JP2819352B2 - 低密度断熱構造体の製造法 - Google Patents

低密度断熱構造体の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、1200℃を超えるような苛酷な温度条件下で
使用する断熱材として適当な、高度の耐熱性と耐熱衝撃
性を備えた低密度断熱構造体を製造する方法に関するも
のである。
〔従来の技術〕
米国NASAのスペースシャトルの表面保護材のように著
しい高温や激しい熱的衝撃に耐え、低密度で断熱性にす
ぐれる一方、一定水準以上の強度と機械加工性を備えて
いることを要求される断熱構造体の代表的なものとして
は、耐熱性無機繊維を主材とする多孔質成形体が知られ
ている。
この種の材料で最初に用いられたものは、バインダー
としてのコロイダルシリカの存在下に高純度シリカ繊維
を成形し約1300℃で焼成して作られたシリカタイルと呼
ばれる材料である。この材料は強度が低く、また劣化も
早く、使用時の機械的衝撃によって欠けたり、接着した
ものが剥落したりする欠点があった。バインダーを使用
することによりシリカタイルの上述のような欠点を解消
するため、特開昭55−37500号の発明では、シリカ繊
維、アルミノシリケート繊維および酸化ホウ素の混合
物、またはシリカ繊維とアルミノボロシリケート繊維の
混合物を、成形したのち焼成することにより繊維間融着
を生じさせたものを提案している。また特開昭60−1512
69号の発明では、特定の繊維径のシリカ繊維とアルミナ
繊維とを酸化ホウ素により融着させたものが開示されて
いる。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記各発明による低密度断熱構造体はすでにかなり高
い水準の性能を達成しているが、宇宙開発の進展にとも
ない、より低い密度で強度も耐久性もある高性能のもの
を求める声が強くなっている。
本発明の目的は、かかる要望に応え、一層低密度で強
度、耐熱性、耐熱衝撃性等にも優れた断熱構造体を製造
する方法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成することに成功した本発明は、平均繊
維径が0.3〜3.0μmのシリカ質繊維100重量部、平均繊
維径が1〜5μmのアルミナ繊維5〜100重量部、平均
繊維径が3〜15μmのアルミノボロシリケート繊維5〜
30重量部、ならびに上記3種類の無機繊維の合計量に対
して5〜30重量%の有機繊維および0.5〜10重量%の酸
化ホウ素を水中に分散させて混合し、得られたスラリー
を脱水成形し、乾燥後、酸化ホウ素が溶融する温度で焼
成することを特徴とする低密度断熱構造体の製造法であ
る。
〔作用〕
従来の製造法と比べた場合、上記本発明の製造法の要
点は、無機繊維の配合に改良を加えたことと、最終的に
は焼失させる有機繊維を用いて均質な多孔質構造を形成
させるようにしたことにある。
すなわち、無機繊維としてシリカ繊維、アルミナ繊
維、およびアルミノボロシリケート繊維の3種を用いる
新規な配合は、それぞれ特徴ある物性を有する3種類の
耐熱性繊維からなる独特の三次元網目状構造を生じさ
せ、それにより、断熱構造体を低密度でありながら極め
て高い水準の強度、耐熱性および耐熱衝撃性を有するも
のにする。上記新規な断熱構造体の構成は、構成繊維間
の空隙の大きさが均一で局部的な密度変動のない成形体
になって初めて優れた性能の断熱構造体を与えるが、製
造原料に配合された有機繊維は、無機繊維と均一に混合
され成形されたのち焼成工程で焼失し、それにより、有
機繊維が用いられなかった場合よりもはるかに均一な空
隙を容易に形成させる。有機繊維はまた、焼失してその
あとに空隙を残すことにより、無機繊維と酸化ホウ素の
みからなる原料混合物を成形する場合には到底製造不可
能な低密度成形体の形成を可能にする。
以下、本発明の製造法につき詳述する。
原料の無機繊維は前述のように平均繊維径が0.3〜3.0
μmのシリカ繊維、平均繊維径が1〜5μmのアルミナ
繊維、および平均繊維径が3〜15μmのアルミノボロシ
リケート繊維であるが、シリカ繊維としては、平均繊維
径が約0.5〜2μmで、SiO2含有率が98%以上の高純度
シリカ繊維を用いることが望ましい。アルミナ繊維とし
ては、Al2O3約72〜100%、SiO2約0〜28%のものが好ま
しい。また、アルミノボロシリケート繊維としては、Al
2O3約62〜70%、SiO2約24〜28%、B2O3約2〜14%の組
成を有し、かつ平均繊維長が0.5〜15mmであるものが好
ましい。この範囲よりも短い繊維を用いたのでは、断熱
構造体の強度が低くなり、また、低比重の成形体を得る
ことが困難になる。一方、これよりも長い繊維を用いる
と、剛直なこの繊維が成形工程においてプレス面に平行
な方向に強度の配向を生じ易く、それにつれて他の繊維
も同じ方向で配向するので、層状剥離を起こし易い、ま
た厚さ方向の圧縮強度の低い成形体を与える。
各無機繊維の量比は前述のとおりとするが、シリカ繊
維を100重量部としたときのアルミナ繊維の量が5重量
部未満では製品の耐熱性および強度が低くなり、また10
0重量部を超えると、熱膨張率および熱伝導率の増加を
招く、特に好ましいアルミナ繊維の量は約5〜70重量部
である。また、アルミノボロシリケート繊維の量が5重
量部未満ではやはり製品が強度および耐熱性の劣るもの
となり、30重量部を超えると高温での熱収縮を大きくす
るなど耐熱性に悪影響があり、さらに熱膨張率と熱伝導
率を大きくする。
上記3種類の無機繊維と共に用いる有機繊維として
は、製紙用またはレーヨン製造用の木材パルプ、コット
ンリンターパルプ、レーヨンステープル等、焼成したと
き溶融することなく焼失するものが適当である。パルプ
を用いる場合は、あらかじめミキサー、パルパー等で処
理して解砕し、繊維を分散させておく。レーヨンステー
プルを用いる場合、繊維長は約15mm以下とすることが望
ましく、長すぎるときは無機繊維と混合するときもつれ
を生じて均一混合が困難になる。有機繊維は過剰に使用
すると無機繊維間の接合を妨げ、製品の強度を低下させ
るから、無機繊維の合計量に対して5〜35重量%とす
る。
上述のような無機繊維および有機繊維の混合物に、さ
らに酸化ホウ素を混合する。その量は、無機繊維の合計
量に対して0.5〜10重量%とする。酸化ホウ素は十分量
を使用しないと繊維間結合が不十分になって強度の低い
製品を与えるが、多すぎると、それから生成するガラス
が繊維を被覆し、各無機繊維がそれらの特性を最高度に
発揮するのを妨げて耐熱性を悪くする。
無機繊維、有機繊維および酸化ホウ素は、均一に混合
してから水中に分散させ、得られたスラリーを適当な濃
度に脱水し、最中的に嵩密度約0.08〜0.15g/cm3の成形
体が得られるような条件で、所望の形状にプレス成形す
る。得られた成形物を乾燥後、空気中で焼成してまず有
機繊維を焼失させ、その後昇温し、最終的には約1100〜
1400℃の高温で焼成して酸化ホウ素の溶融とそれによる
繊維間融着を生じさせる。冷却後、必要に応じて切削加
工を施し、目的とする低密度断熱構造体を得る。
なお、本発明の製造法においては、輻射熱の透過を妨
げて断熱性を良くする熱輻射材たとえば炭化ケイ素粉
末、炭化ケイ素ウィスカ、ホウ化ケイ素粉末等を、シリ
カ繊維100重量部当たり20重量部を超えない範囲で原料
に添加混合し、製粉の繊維表面に付着させてもよい。
〔実施例〕
平均繊維径約0.9μm、SiO298%以上の高純度シリカ
繊維(短繊維)100重量部、平均繊維径3μm、Al2O395
%のアルミナ繊維(短繊維)46重量部、平均繊維径11μ
m、Al2O362%、B2O314%、SiO224%、平均繊維長6mmの
アルミノボロシリケート繊維23重量部、酸化ホウ素7.7
重量部、および無機繊維合計量に対して0〜30重量%の
製紙用木材パルプを水に分散させて混合し、濃度が1.5
%のスラリーにする。このスラリーを、濃度が3%にな
るまで予備脱水し、次いでフィルタープレスで板状に脱
水成形する。得られた成形物は105℃で16時間乾燥した
後、120℃/hrの昇温速度で1350℃まで昇温し、1350℃で
10時間保持して焼成する。冷却後、切削加工を施して、
厚さ50mm、一辺が200mmの板状断熱構造体を得る。
上記製造法の脱水成形工程における脱水度を加減する
ことにより製品の嵩密度をある範囲内で変更することが
できるが、その方法で製造可能な最低密度の断熱構造体
を製造し、製品について、木材パルプの添加量と密度d
minおよび厚さ方向引張強さの関係を調べ、結果を図1
に示した。
この種の断熱構造体では強度よりも低密度化を優先す
るものの厚さ方向引張強さは約1.5kg f/cm2以上である
ことが望ましいとされているが、パルプを添加すると、
この必要強度を確保しながら密度0.15g/cm3未満の低密
度断熱構造体が確実に製造可能になることがわかる。
上記による断熱構造体のうちパルプ添加量17.8重量%
の場合(本発明実施例)およびパルプ添加量なしの場合
(比較例)の製品について特性試験を行なった結果を第
1表に示す。なお熱膨張率は30〜800℃における平均値
であり、他の特記していない物性値はすべて室温におけ
る値である。
〔発明の効果〕 上述のように、本発明は原料無機繊維を有機繊維と共
に成形し、そのご有機繊維を焼失させると共にホウ素含
有ガラスによる無機繊維間結合を生じさせて三次元網目
構造を形成させるものであるから、従来は製造不可能で
あったような低比重で均質な多孔質断熱構造体を容易に
製造することができる。
本発明の製造方法はまた改良された独特の配合の原料
無機繊維を採用しているので、それら無機繊維の協同作
用により、強度、耐熱性、耐熱衝撃性など、熱的機械的
性質のすぐれた構造が形成される。
上記二つの特長が相乗的に作用する結果、本発明の製
造法によれば容易に従来の水準を超える高性能低密度断
熱構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は実施例の結果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渥美 基広 茨城県つくば市千現2―1―1 宇宙開 発事業団筑波宇宙センター内 (72)発明者 田口 元康 愛知県名古屋市港区大江町10番地 三菱 重工業株式会社名古屋航空宇宙システム 製作所内 (72)発明者 大島 正征 愛知県名古屋市港区大江町10番地 三菱 重工業株式会社名古屋航空宇宙システム 製作所内 (72)発明者 柴田 研一 神奈川県横浜市鶴見区大黒町1―70 ニ チアス株式会社研究所内 (72)発明者 木村 康一 神奈川県横浜市鶴見区大黒町1―70 ニ チアス株式会社研究所内 (72)発明者 原 智彦 神奈川県横浜市鶴見区大黒町1―70 ニ チアス株式会社研究所内 (72)発明者 安治 敏行 神奈川県横浜市鶴見区大黒町1―70 ニ チアス株式会社研究所内 (56)参考文献 特開 昭60−151269(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C04B 32/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平均繊維径が0.3〜3.0μmのシリカ質繊維
    100重量部、平均繊維径が1〜5μmのアルミナ繊維5
    〜100重量部、平均繊維径が3〜15μmのアルミノボロ
    シリケート繊維5〜30重量部、ならびに上記3種類の無
    機繊維の合計量に対して5〜30重量%の有機繊維および
    0.5〜10重量%の酸化ホウ素を水中に分散させて混合
    し、得られたスラリーを脱水成形し、乾燥後、酸化ホウ
    素が溶融する温度で焼成することを特徴とする低密度断
    熱構造体の製造法。
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