JP2858783B2 - 液体中の気泡を除去する方法及びその方法を実施するための装置 - Google Patents

液体中の気泡を除去する方法及びその方法を実施するための装置

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は液体中の気泡を除去する方法及びその方法を
実施するための装置に関する。
〔従来の技術〕
従来、液体の処理回路において、液体中に含まれる気
泡をその処理の途中で除去することが必要な場合があ
る。例えば血液中の気泡は血液処理又は生体にとって好
ましくなく、血液等の体液体外処理回路においては気泡
の除去、血流の確認を主たる目的としてドリップチャン
バーが一般に用いられている。しかし、血液がいったん
ドリップチャンバー内に貯溜されるため、プライミング
のためかなりの量の液体を必要とし、又、空気と血液と
の直接接触の機会が多く、また血液が滞溜する時間が長
いことによる血液凝固亢進という点で問題があった。と
ころで、近時、電磁血流計等の発達により血流の確認が
回路外でも容易におこなえるようになり、この点ではド
リップチャンバーに頼る必要もなくなってきている。し
かし、血液内の気泡除去に対してはドリップチャンバー
に替る適当な手段が未だ見当らず、その開発が望まれて
いる。ところで、この体液中の気泡除去のための脱気機
構として、体液処理回路の一部に体液流と接するように
して多孔質膜を設け、この多孔質膜から体液中の気泡を
除去する方式のもの(実用新案公開公報昭62−2018)も
提案されているが、実際上、十分な選択的気泡透過性を
有する多孔質膜の選定が難しく、実用面で問題があっ
た。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は流路を介して処理される被処理液中の気泡を
簡単に除去し得る方法及びその方法を実施するための装
置を提供することを目的とする。
さらに、本発明は従来のドリップチャンバー使用にお
けるプライミング量の増大、血液凝固の亢進という問題
点を回避しつつ、体液内の気泡除去を容易におこなうこ
とができる体液処理回路を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は上記課題を解決するため、被処理液より比重
が小さく、かつこの被処理液と混和しない液体を脱気用
物質として用い、これを被処理液と接触し、かつ界面を
形成するようにして被処理液流路に設け、この脱気用物
質を介して被処理液中の気泡を除去するという手段を講
じた。
即ち、本発明は気泡を含む又は気泡が発生する可能性
を有する被処理液の流路に該被処理液より比重が小さ
く、かつ該被処理液との間に界面を形成する脱気用物質
を、該流路に連通するようにして立設された筒状体の内
部に、該被処理液の上方に浮いた状態で、該被処理液と
接触するようにして設け、該脱気用物質を介して該被処
理液中の気泡を系外に逃散、除去させることを特徴とす
る液体中の気泡を除去する方法を提供するものである。
さらに本発明は気泡を含むまたは気泡が発生する可能
性を有する被処理液の流路と、該流路の1部に連通して
設けられ、該被処理液との間に界面を形成する脱気用物
質を収容するための筒状体とを具備してなることを特徴
とする液体中の気泡を除去するための装置を提供するも
のである。
さらに本発明は被処理液中の気泡を除去する脱気機構
を備えた液体循環処理回路であって、該脱気機構が回路
系または/および該回路系に連設された処理装置の上部
に配設された空気抜口と、この空気抜口に連設された筒
状体と、この筒状体内に被処理液と接触可能な状態にて
充填された該処理液より比重が小さく、かつ該被処理液
と界面を形成する脱気用物質とを備えたことを特徴とす
る液体処理回路を提供するものである。
なお、脱気用物質を収容する上記筒状体に、被処理液
と脱気用液体との界面を調整する機構を設けてもよい。
また、上記筒状体は被処理液流路に対し、着脱自在に
設けてもよい。
さらに、被処理液が血液等の体液である場合は脱気用
物質として疎水性液体が用いられ、この場合、脱気用物
質としては脂溶性ビタミン、例えばビタミンA、ビタミ
ンD、ビタミンE、ビタミンKおよびユビキノン;飽和
脂肪酸、例えばパルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリル
酸、ペンタジル酸、ステアリン酸;不飽和脂肪酸、例え
ばエライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リレノン
酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸等;その他、
シリコーンオイル;ポリジメチルシロキサン、メチルフ
ェニルポリシロキサン等を用いることができる。これら
の脱気用物質の中で、常態で固体のものは溶媒に溶かし
所望の粘度に調整することも可能である。
また、これら脱気用液体は粘度が500ポイズ以下のも
のが好ましい。500ポイズ以上であると粘度が高すぎて
気泡が首尾よく上昇しない。更に好ましくは20ポイズ以
下のものを選択する。また、脱気用液体として複数の溶
液を混合して所定粘度に調整することも可能である。
また、体液と脱気用液体との界面の高さを適当に維持
するため、血圧をモニタリングしながら脱気用液体側を
加、減圧する界面調整機構を設けてもよい。
上記液体処理回路においては、被処理液と接触させる
脱泡用液体の設定部位は液体中の気泡が上昇し易い回路
の上部角部とすることが好ましい。
〔作用〕
本発明で用いられる脱気用液体は被処理液より比重が
軽く、かつ被処理液と混和せず、界面を形成するため被
処理液流の上方に浮いた状態で保持させることができ、
被処理液が脱気用液体との界面を通過する際、この被処
理液中の気泡は上方への逃げ場が与えられ、この界面か
ら脱気用液体中を通過し、回路系外へ放出されることに
なる。
〔実施例〕
以下、本発明を血液の体外循環回路に適用した例とし
て図示の具体例に基づいて説明するが、本発明は血液等
の体液に限らず、気泡を含有するか、気体が発生する可
能性を有するあらゆる液体からの気泡の除去に対しても
適用し得ることは明らかであろう。
第1図は血液体外循環回路を示しており、基端が生体
(図示しない)の動脈と連通する動脈側回路1と、この
動脈側回路1の下流端部にポンプ2を介して連通する静
脈側回路3a,3bとを具備している。なお、静脈側回路3b
の先端は生体の静脈と連通している。又、動脈側回路3a
の途中にはサンプリングポート4が連設されている。
静脈側回路3bの頂部には下部が漏斗状に拡大した筒状
体5が静脈側回路3bの流路と連通するようにして立設さ
れている。この筒状体5の内部には脂溶性ビタミン等の
疎水性で毒性が少なく生体適合性にすぐれ、比重が血液
(又はプライミング液)より実質的に小さい脱気用物質
6が充填されている。この脱気用物質6は血液(又はプ
ライミング液)より比重が小さく疎水性のため、血液中
(又はプライミング液中)に混和することなく界面を形
成し筒状体5の内部に保たれた状態に維持される。
しかして、この回路に循環される血液中に気泡が含ま
れている場合、血液がこの筒状体5の下方を通過する際
に、血液中の気泡が脱気用物質6内に移行、逃散し、脱
気用物質6内部を上に向けて上昇移動し、最終的に系外
に除去される。なお、気泡が脱気用物質6内部を移動し
易いように脱気用物質6の粘度はできるだけ小さいこと
が好ましい。例えば20ポイズ以下のものが好ましい。
なお、血液と脱気用物質6下面との界面は血液が筒状
体5の内部に浸入しない程度に一定に維持されることが
好ましく、そのため適当な圧力調整手段、例えば第2図
に示す如く筒状体5の開放頂部にシリンジ7を嵌挿さ
せ、血圧をモニタリングしながらガスケット8を介して
適当に加、減圧し、上記界面を調整することが好まし
い。
この筒状体5は第3図に示す如く静脈側回路3aの角部
に設け気泡の除去効果を促進させるようにしてもよい。
即ち、血液中の気泡“a"が流れ方向と対向する壁面3a′
に当接し、はね返って上方向、即ち脱気用物質6内に逃
散され易くする。
第4図に示す例は回路に組込まれた液体処理装置、例
えばダイアライザーのポート部に泡抜け口、即ち筒状体
5を設けた例を示している。この場合、血液中の気泡
“a"は筒状体5内の脱気用物質6を介して除去され、こ
の脱泡された血液はポッティング材9で固定されたホロ
ーファイバー10内を通するようになっている。この場合
も第2図に示す如き加、減圧手段を筒状体5の開口部に
連設させることができる。
この筒状体5及び脱泡用物質6は静脈側回路3aに対
し、一体的に設けてもよく、又は着脱自在に設け、使用
時に静脈側回路3aに取着させるようにしてもよい。
(実験例) 軟質ポリ塩化ビニルチューブを使用し、動脈側(内径
3.5mm、長さ166cm、ポンプチューブ内径6.5mm×40cm)
及び静脈側(内径3.5mm、長さ137cm)からなる第4図の
ものと同様の特殊血液回路を作製した。脱気用液体とし
て50%ビタミンE(日本ロシュ株式会社製)/50%リノ
ール酸(和光純薬工業製)混液〔粘度:54.6cp〕を回路
上部の空気抜け口に充填した。雑種成犬(体重10〜14k
g)2頭を用い、血液処理器を介さず直接動脈側回路及
び静脈側回路を直接接続し体外循環実験をおこなった。
犬の準備方法として、全身麻痺下神経、分枝血管および
周囲の組織を損傷しないように注意しながら、右(左)
総頚動静脈を剥離した。更に、生食を満たした留置カテ
ーテルを挿入し、結紮固定した。
体外循環実験は血液量100ml/分で循環し、ヘパリン等
の抗凝固剤の投与はおこなわずに2時間循環をおこなっ
た。
血液気泡抜けテストはサンプリングポート部から0.1m
lの空気を送り込みおこなった。体外循環開始時、30分
経過後、60分経過後、120分経過後にサンプリングポー
ト部より血液を0.5mlづつ採取しELT−8(Orth Instrum
ent株式会社製)にて血球数を算出した。その結果得ら
れた血小板数、ヘマトクリット値を第1表に示す。な
お、血小板数は次式を用いてHct値補正をおこない、循
環開始直前のHct値での値として表わした。
Cx:補正値 Co:実測算定値 Hctx:補正基準Hct値=最初のHct値 Hcto:Co値を得たときのHct値 また、比較例として、従来法と同様に血液体外循環回
路の動脈側及び静脈側の2ケ所に通常使用されているド
リップチャンバーをそれぞれ接続し(動脈側:長さ9.4c
m、静脈側:長さ13.4cm)、血液を各ドリップチャンバ
ーの半分の高さまで満し、上記実験例と同様の条件下で
体外循環をおこなった。血液気泡抜けテスト及び血小板
数、ヘマトクリット値の算出も上記実験例と同様にして
おこなった。その結果を第2表に示す。
本発明の実験例においては気泡はビタミンE・リノー
ル酸混液/血液界面に接したとき、容易にビタミンE・
リノール酸混液側に移行し、泡抜状態は良好であり、第
1表に示す如く血小板数の変動は軽微であった。これに
対し比較例においては血小板数の減少が大きく血液凝固
の亢進が認められた。なお、ヘマトクリット値は実験
例、比較例のいずれにおいても経時的変化はほとんど認
められなかった。
上記の本発明の実験例及び比較例における血液循環回
路のプライミング容積を第3表に示す。
この第3表から明らかなように本発明においてはプラ
イミング量を著るしく減少し得ることが理解できよう。
〔発明の効果〕
以上詳述した如く、本発明によれば、きわめて簡単な
機構を以って液体中の気泡を効率良く除去することがで
きる。特に本発明を体液循環処理回路に適用する場合、
体液循環処理回路の回路系またはこれに連設された処理
装置の上部に空気抜口を設け、この部分に体液より比重
が小さく疎水性を有する脱気用液体を体液と接するよう
に配設し、これらの間の界面を介して体液中の気泡を除
去することができるため、従来のドリップチャンバーの
如き滞溜又は空気との接触に基因する血液凝固を著るし
く抑制することができ、したがって体外循環時の抗凝固
剤の使用量を減らすことができる。そのほか、従来のド
リップチャンバーを使用するものと較べ、体外循環量を
著るしく減少させることができ、患者の負担を軽減し得
るなど顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例に係わる血液循環回路を示す
図、第2図は本発明の装置の要部を拡大して示す模式
図、第3図は本発明の装置の他の実施例を示す模式図、
第4図は同じく本発明の他の実施例を示す模式図であ
る。 図中、1……動脈側回路、2……ポンプ、3a,3b……静
脈側回路、4……サンプリングポート、5……筒状体、
6……脱気用液体、7……シリンジ、8……ガスケッ
ト、11……ダイアライザー。

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】気泡を含む又は気泡が発生する可能性を有
    する被処理液の流路に該被処理液より比重が小さく、か
    つ該被処理液との間に界面を形成する脱気用物質を、該
    流路に連通するようにして立設された筒状体の内部に、
    該被処理液の上方に浮いた状態で、該被処理液と接触す
    るようにして設け、該脱気用物質を介して該被処理液中
    の気泡を系外に逃散、除去させることを特徴とする液体
    中の気泡を除去する方法。
  2. 【請求項2】該被処理液が体液であって、該脱気用液体
    が疎水性液体である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】気泡を含むまたは気泡が発生する可能性を
    有する被処理液の流路と、該流路の一部に連通して設け
    られ、該処理液との間に界面を形成する脱気用物質を収
    容するための筒状体とを具備してなることを特徴とする
    液体中の気泡を除去するための装置。
  4. 【請求項4】該筒状体が該流路に対し着脱自在に設けら
    れている請求項3記載の装置。
  5. 【請求項5】該被処理液と脱気用物質との界面を調整す
    る機構を該筒状体に設けたことを特徴とする請求項3記
    載の装置。
  6. 【請求項6】被処理液中の気泡を除去する脱気機構を備
    えた液体循環処理回路であって、該脱気機構が回路系ま
    たは/および該回路系に連設された処理装置の上部に配
    設された空気抜口と、この空気抜口に連設された筒状体
    と、この筒状体内に被処理液と接触可能な状態にて充填
    された該処理液より比重が小さく、かつ該被処理液との
    間に界面を形成する脱気用物質とを備えたことを特徴と
    する液体処理回路。
  7. 【請求項7】該被処理液が体液であって、該脱気用物質
    が疎水性液体である請求項6記載の液体処理回路。
  8. 【請求項8】該脱気用物質が脂溶性ビタミン、飽和脂肪
    酸、不飽和脂肪酸、シリコーンオイルのうちから選ばれ
    るものである請求項7記載の液体処理回路。
  9. 【請求項9】該被処理液と該脱気用物質との界面を調整
    する機構を該筒状体に設けたことを特徴とする請求項6
    記載の液体処理回路。
  10. 【請求項10】該筒状体を該処理回路の角部に連設した
    ことを特徴とする請求項6記載の液体処理回路。
  11. 【請求項11】該脱気用物質の粘度が500ポイズ以下で
    ある請求項7または8記載の液体処理回路。
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