JP2831883B2 - 湿式機械式の無段変速機 - Google Patents
湿式機械式の無段変速機Info
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- JP2831883B2 JP2831883B2 JP4270331A JP27033192A JP2831883B2 JP 2831883 B2 JP2831883 B2 JP 2831883B2 JP 4270331 A JP4270331 A JP 4270331A JP 27033192 A JP27033192 A JP 27033192A JP 2831883 B2 JP2831883 B2 JP 2831883B2
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- continuously variable
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ケーシング内の潤滑油
を介して互いに摩擦係合する2以上の摩擦部材のうち、
少なくとも1つの摩擦部材の有効回転半径を可変とする
ことにより、無段階の変速比で回転を伝達する変速機構
を備えた湿式機械式の無段変速機に関する。
を介して互いに摩擦係合する2以上の摩擦部材のうち、
少なくとも1つの摩擦部材の有効回転半径を可変とする
ことにより、無段階の変速比で回転を伝達する変速機構
を備えた湿式機械式の無段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の無段変速機として、例え
ば図4〜図6、図7、あるいは図8及び図9に示される
ようなものが知られている。
ば図4〜図6、図7、あるいは図8及び図9に示される
ようなものが知られている。
【0003】図4〜図6に示した無段変速機では、図示
せぬモータによって入力軸2が回転させられると、この
回転は該入力軸2の周りに設けられた3個のアイドラ4
に伝達され、この3個のアイドラ4を介して3個のスプ
ライン軸歯車6が回転させられる。入力軸2の回転を直
接スプライン軸歯車6に伝達しないのは、変速操作のた
めにスプライン軸8の半径方向位置が変化するため、こ
の変化をアイドラ4によって吸収させる必要があるため
である。
せぬモータによって入力軸2が回転させられると、この
回転は該入力軸2の周りに設けられた3個のアイドラ4
に伝達され、この3個のアイドラ4を介して3個のスプ
ライン軸歯車6が回転させられる。入力軸2の回転を直
接スプライン軸歯車6に伝達しないのは、変速操作のた
めにスプライン軸8の半径方向位置が変化するため、こ
の変化をアイドラ4によって吸収させる必要があるため
である。
【0004】スプライン軸歯車6の回転によってスプラ
イン軸8が回転すると、この回転によってコーンディス
ク10が回転し、該コーンディスク10を挾持しながら
摩擦係合しているフランジディスク12を介して出力軸
14が回転する。図示の従来例では、フランジディスク
12は出力軸14の軸方向に配置され、このフランジデ
ィスク12の周りにコーンディスク10が等配されてお
り、フランジディスク12とコーンディスク10は、交
互に並べられ、1列もしくは多列構造となっている。
イン軸8が回転すると、この回転によってコーンディス
ク10が回転し、該コーンディスク10を挾持しながら
摩擦係合しているフランジディスク12を介して出力軸
14が回転する。図示の従来例では、フランジディスク
12は出力軸14の軸方向に配置され、このフランジデ
ィスク12の周りにコーンディスク10が等配されてお
り、フランジディスク12とコーンディスク10は、交
互に並べられ、1列もしくは多列構造となっている。
【0005】フランジディスク12はばね16によって
適当な押圧力で油膜17を介してコーンディスク10を
挾持しており(図6参照)、且つ、各コーンディスク1
0(スプライン軸8)が半径方向に変位可能とされ、こ
の変位によってコーンディスク10のフランジディスク
12に対する有効回転半径が変わり、回転速度比、即ち
変速比が変更されるようになっている。
適当な押圧力で油膜17を介してコーンディスク10を
挾持しており(図6参照)、且つ、各コーンディスク1
0(スプライン軸8)が半径方向に変位可能とされ、こ
の変位によってコーンディスク10のフランジディスク
12に対する有効回転半径が変わり、回転速度比、即ち
変速比が変更されるようになっている。
【0006】コーンディスク10(スプライン軸8)の
半径方向の変位は、図5に示されるように、操作ハンド
ル18を回転させることによってねじ20上をスライダ
22が移動し、この移動によってロッド24、26を介
して3つのピン28が中心Oの周りで矢印A方向に回転
し、この回転によって3本のロッド30を介して3本の
アーム32が揺動軸34を中心にして揺動し、このアー
ム32にそれぞれ設けられたスプライン軸8が符号Bで
示した位置まで移動し、該スプライン軸8に設けられた
コーンディスク10の中心Oからの半径方向位置が変え
られるようになっている。
半径方向の変位は、図5に示されるように、操作ハンド
ル18を回転させることによってねじ20上をスライダ
22が移動し、この移動によってロッド24、26を介
して3つのピン28が中心Oの周りで矢印A方向に回転
し、この回転によって3本のロッド30を介して3本の
アーム32が揺動軸34を中心にして揺動し、このアー
ム32にそれぞれ設けられたスプライン軸8が符号Bで
示した位置まで移動し、該スプライン軸8に設けられた
コーンディスク10の中心Oからの半径方向位置が変え
られるようになっている。
【0007】この変速機構はケーシング35内に投入さ
れたオイル(潤滑油)にほぼ浸されており、摩擦係合に
よる動力伝達はこの潤滑油によって形成される油膜17
を介して行われる。図の符号36はこの潤滑油を投入す
るための給油口、37は排油口、38はオイルゲージを
それぞれ示している。
れたオイル(潤滑油)にほぼ浸されており、摩擦係合に
よる動力伝達はこの潤滑油によって形成される油膜17
を介して行われる。図の符号36はこの潤滑油を投入す
るための給油口、37は排油口、38はオイルゲージを
それぞれ示している。
【0008】一方、図7には、特開昭54−5164号
公報に開示された湿式機械式の無段変速機の要部構造が
示されている。この無段変速機は、入力軸40に一体的
に備えられた入力円盤42、コーン44、リング46、
出力軸48と連結されたカムディスク50とから主に構
成される。入力軸40と一体の入力円盤42が回転する
と、コーン44が自転しながらリング46の内周に沿っ
て公転し、リング46がP1 の位置であればコーン44
に対するリング46とカムディスク50の接触半径の関
係から出力軸48に0回転(停止)が取り出され、変速
操作によってリング46をP2 方向に移動すると差動現
象が現われてカムディスク50は徐々に回転し始め、P
2 位置で最高回転が得られる。この無段変速機にあって
も、カムディスク50の存在によって差動回転出力が得
られてはいるものの、変速自体はコーン44とリング4
6とが摩擦係合する際の(コーン44の)有効回転半径
を変えることによって行われている。
公報に開示された湿式機械式の無段変速機の要部構造が
示されている。この無段変速機は、入力軸40に一体的
に備えられた入力円盤42、コーン44、リング46、
出力軸48と連結されたカムディスク50とから主に構
成される。入力軸40と一体の入力円盤42が回転する
と、コーン44が自転しながらリング46の内周に沿っ
て公転し、リング46がP1 の位置であればコーン44
に対するリング46とカムディスク50の接触半径の関
係から出力軸48に0回転(停止)が取り出され、変速
操作によってリング46をP2 方向に移動すると差動現
象が現われてカムディスク50は徐々に回転し始め、P
2 位置で最高回転が得られる。この無段変速機にあって
も、カムディスク50の存在によって差動回転出力が得
られてはいるものの、変速自体はコーン44とリング4
6とが摩擦係合する際の(コーン44の)有効回転半径
を変えることによって行われている。
【0009】なお、この変速機構も、図示せぬケーシン
グのオイル中に浸され、該オイル(潤滑油)を介して摩
擦係合による動力伝達がなされている。
グのオイル中に浸され、該オイル(潤滑油)を介して摩
擦係合による動力伝達がなされている。
【0010】次に、図8及び図9に遊星係合構造を採用
した従来例を示す。
した従来例を示す。
【0011】この無段変速機では、動力の伝達は図8の
太い一点鎖線の経路で伝達される。即ち、入力軸70に
伝えられた回転は固定太陽摩擦車72と移動太陽摩擦車
73とから成る1対の太陽摩擦車74に伝えられる。遊
星摩擦車76は、円盤部分の内側を太陽摩擦車74によ
り皿ばね78の力で挾まれており、外側を固定リング8
0と移動カム81とから成るリング摩擦車82で挾まれ
ている。太陽摩擦車74が回転すると、遊星摩擦車76
は自転しながら太陽摩擦車74の周りを公転する。この
公転を、キャリア84の溝に取り付けられた遊星メタル
86が取り出し、出力軸88に伝達する。
太い一点鎖線の経路で伝達される。即ち、入力軸70に
伝えられた回転は固定太陽摩擦車72と移動太陽摩擦車
73とから成る1対の太陽摩擦車74に伝えられる。遊
星摩擦車76は、円盤部分の内側を太陽摩擦車74によ
り皿ばね78の力で挾まれており、外側を固定リング8
0と移動カム81とから成るリング摩擦車82で挾まれ
ている。太陽摩擦車74が回転すると、遊星摩擦車76
は自転しながら太陽摩擦車74の周りを公転する。この
公転を、キャリア84の溝に取り付けられた遊星メタル
86が取り出し、出力軸88に伝達する。
【0012】変速は、調速軸90、調速ナット92及び
球頭ボルト94、ボールリテーナ96等により、図9の
(A)、(B)に示されるような状態が形成され、
(A)の状態で出力軸最低回転が得られ、(B)の状態
で出力軸最高回転が得られるようになっている。図から
明らかなように、遊星摩擦車76が半径方向に移動する
ことによって、該遊星摩擦車76の太陽摩擦車74に対
する有効回転半径とリング摩擦車82に対する有効回転
半径との双方が変更され、その結果無段階の変速比で変
速される構成とされている。
球頭ボルト94、ボールリテーナ96等により、図9の
(A)、(B)に示されるような状態が形成され、
(A)の状態で出力軸最低回転が得られ、(B)の状態
で出力軸最高回転が得られるようになっている。図から
明らかなように、遊星摩擦車76が半径方向に移動する
ことによって、該遊星摩擦車76の太陽摩擦車74に対
する有効回転半径とリング摩擦車82に対する有効回転
半径との双方が変更され、その結果無段階の変速比で変
速される構成とされている。
【0013】又、この無段変速機の場合も、変速機構は
図示せぬケーシングのオイル中に浸され、該オイルを潤
滑油として摩擦係合部分での動力伝達が行われるように
なっている。
図示せぬケーシングのオイル中に浸され、該オイルを潤
滑油として摩擦係合部分での動力伝達が行われるように
なっている。
【0014】このように、潤滑油を用いて、その油膜に
よるトラクション伝達力によって動力伝達するタイプの
無段変速機は、一般に湿式機械式の無段変速機と称され
ている。これに対し、ベルトとベルト車を用い、潤滑油
を用いないタイプの無段変速機は乾式機械式の無段変速
機と称されている。本発明は湿式機械式の無段変速機に
係る。
よるトラクション伝達力によって動力伝達するタイプの
無段変速機は、一般に湿式機械式の無段変速機と称され
ている。これに対し、ベルトとベルト車を用い、潤滑油
を用いないタイプの無段変速機は乾式機械式の無段変速
機と称されている。本発明は湿式機械式の無段変速機に
係る。
【0015】湿式機械式の無段変速機としては、非常に
多くの構造のものが提案されているが、トラクション伝
達部に高硬度で高加工精度を要する部品を用いる必要が
あることから、現状においては、ほとんどの湿式機械式
の無段変速機は上記3構造のもの、及びその応用系が用
いられている。
多くの構造のものが提案されているが、トラクション伝
達部に高硬度で高加工精度を要する部品を用いる必要が
あることから、現状においては、ほとんどの湿式機械式
の無段変速機は上記3構造のもの、及びその応用系が用
いられている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
湿式機械式の無段変速機は、JIS K 2219によ
る工業用ギヤ油1種又はトラクションオイルと称される
トラクション係数を高めた潤滑油を用いて潤滑されてい
た。又、従来の湿式機械式の無段変速機においては、こ
のオイル潤滑を実現するために、必然的に、給油口、排
油口、運転時の攪拌に伴う内圧防止のための空気抜き、
あるいはオイルレベルを管理するためのオイルゲージ等
の設置を必要とした。従って、予め設定した取付方向
(例えば出力軸の向きを横向き、下向き、上向き等)に
対して、これら給油口、排油口、空気抜き、オイルゲー
ジ等の設計(以後潤滑設計と称する)を行うと、これと
異なる取付方向に対してはこの潤滑設計を全く変更する
必要があるという問題があった。即ち、特定の潤滑設計
を施した変速機は特定の方向でしか取付けることができ
ず、従って、確保しようとする取付方向の数だけ潤滑設
計を異ならせた変速機の種類が必要であった。
湿式機械式の無段変速機は、JIS K 2219によ
る工業用ギヤ油1種又はトラクションオイルと称される
トラクション係数を高めた潤滑油を用いて潤滑されてい
た。又、従来の湿式機械式の無段変速機においては、こ
のオイル潤滑を実現するために、必然的に、給油口、排
油口、運転時の攪拌に伴う内圧防止のための空気抜き、
あるいはオイルレベルを管理するためのオイルゲージ等
の設置を必要とした。従って、予め設定した取付方向
(例えば出力軸の向きを横向き、下向き、上向き等)に
対して、これら給油口、排油口、空気抜き、オイルゲー
ジ等の設計(以後潤滑設計と称する)を行うと、これと
異なる取付方向に対してはこの潤滑設計を全く変更する
必要があるという問題があった。即ち、特定の潤滑設計
を施した変速機は特定の方向でしか取付けることができ
ず、従って、確保しようとする取付方向の数だけ潤滑設
計を異ならせた変速機の種類が必要であった。
【0017】このような湿式機械式の無段変速機の潤滑
方式は、近年の生産システムの合理化やユーザの要求の
多様化に対処するものとしては不十分なものとなりつつ
あり、現に以下のような問題点が生じている。
方式は、近年の生産システムの合理化やユーザの要求の
多様化に対処するものとしては不十分なものとなりつつ
あり、現に以下のような問題点が生じている。
【0018】例えば、複数のコンベアからなる物流シス
テムの分野では、該物流システムのうち必要とする部分
を必要とするときにのみ運転させるのが効率的である。
このために、変速機が設けられている1つ1つのコンベ
アを独立して駆動できるようにしている。
テムの分野では、該物流システムのうち必要とする部分
を必要とするときにのみ運転させるのが効率的である。
このために、変速機が設けられている1つ1つのコンベ
アを独立して駆動できるようにしている。
【0019】この場合、コンベアに取り付けられる1つ
1つの変速機は、該コンベアの一部を構成しているに過
ぎず、更にはこのコンベアも物流システム全体からみれ
ばその一部を構成しているに過ぎない。従って、物流シ
ステム全体との配置関係において、各コンベアに変速機
を取付ける際に多様な取付方向が求められるものであ
る。即ち、変速機の出力軸が横向きのもの、下向きのも
の、あるいは上向きのもの、更には斜め向きのものなど
が1つの物流システムの中で求められるようになってき
ている。
1つの変速機は、該コンベアの一部を構成しているに過
ぎず、更にはこのコンベアも物流システム全体からみれ
ばその一部を構成しているに過ぎない。従って、物流シ
ステム全体との配置関係において、各コンベアに変速機
を取付ける際に多様な取付方向が求められるものであ
る。即ち、変速機の出力軸が横向きのもの、下向きのも
の、あるいは上向きのもの、更には斜め向きのものなど
が1つの物流システムの中で求められるようになってき
ている。
【0020】しかしながら、システム全体のメンテナン
スの効率化のためには、変速機の種類は少ない方が便利
である。このことは、変速機は多様な使用形態で用いた
いが、多種類は準備したくないという要求があることを
意味する。
スの効率化のためには、変速機の種類は少ない方が便利
である。このことは、変速機は多様な使用形態で用いた
いが、多種類は準備したくないという要求があることを
意味する。
【0021】更には、近年の職場環境のクリーン化と設
備のメンテナンスフリー化の要求からも、この種の湿式
機械式の無段変速機にもメンテナンスフリー化が求めら
れてきている。
備のメンテナンスフリー化の要求からも、この種の湿式
機械式の無段変速機にもメンテナンスフリー化が求めら
れてきている。
【0022】しかしながら、前述したように、公知の湿
式機械式の無段変速機は、工業用ギヤ油1種を用いたも
のも、トラクションオイルを用いたものも、異なる取付
方法に対しては異なる潤滑設計を施した変速機を用意す
る必要があり、又、定期的にオイル交換を行うことを前
提とした設計で製造されていたため、多様な取付方向へ
の対応も、メンテナンスフリー化への対応もできていな
いというのが実状であった。
式機械式の無段変速機は、工業用ギヤ油1種を用いたも
のも、トラクションオイルを用いたものも、異なる取付
方法に対しては異なる潤滑設計を施した変速機を用意す
る必要があり、又、定期的にオイル交換を行うことを前
提とした設計で製造されていたため、多様な取付方向へ
の対応も、メンテナンスフリー化への対応もできていな
いというのが実状であった。
【0023】本発明は、このような従来の問題に鑑みて
成されたものであって、湿式機械式の無段変速機であり
ながら、多様な取付方向に対して1種類の変速機で対応
できるようにすると共に、この種の変速機のメンテナン
スフリー化を実現することをその目的としている。
成されたものであって、湿式機械式の無段変速機であり
ながら、多様な取付方向に対して1種類の変速機で対応
できるようにすると共に、この種の変速機のメンテナン
スフリー化を実現することをその目的としている。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明は、ケーシング内
の潤滑油を介して互いに摩擦係合する2以上の摩擦部材
のうち、少なくとも1つの摩擦部材の有効回転半径を可
変とすることにより、無段階の変速比で回転を伝達する
変速機構を備えた湿式機械式の無段変速機において、前
記潤滑油としてグリースを採用すると共に、前記ケーシ
ングを密閉可能な構造とし、少なくとも前記2以上の摩
擦部材の全ての摩擦係合部分を、略円筒状のホルダ内に
収容し、且つ、該ホルダに、前記グリースをホルダ中央
部側へ移動させる案内手段を形成したことにより、上記
課題を解決したものである。
の潤滑油を介して互いに摩擦係合する2以上の摩擦部材
のうち、少なくとも1つの摩擦部材の有効回転半径を可
変とすることにより、無段階の変速比で回転を伝達する
変速機構を備えた湿式機械式の無段変速機において、前
記潤滑油としてグリースを採用すると共に、前記ケーシ
ングを密閉可能な構造とし、少なくとも前記2以上の摩
擦部材の全ての摩擦係合部分を、略円筒状のホルダ内に
収容し、且つ、該ホルダに、前記グリースをホルダ中央
部側へ移動させる案内手段を形成したことにより、上記
課題を解決したものである。
【0025】
【作用】本発明は、上記課題を解決するにあたり、従来
常識とされ、何の疑いも抱かれなかった部分について
も、これを逃さず吟味することにより初めて開発し得
た。本発明の作用をより良く理解するために、まずこの
開発経緯から説明する。
常識とされ、何の疑いも抱かれなかった部分について
も、これを逃さず吟味することにより初めて開発し得
た。本発明の作用をより良く理解するために、まずこの
開発経緯から説明する。
【0026】従来は、湿式機械式の無段変速機における
トラクション伝達部の油膜牽引力の発生は、「オイルに
よる潤滑」が必須であると信じられてきた。又、実際に
従来製造されてきたこのタイプの無段変速機は、全てこ
の思想に基づいて製造されてきた。即ち、構成部品の潤
滑の一部をグリース潤滑とすることはあっても、トラク
ション伝達部の潤滑(油膜牽引力の発生)をグリース潤
滑としたものは例がなかった。
トラクション伝達部の油膜牽引力の発生は、「オイルに
よる潤滑」が必須であると信じられてきた。又、実際に
従来製造されてきたこのタイプの無段変速機は、全てこ
の思想に基づいて製造されてきた。即ち、構成部品の潤
滑の一部をグリース潤滑とすることはあっても、トラク
ション伝達部の潤滑(油膜牽引力の発生)をグリース潤
滑としたものは例がなかった。
【0027】しかしながら、発明者等は、いずれの取付
方向においても取付けが可能であり、しかもメンテナン
スフリー化を実現するには、グリース潤滑とケーシング
の密閉化が不可欠であるとの観点に立ち、ともかくグリ
ースにて潤滑することを試みた。具体的には、当初は図
4〜図6に示した構造の湿式機械式の無段変速機を用い
てテストを行った。
方向においても取付けが可能であり、しかもメンテナン
スフリー化を実現するには、グリース潤滑とケーシング
の密閉化が不可欠であるとの観点に立ち、ともかくグリ
ースにて潤滑することを試みた。具体的には、当初は図
4〜図6に示した構造の湿式機械式の無段変速機を用い
てテストを行った。
【0028】まず、グリースの硬さによる湿式機械式の
無段変速機への適応性を調べた。この結果、実験的に
は、JIS K 2200におけるNLGI000号若
しくはNLGI00号のちょう度であれば、効率の低下
と温度上昇が大きくなる不具合を生じはするものの、な
んとかグリース潤滑とし得ることを見出した。
無段変速機への適応性を調べた。この結果、実験的に
は、JIS K 2200におけるNLGI000号若
しくはNLGI00号のちょう度であれば、効率の低下
と温度上昇が大きくなる不具合を生じはするものの、な
んとかグリース潤滑とし得ることを見出した。
【0029】なお、ちょう度とは、グリースの見掛けの
硬さ、総合的な流動特性を示すもので、より正確には規
定の円錐が試料に嵌入した深さ(ミリ)を10倍した値
で表わしたものである。JIS K 2220において
は、NLGIちょう度番号が000号、00号、0号、
1号〜6号までのちょう度番号が示されている。なお、
NLGIとは、the National Lubricating Grease Inst
itute (米国グリース協会)の略である。
硬さ、総合的な流動特性を示すもので、より正確には規
定の円錐が試料に嵌入した深さ(ミリ)を10倍した値
で表わしたものである。JIS K 2220において
は、NLGIちょう度番号が000号、00号、0号、
1号〜6号までのちょう度番号が示されている。なお、
NLGIとは、the National Lubricating Grease Inst
itute (米国グリース協会)の略である。
【0030】次に、グリースを構成する基油について
も、これを高粘度のものから低粘度のものまで各種の潤
滑油を組合せテストした。この結果、実験的には、JI
S K2001に示される工業用潤滑油ISO粘度グレ
ードのISO VG 10〜150の鉱油、若しくは一
般にトラクションオイルと称されるトラクション係数を
高めた合成潤滑油とすると、性能、寿命において良好な
結果が得られることを見出した。
も、これを高粘度のものから低粘度のものまで各種の潤
滑油を組合せテストした。この結果、実験的には、JI
S K2001に示される工業用潤滑油ISO粘度グレ
ードのISO VG 10〜150の鉱油、若しくは一
般にトラクションオイルと称されるトラクション係数を
高めた合成潤滑油とすると、性能、寿命において良好な
結果が得られることを見出した。
【0031】続いて、図7、あるいは図8及び図9の構
造の湿式機械式の無段変速機においても同様なテストを
行い、グリースの性状(ちょう度と基油の組合せ)にお
いて同様なテスト結果を得ることができた。
造の湿式機械式の無段変速機においても同様なテストを
行い、グリースの性状(ちょう度と基油の組合せ)にお
いて同様なテスト結果を得ることができた。
【0032】ところが、前述した3種の公知の変速機構
の構造では、オイル潤滑に比べて効率が非常に低く、グ
リース潤滑の実用性がこのままでは否定される程の効率
しか得ることができなかった。そこで発明者らが効率が
低下する原因を追跡調査したところ、次のような事実が
見出された。
の構造では、オイル潤滑に比べて効率が非常に低く、グ
リース潤滑の実用性がこのままでは否定される程の効率
しか得ることができなかった。そこで発明者らが効率が
低下する原因を追跡調査したところ、次のような事実が
見出された。
【0033】即ち、グリースはオイルよりも流動性がな
いため、トラクション伝達部の摩擦車の係合により、飛
散してケーシングの内周面に集まってしまう傾向があ
る。従ってこの状態でグリース潤滑とする大きな目的の
1つである取付方向の自在性を得るためには、飛散した
グリースがケーシングの内周面に集まってもなおトラク
ション伝達部にグリースを確保しなければならない。こ
のことは、結果としてケーシング内にかなりの量のグリ
ースを入れる必要があることを意味し、その結果攪拌損
失の増大を招き効率が低下してしまったと考えられる。
いため、トラクション伝達部の摩擦車の係合により、飛
散してケーシングの内周面に集まってしまう傾向があ
る。従ってこの状態でグリース潤滑とする大きな目的の
1つである取付方向の自在性を得るためには、飛散した
グリースがケーシングの内周面に集まってもなおトラク
ション伝達部にグリースを確保しなければならない。こ
のことは、結果としてケーシング内にかなりの量のグリ
ースを入れる必要があることを意味し、その結果攪拌損
失の増大を招き効率が低下してしまったと考えられる。
【0034】具体的には、図4〜図6の変速機構の場
合、トラクション伝達部が開放されているため(オイル
潤滑のときは特に問題ないが)グリースが飛散し易いと
共に、飛散したグリースを回収できず、最も潤滑の必要
な中央部分にグリースが次第に存在しなくなってしまう
という事実が認められた。
合、トラクション伝達部が開放されているため(オイル
潤滑のときは特に問題ないが)グリースが飛散し易いと
共に、飛散したグリースを回収できず、最も潤滑の必要
な中央部分にグリースが次第に存在しなくなってしまう
という事実が認められた。
【0035】又、図7の構造は、コーン44が自転する
と共に公転する構造であるため、係合部分がケーシング
内で大きく移動し、従って全ての係合部分での潤滑を確
保するにはグリースを多量に投入する必要があり、大き
な攪拌損失を招いた。又、この構造でも、やはり外周に
飛散したグリースの掻き寄せ手段がないため、中央部付
近のグリースが次第に減少していくという現象が見出さ
れた。
と共に公転する構造であるため、係合部分がケーシング
内で大きく移動し、従って全ての係合部分での潤滑を確
保するにはグリースを多量に投入する必要があり、大き
な攪拌損失を招いた。又、この構造でも、やはり外周に
飛散したグリースの掻き寄せ手段がないため、中央部付
近のグリースが次第に減少していくという現象が見出さ
れた。
【0036】更に、図8及び図9の構造は、トラクショ
ン伝達部が径方向の外周側にあると共に、遊星摩擦車7
6が自転と公転を行うキャリア型の遊星構造であるた
め、遊星摩擦車76とリング摩擦車82との係合部分が
ケーシング内で大きく移動するため、前記図4〜図6の
構造と同様の不具合が発生した。又、構造上特に出力軸
88が下向きとなる場合にはグリースを多く投入しなけ
ればならないという問題もあった。
ン伝達部が径方向の外周側にあると共に、遊星摩擦車7
6が自転と公転を行うキャリア型の遊星構造であるた
め、遊星摩擦車76とリング摩擦車82との係合部分が
ケーシング内で大きく移動するため、前記図4〜図6の
構造と同様の不具合が発生した。又、構造上特に出力軸
88が下向きとなる場合にはグリースを多く投入しなけ
ればならないという問題もあった。
【0037】このような点に鑑み、発明者等は、潤滑油
としてグリースを採用すると共に、ケーシングを密閉可
能な構造とし、その上で摩擦部材の全ての摩擦係合部分
をほぼ円筒状のホルダ内に納め、且つ、このホルダに前
記グリースをホルダ中央部側へ移動させるような案内手
段を形成するようにしたものである。
としてグリースを採用すると共に、ケーシングを密閉可
能な構造とし、その上で摩擦部材の全ての摩擦係合部分
をほぼ円筒状のホルダ内に納め、且つ、このホルダに前
記グリースをホルダ中央部側へ移動させるような案内手
段を形成するようにしたものである。
【0038】これにより、従来の給油口、排油口、空気
抜き、オイルゲージ等の潤滑設計の概念を排除すること
ができるようになり、いずれの方向にも取付けることが
可能となった。又、メンテナンスフリー化も実現した。
抜き、オイルゲージ等の潤滑設計の概念を排除すること
ができるようになり、いずれの方向にも取付けることが
可能となった。又、メンテナンスフリー化も実現した。
【0039】それは、摩擦係合部を円筒状のホルダ内に
納め、このホルダにグリースを中央部へ移動させるよう
な案内手段を設けるようにしたため、飛散したグリース
を常に中央部側へ押し戻すことができ、グリースを大量
に投入しなくても常に摩擦係合部にグリースを確保して
おくことができるようになり、効率の低下も最少限に抑
えることができるようなったためである。
納め、このホルダにグリースを中央部へ移動させるよう
な案内手段を設けるようにしたため、飛散したグリース
を常に中央部側へ押し戻すことができ、グリースを大量
に投入しなくても常に摩擦係合部にグリースを確保して
おくことができるようになり、効率の低下も最少限に抑
えることができるようなったためである。
【0040】なお、変速機構の構成は、入力軸と連結さ
れた1対の太陽摩擦車と、該1対の太陽摩擦車に半径方
向の任意の位置で挾持されてこれと摩擦係合する遊星摩
擦車と、該遊星摩擦車を挾持しながらこれと内接係合す
る1対のリング摩擦車とを備え、且つ、前記遊星摩擦車
を支えるキャリアを固定して該遊星摩擦車に自転のみを
行わせると共に、前記リング摩擦車を出力軸と連結した
構成とすると良い(請求項2)。これにより変速機構の
摩擦部材自体が大きく移動(公転等)したりすることが
なくなるため、従来のオイルに比べて流動性のないグリ
ースを用いても攪拌損失等を最少限に抑えることができ
るようになる。
れた1対の太陽摩擦車と、該1対の太陽摩擦車に半径方
向の任意の位置で挾持されてこれと摩擦係合する遊星摩
擦車と、該遊星摩擦車を挾持しながらこれと内接係合す
る1対のリング摩擦車とを備え、且つ、前記遊星摩擦車
を支えるキャリアを固定して該遊星摩擦車に自転のみを
行わせると共に、前記リング摩擦車を出力軸と連結した
構成とすると良い(請求項2)。これにより変速機構の
摩擦部材自体が大きく移動(公転等)したりすることが
なくなるため、従来のオイルに比べて流動性のないグリ
ースを用いても攪拌損失等を最少限に抑えることができ
るようになる。
【0041】又、前記ホルダは、出力軸と一体的に回転
するように構成すると、ホルダを回転させるために別途
の動力伝達手段を付設する必要がなくなって良好である
(請求項3)。
するように構成すると、ホルダを回転させるために別途
の動力伝達手段を付設する必要がなくなって良好である
(請求項3)。
【0042】なお、このホルダは必ずしもこれ自身が回
転する必要はなく、例えばホルダに隣接した摩擦部材の
回転によってグリースが該ホルダに設けた案内板から反
力を受け、ホルダ中央部側に移動させられるような構成
としてもよい。
転する必要はなく、例えばホルダに隣接した摩擦部材の
回転によってグリースが該ホルダに設けた案内板から反
力を受け、ホルダ中央部側に移動させられるような構成
としてもよい。
【0043】無論、このホルダは、例えば入力軸の回転
を利用して別途の減速機構を介して回転させるように構
成してもよい。このように、入力軸回転に同期した別途
のホルダ駆動機構を設けると、例えば図7に説明した従
来例のような、出力軸回転がほぼ0となるように変速さ
れることがあるような場合でも、確実にホルダを回転さ
せることができる。この場合、ホルダを回転させるため
のトルクは小さくて良いため、例えば軸方向の厚さの極
めて薄いサイクロ減速機(出願人の登録商標)等の減速
機構を採用するとよい。
を利用して別途の減速機構を介して回転させるように構
成してもよい。このように、入力軸回転に同期した別途
のホルダ駆動機構を設けると、例えば図7に説明した従
来例のような、出力軸回転がほぼ0となるように変速さ
れることがあるような場合でも、確実にホルダを回転さ
せることができる。この場合、ホルダを回転させるため
のトルクは小さくて良いため、例えば軸方向の厚さの極
めて薄いサイクロ減速機(出願人の登録商標)等の減速
機構を採用するとよい。
【0044】又、前記グリース移動用の案内手段は、例
えばホルダの外周部に開口部を形成し、この開口部の端
部に案内手段の機能を持たせるような構成とすると、構
成が簡単で且つ低コストに案内手段を形成することがで
きる(請求項4)。
えばホルダの外周部に開口部を形成し、この開口部の端
部に案内手段の機能を持たせるような構成とすると、構
成が簡単で且つ低コストに案内手段を形成することがで
きる(請求項4)。
【0045】又、前記グリースのちょう度は、前述した
ように比較的流動性のあるJISK 2220における
NLGIちょう度番号で000号、00号のいずれかと
するとよい(請求項5)。これは、出願人の膨大な実験
結果から導き出された結論である。
ように比較的流動性のあるJISK 2220における
NLGIちょう度番号で000号、00号のいずれかと
するとよい(請求項5)。これは、出願人の膨大な実験
結果から導き出された結論である。
【0046】又、前記グリースの基油は、JIS K
2001に示される工業用潤滑油ISO粘度グレードの
ISO 10〜150の鉱油、トラクション係数を高め
た合成潤滑油とするとよい(請求項6)。これも出願人
の実験結果に基づいて導き出された結論である。
2001に示される工業用潤滑油ISO粘度グレードの
ISO 10〜150の鉱油、トラクション係数を高め
た合成潤滑油とするとよい(請求項6)。これも出願人
の実験結果に基づいて導き出された結論である。
【0047】
【実施例】以下図面に基づいて本発明の実施例を詳細に
説明する。
説明する。
【0048】図1〜図3に本発明が適用された湿式機械
式の無段変速機を示す。
式の無段変速機を示す。
【0049】この無段変速機は、その変速機構として遊
星係合構造を採用している。図1において、102が入
力軸、104が1対の太陽摩擦車、106が遊星摩擦
車、108が1対のリング摩擦車、110がホルダ、1
12が出力軸、そして114がケーシングである。
星係合構造を採用している。図1において、102が入
力軸、104が1対の太陽摩擦車、106が遊星摩擦
車、108が1対のリング摩擦車、110がホルダ、1
12が出力軸、そして114がケーシングである。
【0050】前記入力軸102の先端部には、スプライ
ン軸120が配置され、このスプライン軸120に前記
1対の太陽摩擦車104が取り付けられている。この太
陽摩擦車104は、皿ばね122によって所定の圧力で
前記遊星摩擦車106を挾持している。図1の上側に示
した遊星摩擦車106は、該遊星摩擦車106の太陽摩
擦車104に対する有効半径が大きい場合を示し、下側
に示した遊星摩擦車106は、これが小さい場合をそれ
ぞれ示している。
ン軸120が配置され、このスプライン軸120に前記
1対の太陽摩擦車104が取り付けられている。この太
陽摩擦車104は、皿ばね122によって所定の圧力で
前記遊星摩擦車106を挾持している。図1の上側に示
した遊星摩擦車106は、該遊星摩擦車106の太陽摩
擦車104に対する有効半径が大きい場合を示し、下側
に示した遊星摩擦車106は、これが小さい場合をそれ
ぞれ示している。
【0051】図から明らかなように、この実施例では、
一対の止め輪124、126によって皿ばね122及び
太陽摩擦車104の軸方向の長さの和がLに規制されて
おり、従って、遊星摩擦車106が太陽摩擦車104に
対して深く入り込んだ場合(図の下側の場合)、皿ばね
122からより強い挾持力が与えられるようになってい
る。
一対の止め輪124、126によって皿ばね122及び
太陽摩擦車104の軸方向の長さの和がLに規制されて
おり、従って、遊星摩擦車106が太陽摩擦車104に
対して深く入り込んだ場合(図の下側の場合)、皿ばね
122からより強い挾持力が与えられるようになってい
る。
【0052】前記遊星摩擦車106は、図2(A)に示
されるように、太陽摩擦車104の周りに3個備えら
れ、操作ハンドル128の回転操作により、ウォーム軸
130が回転し、ウォームホイール133に嵌入(遊
嵌)された3つのピン138が中心Oの回りで回転する
ようになっている。即ち、遊星摩擦車106の回転軸1
40は、図2(B)に示されるように、ケーシング11
4にその半径方向に長く形成された長溝114A内を移
動できるようになっている。又、3つのピン138はウ
ォームホイール133に嵌入されると共にロッド142
にも嵌入され、遊星摩擦車106の回転軸140とこの
3つのピン138とがそれぞれ3つのロッド142で連
結された構造とされている。この結果ピン138の中心
Oの周りでの回転により回転軸140がケーシング11
4の長溝114Aに沿って半径方向に往復できる。な
お、ウォームホイール133は、その一部(3箇所)に
貫通孔133Aが形成されており、遊星摩擦車106の
回転軸140の端部と干渉しないようにしてある。
されるように、太陽摩擦車104の周りに3個備えら
れ、操作ハンドル128の回転操作により、ウォーム軸
130が回転し、ウォームホイール133に嵌入(遊
嵌)された3つのピン138が中心Oの回りで回転する
ようになっている。即ち、遊星摩擦車106の回転軸1
40は、図2(B)に示されるように、ケーシング11
4にその半径方向に長く形成された長溝114A内を移
動できるようになっている。又、3つのピン138はウ
ォームホイール133に嵌入されると共にロッド142
にも嵌入され、遊星摩擦車106の回転軸140とこの
3つのピン138とがそれぞれ3つのロッド142で連
結された構造とされている。この結果ピン138の中心
Oの周りでの回転により回転軸140がケーシング11
4の長溝114Aに沿って半径方向に往復できる。な
お、ウォームホイール133は、その一部(3箇所)に
貫通孔133Aが形成されており、遊星摩擦車106の
回転軸140の端部と干渉しないようにしてある。
【0053】遊星摩擦車106は、それぞれリング摩擦
車108と係合している。このリング摩擦車108は、
前記ホルダ110の内周側に設けられており、止め輪1
50及びコイルばね152によって、遊星摩擦車106
を所定の圧力で挾持することによってこれと係合してい
る。
車108と係合している。このリング摩擦車108は、
前記ホルダ110の内周側に設けられており、止め輪1
50及びコイルばね152によって、遊星摩擦車106
を所定の圧力で挾持することによってこれと係合してい
る。
【0054】図2(A)の上側は、遊星摩擦車106の
リング摩擦車108に対する有効半径が小さい場合が示
されており、一方、図の下側は、これが大きい場合が示
されている。
リング摩擦車108に対する有効半径が小さい場合が示
されており、一方、図の下側は、これが大きい場合が示
されている。
【0055】前記ホルダ110は、図3に示されるよう
に、ほぼ円筒形状を呈しており、この実施例では4つの
開口部160が形成されている。又、その端部162が
若干斜めに切られ、回転の際に外周付近に溜まっている
グリースをあたかも掻き取るようにして中央部に移動さ
せることができるような構成とされている。このホルダ
110は、その円筒の一端側が閉塞さており、出力軸1
12に連結されている(図1)。
に、ほぼ円筒形状を呈しており、この実施例では4つの
開口部160が形成されている。又、その端部162が
若干斜めに切られ、回転の際に外周付近に溜まっている
グリースをあたかも掻き取るようにして中央部に移動さ
せることができるような構成とされている。このホルダ
110は、その円筒の一端側が閉塞さており、出力軸1
12に連結されている(図1)。
【0056】一方、ケーシング114は、この変速機構
全体を密閉可能に被っており、且つ、該ケーシング11
4によって形成される空間内には従来のようなオイルで
はなくグリースが、中央部の太陽摩擦車104と遊星摩
擦車106の摩擦係合部が被われる程度に投入されてい
る。
全体を密閉可能に被っており、且つ、該ケーシング11
4によって形成される空間内には従来のようなオイルで
はなくグリースが、中央部の太陽摩擦車104と遊星摩
擦車106の摩擦係合部が被われる程度に投入されてい
る。
【0057】このグリースは、そのちょう度がJIS
K 2220におけるNLGIちょう度番号で000号
としてある。なお、実用上はNLGI00号でもよい。
K 2220におけるNLGIちょう度番号で000号
としてある。なお、実用上はNLGI00号でもよい。
【0058】又、グリースの基油は、その粘度がJIS
K 2001に示される工業用潤滑油ISO粘度グレ
ードでISO VG 10〜150としてある。これ
は、この性状のグリースが最も効率良く、且つ、長期に
わたって良好なトラクション伝達をし得る性状であるこ
とが認められるためである。
K 2001に示される工業用潤滑油ISO粘度グレ
ードでISO VG 10〜150としてある。これ
は、この性状のグリースが最も効率良く、且つ、長期に
わたって良好なトラクション伝達をし得る性状であるこ
とが認められるためである。
【0059】次に、この実施例装置の作用を説明する。
【0060】入力軸102の回転は、スプライン軸12
0を介して太陽摩擦車104に伝達され、更に3つの遊
星摩擦車106へと伝達される。
0を介して太陽摩擦車104に伝達され、更に3つの遊
星摩擦車106へと伝達される。
【0061】遊星摩擦車106は、その軸が公転しな
い、いわゆるスター型とされているため、該遊星摩擦車
106は自転のみを行い、この自転によりこれと摩擦係
合しているリング摩擦車108が回転する。リング摩擦
車108は、ホルダ110に固定されているため、この
リング摩擦車108の回転は即ちホルダ110の回転と
なり、出力軸112が回転するものである。
い、いわゆるスター型とされているため、該遊星摩擦車
106は自転のみを行い、この自転によりこれと摩擦係
合しているリング摩擦車108が回転する。リング摩擦
車108は、ホルダ110に固定されているため、この
リング摩擦車108の回転は即ちホルダ110の回転と
なり、出力軸112が回転するものである。
【0062】ここにおいて、遊星摩擦車106の回転軸
140が半径方向に移動可能とされているため、これに
より該遊星摩擦車106の太陽摩擦車104に対する有
効半径及びリング摩擦車108に対する有効半径が同時
に変化させられ、全体の変速比が無段階に変更できるよ
うになっている。
140が半径方向に移動可能とされているため、これに
より該遊星摩擦車106の太陽摩擦車104に対する有
効半径及びリング摩擦車108に対する有効半径が同時
に変化させられ、全体の変速比が無段階に変更できるよ
うになっている。
【0063】ところで、この実施例に係る変速機構にあ
っては、太陽摩擦車104、遊星摩擦車106、リング
摩擦車108のうち、太陽摩擦車104のグリースが飛
散し易く、最も潤滑条件が厳しくなる。しかしながら、
この実施例では、太陽摩擦車104が径方向中心に配置
され、ホルダ110の回転と共にグリースが常に中心部
に集まってくるような構成としてあるため、この部分の
潤滑を非常に良好に行うことができる。即ち、運転中は
常にホルダ110が回転するため、太陽摩擦車104及
び遊星摩擦車106の回転によって飛散したグリースが
このホルダ110の内周面で一旦受け止められて、ここ
で潤滑を行うと共に、該ホルダ110の開口部160
(の端部162)の案内機能によってホルダ110の回
転と共に、この集まったグリースを掻き寄せて再度ホル
ダの中央部側に移動させるため、少ないグリース量でも
長期にわたって効率の良い潤滑ができるものである。
っては、太陽摩擦車104、遊星摩擦車106、リング
摩擦車108のうち、太陽摩擦車104のグリースが飛
散し易く、最も潤滑条件が厳しくなる。しかしながら、
この実施例では、太陽摩擦車104が径方向中心に配置
され、ホルダ110の回転と共にグリースが常に中心部
に集まってくるような構成としてあるため、この部分の
潤滑を非常に良好に行うことができる。即ち、運転中は
常にホルダ110が回転するため、太陽摩擦車104及
び遊星摩擦車106の回転によって飛散したグリースが
このホルダ110の内周面で一旦受け止められて、ここ
で潤滑を行うと共に、該ホルダ110の開口部160
(の端部162)の案内機能によってホルダ110の回
転と共に、この集まったグリースを掻き寄せて再度ホル
ダの中央部側に移動させるため、少ないグリース量でも
長期にわたって効率の良い潤滑ができるものである。
【0064】又、この実施例では、リング摩擦車108
の回転を出力軸112から取出すようにしているが、ホ
ルダ110にこの連結部材の機能を果たさせるようにし
ているため、その分部品点数の削減もできている。
の回転を出力軸112から取出すようにしているが、ホ
ルダ110にこの連結部材の機能を果たさせるようにし
ているため、その分部品点数の削減もできている。
【0065】なお、この実施例では、変速機構として遊
星摩擦車106が公転せずに自転のみを行う遊星係合構
造を採用し、できるだけ攪拌損失が小さくなるような工
夫をしていたが、本発明においては、変速機構部の構成
自体は特にこの実施例の構成に限定されるものではな
く、例えば従来知られている種々の変速機構をそのまま
採用するようにしてもよい。
星摩擦車106が公転せずに自転のみを行う遊星係合構
造を採用し、できるだけ攪拌損失が小さくなるような工
夫をしていたが、本発明においては、変速機構部の構成
自体は特にこの実施例の構成に限定されるものではな
く、例えば従来知られている種々の変速機構をそのまま
採用するようにしてもよい。
【0066】この場合、例えば図4〜図6に示されるよ
うな構造の場合は、例えば、アイドラ4の回転をもう1
段減速した上で、円筒状のホルダを回転させるような構
造を採用することができる。又、図7に示したような従
来例の場合は、例えば入力軸40から直接減速された回
転動力を受けるような円筒状のホルダをリング46の外
周側に設けるようにするとよい。これにより出力軸48
の回転が零となるときでもホルダを回転させることがで
きるようになる。
うな構造の場合は、例えば、アイドラ4の回転をもう1
段減速した上で、円筒状のホルダを回転させるような構
造を採用することができる。又、図7に示したような従
来例の場合は、例えば入力軸40から直接減速された回
転動力を受けるような円筒状のホルダをリング46の外
周側に設けるようにするとよい。これにより出力軸48
の回転が零となるときでもホルダを回転させることがで
きるようになる。
【0067】更に、図8に示したような変速機構の場合
は、例えば遊星摩擦車76、リング摩擦車82の外周位
置に、適宜の方法で回転するように構成したホルダを設
けるように構成するとよい。
は、例えば遊星摩擦車76、リング摩擦車82の外周位
置に、適宜の方法で回転するように構成したホルダを設
けるように構成するとよい。
【0068】このように、本発明では、遊星歯車機構の
構成自体は特に限定されない。
構成自体は特に限定されない。
【0069】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、従
来オイルによる潤滑が常識とされ、そのため特定の潤滑
設計が施された無段変速機は、その潤滑設計に合致する
方向でしか取付けることができなかったが、本発明によ
り、いずれの方向においても取付けることができるよう
になった。又、オイルに比べて流動性のないグリースを
潤滑油の素材として用いながら、ホルダと案内手段によ
って飛散したグリースを再び中央部分に戻すことができ
るようにしたため、グリースの投入量を少なくしてそれ
だけ攪拌損失を小さくしながら、長期にわたって良好な
潤滑が維持されるようにすることができ、メンテナンス
フリー化を実現することができるようになった。
来オイルによる潤滑が常識とされ、そのため特定の潤滑
設計が施された無段変速機は、その潤滑設計に合致する
方向でしか取付けることができなかったが、本発明によ
り、いずれの方向においても取付けることができるよう
になった。又、オイルに比べて流動性のないグリースを
潤滑油の素材として用いながら、ホルダと案内手段によ
って飛散したグリースを再び中央部分に戻すことができ
るようにしたため、グリースの投入量を少なくしてそれ
だけ攪拌損失を小さくしながら、長期にわたって良好な
潤滑が維持されるようにすることができ、メンテナンス
フリー化を実現することができるようになった。
【図1】本発明が適用された湿式機械式の無段変速機を
示す断面図
示す断面図
【図2】遊星摩擦車の支持軸を半径方向に移動させるた
めの構成を示した説明図
めの構成を示した説明図
【図3】ホルダの全体概略外観を示した斜視図
【図4】従来の湿式機械式の無段変速機の例を示す断面
図
図
【図5】前記従来例の変速操作を説明するための矢示V
−V線に沿う断面図
−V線に沿う断面図
【図6】同じくフランジディスクとコーンディスクの係
合状態を示す拡大断面図
合状態を示す拡大断面図
【図7】従来の湿式機械式の無段変速機の他の例の主要
部を示す断面図
部を示す断面図
【図8】従来の湿式機械式の無段変速機の更に他の例の
主要部を示す断面図
主要部を示す断面図
【図9】図8に示した無段変速機の変速形態を示した断
面図
面図
102…入力軸 104…太陽摩擦車 106…遊星摩擦車 108…リング摩擦車 110…ホルダ 112…出力軸 114…ケーシング
Claims (6)
- 【請求項1】ケーシング内の潤滑油を介して互いに摩擦
係合する2以上の摩擦部材のうち、少なくとも1つの摩
擦部材の有効回転半径を可変とすることにより、無段階
の変速比で回転を伝達する変速機構を備えた湿式機械式
の無段変速機において、 前記潤滑油としてグリースを採用すると共に、前記ケー
シングを密閉可能な構造とし、 少なくとも前記2以上の摩擦部材の全ての摩擦係合部分
を、略円筒状のホルダ内に収容し、且つ、 該ホルダに、前記グリースをホルダ中央部側へ移動させ
る案内手段を形成したことを特徴とする湿式機械式の無
段変速機。 - 【請求項2】請求項1において、前記変速機構が、入力
軸と連結された1対の太陽摩擦車と、該1対の太陽摩擦
車に半径方向の任意の位置で挾持されてこれと摩擦係合
する遊星摩擦車と、該遊星摩擦車を挾持しながらこれと
内接係合する1対のリング摩擦車とを備え、且つ、前記
遊星摩擦車を支えるキャリアを固定して該遊星摩擦車に
自転のみを行わせると共に、前記リング摩擦車を出力軸
と連結した構成であることを特徴とする湿式機械式の無
段変速機。 - 【請求項3】請求項1又は2において、前記ホルダが出
力軸と一体的に回転することを特徴とする湿式機械式の
無段変速機。 - 【請求項4】請求項1〜3のいずれかにおいて、前記ホ
ルダの外周部に開口部を成形し、該開口部の端部に前記
グリース移動用の案内手段の機能を持たせたことを特徴
とする湿式機械式の無段変速機。 - 【請求項5】請求項1〜4のいずれかにおいて、前記グ
リースのちょう度がJIS K 2220におけるNL
GIちょう度番号で000号、00号のいずれかとされ
たことを特徴とする湿式機械式の無段変速機。 - 【請求項6】請求項1〜5のいずれかにおいて、前記グ
リースの基油が、JIS K 2001に示される工業
用潤滑油ISO粘度グレードのISO VG 10〜1
50の鉱油、トラクション係数を高めた合成潤滑油のう
ちのいずれかとされたことを特徴とする湿式機械式の無
段変速機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4270331A JP2831883B2 (ja) | 1992-10-08 | 1992-10-08 | 湿式機械式の無段変速機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4270331A JP2831883B2 (ja) | 1992-10-08 | 1992-10-08 | 湿式機械式の無段変速機 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06117511A JPH06117511A (ja) | 1994-04-26 |
JP2831883B2 true JP2831883B2 (ja) | 1998-12-02 |
Family
ID=17484773
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4270331A Expired - Lifetime JP2831883B2 (ja) | 1992-10-08 | 1992-10-08 | 湿式機械式の無段変速機 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2831883B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3524623B2 (ja) * | 1995-03-31 | 2004-05-10 | Ntn株式会社 | 摩擦式無段変速機 |
-
1992
- 1992-10-08 JP JP4270331A patent/JP2831883B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH06117511A (ja) | 1994-04-26 |
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