JP2823958B2 - 放射線線量の測定方法 - Google Patents

放射線線量の測定方法

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JP2823958B2
JP2823958B2 JP5501444A JP50144493A JP2823958B2 JP 2823958 B2 JP2823958 B2 JP 2823958B2 JP 5501444 A JP5501444 A JP 5501444A JP 50144493 A JP50144493 A JP 50144493A JP 2823958 B2 JP2823958 B2 JP 2823958B2
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Description

【発明の詳細な説明】 政府契約への言及 本発明は、米国エネルギー省から与えられた契約番号
DE−AC06−76RLO 1830の下に政府に支援を受けて実行さ
れたものである。政府は本発明にある一定の権利を有す
る。
発明の背景 固体結晶を電離線に暴露させると、幾つかの吸収帯が
放射線損傷のレベルをますます高めて出現する。ハロゲ
ン化アルカリの場合には、F帯が検出可能な吸収帯を生
ずる放射線損傷中心の最初のものである。放射線暴露が
増大すると、第2損傷中心が吸収スペクトル中で増強す
る。第2損傷中心はM中心として知られ、一般に2つの
隣接F中心から成ると考えられる。LiFにおける吸収測
定は、M中心吸収のピークが443nmにおいて生ずること
を示す。
高度に生成されたフッ化リチウム(LiF)は長い間光
学的窓(optical window)として用いられてきた。光学
的等級LiFは深紫外領域から赤外領域までのその優れた
透過に関して知られている。LiF結晶は分光光度計によ
って測定される放射線誘導吸収ピークを用いる高レベル
(メガーラド)ガンマー線測定に用いられている。しか
し、これらの放射線損傷中心を測定するために、吸収測
定は非常に鈍感な方法である。
ハロゲン化アルカリは、結晶物質を公知吸収帯の波長
に一致する波長の光学的放射線(optical radiation)
によって励起させ、ルミネッセンスを観察することによ
ってこの結晶物質が暴露された放射線の線量を測定する
ために用いられてきた。
F中心は一定の放射線暴露に関する損傷中心の最大の
濃度を与えるが、F中心のルミネッセンスは室温未満で
は熱的に消滅するので、ルミネッセンス方法を用いる電
離線暴露の線量測定に限定された有用性を有する。しか
し、室温におけるより長い波長のM中心吸収帯への励起
はルミネッセンスを生ずる。M中心ルミネッセンスは、
励起波長とは有意に異なる波長でのルミネッセンス観察
を可能にする、実質的なストークスのシフトを含む。
D.F.Regullaの「ラジオフォトルミネッセンスに基づ
くフッ化リチウム線量測定(Lithium Fluoride Dosimet
ry Based an Radiophotoluminescence)」,Health Ph
ysics,22巻,491−496(1972)は、照射されたドープト
(doped)LiFのルミネッセンスが450nmの光線によって
励起される線量測定方法を開示する。
S.DattaとA.E.Hughesの「フッ化ナトリウム単結晶を
用いるルミネッセンス線量測定(Luminescence Dosimet
ry Using Sodium Fluoride Single Crystal)」,Healt
h Physics,29巻,420−421頁(1975)は、350nmの光線
によって励起され、600nmにルミネッセンスピークを有
するNaFを用いる研究を開示する。
Regullaによって報告された研究の場合には、照射さ
れるLiFをドープする。520nmにおける報告されたピーク
は、純粋なLiFによっては観察されない。
その内容がここに参考文献として関係する米国特許出
願第07/431,307号は、M中心ルミネッセンスを測定する
ことによって放射線損傷を定量することができることを
開示する。LiFにおけるM中心発光スペクトルのピーク
は約665nmにおいて生ずる。同時係属出願によると、M
中心吸収のピークが生ずる波長に密接に一致する波長の
状態の光線によるLiF結晶の励起は、LiFのM中心のルミ
ネッセンス収率を有意に増幅することが判明した。
上記方法の欠点は、比較的短い波長で反抗する励起源
を必要とすることである。このような短い波長で発光す
るレーザーは赤領域及び赤外領域で発光するレーザーよ
りも非常に費用がかかる。
出願人はフッ化ナトリウム(FaN)のM中心吸収帯の
ピークを報告する、公開された研究を知らない。
発明の概要 M中心ルミネッセンスの測定によって、吸収測定より
も敏感な、放射線損傷の測定方法を得ることができる。
442nmHe−CdレーザーによるLiF結晶の励起はLiFのM中
心のルミネッセンス収率を有意に増幅することが判明し
ている。LiFにおける吸収測定はM中心測定のピークが4
43nmにおいて生ずることを実証するので、He−Cdレーザ
ーは好ましい励起レーザであった。レーザー刺激はM中
心の励起状態を生じ、これは非常に強いストークスのシ
フトを受ける。M中心発光スペクトルのピークは0.36ev
の1/2幅を有して、665nmにおいて生ずる。励起波長は発
光波長とは有意に異なるので、深赤発光の測定を励起と
同時に行うことができる。それ故、光学的濾過はM中心
ルミネッセンスをM中心吸収帯へのレーザー励起と同時
に測定する手段を提供する。放射線損傷の増強と共にM
中心の集団は成長するが、それ故、M中心ルミネッセン
スは放射線の線量測定の基礎を提供する。LiFの読み取
りは1秒の何分の1で実施することができる。
ハロゲン化アクリル群の全ての要素がM中心ルミネッ
センス線量測定のための候補者であるが、幾つかの理由
からフッ化リチウム(LiF)を選択した。第一に、この
結晶は光学的窓物質としてのその使用によって大量に商
業的に入手可能である。第二に、LiFはそのエネルギー
反応においてフォトンにほぼ等しい組織であり、このこ
とがLiFを混合フィールド(field)線量測定用途に適し
た物質にしている。最後に、LiFは安価な商業的に入手
可能な青色光レーザーによって励起させることができ、
そのM中心ルミネッセンスは可視スペクトルの範囲内で
有意に生ずる。この特徴は、可視光線スペクトルに敏感
である光電管が容易に利用可能であるので、光線検出を
簡単化する。M中心の線量測定的性質を表すデータ及び
M中心に関する他の一般的な物理的データは詳細な説明
の項に述べ、ここでもLiFにおけるM中心線量測定の可
能性を検討する。
M中心ルミネッセンスは、現在人工的に成長させるこ
とができる、殆どあらゆる固体結晶に混在し、ハロゲン
化アルカリ群に限定されない。各結晶は大きな放射線暴
露(約1メガR)後に測定することができる、特徴的な
M中心吸収帯を有する。M中心吸収帯のレーザー光線に
よる照射は、励起レーザー光線ビームとは有意に異なる
波長で生ずるM中心ルミネッセンスを刺激する。励起光
線を吸収し、M中心ルミネッセンスを透過する光学フィ
ルターを用いることによって、励起光線と同時に容易に
分離し、検出することができる。
放射線損傷NaFのM中心吸収ピークが約500nmの波長に
おいて生ずることが判明している。照射されたNaFを約5
00nmの波長の光線で励起させると、これは約620nmにピ
ークを有し、約580nm〜約750nmの範囲にわたって発光す
る。電離線に暴露させた純粋なNaF物体を約632nmの波長
の光線で励起させると、これは約875nmのルミネッセン
ス曲線にピークを有し、約680nm〜約1050nmの範囲にわ
たって発光する。さらに、電離線に暴露された、M中心
吸収スペクトルのピークの波長よりも有意に長い波長の
光線によって励起される、純粋な、すなわちドープされ
ないハロゲン化アルカリ体、特にLiF物体又はNaF物体
は、この体が暴露された放射線の線量に依存する強度で
赤外領域において発光する。
本発明の第1態様によると、結晶質物質体を電離線に
暴露させる工程と;この物体を約540nmより大きい第1
波長の光学的放射線に暴露させる工程と;第1波長より
長い第2波長のルミネッセンスによってこの物体から発
せられる光学的エネルギーを測定する工程とを含む放射
線線量の測定方法を提供する。
本発明の第2態様によると、結晶質物質体を暴露させ
た放射線の線量の測定方法であって、この物体を約540n
mより大きい第1波長の光学的放射線に暴露させる工程
と;第1波長より長い第2波長のルミネッセンスによっ
てこの物体から発せられる光学的エネルギーを測定する
工程とを含む方法を提供する。
本発明の第3態様によると、M中心吸収を示し結晶質
物質体を電離線に暴露させる工程と;この物体を、M中
心吸収のピークの波長よりも有意に長い第1波長の光学
的放射線に暴露させる工程と;この物体ら第1波長より
も長い波長範囲のルミネッセンスによって発せられる光
学的エネルギーを測定する工程とを含む放射線線量の測
定方法を提供する。
本発明の第4態様によると、M中心吸収を示す結晶質
物質体を暴露させた放射線の線量の測定方法であって、
この物体を、M中心吸収のピークの波長よりも有意に長
い第1波長の光学的放射線に暴露させる工程と;この物
体から第1波長よりも長い波長範囲のルミネッセンスに
よって発せられる光学的エネルギーを測定する工程とを
含む放射線線量の測定方法を提供する。
本発明の第5実施態様によると、(a)純粋なNaF物
体を電離線に暴露させる工程と;(b)この物体を約50
0nmの波長の光学的放射線に暴露させる工程と;(c)
約620nmの波長のルミネッセンスによってこの物体から
発せられる光学的エネルギーを測定する工程とを含む放
射線線量の測定方法を提供する。
本発明の第6実施態様によると、純粋なNaF物体を暴
露させた放射線の線量の測定方法であって、(a)この
物体を約500nmの波長の光学的放射線に暴露させる工程
と;(b)約620nmの波長のルミネッセンスによってこ
の物体から発せられる光学的エネルギーを測定する工程
とを含む方法を提供する。
本発明の第7態様によると、M中心吸収を示す純粋な
結晶質物質体を電離線に暴露させる工程と;前記物質の
ピークM中心吸収波長に近い第1波長の光学的放射線に
よってこの物質を励起させる工程と;第1波長より長い
第2波長のルミネセンによってこの物質から発せられる
光学的エネルギーを測定する工程とを含む放射線線量の
測定方法を提供する。
本発明の第8実施態様によると、放射線線量の測定方
法であって、純粋な結晶質ハロゲン化アルカリ物質体を
電離線に暴露させる工程と;この物質を光学スペクトル
の青色領域内の波長のレーザー光線によって励起させる
工程と;スペクトルの赤領域内のルミネッセンスによっ
てこの物質から発せられる光学的エネルギーを測定する
工程とを含む放射線線量の測定方法を提供する。
図面の簡単な説明 本発明の一層良好な理解のために、かつ本発明がどの
ように実施されるかを示すために、次には実施例によっ
て、添付図面を説明する: 図1はM中心ルミネッセンス読み取り系の図である。
He−Cdレーザーは、1mmのビーム直径によって442nmにお
いて70mWを生ずる。読み取り器はLiF結晶の挿入と取り
出しのためのサンプル引出しを備えた光りを通さない金
属ボックスから成る。この室表面は散乱光線を阻止し、
遮蔽するために黒色プラスチックから形成される。レー
ザー光線を阻止し、M中心ルミネッセンスを透過させる
ために、広帯域光学的干渉フィルターを備えたRCA8852
光電管を用いる。パーソナルコンピューターは50MHzの
能力を有するフォトン計数用のマルチチャンネル計数ボ
ードを収容する。
図2はTracor Northern光学的マルチチャンネルアナ
ライザーを用いて測定されるLiF M中心ルミネッセンス
発光スペクトルを示す。このM中心ルミネッセンス発光
は442nm He−Cdレーザーによって励起されたものであ
る。このLiF結晶に60Co源を用いて2.6C/kgの暴露を行っ
た。発光スペクトルのピークは0.36veの半値幅を有する
665nmである。
図3は260C/kgに暴露させたLiF結晶の光学的吸収スペ
クトルを示す。LiFの光学距離は6mmである。この光学的
吸収スペクトルはHewlett−Packardダイオードアレイ
(diode array)光度計を用いて測定したものである。
吸収スペクトルのピークは443nmであると測定された。
図4は結晶へ投射される442nm He−Cdレーザーエネル
ギーの関数としてのM中心ルミネッセンスの光学ブリー
チング率(optical bleaching rate)を示す。この図に
用いた結晶は26mC/kgに暴露させたものである。光学ブ
リーチングの時定数は32sであることが判明した。M中
心ルミネッセンス強度の総減少は30Cの供給エネルギー
に対して20%であった。
図5はLiF結晶に基づくパーソナル放射線量計の概略
図である。
図6は107Rのガンマー線の線量に暴露させた純粋なNa
Fの吸収スペクトルを示す。
図7は514nmの光線によって励起させた後にガンマー
線に暴露させた純粋なNaFの吸収スペクトルを示す。
図8は632nmの光線によって励起させた後にガンマー
線に暴露させた純粋なNaFの吸収スペクトルを示す。
図9は632nmの光線によって励起させた後にガンマー
線に暴露させた純粋なLiFの吸収スペクトルを示す。
詳細な説明 M中心測定のために、光学的等級のLiF単結晶(6mm x
6mm x 6mm)を選択した。商業的に入手可能な結晶には
適当なM中心群が存在するので、これらの中心を熱処理
によって消去した。空気中873Kにおける1時間の熱処理
がM中心バックグランドの消去に充分であることが判明
した。熱処理後に、結晶の一部は対照として維持した
が、残りは60CO源の0.26、2.6、26、260mC/kgに暴露さ
せた。照射後に、好ましくない露光を防止するために紙
エンベロープ中に結晶を保存した。
図1に示すように、読み取り装置は3種類の機能ユニ
ット:70mW He−Cd 442nmレーザー2、サンプル室6と光
電管8とを含む、光りを通さないボックス4、及びフォ
トン計数系10から成るものであった。このHe−Cdレーザ
ービームは結晶面においてビーム直径1mmに収束し、2
つの対立キューブ面の中心において結晶を透過した。レ
ーザー励起光線を結晶に与えるために、レーザービーム
路とサンプル室とを散乱室内灯とレーザー散乱との遮蔽
を助ける黒色プラスチックから製造した。442nm He−Cd
レーザー光線が光電管8に達するのを阻止するためにか
つM中心ルミネッセンスを透過させるために、650nmに
集中した広帯域干渉フィルター12を選択した。このフィ
ルターは50%の650nmピーク透過と70nmの帯幅とを与え
た。散乱した442nm He−Cdレーザー光線の透過はフィル
ター12の使用によって0.01%に減少した。光学フィルタ
ーと結晶との間には、M中心ルミネッセンスに付随する
バックグランド光線の一部の阻止を助けるために、1mm
の隙間が設けられた。この実験のために選択された光電
管8は赤拡大(red−extended)マルチーアルカリ光電
陰極を備えたRCA8852であり、レーザービームの軸から9
0゜をなして取り付けられた。この光電管はフォトン計
数に適しているためとその優れた赤色反応とのために選
択された。フォトン計数系は前置増幅器、増幅器、弁別
器及びパーソナルコンピューター内に収容されたマルチ
チャンネル計数ボードから成る。この計数系は50MHz速
度(rate)の能力を有する。
読み取りは70mWレーザービームをサンプル室とLiF結
晶中とに通しながら、同時にコンピューター内のマルチ
チャンネル計数ボードによってフォトンを計数すること
から成る。問題の領域は400チャンネルから成り、各チ
ャンネルが50msの時間幅を有するように選択された。20
秒間続く、問題の400チャンネル領域にわたって積分を
実施した。
図2はTracor Northern光学的マルチチャンネルアナ
ライザーを用いて測定されるLiF M中心ルミネッセンス
発光スペクトルである。このLiF結晶に60Co源を用いて
2.6C/kgの暴露を行った。発光スペクトルのピークは0.3
6evの半値幅を有する665nmである。この結果を用いて、
M中心ルミネッセンス読み取り器に用いるための最適干
渉フィルターを決定した。重度に暴露されたLiF結晶の
光学的吸収スペクトルをHewlett−Packardダイオードア
レイ光度計を用いて測定した。この吸収スペクトルは図
3に示す。吸収スペクトルの暴露レベルは260C/kgであ
った。M中心吸収曲線を充分に分析するために、260C/k
gが使用可能な最低暴露であった。443nmにおける吸収曲
線ピークはHe−Cdレーザーの442nmラインに一致する。
下記表は0.26、2.6、26及び260mC/kgの60Coガンマ暴
露の関数としてM中心の反応を示す。
全70mWのレーザー電力を用いて260mC/kg暴露の飽和を
計数するために、2種類の電力レベルを用いた。実験の
不確定性の範囲内で、反応は直線関係に従う。0.26mC/k
gに暴露させた結晶は暴露を受けなかった結晶の2倍の
大きさの総反応を示した。
図4は時間の関数としてM中心ルミネッセンスのブリ
ーチング率のプロットである。結晶を26mC/kgに暴露さ
せ、レーザー電力は70mWであり、600秒間供給した。ブ
リーチングプロセスの時定数は32sであることが判明
し、長時間にわたって(over time)一定であるように
思われる。M中心ルミネッセンスを監視した全時間にわ
たって、ブリーチングによる総減少は僅か20%であっ
た。励起M中心の減衰に関係する時定数を直接方法で測
定した。時定数の測定には今までの測定に用いられた装
置と同じ装置を用いた。読み取り装置内の照射LiF結晶
を励起させるために、窒素ポンプト(pumped)色素レー
ザーを用いて、Hewlett−Packard数字化高速記憶オシロ
スコープ中にシグナルを供給した。このオシロスコープ
はデータの平滑なセツトが得られるまでM中心減衰シグ
ナルの平均化を可能にした。測定された時定数は70nsで
あった。これは他の著者(5,6)の測定と一致するよう
に思われる。
LiFにおけるM中心ルミネッセンスは70nsのオーダー
の時定数によって生ずる。この測定に基づくと、LiFに
おけるM中心は飽和時に約107フォトン/秒を形成でき
るべきである。LiFにおけるM中心の発振強度(oscilla
tor strength)に基づく簡単な計算は40kwにおける442n
mレーザービームによるM中心ルミネッセンス飽和を予
測する。本発明の実験に用いたレーザーは70mWであるの
で、例えば、高強度アルゴンレーザーの使用によって、
励起電力を高めることによってM中心ルミネッセンスシ
グナルの大きな増加を得ることができる。
M中心ルミネッセンスを記録する光電管は、パーソナ
ルモニターリングを可能にする高感度線量測定を実現す
べきであるならば、赤−赤外発光スペクトルに対して非
常に敏感でなければならない。残念ながら、単独フォト
ン計数を可能にする赤拡大光電管は熱電子放出に関連し
た特徴的に大きい暗カウント(black count)を有す
る。商業的に入手可能な色素レーザーはこの高い暗カウ
ント問題にエレガントな解決を与え、M中心ルミネッセ
ンスの飽和に達するための大きいピーク電力の必要性を
も満たす。色素レーザーは典型的に非常に短いパルス長
さを有するので、色素レーザーパルスの持続時間内の赤
拡大光電管暗カウントは無視できるものになる。励起M
中心の減衰の時定数よりも数桁長い、10〜100μsの時
定数を有する非常に大きいピーク電力を生じるために
は、フラッシュランプ−ポンプト色素レーザーを作成す
ることができる。それ故、フラッシュランプーポンプト
色素レーザーの使用によって、M中心ルミネッセンスは
飽和を生じて最大化され、M中心の減衰時定数よりも非
常に長い時間でのルミネッセンスのサンプリングを可能
にする。この条件は良好な統計的結果を与えると思わる
る。幸運にも、飽和時のM中心ルミネッセンス収率は無
視できる暗カウントを生ずるレーザーと同じレーザーに
よって理論的に最適化される。
LiFにおけるM中心ルミネッセンス方法の最も制限的
な面(aspect)は大きい蛍光バックグランドである。直
接の散乱レーザー光線によって刺激される好ましくない
バックグランドは、幾つかの発生源から発せられる。こ
のような発生源の第一はレーザー光線散乱から室表面内
に生ずる蛍光である。形状と材料選択との両方における
細心の室設計はこの好ましくない光線源を大きく減ずる
ことができる。第2発生源は結晶表面から発せられる蛍
光である。表面蛍光は適当な条件下での人の眼によって
明白に目視可能であり、好ましくない光線の最大の発生
源を表す。表面蛍光は表面における蛍光発生種の性質に
依存する。好ましくない光線の第3発生源は結晶の全体
(bulk)からである。レーザービームによって励起され
る結晶内の不純物は所望のシグナルを妨げる光線を生ず
る。この発生源の光線は、全体的な結晶効果を遮蔽する
大きい蛍光シグナルのために、現在観察されていない。
バックグランド光線の第4発生源はレーザーを調節する
ためと、散乱レーザー光線が光電管に達するのを阻止す
るためとの両方に用いられる光学フィルター漏出からで
ある。光電管は励起レーザーの波長に非常に敏感である
ので、適切な濾過が重要である。高品質フィルターと、
マルチプルフィルターの使用とはこの種のバックグラン
ドが重大に問題を惹起することを阻止する。最後の種類
のバックグランド光線が恐らく最も厄介であると思われ
る。
線量測定用途では、線量測定計が再使用可能であるこ
とが好ましく、このことはM中心を除去するために結晶
をアニールする必要性を意味する。既述したように、熱
処理を用いて、M中心を除去することができる。しか
し、熱処理のある箇所では、M中心が平衡レベルに達
し、この箇所ではM中心濃度のそれ以上の減少が困難に
なる。充分なパーソナル放射線モニターリングを実施す
るために、この濃度レベルが適切に低いかどうかはまだ
不明である。
上記に基づいて、60Coガンマ源を用いたLiFにおける
M中心ルミネッセンスが0.026〜260mC/kgの暴露範囲内
の有用な線量測定計であると実証されたことが理解され
るであろう。M中心ルミネッセンス線量測定へのLiF使
用の主要な困難性は、M中心ルミネッセンスシグナルに
付随する大きな蛍光バックグランドである。赤外領域に
それらのM中心吸収帯を有するような結晶の励起に使用
可能である、赤外領域で発光する安価なダイオードレー
ザーが現在入手可能である。
多くのハロゲン化アルカリは赤外領域にそれらのM中
心ルミネッセンス吸収帯を有する。赤外ルミネッセンス
の検出に安価な赤外線検出計を用いることができ、この
ことは工業的に利用可能である安価なレーザー検出系を
可能にする。このようにして、M中心ルミネッセンスは
パーソナル線量測定又は環境線量測定の手段として用い
ることができる。小型赤外線源を赤外線検出計及び適当
な光学フィルターと組合わせることによって、この組合
せは実時間分析を行う放射線モニターと成る。図5はダ
イオードレーザーのような電池電力供給ダイオード光源
22を取り付けた結晶20、結晶のM中心ルミネッセンスを
検出するための例えばアバランシュ(avalanche)フォ
トダイオードのような光線検出計24、及びレーザー光線
を阻止し、結晶のM中心ルミネッセンスを透過させるた
めの光学フィルターを含む、このような線量測定計を説
明する。
光学的に刺激されるルミネッセンスは同時係属米国特
許出願第07/213,245号、現在の米国特許第4,954,707号
と、同時係属米国特許出願第07/420,293号、現在の米国
特許第5,025,159号に述べられており、これらの内容は
これによってここに参考文献として関係する。
図6は107Rの線量に暴露させた純粋なNaFの吸収スペ
クトル(曲線A)と、対照(曲線B)としての照射され
なかったNaFの吸収スペクトルとを示す。図6に示した
吸収スペクトルは公知方法と通常の装置とを用いて測定
したものである。曲線Aが約505nmにピークを示すこと
が見られる。これはM中心吸収スペクトルである。曲線
Aから、測定領域内にM中心吸収ピークの波長より長い
波長には有意な吸収ピークが存在しないことも見られる
であろう。
純粋なNaFの単結晶を室温(約20℃)においてCo−60
源からのガンマ線に暴露させた。例えば514nmにおいて
配向するアルゴンレーザーのような、約510nmの波長に
おいて発光するレーザー光線源のその出力光線ビームが
結晶に投射されるように配置し、光度計を結晶から放出
される光線を受容して、受容した光線の強度を波長の関
数として測定するように配置した。測定されたルミネッ
センススペクトルを図7に示す。このルミネッセンスス
ペクトルは約620nmに顕著なピークを有する。
照射された純粋なNaFの単結晶を用いた別の実験で
は、アルゴンレーザーの代わりに632nmにおいて発光す
るヘリウム−ネオンレーザーを用いた。測定されたルミ
ネッセンススペクトルは図8に示すが、680〜1050nmの
範囲であり、約875nmに赤外領域におけるピークを有す
る。ルミネッセンス発光のピークの振幅は1R〜100,000R
のガンマー線の線量に実質的に関係することが判明し
た。
図6はNaFの吸収スペクトルが約630nmにピークを有さ
ないことを示すので、図8によって示される効果があま
り波長依存性ではなく、例えば560〜750nmのような、広
範囲の波長に及ぶ光線による純粋なNaFの励起が図8に
示す発光スペクトルと同様な発光スペクトルを生ずると
出願人は考える。
LiFによる同様な実験において、ルミネッセンススペ
クトル(図9)は約650〜約1050nmの範囲であり、赤外
領域(約730nm)にピークを有した。LiFのM中心吸収ス
ペクトルが約433nmにそのピークを有するという事実に
基づいて、約550〜700nmの波長の光線によるLiFの励起
が図9に示す発光スペクトルと同様な発光スペクトルを
生ずると出願人は結論する。
図8と9に関連して述べた観察は、放射線損傷した結
晶質物質、特に、純粋状態のハロゲン化アルカリのルミ
ネッセンスが赤及び赤外領域で発光するレーザーによっ
て励起されることができること、このようなルミネッセ
ンスがガンマー線線量の光感度測定を可能とすることを
示唆する。
M中心吸収スペクトルのピークの波長よりも有意に大
きい波長の光線による励起によってルミネッセンスを刺
激する方法は、感度増強の他に、結晶の励起のために用
いられるレーザー光線源が同時係属出願に述べられたよ
うな、M中心発光を刺激するために用いられるレーザー
光線源よりも非常に安価でありうるという利点を有す
る。
LiFの格子定数は約4であり、NaFの格子定数は約5で
ある。赤外ルミネッセンスを生ずる結晶質物質の励起の
ための最適波長がその物質の格子定数に依存すると出願
人は考える:大きい格子定数を有する結晶は長い最適励
起波長を有し、ピーク発光もまたより長い波長にシフト
する。短い格子定数では、ルミネッセンスを生ずる損傷
中心が熱力学的に不安定である可能性が大きく、従っ
て、このような物質は線量測定に限られた有用性を有す
る。
図8と9に関連して述べた観察の根拠は完全には理解
されていない。赤外ルミネッセンスは今までに観察され
た損傷中心から生ずると考えられる、又は今までに観察
されない損傷中心から生ずるとも考えられる。
図5に示した装置と同様な装置を用いて、M中心ルミ
ネッセンスとは対照的に、図8と9に関連した述べた広
帯域効果によって発生する赤外ルミネッセンスを検出又
は測定することによって放射線の線量又はレベルを測定
することができる。
本発明が今までに述べた特定の実施態様に限定され
ず、請求の範囲で定義された本発明の範囲及びその同等
物から逸脱せずに変更がなされうることは理解されよ
う。例えば、図8と9に関連して上述した観察は2種類
の物質、すなわちLiFとNaFに関してなされたものである
が、他の結晶質物質、特に他のハロゲン化アルカリによ
っても同様な結果が観察されると考えられる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01T 1/10 - 1/11 C09K 11/00

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】結晶質物質による放射線線量の測定方法で
    あって、 (a)損傷中心吸収を示す結晶質物質体を電離線に暴露
    させる工程と; (b)480nmより大きくかつM中心吸収ピークより長い
    第1波長の光線によって該物質を励起させる工程と; (c)第1波長よりも長くかつ少なくとも約620nmであ
    る第2波長におけるルミネッセンスによって該結晶質物
    質から発せられる光学的エネルギーを測定する工程と を含む前記方法。
  2. 【請求項2】損傷中心バックグラウンドを除去するため
    に充分な温度に該結晶物質を加熱する除去工程をさらに
    含む請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】前記温度が約873Kである請求項2記載の方
    法。
  4. 【請求項4】前記温度が約1時間維持される請求項3記
    載の方法。
  5. 【請求項5】前記結晶質物質がフッ化リチウムである請
    求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】結晶質物質による放射線線量の測定方法で
    あって、 (a)損傷中心吸収を示す結晶質物質体を電離線に暴露
    させる工程と; (b)480nmより大きくかつM中心吸収ピークより長い
    第1波長の可視光線によって該物質を励起させる工程
    と; (c)スペクトルの赤外線の領域における第2波長にお
    けるルミネッセンスによって該結晶質物質から発せられ
    る光学的エネルギーを測定する工程と を含む前記方法。
  7. 【請求項7】損傷中心バックグラウンドを除去するため
    に充分な温度に該結晶物質を加熱する除去工程をさらに
    含む請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】前記温度が約873Kである請求項7記載の方
    法。
  9. 【請求項9】前記温度が約1時間維持される請求項8記
    載の方法。
  10. 【請求項10】前記結晶質物質がフッ化リチウムである
    請求項6記載の方法。
  11. 【請求項11】フッ化ナトリウムによる放射線線量の測
    定方法であって、 (a)損傷中心吸収を示すフッ化ナトリウムを電離線に
    暴露させる工程と; (b)480nmより大きくかつM中心吸収ピークより長い
    第1波長の光線によって該物質を励起させる工程と; (c)第1波長よりも長くかつ少なくとも約620nmであ
    る第2波長におけるルミネッセンスによって該結晶質物
    質から発せられる光学的エネルギーを測定する工程と を含む前記方法。
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