JP2815048B2 - 指針表示式発電時計 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は指針表示時計の電源の充電方式に関するもの
である。

〔従来の技術〕

時計の成熟化に伴ない、水晶時計は時間精度、耐久性
等が著しく向上し、さらに価格面に於ても従来のメカ時
計とほとんど差のないものとなって来た。しかしなが
ら、水晶時計に於ては発振・分周等の各回路、電気・機
械変換としてのステップモーター等の電源が必要であ
り、通常は数年間で電源である電池の交換が必要であ
る。これは一般ユーザーにとって非常に煩わしいもので
あり、又、電池の交換費用も決して安価とは言えないも
のである。その欠点を改善する１つの方法として充電可
能な電源にコイル内に外部操作部材等により磁石を回転
することでコイルに誘起される電流、いわゆる電磁誘導
現象によって発電して電源を充電することにより電池交
換の煩わしさを解消する提案が数多く出されている。

一般的に前述の発電装置は、指針表示のための電気・
機械変換機としてのステップモーターの回転子（ロータ
ー）を外部力により強制的に回転させることで機械・電
気変換機（発電機）として使用出来るものである。しか
しながら、従来の提案のほとんどのものは、指針表示の
ためのステップモーターと発電機とは別々に設けている
ものが多い。これは発電機とモーターを分けることで各
々独立して動作させシステムを簡素化するためである。
しかしながら、部品点数が増えてコスト高になるばかり
でなく、スペース的にも非常に大きくなり、デザイン的
にも従来の時計よい著しく見劣りするものとなってしま
う。そこで、前述のステップモーターと発電機を共用す
ることでこの欠点を補う提案として、特開昭53−27070
号公報の如きものがある。この提案は電源容量が無くな
った時にリューズ操作にてステップモーターの回転子に
増速輪列を噛み合わせ、リューズ回転操作にて発電し、
電源を充電するものである。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、リューズを回転しステップモータの回
転子を強制高速回転して発電させても、数分間のリュー
ズ回転操作では一日分程度の発電量でしかなく、数年分
の発電を行うには一時的な指先での回転運動では不可能
な事である。また、リューズ操作では通常のリューズ径
では小さすぎて操作性が悪いために、リューズ径を大き
くする必要があるが、これはデザイン的に大きなマイナ
スであり、また、時計ケースに装着できる程度のリュー
ズの大きさではさほど大きな操作性の向上は得られず、
一回のリューズ操作は数分程度が限界である。また、こ
の提案の如く、リューズを引き出して回転操作し発電を
行うと指針の表示時刻がズレ、せっかくの水晶時計の時
間精度の良さが失われるのみでなく、場合によっては大
幅な時間のズレになってしまう欠点が生じる。

本発明の目的は前述の欠点を解消するものであり、ス
テップモーターを強制回転させるための外部操作部材の
操作性を向上させ、効率的に発電を行わせるものであ
り、また、外部操作部材にてステップモーターを強制回
転させ発電しても時刻のズレを発生しない様にすること
であり、更には部品点数の少ないステップモーターと発
電機を共用するに当り、その機構が安全に作動し信頼性
が高く、更には、発電用のリューズを廃止し、デザイン
的にすっきりした時計を提供するものである。

〔課題を解決するための手段〕

充電可能な電源、指針を駆動するための減速輪列を駆
動する回転子を強制的に回転させる回転ベゼルと、該回
転ベゼルにより駆動される駆動輪列を備え、前記回転ベ
ゼルの操作で駆動輪列を介して回転子を高速回転させて
発電した電力を前記電源に充電すると共に、前記駆動輪
列が前記回転子を回転させる回転方向は、前記減速輪列
が前記回転子を回転させる回転方向とは互いに逆方向に
回転させ、且つ前記回転子を含む前記減速輪列の一部に
前記駆動輪列の回転を前記指針に伝えないためのスリッ
プ機構を設けたものである。

更には、前記駆動輪列の一部に備えた前記回転ベゼル
の一方向の回転に連動する一方向クラッチとスイッチ
で、前記駆動輪列を駆動終了後、前記スイッチの信号に
より前記指針を駆動して発電時の停止時間分を修正でき
るよう構成したものである。

〔実施例〕

以下図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明す
る。

第１図は本発明の実施例による時計の要部平面図であ
り、第２図は本発明の時計の要部断面図、第３図は本発
明の実施例の構成を示す時計のシステムブロック図であ
る。

まず第３図により本発明の時計のシステムについて説
明する。

３はステップモーターで、通常駆動時は制御回路７の
中の時刻信号を出力する計数手段14や駆動回路13からの
信号を受けて、スリップ機構10と逆転防止機構11を含む
減速輪例４を介して指針表示５を駆動し通常時刻を表示
する。次に、電源を充電したい時には外部操作部材１を
操作して、一方向クラッチ８とスイッチ９を含む増速輪
列２を回転させてステップモーター３を高速回転させ、
充電回路12を介して電源６を充電する。停止手段15は、
スイッチ９からの信号により計数手段14の信号を駆動回
路13に送信するか否かの判定をする回路である。従って
この時、スイッチ９の信号が入力することにより、駆動
回路13は停止手段15の作用により計数手段14からの信号
を停止させることによって駆動信号の発生を停止する。
また、充電が終了すると早送り手段16からの信号により
駆動回路13を介してステップモーター３を早送りして現
在時刻と一致させるようにしている。

次に第１図、第２図を用いて本発明の構造について説
明する。

時計ケース17の上部には回転自在に回転ベゼル18がは
め込まれており、該回転ベゼル18の下部には該回転ベゼ
ル18を押し上げるバネ部19aと下向きに複数個のフック1
9bを設けたリング状のベゼル上げバネ19を配してある。
更に、該回転ベゼル18の下部には上面に多数の突起20a
を有する内歯リング20が回転自在に配されており、回転
ベゼル18を押し下げるとベゼル上げバネ19のフック19b
と内歯リング20の突起20aと引っかかり、そのまま該回
転ベゼル18を回転させることによって内歯リング20が回
転する。また、内歯リング20はクラッチ車21と常時噛合
しており、内歯リング20の回転により常にクラッチ車21
を回転させるようになっている。

以上述べた機構により時計外装と時計モジュールとが
連結しており、回転ベゼル18を押しまわすことによって
リューズ操作に比べ大きなエネルギーを一度に時計モジ
ュール内に伝達することが可能となる。

一方、時計モジュールにおいてコイル23と固定子24及
び回転子22によりステップモーター３を形成しており、
通常使用時はステップモーター３の回転子22はコイル23
に印加される電流にて固定子24が誘磁され、一定周期
（通常は１秒間隔）で時計方向（第１図点線の矢印にて
図示）に回転している。その回転は回転子22の一つのカ
ナ部22aより五番歯車25、五番カナ26は反時計方向に、
四番車27は時計方向に、三番車28は反時計方向に、中心
車29及び筒車30は時計方向に回転し、これらによって減
速輪列４を構成している。尚、四番車27、中心車29、筒
車30には指針表示５としてそれぞれ秒針31、分針32、時
針33にて時刻表示を行うのは通常の水晶時計と全く同じ
である。

第２図に示すように、回転子22にはもう１つのカナ22
bが設けてあり、これに常時噛合している増速車34、中
間車35及び発電時のみ中間車35と噛合するクラッチ車21
及びクラッチバネ36にて駆動輪列である増速輪列２を構
成している（但し、発電時の回転伝達はクラッチ車21の
方より回転子のカナ22bの方へ向かって伝達する）。こ
こで通常運針時には前述の減速輪列４と増速車34及び中
間車35の増速輪列２の一部は常時回転している。

クラッチ車21の軸部21aの軸受け部21bは長円型になっ
ており、クラッチ車21のカナ部21cが中間車35と噛合す
る位置と噛み合いが完全にはずれる位置とを移動可能に
なっている。さらに該軸部21aにはクラッチバネ36のバ
ネ部36aが作用し、常に前述の中間車35との噛み合いが
はずれる位置にくるようになっている。

次に、発電使用時について説明する。モジュールを裏
ブタ39側より観めた場合、回転ベゼル18を押し下げて時
計方向にまわすことによってベゼル上げバネ19を介して
内歯リング20を時計方向に回転させて、クラッチ車21を
時計方向に回転させる力をかける。この時、クラッチ車
21には前述のクラッチバネ36の別の一端のバネ部36bか
らクラッチ車21を受け37に押し上げる力をかけており、
その摩擦力によってその荷重点36cを中心として、クラ
ッチ車21はそのカナ部21cが中間車35と噛合する位置に
移動を開始する。

また前述のクラッチバネ36のバネ部36aの先端部には
スイッチ端子36dが形成されており、スイッチパターン3
7aに接触してスイッチ９が入る様になっており、クラッ
チ車21のカナ部21cが中間車35と噛合する直前に前述の
スイッチ９が入る様に設定してある。

更に、回転ベゼル18を時計方向に回転させるとクラッ
チ車21のカナ部21cと中間車35は完全に噛合し、中間車3
5は反時計方向に回転し、増速車34は時計方向に、ステ
ップモーター３の回転子22は反時計方向に回転する。当
然、五番歯車25は通常運針時とは逆に時計方向に回転す
る。五番歯車25は五番カナ26とは遊合になっており、ス
リップバネ38によって結合されている。スリップバネ38
は増速輪列の回転を指針には伝えないようにするための
もので、スリップバネ38による結合力は回転子22の回転
力及び保持トルクより若干大きく設定してあり、発電時
にスリップし指針表示がずれることはない様になってい
る。

第４図、第５図は五番カナ26と四番車27との歯車の噛
み合いを示す図であり、第４図は通常運針の噛み合い状
態を示しており、五番カナ26は反時計方向に回転し、四
番車27は時計方向の通常の噛み合いを行っている。第５
図は発電状態の噛み合いを示す図で五番歯車25が時計方
向に回転し、五番カナ26もスリップ力により時計方向に
回転しようとする場合、四番車27の歯先27aと五番カナ2
6の背面26aが突張り、五番カナ26の回転を防止し、回転
子22のカナ部22aと噛み合っている五番歯車25のみが回
転し、四番車27以後の減速輪列４は全て停止し、当然、
各指針31、32、33も停止する。

回転ベゼル18を時計方向に更に回転すれば回転子22は
反時計方向に回転を続け、固定子24に磁束を発生しコイ
ル23には電流が誘電され、充電回路12を通じて、電源６
を充電することになる。

ここで回転ベゼル18から手を離すか、反時計方向に回
転すると中間車35への回転力がなくなり、クラッチ車21
を反時計方向に回転するためクラッチ車21はクラッチバ
ネ36のバネ部36aの作用によりクラッチ車21のカナ部21c
が中間車35と完全に離れる位置に戻されるとともに、ス
イッチ端子36dもスイッチパターン37aから離れてスイッ
チが切れる事になる。スイッチ９からの信号により計数
回路14は計数を停止し、早送り手段16にて駆動回路13を
早送りして発電時に停止している時間分を補正し、補正
終了後通常運針を開始する様になっている。

以上の説明の如く本発明によれば、通常の指針表示式
時計のわずかの部品付加と充電可能な電源によって電源
交換の煩わしさが解消されるとともに、リューズに比べ
操作性が良く、またリューズより一度に大きなエネルギ
ーを与えることが出来て充電操作時間を短くすることが
出来る上、減速輪列の一部に増速輪列の回転を指針に伝
達しないよう構成することによって時間精度が狂うこと
もなく、信頼性の高い指針表示式発電時計が可能であ
る。

〔発明の効果〕

以上の説明で明らかな様に、本発明によれば外部操作
部材として回転ベゼルを使用することによって、発電操
作の際の回転操作が安易に行え、さらにリューズ操作に
比べ、手でのわずかな回転でも回転子を高速回転させる
ことが出来、充電時間を短かくできるという効果があ
る。更には、外部操作部材として回転ベゼルを使用する
ため、径太のリューズを使うことなく、デザイン的にす
っきりした時計を作ることができる。

また、時刻系と発電系でローターの回転を逆としたの
で、スリップ機構を構造的に容易に設けることが出来、
減速輪列の一部に増速輪列の回転を指針に伝達しないよ
う構成することが簡単に構成できる。このため、発電機
能が働いても時刻のズレを発生させることが無く、且つ
停止時間分の補正機能を有するため、信頼性の高い時計
を提供できる。

更には、クラッチバネに設けられたスイッチ部でスイ
ッチカナと中間車とが噛合する前にスイッチが入る様に
設定してあるので、発電操作時では当然ながら、何らか
の衝撃によって回転ベゼルが発電時の方向に押し回わさ
れた場合でも、通常運針が停止した時間を確実に補正を
行うことが出来、信頼性を高く出来るという効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す指針表示式発電時計の
要部平面図、第２図は第１図の要部断面図、第３図は第
１図のシステムブロック図、第４図及び第５図は本実施
例の五番カナと四番車の噛合状態を示す平面図である。 １……回転ベゼル、２……増速輪列、 ３……ステップモーター、４……減速輪列、 ５……指針表示、６……電池、 ７……制御回路、８……一方向クラッチ、 ９……スイッチ、10……スリップ機構、 11……逆転防止機構、12……充電回路、 13……駆動回路、14……計数回路、 15……停止手段、16……早送り手段、 17……時計ケース、19……ベゼル上げバネ、 20……内歯リング、21……クラッチ車、 22……回転子、23……コイル、 24……固定子、25……五番歯車、 26……五番カナ、27……四番車、 28……三番車、29……中心車、 34……増速車、35……中間車、 36……クラッチバネ、 36d……スイッチ端子、 37a……スイッチパターン、 38……スリップバネ。

フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−27070（ＪＰ，Ａ) 特開 昭56−133948（ＪＰ，Ａ) 実開 昭62−83991（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) G04C 10/00 G04C 3/14

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】充電可能な電源、指針を駆動し時刻を表示
   するための減速輪列を駆動する回転子を備えたステップ
   モーター、該ステップモーターの回転子を強制的に回転
   させる回転ベゼル、該回転ベゼルにより駆動される駆動
   輪列を備えた指針表示式発電時計において、 前記駆動輪列は前記回転ベゼルの操作で前記回転子を高
   速回転させることによって発電させる発電機能を、また
   前記電源は発電された電力を充電する充電機能を有し、 更に前記駆動輪列が前記回転子を回転させる回転方向
   は、前記減速輪列が前記回転子を回転させる回転方向と
   は互いに逆方向に回転するよう構成すると共に、 前記回転子を含む前記減速輪列の一部に、前記駆動輪列
   の回転を前記指針に伝えないためのスリップ機構を設け
   たことを特徴とする指針表示式発電時計。
2. 【請求項２】前記駆動輪列の一部に前記回転ベゼルの一
   方向の回転に連動する一方向クラッチとスイッチを備
   え、 前記一方向クラッチで前記駆動輪列を駆動終了後、前記
   スイッチの信号により前記指針を駆動して発電時の停止
   時間分を修正することを特徴とする請求項１に記載の指
   針表示式発電時計。