
【0057】
【数18】 ここで新しい基準振幅ベクトルL,ベクトルMの各座標
を変数m1 〜m5 に対し数19のように定める。
【0058】
【数19】 ベクトルL,ベクトルMの座標にm2 ,m3 ,m4 が共
通に含まれる理由は、図11(b)でa2 とa1 ,a3
とb2 ,a4 とb3 それぞれは時刻は異なるが互いに同
一の基準振幅の枝がパスであるベクトルa,ベクトルb
を構成しているからである。このためベクトルaをベク
トルLへ、ベクトルbをベクトルMへ変更した後も、ベ
クトルLとベクトルMの各座標は条件3の関係を満たさ
ねばならない。
【0059】さて、ベクトルLとベクトルMは条件1〜
3を満たす範囲内で任意に定められるが、ここでは以下
の計算を楽にし、ビタビ検出器の回路規模を削減するた
め、前記各基準振幅が数20の条件
【0060】
【数20】 を満たすとする。これでベクトルL,ベクトルMは二個
の変数だけで表される。また条件4とH1 =H4 ,H2
=H3 から、ベクトルLとベクトルMの中点は平面Q上
に乗るので、条件4を満たせば条件2は自動的に満たさ
れる。条件1,4及びH1 =H4 ,H2 =H3 から数2
1が成立する。
【0061】
【数21】 平面Qを境界平面とするようなビタビ検出器の新しい5
個の基準振幅は、例えばm1 を変数とすれば、従来の基
準振幅{−1,−0.67,0,0.67,1}それぞ
れに代わり数22の値となる(m1 >0)。
【0062】
【数22】 ここに、m1 は任意の値でよいが、実際にはビタビ検出
器のトレリスにおいて第二番目に小さい自由距離に影響
を与えない程度の値としなければならない。例えばm1
を1付近の値とすれば問題はない。
【0063】図11(b)のトレリスにおいて最小自由
距離を与えるパスの組み合わせは、上で取り扱ったもの
の他にS6→S5→S4→S1→S1とS6→S6→S
5→S4→S1という組み合わせが存在する。前記パス
の組み合わせに関してこれまで説明した手順により新し
い基準振幅を計算すると、結果は数22に示した基準振
幅と同一となる。
【0064】ここでは、例として、δ=2,ME記録,
PR(1,2,2,1)等化の場合に、等化器で作られ
るノイズの有色性をキャンセルするようなビタビ検出器
の新しい基準振幅を求めたが、δが他の値の変調符号を
用いた場合、ME記録でなくマークポジション(MP)
記録を行った場合、PR(1,2,2,1)等化でなく
他のパーシャルレスポンス等化を行いこれに対応するビ
タビ検出を行う場合にも、以上述べたのと同様の手順に
よって、PR等化器で作られるノイズの有色性をキャン
セルするビタビ検出器の基準振幅が求められる。
【0065】ただし、ここで述べた方式が適用され得る
のは、再生信号にPRML信号処理を施す装置におい
て、ビタビ検出器のトレリスにおける最小自由距離を示
す二個のパスの組み合わせが、図11(b)に示すよう
に一定の長さとなる場合である。このような再生チャネ
ルの中には、光ディスクの再生チャネル全般、及び磁気
ディスクにおいて垂直磁気記録された信号をMRヘッド
を用いて再生するチャネルが含まれる。
【0066】次に、本発明の実施の形態を図面を参照し
て詳細に説明する。まず、第一の発明の形態を図1〜図
10を参照して説明する。本発明の形態において変調符
号は2−7変調符号あるいはEFM符号等のディジット
“1”と“1”との最小間隔(最小符号反転間隔:δ)
が2の符号を用いるとし、記録方式はマークエッジ(M
E)記録、等化器においてはPR(1,2,2,1)等
化を行い、以上のチャネルから定まる等化器出力信号を
ビタビ検出するとする。
【0067】第一の発明の形態は図1に示すようにパー
シャルレスポンス(PR)等化器1とビタビ検出器3、
及び基準振幅計算部2からなる。ヘッド再生信号AはP
R等化器1の端子a1に入力される。前記等化器は再生
信号Aの特性が変動しても常に等化器出力信号を所望の
PR特性に等化するように自身の出力信号をフィードバ
ックしてタップ係数を適応制御する。PR特性をもつ信
号EはPR等化器1の端子a2からビタビ検出器3へ出
力される。前記ビタビ検出器は、端子d1から入力され
た等化信号Eが等化器で指定したPR特性をもつと仮定
して、Eを最尤検出し、これにより記録再生時に加わっ
たノイズによるビット誤りが除去され、信号Zが端子d
2から出力される。また前記等化器は端子a2から等化
信号Eを出力するのと同時に、端子a2より前記等化器
に使用されているN個のタップ係数C(1),C
(2),…,C(N)を同時に並列に出力し基準振幅計
算部2へ送る。ここで等化器1はトランスバーサル形等
化器、前記タップ係数C(i)は前記等化器の伝達特性
を表し作用の章のci に対応する(i=1〜N)。基準
振幅計算部2は、端子b1より入力された前記N個のタ
ップ係数から等化器出力Eに含まれるノイズの自己相関
を計算し、かつ前記計算結果を用いて、更に前記ノイズ
が加わった再生信号をビタビ検出するために適切なビタ
ビ検出器の基準振幅を計算する。前記計算された基準振
幅は2の端子b2からビタビ検出器3へ伝送され、ビタ
ビ検出器動作に使用される。
【0068】次に図1の第一の発明の形態を構成する3
個の構成要素を個別に詳細に説明する。
【0069】PR等化器1の構成を図2に示す。図2で
は、等化器入力信号列Aから、一単位時間遅延素子21
によって1サンプル時間間隔ずつ離れた時刻における再
生信号の列i(1),i(2),…,i(N)が作られ
る。前記信号列は乗算器24によってそれぞれ現時刻の
タップ係数列C(N),…,C(2),C(1)と乗算
される。この後前記乗算結果は加算器25において加算
されE=C(N)・i(1)+…+C(2)・i(N−
1)+C(1)・i(N)となって端子a2よりビタビ
検出器3へ出力される。C(N),…,C(2),C
(1)を適切に選択することによってEはPR特性をも
つ信号となるが、このためのタップ係数C(N),…,
C(2),C(1)の制御の方法を次に述べる。
【0070】PR特性をもつ信号には様々なものがある
が、この実施例ではPR(1,2,2,1)等化の例を
示すことにする。ME記録されたδ=2の変調符号化列
をPR(1,2,2,1)等化すると、等化後の値は
{−1.0,−0.67,0,0.67,1.0}のい
ずれかの値となる。これら5個の値を以下ではPR
(1,2,2,1)等化の等化目標値と呼ぶ。等化器に
PR(1,2,2,1)等化動作を行わせるためには、
その出力信号のサンプル時刻における値をモニタし、前
記PR(1,2,2,1)の等化目標値と前記サンプル
時刻における等化器出力値の差の電力が最小となるよう
に前記タップ係数列を適応制御すれば、等化器入力信号
の特性が変動しても、等化器出力信号を常にPR(1,
2,2,1)特性をもつ信号に設定することが可能とな
る。このために図2において出力信号Eから参照信号計
算器26によって等化器出力の最寄りの等化目標値A1
を求め、AlとEから誤差信号計算器27によって等化
誤差A2=A1−Eを算出する。A2は再生信号の列i
(1),i(2),…i(N)それぞれと共に相関器2
2へ入力され、22において各時刻の再生信号と等化誤
差との相関が求められる。前記相関器は例えば2個の入
力端子をもつ乗算器によって実現できる。前記相関器出
力は次に積分器23へ入力される。積分器23は相関器
22の出力信号を常に過去一定時間分だけ加算し保持す
る。前記積分器が保持する加算値はタップ係数更新回路
28に入力され、前記回路28は以下に述べる手順で現
在のタップ係数の値を等化誤差を0に近づけるように各
時間T毎に修正する。この修正単位となる時刻Tは等化
器に入力されるビット列の伝送速度の逆数と同一であ
る。
【0071】タップ係数更新回路28におけるタップ係
数の修正方法を説明する。以下では各タップ係数C
(j),j=N,…,1の時刻tにおける値をC(j,
t)、時刻tにおける等化後差をA2(t)と表す。図
2において第j番目のタップ(タップ係数C(j)が乗
算されるタップ)の積分器23は内部に値固定の係数α
を保持し、相関器22の出力信号A2(t)・i(N−
j−t)をもとに数23の計算を各時刻において行う。
【0072】
【数23】 ここにMは1〜3程度の値とすればよい。また全てのタ
ップのタップ係数更新回路28がもつαは互いに同一の
値とする。数23の計算を各時刻において全てのjに対
して行う。このタップ係数の修正方法は、従来の適応等
化器と同様の方法である。図2において各時間毎に修正
されたタップ係数は乗算器24へ向け出力され等化器出
力信号の計算に使用されると同時に、端子a3から基準
振幅計算部の端子b1へ出力され、図1の基準振幅計算
部2へ送られる。
【0073】図3は等化器1に用いられる参照信号計算
器26の一構成例を表したものである。同図では等化器
1の出力信号Eが端子e1から入力後4個の減算回路へ
同時に独立に入力される。各減算器31における各減算
回路のマイナス端子にはPR(1,2,2,1)等化器
の等化目標値間の中央値が設定されていて、これらとE
との減算結果すなわちF1=E−0.83,F2=E−
0.33,F3=E+0.33,F4=E+0.83が
参照信号選択回路へ出力される。F1〜F4の符号を観
察すればEの最寄りの等化目標値がわかる。参照信号選
択回路32では数24に示した手順に従ってその出力A
1を定める。
【0074】
【数24】 次に図1の基準振幅計算部2を詳細に説明する。図4は
基準振幅計算部2の構成を示す。同計算部は3個の構成
要素から成る。基準振幅計算部は、適応等化器のタップ
係数C(1)〜C(N)から、ビタビ検出器出力列のビ
ット誤り率を減少させるようなビタビ検出器基準振幅を
計算する。
【0075】図4で、PR等化器のタップ係数はまず相
関係数計算回路41へ入力される。図5(a)に相関係
数計算回路の一構成例を示す。図5(a)で図の上部か
ら入力されたタップ係数C(1)〜C(N)から、図5
(b)に示した積和計算回路によって、自身及び他のタ
ップ係数との積和が作られ、数25で示す相関係数CO
L0〜COL3となって端子k2から余因子計算回路4
2へ出力される。
【0076】
【数25】 例えば、k2端子から外部へ出力されているCOL1に
着目すると、COL1は、乗算器入力端子からC1とC
2が入力される積和計算回路51の出力であり、かつ前
記積和計算回路内の加算器入力端子には、乗算器入力端
子からC2とC3が入力される積和計算回路の出力値
が、入力される。これの繰り返しによってCOL1=C
(1)・C(2)+C(2)・C(3)+…+C(N−
3)・C(N−2)が計算される。COL0〜COL3
はそれぞれ数19のΛ1 ・Λ1 ,Λ1 ・Λ2 ,Λ1 ・Λ
3 ,Λ1 ・Λ4 に一致する。
【0077】前記相関係数COL0〜COL3は余因子
計算回路42へ出力される。次に図4の余因子計算回路
42の実施例を説明する。余因子計算回路の一実施例を
図6(a)に示す。余因子計算回路は数26に示す演算
を行う。
【0078】
【数26】 図6(a)において、端子k3から入力された前記4個
の余因子は独立に4個の行列式計算回路61に入力さ
れ、ここで数26の式(2)に示したR0〜R3の行列
式を計算する。図6(a)の各行列式計算回路には9個
の入力端子r11〜r33があるが、前記各端子の名称
は数26の式(2)に示した各行列式を計算する際に使
用する行列式内の要素の行・列番号に対応している。例
えば、図6(a)において余因子R1を出力する行列式
計算回路61はr11にCOL1を、r12にCOL1
を、r13にCOL2を、r21にCOL2を、r22
にCOL0を、r23にCOL1を、r31にCOL3
を、r32にCOL1を、r33にCOL0をそれぞれ
入力し、かつ行列式計算回路の出力端子rrからの出力
値を符号反転器62に経由させる。これは数26の式
(2)のR1を求める計算式において行列式内の第i行
j列の要素をx(i,j)と表す時、x(1,1)=C
OL1,x(1,2)=COL1,x(1,3)=CO
L2,x(2,1)=COL2,x(2,2)=COL
0,x(2,3)=COL1,x(3,1)=COL
3,x(3,2)=COL1,x(3,3)=COL
0、かつ行列式に−1が乗算されてR1が計算されるこ
とに対応している。R0〜R3は、数26の式(1)の
相関行列COLの余因子のであり、前述の4次元空間内
のノイズ点の確率分布を求めるために必要な値である。
【0079】行列式計算回路61を図6(b)に示す。
一般に3行3列の行列式yは、前記の定義を使って、数
27
【0080】
【数27】 と表される。数27の各項の3個のx(i,j)の積が
図6(b)の3入力の乗算器63で計算され、前記乗算
器の和が6入力の加算器64で計算される。符号反転器
62は数27の−1の乗算を考慮したものである。また
R0〜R3それぞれは数14に示したr1,1 ,r1,2
1,3 ,r1,4 である。
【0081】図4で、余因子R0〜R3は基準振幅計算
回路43へ入力される。図7は基準振幅計算回路の構成
を示したものである。同回路では、端子k5から入力さ
れた余因子R0〜R3と、基準振幅差入力端子(1)7
4、同(2)75から入力される値0.33,0.67
から、PR等化器によって作られる有色ノイズのビタビ
検出器への影響を除去するような、新しいビタビ検出器
基準振幅を求める。基準振幅差入力端子74,75から
入力される値0.33,0.37は本実施の形態が採用
しているチャネル:「δ=2の変調符号、ME記録、及
び等化器においてPR(1,2,2,1)等化を行うこ
と」により定まる。図11(b)は前記チャネルと共に
用いられる、5値の基準振幅と6個の状態をもつトレリ
スであるが、このトレリスで実線で記された最小自由距
離を与えるパスを4次元ベクトルで表しベクトルa=
(1,0.67,0,−0.67),ベクトルb=
(0.67,0,−0.67,−1)とすると、これら
の差ベクトルa−ヘベクトルb=(0.33,0.6
7,0.67,0.33)のうち0.33,0.67
を、図7の端子74,75から入力するのである。これ
らの値は従来のビタビ検出器の基準振幅0.33,0.
67を本実施の形態に知らせる役割を果たし、本実施の
形態の回路はは前記0.33,0.67を元に、基準振
幅ビタビ検出器基準振幅の一部を有色ノイズに適した値
へと修正する。
【0082】図7の回路で行う計算を数28に示す(特
に、数28の式(1),(2)に示す)。
【0083】
【数28】 例えば、図7でH1を出力する4入力の加算器は、R0
・0.33+R1・0.67+R2・0.67+R3・
0.33を計算する。これは前記余因子を並べたベクト
ル(R0,R1,R2,R3)とベクトルa−ベクトル
b=(a1 −b1,a2−b2,a3−b3,a4−b4 )の内積で
あり、前記加算器で数28の式(1)の計算を行ってい
ることがわかる。
【0084】今、図12に示すように、ノイズの等頻度
分布が多次元空間上の点ベクトルa,ベクトルbを中心
とした二個の楕円となるとき、ベクトルa,ベクトルb
の間に平面Pを置くとする。この時、Pと成りうる平面
は当然無限に存在するが、図7で求めたH1,H2と
は、Pで空間を分離した後に、一方のノイズ発生頻度分
布がPを越えてもう一方の領域へ逸脱するような確率を
最小とする、境界平面の法線ベクトルHの要素である。
この平面を図12ではQと示してある。本実施の形態の
チャネルではH=(H1,H2,H3,H4)とすると
き、前述したように、H1=H4,H2=H3となるの
でH1,H2の値だけ算出すれば十分である。
【0085】図7において,次にH1,H2から加算器
72と除算器73によってM2=H2/(H1+H2)
が算出されビタビ検出器へ出力される。除算器73は端
子d1から入力されるH2と端子d2から入力されるH
1+H2からH2/(H1+H2)を求める。H1,H
2をそれぞれH1 ,H2 に、R0〜R3それぞれをr
1,1 ,r1,2 ,r1,3 ,r1,4 に対応させると、数28
(1)は数14を計算していることがわかる。本実施例
で示している記録再生チャネルの場合、数22で示した
5個の基準振幅でm1 =1とした。この時従来の基準振
幅{−1,−0.67,0,+0.67,+1}のうち
±0.67だけが従来の値と異なる値となる。前記従来
の値と異なる基準振幅を±M2とした。例えば現行のコ
ンパクトディスクの1/2のトラック幅、2倍の線記録
密度のディスクをスポット径1.0μmのレーザを使用
し再生するという想定では、M2=0.4前後となる。
【0086】基準振幅計算回路43で算出された新しい
基準振幅M2はビタビ検出器3へ出力される。図8はビ
タビ検出器の構成を示した図である。このビタビ検出器
はPR等化器出力信号を変調符号列Zへ変換する。本発
明の形態で用いるこのビタビ検出器はその基準振幅のう
ちの少なくとも一部を外部から指定可能とする機能を有
する。図8で基準振幅計算部において算出された新しい
基準振幅M2は端子d2からビタビ検出器の回路へ入力
される。またPR等化器1の出力信号Eは端子d1から
入力される。
【0087】次に、図8のビタビ検出器の構成について
詳細に説明する。ビタビ検出器は枝メトリックB1〜B
5を計算する回路とACS(Add−Compare−
Select)回路84、パスメモリ85から構成され
る。図8において入力端子d1にはPR(1,2,2,
1)等化器の出力信号Eが入力される。信号Eは5個の
減算器82のマイナス端子へ同時に独立に入力され、前
記減算器はEと、あらかじめビタビ検出器に設定されて
いるビタビ検出器の基準振幅{1.0,0,−10}
と、端子d3から入力されれる新しい基準振幅M2か
ら、1.0−E,M2−E,0−E,−M2−E,−
1.0−Eを計算しそれぞれを3個の二乗演算器82へ
独立に出力する。−M2は図8の符号反転回路81によ
って作られる。二乗演算器83では5個の入力信号の二
乗値である枝メトリック:B1=(1.0−E)2 ,B
2=(M2−E)2 ,B2=(0−E)2 ,B2=(−
M2−E)2 ,B3=(−1.0−E)2 を各時刻毎に
計算しACS回路84へ送る。
【0088】ACS回路84は枝メトリックB1〜B5
を用いて前述の数1に示した計算を各時刻毎に行う。数
1においてP(1)〜P(6)はACS回路84がその
内部に保持する値であり、パスメトリックと呼ばれる。
前記6個のパスメトリックP(1)〜P(6)は再生動
作が行われる前にまず数1(a)の初期設定時の欄にあ
るように初期値0でクリアされる。再生動作時には、各
時刻において数1(b−1)に示した4個の式に従って
加算・比較動作を行い、図8のパスメモリ制御信号J
1,J2の値を定め、これをパスメモリ85へ出力す
る。更に、ACS回路84は数1(b−2)に示した6
個の数式に従いパスメトリックP(1)〜P(6)を更
新する。数1(b−2)でmin{α,β}とはα,β
のうち小さい方の値を意味する演算子である。
【0089】図9は本発明を構成するパスメモリ85の
一実施例の構成図である。図9において、パスメモリは
検出系列切替器(1)〜(n)64と、各検出系列切り
替え器間に設けられた6個1組の一単位時間遅延素子9
2からなる。前記各検出系列切替器91にはパスメモリ
制御信号J1,J2が端子93から入力される。図9に
おいてパスメモリ制御信号J1,J2がJ1,J2=
0,1それぞれの場合には検出系列切替器(1)〜同
(n)64の全ての入出力端子の接続法を図10の
(a)〜(d)いずれかに示した形とする。次に、図9
の検出系列切替器(1)〜同(n−1)の出力端子に接
続されている一単位時間遅延素子FF(1)〜FF(n
−1)92内の値全てを右向きに次の一単位時間遅延素
子まで検出系列切替器を経由させてシフトし、同時に一
単位時間遅延素子(1)の入力端子X1〜X6それぞれ
からビタビ検出器出力系列ディジットの候補であるV1
=0,V2=1,V3=0,V4=0,V5=1,V6
=0を入力し、これら入力ディジットを検出系列切替器
(1)とその出力端子Y1〜Y6を経由して6個の一単
位時間遅延素子(FF1)へ入力させる。これにより一
時刻分のビタビ検出器出力Zがビタビ検出器出力端子d
3から出力される。ここで、例えば検出系列切替器の接
続状況がJ1=0,J2=0の場合であると、Y1,Y
2,Y3,Y5,Y6それぞれへはX1,X1,X2,
X5,X6,X3から入力された値V1=0,V1=
0,V2=1,V5=1,V6=0,V3=0が届く
(同図で点線は断線を示している)。以上の手順を各時
刻において行うことにより、ビタビ検出器出力端子d3
から二元シンボル{0,1}からなるビタビ検出器出力
系列Zを得る。図9では最後の検出系列切替器(n)の
出力端子Y1だけがビタビ検出器出力端子d3へ接続さ
れているが、検出系列切替器の数nが数十以上と大きけ
れば検出系列切替器(n)の出力端子Y1〜Y3から出
力される系列は互いに同一となるから、一個の出力端子
例えばY1だけをビタビ検出器出力端子d2へ接続すれ
ばよい。
【0090】図13は、現行のコンパクトディスクの1
/2のトラック幅、2倍の線記録密度のディスクをスポ
ット径1.0μmのレーザを使用し再生するという想定
で行った、計算器シミュレーションによって求めたビッ
ト誤り率特性である。同図の特性を算出する際にはPR
等化器へ入力される再生信号には白色ノイズが加わり、
ビタビ検出器は、これまでに示した有色ノイズを考慮し
た新しい基準振幅を使用している。同図から、本発明に
よる基準振幅を使用した場合には、従来の基準振幅を使
用した場合に比べて、例えばビット誤り率1.0E−5
を達成するための所要CNRが2dB少なくて済む。ま
た、例えばCNR=50dBにおいて本発明装置を用い
ればビット誤り率が従来装置の場合の1/30程度に減
少する。
【0091】次に本発明の第二の実施の形態として、再
生信号の特性の変動が小さい場合に適用される実施例を
図9,14,15を用いて説明する。図14は本発明の
実施の形態の構成を表し、適応制御を行わないPR等化
器141と、第一の実施の形態で示したビタビ検出器3
からなる。図15は前記PR等化器の一構成例である。
同図はタップ係数C(1)〜C(N)を適応制御しない
ことを除くほか、図2で説明したPR等化器と同様の動
作を行う。同等化器でタップ係数は所望のPR等化を行
うための値をあらかじめ設定しておく。
【0092】図14でPR等化器141の出力信号Eは
ビタビ検出器3へ入力される。ビタビ検出器3に指定す
る有色ノイズに適した基準振幅M2は、等化器141に
設定されているタップ係数C(1)〜C(N)から、数
25、数26、及び数28に示した式に従って算出し端
子142から入力されるようあらかじめ設定しておく。
ビタビ検出器3の構成と動作は、第一の実施の形態で示
したビタビ検出器のものと同一でよい。
【0093】以上は光ディスクの記録・再生チャネルに
PRML信号処理を施す従来技術であるが、図18にお
いて記録ピット有りの領域を記録磁化が上向き、記録ピ
ット無しの領域を記録磁化が下向き、というように対応
させると、そのMRヘッドによる再生信号の波形形状は
図18(e)のAとほぼ同一となるから、第一,第二の
実施の形態共に、磁気ディスク装置において垂直磁気記
録を行いMRヘッドを用いて再生する場合にも適用でき
る。
【0094】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、PR
等化器によって生じるノイズの有色性のビタビ検出器へ
の影響を除去するような基準振幅を計算する回路(基準
振幅計算部)を設けたから、ビタビ検出器出力データの
ビット誤り率が、従来のPRML信号処理装置を用いた
場合に比べ低減するという効果がある。
【0095】さらに、本発明では、PR等化器によって
生じるノイズの有色性を取り除くためにビタビ検出器内
部のパスメトリックを操作するのではなく、基準振幅を
直接に変更するようにしたから、構成をほとんど変更す
ることなく従来のビタビ検出器を流用することが可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による信号処理装置の第1の例を説明す
るための図である。
【図2】パーシャルレスポンス(PR)等化器の構成を
説明するための図である。
【図3】PR等化器の参照信号計算器を説明するための
図である。
【図4】基準振幅計算部を説明するための図である。
【図5】(a)は相関係数計算回路を説明するための図
であり、(b)は積和計算回路を説明するための図であ
る。
【図6】余因子計算回路を説明するための図である。
【図7】行列式計算回路を説明するための図である。
【図8】基準振幅計算回路を説明するための図である。
【図9】本発明に用いられるビタビ検出器を説明するた
め図である。
【図10】ビタビ検出器内のパスメモリを説明するため
の図である。
【図11】(a)はδ=2の符号をME記録しその再生
信号をPR(1,2,2,1)等化する際に用いられる
トレリスを説明するための図であり、(b)は(a)に
示すトレリスが作る最小自由距離を与えるパスの組み合
わせを説明するための図である。
【図12】(a)は有色ノイズの分布を説明するための
図であり、(b)は白色ノイズの分布を説明するための
図である。
【図13】本発明による効果を説明するための図であ
る。
【図14】本発明による信号処理装置の第2の例を説明
するための図である。
【図15】従来のPR等化器及び本発明の第2の例に用
いられるPR等化器を説明するための図である。
【図16】従来のPRML信号処理回路の構成を示す図
である。
【図17】従来のビタビ検出器の構成を示す図である。
【図18】δ=2の記録符号を使用しME記録後の再生
信号をPR(1,2,2,1)等化する際の信号遷移を
説明するための図である。
【符号の説明】
1,161 PR等化器 2,162 基準振幅計算部 3 ビタビ検出器 21 一単位時間遅延素子 22 相関器 23 積分器 24,52,63 乗算器 25,53,64,71,72 加算器 26 参照信号計算器 27 誤差信号計算器 28 タップ係数更新回路 31 減算回路 32 参照信号選択回路 41 相関係数計算回路 42 余因子計算回路 43 基準振幅計算回路 51 積和計算回路 61 行列式計算回路 62 符号反転器 73 除算器 74,75 基準振幅差入力端子 81 符号反転回路 82,172 減算器 83,173 二乗演算器 84,174 ACS回路 85,175 パスメモリ 91 検出系列切替器 92 検出系列用一単位時間遅延素子 93 パスメモリ制御信号入力端子 141 PR等化器 142 基準振幅入力端子

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 記録データを再生する機能を有し、再生
    信号をPRML信号処理する際に用いるトレリスの最小
    自由距離を与えるパスの長さがただ一つに定まるような
    ディスク装置に用いられ、入力信号をパーシャルレスポ
    ンス特性を有する等化器出力信号へ等化する等化手段と
    該等化手段の伝達特性を等化器伝達特性して出力する出
    力手段とを有するPR等化器と、前記等化器出力信号を
    受け該等化器出力信号をビタビ検出するビタビ検出器
    と、前記等化器伝達特性を受け該等化器伝達特性に基づ
    いて前記ビダビ検出器の基準振幅を求める基準振幅計算
    部とを有し、前記等化手段は前記伝達特性を前記等化器
    出力信号に応じて適応制御するようにしたことを特徴と
    する信号処理装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載された信号処理装置にお
    いて、前記ビタビ検出器は前記基準振幅の少なくとも一
    部を受け該基準振幅に応じてビタビ検出動作を行い、前
    記基準振幅計算部は、前記PR等化器によるノイズの周
    波数分布の偏りによって生じるビタビ検出器の出力デー
    タのビット誤り率の劣化を改善するように前記基準振幅
    を計算することを特徴とする信号処理装置。
  3. 【請求項3】 記録データを再生する機能を有し、再生
    信号をPRML信号処理する際に用いるトレリスの最小
    自由距離を与えるパスの長さがただ一つに定まるような
    ディスク装置に用いられ、予め定められた伝送特性を備
    え入力信号をパーシャルレスポンス特性を有する等化器
    出力信号に等化するPR等化器と、前記予め定められた
    伝達特性に基づいて求められた基準振幅のうち少なくと
    も一個を入力し該基準振幅に応じてビタビ検出動作を行
    い前記等化器出力信号をビタビ検出するビタビ検出器と
    を有することを特徴とする信号処理装置。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載された信号処理装置にお
    いて、前記等化器出力信号に含まれるノイズの周波数分
    布の偏りによって生じる前記ビタビ検出器の出力データ
    のビット誤り率の劣化を改善するように前記予め定めら
    れた伝達特性に基づいて前記基準振幅が算出されるよう
    にしたことを特徴とする信号処理装置。
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