JP2818989B2 - 油圧緩衝器 - Google Patents
油圧緩衝器Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等の車両の懸架
装置に装着される油圧緩衝器に関するものである。 【0002】 【従来の技術】自動車等の車両の懸架装置に装着される
油圧緩衝器には、路面状況、走行状況等に応じて乗り心
地や操縦安定性をよくするために減衰力特性を適宜調整
できるようにした減衰力調整式油圧緩衝器がある。 【0003】従来、減衰力調整式油圧緩衝器としては、
油液が封入されたシリンダ内に、ピストンロッドが連結
されたピストンを摺動可能に嵌装し、ピストンロッドの
一端をシリンダの外部まで延出させ、このピストンによ
り画成されるシリンダ内の2室をピストン部に設けた主
油液通路およびバイパス通路で連通させ、さらに、バイ
パス通路の通路面積を切換えるシャッタ機構を設けた構
成としたものが知られている。 【0004】この構成により、シャッタ機構を操作して
バイパス通路の通路面積を切換えることによって減衰力
特性(オリフィス特性)を調整することができる。 【0005】また、伸び側の減衰力と縮み側の減衰力を
異ならせるために、バイパス通路中に常時連通するオリ
フィスを有するチェック弁を設けたものが実開昭58−
92537号公報に示されている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の減衰力調整式油圧緩衝器では、シリンダ内の油液は
ピストンロッドの伸び、縮み行程共に同一のバイパス通
路を流通するので、バイパス通路の通路面積を切換える
ことにより、伸び側、縮み側共に同様の減衰力特性に切
換わることになる。よって、伸び側と縮み側とで異なる
種類の減衰力特性を同時に選択することができない。 【0007】また、バイパス通路中にチェック弁を設け
たものであっても、伸び側と縮み側とで異なる減衰力特
性を得ることは可能であるが、油液が伸び、縮み行程共
にバイパス通路中の同一のオリフィスを流通するので、
チェック弁の閉じる側の減衰力特性を決めると、チェッ
ク弁の開く側の減衰力特性は常にチェック弁の閉じる側
の減衰力特性より低い減衰力特性しか得ることができな
い。よって、伸び側の減衰力特性と縮み側の減衰力特性
とを互いに影響することなく自由に設定することができ
ない。 【0008】本発明は、上記の点に鑑みてなされたもの
であり、伸び側の減衰力特性と縮み側の減衰力特性とを
互いに影響することなく自由に設定することができる減
衰力調整式油圧緩衝器を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明の油圧緩衝器は、
上記の課題を解決するために、油液が封入されたシリン
ダと、該シリンダ内に一端が挿入され他端が突出したピ
ストンロッドと、該シリンダ内を2室に画成する油界画
成部材と、前記シリンダ内の2室を連通し、前記ピスト
ンロッドの伸び側の移動により生じる油液の流通を許す
チェック弁を有する伸び側連通路と、前記シリンダ内の
2室を連通し、前記ピストンロッドの縮み側の移動によ
り生じる油液の流通を許すチェック弁を有する縮み側連
通路と、前記伸び側連通路の通路面積の大小を調整する
伸び側通路面積調整部および前記縮み側連通路の通路面
積の大小を調整する縮み側通路面積調整部と、該伸び側
および縮み側通路面積調整部を駆動する1つのアクチュ
エータとを備え、 前記伸び側および縮み側通路面積調整
部は、前記アクチュエータの駆動により、前記伸び側連
通路の通路面積を大きくしたとき、前記縮み側連通路の
通路面積を小さくし、前記伸び側連通路の通路面積を小
さくしたとき、前記縮み側連通路の通路面積を大きくす
ることを特徴とする。 【0010】 【作用】この構成により、ピストンロッドの伸び側の移
動時には、チェック弁によって縮み側連通路の流通が阻
止されて、油液が伸び側連通路を流通するので、伸び側
通路面積調整部によって減衰力が調整され、ピストンロ
ッドの縮み側の移動時には、チェック弁によって伸び側
連通路の流通が阻止されて、油液が縮み側連通路を流通
するので、縮み側通路面積調整部によって減衰力が調整
される。そして、1つのアクチュエータによって、伸び
側および縮み側通路面積調整部を駆動することにより、
伸び側連通路および縮み側連通路の通路面積を同時に調
整することができ、このとき、伸び側連通路および縮み
側連通路は、一方の通路面積が大のとき、他方の通路面
積が小となり、一方の通路面積が小のとき、他方の通路
面積が大となるので、伸び側と縮み側とで大小異なる種
類の減衰力特性の組合せを選択することができる。 【0011】 【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。 【0012】図1および図2を用いて油圧緩衝器1につ
いて説明する。図1に示すように、シリンダ2内にはフ
リーピストン3が摺動可能に嵌挿されており、シリンダ
2内はフリーピストン3によりガス室4と油室5の2室
に画成されている。ガス室4には高圧ガスが封入されて
おり、油室5には油液が封入されている。 【0013】油室5には、油界画成部材としてのピスト
ン6が摺動可能に嵌挿されており、油室5はピストン6
により下室R1と上室R2とに画成されている。そのピスト
ン6にはピストンロッド7が連結されており、このピス
トンロッド7は上室R2を通ってシリンダ2外へ延出して
いる。 【0014】ピストン6には、下室R1と上室R2とを連通
する第1の連通路8と第2の連通路9とが設けられてい
る。このピストン6の上部には、ピストンロッド7の短
縮時に下室R1の圧力が高くなって下室R1と上室R2との圧
力差がある値になると、第1の連通路8を開く常閉の第
1の減衰弁10が取付けられ、他方、ピストン6の下部に
は、ピストンロッド7の伸長時に上室R2の圧力が高くな
って下室R1と上室R2との圧力差がある値になると、第2
の連通路9を開く常閉の第2の減衰弁11が取付けられて
いる。 【0015】ピストン6には、ピストンロッド7の軸心
を挟んで相対向する縮み側連通路としての第3の連通路
12と、伸び側連通路としての第4の連通路13とが形
成されている。第3、第4の連通路12,13はそれぞ
れ上室R2と下室R1とを連通している。第3、第4の
連通路12,13にはそれぞれチェック弁14,15が
設けられており、チェック弁14は下室R1から上室R
2への油液の流れのみを許容し、チェック弁15は上室
R2から下室R1への油液の流れのみを許容する。 【0016】ピストン6内部には、シャッタ部材として
円板状の可動板16がピストンロッド7の軸心を中心と
して回動可能に保持されており、可動板16の板面は第
3、第4の連通路12,13を横切っている。この可動
板16には同心状に一対の長孔17,18が穿設されて
おり、この一対の長孔17,18は相対向している。こ
の各長孔17,18は可動板16の周回り方向に延びて
おり、その一方の長孔17は、図2中、時計方向に向う
に従ってその開口面積が大きくなり、他方の長孔18
は、図2中、時計方向に向うに従ってその開口面積が小
さくなっている。そして、シャッタ部材としての可動板
16は、長孔17によって第3の連通路の通路面積を調
整する縮み側通路面積調整部を形成し、長孔18によっ
て第4の連通路13の通路面積を調整する伸び側通路面
積調整部を構成しており、可動板16をその軸心を中心
として回動させることにより、長孔17,18が第3、
第4の連通路12,13に臨んでその通路面積を連続的
に変化させられるようになっている。このときの減衰力
特性をは図3に示すようになる。 【0017】これを具体的に説明すれば、第3の連通路
12に例えば長孔17のb1点を臨ませ、第4の連通路13に長
孔18のb2点を臨ませた場合には、図3中、B1及びB2で示
すような立上がりの特性曲線を示し、第3の連通路12に
長孔17のa1点を臨ませ、第4の連通路13に長孔18のa2点
を臨ませた場合には、特性曲線B1よりも急激な立上がり
の特性曲線A1と、特性曲線B2よりも緩やかな立上がりの
特性曲線A2とを示し、第3の連通路12に長孔17のc1点を
臨ませ、第4の連通路13に長孔18のc2点を臨ませた場合
には、特性曲線B1よりも緩やかな立上がりの特性曲線C1
と、特性曲線B2よりも急激な立上がりの特性曲線C2とを
示すことになる。そして、この初期の立上がりの各減衰
力が所定値以上になると、第1,第2の減衰弁10,11が
開弁し、油圧緩衝器1は所定の各減衰力を示す。この第
1,第2の減衰弁10,11の開弁時点は、それぞれ各特性
曲線が折曲する点P1,P2に相当する。 【0018】可動板16には、その軸心において操作ロッ
ド19が連結されており、この操作ロッド19は回動可能に
ピストンロッド7をその軸心方向に貫通している。操作
ロッド19にはアクチュエータ20が連結されており、この
アクチュエータ20により操作ロッド19はその軸心を中心
として適宜回動可能となっている。 【0019】以上の構成により、アクチュエータ20で操
作ロッド19を操作して可動板16を回動させ、第3の連通
路12に長孔17のb1点を臨ませ、第4の連通路13に長孔18
のb2点を臨ませると、伸び側、縮み側共に中程度の減衰
力(特性曲線B1,B2参照)を発生するミディアム特性と
なり、第3の連通路12に長孔17のa1点を臨ませ、第4の
連通路13に長孔18のa2点を臨ませると、伸び側は小さな
減衰力(特性曲線A2参照)を発生するソフト特性、縮み
側は大きな減衰力(特性曲線A1参照)を発生するハード
特性となり、また、第3の連通路12に長孔17のc1点を臨
ませ、第4の連通路13に長孔18のc2点を臨ませると、伸
び側は大きな減衰力(特性曲線C2参照)発生するハード
特性、縮み側は小さな減衰力(特性曲線C1参照)を発生
するソフト特性となる。 【0020】このように、第3の連通路12と第4の連通
路13の通路面積を各々調整することによって、伸び側が
ソフト特性で縮み側がハード特性、伸び側がハード特性
で縮み側がソフト特性といったように伸び側と縮み側と
で異なる種類の減衰力特性を同時に選択することができ
る。 【0021】なお、本実施例の長孔17,18に代えて、可
動板16に第3、第4の連通路12,13に臨むことができる
開口面積の異なる複数のオリフィスを設け、このオリフ
ィスを選択することにより減衰力特性を切換えるように
してもよい。 【0022】次に、この油圧緩衝器1を用いた懸架装置
の一例について説明する。 【0023】図4〜図10において、21は車両で、この車
両21の車体22と車軸23とは懸架装置24を介して連結され
ており、車軸23には車輪25が連結されている。懸架装置
24は各車輪25毎に設けられており、図1はその懸架装置
24の一つを示している。 【0024】懸架装置24は、スプリングとしてのコイル
スプリング26と、緩衝器としての油圧緩衝器1と、検出
手段としての変位センサ27と、から概略構成されてい
る。コイルスプリング26は、その一端側内側が車軸23に
設けられたラバークッション28に嵌合保持されており、
コイルスプリング26の他端側内側は、ラバークッション
28に対向する車体22側に設けられたクッション受け29に
嵌合保持されている。 【0025】変位センサ27は車体22と車軸23との間に介
装されており、この変位センサ27は基準状態における車
体22と車軸23との間隔、すなわち、基準長Lに対する車
軸23との間隔の伸縮方向変位を検出する。基準長Lは、
車両21を平地に静置したときの、車体22と車軸23との間
隔としてもよいし、車両21を、所定の路面において所定
時間、走行させ、そのときの、車体22と車軸23との間隔
の平均値としてもよい。 【0026】各懸架装置24における各変位センサ27a ,
27b ,27c ,27d と各懸架装置24の各油圧緩衝器1にお
ける各アクチュエータ20a ,20b ,20c ,20d とは、図
5に示すように制御回路30を介して接続されている。制
御回路30は各変位センサ27a〜27d からの検出信号に基
き、対応する各アクチュエータ20a 〜20d を制御する機
能を有する。すなわち、制御回路30は変位センサ27(以
下、各変位センサの一つと、その変位センサと対応する
アクチュエータについて説明する。)からの検出信号に
基き、コイルスプリング26のばね力Fsを、その大きさと
方向について算出すると共に、基準長Lに対する車体22
と車軸23との間隔の時間的伸縮変化、すなわちサスペン
ション速度(ピストン速度)を算出し、次いで、このサ
スペンション速度により次式に基き、油圧緩衝器1の減
衰力Faを算出する。 Fa=K×重力加速度×ピストン速度 (Kg・m/sec2) K=係数 【0027】そして、制御回路30は、ばね力Fsの作用方
向と減衰力Faの作用方向とを比較する。ここで、ばね力
Fsの作用方向は、基準長Lよりもコイルスプリング26の
軸心方向長さが短いときには、該コイルスプリング26の
伸びる方向となり、基準長Lよりもコイルスプリング26
の軸心方向長さが長いときには、該コイルスプリング26
の縮む方向となる。また、減衰力Faの作用方向は、ピス
トンロッド16の伸長時にはピストンロッド16の短縮方向
となり、ピストンロッド16の短縮時にはピストンロッド
16の伸長方向となる。 【0028】制御回路30がばね力Fsの作用方向と減衰力
Faの作用方向とを比較して両者が同一であると判断した
場合には、該制御回路30はアクチュエータ20を作動させ
て可動板16を回動させ、減衰力Faを生じないように所定
の長孔17若しくは18の所定位置を第3の連通路12若しく
は第4の連通路13に臨ませる。制御回路30がばね力Fsの
作用方向と減衰力Faの作用方向とを比較して両者が相反
すると判断した場合には、該制御回路30はアクチュエー
タ20を作動させて可動板16を回動させ、減衰力Faの大き
さをばね力Fsの大きさに等しくなるように所定の長孔17
若しくは18の所定位置を第3の連通路12若しくは第4の
連通路13に臨ませる。この詳細は後述する。 【0029】次に、図6に示すように車両21が路面31上
の凸部31a を走行する場合を例にとって上記構成の作用
について説明する。 【0030】計算にあたっては図7に示すように懸架装
置24をモデル化することにより行ない、このモデルにお
いて、 車体質量M= 300Kg コイルスプリング26のばね定数 k=1207×重力加速度 (Kgm /sec2・m) とし、油圧緩衝器については減衰力Faが次の式で求めら
れる3つのタイプを用いた。 (a) Fa=Ka×重力加速度×ピストン速度 (Kgm /se
c2) Ka=−20 (b) Fa=Kb×重力加速度×ピストン速度 (Kgm /se
c2) Kb=−200 (c) Fa=Kc×重力加速度×ピストン速度 (Kgm /se
c2) Kc=−20〜−300 (a) は、減衰力Faがほとんど零の場合であり、(b) は、
従来の懸架装置の場合であり、(c) は、本発明に係る懸
架装置の場合であって減衰力Faのとり得る範囲を示して
いる。 【0031】そして、車体22の上下加速度αは上記関係
に基いて次の式により求める。 α=(Fa+Fs)/M この結果については上記油圧緩衝器のタイプ(a) ,(b)
,(c) 毎に図8,図9,図10に示す。 【0032】以下、各図における4つの区間A,B,
C,Dに基いて説明する。 【0033】(I)区間Aについて 車両21が路面31の凸部31a に乗り上げると、コイルスプ
リング26も油圧緩衝器1も縮められることになり、図9
においてはコイルスプリング26にばね力Fsが生じ、油圧
緩衝器1には減衰力Faが発生する。このとき、ばね力Fs
も減衰力Faも図7中、上方に、向って作用するため、そ
の総和に基いて車体22の上下加速度αが求められること
になり、図9における車体22の上下加速度αは図8にお
ける車体22の上下加速度αよりも大きくなる。 【0034】一方、図10においては、コイルスプリング
26と油圧緩衝器1のピストンロッド7が縮み始めると、
第3の連通路12に長孔17のc1点が臨み、第4の連通路
13には長孔27のc2点が臨む。このため、油圧緩衝器1
においては、ピストンロッド7の短縮時に極めて減衰力
Faが小さくなり(図3中、C1)、車体22の変動はほとん
どばね力Fsによって支配される。そのため、車体22の上
下加速度αはばね力Fsに基いて定まることになり、その
値は図8の場合と略等しくなる。 【0035】(II)区間Bについて 車両21が区間Aと区間Bとの境界に至ると、車体22と車
軸23との間隔が復元し始めることになり、コイルスプリ
ング26も油圧緩衝器1のピストンロッド7も伸ばされる
ことになる。このとき、コイルスプリング26が基準長L
よりも短くなっていることから、そのばね力Fsは、図
中、上方に向って作用しており、油圧緩衝器1において
はピストンロッド7が伸張するに伴いその減衰力Faは、
図中、下方に向って作用することになる。このように、
ばね力Fsと減衰力Faの方向が相反することから、図9、
図10の場合においてはばね力Fsと減衰力Faとは互いに打
ち消し合おうとする。 【0036】しかし、図9の場合には、ばね力Fsを完全
に打ち消す目的をもって減衰力Faが設定されていないた
め、ばね力Fsと減衰力Faとの総和は大きくなり、車体22
の上下加速度αしだいに大きくなる。 【0037】これに対して、図10の場合には、すでに区
間Aのときにおいて、第4の連通路13に長孔18のc2点が
臨んでおり、このときのピストンロッド7の伸張時には
減衰力Faは極めて大きくなる(図3中、C2)。この減衰
力Faは区間Bにおけるばね力Fsに略等しくなるように調
整され、減衰力Faをばね力Fsに等しくするためにばね力
Fsの変化に対応して可動板16は、図2中、時計方向に若
干回動する。このため、ばね力Fsと減衰力Faとの総和
は、それぞれの方向が相反することから略完全に打ち消
し合い、車体22の上下加速度αは略零になる。 【0038】(III) 区間Cについて 区間Bと区間Cとの境界においては、車体22と車軸23と
の間隔が基準長Lとなるが、区間Cに入ると、コイルス
プリング26も油圧緩衝器1のピストンロッド7も伸ばさ
れることになる。このとき、図9の場合には、コイルス
プリング26が基準長Lよりも長くなっていることから、
そのばね力Fsは、図中、下方に向って作用しており、油
圧緩衝器1においてはピストンロッド7が伸張すること
から、その減衰力Faは、図中、下方に向って作用するこ
とになる。このため、前記両者Fs及びFaの総和は大きく
なり、車体22の上下加速度αは、図8の場合に比べて大
きくなる。 【0039】これに対して図10の場合には、コイルスプ
リング26と油圧緩衝器1のピストンロッド7が伸び始め
ると、可動板16が回動して第4の連通路13に長孔18のa2
点が臨み、第3の連通路12に長孔17のa1点が臨むことに
なる。このため、油圧緩衝器1においては、ピストンロ
ッド7の伸張時に極めて減衰力Faが小さくなり、(図3
中、A2)、車体22の変動はほとんどばね力Fsによって支
配される。そのため、車体22の上下加速度αはばね力Fs
に基いて定まることになり、その値は、図8の場合と略
等しくなり、且つ図9の場合よりも小さくなる。 【0040】(IV)区間Dについて 区間Cから区間Dに入ると、車体22と車軸23との間隔が
復元し始めることになり、コイルスプリング26も油圧緩
衝器1のピストンロッド7も縮むことになる。このと
き、コイルスプリング26が基準長Lよりも長くなってい
ることから、そのばね力Fsは、図中、下方に向って作用
しており、油圧緩衝器1においてはピストンロッド7が
短縮するに伴い、その減衰力Faは、図中、上方に向って
作用することになる。このように、ばね力Fsと減衰力Fa
の方向が相反することから、図9,図10の場合において
はばね力Fsと減衰力Faとは互いに打ち消し合おうとす
る。 【0041】しかし、図9の場合には、ばね力Fsを完全
に打ち消す目的をもって減衰力Faが設定されていないた
め、ばね力Fsと減衰力Faとの総和は大きくなり、車体22
の上下加速度αは大きくなる。 【0042】これに対して、図10の場合には、すでに区
間Aのときにおいて、第3の連通路12に長孔17のa1点が
臨んでおり、このときのピストンロッド7の短縮時には
減衰力Faは極めて大きくなる(図3中、A1)。この減衰
力Faは区間Dにおけるばね力Fsに略等しくなるように調
整され、減衰力Faをばね力Fsに等しくするためにばね力
Fsの変化に対応して可動板16は、図2中、反時計方向に
若干回動する。このため、ばね力Fsと減衰力Faとの総和
は、それぞれの方向が相反することから略完全に打ち消
し合い、車体22の上下加速度αは略零になる。 【0043】このように、区間A〜Dを1サイクルとし
て車体22の上下加速度αが極めて小さくされており、そ
の上下加速度αにより乗員が不快感を感じることはなく
なる。 【0044】以上、一実施例について説明したが、次の
ような態様とすることもできる。 【0045】ばね力Fsを検出するために、コイルスプ
リング26の取付け部やスプリング自身のひずみを検出し
てもよい。 【0046】ピストン速度(サスペンション速度)を
検出するために、速度そのものを直接検出してもよい。 【0047】重錘の慣性力を利用した加速度センサを
用いて、車体22の上下加速度αを検出し、その検出状態
に応じて油圧緩衝器1の減衰力Faを制御するようなフィ
ードバック制御を行なってもよい。 【0048】油圧緩衝器1の取り付け部におけるひず
み等を検出して、車体22の上下加速度αを検出しても良
い。 【0049】スプリングは、減衰作用を有するリーフ
スプリング、エアスプリング等であってもよい。 【0050】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明の油圧緩衝
器は、シリンダ内の2室を各々チェック弁を有する伸び
側連通路および縮み側連通路で連通させ、伸び側連通路
の通路面積の大小を調整する伸び側通路面積調整部およ
び縮み側連通路の通路面積の大小を調整する縮み側通路
面積調整部を設けたので、ピストンロッドの伸び側の移
動時には、チェック弁によって縮み側連通路の流通が阻
止され、油液が伸び側連通路を流通するので、伸び側連
通路面積調整部により、前記伸び側連通路の通路面積を
調整して伸び側の減衰力が調整でき、また、ピストンロ
ッドの縮み側の移動時には、チェック弁によって伸び側
連通路の流通が阻止され、油液が縮み側連通路を流通す
るので、縮み側通路面積調整部により、前記縮み側連通
路の通路面積を調整して縮み側の減衰力を調整でき、こ
れにより伸び側と縮み側の減衰力特性を互いに影響する
ことなくそれぞれ自由に設定することができる。そし
て、1つのアクチュエータによって、伸び側および縮み
側通路面積調整部を駆動することにより、伸び側連通路
および縮み側連通路の通路面積を同時に調整することが
でき、このとき、伸び側連通路および縮み側連通路は、
一方の通路面積が大のとき、他方の通路面積が小とな
り、一方の通路面積が小のとき、他方の通路面積が大と
なるので、伸び側がソフト特性で縮み側がハード特性、
伸び側がハード特性で縮み側がソフト特性といったよう
に伸び側と縮み側とで大小異なる種類の減衰力特性の組
合せを選択することができ、減衰力特性の選択範囲を広
げることができるという優れた効果を奏する。
装置に装着される油圧緩衝器に関するものである。 【0002】 【従来の技術】自動車等の車両の懸架装置に装着される
油圧緩衝器には、路面状況、走行状況等に応じて乗り心
地や操縦安定性をよくするために減衰力特性を適宜調整
できるようにした減衰力調整式油圧緩衝器がある。 【0003】従来、減衰力調整式油圧緩衝器としては、
油液が封入されたシリンダ内に、ピストンロッドが連結
されたピストンを摺動可能に嵌装し、ピストンロッドの
一端をシリンダの外部まで延出させ、このピストンによ
り画成されるシリンダ内の2室をピストン部に設けた主
油液通路およびバイパス通路で連通させ、さらに、バイ
パス通路の通路面積を切換えるシャッタ機構を設けた構
成としたものが知られている。 【0004】この構成により、シャッタ機構を操作して
バイパス通路の通路面積を切換えることによって減衰力
特性(オリフィス特性)を調整することができる。 【0005】また、伸び側の減衰力と縮み側の減衰力を
異ならせるために、バイパス通路中に常時連通するオリ
フィスを有するチェック弁を設けたものが実開昭58−
92537号公報に示されている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の減衰力調整式油圧緩衝器では、シリンダ内の油液は
ピストンロッドの伸び、縮み行程共に同一のバイパス通
路を流通するので、バイパス通路の通路面積を切換える
ことにより、伸び側、縮み側共に同様の減衰力特性に切
換わることになる。よって、伸び側と縮み側とで異なる
種類の減衰力特性を同時に選択することができない。 【0007】また、バイパス通路中にチェック弁を設け
たものであっても、伸び側と縮み側とで異なる減衰力特
性を得ることは可能であるが、油液が伸び、縮み行程共
にバイパス通路中の同一のオリフィスを流通するので、
チェック弁の閉じる側の減衰力特性を決めると、チェッ
ク弁の開く側の減衰力特性は常にチェック弁の閉じる側
の減衰力特性より低い減衰力特性しか得ることができな
い。よって、伸び側の減衰力特性と縮み側の減衰力特性
とを互いに影響することなく自由に設定することができ
ない。 【0008】本発明は、上記の点に鑑みてなされたもの
であり、伸び側の減衰力特性と縮み側の減衰力特性とを
互いに影響することなく自由に設定することができる減
衰力調整式油圧緩衝器を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明の油圧緩衝器は、
上記の課題を解決するために、油液が封入されたシリン
ダと、該シリンダ内に一端が挿入され他端が突出したピ
ストンロッドと、該シリンダ内を2室に画成する油界画
成部材と、前記シリンダ内の2室を連通し、前記ピスト
ンロッドの伸び側の移動により生じる油液の流通を許す
チェック弁を有する伸び側連通路と、前記シリンダ内の
2室を連通し、前記ピストンロッドの縮み側の移動によ
り生じる油液の流通を許すチェック弁を有する縮み側連
通路と、前記伸び側連通路の通路面積の大小を調整する
伸び側通路面積調整部および前記縮み側連通路の通路面
積の大小を調整する縮み側通路面積調整部と、該伸び側
および縮み側通路面積調整部を駆動する1つのアクチュ
エータとを備え、 前記伸び側および縮み側通路面積調整
部は、前記アクチュエータの駆動により、前記伸び側連
通路の通路面積を大きくしたとき、前記縮み側連通路の
通路面積を小さくし、前記伸び側連通路の通路面積を小
さくしたとき、前記縮み側連通路の通路面積を大きくす
ることを特徴とする。 【0010】 【作用】この構成により、ピストンロッドの伸び側の移
動時には、チェック弁によって縮み側連通路の流通が阻
止されて、油液が伸び側連通路を流通するので、伸び側
通路面積調整部によって減衰力が調整され、ピストンロ
ッドの縮み側の移動時には、チェック弁によって伸び側
連通路の流通が阻止されて、油液が縮み側連通路を流通
するので、縮み側通路面積調整部によって減衰力が調整
される。そして、1つのアクチュエータによって、伸び
側および縮み側通路面積調整部を駆動することにより、
伸び側連通路および縮み側連通路の通路面積を同時に調
整することができ、このとき、伸び側連通路および縮み
側連通路は、一方の通路面積が大のとき、他方の通路面
積が小となり、一方の通路面積が小のとき、他方の通路
面積が大となるので、伸び側と縮み側とで大小異なる種
類の減衰力特性の組合せを選択することができる。 【0011】 【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。 【0012】図1および図2を用いて油圧緩衝器1につ
いて説明する。図1に示すように、シリンダ2内にはフ
リーピストン3が摺動可能に嵌挿されており、シリンダ
2内はフリーピストン3によりガス室4と油室5の2室
に画成されている。ガス室4には高圧ガスが封入されて
おり、油室5には油液が封入されている。 【0013】油室5には、油界画成部材としてのピスト
ン6が摺動可能に嵌挿されており、油室5はピストン6
により下室R1と上室R2とに画成されている。そのピスト
ン6にはピストンロッド7が連結されており、このピス
トンロッド7は上室R2を通ってシリンダ2外へ延出して
いる。 【0014】ピストン6には、下室R1と上室R2とを連通
する第1の連通路8と第2の連通路9とが設けられてい
る。このピストン6の上部には、ピストンロッド7の短
縮時に下室R1の圧力が高くなって下室R1と上室R2との圧
力差がある値になると、第1の連通路8を開く常閉の第
1の減衰弁10が取付けられ、他方、ピストン6の下部に
は、ピストンロッド7の伸長時に上室R2の圧力が高くな
って下室R1と上室R2との圧力差がある値になると、第2
の連通路9を開く常閉の第2の減衰弁11が取付けられて
いる。 【0015】ピストン6には、ピストンロッド7の軸心
を挟んで相対向する縮み側連通路としての第3の連通路
12と、伸び側連通路としての第4の連通路13とが形
成されている。第3、第4の連通路12,13はそれぞ
れ上室R2と下室R1とを連通している。第3、第4の
連通路12,13にはそれぞれチェック弁14,15が
設けられており、チェック弁14は下室R1から上室R
2への油液の流れのみを許容し、チェック弁15は上室
R2から下室R1への油液の流れのみを許容する。 【0016】ピストン6内部には、シャッタ部材として
円板状の可動板16がピストンロッド7の軸心を中心と
して回動可能に保持されており、可動板16の板面は第
3、第4の連通路12,13を横切っている。この可動
板16には同心状に一対の長孔17,18が穿設されて
おり、この一対の長孔17,18は相対向している。こ
の各長孔17,18は可動板16の周回り方向に延びて
おり、その一方の長孔17は、図2中、時計方向に向う
に従ってその開口面積が大きくなり、他方の長孔18
は、図2中、時計方向に向うに従ってその開口面積が小
さくなっている。そして、シャッタ部材としての可動板
16は、長孔17によって第3の連通路の通路面積を調
整する縮み側通路面積調整部を形成し、長孔18によっ
て第4の連通路13の通路面積を調整する伸び側通路面
積調整部を構成しており、可動板16をその軸心を中心
として回動させることにより、長孔17,18が第3、
第4の連通路12,13に臨んでその通路面積を連続的
に変化させられるようになっている。このときの減衰力
特性をは図3に示すようになる。 【0017】これを具体的に説明すれば、第3の連通路
12に例えば長孔17のb1点を臨ませ、第4の連通路13に長
孔18のb2点を臨ませた場合には、図3中、B1及びB2で示
すような立上がりの特性曲線を示し、第3の連通路12に
長孔17のa1点を臨ませ、第4の連通路13に長孔18のa2点
を臨ませた場合には、特性曲線B1よりも急激な立上がり
の特性曲線A1と、特性曲線B2よりも緩やかな立上がりの
特性曲線A2とを示し、第3の連通路12に長孔17のc1点を
臨ませ、第4の連通路13に長孔18のc2点を臨ませた場合
には、特性曲線B1よりも緩やかな立上がりの特性曲線C1
と、特性曲線B2よりも急激な立上がりの特性曲線C2とを
示すことになる。そして、この初期の立上がりの各減衰
力が所定値以上になると、第1,第2の減衰弁10,11が
開弁し、油圧緩衝器1は所定の各減衰力を示す。この第
1,第2の減衰弁10,11の開弁時点は、それぞれ各特性
曲線が折曲する点P1,P2に相当する。 【0018】可動板16には、その軸心において操作ロッ
ド19が連結されており、この操作ロッド19は回動可能に
ピストンロッド7をその軸心方向に貫通している。操作
ロッド19にはアクチュエータ20が連結されており、この
アクチュエータ20により操作ロッド19はその軸心を中心
として適宜回動可能となっている。 【0019】以上の構成により、アクチュエータ20で操
作ロッド19を操作して可動板16を回動させ、第3の連通
路12に長孔17のb1点を臨ませ、第4の連通路13に長孔18
のb2点を臨ませると、伸び側、縮み側共に中程度の減衰
力(特性曲線B1,B2参照)を発生するミディアム特性と
なり、第3の連通路12に長孔17のa1点を臨ませ、第4の
連通路13に長孔18のa2点を臨ませると、伸び側は小さな
減衰力(特性曲線A2参照)を発生するソフト特性、縮み
側は大きな減衰力(特性曲線A1参照)を発生するハード
特性となり、また、第3の連通路12に長孔17のc1点を臨
ませ、第4の連通路13に長孔18のc2点を臨ませると、伸
び側は大きな減衰力(特性曲線C2参照)発生するハード
特性、縮み側は小さな減衰力(特性曲線C1参照)を発生
するソフト特性となる。 【0020】このように、第3の連通路12と第4の連通
路13の通路面積を各々調整することによって、伸び側が
ソフト特性で縮み側がハード特性、伸び側がハード特性
で縮み側がソフト特性といったように伸び側と縮み側と
で異なる種類の減衰力特性を同時に選択することができ
る。 【0021】なお、本実施例の長孔17,18に代えて、可
動板16に第3、第4の連通路12,13に臨むことができる
開口面積の異なる複数のオリフィスを設け、このオリフ
ィスを選択することにより減衰力特性を切換えるように
してもよい。 【0022】次に、この油圧緩衝器1を用いた懸架装置
の一例について説明する。 【0023】図4〜図10において、21は車両で、この車
両21の車体22と車軸23とは懸架装置24を介して連結され
ており、車軸23には車輪25が連結されている。懸架装置
24は各車輪25毎に設けられており、図1はその懸架装置
24の一つを示している。 【0024】懸架装置24は、スプリングとしてのコイル
スプリング26と、緩衝器としての油圧緩衝器1と、検出
手段としての変位センサ27と、から概略構成されてい
る。コイルスプリング26は、その一端側内側が車軸23に
設けられたラバークッション28に嵌合保持されており、
コイルスプリング26の他端側内側は、ラバークッション
28に対向する車体22側に設けられたクッション受け29に
嵌合保持されている。 【0025】変位センサ27は車体22と車軸23との間に介
装されており、この変位センサ27は基準状態における車
体22と車軸23との間隔、すなわち、基準長Lに対する車
軸23との間隔の伸縮方向変位を検出する。基準長Lは、
車両21を平地に静置したときの、車体22と車軸23との間
隔としてもよいし、車両21を、所定の路面において所定
時間、走行させ、そのときの、車体22と車軸23との間隔
の平均値としてもよい。 【0026】各懸架装置24における各変位センサ27a ,
27b ,27c ,27d と各懸架装置24の各油圧緩衝器1にお
ける各アクチュエータ20a ,20b ,20c ,20d とは、図
5に示すように制御回路30を介して接続されている。制
御回路30は各変位センサ27a〜27d からの検出信号に基
き、対応する各アクチュエータ20a 〜20d を制御する機
能を有する。すなわち、制御回路30は変位センサ27(以
下、各変位センサの一つと、その変位センサと対応する
アクチュエータについて説明する。)からの検出信号に
基き、コイルスプリング26のばね力Fsを、その大きさと
方向について算出すると共に、基準長Lに対する車体22
と車軸23との間隔の時間的伸縮変化、すなわちサスペン
ション速度(ピストン速度)を算出し、次いで、このサ
スペンション速度により次式に基き、油圧緩衝器1の減
衰力Faを算出する。 Fa=K×重力加速度×ピストン速度 (Kg・m/sec2) K=係数 【0027】そして、制御回路30は、ばね力Fsの作用方
向と減衰力Faの作用方向とを比較する。ここで、ばね力
Fsの作用方向は、基準長Lよりもコイルスプリング26の
軸心方向長さが短いときには、該コイルスプリング26の
伸びる方向となり、基準長Lよりもコイルスプリング26
の軸心方向長さが長いときには、該コイルスプリング26
の縮む方向となる。また、減衰力Faの作用方向は、ピス
トンロッド16の伸長時にはピストンロッド16の短縮方向
となり、ピストンロッド16の短縮時にはピストンロッド
16の伸長方向となる。 【0028】制御回路30がばね力Fsの作用方向と減衰力
Faの作用方向とを比較して両者が同一であると判断した
場合には、該制御回路30はアクチュエータ20を作動させ
て可動板16を回動させ、減衰力Faを生じないように所定
の長孔17若しくは18の所定位置を第3の連通路12若しく
は第4の連通路13に臨ませる。制御回路30がばね力Fsの
作用方向と減衰力Faの作用方向とを比較して両者が相反
すると判断した場合には、該制御回路30はアクチュエー
タ20を作動させて可動板16を回動させ、減衰力Faの大き
さをばね力Fsの大きさに等しくなるように所定の長孔17
若しくは18の所定位置を第3の連通路12若しくは第4の
連通路13に臨ませる。この詳細は後述する。 【0029】次に、図6に示すように車両21が路面31上
の凸部31a を走行する場合を例にとって上記構成の作用
について説明する。 【0030】計算にあたっては図7に示すように懸架装
置24をモデル化することにより行ない、このモデルにお
いて、 車体質量M= 300Kg コイルスプリング26のばね定数 k=1207×重力加速度 (Kgm /sec2・m) とし、油圧緩衝器については減衰力Faが次の式で求めら
れる3つのタイプを用いた。 (a) Fa=Ka×重力加速度×ピストン速度 (Kgm /se
c2) Ka=−20 (b) Fa=Kb×重力加速度×ピストン速度 (Kgm /se
c2) Kb=−200 (c) Fa=Kc×重力加速度×ピストン速度 (Kgm /se
c2) Kc=−20〜−300 (a) は、減衰力Faがほとんど零の場合であり、(b) は、
従来の懸架装置の場合であり、(c) は、本発明に係る懸
架装置の場合であって減衰力Faのとり得る範囲を示して
いる。 【0031】そして、車体22の上下加速度αは上記関係
に基いて次の式により求める。 α=(Fa+Fs)/M この結果については上記油圧緩衝器のタイプ(a) ,(b)
,(c) 毎に図8,図9,図10に示す。 【0032】以下、各図における4つの区間A,B,
C,Dに基いて説明する。 【0033】(I)区間Aについて 車両21が路面31の凸部31a に乗り上げると、コイルスプ
リング26も油圧緩衝器1も縮められることになり、図9
においてはコイルスプリング26にばね力Fsが生じ、油圧
緩衝器1には減衰力Faが発生する。このとき、ばね力Fs
も減衰力Faも図7中、上方に、向って作用するため、そ
の総和に基いて車体22の上下加速度αが求められること
になり、図9における車体22の上下加速度αは図8にお
ける車体22の上下加速度αよりも大きくなる。 【0034】一方、図10においては、コイルスプリング
26と油圧緩衝器1のピストンロッド7が縮み始めると、
第3の連通路12に長孔17のc1点が臨み、第4の連通路
13には長孔27のc2点が臨む。このため、油圧緩衝器1
においては、ピストンロッド7の短縮時に極めて減衰力
Faが小さくなり(図3中、C1)、車体22の変動はほとん
どばね力Fsによって支配される。そのため、車体22の上
下加速度αはばね力Fsに基いて定まることになり、その
値は図8の場合と略等しくなる。 【0035】(II)区間Bについて 車両21が区間Aと区間Bとの境界に至ると、車体22と車
軸23との間隔が復元し始めることになり、コイルスプリ
ング26も油圧緩衝器1のピストンロッド7も伸ばされる
ことになる。このとき、コイルスプリング26が基準長L
よりも短くなっていることから、そのばね力Fsは、図
中、上方に向って作用しており、油圧緩衝器1において
はピストンロッド7が伸張するに伴いその減衰力Faは、
図中、下方に向って作用することになる。このように、
ばね力Fsと減衰力Faの方向が相反することから、図9、
図10の場合においてはばね力Fsと減衰力Faとは互いに打
ち消し合おうとする。 【0036】しかし、図9の場合には、ばね力Fsを完全
に打ち消す目的をもって減衰力Faが設定されていないた
め、ばね力Fsと減衰力Faとの総和は大きくなり、車体22
の上下加速度αしだいに大きくなる。 【0037】これに対して、図10の場合には、すでに区
間Aのときにおいて、第4の連通路13に長孔18のc2点が
臨んでおり、このときのピストンロッド7の伸張時には
減衰力Faは極めて大きくなる(図3中、C2)。この減衰
力Faは区間Bにおけるばね力Fsに略等しくなるように調
整され、減衰力Faをばね力Fsに等しくするためにばね力
Fsの変化に対応して可動板16は、図2中、時計方向に若
干回動する。このため、ばね力Fsと減衰力Faとの総和
は、それぞれの方向が相反することから略完全に打ち消
し合い、車体22の上下加速度αは略零になる。 【0038】(III) 区間Cについて 区間Bと区間Cとの境界においては、車体22と車軸23と
の間隔が基準長Lとなるが、区間Cに入ると、コイルス
プリング26も油圧緩衝器1のピストンロッド7も伸ばさ
れることになる。このとき、図9の場合には、コイルス
プリング26が基準長Lよりも長くなっていることから、
そのばね力Fsは、図中、下方に向って作用しており、油
圧緩衝器1においてはピストンロッド7が伸張すること
から、その減衰力Faは、図中、下方に向って作用するこ
とになる。このため、前記両者Fs及びFaの総和は大きく
なり、車体22の上下加速度αは、図8の場合に比べて大
きくなる。 【0039】これに対して図10の場合には、コイルスプ
リング26と油圧緩衝器1のピストンロッド7が伸び始め
ると、可動板16が回動して第4の連通路13に長孔18のa2
点が臨み、第3の連通路12に長孔17のa1点が臨むことに
なる。このため、油圧緩衝器1においては、ピストンロ
ッド7の伸張時に極めて減衰力Faが小さくなり、(図3
中、A2)、車体22の変動はほとんどばね力Fsによって支
配される。そのため、車体22の上下加速度αはばね力Fs
に基いて定まることになり、その値は、図8の場合と略
等しくなり、且つ図9の場合よりも小さくなる。 【0040】(IV)区間Dについて 区間Cから区間Dに入ると、車体22と車軸23との間隔が
復元し始めることになり、コイルスプリング26も油圧緩
衝器1のピストンロッド7も縮むことになる。このと
き、コイルスプリング26が基準長Lよりも長くなってい
ることから、そのばね力Fsは、図中、下方に向って作用
しており、油圧緩衝器1においてはピストンロッド7が
短縮するに伴い、その減衰力Faは、図中、上方に向って
作用することになる。このように、ばね力Fsと減衰力Fa
の方向が相反することから、図9,図10の場合において
はばね力Fsと減衰力Faとは互いに打ち消し合おうとす
る。 【0041】しかし、図9の場合には、ばね力Fsを完全
に打ち消す目的をもって減衰力Faが設定されていないた
め、ばね力Fsと減衰力Faとの総和は大きくなり、車体22
の上下加速度αは大きくなる。 【0042】これに対して、図10の場合には、すでに区
間Aのときにおいて、第3の連通路12に長孔17のa1点が
臨んでおり、このときのピストンロッド7の短縮時には
減衰力Faは極めて大きくなる(図3中、A1)。この減衰
力Faは区間Dにおけるばね力Fsに略等しくなるように調
整され、減衰力Faをばね力Fsに等しくするためにばね力
Fsの変化に対応して可動板16は、図2中、反時計方向に
若干回動する。このため、ばね力Fsと減衰力Faとの総和
は、それぞれの方向が相反することから略完全に打ち消
し合い、車体22の上下加速度αは略零になる。 【0043】このように、区間A〜Dを1サイクルとし
て車体22の上下加速度αが極めて小さくされており、そ
の上下加速度αにより乗員が不快感を感じることはなく
なる。 【0044】以上、一実施例について説明したが、次の
ような態様とすることもできる。 【0045】ばね力Fsを検出するために、コイルスプ
リング26の取付け部やスプリング自身のひずみを検出し
てもよい。 【0046】ピストン速度(サスペンション速度)を
検出するために、速度そのものを直接検出してもよい。 【0047】重錘の慣性力を利用した加速度センサを
用いて、車体22の上下加速度αを検出し、その検出状態
に応じて油圧緩衝器1の減衰力Faを制御するようなフィ
ードバック制御を行なってもよい。 【0048】油圧緩衝器1の取り付け部におけるひず
み等を検出して、車体22の上下加速度αを検出しても良
い。 【0049】スプリングは、減衰作用を有するリーフ
スプリング、エアスプリング等であってもよい。 【0050】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明の油圧緩衝
器は、シリンダ内の2室を各々チェック弁を有する伸び
側連通路および縮み側連通路で連通させ、伸び側連通路
の通路面積の大小を調整する伸び側通路面積調整部およ
び縮み側連通路の通路面積の大小を調整する縮み側通路
面積調整部を設けたので、ピストンロッドの伸び側の移
動時には、チェック弁によって縮み側連通路の流通が阻
止され、油液が伸び側連通路を流通するので、伸び側連
通路面積調整部により、前記伸び側連通路の通路面積を
調整して伸び側の減衰力が調整でき、また、ピストンロ
ッドの縮み側の移動時には、チェック弁によって伸び側
連通路の流通が阻止され、油液が縮み側連通路を流通す
るので、縮み側通路面積調整部により、前記縮み側連通
路の通路面積を調整して縮み側の減衰力を調整でき、こ
れにより伸び側と縮み側の減衰力特性を互いに影響する
ことなくそれぞれ自由に設定することができる。そし
て、1つのアクチュエータによって、伸び側および縮み
側通路面積調整部を駆動することにより、伸び側連通路
および縮み側連通路の通路面積を同時に調整することが
でき、このとき、伸び側連通路および縮み側連通路は、
一方の通路面積が大のとき、他方の通路面積が小とな
り、一方の通路面積が小のとき、他方の通路面積が大と
なるので、伸び側がソフト特性で縮み側がハード特性、
伸び側がハード特性で縮み側がソフト特性といったよう
に伸び側と縮み側とで大小異なる種類の減衰力特性の組
合せを選択することができ、減衰力特性の選択範囲を広
げることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の正面の縦断面図である。
【図2】図1の装置のシャッタ機構を構成する可動板の
平面図である。 【図3】図1の装置の減衰力特性を示す図である。 【図4】図1の油圧緩衝器を装着した車両の懸架装置を
示す説明図である。 【図5】図4の装置の制御系統図である。 【図6】図4の車両の走行状態を示す説明図である。 【図7】コイルスプリング、油圧緩衝器および車体質量
を示す模式図である。 【図8】コイルスプリングに依存した場合の車両の懸架
装置の特性を示す図である。 【図9】コイルスプリングと油圧緩衝器とを用いた従来
の車両の懸架装置の特性を示す図である。 【図10】図4の懸架装置の特性を示す図である。 【符号の説明】 1 油圧緩衝器 2 シリンダ 6 ピストン(油界画成部材) 7 ピストンロッド 12 第3の連通路(連通路) 13 第4の連通路(連通路) 14,15 チェック弁 16 可動板(シャッタ機構) 29 アクチュエータ R1 下室 R2 上室
平面図である。 【図3】図1の装置の減衰力特性を示す図である。 【図4】図1の油圧緩衝器を装着した車両の懸架装置を
示す説明図である。 【図5】図4の装置の制御系統図である。 【図6】図4の車両の走行状態を示す説明図である。 【図7】コイルスプリング、油圧緩衝器および車体質量
を示す模式図である。 【図8】コイルスプリングに依存した場合の車両の懸架
装置の特性を示す図である。 【図9】コイルスプリングと油圧緩衝器とを用いた従来
の車両の懸架装置の特性を示す図である。 【図10】図4の懸架装置の特性を示す図である。 【符号の説明】 1 油圧緩衝器 2 シリンダ 6 ピストン(油界画成部材) 7 ピストンロッド 12 第3の連通路(連通路) 13 第4の連通路(連通路) 14,15 チェック弁 16 可動板(シャッタ機構) 29 アクチュエータ R1 下室 R2 上室
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.油液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に一端
が挿入され他端が突出したピストンロッドと、該シリン
ダ内を2室に画成する油界画成部材と、前記シリンダ内
の2室を連通し、前記ピストンロッドの伸び側の移動に
より生じる油液の流通を許すチェック弁を有する伸び側
連通路と、前記シリンダ内の2室を連通し、前記ピスト
ンロッドの縮み側の移動により生じる油液の流通を許す
チェック弁を有する縮み側連通路と、前記伸び側連通路
の通路面積の大小を調整する伸び側通路面積調整部およ
び前記縮み側連通路の通路面積の大小を調整する縮み側
通路面積調整部と、該伸び側および縮み側通路面積調整
部を駆動する1つのアクチュエータとを備え、前記伸び側および縮み側通路面積調整部は、前記アクチ
ュエータの駆動により、 前記伸び側連通路の通路面積を
大きくしたとき、前記縮み側連通路の通路面積を小さく
し、前記伸び側連通路の通路面積を小さくしたとき、前
記縮み側連通路の通路面積を大きくすることを特徴とす
る油圧緩衝器。 2.前記伸び側および縮み側通路面積調整部は、前記伸
び側連通路および前記縮み側連通路の通路面積の大小を
連続的に調整可能としたことを特徴とする請求項1に記
載の油圧緩衝器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4255838A JP2818989B2 (ja) | 1992-08-31 | 1992-08-31 | 油圧緩衝器 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4255838A JP2818989B2 (ja) | 1992-08-31 | 1992-08-31 | 油圧緩衝器 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP59197094A Division JPH0615287B2 (ja) | 1984-09-20 | 1984-09-20 | 懸架装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0624228A JPH0624228A (ja) | 1994-02-01 |
JP2818989B2 true JP2818989B2 (ja) | 1998-10-30 |
Family
ID=17284302
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4255838A Expired - Lifetime JP2818989B2 (ja) | 1992-08-31 | 1992-08-31 | 油圧緩衝器 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2818989B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP4870001B2 (ja) * | 2007-03-23 | 2012-02-08 | 株式会社ショーワ | 減衰力発生装置 |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5872744A (ja) * | 1981-10-28 | 1983-04-30 | Kayaba Ind Co Ltd | 複筒型油圧緩衝器の減衰力調整装置 |
JPS5869136U (ja) * | 1981-11-02 | 1983-05-11 | カヤバ工業株式会社 | 油圧緩衝器の減衰力調整装置 |
JPS5870533U (ja) * | 1981-11-06 | 1983-05-13 | トキコ株式会社 | 源衰力調整式油圧緩衝器 |
JPS5996439U (ja) * | 1982-12-20 | 1984-06-30 | トヨタ自動車株式会社 | シヨツクアブソ−バ |
JPS5998143U (ja) * | 1982-12-22 | 1984-07-03 | トヨタ自動車株式会社 | 油圧式シヨツクアブソ−バ |
-
1992
- 1992-08-31 JP JP4255838A patent/JP2818989B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0624228A (ja) | 1994-02-01 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
EXPY | Cancellation because of completion of term |