JP2830472B2 - 耐食性、繰返し曲げ特性、エッチング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板およびその製造方法 - Google Patents

耐食性、繰返し曲げ特性、エッチング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板およびその製造方法

Info

Publication number
JP2830472B2
JP2830472B2 JP51078393A JP51078393A JP2830472B2 JP 2830472 B2 JP2830472 B2 JP 2830472B2 JP 51078393 A JP51078393 A JP 51078393A JP 51078393 A JP51078393 A JP 51078393A JP 2830472 B2 JP2830472 B2 JP 2830472B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cold rolling
present
strength
annealing
corrosion resistance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP51078393A
Other languages
English (en)
Inventor
正 井上
清 鶴
直次 山之内
智良 大北
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Engineering Corp
Original Assignee
Nippon Kokan Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Kokan Ltd filed Critical Nippon Kokan Ltd
Priority to JP51078393A priority Critical patent/JP2830472B2/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2830472B2 publication Critical patent/JP2830472B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 この発明は、耐食性、繰返し曲げ特性、エッチング性
に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板およびその製造方法
に係り、高強度で耐食性および繰返し曲げ特性に優れた
ICリードフレーム用材料およびその好ましい製造方法を
提供しようとするものである。
背景技術 近年における半導体の高集積化およびパッケードの薄
肉化に伴い、リードフレームは多ピン化、薄肉化の傾向
を呈しており、このためリードフレーム用材料に関して
も更なる高強度化が求められている。
この要請に答えて、上記のような多ピン用Fe系高強度
リードフレーム材料としては、近時において特開平3−
166340号公報に開示の技術が提案されている。即ち、こ
の開示技術では、Fe−Ni−Co系合金でのNi,Co量を制御
し、かつ特定の加工率による加工誘起マルテンサイト変
態とその後の焼鈍で逆変態オーステナイト相を析出さ
せ、特定の比率で2相組織とすることにより、リードフ
レームの各種特性、特にハンダ性,メッキ性,低熱膨脹
特性を損わずに高強度化(Hvで260以上、引張強さが80k
gf/mm2以上)を達成するものである。
上記のような従来の技術では、Hv=270〜380、引張強
さ85〜117kgf/mm2、平均熱膨脹係数αRT-300=5.2〜8.5
×10-6/℃の特性を有し、かつ優れた銀メッキ性、ハン
ダ性、隙間腐食性を合わせ有するが、下記に示すような
問題を依然として有していた。
(1)素材の耐食性に問題がある。
(2)繰返し曲げ特性(曲げ加工性)が劣る。
(3)Hv275以上の高強度材ではαRT-300は6.8×10-6
℃以上の高い熱膨脹係数となり、IC製造工程でSiチップ
がリードフレームに実装される際の熱歪によりSiチップ
が破損する危険性が高い。
(4)エッチング加工時に、サイドエッチングが大きく
(エッチングファクターが小さく)、加工ピッチに限界
がある。
前記耐食性は本材料が、マルテンサイト+オーステナ
イトの2相組織を呈し、かつ、オーステナイト相が逆変
態により形成された転位密度の低いオーステナイト相を
含むため、その周囲で転位密度が高い残留オーステナイ
トまたはマルテンサイトとの間で、腐食が進行し易いの
で、著しく劣っていた。そして製品特性上、コイル製造
後、スリット加工・リードフレームへの微細加工等が施
されるまでに、素材表面に点錆が発生し、著しく重大な
問題を起こしていたのである。通常の42アロイ(Fe−42
wt%Ni)ではこのような問題は皆無であり、本素材のよ
うにNiが32.5%以下の低Ni合金であること、および同一
材料内で、転位密度の著しく異なる金属相が共存するこ
とが、耐食性を劣化させた主因であると推察される。
繰返し曲げ特性も、前記した本材料の特徴、すなわ
ち、転位密度が高く、高い強度の残留オーステナイトお
よびマルテンサイトと転位密度が低く、低い強度の逆変
態オーステナイトが共存する際に、曲げ加工時の応力集
中が、低強度の逆変態オーステナイトに集中し劣化す
る。
また、熱膨張特性も、更なる高強度化を意図した場
合、この技術で特徴とするような冷延時の加工誘起変態
によるマルテンサイト量の増加とともに損われるもので
ある。更に、本技術で特徴としている熱膨張および高強
度のバランス化だけでは最近の高い強度、低い熱膨張特
性のニーズに即応できない。すなわち、平均熱膨張α
30-400 が4−7×10-6/℃で強度は引張強さ120kgf/m
m2以上を満たす、成分,組織範囲はこの技術において求
め得ない。
なお、最近のリードフレームに対する更なる低コスト
化の要望により、Agの薄メッキ化の傾向が強まり、本技
術でみられるAgメッキ厚(3μm)よりも薄メッキ化が
進んでおり、このような要望に対しては、本技術で特徴
とする合金においてもAgメッキ性の問題が生じているの
が現状である。さらに本合金のハンダ性も耐候性の面で
は前記の特開平3−166340において、高い性能が達成さ
れているが、ぬれ性の面では未だ改善された技術は見ら
れていない。
発明の開示 本発明者は、上記したような従来技術における課題を
解消することについて検討を重ね、 wt%で、Ni:27〜30%,Co:5〜18%,Mn:0.10〜3.0%,S
i:0.10%以下であって、Ni,CoおよびMnの含有量を Co:10%未満では、63.5%≦2Ni+Co+Mn≦65.0%; Co:10%以上では、69.5%≦2Ni+Co+Mn≦74.5%;と
し、 C:0.010〜0.075%,N:0.001〜0.014%以下,H:2.0ppm未
満,S:0.0040%以下,P:0.004%以下,O:0.0050%以下,Cr:
0.01〜0.06%及びMo:0.01〜1.0%を含有し、残部Feおよ
び不可避的不純物から成り、更に組織中の残留オーステ
ナイト量が30〜90%、結晶粒度がNo.が8以上の整粒と
して、この種のFe−Ni−Co系合金における組成を特定化
すると共に組織を特定することにより、その目的を有効
に達成した。
また、この種のFe−Ni−Co系合金の製造に当たって
は、 前記組成の合金の冷延素材を1次冷延−1次焼鈍−2
次冷延−2次焼鈍−3次冷延の工程で薄板を製造するに
際し: 1次冷延率(CR1)を、60〜80%; 1次焼鈍温度(T1)を、700〜740℃; 2次冷延率(CR2)を、75〜85%; 2次焼鈍温度(T2)を、700〜740℃;及び 3次冷延率(CR3)を、20〜70% とすることをにより、その好ましい製造がなされること
を見出した。
図面の簡単な説明 第1図は、Fe−Ni−Co系合金の引張強さ,硬度,繰返
し曲げ特性,α30-400 およびオーステナイト量と最終
冷延率の関係を示した図表である。なおこの図表におい
て、黒印は低温熱処理後(500℃×1min)、白印は低温
熱処理前を示すものである。
第2図は、エッチングファクターの測定方法を示す説
明図である。
発明を実施するための最良の形態 上記したような本発明について、その合金の化学成分
限定理由をwt%(以下単に%という)により説明する
と、本発明で意図する低熱膨脹特性、高強度で優れた繰
返し曲げ特性、エッチング性および耐食性を得るには組
織中の残留オーステナイト量を適正に制御することが必
要であって、このためにはCo、Ni、Mn、Si、C、N量の
適正化が必要であって以下の如くである。
Siは、0.10%超では、マルテンサイト開始温度が高
く、オーステナイトが不安定となり、溶体化処理時の冷
却過程でマルテンサイト変態を起こし、以下に述べるよ
うなCo、Ni、Mn量の適正化が図られても、本発明で意図
する残留オーステナイト量が得られず、メッキ性も本発
明のレベルが得られないため、0.10%を上限とした。ハ
ンダ性向上のためのより好ましいSi量は、0.05%以下で
ある。
Coは、5%未満または18%超では、熱膨張係数が大き
くなり、シリコンチップとの熱膨張整合性を劣化させ
る。このためCo含有量は5〜18%の範囲に定めた。
Niは、27%未満または、30%超では、熱膨張係数が大
きくなり、シリコンチップとの熱膨張整合性を劣化させ
る。このためNi含有量は27〜30%の範囲とした。
Mnは、3.0%超では、オーステナイトが安定となり、
加工誘起変態が生じ難くなる。また、0.1%未満では、
マルテンサイト開始温度が高く、オーステナイトが不安
定となり、冷間加工時に加工誘起のマルテンサイト変態
が生じやすく、結果的に十分な残留オーステナイト量が
得られない。これらのことより、Mn量の上限を3.0%、
下限を0.1%とそれぞれ定めた。
なお、本発明で意図する特性を得るには、上記の単独
の添加量の規定のみでなく、Ni、Co、Mnの総量をCo量に
応じて、制御しなければならない。すなわち、Coが10%
未満で、(2Ni+Co+Mn)が63.5%より少ないか、Coが1
0%以上で(2Ni+Co+Mn)が69.5%より少ないと、マル
テンサイト開始温度が高く、オーステナイトが不安定と
なり、加工誘起のマルテンサイト変態が生じやすく、結
果的に十分な残留オーステナイト量が得られない。ま
た、Coが10%未満で、(2Ni+Co+Mn)が65.0%を超え
るか、Coが10%以上で、(2Ni+Co+Mn)が74.5%を超
えると、オーステナイトが安定となり、加工誘起のマル
テンサイト変態が生じにくくなる。このため、 Co10%未満では、63.5%≦2Ni+Co+Mn≦65.0%; Co10%以上では69.5%≦2Ni+Co+Mn≦74.5%となるよ
う、Ni,Co,Mnを限定した。なお、Co10%以上の場合のよ
り好ましい2Ni+Co+Mnの範囲は、69.5%≦2Ni+Co+Mn
≦72.5%である。
また、C,Nは本発明においては、加工誘起のマルテン
サイト変態を適正に制御し、かつ最終の時効処理時での
一層の高強度化を達成させるために必須な元素である。
即ち、まずCは、0.010%未満ではオーステナイトが不
安定となり、加工誘起のマルテンサイト変態が生じやす
く、結果的に十分な残留オーステナイトが得られない
し、また、時効硬化による強度上昇も期待できない。更
に0.075%を超えると、逆にオーステナイトが安定とな
り、加工誘起のマルテンサイト変態が生じ難くなると共
にメッキ性が劣化する。このため、Cは0.010%を下限
とし、0.075%を上限として夫々定めた。なお、より好
ましいC量は、0.020〜0.070%である。
Nは、0.014%超では、オーステナイトが安定とな
り、加工誘起のマルテンサイト変態が生じにくくなり、
更にメッキ性が劣化する。このため、Nは0.014%を上
限とする。また、Nが0.001%未満では、オーステナイ
トが不安定となり、溶体化処理時の冷却過程でマルテン
サイト変態を起こし、本発明で意図する残留オーステナ
イトが得られないため0.001%を下限とした。なお、0.0
14%以下の範囲でのNの添加は、低温熱処理を行う場
合、時効硬化により強度を上昇させることができ好まし
い。また、Nが0.014%以下の範囲であれば、本発明で
意図する低熱膨張特性、高強度で優れた繰返し曲げ特
性、耐食性、エッチング性およびメッキ性の何れも得る
ことができる。なお、より好ましいN量は、0.001〜0.0
10%である。
更に本発明においては、上記した、成分規定に加え
て、繰返し曲げ特性の向上のためには、S量、O量の低
減が必要である。また、本合金で本発明で意図するメッ
キ性の更なる向上のためには、H,S,P,Oの低減およびCr
量の適正化が必須である。
すなわち、S,Oは非金属介在物の形成を通じて、本合
金では繰返し曲げ特性やメッキ性に悪影響を及ぼす元素
である。Sが0.0040%を超えると、繰返し曲げ特性が劣
化し、メッキ性も本発明で意図するレベルが得られない
ため、0.0040%を上限とした。なおハンダ性のための好
ましいS量は、0.003%以下であり、更にはより好まし
いS量は0.0010%以下である。
Oは、0.0050%を超えると、本合金では繰返し曲げ特
性が劣化し、またメッキ性も本願で意図するレベルが得
られないため、0.0050%を上限とした。ハンダ性のため
の好ましいO量は0.0040%以下であり、更により好まし
いO量は0.0020%以下である。
S,Oの存在による繰返し曲げ特性の劣化する機構は、
本合金の場合、曲げ破断した界面に、多数のSあるいは
Oが検出される非金属介在物が見られていたことから、
これらの介在物を起点とした割れの促進が考えられる。
さらに、本発明合金において、メッキ性を本発明で意
図するレベルにするためには、上記したO、Sの低減に
加えて、H、Pの低減およびCr量の適正化が必須であ
る。即ち、先ずPは、本合金の鋼帯の熱処理時に表面に
偏析し、、メッキ性を劣化させる。Pが0.004%を超え
ると本発明で意図するメッキ性が得られなくなるので、
0.004%を上限とした。ハンダ性のための好ましいP量
は0.003%以下であり、更により好ましいP量は0.001%
以下である。
Crは、本合金の耐蝕性を向上させ、かつエッチング性
(エッチングファクター)を向上させるが、本合金の鋼
帯の熱処理時に表面に強固な酸化膜を形成し、メッキ性
を劣化させる。Crが0.01%未満では、本発明で意図する
耐蝕性、エッチンウ性が得られないためCrは0.01%を下
限とした。一方、Crが0.06%を超えると、本発明で意図
するメッキ性が得られなくなるので、0.06%を上限とし
た。本発明範囲内のCr量であっても、ハンダ性のための
より好ましいCr量は0.02%以下である。
Hは、本発明合金のメッキ性に対して大きな影響を及
ぼす元素である。即ちHは、本合金の溶製時において不
可避的に混入し、その量は従来技術で、2.0ppmを超え、
場合によっては4〜5ppm程度も残存していたもので、こ
のガスがIC製造過程でのAgスポットメッキ後のダイボン
デングの加熱時に、放出され、メッキ層と下地合金(リ
ードフレーム材料)の界面に移動し、“フクレ”と呼ば
れるメッキ不良となってしまう。この現象はAgのメッキ
層が比較的厚い従来の3μm程度の場合には、メッキ層
の強度の点から、問題とはなっていなかったが、最近の
Ag薄メッキ化の傾向により、2μm以下といったメッキ
厚も一般的となりつつあり、このようなAgメッキ厚で
は、Agメッキ層の強度が、Hのガス圧力よりも小さくな
ってしまい、上記した“フクレ”の問題が顕在化してき
た。また前記従来レベルのHを含有したこの種合金にハ
ンダ付けする場合でもハンダのぬれ性が劣っているとい
う問題点があった。
上記したようなHの極く微量存在によるメッキ性への
悪影響は従来の42アロイやコバールといったオーステナ
イト単相のものに比較して本発明合金のようにマルテン
サイト(α′)を含むものにおいては特に明確化する。
上記したようなHが2.0ppm以上となると、斯かる合金
において本発明の意図するようなメッキ性が得られなく
なるためHは2.0ppm未満としたが、本発明において、よ
り好ましいH量は1.0ppm以下である。なお本発明で規定
するこのようなレベルのH量を得るには溶製時の真空脱
ガス方法最適化が必要である。即ち見掛けの水素分圧を
低下させるため本発明合金では脱ガス時の圧力を0.1Tor
r以下の高真空度を達成することや、底吹き希釈Arガス
量を増加させるなどの方法を採ることが好ましい。
本発明で意図する低熱膨張特性、高強度で優れた繰返
し曲げ特性およびメッキ性を確保しつつ、耐食性を向上
させるためには、Moの適量添加が必須である。Mo量が0.
01%未満だと耐食性の向上が図れず、一方1.0%を超え
ると、本発明で意図する熱膨張特性およびメッキ性が損
なわれる。以上よりMoの添加量は、0.01〜1.0%と定め
た。
本発明合金においては、組織制御のため、C量が従来
合金に比べて高いため、このCが結晶粒界や相境界に存
在すると耐食性は劣化しやすい。Moは耐食性が極部的に
劣化する結晶粒界や、残留オーステナイトとマルテンサ
イトの相境界に粒界偏析や濃化を通じて、耐食性を改善
していると考えられる。
本発明においては上記したMoに加えて、B,Nb,Ti,Zr,T
a,VおよびWの1種または2種以上を合計で0.01〜0.50
%含有することにより、本合金の耐食性を本発明で意図
する他の特性を劣化させることなく、更に向上せしめ
る。この場合の添加量が0.01%未満だと耐食性の更なる
向上がみられず、一方0.5%を超えると、本発明で意図
する熱膨張特性およびメッキ性が得られなくなる。これ
らのことから、耐食性をより高める添加量として、0.01
〜0.50%を定めた。
また、最終の組織は、溶体化処理での残留オーステナ
イト相、加工誘起マルテンサイト相で決まるが、残留オ
ーステナイトが30%未満であると、本発明で意図する熱
膨張特性が得られない。また、残留オーステナイト相が
90%を超えると本発明で意図する合金の強度が得られな
いため、組織は残留オーステナイト相と加工誘起マルテ
ンサイトの二相からなり、前記残留オーステナイト相は
30%以上、90%以下とした。なお、本発明でいう残留オ
ーステナイトとは、次のとおりである。即ち、本発明に
おいては、焼鈍後のオーステナイトそう冷間圧延により
その一部が加工誘起変態してマルテンサイトとなり、他
の部分が未変態のままオーステナイトとして残留する。
このオーステナイトのことを残留オーステナイトとい
う。
なお、本発明での残留オーステナイト相の量(%)
は、以下に示すようなX線回折強度から求めた。
さて、本合金の繰返し曲げ特性、エッチング性を更に
向上するためには、上記した成分規定に加えて、最終の
組織結晶粒径の制御が重要である。本発明者らは成分お
よび最終の組織のオーステナイト相の量が本発明規定内
の合金で、結晶粒度と繰返し曲げ特性、エッチング性の
関係を調べた。その結果、結晶粒度がNo.8以上の整粒で
繰返し曲げ特性が2回以上、エッチング性、エッチング
ファクターが2.4以上と優れたレベルを示すことを見い
出した。このことから、本発明においては、優れた繰返
し曲げ特性、エッチング性が得られる結晶粒度の範囲と
してNo.8以上を定めた。なお、整粒組織とは結晶粒度N
o.7以下の粗粒を含まない組織を意味する。
次に、本発明の合金の製造方法において、上記した組
織(オーステナイト量、結晶粒度)を得るためには、冷
延素材を溶体化処理することなく、冷延と焼鈍を2回繰
返し、次に冷延を行う、という工程を採り、かつ、各工
程での条件の最適化が必要である。
つまり、1次冷延率(CR1),2次冷延率(CR2),1次冷
延後および2次冷延率の焼鈍温度(T1,T2)を、各々以
下のようにすることにより本発明の目的とする組織を的
確に得ることができる。
CR1:60〜80%; …(2−1) CR2:75〜85%; …(2−2) T1 :700〜740℃; …(2−3) T2 :700〜740℃; …(2−4) CR3:20〜70% …(2−5) すなわち、CR1が60%未満かつ/またはCR2が75%未満
であると、最終の組織が結晶粒度No.8未満の粗粒組織と
なり、本発明で意図する繰返し曲げ特性およびエッチン
グ性が得られない、一方CR1が80%超かつ/またはCR2
85%超となると最終の組織が結晶粒度No.7以下の粗粒を
含む混粒組織となり、本発明で意図する繰返し曲げ特性
およびエッチング性が得られない。これらのことからCR
1およびCR2はそれぞれ、CR1:60〜80%、CR2:75〜85%と
定めた。
1次冷延および2次冷延後の焼鈍温度は700〜740℃と
することが必要である。即ち、焼鈍温度が700℃未満で
あると、焼鈍後で完全な再結晶組織が得られず、焼鈍温
度以外の製造条件が本発明の規定値内であっても、最終
の組織が結晶粒度No.7以下の粗粒を含む混粒組織とな
り、本発明で意図するような繰返し曲げ特性およびエッ
チング性が得られない。また、焼鈍温度が740℃を超え
ると、焼鈍後の結晶粒度がNo.7以下の粗粒組織となり、
焼鈍温度以外の製造条件が本発明の規定範囲内であって
も最終の組織が結晶粒度No.7以下の粗粒かつ混粒組織と
なり、本発明で意図する如き、繰返し曲げ特性およびエ
ッチング性が得られない。
以上より、本合金において、最終の組織が結晶粒度N
o.8以上の整粒組織が得られる焼鈍条件として、焼鈍温
度を700〜740℃と定めた。なお、本発明において繰返し
曲げ特性は、上記した3次冷延ののちに適正な低温熱処
理を施すことによりさらに向上する。
すなわち、本発明においては最終の組織、機械的性質
および熱膨張特性の制御は、最終冷間圧延(3次冷延)
で圧下率の適正化より好ましくは適切な低温熱処理の実
施により付与される。
第1図には、後述する発明合金No.1でCR1,CR2,T1
T2が本発明規定内の材料の最終冷延まま、および低温焼
鈍後の機械的性質(引張性質,繰返し曲げ特性,硬
度),オーステナイト量,熱膨張係数と最終冷間圧延率
の関係を示す。第1図から、最終冷間圧延の冷延率が20
%未満では、本発明で意図する強度、および硬度が得ら
れない。一方、冷延率で70%超では、本発明で意図する
強度および硬度は得られているものの熱膨張係数に関し
て本発明で意図するレベルが得られていない。なお、冷
延率が20%以上、70%以下では、残留オーステナイト量
はそれぞれ30%以上,90%以下である。
以上のような技術的関係からして、本発明で意図する
強度、硬度、繰返し曲げ特性、および熱膨張係数が得ら
れる残留オーステナイト量として30〜90%、このオース
テナイト量が得られる冷延率として20〜70%をそれぞれ
定めた。
なお、本発明において、第1図に示すように上記した
最終冷延の後の適切な低温焼鈍は、熱膨張特性を劣化さ
せることなく、更なる高強度化を図り、かつ繰返し曲げ
特性を向上させるために好ましい。
この熱処理は、400℃未満かつ/または0.5分未満であ
ると、十分な時効硬化が得られず、一方、540℃超かつ
/または30min超の場合では合金内に逆変態オーステナ
イトが生成し、本発明で意図する強度が得られず、更に
は、この逆変態オーステナイトは、他の金属相(残留オ
ーステナイトおよび加工誘起マルテンサイト)に比べ
て、転位密度が低く、この相の存在により、繰返し曲げ
特性、耐食性が劣化してしまう。これらのことより、十
分な時効硬化による高強度化が得られ、かつ優れた繰返
し曲げ特性、エッチング性および耐食性を示す低温熱処
理条件として次のように定めた。
T3:400〜540℃; …(3−1) t :0.5〜30min. …(3−2) 上記した合金の製造方法においては、合金の組成に応
じて、本発明規定値内で、適切に条件が選択されること
により、より優れた特性(強度,繰返し曲げ特性,熱膨
張特性等)が付与される。
なお、α30-400 (30℃〜400℃の平均熱膨張係
数),硬度,引張り強さについては、パッケージ組立工
程,および使用条件を検討した結果、α30-400 は(4
〜8)×10-6/℃、硬度Hv≧280、引張り強さ85kgf/mm2
以上で十分に使用に耐えられるものであることより、前
記のような特性値を本発明範囲に定めた。
(実施例) 本発明によるものの具体的な実施例について説明する
と、以下の如くである。
〔実施例1〕 第1表に示す化学成分を有する本発明合金および比較
合金について真空溶解炉にて溶解、鋳造を経た鋼塊を分
塊圧延、熱間圧延、脱スケール、表面疵取りを行ない、
板厚2.5mmの冷延素材を得た。
上記のようにして得られた冷延素材は、以降、1次冷
延(圧下率60%)→焼鈍(730℃×2min)→2次冷延
(圧下率75%)→焼鈍(720℃×2min)→3次冷延(圧
下率60%)の一連の処理を施し板厚0.10mmの合金薄板を
得た。又このようにして得られた各合金板について、次
の第2表,第3表に示すような各特性値について調査し
た。
なお前記第2表において、その残留オーステナイト量
は前記したようなX線回折の手法で求めた。また第3表
のAgメッキ性は、前記合金薄板を溶剤脱脂−電解脱脂−
酸処理後、厚さ0.5μmのCuストライクメッキを行な
い、その上に厚さ2μmのAgメッキを施し、450℃×5mi
n、大気中で加熱し、メッキ層のフクレの発生の有無を5
0倍に拡大して調べた。
第3表のハンダ性は前記合金薄板上に1.5μm厚さの
スズメッキを施した素材を用いメニスコグラフ法によ
り、ハンダ組成Sn60%,Pb40%,ハンダ浴温度235℃±5
℃,ハンダ浴浸漬深さ2mm,ハンダ浴浸漬時間5秒の条件
でハンダ浴中に浸漬し、評価は、ハンダ濡れ時間t2で行
なった。また耐食性は前記合金薄板について、JIS Z 23
71による塩水噴霧試験を100時間実施し、その後の点錆
発生頻度を調べた。エッチングファクターは、フォトエ
ッチングを行い第2図に示す方法にて求めた。
前記第2〜3表の結果から、試料No.1〜7の各材は、
本発明の成分規定を満たすものであり、本発明で意図す
る組織,機械的性質,熱膨張特性,メッキ性,エッチン
グ性および耐食性を示しており、これらの特性は比較例
に較べて優れている。特に試料No.1〜3および7は、試
料No.4〜6に比べて、Si,P,S,O,Crが本発明範囲内であ
ってもより好ましいレベルまで低減されたものであり、
ハンダ性がより優れたレベルを示している。また、試料
No.1,3〜7は、Moに加えて、本発明規定内で、更なる耐
食性向上元素が添加されたものであり、それらの元素が
添加されていない試料No.2に比較して点錆発生頻度が低
く、耐食性がより優れていることが明らかである。
これらの発明例に比べて、資料No.22はCr量が本発明
規定の下限未満のものであり、耐食性、エッチング性が
著しく劣っている。本発明においてはCrを適正に添加す
ることが不可欠でることが理解される。試料No.8は、そ
れぞれC量が本発明規定の上限を超えるものであり残留
オーステナイト量が本発明規定上限を超えており、所要
の強度が得られておらず、メッキ性も劣っている。また
試料No.9はC量および2Ni+Co+Mn量が本発明下限未満
の場合であり残留オーステナイト量が本発明規定未満と
なっており所要の熱膨張特性が得られていない。
更に、試料No.10はSi量が本発明規定の上限を超えて
おり、また2Ni+Co+Mn量が本発明規定下限未満であ
り、残留オーステナイトは本発明規定の下限未満となっ
ておりα30-400 は8×10-6/℃を超え、熱膨張特性は
劣っており、メッキ性も劣っている。また、試料No.11
は、Mn量は本発明規定の上限を超えるものであり、残留
オーステナイト量は本発明規定の上限を超えており、所
要の強度が得られていない。一方、試料No.12はMn量が
本発明規定の下限未満のものであり、残留オーステナイ
トは本発明規定の下限未満となっており、所要の熱膨張
特性が得られていない。
試料No.13〜17は、それぞれ、P量,S量,N量,O量,Cr量
が本発明規定の上限を超えるものであり、いずれもメッ
キ性が本発明例に比べて劣っている。特に試料No.14,16
では、繰返し曲げ特性が他の比較例に比べて、更に劣っ
ている。
試料No.19は、H量が本発明規定上限を超えるもので
あり、メッキ性が本発明例に比べて劣っている。また試
料No.20,21は、2Ni+Co+Mn量が本発明規定の上限を超
えるものであり、いずれの場合も残留オーステナイト量
は本発明規定の上限を超えており、所要の強度が得られ
ていない。また、Si量も本発明規定の上限を超えており
メッキ性が劣っている。
とくに、試料No.18,20,21は、特開平3−166340に見
られる合金を調べたものであるが、いずれの材料も本発
明で意図するAgメッキ性,ハンダ性,耐食性が得られて
おらず、従来技術のみでは、本発明で意図する効果は達
成されていないことは明らかである。また試料No.18
は、Moが本発明規定未満の場合であり、錆発生頻度は本
発明例に比べて著しく高く、耐食性が劣っており、本発
明においては、Moの適量添加が必須であることが理解さ
れる。
以上のように、本発明で意図する組織,機械的性質,
熱膨脹特性,メッキ性,エッチング性および耐食性を得
るには、本発明の成分規定を満たした時のみに達成され
ることが、この実施例で明かとなった。
〔実施例2〕 実施例1で用いたものと同じ熱延材(表1に示す化学
成分を有する本発明合金および比較合金の試料No.1〜22
の各材)を冷延素材とし、以降、1次冷延(圧下率60
%)→焼鈍(730℃×2min)→2次冷延(圧下率75%)
→焼鈍(720℃×2min)→3次冷延(圧下率60%)→低
温熱処理(500℃×1min)の一連の処理を施し板厚0.10m
mの合金薄板(試料No.23〜44の各材)を得た。又このよ
うにして得られた各合金板について次の第4表,第5表
に示すような各特性値について調査した。
なお前記第4表において、その残留オーステナイト量
は前記したようなX線回折の手法で求めた。また第5表
のAgメッキ性は、前記合金薄板を溶剤脱脂−電解脱脂−
酸処理後、厚さ0.5μmのCuストライクメッキを行な
い、その上に厚さ2μmのAgメッキを施し、450℃×5mi
n,大気中で加熱し、メッキ層のフクレの発生の有無を50
倍に拡大して調べた。
第5表のハンダ性は前記合金薄板上に1.5μm厚さの
スズメッキを施した素材を用いメニスコグラフ法によ
り、ハンダ組成Sn60%,Pb40%,ハンダ浴温度235℃±5
℃,ハンダ浴浸漬深さ2mm,ハンダ浴浸漬時間5秒の条件
でハンダ浴中に浸漬し、評価は、ハンダ濡れ時間t2で行
なった。また耐食性は前記合金薄板について、JIS Z 23
71による塩水噴霧試験を100時間実施し、その後の点錆
発生頻度を調べた。エッチングファクターは、フォトエ
ッチングを行い第2図に示す方法にて求めた。
前記第4,5表の結果から、試料No.23〜29の各材は、本
発明の成分規定を満たすものであり、本発明で意図する
組織,機械的性質,より優れた繰返し曲げ特性,熱膨張
特性,メッキ性,エッチング性および耐食性を示してお
り、これらの特性は比較例に較べて優れている。特に試
料No.23〜25,29は試料No.26〜28に比べて、Si,P,S,O,Cr
が本発明範囲内であってもより好ましいレベルまで低減
されたものであり、ハンダ性がより優れたレベルを示し
ている。また、試料No.23,25〜29はMoに加えて、本発明
規定内で、更なる耐食性向上元素が添加されたものであ
り、それらの元素が添加されていない試料No.24に比較
して点錆発生頻度が低く、耐食性がより優れていること
が明らかである。
これらの発明例に比べて、試料No.44はCr量が本発明
規定の下限未満のものであり、耐食性、エッチング性が
著しく劣っている。本発明においてはCrを適正に添加す
ることが不可欠でることが理解される。試料No.30は、
それぞれC量が本発明規定の上限を超えるものであり残
留オーステナイト量が本発明規定上限を超えており、所
要の強度が得られておらず、メッキ性も劣っている。ま
た試料No.31は、C量および2Ni+Co+Mn量が本発明下限
未満の場合であり残留オーステナイト量が本発明規定未
満となっており所要の熱膨張特性が得られていない。
更に、試料No.32はSi量が本発明規定の上限を超えて
おり、また2Ni+Co+Mn量が本発明規定下限未満であ
り、残留オーステナイトは本発明規定の下限未満となっ
ておりα30-400 は8×10-6/℃を超え、熱膨張特性は
劣っており、メッキ性も劣っている。また、試料No.33
はMn量が本発明規定の上限を超えるものであり、残留オ
ーステナイト量は本発明規定の上限を超えており、所要
の強度が得られていない。一方、試料No.34はMn量は本
発明規定の下限未満のものであり、残留オーステナイト
は本発明規定の下限未満となっており、所要の熱膨張特
性が得られていない。
試料No.35〜39はそれぞれ、P量,S量,N量,O量,Cr量が
本発明規定の上限を超えるものであり、いずれもメッキ
性が本発明例に比べて劣っている。特に試料No.36,38で
は、繰返し曲げ特性が他の比較例に比べて、更に劣って
いる。
試料No.41は、H量は本発明規定上限を超えるもので
あり、メッキ性が本発明例に比べて劣っている。また試
料No.42,43は、2Ni+Co+Mn量が本発明規定の上限を超
えるものであり、いずれの場合も残留オーステナイト量
は本発明規定の上限を超えており、所要の強度が得られ
ていない。また、Si量も本発明規定の上限を超えており
メッキ性が劣っている。
とくに、試料No.40,42,43は特開平3−166340号公報
に見られる合金を調べたものであるが、いずれの材料も
本発明で意図するAgメッキ性、ハンダ性、耐食性が得ら
れておらず、従来技術のみでは、本発明で意図する効果
は達成されていないことは明らかである。また、試料N
o.40はMoが本発明規定未満の場合であり、錆発生頻度は
本発明例に比べて著しく高く、耐食性が劣っており、本
発明においては、Moの適量添加が必須であることが理解
される。
以上のように、本発明で意図する組織、機械的性質、
熱膨張特性、メッキ性、エッチング性および耐食性を得
るには、本発明の成分規定を満たした時のみに達成され
ることが、この実施例で明かとなった。
〔実施例3〕 第1表の試料No.1の成分を有する発明合金について、
真空溶解炉にて、溶解、鋳造を経た鋼塊を分塊圧延、熱
間圧延、脱スケール・表面疵取りを行ない、冷延素材を
得た。以降次の第6表に示す一連の処理を施し、板厚0.
10mmの合金薄板を得て、第7表及び第8表に示すような
特性値について、実施例1と同じ手法にて調査した。
前記第6〜8表から、試料No.45〜50は本発明で規定
した製造条件をすべて満たしており、本発明で意図する
組織,機械的性質,熱膨張特性,メッキ性,エッチング
性および耐食性を示している。これに対して試料No.51,
55はそれぞれCR1,CR2が本発明規定の上限を超える場合
であり、組織は混粒となっており、所要の繰返し曲げ特
性、エッチング性が得られていない。また、試料No.52,
56はそれぞれCR1,CR2が本発明規定の下限未満の場合で
あり、組織は結晶粒度No.が本発明規定の下限を下まわ
るものであり、所要の繰返し曲げ特性,エッチング性が
得られていない。
更に、試料No.53,57はそれぞれT1,T2が本発明規定の
上限を超えるものであり、組織は混粒であり、結晶粒度
No.が本発明規定の下限を下まわるものであり、所要の
繰返し曲げ特性,エッチング性が得られていない。ま
た、試料No.54,58はそれぞれT1,T2が本発明規定の下限
未満の場合であり、組織は混粒となっており、所要の繰
返し曲げ特性、エッチング性が得られていない。
以上のように、1次および2次の冷延率および焼鈍温
度の制御が組織の結晶粒度、整粒度のために極めて重要
であり、この制御により繰返し曲げ特性エッチング性を
向上し得ることが理解される。
更に、試料No.59,60はそれぞれ、CR3が本発明規定の
上限を超えるもの、下限未満のものである。前者は、残
留オーステナイト量が本発明規定の下限未満であり、所
要の熱膨張特性、繰返し曲げ特性が得られていない。ま
た後者は、残留オーステナイト量が本発明規定の上限を
超えるものであり、所要の強度が得られていない。
また、試料No.61は、特開平3−166340号公報で特徴
とする製造方法を採った場合であるが、オーステナイト
量は本発明規定の上限を超え、組織は混粒で、結晶粒度
No.は本発明規定の上限を超えている。なお、オーステ
ナイト量は2次焼鈍前で29%であり、2次焼鈍で逆変態
オーステナイトが63%生成されていた。この材料は、所
要の強度,繰返し曲げ特性,メッキ性,耐食性,エッチ
ング性は本発明例に比べて劣っており、従来技術によっ
ては、本発明で意図する効果は達成されていないことは
明らかである。
即ち、本発明によるものは、冷延素材において1000℃
×1hrというような溶体化処理は施さないもので、この
溶体化処理を省略することにより最終組織の結晶粒度お
よび整粒度の調整が可能となるものである。
以上のように、本発明において目的とする組織,機械
的性質,熱膨張特性,メッキ性,エッチング性および耐
食性を的確に得るには、本発明における製造条件の規定
も重要な要件である。
〔実施例4〕 表1の試料No.1の成分を有する発明合金について、真
空溶解炉にて、溶解,鋳造を経た鋼塊を分塊圧延、熱間
圧延、脱スケール・表面疵取りを行ない、冷延素材を得
た。以降次の第9表に示す一連の処理を施し、板厚0.10
mmの合金薄板を得て、第10表,第11表に示すような特性
値について、実施例1と同じ手法にて調査した。
前記第9表〜第11表から、試料No.62〜67は本発明で
規定した製造条件をすべて満たしており、本発明で意図
する組織,機械的性質,熱膨張特性,メッキ性,エッチ
ング性および耐食性を示している。これに対して試料N
o.68,72は、それぞれCR1,CR2が本発明規定の上限を超
える場合であり、組織は混粒となっており、所要の繰返
し曲げ特性,エッチング性が得られていない。また、試
料No.69,73はそれぞれCR1,CR2が本発明規定の下限未満
の場合であり、組織は結晶粒度No.が本発明規定の下限
を下まわるものであり、所要の繰返し曲げ特性,エッチ
ング性が得られていない。
更に、試料No.70,74はそれぞれT1,T2が本発明規定の
上限を超えるものであり、組織は混粒であり、結晶粒度
No.が本発明規定の下限を下まわるものであり、所要の
繰返し曲げ特性,エッチング性が得られていない。ま
た、試料南No.71,75はそれぞれT1,T2が本発明規定の下
限未満の場合であり、組織は混粒となっており、所要の
繰返し曲げ特性,エッチング性が得られていない。
以上のように、1次および2次の冷延率および焼鈍温
度の制御が組織の結晶粒度、整粒度のために極めて重要
であり、この制御により繰返し曲げ特性エッチング性を
向上し得ることが理解される。
更に、試料No.76,77はそれぞれ、CR3が本発明規定の
上限を超えるもの、下限未満のものである。前者は、残
留オーステナイト量が本発明規定の下限未満であり、所
要の熱膨張特性が得られていない。また後者は、残留オ
ーステナイト量が本発明規定の上限を超えるものであ
り、所要の強度が得られていない。
また試料No.78,80は、それぞれT3,tが本発明規定の上
限を超えるものであり、最終熱処理前の残留オーステナ
イト量はいずれも40%であったが、No.78は逆変態によ
るオーステナイトが20%生成されており、またNo.80で
は逆変態によるオーステナイトが11%生成されていた。
これらの材料では所要の強度、繰返し曲げ特性、エッチ
ング性が得られておらず、メッキ性および耐食性も本発
明例に比べて劣っている。更に試料No.79,81は、それぞ
れT3,tが本発明規定の下限未満のものであり、所要の繰
返し曲げ特性を有していない。
以上の試料No.78〜81に見られるように、適切な最終
熱処理の付与が本発明で意図する組織,機械的性質,熱
膨張特性,メッキ性および耐食性を得るのに必要である
ことが理解される。
また、試料No.82は、特開平3−166340号公報で特徴
とする製造方法を採った場合であるが、オーステナイト
量は本発明規定の上限を超え、組織は混粒で、結晶粒度
No.は本発明規定の上限を超えている。なお、オーステ
ナイト量は2次焼鈍前で29%であり、2次焼鈍で逆変態
オーステナイトが63%生成されていた。この材料は、所
要の強度、繰返し曲げ特性、メッキ性、耐食性、エッチ
ング性は本発明例に比べて劣っており、従来技術によっ
ては、本発明で意図する効果は達成されていないことは
明らかである。
即ち、本発明によるものは、冷延素材において1000℃
×1hrというような溶体化処理は施さないもので、この
溶体化処理を省略することにより最終組織の結晶粒度お
よび整粒度の調整が可能となるものである。
以上のように、本発明において目的とする組織,機械
的性質,熱膨張特性,メッキ性,エッチング性および耐
食性を的確に得るには、本発明における製造条件の規定
も重要な要件である。
産業上の利用可能性 以上説明したような本発明によるときは、Fe−Ni−Co
系の特定組成において多ピン薄板リードフレームに必要
な高強度を具備すると共に優れた繰返し曲げ特性、所要
の熱膨張特性、メッキ性、耐食性、エッチング性などを
兼備した合金薄板を提供し、又前記組成の合金を熱延以
降の冷延、焼鈍条件や最終冷間加工更には熱処理の最適
化によって最終組織および残留オーステナイト量を制御
して適切に前記合金薄板を製造することができる。
フロントページの続き (72)発明者 大北 智良 東京都千代田区丸の内1丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−219054(JP,A) 特開 平4−131354(JP,A) 特開 昭61−279628(JP,A) 特開 昭55−128565(JP,A) 特公 昭64−11099(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 9/46,9/48

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】wt%で、 Ni:27〜30%、Co:5〜18%、Mn:0.10〜3.0%、Si:0.10%
    以下であって、Ni,CoおよびMnの含有量はCo:10%未満で
    は、 63.5%≦2Ni+Co+Mn≦65.0% であり、Co:10%以上では、 69.5%≦2Ni+Co+Mn≦74.5% の関係を満足し、 C:0.010〜0.075%、N:0.001〜0.014%、H:2.0ppm未満、
    S:0.0040%以下、P:0.004%以下、O:0.0050%以下、Cr:
    0.01〜0.06%、Mo:0.01〜1.0% を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から成り、更に
    組織中の残留オーステナイト量が30〜90%、結晶粒度が
    No.8以上の整粒であることを特徴とした耐食性、繰返し
    曲げ特性、エッチング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金
    薄板。
  2. 【請求項2】請求の範囲1.の成分に加え、B、Nb、Ti、
    Zr、Ta、VおよびWの1種または2種以上を合計で0.01
    〜0.50%含有し、かつ請求の範囲1.の組織を有すること
    を特徴とした耐食性、繰返し曲げ特性、エッチング性に
    優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板。
  3. 【請求項3】30〜400℃の平均熱膨脹係数が(4〜8)
    ×10-6/℃、硬さがビッカース硬度(Hv)で280以上、引
    張強さが85kgf/mm2以上であることを特徴とする請求の
    範囲1.又は2.に記載の耐食性、繰返し曲げ特性、エッチ
    ング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板。
  4. 【請求項4】請求の範囲1.の組成を有する合金の冷延素
    材を1次冷延−1次焼鈍−2次冷延−2次焼鈍−3次冷
    延の工程で薄板を製造するに際し、 1次冷延率(CR1)を、60〜80%、 1次焼鈍温度(T1)を、700〜740℃、 2次冷延率(CR2)を、75〜85%、 2次焼鈍温度(T2)を、700〜740℃、 3次冷延率(CR3)を、20〜70% とすることを特徴とする耐食性、繰返し曲げ特性、エッ
    チング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板の製造方
    法。
  5. 【請求項5】請求の範囲2.の組成を有する合金の冷延素
    材を1次冷延−1次焼鈍−2次冷延−2次焼鈍−3次冷
    延の工程で薄板を製造するに際し、 1次冷延率(CR1)を、60〜80%、 1次焼鈍温度(T1)を、700〜740℃、 2次冷延率(CR2)を、75〜85%、 2次焼鈍温度(T2)を、700〜740℃、 3次冷延率(CR3)を、20〜70%、 とすることを特徴とする耐食性、繰返し曲げ特性、エッ
    チング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板の製造方
    法。
  6. 【請求項6】請求の範囲1.の組成を有する合金の冷延素
    材を1次冷延−1次焼鈍−2次冷延−2次焼鈍−3次冷
    延−低温熱処理の工程で薄板を製造するに際し、 1次冷延率(CR1)を、60〜80%、 1次焼鈍温度(T1)を、700〜740℃、 2次冷延率(CR2)を、75〜85%、 2次焼鈍温度(T2)を、700〜740℃、 3次冷延率(CR3)を、20〜70% 低温熱処理温度(T3)を、400〜540℃、 低温熱処理時間(t)を、0.5〜30min. とすることを特徴とする耐食性、繰返し曲げ特性、エッ
    チング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板の製造方
    法。
  7. 【請求項7】請求の範囲2.の組成を有する合金の冷延素
    材を1次冷延−1次焼鈍−2次冷延−2次焼鈍−3次冷
    延−低温熱処理の工程で薄板を製造するに際し、 1次冷延率(CR1)を、60〜80%、 1次焼鈍温度(T1)を、700〜740℃、 2次冷延率(CR2)を、75〜85%、 2次焼鈍温度(T2)を、700〜740℃、 3次冷延率(CR3)を、20〜70%、 低温熱処理温度(T3)を、400〜540℃、 低温熱処理時間(t)を、0.5〜30min. とすることを特徴とする耐食性、繰返し曲げ、特性エッ
    チング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板の製造方
    法。
JP51078393A 1991-12-13 1992-12-14 耐食性、繰返し曲げ特性、エッチング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板およびその製造方法 Expired - Fee Related JP2830472B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP51078393A JP2830472B2 (ja) 1991-12-13 1992-12-14 耐食性、繰返し曲げ特性、エッチング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3-351364 1991-12-13
JP35136491 1991-12-13
JP51078393A JP2830472B2 (ja) 1991-12-13 1992-12-14 耐食性、繰返し曲げ特性、エッチング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2830472B2 true JP2830472B2 (ja) 1998-12-02

Family

ID=26579379

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP51078393A Expired - Fee Related JP2830472B2 (ja) 1991-12-13 1992-12-14 耐食性、繰返し曲げ特性、エッチング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2830472B2 (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4878955A (en) Process for preparing a high strength stainless steel having excellent workability and free form weld softening
US6605163B2 (en) Process for manufacturing a strip made of an Fe-Ni alloy
US5792286A (en) High-strength thin plate of iron-nickel-cobalt alloy excellent in corrosion resisitance, repeated bending behavior and etchability, and production thereof
JPH0625395B2 (ja) 高強度リードフレーム材料およびその製造方法
JPH073403A (ja) 高強度Fe−Ni−Co合金薄板およびその製造方法
JP2830472B2 (ja) 耐食性、繰返し曲げ特性、エッチング性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板およびその製造方法
US5246511A (en) High-strength lead frame material and method of producing same
JP2826819B2 (ja) 加工性に優れ溶接軟化のない高強度ステンレス鋼材の製造方法
JP3510445B2 (ja) 軟化焼鈍特性に優れた電子部品用Fe−Ni系合金薄板
JP2797835B2 (ja) 耐食性、繰返し曲げ特性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板およびその製造方法
JP2001247938A (ja) 電子機器部品用オーステナイト系ステンレス鋼板
JP2929891B2 (ja) 耐食性、繰返し曲げ特性に優れた高強度Fe−Ni−Co合金薄板およびその製造方法
JPH07216510A (ja) 高強度リードフレーム材料およびその製造方法
JPH0826429B2 (ja) メッキ性,ハンダ性,繰返し曲げ特性に優れた高強度低熱膨脹Fe―Ni合金およびその製造方法
JP2501157B2 (ja) 熱間加工性に優れる高強度低熱膨張Fe−Ni系合金
JPS5910415B2 (ja) 耐応力腐食割れ性の優れた高張力線材及び棒鋼の製造法
JP2663777B2 (ja) メッキ性に優れたFe−Ni合金およびその製造法
JP3033459B2 (ja) 非調質高張力鋼の製造方法
JP3309396B2 (ja) 耐2次加工脆性に優れた時効硬化性を有する深絞り用高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP2550784B2 (ja) メッキ性、ハンダ性、繰返し曲げ特性に優れた高強度低熱膨脹Fe−Ni−Co合金およびその製造方法
JP2823974B2 (ja) 常温非時効bh型絞り用高張力冷延鋼板及びその製造方法
JP3606135B2 (ja) ばね用フェライト系ステンレス鋼板とその製造方法
JPH06287715A (ja) 高強度リードフレーム材料およびその製造方法
JPS63210242A (ja) 加工性に優れ溶接軟化のない高強度ステンレス鋼材の製造方法
JP2826261B2 (ja) 加工性に優れるFe−Cr合金

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees