JP2842238B2 - 冷間加工性と耐遅れ破壊性に優れたボルト用鋼の製造方法 - Google Patents

冷間加工性と耐遅れ破壊性に優れたボルト用鋼の製造方法

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JP2842238B2
JP2842238B2 JP19068494A JP19068494A JP2842238B2 JP 2842238 B2 JP2842238 B2 JP 2842238B2 JP 19068494 A JP19068494 A JP 19068494A JP 19068494 A JP19068494 A JP 19068494A JP 2842238 B2 JP2842238 B2 JP 2842238B2
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猛彦 加藤
猛 中原
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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)
  • Heat Treatment Of Strip Materials And Filament Materials (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等の車輛用や産
業機械用として使用されるボルト用鋼の製造方法に関
し、特に引張強さが900〜1300N/mm2 のボル
トを得るためのものであって、しかも冷間加工性および
耐遅れ破壊性に優れたボルト用鋼を製造するための有用
な方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車業界や産業機械業界におい
ては、コスト低減の要求があり、それに伴って使用され
るボルトにも低コストのものが指向され、例えばJIS
規格B1051の「ボルト小ねじの機械的性質」の7T
ボルトや8.8ボルトについても、1%程度のCrを含
むCr鋼や、1%程度のCrの他、0.15〜0.30
%程度のMoを含むCr−Mo鋼等の低合金鋼から炭素
鋼の様な廉価な鋼材への変更が実施されている。
【0003】しかしながら、ボルトの引張強さが900
〜1300N/mm2 程度、特に1000N/mm2
超える領域になる9.8ボルトや10.9ボルトになる
と、遅れ破壊が発生する危険があるので、炭素鋼の様な
廉価な鋼材では、耐遅れ破壊性が十分でなく、安心して
変更できない。従って、上記のような強度領域では、従
来通りCr鋼やCr−Mo鋼等の低合金鋼が多く使用さ
れているのが実情である。
【0004】ところで、上記の様な低合金鋼を用いてボ
ルトを製造するに当たっては、圧延線材の強度が高いの
で、まず圧延線材の焼まなし処理が施され、その後中間
伸線、球状化焼まなし処理および仕上げ伸線工程を経た
後、冷間鍛造でボルト形状に成形され、最終的に所定の
強度になる様に、焼入れ・焼戻しされるという長い工程
によって行なわれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した様に、引張強
さが900〜1300N/mm2 程度のボルトの多く
は、ボルトに要求される耐遅れ破壊性や靭性を確保する
為に、Cr鋼やCr−Mo鋼等の低合金鋼が多く使用さ
れている。そしてこれらの材料は、合金元素の効果によ
って焼入れ性が良好であるので、圧延線材の引張強さが
高くなり、そのままではボルトに加工するのに必要な伸
線加工が困難となり、通常は上述した様に焼まなし処理
が施される。その後、中間伸線、球状化焼まなし処理お
よび仕上げ伸線工程を経た後、冷間鍛造でボルト形状に
成形され、最終的に所定の強度になる様に、焼入れ・焼
戻しされるという長い工程が必要となる。従って、上記
の様な低合金鋼で製造されるボルトは、材料費に加えて
線材加工に要する費用が加算され、トータルでは炭素鋼
で製造されるボルトに比べるとかなり高価なものとなっ
てしまう。尚圧延線材の引張強さを低くするためには、
合金成分を減らすことが効果的であることが予想される
が、そうするとボルトに必要な耐遅れ破壊性や靭性が低
くなってしまうことになる。
【0006】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、冷間加工性と耐遅れ破壊性
に優れ、引張強さが900〜1300N/mm2 のボル
トを得るためのボルト用鋼を、経済的に製造することの
できる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明方法とは、C:0.15〜0.35%、
Si:0.1%以下、Mn:0.90〜1.50%、
P:0.015%以下(0%を含む)、S:0.015
%以下(0%を含む)、Cr:0.50%以下、Ti:
0.01〜0.08%、Al:0.01〜0.05%、
B:0.0005〜0.0030%を夫々含有し、且つ
下記(1)式によって規定されるK値が0.40〜0.
60の範囲を満足し、残部がFeおよび不可避不純物で
ある鋼材を、仕上げ圧延温度が900℃以上となる様に
熱間圧延した後、500℃までを2℃/sec以下の冷
却速度で冷却し、引続き室温まで放冷する点に要旨を有
するものである。 K値=[C]+0.2[Mn]+0.15[Cr] …(1) 但し、[C],[Mn]および[Cr]は、夫々C,M
nおよびCrの含有量(%)を示す。また本発明で用い
る鋼材は、必要に応じてMo,Nb,V等を含有するこ
とも有効である。
【0008】
【作用】本発明者らは希望するボルト用鋼を実現するべ
く、冷間加工性については、影響の大きい合金元素量と
圧延線材の冷却速度に、遅れ破壊性については、耐遅れ
破壊性を阻害する元素に夫々着目し、各種の鋼成分につ
いて検討を重ねた。その結果、鋼材の化学成分組成と圧
延条件を厳密に規定することによって、上記目的が見事
に達成されることを見い出し、本発明を完成した。まず
本発明で用いる鋼材の化学成分の限定理由は下記の通り
である。
【0009】C:0.15〜0.35% Cは鋼の焼入性と強度確保の為に必要な元素であり、そ
の含有量が0.15%未満では、引張強さが900N/
mm2 以上の鋼材を約400℃以上の適切な焼戻し温度
で得ることが困難になる。しかしながら、多すぎると冷
間加工性が悪くなるので、0.35%以下に抑えるべき
である。尚C含有量の好ましい範囲は、0.18〜0.
28%程度である。
【0010】Si:0.1%以下 Siは鋼の脱酸に有効な元素であるが、多量の添加は酸
化物系の介在物を生成すると共に、焼入れ等の熱処理時
における粒界酸化を助長し、冷間加工性と耐遅れ破壊性
を低下させるため、0.1%以下とした。尚Siの含有
量の好ましい範囲は、0.04〜0.08%程度であ
る。
【0011】Mn:0.90〜1.50% Mnは脱酸元素として有効に作用すると共に、鋼の焼入
れ性を高める効果があり、またSによる熱間脆化を防止
するためにも0.90%以上含有させなければならな
い。しかしながら、含有量が多過ぎると圧延後の冷却時
の変態を早めて硬化を促進させると共に、粒界への偏析
が多くなり、粒界強度を低下させて耐遅れ破壊性を悪化
させるので、1.50%を上限とする。尚Mn含有量の
好ましい範囲は、1.00〜1.30%程度である。
【0012】P:0.015%以下(0%を含む) PはMnと同様に、粒界偏析を起こして耐遅れ破壊性を
阻害するので少ない方がよいが、不可避不純物として混
入するので、0.015%以下とした。より好ましく
は、0.007%以下に低減するのが良い。
【0013】S:0.015%以下(0%を含む) Sは熱間脆性を引起こすばかりでなく、Mnと結合して
MnSを生成し、ボルト成形時の冷間加工性を阻害した
り鋼の耐遅れ破壊性を悪化させるため、0.015%を
上限として定めた。より好ましくは、0.007%以下
に低減するのが良い。
【0014】Cr:0.50%以下 Crは焼入れ性の向上に極めて有効な元素であるが、多
量の添加は冷間材の強度を高め、冷間加工性を阻害する
ので、0.50%以下と定めた。尚Cr含有量の好まし
い範囲は、0.15〜0.35%程度である。
【0015】Ti:0.01〜0.08% Tiは鋼中のNを固定し、Bの添加効果を十分に発揮さ
せる為に添加される。また結晶粒度を微細化して粒界面
積を増すことによって、P等の粒界偏析成分の分散、水
素のトラップサイトの増加による拡散性水素の減少、フ
リー窒素の固定等の効果によって、耐遅れ破壊性を改善
すのに有効である。これらの効果を発揮させるために
は、0.01%以上含有させる必要がある。しかしなが
ら、多過ぎると粗大なTiNが多量に生成して冷間加工
性や耐遅れ破壊性を却って阻害するので、上限を0.0
8%とした。尚Ti含有量の好ましい範囲は、0.03
〜0.06%程度である。
【0016】Al:0.01〜0.05% Alは脱酸作用を有するほか、フリー窒素の固定による
焼戻し脆化の防止と結晶粒の微細化の為に、0.01%
以上含有する必要がある。しかしながら、Al含有量が
0.05%を超えると靭性に悪影響が現われてくるの
で、それ以上の添加は避けるべきである。尚Al含有量
の好ましい範囲は、0.025〜0.035%程度であ
る。
【0017】B:0.0005〜0.0030% Bは鋼の焼入れ性向上の為に添加されるが、その含有量
が0.0005%未満ではその効果が発揮されず、0.
0030%を超えて過剰に添加しても却って靭性を阻害
する。尚B含有量の好ましい範囲は、0.0008〜
0.0020%程度である。
【0018】本発明においては、上記元素が夫々の含有
量を満足する他、前記(1)式で規定されるK値が、
0.40〜0.60の範囲を満足する必要がある。即
ち、K値の上限値0.60は、C,Mn,Cr等の個々
の成分範囲が上記で規定する範囲を満足する場合であっ
ても、これらのトータル量が多くなると圧延材の強度が
高くなり、本発明の特徴である優れた冷間加工性が得ら
れなくなるため設定するものである。
【0019】一方、K値の下限値0.40は、ボルト成
形後の焼入れ・焼もどし処理において、焼もどし脆性域
を避けた400℃以上の焼もどし温度で、目標とする9
00〜1300N/mm2 の強度が得られなくなるため
に設定するものである。
【0020】本発明で規定する必須構成元素は以上の通
りであり、残部がFeおよび不可避不純物であるが、必
要によりMo,Nb,V等を適量添加しても良い。これ
らの元素を添加するときの限定理由は下記の通りであ
る。
【0021】Mo:0.15%以下 Moは焼入れ性の向上と耐遅れ破壊性の改善に有効な元
素であるが、多量の添加は圧延材の強度を高め、冷間加
工性を阻害するので、0.15%以下とすべきである。
尚Mo含有量のより好ましい範囲は、0.04〜0.1
0%程度である。
【0022】Nb:0.01〜0.1%および/または
V:0.01〜0.1% NbおよびVは、結晶粒の微細化に有効な元素であり、
こうした効果はいずれも0.01%以上含有させること
によって有効に発揮される。しかしながら、過剰に添加
すると、耐遅れ破壊性および靭性を阻害するので、いず
れも0.1%以下とすべきである。尚NbおよびVの含
有量のより好ましい範囲は、いずれも0.015〜0.
025%程度である。
【0023】本発明においては、上記の化学成分組成を
満足する鋼材を用い、仕上げ圧延温度が900℃以上に
なる様に圧延した後、500℃までを2℃/sec以下
の冷却速度で冷却する必要があるが、これは圧延材の強
度を低くし冷間加工性を向上せしめるためである。即
ち、仕上げ圧延温度が900℃より低くなると、微細組
織となり強度が高くなって冷間加工性が悪くなる。ま
た、圧延後の冷却速度を早くすると部分的にベーナイト
組織となり、冷間加工性を低下させるため、500℃ま
での冷却速度を2℃/secとする必要がある。尚ボル
ト成形後の焼入れ・焼もどし処理における焼もどし温度
については、焼もどし脆性域を避けた400℃以上で処
理するのが好ましい。
【0024】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0025】
【実施例】表1に示す化学成分の供試鋼を用い、表2に
示す圧延条件と加工工程に従って伸線までを行なった。
尚表2には、伸線加工後の加工ひずみε=1.0での変
形抵抗をも同時に示した。また表3には、これらの線材
より作成したM10ボルトの耐遅れ破壊性を示した。こ
のとき耐遅れ破壊性の調査は、ボルトを酸中に浸漬後、
水洗・乾燥して大気中で負荷する方法で100時間遅れ
破壊強さを求めて、比較評価した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】表2の試験材No.1〜3は、供試種Aにお
いて圧延条件の影響を調べたものである。試験材No.1
に比べ、冷却速度の早い試験材No.2や仕上げ圧延温度
の低い試験材No.3は、伸線後の変形抵抗が高いことが
分かる。また、冷却速度の影響は、鋼種Dを使用した試
験材No.6,7の比較においても明らかであり、仕上げ
圧延温度の影響は、鋼種Gによる試験材No.10,11
の比較においても分かる。また試験材No.12,14は
鋼成分範囲も本発明の範囲を外れるものであるが、変形
抵抗が750N/mm2 と高いことが分かる。
【0030】表3には焼入れ・焼もどし後のボルト引張
強さと、遅れ破壊強さおよび遅れ破壊強さ比を示した。
ここで遅れ破壊強さ比とは、引張強さの異なるボルトの
耐遅れ破壊性を比較するための尺度であり、遅れ破壊強
さを引張強さで除したものである。表3から明らかな様
に、本発明例の遅れ破壊強さ比は、従来から使用されて
いる10.9ボルト用材の試験材No.16の低合金鋼と
同等であることが分かる。また、C量が少ないため焼も
どし温度が400℃より低くなった試験材No.13、S
i,Mn量が多い試験材No.14、P,S量の多い試験
材No.15の遅れ破壊強さ比に比べ、試験材No.1,
4,5,6,8,9,10の本発明例のものは高い値を
示していることが分かる。
【0031】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、冷
間加工性と耐遅れ破壊性に優れ、引張強さが900〜1
300N/mm2 のボルトを得るためのボルト用鋼を製
造することができた。また本発明方法では、従来の様な
長い工程を必要としないので、非常に経済的である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−339676(JP,A) 特開 昭59−89716(JP,A) 特開 平2−166229(JP,A) 特開 昭59−6358(JP,A) 特開 昭62−253724(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 8/06 - 8/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.15〜0.35%(重量%:以
    下同じ)、Si:0.1%以下、Mn:0.90〜1.
    50%、P:0.015%以下(0%を含む)、S:
    0.015%以下(0%を含む)、Cr:0.50%以
    下、Ti:0.01〜0.08%、Al:0.01〜
    0.05%、B:0.0005〜0.0030%を夫々
    含有し、且つ下記(1)式によって規定されるK値が
    0.40〜0.60の範囲を満足し、残部がFeおよび
    不可避不純物である鋼材を、仕上げ圧延温度が900℃
    以上となる様に熱間圧延した後、500℃までを2℃/
    sec以下の冷却速度で冷却し、引続き室温まで放冷す
    ることを特徴とする冷間加工性と耐遅れ破壊性に優れた
    ボルト用鋼の製造方法。 K値=[C]+0.2[Mn]+0.15[Cr] …(1) 但し、[C],[Mn]および[Cr]は、夫々C,M
    nおよびCrの含有量(%)を示す。
  2. 【請求項2】 更に他の成分として、Mo:0.15%
    以下を含有する鋼材を使用する請求項1に記載のボルト
    用鋼の製造方法。
  3. 【請求項3】 更に他の成分として、Nb:0.01〜
    0.1%および/またはV:0.01〜0.1%を含有
    する鋼材を使用する請求項1または2に記載のボルト用
    鋼の製造方法。
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