JP2817857B2 - 繊維状マグネシウムオキシサルフェートの製造方法 - Google Patents

繊維状マグネシウムオキシサルフェートの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は繊維状マグネシウムオキ
シサルフェートの製造方法に関する。この繊維状マグネ
シウムオキシサルフェートは、その繊維形態を生かして
樹脂用添加材、充填材あるいは濾過材料等の用途に好適
に利用できるMgSO・5Mg(OH)なる示性式
を有する繊維状無水マグネシウムオキシサルフェートの
原料となる。
【0002】
【従来の技術】マグネシウムオキシサルフェートには幾
つか構造が異なるものが知られており、既に繊維状のM
gSO・5Mg(OH)・3HOが樹脂用の補強
材等に使用されている。また、MgSO・5Mg(O
H)・8HOも同様の繊維形態を持っており、その
製造法として酸化マグネシウムと硫酸マグネシウム水溶
液から直接合成する方法が知られているが、工業的に製
造を行う場合、反応率、コスト等の面で不十分な点が多
い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者はこのような
MgSO・5Mg(OH)・8HOなる示性式を
有する繊維状マグネシウムオキシサルフェートの製造時
の反応率の向上、コストの低減を達成すべく鋭意検討し
た結果、マグネシウムオキシサルフェートの一種である
2MgSO・Mg(OH)・3HOを反応中間物
質とすることで、マグネシウム原料としてより安価な水
酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムから高い反応
率で短時間に繊維状のMgSO・5Mg(OH)
8HOが得られることを見出し本発明に到達したもの
である。
【0004】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明によれ
ば、先ず硫酸マグネシウム水溶液に水酸化マグネシウム
または酸化マグネシウムを分散させた後、水熱反応を行
って反応中間物質となる2MgSO・Mg(OH)
・3HOスラリーを合成する。次に、これに必要量の
水あるいは硫酸マグネシウム水溶液を加え急激に冷却且
つ希釈し、2MgSO・Mg(OH)・3HOを
分解し繊維状のMgSO・5Mg(OH)・8H
Oを得る。
【0005】次に、本発明を更に詳しく説明する。先
ず、硫酸マグネシウム水溶液に水酸化マグネシウムまた
は酸化マグネシウムを分散させる。分散量は余り多すぎ
ると生成した2MgSO・Mg(OH)・3H
スラリーの粘度が上昇し攪拌が困難になるため、濃度が
10重量%以下になるように、好ましくは、1〜5重量
%になるように分散させる。
【0006】水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウ
ムを分散させる硫酸マグネシウム水溶液の濃度は、反応
温度及び水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムの
濃度に依存するが、その濃度が1.5〜5.0モル/リ
ットル、好ましくは2.0〜4.0モル/リットルにな
るように調製する。硫酸マグネシウムの濃度が1.5モ
ル/リットル未満であると高い反応温度が必要になり、
また生成した2MgSO・Mg(OH)・3H
の安定性が悪化する。逆に硫酸マグネシウムの濃度が
5.0モル/リットルを超えると主に経済的な理由から
好ましくない。反応系には硫酸マグネシウムと水酸化マ
グネシウムが共存していれば良いので、必要な硫酸マグ
ネシウムは硫酸と水酸化マグネシウムから得ることもで
きる。
【0007】水熱反応の温度は100〜200℃、好ま
しくは130〜180℃、圧力は1〜15kg/c
、好ましくは3〜10kg/cmである。反応温
度が100℃未満であると、必要な硫酸マグネシウムの
濃度は高くなり、反応時間も長くなる。反応温度が20
0℃を超えると主に経済的な理由から好ましくない。
【0008】また、この反応は固液反応であるため固液
が十分接触するように攪拌下で行うのが好ましく、反応
時間は条件によって異なるが通常0.1〜5時間が適当
である。
【0009】このようにして得られる2MgSO・M
g(OH)・3HOは長さ数ミクロン〜30ミクロ
ン、直径0.1ミクロン〜10ミクロン、針状の不安定
な化合物であり、本発明では反応中間物質として用い
る。
【0010】2MgSO・Mg(OH)・3H
は硫酸マグネシウム水溶液の濃度と温度の低下と共に分
解し、MgSO・5Mg(OH)・3HO、Mg
(OH)、MgSO・5Mg(OH)・8H
O、MgSO・3Mg(OH)・8HO等に変
化する。
【0011】生成する化合物は硫酸マグネシウム水溶液
の濃度と温度に依存するため、濃度と温度を調製すれば
任意の化合物が得られるが、それぞれを単独に得ようと
する場合、2MgSO・Mg(OH)・3HOの
安定性を考慮する必要がある。すなわち、目的とする化
合物を得るためには、その生成条件にまで2MgSO
・Mg(OH)・3HOスラリーの硫酸マグネシウ
ム濃度及び温度を下げる必要があるが、この操作に時間
がかかると、途中で目的外の化合物が生成する。特に、
100℃以下では分解が速やかに起こるため、100℃
以下での操作はできる限り短時間に行う必要がある。
【0012】本発明者は、鋭意検討の結果、2MgSO
・Mg(OH)・3HOスラリーに必要量の水あ
るいは硫酸マグネシウム水溶液を加えて急激に希釈、冷
却することでこの課題を解決した。2MgSO・Mg
(OH)・3HOスラリーに加える水あるいは硫酸
マグネシウム水溶液の濃度と温度は、合成した2MgS
・Mg(OH)・3HOスラリーの硫酸マグネ
シウム濃度と温度等によって決定する。
【0013】本発明の目的物質であるMgSO・5M
g(OH)・8HOは、硫酸マグネシウムの濃度
1.5〜2.5モル/リットル、温度10〜50℃、好
ましくは濃度1.8〜2.3モル/リットル、温度30
〜45℃になるように、得られた2MgSO・Mg
(OH)・3HOスラリーに必要量の水あるいは硫
酸マグネシウム水溶液を加えて分解すると好適に製造で
きる。硫酸マグネシウムの濃度及び温度が上記範囲を外
れると、目的物以外の化合物が生成し好ましくない。反
応時間は条件によって異なるが、通常2〜10時間が適
当である。必要であれば、ここで種晶を用いて反応時間
を短縮することができる。この場合、反応時間は1〜5
時間に短縮できるとともに、種晶を使用しない場合に比
べ、より完全な繊維形態をもつものが生成し好ましい結
果が得られる。
【0014】このようにして得られるMgSO・5M
g(OH)・8HOは長さ数ミクロン〜1000ミ
クロン、直径0.1ミクロン〜10ミクロンの繊維状を
呈し、見掛け密度は0.05〜0.3g/cm、BE
T比表面積は30m/g以下であり、優れた吸油性と
適度の吸湿性を有している。
【0015】繊維状MgSO・5Mg(OH)・8
Oは示性式から明らかなように、8分子の結晶水を
構造中に持っている。この結晶水は約100℃で2分
子、約160℃で6分子の結晶水が離脱するので樹脂用
の添加材としては好ましくない。
【0016】しかしながら、繊維状MgSO・5Mg
(OH)・8HOを160〜350℃、好ましくは
170〜300℃の温度で0.5〜10時間、好ましく
は1〜5時間、加熱処理をすると、繊維形態を元の状態
に維持したまま結晶水を含まないMgSO・5Mg
(OH)が得られる。この処理によって結晶構造が変
化し、脱水した結晶水を再び吸着することはない。
【0017】MgSO・5Mg(OH)なる示性式
を有する無水の繊維状マグネシウムオキシサルフェート
は、繊維状MgSO・5Mg(OH)・8HOに
比較して若干細くなる他は、MgSO・5Mg(O
H)・8HOとほぼ同様の長さ数ミクロン〜100
0ミクロン、直径0.07ミクロン〜7ミクロンの繊維
状を呈し、見掛け密度は0.05〜0.3g/cm
BET比表面積は30m/g以下であり、優れた吸油
性と適度の吸湿性を有しており、合成樹脂の強化材とし
て好適である。
【0018】
【実施例】以下に実施例及び比較例をもって本発明を具
体的に説明する。 実施例1 硫酸マグネシウム7水塩を水に溶解し3.0モル/リッ
トルの硫酸マグネシウム水溶液1リットルを調製し、水
酸化マグネシウム40gを添加して良く分散させた。そ
の後オートクーブに入れて温度160℃、圧力6kg/
cm・Gにて2時間反応を行って2MgSO・Mg
(OH)・3HOを合成した。
【0019】反応後、2MgSO・Mg(OH)
3HOスラリーを100℃まで冷却し、濃度1.5モ
ル/リットル、温度20℃の硫酸マグネシウム水溶液2
リットルを加え、濃度2.0モル/リットル、温度45
℃まで急激に希釈且つ冷却し、5時間反応を行い繊維状
物質を得た。
【0020】反応後、生成物を濾集、水洗し、化学分析
を行ったところMgSO・5Mg(OH)・8H
Oなる示性式を示した。
【0021】この繊維状MgSO・5Mg(OH)
・8HOを170℃で3時間加熱処理を行った。得ら
れた物質の化学分析を行ったところMgSO・5Mg
(OH)なる示性式を示した。
【0022】実施例2 硫酸マグネシウム7水塩を水に溶解し3.0モル/リッ
トルの硫酸マグネシウム水溶液1リットルを調製し、水
酸化マグネシウム40gを添加して良く分散させた。そ
の後オートクーブに入れて温度160℃、圧力6kg/
cm・Gにて2時間反応を行って2MgSO・Mg
(OH)・3HOを合成した。
【0023】反応後、2MgSO・Mg(OH)
3HOスラリーを100℃まで冷却し、濃度1.5モ
ル/リットル、温度20℃の硫酸マグネシウム水溶液2
リットルを加え、濃度2.0モル/リットル、温度45
℃まで急激に希釈且つ冷却した後、実施例1と同様の方
法で合成したMgSO・5Mg(OH)・8H
を良く分散し種晶として加えて、2時間反応を行い繊維
状物質を得た。
【0024】反応後、生成物を濾集、水洗し、化学分析
を行ったところMgSO・5Mg(OH)・8H
Oなる示性式を示した。
【0025】図1にこの繊維状MgSO・5Mg(O
H)・8HOの走査型電子顕微鏡写真(二次電子
像:1000倍)を示す。得られたMgSO・5Mg
(OH)・8HOが繊維状結晶を呈していることが
良く分かる。
【0026】この繊維状MgSO・5Mg(OH)
・8HOを170℃で3時間加熱処理を行った。得ら
れた物質の化学分析を行ったところMgSO・5Mg
(OH)なる示性式を示した。
【0027】図2にこの繊維状MgSO・5Mg(O
H)の走査型電子顕微鏡写真(二次電子像:1000
倍)、図3に熱処理前後のX線回折パターンを示す。熱
処理によって繊維状MgSO・5Mg(OH)・8
Oの繊維形態を失うことなく、異なった結晶構造ヘ
と変化していることがわかる。
【0028】比較例1 硫酸マグネシウム7水塩を水に溶解し2.0モル/リッ
トルの硫酸マグネシウム水溶液1リットルを調製し、こ
れに酸化マグネシウム9gを添加して良く分散させ、4
5℃で12時間反応を行ったところ、MgSO・5M
g(OH)・8HOなる示性式を示した。図4にこ
の繊維状MgSO・5Mg(OH)・8HOの走
査型電子顕微鏡写真(二次電子像:1000倍)を示
す。得られた繊維状MgSO・5Mg(OH)には
粒状の異相(MgO、Mg(OH)等)が多く含まれ
ている。
【0029】比較例2 硫酸マグネシウム7水塩を水に溶解し2.0モル/リッ
トルの硫酸マグネシウム水溶液1リットルを調製し、こ
れに酸化マグネシウム13gを添加して良く分散させ、
45℃で24時間反応を行ったが繊維状物質は得られな
かった。分析を行うと水酸化マグネシウムのままであっ
た。
【0030】比較例3 硫酸マグネシウム7水塩を水に溶解し2.0モル/リッ
トルの硫酸マグネシウム水溶液1リットルを調製し、水
酸化マグネシウム13gを添加して良く分散させた。そ
の後オートクーブに入れて温度160℃、圧力6kg/
cm・Gにて2時間反応を行って2MgSO・Mg
(OH)・3HOを合成した。
【0031】反応後、2MgSO・Mg(OH)
3HOスラリーを160℃から45℃まで2時間かけ
て放冷し5時間反応を行ったが、繊維状物質は得られず
粒状物質が生成した。分析を行うと水酸化マグネシウム
であった。
【0032】
【発明の効果】本発明の繊維状マグネウシウムオキシサ
ルフェートの製造方法は、反応中間物質である2MgS
・Mg(OH)・3HO経由するので収率が高
い。また、MgSO・5Mg(OH)なる示性式を
有する繊維状無水マグネシウムオキシサルフェートの原
料を好適に製造する。この繊維状無水マグネシウムオキ
シサルフェートは、脱水反応による成形不良をもたらす
ことのない優れた合成樹脂強化材として産業上重要であ
る。
【0033】
【図面の簡単な説明】
図1はこの明細書の実施例2で得られたMgSO・5
Mg(OH)・8HOの繊維の形状を表す走査型電
子顕微鏡写真、図2は同じく実施例2で得られたMgS
・5Mg(OH)の繊維の形状を表す走査型電子
顕微鏡写真、図3は同じく実施例2で得られたMgSO
・5Mg(OH)・8HOと、MgSO・5M
g(OH)の結晶構造を表すX線回折パターン、図4
はこの明細書の比較例1で得られたMgSO・5Mg
(OH)・8HOの繊維の形状を表す走査型電子顕
微鏡写真である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硫酸マグネシウム水溶液に水酸化
    マグネシウムまたは酸化マグネシウムを分散した後、水
    熱反応を行って2MgSO・Mg(OH)・3H
    Oなる示性式を有するマグネシウムオキシサルフェート
    のスラリーを生成し、次にこのスラリーを水あるいは硫
    酸マグネシウム水溶液で冷却且つ希釈して2MgSO
    ・Mg(OH)・3HOをMgSO・5Mg(O
    H)・8HOに分解することを特徴とするMgSO
    ・5Mg(OH)・8HOなる示性式を有する繊
    維状マグネシウムオキシサルフェートの製造方法。
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JP5766635B2 (ja) * 2011-03-02 2015-08-19 宇部マテリアルズ株式会社 繊維状塩基性硫酸マグネシウム粉末及びその製造方法

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