JP2831947B2 - 密封加熱滅菌された澱粉含有飲料製品 - Google Patents

密封加熱滅菌された澱粉含有飲料製品

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐熱性の芽胞菌胞子の発
芽及び増殖が抑制されフラットサワー変敗の防止され
た、密封加熱滅菌された澱粉含有飲料製品に関する。さ
らに詳しくは、ラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチ
ン酸の1種または2種以上の混合物の合計量が70重量%
以上の脂肪酸で構成され、かつ、エステル中のジグリセ
リン脂肪酸モノエステル含量が70重量%以上であるジグ
リセリン脂肪酸モノエステル組成物を配合することを特
徴とする、耐熱性芽胞菌胞子の発芽及び増殖が抑制さ
れ、保存性の優れた自動販売機による加温販売に適した
澱粉含有飲料製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、種々の液体保存食品が自動販売機
で販売されている。それらの中には、密封後加熱滅菌さ
れたコーンポタージュスープ、あるいはしるこ等の澱粉
含有飲料製品があり、特に冬期にあってはホットベンダ
ーで販売され、その消費量は年々上昇の傾向にある。そ
の澱粉成分としては一般に小麦粉、コーンスターチ、馬
鈴薯澱粉、さらには各種変性澱粉が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】澱粉含有飲料製品の一
つである缶入りコーンポタージュスープはコーン、澱
粉、油脂等を主原料とする澱粉含有飲料製品であるが、
通常商業的滅菌であるレトルト加熱滅菌が施される。し
かしながら、澱粉を含有する飲料は一般の缶飲料と比較
し高い粘度を持つため熱伝達率が悪いこともあり、この
通常の滅菌処理条件では耐熱性芽胞菌であるB.stearoth
ermophilusおよびC.Thermoaceticumの胞子は死滅せずに
残存する場合がある。これら残存耐熱性芽胞菌胞子は常
温保存においては成育性はなく、そのような貯蔵条件で
は通常品質上の問題は生じないが、嗜好性のため、ある
いは冬期の飲料のため、自動販売機で45〜65℃、例えば
55℃の如き加温状態で保存される場合には、残存耐熱性
芽胞菌胞子は発芽し当該菌の増殖による変敗が生じ飲料
適性(商品性)を失うことがある。
【0004】このような耐熱性芽胞菌胞子を完全に死滅
させるには、滅菌温度をさらに高くして行う方法もある
が、かかる高温条件においては製品に物理的・化学的な
悪影響を及ぼし、風味的にも嗜好性を満足しないものと
なり、一定温度以上に滅菌温度を上げることは好ましく
ない。
【0005】一方、蔗糖脂肪酸エステルを添加する方法
(特公昭62− 33860号公報)や、ポリグリセリン脂肪酸
エステルと蔗糖脂肪酸エステルを併用する方法(特公昭
62−215345号公報)等が提案されているが、これらは澱
粉を含む飲料では発芽及び増殖抑制効果が不十分で変敗
を完全に抑えることができない場合が生じる。また、そ
れらの添加量を多くするとそれらエステルの味が表に出
てきて飲料の風味を損なう問題もある。特に、蔗糖脂肪
酸エステルは上記耐熱性菌中B.stearothermophilusに対
しては比較的に制菌作用が弱く、したがってこの細菌の
発芽増殖を完全に抑止するには大量の蔗糖脂肪酸エステ
ルを添加するか、もしくは加熱殺菌条件を特に厳しくし
なければならなかった(たとえばコーンポタージュスー
プの場合123℃で50分ないし 125℃で60分)。
【0006】本発明は、澱粉成分を含む飲料において滅
菌温度条件を不都合に上昇させることなく、あるいは滅
菌温度条件を緩和しても、耐熱性芽胞菌胞子の発芽及び
増殖を抑制し、当該澱粉含有飲料製品を加温状態にて長
期間保存した場合にも、残存する耐熱性芽胞菌胞子の発
芽・増殖による変敗を防止し、かつ風味の良好な澱粉含
有飲料製品を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の問題
を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に完成するに至
ったものである。すなわち、本発明は、構成する脂肪酸
がラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸の1種ま
たは2種以上の混合物からなり、それらの合計量が70重
量%以上であり、かつ、構成するジグリセリン脂肪酸モ
ノエステル混合物中のモノエステル含有量が70%以上で
あるジグリセリン脂肪酸モノエステル組成物を澱粉含有
飲料製品に添加することにより、耐熱性芽胞菌によるフ
ラットサワー変敗が防止されることを見出し本発明に到
達したものである。
【0008】以下に本発明を詳細に説明する。本発明に
用いられるジグリセリン脂肪酸モノエステル組成物は、
ジグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応、ジグリセリ
ンと脂肪酸メチル等の他のエステルとのエステル交換反
応、あるいは、ジグリセリンの脂肪酸ハライドによるエ
ステル化等によって得られたエステル混合物を、蒸留分
別、吸着クロマト分離、あるいは液抽出分離等の方法に
より分離生成して得られるが、通常は分子蒸留法により
目的にあった組成物が得られ、効率的、経済的である。
しかしながら、これらの方法に固定されるものではな
い。
【0009】本発明に用いられるジグリセリン脂肪酸モ
ノエステル組成物の構成脂肪酸は、ラウリン酸、ミリス
チン酸及びパルミチン酸の1種または2種以上の混合物
からなり、それらの合計量が70重量%以上、好ましくは
90重量%以上含有されていることが望ましい。70重量%
未満の場合では、耐熱性芽胞菌胞子の発芽及び増殖抑制
効果が不十分となり、好ましくない。
【0010】また、本発明に用いられるジグリセリン脂
肪酸モノエステル組成物の、エステル混合物中に占める
モノエステル含有量は70重量%以上、さらに好ましくは
80重量%以上であることが好ましい。70重量%未満の場
合は、耐熱性芽胞菌胞子の発芽及び増殖抑制効果が不十
分となり好ましくない。
【0011】本発明の澱粉含有飲料としては、コーンポ
タージュスープなどのスープ類、しるこ等があり、いず
れにも適用できるが、また、これらに限定されるもので
はない。
【0012】本発明のジグリセリン脂肪酸モノエステル
組成物の添加方法は、飲料中に直接添加するか、水ある
いは乳成分中に配合して添加してもよい。
【0013】添加量は澱粉含有飲料製品に対し、0.01〜
1.0重量%、好ましくは0.03〜 0.5重量%である。0.01
重量%未満では耐熱性芽胞菌胞子の発芽及び増殖抑制効
果が不十分であり、 1.0重量%より多い添加量では風味
に影響を及ぼすおそれがある。
【0014】また、本発明のジグリセリン脂肪酸モノエ
ステル組成物と共に、グリセリン脂肪酸エステル、グリ
セリン脂肪酸クエン酸エステル、グリセリン脂肪酸コハ
ク酸エステル、グリセリン脂肪酸ジアセチル酒石酸エス
テル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪
酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、プロピレングリコー
ル脂肪酸エステル、あるいはレシチン等の乳化剤を必要
に応じ併用してもよい。
【0015】このようにして得られる澱粉含有飲料製品
は、ジグリセリン脂肪酸モノエステルの耐熱性芽胞菌胞
子の発芽あるいは増殖を抑制する効果により、それらの
菌に由来するフラットサワー変敗を防止し、風味が良好
で、保存性に優れた製品となる。
【0016】特に、ジグリセリンモノパルミテートは、
蔗糖脂肪酸エステルの制菌作用が弱かったB.stearother
mophilusに対しても強力な制菌作用を有し、したがって
コーンポタージュスープ等において蔗糖脂肪酸エステル
を使用する場合に必要とされていた厳しい加熱殺菌条件
を必要とせず、より緩やかな加熱殺菌で足りるので、製
品のフレーバーの変化の少ない製品が得られる。
【0017】
【実施例】以下に本発明を実施例及び比較例により詳細
に説明する。 (実施例1〜3、比較例1〜8)コーン1Kg、牛乳 800
g、澱粉類 250g、油脂 300g、糖類 100g、食塩50
g、調味料20g、香辛料10g、水7.47Kgを攪拌混合し、
表1に示した各種乳化剤を15g配合した。これをピスト
ホモゲナイザーにより、均質化処理し、得られたコーン
ポタージュスープを 250cc毎に分注(40本)し、芽胞懸
濁液(B.stearothermophilus、濃度104 コ/ml)を1ml
添加、 121℃・1分加熱滅菌した後55℃下に30日間保存
し、40本中の変敗本数を測定した。これらの結果を表1
に併せて示す。
【0018】
【表1】
【0019】(実施例4〜5、比較例9〜13)コーン 1.
5Kg、牛乳 1.3Kg、澱粉類 200g、油脂 250g、糖類 10
0g、食塩50g、調味料20g、香辛料10g、水6.57Kgを
攪拌混合し、表2に示した各種乳化剤を15g配合した。
これをピストホモゲナイザーにより、均質化処理し、得
られたコーンポタージュスープを 250cc毎に分注(40
本)し、芽胞懸濁液(C.thermoacelicum、濃度104 コ/
ml)を1ml添加、 121℃・20分加熱滅菌した後55℃下に
30日間保存し、40本中の変敗本数を測定した。これらの
結果を表2に併せて示す。
【0020】
【表2】
【0021】(実施例6)次に、本発明者らは、密封加
熱滅菌された澱粉含有飲料製品を自動販売機により加温
販売しても耐熱性菌の発芽増殖による製品の変敗を防止
することができるジグリセリンモノパルミテートの添加
量を見出すため、試験対象耐熱性菌としてB.stearother
mophilus(濃度 6.9×103 /mlの芽胞懸濁液)およびC.
thermoaceticum(濃度 2.4×104 /ml)の芽胞懸濁液)
を使用して、以下の実施例に示すように、缶入りコーン
ポタージュスープについて、種々の濃度のジグリセリン
モノパルミテートを添加した場合の変敗の有無、製品の
安定性およびフレーバーについて試験した。添加ジグリ
セリンモノパルミテートとしては上記実施例2で添加し
た乳化剤(理研ビタミン株式会社製のDP−100 )を使
用した。また、ジグリセリンモノパルミテートとの比較
のため、ジグリセリンモノパルミテートに代えて蔗糖脂
肪酸エステルP−1670を使用して同様の試験を行った。
【0022】試験缶詰製造に際しては、内容液を調合し
取分けた後60℃で加温してDP−100 (またはP−167
0)を添加溶解し、内容液をホモゲナイザー(150+50Kg
/cm2)で均質化した。次にこの内容液を90℃で 200g
缶にホットパックした後各缶に上記2種類の耐熱性菌の
いずれかの芽胞懸濁液を 1ml接種し、巻締めた後レトル
ト殺菌を行った。各試験区の製造缶数は30缶である。
【0023】組成 次の成分組成のコーンポタージュスープモデル液を調合
した。 スープベース 20.75Kg コーンピューレ 20.0 水 209.25 250.0Kg 上記製造方法及び配合に従って試験缶詰を製造した。D
P−100 またはP−1670の添加量は0ppm 、1,000ppm、
1,500ppm、2,000ppmであった。またレトルト殺菌条件
は、B.stearothermophilus接種の場合 120℃でF0 値1.
04、0.72とし、C.thermoaceticum接種の場合 125℃でF
0 値18.00 、20.71 とした。
【0024】各試験缶詰を55℃で4週間保存後全数開缶
し、目視及びpH測定により変敗缶の有無を調べた。そ
の結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】表3から、ジグリセリンモノパルミテート
の添加量の下限値は1,500ppmであることが判る。またB.
stearothermophilusに対しジグリセリンモノパルミテー
トは1,500ppmで充分な制菌効果を奏するが、蔗糖脂肪酸
エステルは2,000ppmの添加量でも充分な制菌効果を奏す
ることができないことが判る。
【0027】またジグリセリンモノパルミテートを使用
した場合の製品の安定性を調べるためレーザー解析粒径
測定装置HORIBA−LA500 を用いて缶詰の製造直
後、55℃で2週間保存後および55℃で4週間保存後の各
サンプルの粒径を測定した。その結果を表4に示す。
【0028】
【表4】
【0029】表4から明らかなように、ジグリセリンモ
ノパルミテート添加の場合、メジアン径、最小粒径、最
大粒径とも製造直後の値と55℃で4週間保存後の値には
有意差はなく、製品は蔗糖脂肪酸エステル添加の場合と
同等の安定性を示した。
【0030】またサンプル缶詰を製造直後、55℃で2週
間保存後、55℃で4週間保存後の状態においてそれぞれ
試験管に移し、室温で12時間以上放置した後、試料を静
かに転倒させた時の沈澱量、静置時のクリーム分離量お
よび軽く振とうした時の分離クリームの再分散性につい
て、ガラスを通して目視観察を行った。その結果を表5
に示す。
【0031】
【表5】
【0032】表5から明らかなように、ジグリセリンモ
ノパルミテートの添加の場合、沈澱量、クリームの分離
および再分散性とも実質的に経時変化はなく、蔗糖脂肪
酸エステル添加の場合と同等の安定性を示した。
【0033】また、サンプル缶詰を製造直後、55℃で1
週間、2週間、3週間、4週間保存後のpHと色調を調
べた。その結果を表6に示す。
【0034】
【表6】
【0035】表6から、ジグリセリンモノパルミテート
添加の場合、色調ではP−1670添加製品との比較では差
があるが、経時変化は少なく、蔗糖脂肪酸エステル添加
の場合と同等の安定性を示した。またpHの経時変化は
P−1670添加の場合と同等であった。
【0036】また、ジグリセリンモノパルミテート添加
の場合の製品のフレーバーを試験するため、製造直後よ
り冷蔵保存(0周)と55℃で4週間保存後のサンプル缶
詰のフレーバー試験を行った。3点式識別試験法によ
り、P−1670を 1500ppm添加した場合の0週対4週の比
較、DP−100 を 1500ppm添加した場合の0週対4週の
比較およびP−1670を 1500ppm添加した場合とDP−10
0 を 1500ppm添加した場合の各4週間後の比較を行い、
さらに識別試験結果正解者により嗜好試験を行った。と
同一の方法によりサンプル缶詰のフレーバー試験を行っ
た。その結果を表7に示す。
【0037】
【表7】
【0038】表7に示されるとおり、1,500ppmの添加量
においては識別試験、嗜好試験ともジグリセリンモノパ
ルミテートと蔗糖脂肪酸エステルとの間に有意差は生じ
た。しかし、正解者による嗜好試験ではほとんど差がな
かった。
【0039】さらに、ジグリセリンモノパルミテートの
官能面における添加上限量を決定するため、種々の濃度
でDP−100 を加温溶解し、冷却後数名で試飲して官能
面における添加上限量を決定した。その結果を表8に示
す。
【0040】
【表8】
【0041】表8から、コーンポタージュスープにおけ
るジグリセリンモノパルミテートの添加上限量は3,000p
pmであることが判る。
【0042】
【発明の効果】以上述べたように、本発明のジグリセリ
ン脂肪酸モノエステル組成物を添加した澱粉含有飲料製
品は、耐熱性芽胞菌胞子の発芽及び増殖が抑制され、フ
ラットサワー変敗が防止されるため、高温で長期保存が
可能である。
【0043】またジグリセリンモノパルミテートを添加
する場合は、蔗糖脂肪酸エステルの制菌作用が弱かった
B.stearothermophilusに対してもかなりの制菌作用を有
し、したがってコーンポタージュスープ等において蔗糖
脂肪酸エステルを使用する場合に必要とされていた厳し
い加熱殺菌条件を必要とせず、より緩やかな加熱殺菌で
足りるので、製品のフレーバーの変化の少ない製品が得
られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大槻 智香 神奈川県中郡二宮町山西675−8 (56)参考文献 特開 平6−253794(JP,A) 特開 平7−39354(JP,A) 特開 平7−155149(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23L 2/00 - 2/84 A23L 1/39 - 1/40 A23L 3/3517

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ジグリセリン脂肪酸モノエステル組成物
    を配合することにより、耐熱性芽胞菌胞子の発芽及び増
    殖を抑制された密閉加熱滅菌された澱粉含有飲料製品。
  2. 【請求項2】 エステルを構成する脂肪酸組成が、ラウ
    リン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸の1種または2
    種以上からなり、その合計量が70重量%以上からなるジ
    グリセリン脂肪酸モノエステル組成物を配合した請求項
    1記載の密封加熱滅菌された澱粉含有飲料製品。
  3. 【請求項3】 エステル中のモノエステル含量が70重量
    %以上であるジグリセリン脂肪酸モノエステル組成物を
    配合した請求項1又は請求項2記載の密封加熱滅菌され
    た澱粉含有飲料製品。
  4. 【請求項4】 該澱粉含有飲料製品はジグリセリン脂肪
    酸モノエステル組成物を 1,500〜3,000ppm添加したコー
    ンポタージュスープであることを特徴とする請求項3記
    載の澱粉含有飲料製品。
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